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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1334897
審判番号 不服2016-8749  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-13 
確定日 2017-12-12 
事件の表示 特願2012- 33772「SiC半導体デバイスの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 2日出願公開,特開2013-171902,請求項の数(4)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年2月20日の出願であって,平成27年6月4日付けで拒絶理由が通知がされ,同年8月6日に意見書と手続補正書が提出され,平成28年3月8日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年6月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され,同年8月19日に上申書が提出され,当審は,平成29年3月16日付けで平成28年6月13日付けの手続補正を却下するとともに,拒絶理由(当審拒絶理由1)を通知し,平成29年5月19日に意見書と手続補正書が提出され,同年6月19日付けで拒絶理由(当審拒絶理由2)を通知し,同年8月9日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は,平成29年8月9日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1ないし本願発明4は以下のとおりである。

「【請求項1】
SiC半導体に電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法であって,
前記SiC半導体に,ニッケル及びチタンを含む層を形成した後,1150℃以上1350℃以下及び昇温速度が10℃/分以上100℃/分以下,加熱保持時間が30分以上120分以下の加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し,前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層上に金属層を形成することにより,上記電極構造を形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記半導体デバイスは,前記電極構造として,前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層のオーミック電極と前記金属層の裏面電極とからなる裏面電極構造を有し,表面電極構造としてショットキー電極と表面電極を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記電極構造は,SiC半導体上に,チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層,チタン層,ニッケル層,金層の順に積層された電極構造であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層は,前記SiC半導体に近い方から,ニッケルシリサイド層,チタンカーバイド層の順に積層されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。」

第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
当審拒絶理由2に引用された引用文献1(特開2000-208438号公報:原査定の理由となった平成27年6月4日付け拒絶理由通知書で「引用文献2」として引用された文献)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審において付与した。以下同じ。)

・「【0008】以下に,試料の作製方法と,評価方法およびその結果について述べる。基板には,鏡面研磨した4H型SiC単結晶を用いた。その厚さは,300μm,不純物濃度は,2×10^(18)cm^(-3)である。基板は,ダイサーにより5mm角のチップに切りわけた。本実施例では,(000,-1)C面から<11,-2,0>方向に約8度傾けて研磨した面を使用した。基板の前処理として,有機溶剤と酸による有機物除去,および熱酸化とふっ酸浸漬による表面の不完全層除去をおこなった。
【0009】以上の方法で処理した基板に,NiとTiの薄膜を同時にスパッタし,約800nmの厚さのNi合金層2を形成し,真空中(1×10^(-3)Pa)において,1000℃,2分間の加熱をおこなって試料Aとした。この試料AのNi合金層2上に更にNi層3を1μm形成したものを試料Bとした。」

・「【0015】図3は接触抵抗の比較図である。横軸は,試料の種類で,実施例の内容に対応している。図からTiを添加したNi合金でも接触抵抗は増大せず,むしろ僅かに減少していることがわかる。炭素層の存在が,密着性だけでなく,接触抵抗にも悪影響を与えていたと思われる。」

したがって,上記引用文献1には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「鏡面研磨した4H型SiC単結晶からなる,厚さが,300μm,不純物濃度が,2×10^(18)cm^(-3)である,ダイサーにより5mm角のチップに切りわけた基板の(000,-1)C面から<11,-2,0>方向に約8度傾けて研磨した面に,
NiとTiの薄膜を同時にスパッタし,約800nmの厚さのNi合金層を形成し,真空中(1×10^(-3)Pa)において,1000℃,2分間の加熱をおこなった記Ni合金層上に更にNi層を1μm形成した試料B。」

2 引用文献2について
当審拒絶理由2に引用された引用文献2(特開2006-332358号公報:原査定の理由となった平成27年6月4日付け拒絶理由通知書で「引用文献3」として引用された文献)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【請求項4】
炭化珪素(1)の表面にNi膜(2)を形成する工程と,
前記Ni膜(2)の上に被カーバイド金属膜(10)を形成する工程と,
熱処理を行うことで,前記Ni膜(2)をシリサイド化させ,前記炭化珪素(1)の表面にNiシリサイド膜(4)を形成すると共に,前記被カーバイド金属膜(10)にて金属カーバイド膜(11)を形成する工程と,
前記金属カーバイド膜(11)の上に配線用電極(6)を形成する工程とを含んでいることを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記被カーバイド金属膜(10)を形成する工程では,前記被カーバイド金属膜(10)として,Ti,W,Mo,Taのいずれか1つを形成するものであることを特徴とする請求項4に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理を900℃以上で行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。」

・「【0018】
請求項6に記載の発明では,熱処理を900℃以上で行うことを特徴としている。このように,熱処理を900℃以上とすることで,SiCとのコンタクト抵抗低減と,配線用電極(6)の高密着性との両立を実現できる。」

・「【0042】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。図3は,本実施形態のSiC半導体装置の製造工程を示したものである。
【0043】
まず,上記第1実施形態と同様,図3(a)に示されるように,SiC1,例えば4H-SiCが含まれる基板を用意する。
【0044】
そして,SiC1の表面にNi膜2を例えば200nm以上の膜厚で成膜したのち,さらにNi膜2の表面に被カーバイド金属膜に相当するTi膜10を成膜する。このとき,Ni膜2およびTi膜10に関しては,SiC1のうちコンタクトを取りたい部分が一部のみである場合には,その一部にのみ残るようにパターニングされる場合もある。
【0045】
この後,RTA装置を用いて,900℃以上,例えば1000℃で5分間の熱処理を行うというサリサイドプロセスを実施する。これにより,図3(b)に示されるように,Ni層2がシリサイド化され,SiC1の表面にNiシリサイド膜4が形成されると共に,このNiシリサイド膜4が形成される際に生成されるグラファイトがTi膜10と反応してTiカーバイド膜11が形成される。
【0046】
そして,図3(c)に示されるように,Tiカーバイド膜11の上に例えばAlを3μm成膜することで配線用電極6を形成する。この後の工程に関しては図示していないが,層間絶縁膜形成工程等を経て,配線用電極6にワイヤボンディングもしくははんだ接合などを行うことでSiC半導体装置が完成する。
【0047】
以上説明したSiC半導体装置の製造方法によれば,Ni膜2の上に被カーバイド金属膜となるTi膜10を形成しておき,Ni膜2をシリサイド化させる際にTi膜10にてTiカーバイド膜11が形成されるようにしている。したがって,ワイヤボンディングやはんだ接合との接合性の良好なTiカーバイド膜11の上に配線用電極6を形成することができるため,配線用電極6がTiカーバイド膜11から剥離することもない。このため,グラファイト層の除去工程を行わなくても,配線用電極6の剥がれを防止することが可能となる。
【0048】
なお,本実施形態でも,第1,第2実施形態と同様に,熱処理をRTA装置で行ったが,このようなRTA装置を用いれば,熱処理時間を短くできることから,グラファイト層5の生成を減らすことが可能になるという効果も得られる。また,熱処理を900℃以上という高い温度で行うことで,SiC1とのコンタクト抵抗低減と配線用電極の高密着性との両立を実現することができる。」

したがって,上記引用文献2には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「4H-SiCが含まれる基板を用意する工程と,
前記基板の表面にNi膜を例えば200nm以上の膜厚で成膜したのち,さらにNi膜の表面に被カーバイド金属膜に相当するTi膜を成膜する工程と,
この後,RTA装置を用いて,900℃以上,例えば1000℃で5分間の熱処理を行うサリサイドプロセスを実施して,前記Ni層をシリサイド化し,前記基板の表面にNiシリサイド膜を形成すると共に,このNiシリサイド膜が形成される際に生成されるグラファイトが前記Ti膜と反応してTiカーバイド膜が形成される工程と,
前記Tiカーバイド膜の上に例えばAlを3μm成膜することで配線用電極を形成する工程と,
を含むSiC半導体装置の製造方法であって,
前記RTA装置を用いることによって,熱処理時間を短くできることから,グラファイト層の生成を減らすことが可能になるという効果も得られる,
SiC半導体装置の製造方法。」

3 引用文献3について
当審拒絶理由2に引用された引用文献3(国際公開第2008/018342号 )には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「[0012] 本発明の実施形態を図1ないし図3を用いて説明する。
図1および図2は本発明に係る電極構造を有する縦型MOSFETの作製手順を示す図である。
図1(a)に示すように,4H-SiCn型(000-1)基板1を用意し,図1(b)に示すように,上面である(000-1)面にマスクを介してイオン注入とその後の活性化アニールによって,選択的に高濃度n型ソース2,高濃度p型領域3,およびpウェル4を形成した。次に,図1(c)に示すように,表面に950℃のウェット熱酸化でゲート絶縁膜5を形成し,その上にポリシリコンゲート電極6を形成した。更に,図1(d)に示すように,その上から層間絶縁膜7を堆積後,高濃度n型ソース2と高濃度p型領域3の両方に接するように,コンタクトホールを形成し,その中にニッケルとアルミの金属層8を形成した。次に,図1(e)に示すように,下面である(0001)面にニッケル9を60nm,チタン10を厚さ2?20nmで試料ごとに変化させ蒸着した。その後,図2(f)に示すように,水素を4%含むヘリウムガス中にて900℃で2分間保持,昇降温時間1分でアニールし,堆積した金属と炭化ケイ素の合金層からなるソースオーミック電極11とドレインオーミック電極12を形成した。これにより炭化ケイ素中に水素が取り込まれる。その後,図2(g)に示すように,ソースオーミック電極11上にはチタン50nm,アルミ2umからなるソース金属13を形成し,ドレインオーミック電極12上にはチタン,ニッケル,銀,金を順にそれぞれ,50nm,100nm,100nm,100nm堆積し,ドレイン金属14を形成した。」

したがって,上記引用文献3には,次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「4H-SiCn型(000-1)基板を用意する工程と,
前記基板の下面である(0001)面にニッケルを60nm,チタンを厚さ2?20nmで蒸着する工程と,
水素を4%含むヘリウムガス中にて900℃で2分間保持,昇降温時間1分でアニールし,堆積した金属と炭化ケイ素の合金層からなるソースオーミック電極とドレインオーミック電極を形成して,炭化ケイ素中に水素を取り込む工程と,
ソースオーミック電極上にはチタン50nm,アルミ2umからなるソース金属を形成し,ドレインオーミック電極上にはチタン,ニッケル,銀,金を順にそれぞれ,50nm,100nm,100nm,100nm堆積し,ドレイン金属を形成する工程とを含む,
縦型MOSFETの作製方法。」

4 引用文献4について
当審拒絶理由2に引用された引用文献4(特開平8-64801号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0006】もう一つのケースを以下に図を参照しながら説明する。図4(a)および(b)に,SiC半導体素子における熱処理前,後のシリコン酸化膜上のNi電極膜の断面図を示す。図4(a)において,SiC半導体基板1の表面上の一部にシリコン酸化膜3が形成されている。また,SiC基板1の表面層に,イオン注入等により高濃度n型領域2が形成されていて,Ni膜4がn領域2,シリコン酸化膜3の上に烝着され,パターニングされている。このケースは,特にMOSFETなどを形成する場合によく見られ,n型領域2とNi膜4によりオーミック接触をとり,かつ,シリコン酸化膜3などの絶縁物の上に,オーミツク接触する金属と同じ金属でゲート電極を形成するものである。,図4(b)は,n型領域2とオーミック接触するため1200℃で熱処理した後の状態を示す。先に述べたように,Ni膜4とn型領域2をオーミック接触させるには,1000?1200℃の熱処理が必要であり,このケースでは,その熱処理を加えると,n型領域2の上のNi膜4は一部反応してシリサイドを形成するものの,オーミック接触5は残る。一方シリコン酸化膜3の上では,Ni膜4とシリコン酸化膜3とが反応して,酸化膜上電極6となり,シリコン酸化膜3の厚さが減少する。シリコン酸化膜3の厚さがもともと薄い場合には,シリコン酸化膜3を貫通し,絶縁性が失われてしまうことがある。」

5 引用文献5について
当審拒絶理由2に引用された引用文献5(特開2002-93742号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0006】n型SiCに低抵抗オーミック・コンタクトを形成する方法として広く活用されている従来技術は,ニッケル(Ni),タングステン(W),チタン(Ti)のような電極膜をn型SiCに被着させて形成したオーミック電極構造体を800℃?1200℃の高温で熱処理する方法である。なかでもNiを用いたオーミック・コンタクトでは10^(-6)Ω・cm^(2)台の実用的なコンタクト抵抗値ρcが得られており,極めて有望なオーミック・コンタクトである。
【0007】図24はパワーデバイスや高周波デバイスなどで使用されるNi膜を用いたオーミック電極構造体の構造(以下において,「第1の従来技術」という。)を簡略化して示したものである。単結晶SiC基板1の表面に高不純物密度のn型SiC領域32が形成されている。この単結晶SiC基板1の表面には,更に熱酸化膜3及び上部絶縁膜4からなるフィールド絶縁膜5が形成されている。このフィールド絶縁膜5を貫通し,n型SiC領域32の表面を露出するように,開口部が配置されている。フィールド絶縁膜5の開口部の内部には,n型SiC領域32の表面に接した加熱反応層8と,この加熱反応層8の上部の電極膜(Ni膜素片)47が配置されている。加熱反応層8は,Ni膜を全面蒸着し,フォトリソグラフィとエッチングを用いて,図24に示す形状に,パターニングした後,熱処理することにより形成される。即ち,電極膜(Ni膜素片)47を設けたSiC基板1を,1000℃?1200℃で高温処理することにより,Ni-Si-Cが混合した導電性の加熱反応層8が形成される。電極膜(Ni膜素片)47の上部には,フィールド絶縁膜5の上部に延伸するように配線導体素片9が配置されている。」

6 引用文献6について
当審拒絶理由2に引用された引用文献6(特開2004-111596号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平8-64801号公報
【特許文献2】特開2002-93742号公報
SiCを用いたパワーデバイスの低オン抵抗化には,オーミック・コンタクトに対するコンタクト抵抗ρcの低減が重要な要素である。特に,低オン抵抗化のためには,パワーデバイスの主電極領域を細分化し,高密度にSiC基板上に配列する方法も採用される。このような,微細寸法化されたパワーデバイスの低オン抵抗化には,微細な開口部(コンタクト・ウィンドウ)の内部において,低いコンタクト抵抗ρcを得ることが極めて重要となってくる。また,パワーデバイスの高速スイッチング速度化のためにも,SiC領域に対するオーミック・コンタクトのコンタクト抵抗ρcは大きな問題である。
n型SiCに低抵抗オーミック・コンタクトを形成する方法として広く活用されている従来技術は,ニッケル(Ni),タングステン(W),チタン(Ti)のような電極膜をn型SiCに被着させて形成したオーミック電極構造体を800℃?1200℃の高温で熱処理する方法である。なかでもNiを用いたオーミック・コンタクトでは10^(-6)Ω・cm^(2)台の実用的なコンタクト抵抗値ρcが得られており,極めて有望なオーミック・コンタクトである。
上記のようなNi膜を用いたオーミック電極構造体としては,上記特許文献1および特許文献2に記載されたものがある。」

7 引用文献7について
当審拒絶理由2に引用された引用文献7(特開2011-176183号公報:原査定の理由となった平成27年6月4日付け拒絶理由通知書で「引用文献4」として引用された文献)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0026】
オーミック電極のSiC半導体基板に接する層は,鉄(Fe),ニッケル(Ni),シリコン(Si)の合金であるFe-Ni-Si合金層であることが好ましい。合金にシリコンが含まれることによって,オーミック電極のコンタクト抵抗がより低減される。また,鉄とニッケルが合金化して少なくともその一部がオーステナイトもしくはマルテンサイトとなることによって,SiC半導体基板から析出するカーボンが,オーミック電極とSiC半導体基板との界面や,オーミック電極のSiC半導体基板と逆側の面に堆積することを抑制できる。Fe系電極層がFe-Ni-Si合金層である場合,Niの組成比は5重量%以上かつ95重量%以下が好ましく,Siの組成比は2重量%以上かつ60重量%以下が好ましい。シンター処理温度は500℃以上1300℃以下が好ましい。

・「【0039】
(オーミック電極のシンター処理工程)
高真空のファーネスアニーリング装置で,オーミック電極のシンター処理工程を行った。シンター処理は,常圧のAr雰囲気下,1000℃のシンター処理温度で30分間行った。昇温速度は100℃/minとし,降温速度は100℃/minとした。」

8 引用文献8について
当審拒絶理由2に引用された引用文献8(国際公開2011/099338号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「[請求項1]n型のSiC半導体基体と,
前記SiC半導体基体の一方の主表面とオーミック接触するカソード電極と,
前記SiC半導体基体の他方の主表面に形成されたp型SiCからなる第1半導体領域と,
前記他方の主表面に形成されたn型SiCからなる第2半導体領域と,
前記第1半導体領域にオーミック接触するオーミック接合層と,
前記第2半導体領域にショットキー接触するショットキー接合層と,を備え,
前記オーミック接合層が,前記第1半導体領域側からチタンとニッケルとを含む合金からなると共に,その上にモリブデンを主成分とする金属層を有し,
前記ショットキー接続層が,モリブデンを主成分とする金属からなることを特徴とする半導体装置。」(請求の範囲)

9 引用文献9について
当審拒絶理由2に引用された引用文献9(国際公開2009/054140号公報:原査定の理由となった平成27年6月4日付け拒絶理由通知書で「引用文献5」として引用された文献)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「[0084](第2の実施形態)
以下,本発明による半導体素子の第2の実施形態を説明する。本実施形態では,半導体素子として縦型ショットキーダイオードを例に挙げて説明する。
[0085]図7は,本発明による半導体素子の第2の実施形態であるショットキーダイオード60の例を示す断面図である。ショットキーダイオード60は炭化珪素基板11を含む。炭化珪素基板11は例えば4H-SiC(0001)面から<11-20>方向にθ度(0≦θ≦10度)傾いた主面を有している。炭化珪素基板11の主面はSi面であり,裏面はC面である。ここで主面の面粗度は裏面の面粗度よりも小さい。炭化珪素基板11の不純物濃度は1x10^(18)cm^(-3)以上である。炭化珪素基板11の主面上には半導体層12が設けられている,半導体層12はエピタキシャル成長によって形成されており,n型の4H-SiC(不純物濃度が1x10^(14)?1x10^(17)cm^(-3)程度,厚さ5ミクロン以上)である。半導体層12と炭化珪素基板11との間にバッファー層12bが設けられていてもよい。
[0086]半導体層12の表面近傍には電界集中を緩和するためのガードリング領域63が設けられている。ガードリング領域63は,半導体層12にアルミニウムを注入することによって形成され,例えば深さは約600nmであり,平均濃度は約1x10^(18)cm^(-3)程度である。
[0087]半導体層12の表面にはショットキー電極層6aが設けられている。ショットキー電極層6aは,例えばTiやNi,Mo,Wなど,半導体層12との間でショットキー接合が形成される金属からなる。厚さは50?200nm程度である。このショットキー電極層6aの端面はガードリング領域63と接している。ショットキー電極層6a上には上部配線電極層6bが設けられている。上部配線電極層6bは,例えばアルミニウムからなり,厚さは,約3μmである。
[0088]ガードリング領域63を覆うように絶縁層69が設けられている。絶縁層69は例えばSiO_(2)からなる。この絶縁層69は,半導体層12を酸化することによって得られた酸化層であってもよい。上部配線電極層6bの端面を覆うようにパッシベーション層6cが設けられている。パッシベーション層6cと絶縁層69は一体化していてもよい。
[0089]炭化珪素基板11の裏面には,裏面オーミック電極層1dが設けられている。裏面オーミック電極層1dは,第1の実施形態と同様の構造を備えている。具体的には,図1(b)に示すように,裏面オーミック電極層1dは反応層1daと窒化チタン層1dbとを有する。反応層1daは,炭化珪素基板11の裏面側に位置し,チタン,シリコンおよび炭素を含む。また,窒化チタン層1dbは,炭化珪素基板の裏面と反対側であって,反応層1daの表面に位置しており,主として窒化チタンからなる。
[0090]窒化チタン層1dbは炭素も含んでいるが,炭素の含有量は,裏面オーミック電極層1d全体で見た場合,炭化珪素基板11側のほうが炭化珪素基板11の裏面と反対側よりも高くなっている。反応層1daおよび窒化チタン層1dbの好ましい厚さは第1の実施形態と同様である。
[0091]裏面オーミック電極層1dの炭化珪素基板11の裏面と反対側の面上には,裏面保護層1eが設けられている。裏面保護層1eは,例えばパッシベーション層1cのエッチングに対して耐性を有し,かつ導電性を有する。第1の実施形態と同様,パッシベーション層1cがSiNからなる場合,裏面保護層1eはアルミニウムによって形成されている。
[0092]裏面保護層1eの裏面オーミック電極層1dと反対側の面には,金属電極層1fが設けられている。図7では金属電極層1fは3層で示されているが単層であっても多層であってもよい。金属電極層1fは例えばTi層1fa,Ni層1fbおよびAg層1fcを含む。このとき,Ti層1faが裏面保護層1eに接する。MOSFET10をTO-220等のパッケージに収納する場合,パッケージのリードフレームへMOSFET10をハンダ付けする必要があるため,MOSFET10は金属電極層1fを備えていることが好ましい。」

10 引用文献10について
当審拒絶理由2に引用された引用文献10(特開2005-277240号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0007】
(加熱処理)
上記で得られた試料を超高真空チャンバ内で600℃から1000℃で5分から45分間加熱処理を行った。具体的には,600℃で45分,800℃で45分,1000℃で45分である。」

11 引用文献11について
原査定の理由となった,平成27年6月4日付け拒絶理由通知書で引用された引用文献11(特開2006-344688号公報:平成27年6月4日付け拒絶理由通知書で「引用文献1」として引用された文献)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【請求項11】
炭化珪素(SiC)基板を用いた半導体装置の製造方法であって,
前記SiC基板の表面に,第2金属からなる層を形成する第2金属層形成工程と,
前記第2金属層上に,第1金属からなる層を形成する第1金属層形成工程と,
前記第2金属層/前記第1金属層が形成されたSiC基板を,600℃以上で熱処理する熱処理工程とを有してなり,
前記第1金属が,ニッケル(Ni)もしくはニッケル(Ni)合金であり,
前記第2金属が,チタン(Ti),タンタル(Ta)もしくはタングステン(W)であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1金属が,Niであり,
前記第2金属が,Tiであることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
<途中省略>
【請求項14】
前記熱処理工程における熱処理温度が,900℃以上,1100℃以下であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
<途中省略>
【請求項17】
前記熱処理工程によって,前記第2金属層と前記第1金属層による熱処理層が形成されたSiC基板の表面に,白金(Pt),タングステン(W)もしくはチタン-タングステン(Ti-W)合金からなるバリア層を形成するバリア層形成工程と,
前記バリア層上に,金(Au)もしくは金(Au)合金からなる第4金属層を形成する第4金属層形成工程とを有することを特徴とする請求項11乃至16のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。」

・「【0064】
図2(b)に示す熱処理工程の熱処理温度は,NiSi_(2)層11aによるSiC基板1との良好なオーミック特性を確保するためには,特に,900℃以上,1100℃以下であることが好ましい。」

したがって,上記引用文献11には,次の発明(以下「引用発明11」という。)が記載されていると認められる。

「SiC基板の表面に,チタン(Ti)からなる層を形成する第2金属層形成工程と,
前記第2金属層上に,ニッケル(Ni)からなる層を形成する第1金属層形成工程と,
前記第2金属層/前記第1金属層が形成されたSiC基板を,600℃以上で熱処理する熱処理工程と,
前記熱処理工程によって,前記第2金属層と前記第1金属層による熱処理層が形成されたSiC基板の表面に,白金(Pt),タングステン(W)もしくはチタン-タングステン(Ti-W)合金からなるバリア層を形成するバリア層形成工程と,
前記バリア層上に,金(Au)もしくは金(Au)合金からなる第4金属層を形成する第4金属層形成工程とを有する,
炭化珪素(SiC)基板を用いた半導体装置の製造方法であって,
前記熱処理工程の熱処理温度は,NiSi_(2)層によるSiC基板との良好なオーミック特性を確保するためには,特に,900℃以上,1100℃以下であることが好ましい炭化珪素(SiC)基板を用いた半導体装置の製造方法。」

12 引用文献12について
原査定で引用された引用文献12(特開2006-261624号公報:原査定で「引用文献6」として引用された文献)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0013】
本実施形態において基板10上に堆積された金属12は,ニッケルからなる。しかしながら,当該金属は,ニッケル(Ni),チタン(Ti),コバルト(Co),タングステン(W),モリブデン(Mo)からなる遷移金属群から選択される任意の金属であってよい。また,金属12は,この群にある金属の組み合わせであってもよい。金属12は,以下に詳しく説明する固相化学反応を操作するために,50オングストローム以上,5000オングストローム以下,より好ましくは,500オングストローム以上,1000オングストローム以下の所定の厚さを有する。」

・「【0016】
図1(b)に示すように,基板10は,基板10と堆積金属12の間で固相化学反応が起きるように,高温でアニールされる。その結果,基板10中に,基板10とは異なる変質特性を有する変質層14が形成される。また,上記固相化学反応は,以降において一般的に珪化物18として言及する遷移金属珪化物(例えば,Ni_(2)Si)とナノ結晶グラファイト層16とからなる,副生物を形成する。高温は,700℃以上,1300℃以下であってよい。しかしながら,後述するように,高温は,900℃以上,1100℃以下がより好ましい。」

・「【0018】
図1(c)に示すように,基板10は,基板10の表面から上記該固相化学反応の副生物を除去するために,選択的にエッチングされる。さらには,特に,珪化物18とナノ結晶グラファイト層16が除去される。上記選択エッチングは,液状もしくはガス状のエッチング剤中の処理で実施されてよい。」

・「【0020】
次に,図1(d)に示すように,遷移群金属からなる金属膜20が,オーミック接続を形成するように,変質層14上に堆積される。金属膜20の堆積に対する接続の幾何学形状は,任意の適するパターニング方法によって形成されてよい。変質層14は,金属膜20の堆積後に高温アニールをすることなく,オーミック接続の形成を可能とする。例えば,金属膜20の堆積は,室温であってよい。
【0021】
堆積された当該金属は良好なオーミック接続を生じるが,良好な界面接続を促進するために,この段階で,低温(600℃以下)アニールが実行されことが好ましい。
【0022】
以上のようにして,第1の実施形態に従った方法においては,変質炭化珪素層14が,高温アニール工程を必要としない,さらには室温であってもよい,オーミック接続の形成を可能とする。従来の方法においては,遷移金属と炭化珪素の間の固相化学反応による生成物の存在のためというより,下にある炭化珪素の電気特性に関する変更のために,オーミック接続が,高温アニールの間に形成される。以上説明したように,堆積された金属12のアニールが,下にある炭化珪素の特性を変質させる。」


第4 対比・判断
・引用文献1を主引例とした検討
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。

・引用発明1の「Ni合金層上に更にNi層を1μm形成した」構造,「『NiとTiの薄膜を同時にスパッタし』て形成した『約800nmの厚さのNi合金層』」,「『真空中(1×10^(-3)Pa)において,1000℃,2分間の加熱をおこなっ』た『前記Ni合金層』」,「前記Ni合金層上に更に形成した『Ni層』」及び「試料B」は,それぞれ,本願発明1の「電極構造」,「ニッケル及びチタンを含む層」,「チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層」,「金属層」及び「半導体デバイス」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「SiC半導体に電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法であって,
前記SiC半導体に,ニッケル及びチタンを含む層を形成した後,加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し,前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層上に金属層を形成することにより,上記電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法。」

(相違点)
・相違点1:一致点に係る加熱が,本願発明1においては,「1150℃以上1350℃以下」の温度で行われているのに対して,引用発明1では,「1000℃」で行われている点。

・相違点2:一致点に係る加熱が,本願発明1においては,「10℃/分以上100℃/分以下」の昇温速度で行われているのに対して,引用発明1では,特定されていない点。

・相違点3:一致点に係る加熱が,本願発明1においては,「30分以上120分以下」の加熱保持時間で行われているのに対して,引用発明1では,「2分間」とされている点。

(2)相違点についての判断
ア 上記相違点1及び3について検討すると,引用発明1において,「1000℃」及び「2分間」とされている加熱条件を,それぞれ,「1150℃以上1350℃以下」及び「30分以上120分以下」とする動機を,引用文献1ないし12の記載からは見いだすことはできない。

イ 一方,本願明細書には,以下の記載がある。
・「本実施例では,SiC半導体上に,チタン及びニッケルを含む層を積層した後,加熱によりチタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を形成させる際の,該加熱の条件について,複数の条件を設定して調べた。赤外線ランプを備えた高速アニール装置(RTA)を用いて,アルゴン雰囲気中,昇温速度10℃/分でかつ加熱温度条件を異ならせて作製したオーミック電極のシート抵抗を測定した。加熱保持時間は30分である。測定結果を表1に示す。・・・また,加熱温度1150℃以上であれば,シート抵抗が0.39Ω/□以下とさらに低くでき,かつばらつきも0.06以下とさらに改善される。さらに,加熱温度1200℃以上であれば,シート抵抗が0.37Ω/□以下を示し,かつばらつきも0.05以下を示し,さらに改善される。加熱温度が1350℃を超えると,シート抵抗及びばらつきも優れているが,改善の効果が特に向上しない。」(【0039】-【0041】)

・「次に,昇温速度10℃/分,加熱温度1100℃において加熱保持時間を異ならせて作製した複数のオーミック電極のシート抵抗を測定した。測定結果を表2に示す。・・・さらに,加熱保持時間が,5分以上,10分以上,20分以上にすれば,より改善される。しかし,加熱保持時間を長くしても改善の効果が特に向上しないので,加熱保持時間の上限は,120分以下とすることが好ましく,30分以下でもよい。さらに,加熱温度1100℃,1150℃,1200℃,1250℃,1300℃,1350℃,1400℃,1450℃,1500℃,昇温速度50℃/分,100℃/分で作製したサンプルについて測定したところ,図10と同様の結果が得られた。」(【0043】-【0047】)

ウ そうすると,本願発明1の,「1150℃以上1350℃以下」の温度,「10℃/分以上100℃/分以下」の昇温速度,及び,「30分以上120分以下」の加熱保持時間の数値範囲の限定には技術的な意義が存在し,これらの値を同時に満たす場合には,シート抵抗が低く,かつばらつきも小さいオーミックコンタクト電極を得ることができるという格別の効果を奏するものと理解することができる。

エ してみれば,引用発明1において,上記相違点1及び3について,本願発明1の構成とすることを,当業者が適宜なし得たことであるとも認めることはできない。

オ したがって,本願発明1は,他の相違点については検討するまでもなく,当業者であっても引用発明1,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は,いずれも本願発明1をさらに限定した発明であって,上記相違点1ないし3をいずれも備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明1,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

・引用文献2を主引例とした検討
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると,次のことがいえる。

・引用発明2の「配線用電極」,「『Ni膜を例えば200nm以上の膜厚で成膜したのち,さらにNi膜の表面に被カーバイド金属膜に相当するTi膜を成膜』して得た積層体」,「『Tiカーバイド膜が形成され』た『Niシリサイド膜』」,「Al」及び「SiC半導体装置」は,それぞれ,本願発明1の「電極構造」,「ニッケル及びチタンを含む層」,「チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層」,「金属層」及び「半導体デバイス」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明2との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「SiC半導体に電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法であって,
前記SiC半導体に,ニッケル及びチタンを含む層を形成した後,加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し,前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層上に金属層を形成することにより,上記電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法。」

(相違点)
・相違点1:一致点に係る加熱が,本願発明1においては,「1150℃以上1350℃以下」の温度で行われているのに対して,引用発明2では,「900℃以上,例えば1000℃」で行われている点。

・相違点2:一致点に係る加熱が,本願発明1においては,「10℃/分以上100℃/分以下」の昇温速度で行われているのに対して,引用発明2では,「RTA装置を用い」ることが特定されているだけで,具体的な昇温速度が記載されていない点。

・相違点3:一致点に係る加熱が,本願発明1においては,「30分以上120分以下」の加熱保持時間で行われているのに対して,引用発明2では,「5分間」とされている点。

(2)相違点についての判断
ア 上記相違点1ないし3について検討すると,引用発明2において,「1000℃」,「RTA装置を用い」た場合の昇温速度,及び「5分間」とされている加熱条件を,それぞれ,「1150℃以上1350℃以下」,「10℃/分以上100℃/分以下」及び「30分以上120分以下」とする動機を,引用文献1ないし12の記載からは見いだすことはできない。

イ 一方,上記「・引用文献1を主引例とした検討 1(2)」のとおり,本願明細書の記載から,本願発明1の,「1150℃以上1350℃以下」の温度,「10℃/分以上100℃/分以下」の昇温速度,及び,「30分以上120分以下」の加熱保持時間の数値範囲の限定には技術的な意義が存在し,これらの値を同時に満たす場合には,シート抵抗が低く,かつばらつきも小さいオーミックコンタクト電極を得ることができるという格別の効果を奏するものと理解することができるから,引用発明2において,上記相違点1ないし3について,本願発明1の構成とすることを,当業者が適宜なし得たことであるとも認めることはできない。

ウ しかも,引用発明2は,「前記RTA装置を用いることによって,熱処理時間を短くできることから,グラファイト層の生成を減らすことが可能になるという効果も得られる」という特徴を有するところ,引用発明2において,「1000℃」,「RTA装置を用い」た場合の昇温速度,及び「5分間」とされている加熱条件を,それぞれ,「1150℃以上1350℃以下」,「10℃/分以上100℃/分以下」及び「30分以上120分以下」と変更することは,熱処理時間が長くなり,グラファイト層の生成が増加することに繋がることが予測され,当業者がこのような加熱条件の変更を容易になし得たとは認められない。
すなわち,引用発明2において,相違点1ないし3について本願発明1の構成を採用することには阻害事由が存在するといえる。

エ したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明2,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は,いずれも本願発明1をさらに限定した発明であって,上記相違点1ないし3をいずれも備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明2,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

・引用文献3を主引例とした検討
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明3とを対比すると,次のことがいえる。

・引用発明3の「『ソースオーミック電極』,『ドレインオーミック電極』」,「『ニッケルを60nm,チタンを厚さ2?20nmで蒸着する』ことで得られた層」,「堆積した金属と炭化ケイ素の合金層」,「『チタン50nm,アルミ2umからなるソース金属』,『チタン,ニッケル,銀,金』」及び「縦型MOSFET」は,それぞれ,本願発明1の「電極構造」,「ニッケル及びチタンを含む層」,「チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層」,「金属層」及び「半導体デバイス」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明3との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「SiC半導体に電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法であって,
前記SiC半導体に,ニッケル及びチタンを含む層を形成した後,加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し,前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層上に金属層を形成することにより,上記電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法。」

(相違点)
・相違点1:一致点に係る加熱が,本願発明1においては,「1150℃以上1350℃以下」の温度で行われているのに対して,引用発明3では,「900℃」で行われている点。

・相違点2:一致点に係る加熱が,本願発明1においては,「10℃/分以上100℃/分以下」の昇温速度で行われているのに対して,引用発明3では,「昇降温時間1分」すなわち,略900℃/分である点。

・相違点3:一致点に係る加熱が,本願発明1においては,「30分以上120分以下」の加熱保持時間で行われているのに対して,引用発明3では,「2分間」とされている点。

(2)相違点についての判断
ア 上記相違点1ないし3について検討すると,引用発明3において,「900℃」,「略900℃/分」及び「2分間」とされている加熱条件を,それぞれ,「1150℃以上1350℃以下」及び「30分以上120分以下」とする動機を,引用文献1ないし12の記載からは見いだすことはできない。

イ 一方,上記「・引用文献1を主引例とした検討 1(2)」のとおり,本願明細書の記載から,本願発明1の,「1150℃以上1350℃以下」の温度,「10℃/分以上100℃/分以下」の昇温速度,及び,「30分以上120分以下」の加熱保持時間の数値範囲の限定には技術的な意義が存在し,これらの値を同時に満たす場合には,シート抵抗が低く,かつばらつきも小さいオーミックコンタクト電極を得ることができるという格別の効果を奏するものと理解することができるから,引用発明1において,上記相違点1ないし3について,本願発明1の構成とすることを,当業者が適宜なし得たことであるとも認めることはできない。

ウ してみれば,引用発明3において,上記相違点1及び3について,本願発明1の構成とすることを,当業者が適宜なし得たことであるとも認めることはできない。

エ したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明3,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は,いずれも本願発明1をさらに限定した発明であって,上記相違点1ないし3をいずれも備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明3,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

・引用文献11を主引例とした検討
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。

・引用発明11の「『前記第2金属層と前記第1金属層による熱処理層が形成されたSiC基板の表面に,白金(Pt),タングステン(W)もしくはチタン-タングステン(Ti-W)合金からなるバリア層を形成するバリア層形成工程と,前記バリア層上に,金(Au)もしくは金(Au)合金からなる第4金属層を形成する第4金属層形成工程』によって形成された積層体」,「前記第2金属層/前記第1金属層」,「前記第2金属層と前記第1金属層による熱処理層」,「金(Au)もしくは金(Au)合金からなる第4金属層」及び「炭化珪素(SiC)基板を用いた半導体装置」は,それぞれ,本願発明1の「電極構造」,「ニッケル及びチタンを含む層」,「チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層」,「金属層」及び「半導体デバイス」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明11との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「SiC半導体に電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法であって,
前記SiC半導体に,ニッケル及びチタンを含む層を形成した後,加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し,前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層上に金属層を形成することにより,上記電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法。」

(相違点)
・相違点1:一致点に係る加熱が,本願発明1においては,「1150℃以上1350℃以下」の温度で行われているのに対して,引用発明11では,「『600℃以上』,『NiSi_(2)層によるSiC基板との良好なオーミック特性を確保するためには,特に,900℃以上,1100℃以下であることが好ましい』」で行われている点。

・相違点2:一致点に係る加熱が,本願発明1においては,「10℃/分以上100℃/分以下」の昇温速度で行われているのに対して,引用発明11では,特定されていない点。

・相違点3:一致点に係る加熱が,本願発明1においては,「30分以上120分以下」の加熱保持時間で行われているのに対して,引用発明11では,特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ア 上記相違点1ないし3について検討すると,引用発明11において,「『600℃以上』,『NiSi_(2)層によるSiC基板との良好なオーミック特性を確保するためには,特に,900℃以上,1100℃以下であることが好ましい』」とされている加熱条件を,「1150℃以上1350℃以下」となし,さらに,引用発明11において特定されていない,「昇温時間」及び「加熱保持時間」を,それぞれ,「10℃/分以上100℃/分以下」及び「30分以上120分以下」とする動機を,引用文献1ないし12の記載からは見いだすことはできない。

イ 一方,上記「・引用文献1を主引例とした検討 1(2)」のとおり,本願明細書の記載から,本願発明1の,「1150℃以上1350℃以下」の温度,「10℃/分以上100℃/分以下」の昇温速度,及び,「30分以上120分以下」の加熱保持時間の数値範囲の限定には技術的な意義が存在し,これらの値を同時に満たす場合には,シート抵抗が低く,かつばらつきも小さいオーミックコンタクト電極を得ることができるという格別の効果を奏するものと理解することができるから,引用発明11において,上記相違点1ないし3について,本願発明1の構成とすることを,当業者が適宜なし得たことであるとも認めることはできない。

ウ しかも,引用発明11は,「前記熱処理工程の熱処理温度は,NiSi_(2)層によるSiC基板との良好なオーミック特性を確保するためには,特に,900℃以上,1100℃以下であることが好ましい」という特徴を有するところ,引用発明11において,当該熱処理温度を,「1150℃以上1350℃以下」と変更することは,熱処理温度が,「好ましい」とされる範囲を外れることから,当業者がこのような加熱条件の変更を容易になし得たとは認められない。
すなわち,引用発明11において,相違点1について本願発明1の構成を採用することには阻害事由が存在するといえる。

エ したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明11,及び,引用文献1ないし12に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は,いずれも本願発明1をさらに限定した発明であって,上記相違点1ないし3をいずれも備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても引用発明11,及び,引用文献1ないし11に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 当審拒絶理由2について
1 特許法第36条第6項第1号について
当審では,「本願の請求項1で特定する,「1150℃以上1350℃以下」の加熱温度範囲のうち,少なくとも,加熱温度が1150℃に近い場合において,加熱保持時間が30分未満,特に,0分に近い場合に,「裏面コンタクト抵抗が十分に低く且つ均質な」という効果を,上記した発明の課題が解決される程度に奏するとは認識することはできない。してみれば,請求項の記載には,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されておらず,あるいは,請求項の記載は,発明の詳細な説明において効果があることが示された範囲を超えているといえる。請求項1を引用する請求項2ないし4も同様といえる。」との拒絶の理由を通知しているが,平成29年8月9日付けの補正において,補正後の請求項1が,「加熱保持時間が30分以上120分以下の加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し」と補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第29条第2項について
当審では,請求項1ないし4に係る発明は,上記引用文献1ないし10に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由を通知した。
その後,平成29年8月9日付けの手続補正書により,請求項1ないし4は,それぞれ,「加熱保持時間が30分以上120分以下の加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し」という構成を備えるものと補正された。
そして,上記「第4 ・引用文献1を主引例とした検討 1(2)」のとおり,本願発明1ないし4の「1150℃以上1350℃以下」の温度,「10℃/分以上100℃/分以下」の昇温速度,及び,「30分以上120分以下」の加熱保持時間の数値範囲の限定には技術的な意義が存在し,これらの値を同時に満たす場合には,シート抵抗が低く,かつばらつきも小さいオーミックコンタクト電極を得ることができるという格別の効果を奏するものと認められるから,請求項1ないし4に係る発明は,上記引用文献1ないし10に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものともいえない。
したがって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由は解消した。

第6 当審拒絶理由1について
・特許法第29条第2項について
当審では,請求項1ないし5に係る発明は,前記した引用文献1ないし9に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由を通知しているが,平成29年8月9日付けの補正により,請求項1ないし4は,それぞれ,「加熱保持時間が30分以上120分以下の加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し」という構成を備えるものと補正された。
そして,上記「第4 ・引用文献1を主引例とした検討 1(2)」のとおり,本願発明1ないし4の「1150℃以上1350℃以下」の温度,「10℃/分以上100℃/分以下」の昇温速度,及び,「30分以上120分以下」の加熱保持時間の数値範囲の限定には技術的な意義が存在し,これらの値を同時に満たす場合には,シート抵抗が低く,かつばらつきも小さいオーミックコンタクト電極を得ることができるという格別の効果を奏するものと認められるから,請求項1ないし4に係る発明は,上記引用文献1ないし9に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものともいえない。
したがって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由は解消した。

第7 原査定の概要及び原査定についての判断
ア 原査定は,請求項1ないし5に係る発明は,以下の引用文献13ないし18に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

イ 一方,平成29年8月9日付けの補正により,請求項1ないし4は,それぞれ,「加熱保持時間が30分以上120分以下の加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し」という構成を備えるものと補正された。
そして,上記「第4 ・引用文献1を主引例とした検討 1(2)」のとおり,本願発明1ないし4の「1150℃以上1350℃以下」の温度,「10℃/分以上100℃/分以下」の昇温速度,及び,「30分以上120分以下」の加熱保持時間の数値範囲の限定には技術的な意義が存在し,これらの値を同時に満たす場合には,シート抵抗が低く,かつばらつきも小さいオーミックコンタクト電極を得ることができるという格別の効果を奏するものと認められる。

ウ そして,前記「1150℃以上1350℃以下」の温度,「10℃/分以上100℃/分以下」の昇温速度,及び,「30分以上120分以下」の加熱保持時間の数値範囲を同時に満たす加熱処理は,以下の引用文献13ないし18のいずれにも記載されておらず,また,本願の出願日前において周知技術であるともいえない。

エ したがって,本願発明1ないし4は,当業者であっても引用文献13ないし18に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

引 用 文 献 等 一 覧
13.特開2006-344688号公報(引用文献11と同一文献)
14.特開2000-208438号公報(引用文献1と同一文献)
15.特開2006-332358号公報(引用文献2と同一文献)
16.特開2011-176183号公報(引用文献7と同一文献)
17.国際公開第2009/054140号(引用文献9と同一文献)
18.特開2006-261624号公報(引用文献12と同一文献)

第8 むすび
以上のとおり,本願発明1ないし4は,当業者が引用文献13ないし引用文献18に記載された発明又は技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-28 
出願番号 特願2012-33772(P2012-33772)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長谷川 直也佐藤 靖史小山 満  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 小田 浩
加藤 浩一
発明の名称 SiC半導体デバイスの製造方法  
代理人 阪本 朗  
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