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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1334898
審判番号 不服2017-3045  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-01 
確定日 2017-12-12 
事件の表示 特願2012-211144「情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、及び情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月17日出願公開、特開2014- 67164、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月25日の出願であって、平成28年7月4日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年9月7日付けで意見書が提出され、平成28年11月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年3月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年7月28日付けで当審から拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成29年9月15日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年11月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1、13-15に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.本願請求項1-15に係る発明は、以下の引用文献A、Bに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2010-176330号公報
B.特開2002-000939号公報


第3 平成29年7月28日付け当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-5、11-15に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.本願請求項1-15に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2012-44474号公報

第4 本願発明
本願請求項1-15に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明15」という。)は、平成29年9月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-15は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
第1の表示オブジェクトに対する第1の指示に応じて、当該第1の表示オブジェクトからスライド操作による第2の指示を行うための操作領域を展開して表示する操作領域表示手段と、
前記操作領域における前記第2の指示に応じて連続的に変化するパラメータを用いた情報処理を行なう情報処理手段と、
を備え、
前記操作領域の展開によって、前記第1の指示及び前記第2の指示とは異なる第3の指示をするための第3の表示オブジェクトが隠されることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記操作領域は、前記第1の表示オブジェクトを基準として少なくとも2つの方向に表示されることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記2つの方向のうちの一方の方向への操作は前記パラメータの正方向の変化に対応しており、他方の方向への操作は前記パラメータの負方向の変化に対応していることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第2の指示の指示位置が前記第1の指示の指示位置になったとき、前記パラメータが前記第1の指示の指示位置の値になることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記操作領域は、前記第1の表示オブジェクトから連続していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記情報処理手段は、前記第1の指示から連続した前記第2の指示に応じた情報処理を行なうことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記情報処理手段は、前記スライド操作に応じてリアルタイムに情報処理を行なうことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記情報処理手段は、前記パラメータに従って第2の表示オブジェクトに対する情報処理を行なうことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記第2の表示オブジェクトは、仮想空間内の表示オブジェクトであり、前記パラメータに従って変化することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記操作領域表示手段は、前記第2の指示が終了すると前記操作領域の表示を終了することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記情報処理は、前記第1の表示オブジェクトとは異なる処理対象に対する情報処理であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記パラメータは、前記スライド操作の変化特性に応じて連続的に変化することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項13】
第1の表示オブジェクトに対する第1の指示に応じて、当該第1の表示オブジェクトからスライド操作による第2の指示を行うための操作領域を展開して表示する操作領域表示手段と、
前記操作領域における前記第2の指示に応じて連続的に変化するパラメータを用いた情報処理を行なう情報処理手段と、
を備え、
前記操作領域の展開によって、前記第1の指示及び前記第2の指示とは異なる第3の指示をするための第3の表示オブジェクトが隠されることを特徴とする情報処理システム。
【請求項14】
第1の表示オブジェクトに対する第1の指示に応じて、当該第1の表示オブジェクトからスライド操作による第2の指示を行うための操作領域を展開して表示する操作領域表示ステップと、
前記操作領域における前記第2の指示に応じて連続的に変化するパラメータを用いた情報処理を行なう情報処理ステップと、
を含み、
前記操作領域の展開によって、前記第1の指示及び前記第2の指示とは異なる第3の指示をするための第3の表示オブジェクトが隠されることを特徴とする情報処理方法。
【請求項15】
コンピュータを、
第1の表示オブジェクトに対する第1の指示に応じて、当該第1の表示オブジェクトからスライド操作による第2の指示を行うための操作領域を展開して表示する操作領域表示手段と、
前記操作領域における前記第2の指示に応じて連続的に変化するパラメータを用いた情報処理を行なう情報処理手段と、
として機能させ、
前記操作領域の展開によって、前記第1の指示及び前記第2の指示とは異なる第3の指示をするための第3の表示オブジェクトが隠されることを特徴とする情報処理プログラム。」


第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
平成29年7月28日付けの当審拒絶理由通知の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0014】
まず、本実施形態の情報処理装置の構成例について、図1を参照して説明する。
【0015】
本実施形態の情報処理装置は、図1に示すように、制御部1、記憶部2、操作部3、表示部4を有する。制御部1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)によって実現される。記憶部2は、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の不揮発メモリによって実現される。操作部3は、例えばマウス、キーボード、タッチパネル等によって実現される。表示部4は、例えば液晶ディスプレイ等によって実現される。
【0016】
制御部1は、表示制御手段11、操作検出手段12、時系列データ処理手段13、操作速度検出手段14を有する。
【0017】
表示制御手段11は、表示部4の表示を制御する手段である。例えば、表示制御手段11は、ユーザインターフェース画面を表示部4に表示させ、ユーザの操作や時系列データの再生に係る処理(詳細は後述)に応じてユーザインターフェース画面の表示を制御する。なお、ユーザインターフェース画面の詳細は、図2を用いて後述する。
【0018】
操作検出手段12は、ユーザが操作部3を用いて行う操作を検出する手段である。例えば、操作検出手段12は、ユーザインターフェース画面において行われるユーザの操作を検出する。
【0019】
時系列データ処理手段13は、時系列データの再生に係る処理を行う手段である。時系列データの再生に係る処理としては、例えば、通常の再生の他に、早送り、巻き戻し、停止、一時停止等がある。時系列データ処理手段13は、ユーザの操作に従って時系列データの再生に係る処理を行う。
【0020】
操作速度算出手段14は、ユーザの操作の速度を算出する手段である。例えば、ユーザの操作が、表示部4に表示されるカーソルをマウス操作によって所定の方向に移動させる操作である場合、操作速度算出手段14は、移動したカーソルの距離と、カーソルの移動にかかった時間とから、カーソルの移動の速度(ユーザの操作の速度の一例)を算出する。なお、操作速度算出手段14で速度が算出される対象となるユーザの操作は、予め定められているとする。
【0021】
記憶部2は、UI(User Interface)データ21、近傍時間軸データ22、時系列データ23を記憶する。
【0022】
UIデータ21は、ユーザインターフェース画面を示すデータである。UIデータ21には、ユーザインターフェース画面を構成する各種GUI(Graphical User Interface)部品のデータが含まれる。各種GUI部品については、図2を用いて後述する。
【0023】
近傍時間軸データ22は、ユーザインターフェース画面上に表示される近傍時間軸を示すデータである。ユーザインターフェース画面には、時系列データ全体の再生時間を示す全体時間軸が表示されるが(詳細は後述)、近傍時間軸は、その全体時間軸とは別に、ユーザインターフェース画面上に表示されるものである。近傍時間軸は、時系列データの現在の再生点の近傍の時間軸であり、全体時間軸よりも拡大された時間幅を示す。近傍時間軸が示す時間幅は固定であり、時系列データ全体の再生時間には依存しない。例えば、現在の再生点の前後30秒というように、予め定められた時間幅の時間軸がこの近傍時間軸として表示される。そして、本実施形態では、時間幅の異なる近傍時間軸を予め複数用意するようにする。よって、近傍時間軸データ22は、時間幅の異なる近傍時間軸毎に複数用意される。これら複数の近傍時間軸の具体例については、後述する。
【0024】
時系列データ23は、時系列データ処理手段13によって再生されるデータである。例としては、動画データや音楽データが挙げられる。この時系列データ23は、例えば、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等の可搬性記録媒体からリッピングされたり、インターネット上のサーバからダウンロードされたりして、記憶部2に保存されたものである。なお、図1の例では、時系列データ23は、記憶部23に予め保存されている形態としたが、これに限定されない。例えば、時系列データ23は、その再生時において、外部(例えば、インターネット上のサーバや可搬性記録媒体)から情報処理装置に直接入力される形態であってもよい。」

イ.「【0026】
次に、本実施形態のユーザインターフェース画面の例について、図2を参照して説明する。
【0027】
図2に示すユーザインターフェース画面は、以下のようにして表示される。まず、ユーザが操作部3を用いて、時系列データ23の再生を指示する操作、又は、ユーザインターフェース画面の表示を指示する操作を行う。操作検出手段12がその操作を検出すると、表示制御手段13(審判注:「表示制御手段11」の誤記と認められる。)は、記憶部2からUIデータ21を読み出し、そのUIデータ21に基づいて表示部4の表示を制御する。これにより、図2に示すユーザインターフェース画面が表示部4に表示される。
【0028】
表示部4に表示されるユーザインターフェース画面は、図2に示すように、画面の上部に画像表示領域30を有し、画面の下部に各種GUI部品(31?37)を有する。図2に示すカーソル38は、ユーザが所望の指定を行うときに使用されるものであり、ユーザの操作に応じて表示部4の画面上(ユーザインターフェース画面上も含む)を移動可能である。
【0029】
画像表示領域30は、所定の画像が表示される領域である。例えば時系列データが動画データである場合、画像表示領域30には、再生される動画データの画像が表示される。なお、以降の説明では、時系列データの例を動画データとして説明する。
【0030】
画像表示領域30の下方には、全体時間軸(シークバー)31が表示される。全体時間軸31は、上述したように、動画データ全体の再生時間を示す時間軸である。この全体時間軸31は、動画データの再生時間の長さによらず、常に同じ長さで表示される。全体時間軸31は、左端が動画データの先頭位置Sとなっており、右端が動画データの終了位置Eとなっている。
【0031】
全体時間軸31上には、ポインタ32が表示される。ポインタ32は、動画データの現在の再生点(再生箇所)を示すものであり、動画データの再生と連動して全体時間軸31上を移動する。通常の再生が行われる場合において、動画データが最初から再生されると、ポインタ32は、動画データの先頭位置Sから右方向への移動を開始し、動画データが最後まで再生されると、動画データの終了位置Eで移動を停止する。また、ポインタ32は、ユーザの操作により再生点の変更が指示されると、変更された再生点に移動する。この再生点の変更の操作の例としては、ユーザがカーソル38をポインタ32に合わせ、ドラッグ・アンド・ドロップにより所望の再生点にポインタ32を移動させる操作や、ユーザがカーソル38を所望の再生点に移動させてクリックする操作が挙げられる。上述したポインタ32の表示の制御は、表示制御手段11によって行われる。すなわち、表示制御手段11は、時系列データ処理手段13の処理結果や操作検出手段12による検出結果に基づいて、ポインタ32の表示を制御する。
【0032】
全体時間軸31の下方には、再生ボタン33、早送りボタン34、巻き戻しボタン35、停止ボタン36、一時停止ボタン37がそれぞれ表示される。ユーザは、カーソル38を所望のボタン上に合わせて決定操作(例えばクリック)を行うと、決定されたボタンに割り当てられた処理(再生、早送り、巻き戻し、停止、一時停止)が行われる。
【0033】
次に、本実施形態の近傍時間軸の表示の例について、図3を参照して説明する。図3は、図2に示すユーザインターフェース画面上において、近傍時間軸20aが表示された例を示している。
【0034】
近傍時間軸20aは、以下のようにして表示される。まず、ユーザが、カーソル38を移動させて、全体時間軸31上における所望の再生点を指定する操作を行う。操作検出手段12がその操作を検出すると、表示制御手段13(審判注:「表示制御手段11」の誤記と認められる。)は、記憶部2から近傍時間軸データ22を読み出し、その近傍時間軸データ22に基づいて表示部4の表示を制御する。これにより、図3に示す近傍時間軸20aが表示部4に表示される。
【0035】
表示部4に表示される近傍時間軸20aは、図3に示すように、全体時間軸31上において、ユーザにより指定された再生点に表示される。指定された再生点には、ポインタ32が表示される。近傍時間軸20aには、ポインタ32が示す現在の再生点を中心(0秒)として前後30秒の時間幅が示されている。この前後30秒の時間幅を分かり易くするために、図3の例では、10秒毎に目盛が表示され、かつ、「+30秒」及び「-30秒」という文字が表示されている。
【0036】
ユーザは、近傍時間軸20aにおいて、ポインタ32を移動させ、所望の再生点を指定する操作を行うことができる。これにより、全体時間軸31上における再生点の指定に比べ、より詳細な再生点の指定を行うことができる。例えば、ユーザが、図3に示す近傍時間軸20aにおいて、カーソル38をポインタ32に合わせ、ドラッグ・アンド・ドロップにより+10秒を示す目盛にポインタ32を移動させたり、又は、+10秒を示す目盛にカーソル38を移動させてクリックしたりすると、現在の再生点から10秒後の動画データの再生が行われることになる。」

ウ.「【0039】
次に、本実施形態の情報処理装置の動作例について、図4を参照して説明する。図4に
示す動作は、図2のユーザインターフェース画面が表示された後の動作である。
【0040】
ユーザは、操作部3を用い、図2のユーザインターフェース画面において、ポインタ32を移動させ、全体時間軸31上の所望の再生点を指定する操作を行う。なお、この操作は、動画データの再生中(早送り中、巻き戻し中も含む)に行われてもよいし、動画データの停止中(一時停止中も含む)に行われてもよい。
【0041】
この操作を操作検出手段12が検出すると(S1)、表示制御手段11は、記憶部22から近傍時間軸データ22を読み出し、それに基づいてユーザインターフェース画面上に近傍時間軸を表示させる(S2)。このときの状態は、例えば図3に示すようになる。図3に示すように、近傍時間軸20aは、全体時間軸31上において、ユーザにより指定された再生点の箇所に表示される。また、近傍時間軸20aは、ポインタ32に示される現在の再生点を中心(0秒)として前後30秒の時間幅を示すものとなっている。上述したように、本実施形態では、時間幅の異なる近傍時間軸が予め複数用意されているが、近傍時間軸20aは、最初に表示されるもの(デフォルトの近傍時間軸)として予め設定されているとする。よって、全体時間軸31上の所定の再生点が指定されると、表示制御手段11は、複数ある近傍時間軸データ22のうち、近傍時間軸20aのデータを読み出し、近傍時間軸20aを表示させる。
【0042】 ・・・中略・・・
【0043】 ・・・中略・・・
【0044】 ・・・中略・・・
【0045】 ・・・中略・・・
【0046】 ・・・中略・・・
【0047】
操作検出手段12は、近傍時間軸上(又は全体時間軸31上)の所望の再生点を指定する操作を検出するまで待機する(S7)。その後、近傍時間軸上(又は全体時間軸31上)で所定の再生点を指定する操作、及び、動画データの再生の実行を指示する操作を操作検出手段12が検出すれば、表示制御手段11は、指定された再生点にポインタ32を移動させ、時系列データ処理手段13は、指定された再生点から動画データの再生を開始する。」

・上記イ.の段落【0031】には、全体時間軸31上において、ユーザがカーソル38をポインタ32に合わせ、ドラッグ・アンド・ドロップにより所望の再生点にポインタ32を移動させることができることが、さらに、段落【0035】には、ユーザが、カーソル38を移動させて、全体時間軸31上における所望の再生点を指定する操作を行うと、操作検出手段12がその操作を検出し、表示制御手段11が、記憶部2から近傍時間軸データ22を読み出し、その近傍時間軸データ22に基づいて表示部4の表示を制御する近傍時間軸20aを表示部4に表示することが記載されている。
してみると、ユーザが、全体時間軸31上において、カーソル38をポインタ32に合わせ、ドラッグ・アンド・ドロップにより所望の再生点にポインタ32を移動させる操作を行うと、操作検出手段12がその操作を検出し、表示制御手段11が、記憶部2から近傍時間軸データ22を読み出し、その近傍時間軸データ22に基づいて表示部4の表示を制御する近傍時間軸20aを表示部4に表示する、ことが記載されているといえる。
・上記イ.の段落【0036】には、近傍時間軸20aにおいて、ユーザがカーソル38をポインタ32に合わせ、ドラッグ・アンド・ドロップによりポインタ32を移動させて所望の再生点を指定する操作を行うことができること、及び、段落【0032】には、再生ボタン33にユーザが、カーソル38を合わせて決定操作(例えばクリック)を行うと、再生が行われることが記載されており、さらに、段落【0047】には、操作検出手段12が、、所定(所望)の再生点を指定する操作、及び、動画データの再生の実行を指示する操作を検出すれば、表示制御手段11は、指定された再生点にポインタ32を移動させ、時系列データ処理手段13は、指定された再生点から動画データの再生を開始することが記載されている。
してみれば、引用文献1には、操作検出手段12が、近傍時間軸20aにおいて、ユーザがカーソル38をポインタ32に合わせ、ドラッグ・アンド・ドロップによりポインタ32を移動させ所望の再生点を指定すること、及び、再生ボタン33にカーソル38を合わせて決定操作(例えばクリック)を行うことを検出すると、時系列データ処理手段13は、指定された再生点から動画データの再生を開始する、ことが記載されているといえる

したがって、上記引用文献1には、時系列データが動画である場合に注目すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明〉

「制御部1、記憶部2、操作部3、表示部4を有する情報処理装置において、
前記制御部1は、表示制御手段11、操作検出手段12、時系列データ処理手段13、操作速度検出手段14を有し、
前記表示制御手段11は、ユーザインターフェース画面を表示部4に表示させ、ユーザの操作や時系列データの再生に係る処理に応じてユーザインターフェース画面の表示を制御し、
前記操作検出手段12は、ユーザインターフェース画面において行われるユーザの操作を検出し、
前記時系列データ処理手段13は、動画データである時系列データの再生、早送り、巻き戻し、停止、一時停止等に係る処理を行い、
前記記憶部2は、UI(User Interface)データ21、近傍時間軸データ22、時系列データ23を記憶するものであり、
前記近傍時間軸データ22は、ユーザインターフェース画面上に表示される近傍時間軸を示すデータであり、近傍時間軸は、全体時間軸とは別に、ユーザインターフェース画面上に表示されるものであって、時系列データの現在の再生点の近傍の時間軸であり、全体時間軸よりも拡大された時間幅を示すものであって、
ユーザが操作部3を用いて、時系列データ23の再生を指示する操作、又は、ユーザインターフェース画面の表示を指示する操作を行うと、操作検出手段12がその操作を検出し、表示制御手段11は、記憶部2からUIデータ21を読み出し、そのUIデータ21に基づいて表示部4の表示を制御するユーザインターフェース画面を表示部4に表示し、
表示部4に表示される該ユーザインターフェース画面は、画面の上部に動画データの画像が表示される画像表示領域30を有し、画面の下部に各種GUI部品(31?37)を有するもので、画像表示領域30の下方には、全体時間軸(シークバー)31が表示され、全体時間軸31は、動画データ全体の再生時間を示す時間軸であり、この全体時間軸31は、動画データの再生時間の長さによらず、常に同じ長さで表示され、全体時間軸31は、左端が動画データの先頭位置Sとなっており、右端が動画データの終了位置Eとなっており、全体時間軸31の下方には、再生ボタン33、早送りボタン34、巻き戻しボタン35、停止ボタン36、一時停止ボタン37がそれぞれ表示され、ユーザが、カーソル38を所望のボタン上に合わせて決定操作(例えばクリック)を行うと、決定されたボタンに割り当てられた処理(再生、早送り、巻き戻し、停止、一時停止)を行うもので、
ユーザが、全体時間軸31上において、カーソル38をポインタ32に合わせ、ドラッグ・アンド・ドロップにより所望の再生点にポインタ32を移動させる操作を行うと、操作検出手段12がその操作を検出し、表示制御手段11が、記憶部2から近傍時間軸データ22を読み出し、その近傍時間軸データ22に基づいて表示部4の表示を制御する近傍時間軸20aを表示部4に表示し、
表示部4に表示される該近傍時間軸20aは、全体時間軸31上において、ユーザにより指定された前記再生点に表示され、指定された再生点には、ポインタ32が表示され、近傍時間軸20aには、ポインタ32が示す現在の再生点を中心(0秒)として前後30秒の時間幅が示されて、この前後30秒の時間幅を分かり易くするために、10秒毎に目盛が表示され、かつ、「+30秒」及び「-30秒」という文字が表示され、
操作検出手段12が、近傍時間軸20aにおいて、ユーザがカーソル38をポインタ32に合わせ、ドラッグ・アンド・ドロップによりポインタ32を移動し所望の再生点を指定すること、及び、再生ボタン33にカーソル38を合わせて決定操作(例えばクリック)を行うことを検出すると、時系列データ処理手段13は、指定された再生点から動画データの再生を開始する、
情報処理装置。」


第6 対比・判断
(1)本願発明1について
(ア)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア.引用発明の「全体時間軸311」は、「ユーザインターフェース画面」における「GUI部品(31?37)」の一つであるから、本願発明1の「第1の表示オブジェクト」に相当し、さらに、引用発明の「ユーザが、全体時間軸31上において、カーソル38をポインタ32に合わせ、ドラッグ・アンド・ドロップにより所望の再生点にポインタ32を移動させる操作」は、本願発明1の「第1の表示オブジェクトに対する第1の指示」に相当する。
また、引用発明の「近傍時間軸20a」は、ユーザがカーソル38をポインタ32に合わせ、ドラッグ・アンド・ドロップにより所望の再生点にポインタ32を移動させる操作を行うことができるものであって、「近傍時間軸20a」上の「ドラッグ・アンド・ドロップ」はスライド操作といえることから、引用発明のこの「ドラッグ・アンド・ドロップにより所望の再生点にポインタ32を移動させる操作」は、本願発明1の「スライド操作による第2の指示」に相当し、さらに、引用発明の「近傍時間軸20a」は、本願発明1の「スライド操作による第2の指示を行うための操作領域」に相当する。
そして、引用発明の「表示制御手段11」は、「近傍時間軸20a」を表示するものであって、また、引用発明の「近傍時間軸20a」は、「全体時間軸31上」の「ユーザにより指定された前記再生点」近傍を「全体時間軸よりも拡大された時間幅」で「示すものであ」あり、かつ、「+30秒」及び「-30秒」という新たな情報が表示されるものであり、「全体時間軸31上」の一部を展開したものといえることから、引用発明の「表示制御手段11」と、本願発明1の「第1の表示オブジェクトに対する第1の指示に応じて、当該第1の表示オブジェクトからスライド操作による第2の指示を行うための操作領域を展開して表示する操作領域表示手段」とは、「第1の表示オブジェクトに対する第1の指示に応じて、スライド操作による第2の指示を行うための操作領域を展開して表示する操作領域表示手段」の点では共通する。
イ.引用発明の「時系列データ処理手段13」は、「近傍時間軸20aにおいて」、「所望の再生点を」指定する操作を行うと、「指定された再生点から動画データの再生を開始する」ものであって、「近傍時間軸20a」上の「ポインタ32」の移動は連続的であり、該「指定された再生点」での「動画データの再生」は連続的に変化するパラメータを用いた情報の処理と認められることから、引用発明の「時系列データ処理手段13」は、本願発明1の「前記操作領域における前記第2の指示に応じて連続的に変化するパラメータを用いた情報処理を行なう情報処理手段」に相当する。
ウ.そして、引用発明の「情報処理装置」は、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「第1の表示オブジェクトに対する第1の指示に応じて、スライド操作による第2の指示を行うための操作領域を展開して表示する操作領域表示手段と、
前記操作領域における前記第2の指示に応じて連続的に変化するパラメータを用いた情報処理を行なう情報処理手段と、
を備えた、
情報処理装置。」

(相違点)
一致点の上記「操作領域」の「展開」が、本願発明1では、「当該第1の表示オブジェクトから」であって、さらに、「前記操作領域の展開によって、前記第1の指示及び前記第2の指示とは異なる第3の指示をするための第3の表示オブジェクトが隠される」のに対して、引用発明では、「全体時間軸311」の「所望の再生点」近傍からであって、また、そのような他のオブジェクトを隠すものではない点。

(イ)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用発明において、「指定された再生点から動画データの再生を開始する」ためには、「近傍時間軸20aにおいて」、「カーソル38をポインタ32に合わせ、ドラッグ・アンド・ドロップによりポインタ32を移動し所望の再生点を指定すること、及び、再生ボタン33にカーソル38を合わせて決定操作(例えばクリック)を行うこと」をしなければならず、仮に、引用発明において「近傍時間軸20a」を下方向に拡大して、「近傍時間軸20a」及び「全体時間軸31」に対する指示以外の指示を行うための「再生ボタン33」を隠してしまうと、「指定された再生点から動画データの再生を開始する」ことができなくなってしまうことから、引用発明において、「近傍時間軸20a」を拡大して、「近傍時間軸20a」及び「全体時間軸31」に対する指示以外の指示を行うための「再生ボタン33」を隠すことには阻害要因があるものと認められる。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明ではないし、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本願発明2-5、11-12について
本願発明2-5、11-12は、請求項1をさらに限定するものであって、本願発明1の「第1の表示オブジェクトに対する第1の指示に応じて、当該第1の表示オブジェクトからスライド操作による第2の指示を行うための操作領域を展開して表示する」、及び「前記操作領域の展開によって、前記第1の指示及び前記第2の指示とは異なる第3の指示をするための第3の表示オブジェクトが隠される」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明ではないし、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(3)本願発明6-10について
本願発明6-10は、請求項1をさらに限定するものであって、本願発明1の「第1の表示オブジェクトに対する第1の指示に応じて、当該第1の表示オブジェクトからスライド操作による第2の指示を行うための操作領域を展開して表示する」、及び「前記操作領域の展開によって、前記第1の指示及び前記第2の指示とは異なる第3の指示をするための第3の表示オブジェクトが隠される」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(4)本願発明13-15について
本願発明13は、本願発明1の「情報処理装置」を「情報処理システム」の観点から記載したに過ぎず、本願発明1の「第1の表示オブジェクトに対する第1の指示に応じて、当該第1の表示オブジェクトからスライド操作による第2の指示を行うための操作領域を展開して表示する」、及び「前記操作領域の展開によって、前記第1の指示及び前記第2の指示とは異なる第3の指示をするための第3の表示オブジェクトが隠される」と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明ではないし、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
同様に、本願発明14は、本願発明1の「情報処理装置」を「情報処理方法」の観点から、また、本願発明15は、本願発明1の「情報処理装置」を「情報処理プログラム」の観点から記載したに過ぎず、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明ではないし、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について
平成29年9月15日付けの補正により、補正後の請求項1-15は、「第1の表示オブジェクトに対する第1の指示に応じて、当該第1の表示オブジェクトからスライド操作による第2の指示を行うための操作領域を展開して表示する」、及び「前記操作領域の展開によって、前記第1の指示及び前記第2の指示とは異なる第3の指示をするための第3の表示オブジェクトが隠される」という構成を有するものとなった。当該構成は、原査定における引用文献A、Bには記載されていない。したがって、原査定の理由1、2を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-30 
出願番号 特願2012-211144(P2012-211144)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅岡 信幸山崎 慎一  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 山田 正文
山澤 宏
発明の名称 情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、及び情報処理プログラム  
代理人 加藤 真司  
代理人 鈴木 守  

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