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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01D
管理番号 1334856
審判番号 不服2016-15700  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-20 
確定日 2017-11-21 
事件の表示 特願2015-510695「PTALボンドコーティングおよび遮熱コーティングを備えたエアフォイル構造体、ならびに対応する製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日国際公開、WO2013/167312、平成27年 8月13日国内公表、特表2015-523488〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年3月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年5月9日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成26年11月7日に国内書面が提出され、平成26年11月20日に明細書及び特許請求の範囲の翻訳文が提出され、平成26年12月10日に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、平成27年12月18日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月25日に意見書が提出されるとともに特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成28年7月26日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成28年10月20日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成28年10月26日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年10月20日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成28年10月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成28年10月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成28年3月25日に提出された手続補正書による)下記の(1)の記載を下記の(2)の記載に補正するものである。

(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし14

「【請求項1】
ガスタービン用のエアフォイル構造体(100)であって、前記エアフォイル構造体(100)は、
エアフォイル(101)と、
インナーシュラウド(110)と、
アウターシュラウド(120)と、を具備し、
前記エアフォイル(101)は前記インナーシュラウド(110)と前記アウターシュラウド(120)との間に配置され、
前記エアフォイル(100)は、プラチナアルミニドコーティングおよび遮熱コーティングによって被覆されると共に前記エアフォイル(101)の全表面の少なくとも一部を体現する被覆表面セクション(104)を備え、
前記被覆表面セクション(104)の前記遮熱コーティングは、距離(x)を伴って、前記インナーシュラウド(110)および/または前記アウターシュラウド(120)から離間させられており、かつ、
前記距離(x)は、前記インナーシュラウド(110)と前記アウターシュラウド(120)との間の前記エアフォイル(101)の全長の5%ないし25%であり、
前記エアフォイル(101)は、このエアフォイル(101)の表面上に形成されたシンニングアウトセクション(105)をさらに具備し、
前記シンニングアウトセクション(105)は、前記被覆表面セクション(104)と前記インナーシュラウド(110)との間に、かつ/または前記被覆表面セクション(104)と前記アウターシュラウド(120)との間に配置され、
前記シンニングアウトセクション(105)において、前記遮熱コーティングの厚みは、前記被覆表面セクション(104)の縁から、前記インナーシュラウド(110)あるいは前記アウターシュラウド(120)それぞれへと滑らかに減少することを特徴とするエアフォイル構造体(100)。
【請求項2】
前記エアフォイル(101)はさらに前縁(102)および後縁(103)を備え、
前記被覆表面セクション(104)の前記遮熱コーティングは、前記前縁(102)と前記後縁(103)との間で、前記エアフォイル(101)の表面上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項3】
前記プラチナアルミニドコーティングは、0.02mmないし0.10mmの厚みを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項4】
前記プラチナアルミニドコーティングは、0.04mmないし0.09mmの厚みを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項5】
前記エアフォイル(101)はステータベーンあるいはローターブレードであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項6】
前記インナーシュラウド(110)は、前記タービンの作動流体によって、前記ガスタービンの稼動中に洗浄されるインナープラットフォームを備え、
前記インナープラットフォームには遮熱コーティングが存在しないことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項7】
前記アウターシュラウド(120)は、前記タービンの作動流体によって、前記ガスタービンの稼動中に洗浄される、さらなるインナープラットフォームを備え、
前記さらなるインナープラットフォームには遮熱コーティングが存在しないことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項8】
前記被覆表面セクション(104)のプラチナアルミニド部分は、遮熱コーティングによって、さらに被覆され、かつ、
前記プラチナアルミニドコーティングは、前記エアフォイル(101)の表面と前記遮熱コーティングとの間に配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項9】
前記遮熱コーティングはセラミック成分を含むことを特徴とする請求項8に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項10】
前記遮熱コーティングは、0.10mmないし0.5mmの厚みを有することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項11】
前記遮熱コーティングは、0.15mmないし0.3mmの厚みを有することを特徴とする請求項8または請求項9に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項12】
ガスタービン用のエアフォイル構造体(100)を製造するための方法であって、前記エアフォイル構造体(100)は、エアフォイル(101)と、インナーシュラウド(110)と、アウターシュラウド(120)と、を具備し、前記エアフォイル(101)は前記インナーシュラウド(110)と前記アウターシュラウド(120)との間に配置されており、
前記方法は、
前記エアフォイル(101)の表面セクション(104)をプラチナアルミニドコーティングおよび遮熱コーティングによって被覆するステップであって、前記表面セクション(104)は前記エアフォイル(101)の全表面の少なくとも一部を体現するものであるステップを備え、
被覆表面セクション(104)の前記遮熱コーティングは、距離(x)を伴って、前記インナーシュラウド(110)および/または前記アウターシュラウド(120)から離間させられており、かつ、
前記距離(x)は、前記インナーシュラウド(110)と前記アウターシュラウド(120)との間の前記エアフォイル(101)の全長の0%ないし45%であり、
前記エアフォイル(101)は、このエアフォイル(101)の表面上に形成されたシンニングアウトセクション(105)をさらに具備し、
前記シンニングアウトセクション(105)は、前記被覆表面セクション(104)と前記インナーシュラウド(110)との間に、かつ/または前記被覆表面セクション(104)と前記アウターシュラウド(120)との間に配置され、
前記シンニングアウトセクション(105)において、前記遮熱コーティングの厚みは、前記被覆表面セクション(104)の縁から、前記インナーシュラウド(110)あるいは前記アウターシュラウド(120)それぞれへと滑らかに減少することを特徴とする方法。
【請求項13】
前記距離(x)は、前記インナーシュラウド(110)と前記アウターシュラウド(120)との間の前記エアフォイル(101)の全長の5%ないし25%であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記プラチナアルミニドコーティングのプラチナは電気メッキ処理によってコーティングされ、前記プラチナアルミニドコーティングのアルミニドは気相アルミニド(VPA)処理によってコーティングされ、かつ、前記遮熱コーティングは電子ビーム物理蒸着(EBPVD)処理によってコーティングされることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の方法。」

(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし13

「【請求項1】
ガスタービン用のエアフォイル構造体(100)であって、前記エアフォイル構造体(100)は、
エアフォイル(101)と、
インナーシュラウド(110)と、
アウターシュラウド(120)と、を具備し、
前記エアフォイル(101)は前記インナーシュラウド(110)と前記アウターシュラウド(120)との間に配置され、
前記エアフォイル(100)は、プラチナアルミニドコーティングおよび遮熱コーティングによって被覆されると共に前記エアフォイル(101)の全表面の少なくとも一部を体現する被覆表面セクション(104)を備え、
前記被覆表面セクション(104)のプラチナアルミニド部分は、遮熱コーティングによって、さらに被覆され、かつ、
前記プラチナアルミニドコーティングは、前記エアフォイル(101)の表面と前記遮熱コーティングとの間に配置され、
前記被覆表面セクション(104)の前記遮熱コーティングは、距離(x)を伴って、前記インナーシュラウド(110)および/または前記アウターシュラウド(120)から離間させられており、かつ、
前記距離(x)は、前記インナーシュラウド(110)と前記アウターシュラウド(120)との間の前記エアフォイル(101)の全長の5%ないし25%であり、
前記エアフォイル(101)は、このエアフォイル(101)の表面上に形成されたシンニングアウトセクション(105)をさらに具備し、
前記シンニングアウトセクション(105)は、前記被覆表面セクション(104)と前記インナーシュラウド(110)との間に、かつ/または前記被覆表面セクション(104)と前記アウターシュラウド(120)との間に配置され、
前記シンニングアウトセクション(105)において、前記遮熱コーティングの厚みは、前記被覆表面セクション(104)の縁から、前記インナーシュラウド(110)あるいは前記アウターシュラウド(120)それぞれへと滑らかに減少し、
前記被覆表面セクション(104)の前記プラチナアルミニドコーティングの厚みは。前記被覆表面セクション(104)上で一定であることを特徴とするエアフォイル構造体(100)。
【請求項2】
前記エアフォイル(101)はさらに前縁(102)および後縁(103)を備え、
前記被覆表面セクション(104)の前記遮熱コーティングは、前記前縁(102)と前記後縁(103)との間で、前記エアフォイル(101)の表面上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項3】
前記プラチナアルミニドコーティングは、0.02mmないし0.10mmの厚みを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項4】
前記プラチナアルミニドコーティングは、0.04mmないし0.09mmの厚みを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項5】
前記エアフォイル(101)はステータベーンあるいはローターブレードであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項6】
前記インナーシュラウド(110)は、前記タービンの作動流体によって、前記ガスタービンの稼動中に洗浄されるインナープラットフォームを備え、
前記インナープラットフォームには遮熱コーティングが存在しないことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項7】
前記アウターシュラウド(120)は、前記タービンの作動流体によって、前記ガスタービンの稼動中に洗浄される、さらなるインナープラットフォームを備え、
前記さらなるインナープラットフォームには遮熱コーティングが存在しないことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項8】
前記遮熱コーティングはセラミック成分を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項9】
前記遮熱コーティングは、0.10mmないし0.5mmの厚みを有することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項10】
前記遮熱コーティングは、0.15mmないし0.3mmの厚みを有することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のエアフォイル構造体(100)。
【請求項11】
ガスタービン用のエアフォイル構造体(100)を製造するための方法であって、前記エアフォイル構造体(100)は、エアフォイル(101)と、インナーシュラウド(110)と、アウターシュラウド(120)と、を具備し、前記エアフォイル(101)は前記インナーシュラウド(110)と前記アウターシュラウド(120)との間に配置されており、
前記方法は、
前記エアフォイル(101)の表面セクション(104)をプラチナアルミニドコーティングおよび遮熱コーティングによって被覆するステップであって、前記表面セクション(104)は前記エアフォイル(101)の全表面の少なくとも一部を体現するものであるステップを備え、
被覆表面セクション(104)のプラチナアルミニド部分は、遮熱コーティングによって、さらに被覆され、かつ、
前記プラチナアルミニドコーティングは、前記エアフォイル(101)の表面と前記遮熱コーティングとの間に配置され、
被覆表面セクション(104)の前記遮熱コーティングは、距離(x)を伴って、前記インナーシュラウド(110)および/または前記アウターシュラウド(120)から離間させられており、かつ、
前記距離(x)は、前記インナーシュラウド(110)と前記アウターシュラウド(120)との間の前記エアフォイル(101)の全長の0%ないし45%であり、
前記エアフォイル(101)は、このエアフォイル(101)の表面上に形成されたシンニングアウトセクション(105)をさらに具備し、
前記シンニングアウトセクション(105)は、前記被覆表面セクション(104)と前記インナーシュラウド(110)との間に、かつ/または前記被覆表面セクション(104)と前記アウターシュラウド(120)との間に配置され、
前記シンニングアウトセクション(105)において、前記遮熱コーティングの厚みは、前記被覆表面セクション(104)の縁から、前記インナーシュラウド(110)あるいは前記アウターシュラウド(120)それぞれへと滑らかに減少し、
前記被覆表面セクション(104)の前記プラチナアルミニドコーティングの厚みは。前記被覆表面セクション(104)上で一定であることを特徴とする方法。
【請求項12】
前記距離(x)は、前記インナーシュラウド(110)と前記アウターシュラウド(120)との間の前記エアフォイル(101)の全長の5%ないし25%であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プラチナアルミニドコーティングのプラチナは電気メッキ処理によってコーティングされ、前記プラチナアルミニドコーティングのアルミニドは気相アルミニド(VPA)処理によってコーティングされ、かつ、前記遮熱コーティングは電子ビーム物理蒸着(EBPVD)処理によってコーティングされることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の方法。」(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)

2 本件補正の目的
本件補正は、請求項1についてみると、実質的に、本件補正前の請求項1に記載した発明における「被覆表面セクション(104)」という発明特定事項について、「前記被覆表面セクション(104)のプラチナアルミニド部分は、遮熱コーティングによって、さらに被覆され、かつ、前記プラチナアルミニドコーティングは、前記エアフォイル(101)の表面と前記遮熱コーティングとの間に配置され、」という事項及び「前記被覆表面セクション(104)の前記プラチナアルミニドコーティングの厚みは。前記被覆表面セクション(104)上で一定である」という事項を追加して限定することにより特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、実質的に、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものであるとともに、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

3 独立特許要件
(1) 刊行物
(1-1) 刊行物1
ア 刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2007/0148003号明細書(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている(なお、摘記に続く{}内の記載は、当審において作成した当審仮訳である。)。

(ア) 「[0021] In FIG. 1, a fluid flow machine blade according to the invention is represented in two side views. The fluid flow machine blade 1 includes an airfoil 4, a blade-foot-side platform 21, and a tip platform 31. The tip platform is, for example, an element of a blade shroud band. The airfoil 4 includes a leading edge 45 and an airfoil trailing edge 46. During operation, the outer contour of the airfoil is flowed around by a hot-gas flow in a direction from the airfoil leading edge 45 to the airfoil trailing edge 46. On the airfoil outer contour, a region 41 is provided with a thermal barrier coating. The region in which the thermal barrier coating 41 is applied to the airfoil, viewed in the direction of circumfluence, ends a distance upstream of the airfoil trailing edge, such that on the airfoil trailing edge there is a region 42 present which is not provided with the thermal barrier coating. In addition, respectively adjacent to the platforms 21 and 31, further regions 43 and 44 of the airfoil are realized without thermal barrier coating. As set out below, enclosed inside the airfoil is a cavity, which is configured for the passage of cooling air. At least a part of the cooling air is blown out at the trailing edge 46 of the airfoil 4. Consequently, the trailing edge region of the airfoil is relatively intensively cooled. In addition, during operation of the gas turbo set in which the fluid flow machine blade is installed, a heat input into the airfoil takes place, whereas the heat input into the platforms 21 and 31 is significantly less. As a result, heat currents are generated from the airfoil toward the platforms. In terms of the net heat balances, the marginal regions of the airfoil which adjoin the platforms and the trailing edge are accordingly less heavily loaded than the rest of the airfoil. This factor is taken into account by the fact that the initially more heavily loaded part of the airfoil is provided with a thermal barrier coating, whereas those marginal regions are realized without thermal barrier coating. Hence, the heat transfer in these marginal regions is higher than in the coated region, thereby compensating for the increased heat dissipation. In total, this leads to an evening-up of the temperature distribution in the airfoil. Accordingly, the invention is thus based on the fact that in regions in which an increased heat dissipation takes place, the heat input is simultaneously increased through the omission of the thermal barrier coating.
[0022]In FIG. 2, a section through an exemplary fluid flow machine blade according to the invention, along the line II-II represented in FIG. 1, is represented. The transition from the airfoil 4 to the platforms 21 and 31 is effected with roundings. The roundings have different transition radii, the transition radii, directly adjacent to the platforms 21 and 31, having the measure r1. It is by no means imperative for these radii on the tip platform and on the foot-side platform to be identical, as represented. On the outer contour of the airfoil 4, the thermal barrier coating 41 is applied. Adjacent to the platforms 21 and 31, the regions 43 and 44 not covered by the thermal barrier coating are present. The width m1 of the region not covered on the foot side is greater than the transition radius r1 adjoining the foot-side platform 21. The width m2 of the region not covered on the tip side is greater than the transition radius r1 adjoining the tip platform 21. In one embodiment of the invention, the measures m1 and m2 are dimensioned such that the requirement is met: m1>r1+r2/3 and m2>r1+r3/3.」(段落[0021]及び[0022])
{当審仮訳:[0021] 図1には、本発明による流体機械の翼の両側面が示されている。流体機械の翼1はエアフォイル4、翼根元側のプラットフォーム21、及び翼先端側のプラットフォーム31を備えている。翼先端側のプラットフォームは、例えば、翼のシュラウドバンドの要素である。エアフォイル4は前縁45及び後縁46を備えている。作動中、エアフォイルの外表面には、前縁45から後縁46へ向かう高温ガス流が流れる。エアフォイルの外表面において、領域41には遮熱コーティングが設けられる。遮蔽コーティング41が設けられる該領域は、周囲の流れ方向でみると、後縁からある距離だけ上流側で終わっており、したがって、後縁には、遮熱コーティングが設けられていない領域42が存在する。さらに、プラットフォーム21、31に隣接して、遮熱コーティングが設けられていない領域43、44が存在する。以下に述べるように、エアフォイルの内部は空洞であり、冷却空気の通路を形成している。冷却空気の少なくとも一部は、エアフォイル4の後縁46において吹き出している。その結果、エアフォイルの後縁は相対的に強く冷却される。さらに流体機械翼が設置されているガスターボセットの作動中、エアフォイルへの熱入力が生じるが、プラットフォーム21、31への熱入力はかなり小さい。その結果、エアフォイルからプラットフォームへの熱流が生じる。正味の熱収支でみると、プラットフォームや後縁に隣接する周辺領域では、エアフォイルの他の領域より熱負荷が小さい。この要因を考慮して、はじめに熱負荷の大きいエアフォイルの領域には遮熱コーティングが設けられ、上記の周辺領域には遮熱コーティングは設けられない。これにより、該周辺領域における熱移動は遮熱コーティングが設けられている領域より大きくなり、増大した熱散逸を補っている。これは、全体としてみると、エアフォイルにおける温度分布の均一化に資する。このように、本発明は、熱散逸が増大する領域において、遮熱コーティングを設けないことにより熱入力が増大するという事実に基づいている。
[0022] 図2には、本発明による流体機械翼の典型例について、図1のII-II線の沿った断面が示されている。エアフォイル4からプラットフォーム21、31への移行部位は湾曲されている。各湾曲部位は別々の寸法の移行径を有しており、プラットフォーム21、31に隣接する湾曲部位の径の寸法はr1である。図示したように、翼根元側のプラットフォームと翼先端側のプラットフォームに隣接する径が同じである必要はない。エアフォイル4の外表面には、遮熱コーティング41が施される。プラットフォーム21、31に隣接して、遮熱コーティングが施されない領域43、44がある。翼根元側において遮熱コーティングが施されていない領域の幅m1は、翼根元側プラットフォーム21に隣接する上記の径r1より大きい。翼先端側において遮熱コーティングが施されていない領域の幅m1は、翼先端側プラットフォーム21に隣接する上記の径r1より大きい。発明の一実施例においては、寸法m1及びm2は、m1>r1+r2/3及びm2>r1+r3/3という条件が満たされるように設定される。}

イ 上記ア及び図面の記載から分かること
(ア) 段落[0021]の特に「流体機械」、「翼」、「高温ガス流」、「冷却空気」の記載からみて、刊行物1に記載されている「翼1」はガスタービン用の翼である。

(イ) Fig.2をみると、遮熱コーティング41は、厚さが略一定の領域(以下、「被覆領域」という。)と、該被覆領域の端部ないし縁から翼根元側プラットフォーム21に向かって、また該被覆領域から翼先端側プラットフォーム31に向かって配置され、厚さが滑らかに減少する領域(以下、「被覆漸減領域」という。)とから成る。

ウ 刊行物1発明
上記ア、イ及び図面の記載を総合すると、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。

<刊行物1発明>
「ガスタービン用の翼1であって、前記翼1は、
エアフォイル4と、
翼根元側プラットフォーム21と、
翼先端側プラットフォーム31と、を具備し、
前記エアフォイル4は前記翼根元側プラットフォーム21と前記翼先端側プラットフォーム31との間に配置され、
前記エアフォイル4は、遮熱コーティング41によって被覆されると共に前記エアフォイル4の全表面の少なくとも一部を体現する被覆領域を備え、
前記被覆領域の前記遮熱コーティング41は、前記翼根元側プラットフォーム21、前記翼先端側プラットフォーム31から離間させられており、
前記エアフォイル4は、このエアフォイル4の表面上に形成された被覆漸減領域をさらに具備し、
前記被覆漸減領域は、前記被覆領域から前記翼根元側プラットフォーム21に向かって、また前記被覆領域から前記翼先端側プラットフォーム31に向かって配置され、
前記被覆漸減領域において、前記遮熱コーティング41の厚みは、前記被覆領域の縁から、前記翼根元側プラットフォーム21あるいは前記翼先端側プラットフォーム31それぞれに向かって滑らかに減少する翼1。」

(1-2) 刊行物2
ア 刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-57182号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア) 「【0001】
本発明は、高温酸化環境で使用される物品の表面保護に関し、より詳細には、ガスタービン構成要素の表面保護に関する。」(段落【0001】)

(イ) 「【0020】
図4?5に示されるように、基板50の表面52の第1の領域40を覆う第1の保護層54が存在する。第1の保護層は、基板アルミニウム含有量と少なくとも同量の第1保護層アルミニウム含有量を有する。第1の保護層54は、好ましくは、基板アルミニウム含有量よりも少なくとも3原子パーセント多い第1保護層アルミニウム含有量を含む組成を有する。例えば、基板アルミニウム含有量が14原子パーセントである場合、第1の保護層54は、少なくとも17原子パーセントのアルミニウムを有することが好ましい。第1の保護層54の上面は、酸化して、保護アルミニウム酸化物薄膜(図示せず)を生成し、これは、基板50の表面52のさらなる酸化を抑制する。
【0021】
第1の保護層54は、初めに、アルミニウムと、基板50から第1の保護層54に拡散された元素とのみを含む拡散アルミニウム化合物にすることができ、あるいは、初めに、白金、クロム、シリコン、ジルコニウム、またはハフニウムなど他の元素を含む修正拡散アルミニウム化合物にすることができる。単純な拡散アルミニウム化合物では、アルミニウムが、表面52上に堆積され、表面52内に拡散されて、基板50の元素と相互拡散される。修正拡散アルミニウム化合物は、白金など別の元素の層を表面52上に堆積し、次いで、その元素の層を覆うようにアルミニウム層(純粋なアルミニウム、または修正元素でドープされたもの)を堆積することによって形成することができる。これらの層は、基板のベース金属と相互拡散される。この場合、アルミニウムを含有する第1の保護層54は、ハフニウム、イットリウム、ジルコニウム、クロム、もしくはシリコン、またはそれらの組合せなど修正元素を含む場合がある。使用することができる拡散アルミニウム化合物コーティングは、米国特許第6607611号に記載されており、その開示を参照として組み込む。
【0022】
あるいは、第1の保護層54を、MCrAlX被覆コーティングにすることもでき、これも'611特許に記載されている。用語「MCrAlX」は、環境コーティングとして、または断熱コーティングシステムでのボンドコートとして使用することができる様々な種類の被覆保護層54に対する専門略語である。この表記様式および他の表記様式において、Mは、ニッケル、コバルト、鉄、およびそれらの組合せを表す。これらの保護層のいくつかでは、クロムが省かれる場合がある。Xは、ハフニウム、ジルコニウム、イットリウム、タンタル、レニウム、白金、シリコン、チタン、ホウ素、炭素、およびそれらの組合せなどの元素を表す。特定の組成は、当技術分野で知られている。MCrAlX組成のいくつかの例として、NiAlCrZrおよびNiAlZrが挙げられ(その開示を参照として組み込む)、しかし、この例の列挙は限定とはみなされない。
【0023】
図5に示されるように、第1の保護層54を覆い、それに接触する任意選択のセラミック断熱コーティング56が存在する場合もある。セラミック断熱コーティング56は、好ましくは厚さ約75?約400マイクロメートルであり、最も好ましくは厚さ約125?250マイクロメートルである。セラミック断熱コーティング56は、典型的には、イットリア安定化ジルコニアであり、これは、約3?約12重量パーセント、好ましくは約4?約8重量パーセントのイットリウム酸化物を含有するジルコニウム酸化物である。他の使用可能なセラミック材料を用いることもできる。セラミック断熱コーティング56は、電子ビーム物理蒸着またはプラズマスプレーなど任意の使用可能な技法によって堆積することができる。」(段落【0020】ないし【0023】)

イ 刊行物2技術
上記ア並びに図4及び5から、刊行物2には、次の技術(以下、「刊行物2技術」という。)が記載されているといえる。

「セラミックコーティング等の遮熱コーティングのボンドコートとして白金アルミニウム化合物(プラチナアルミニド)コーティングを用い、その際、ボンドコートを略一定の厚さとする技術。」

(1-3) 刊行物3
ア 刊行物3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である米国特許第5238752号明細書(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、摘記に続く{}内の記載は、当審における仮訳である。)。

(ア) 「In order to ensure good adhesion and to avoid spalling failures, the thermal barrier coating system includes a bond coat or intermediate layer between the ceramic and the substrate 22.」(第5欄第35ないし38行)
{当審仮訳:固着性向上及び破損回避のために、遮熱コーティングはセラミックと基板22との間にボンドコートないし中間層を備える。}

(イ) 「Other specimens were coated with a platinum-aluminide bond coat in a thickness of 0.0025 inches.」(第9欄第49ないし51行)
{当審仮訳:他の試料は、厚さ0.0025インチのプラチナアルミニドボンドコートによりコーティングされた。}

イ 刊行物3技術
上記ア及びFIG.2から、刊行物3には、次の技術(以下、「刊行物3技術」という。)が記載されているといえる。

「セラミックコーティング等の遮熱コーティングのボンドコートとしてプラチナアルミニドコーティングを用い、その際、ボンドコートを略一定の厚さとする技術。」

(1-4) 刊行物4
ア 刊行物4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-159502号公報(以下、「刊行物4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、概ねガスタービンエンジンの翼に関し、より詳細には耐疲労特性が改善されたガスタービンエンジンの翼に関する。」(段落【0001】)

(イ) 「【0028】図1に示すように、上記コーティング18は、従来のように上記翼領域8の全外側面ではなく、上記ブレード2の上記前縁16と上記後縁14の一部に配置されている。上記コーティング18は、上記前縁16と上記後縁14の全長にわたって延びていないことが好ましい。上述したように、本発明者等は、上記ブレード2の疲労特性の向上が、上記プラットホーム22付近の前縁16と後縁14の底部部分に、上記コーティング18が配置されていない場合に達成されることを見出したのである。
【0029】コーティング18は、上記前縁16に沿って、先端部14と上記前縁16の交点から延ばされていても良い。同様に、コーティング18は上記後縁14に沿って、先端部4と上記後縁14の交点から延ばされていても良い。しかしながら、コーティング18は、上記前縁16又は後縁14のいずれにおいても、上記プラットホーム22に下がって行く方向に、全長にわたって延ばされていない。本発明者等は、概ね上記コーティング18が、上記ブレード2の上記前縁16及び後縁14に沿って上記先端部4に向かって、径方向外側にあるプラットホーム22の流路面から通常のように測定して約0%スパンから約25%スパンまでは上記コーティングを施さないことが好ましいことを見出した(本願中で用いる%スパンは、径方向外側に向かった先端部4のプラットホーム22の上記流路面20から測定した値を意味する)。最大では、図1に示すようにコーティング18は、上記ブレード2の上記前縁16及び後縁14に沿って、約0%スパンから約40%スパンまで施されていないことが好ましい。」(段落【0028】及び【0029】)

(ウ) 「【0037】
本発明の別の実施例では、コーティング18は、上記翼領域8にすぐ隣接した上記正圧面10と上記負圧面12の他、上述したように前縁16及び後縁14にも施されていて、これは例えば図2に示されている。しかしながら、この実施例は、好適ではあるものの、上記翼領域8上のコーティング18が増加することによるエンジンの重量増加を引き起こすといった好ましくない点も有している。」(段落【0037】)

(2) 対比・判断
本願補正発明と刊行物1発明とを対比すると、後者における「翼1」は前者における「エアフォイル構造体」に相当し、以下同様に、「翼根元側プラットフォーム21」は「インナーシュラウド」に、「翼先端側プラットフォーム31」は「アウターシュラウド」に、「被覆領域」は「被覆表面セクション」に、「被覆漸減領域」は「シンニングアウトセクション」に、それぞれ相当する。
したがって、本願補正発明の記載に倣って整理すると、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「ガスタービン用のエアフォイル構造体であって、前記エアフォイル構造体は、
エアフォイルと、
インナーシュラウドと、
アウターシュラウドと、を具備し、
前記エアフォイルは前記インナーシュラウドと前記アウターシュラウドとの間に配置され、
前記エアフォイルは、遮熱コーティングによって被覆されると共に前記エアフォイルの全表面の少なくとも一部を体現する被覆表面セクションを備え、
前記被覆表面セクションの前記遮熱コーティングは、前記インナーシュラウドおよび/または前記アウターシュラウドから離間させられており、
前記エアフォイルは、このエアフォイルの表面上に形成されたシンニングアウトセクションをさらに具備するエアフォイル構造体。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願補正発明においては、「前記エアフォイルは、プラチナアルミニドコーティングおよび遮熱コーティングによって被覆されると共に前記エアフォイルの全表面の少なくとも一部を体現する被覆表面セクションを備え、前記被覆表面セクションのプラチナアルミニド部分は、遮熱コーティングによって、さらに被覆され、かつ、前記プラチナアルミニドコーティングは、前記エアフォイルの表面と前記遮熱コーティングとの間に配置され」、また、「前記被覆表面セクションの前記プラチナアルミニドコーティングの厚みは。前記被覆表面セクション上で一定である」のに対し、
刊行物1発明においては、「前記エアフォイル4は、遮熱コーティングによって被覆されると共に前記エアフォイル4の全表面の少なくとも一部を体現する被覆領域を備え」る点(以下、「相違点1」という。)。

<相違点2>
本願補正発明においては、「前記被覆表面セクションの前記遮熱コーティングは、距離(x)を伴って、前記インナーシュラウドおよび/または前記アウターシュラウドから離間させられており、かつ、前記距離(x)は、前記インナーシュラウドと前記アウターシュラウドとの間の前記エアフォイルの全長の5%ないし25%であ」るのに対し、
刊行物1発明においては、「前記被覆領域の前記遮熱コーティングは、前記翼根元側プラットフォーム21、前記翼先端側プラットフォーム31から離間させられて」いる点(以下、「相違点2」という。)。

<相違点3>
本願補正発明においては、「前記エアフォイルは、このエアフォイルの表面上に形成されたシンニングアウトセクションをさらに具備し、前記シンニングアウトセクションは、前記被覆表面セクションと前記インナーシュラウドとの間に、かつ/または前記被覆表面セクションと前記アウターシュラウドとの間に配置され、前記シンニングアウトセクションにおいて、前記遮熱コーティングの厚みは、前記被覆表面セクションの縁から、前記インナーシュラウドあるいは前記アウターシュラウドそれぞれへと滑らかに減少」するのに対し、
刊行物1発明においては、「前記エアフォイル4は、このエアフォイル4の表面上に形成された被覆漸減領域をさらに具備し、前記被覆漸減領域は、前記被覆領域から前記翼根元側プラットフォーム21に向かって、また前記被覆領域から前記翼先端側プラットフォーム31に向かって配置され、前記被覆漸減領域において、前記遮熱コーティングの厚みは、前記被覆領域の縁から、前記翼根元側プラットフォーム21あるいは前記翼先端側プラットフォーム31それぞれに向かって滑らかに減少する」点(以下、「相違点3」という。)。

上記相違点について検討する。
<相違点1>について
本願明細書の段落【0020】、【0022】等に記載されているように、本願補正発明におけるプラチナアルミニドコーティングはセラミックコーティング等の遮熱コーティングのボンドコートとして機能するものであるが、刊行物2及び刊行物3には、「セラミックコーティング等の遮熱コーティングのボンドコートとしてプラチナアルミニドコーティングを用い、その際、ボンドコートを略一定の厚さとする技術」(上記「刊行物2技術」及び「刊行物3技術」を参照。以下、まとめて「刊行物2等技術」という。)が示されている。刊行物1発明(特に被覆領域の遮熱コーティング)に対して刊行物2等技術を適用することは至極当然の合理的な設計であって、格別の困難性はない。

<相違点2>について
刊行物1発明における被覆領域の前記遮熱コーティングは、翼根元側プラットフォーム21及び翼先端側プラットフォーム31から離間している。離間する距離について、本願補正発明はエアフォイルの全長の5%ないし25%であると数値範囲を限定しているが、該数値範囲の上限値及び下限値に技術的意義(特に従来技術との差異、上限値及び下限値の近傍における作用効果の差異)について本願明細書等をみても実証的定量的な説明が特になく、かつ、格別顕著な技術的意義があるとは認められない。また、刊行物4(特に上記の(1-4)ア(イ))には、単なるアルミナイドコーティングに関するが、プラットフォームの流路面から径方向外側に向かって測定して、0%ないし25%まではコーティングを施さないことが示されており(以下、「刊行物4技術」という。)、この程度の数値ないし数値範囲は当業者にとって格別意外なものではない。してみると、刊行物1発明において、上記の離間する距離を上記の数値範囲(エアフォイルの全長の5%ないし25%)を満たす値とすることは適宜の設計的事項といわざるを得ない。

<相違点3>について
刊行物1発明においても、遮熱コーティングの厚みが、被覆領域の縁から翼根元側プラットフォーム21あるいは翼先端側プラットフォーム31それぞれに向かって滑らかに減少する被覆漸減領域が設けられている。このように、一般にコーティングの終端部において例えば段差部を形成することなく、厚さが徐々に漸減する形状とすることが、コーティングの特に終端部における耐久性・寿命の向上、空力性能の維持・向上等の技術的観点からみて好適であり合理的であることは、当業者における技術常識である。刊行物1発明において、遮熱コーティングのボンドコートとしてプラチナアルミニドコーティングを用いることが容易想到であることは、「<相違点1>について」において述べたとおりであるが、この場合においても、例えば、(A)コーティングの終端部において厚さが徐々に漸減する形状とすることが好適であり合理的であることに何ら異なるところはないこと、(B)また、一般に複数層のコーティングの終端部において厚さが徐々に漸減する形状とすることは、例えば、特開平7-127401号公報(特に図1、図3)、実願平4-12505号(実開平5-66055号)のCD-ROM(特に図1、図2)に示されているように周知である(以下、「周知技術」という。)こと等を勘案すると、刊行物1発明において、遮熱コーティングのボンドコートとしてプラチナアルミニドコーティングを用いた場合においても、コーティングの終端部において厚さが徐々に漸減する形状とすることは自然に採用される合理的設計にすぎない。
さらに、刊行物1発明における被覆漸減領域の範囲については、例えば、(a)コーティングの特に終端部における耐久性・寿命の向上等からみると、減少する程度は可及的に滑らかである方が好適であること、(b)遮熱性の点からみると、エアフォイル4の可及的に広範な外表面に遮熱コーティングを設ける方が好適であること、(c)刊行物1(特にFIG.2)において、プラットフォームに隣接する周辺領域(領域43、44)において遮熱コーティングを設けないのは、単に、該周辺領域ではエアフォイル4の他の領域より熱負荷が比較的小さいからにすぎず、エアフォイルの所要の耐久性・寿命、エアフォイル外表面を流れる高温ガスの温度、冷却空気による冷却効果等の種々の要因如何に関係なく、遮熱コーティングは絶対に一切設けないという趣旨でないことは明らかであること、(d)一般に、厚さが滑らかに減少する端部領域を設けた遮熱層をエンドウォールに至るまでエアフォイルの全長にわたって設けたものは、例えば、特開平5-240003号公報(特に図1の遮熱層29)に示されているように特別なものではないこと、以上を総合すると、刊行物1発明において、被覆漸減領域を、被覆領域と翼根元側プラットフォーム21との間に、また被覆領域と翼先端側プラットフォーム31との間に配置することは適宜の設計的事項であって、格別のことではない。
そして、本願補正発明は、全体としてみても、刊行物1発明、刊行物2等技術、刊行物4技術ないし周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1発明、刊行物2等技術、刊行物4技術ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(3) まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年10月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲は、平成28年3月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、平成26年11月20日に提出された翻訳文における明細書、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載されたとおりのものであり、そのうち、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]の1(1)の【請求項1】に記載したとおりである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物1ないし4には、図面とともに、上記第2の[理由]の3に摘記したとおりの事項及び発明が記載されている。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記第2の[理由]の2で検討したとおり、本願発明に発明特定事項を追加して限定したものであるから、本願発明は、本願補正発明の発明特定事項の一部を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本願補正発明は、上記第2の[理由]の3に述べたとおり、刊行物1発明、刊行物2等技術、刊行物4技術ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、実質的に同様の理由により、刊行物1発明、刊行物2等技術、刊行物4技術ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2等技術、刊行物4技術ないし周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 結語
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-23 
結審通知日 2017-06-26 
審決日 2017-07-07 
出願番号 特願2015-510695(P2015-510695)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F01D)
P 1 8・ 121- Z (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 公志郎  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 松下 聡
金澤 俊郎
発明の名称 PTALボンドコーティングおよび遮熱コーティングを備えたエアフォイル構造体、ならびに対応する製造方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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