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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G21C
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G21C
管理番号 1334988
審判番号 不服2016-14820  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-04 
確定日 2017-12-19 
事件の表示 特願2013-175114「核燃料集合体用のたわみが制限されたロッド接点を備えたスペーサおよびそれを作成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月10日出願公開、特開2014- 62896、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年(2013年)8月27日(パリ条約による優先権主張 2012年9月4日、米国)の出願であって、平成27年5月20日付けで拒絶理由が通知され、同年8月20日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、同年9月28日付けで拒絶理由が通知され、同年12月21日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出されたが、平成28年5月31日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年10月4日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされた後、当審において、平成29年8月14日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月9日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし17に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明17」という。)は、平成29年11月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、10及び17はそれぞれ以下のとおりである。
「【請求項1】
核燃料集合体で使用するための燃料スペーサであって、
軸方向に延在する燃料棒を収容し、前記燃料棒を前記燃料スペーサ内に固定するように構成された内部開口部を形成する少なくとも1つの内部部材と、
前記内部部材から延出し、前記開口部の中を通過する前記燃料棒に接触する横方向の長さを有するロッド接点と、
を備え、
前記ロッド接点が、弾性抵抗部材と、対応するたわみ制限器と、および前記弾性抵抗部材と反対方向に延出する剛性止め具とを含み、
前記横方向は、前記燃料棒の径方向であり、
前記内部部材、前記弾性抵抗部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具が、単一の基板で形成され、
前記内部部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具は同じ厚さを有し、かつ前記弾性抵抗部材よりも厚い、
燃料スペーサ。」
「【請求項10】
核燃料を包含し、軸方向に延在する複数の燃料棒と、
前記燃料棒が中を通過するスペーサと、
を備える核燃料集合体であって、
前記スペーサが、
複数の内部開口部を形成し、前記燃料棒がそれぞれ前記内部開口部の対応する1つを通過する複数の内部部材と、
前記内部開口部の1つの中に延出し、前記開口部の中を通過する前記燃料棒に接触する横方向の長さを有する少なくとも1つのロッド接点と、を含み、
前記ロッド接点が、弾性抵抗部材と、対応するたわみ制限器と、前記弾性抵抗部材および前記たわみ制限器が中へと延出する開口部に隣接する開口部の中へと延出する剛性止め具とを含み、
前記横方向は、前記燃料棒の径方向であり、
前記内部部材、前記弾性抵抗部材、前記たわみ制限器、および剛性止め具が、単一の基板で形成され、
前記内部部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具は同じ厚さを有し、かつ前記弾性抵抗部材よりも厚い、
核燃料集合体。」
「【請求項17】
燃料ロッドを収容するための開口部を形成する複数の内部スパンと、
燃料スペーサを囲むように延在する外周バンドと、
を有する燃料スペーサを形成するステップを含む核燃料集合体を作製する方法であって、
前記形成するステップが、
弾性抵抗部材と、対応するたわみ制限器と、前記弾性抵抗部材および前記たわみ制限器が中へと延出する開口部に隣接する開口部の中へと延出する剛性止め具とを同一の内部スパン上に設けるステップと、
1枚の基板を打ち抜き加工することで前記内部スパン、前記弾性抵抗部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具を形成するステップと、
を含み、
前記弾性抵抗部材が、横方向に弾性式に移動し、
前記対応するたわみ制限器が前記横方向に剛性であり、
前記横方向は、前記燃料棒の径方向であり、
前記内部スパン、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具は同じ厚さを有し、かつ前記弾性抵抗部材よりも厚い、
方法。」

なお、本願発明2ないし9は本願発明1を減縮した発明であり、本願発明11ないし16は本願発明10を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2004-517342号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0003】
本発明は、燃料棒(被覆管内に封入した焼結核燃料から成るペレット積層体)のスペーサに対する相対移動を制限する手段を、的確に変更して利用することで擦過腐食を防止すべく、前記の効果を強化することにある。また本発明は、その効果を利用する燃料集合体運転と、それに対応した燃料集合体と、特にこの燃料集合体に適したスペーサに関する。」

イ 「【0083】
図2と3の実施例は3点支持であり、図19?21の実施例は8点支持であるが、図22と23は、6点支持を例示する。その際、全保持要素を弾性的に形成するとよく、この実施例では、片側の格子目壁にある1つのばね50が、反対側の格子目壁に上下して存在する2つのばね51、52に、燃料棒を押し付ける。図23はまた、振幅を制限するための剛性ストッパを破線輪郭53で示す。」

ウ 図19ないし23は次のものである。


(2)以上(1)によれば、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「全保持要素を弾性的に形成し、片側の格子目壁にある1つのばね50が、反対側の格子目壁に上下して存在する2つのばね51、52に、燃料棒を押し付ける6点支持するスペーサであって、振幅を制限するための剛性ストッパ53を備える、燃料集合体のスペーサ。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2009-258106号公報)には次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は広義には原子燃料集合体に係わり、より具体的には、燃料集合体に燃料棒を装荷した後、燃料棒の被覆に圧力を加えるスペーサグリッドを採用する原子燃料集合体に係わる。」

イ 「【0008】
燃料集合体22は、案内シンブル54(案内管とも呼称される)に沿って軸方向に間隔を保って取り付けられ、横方向へ延びる複数のグリッド64と、横方向に間隔を保ち、グリッド64によって支持され、整然と配列された細長い燃料棒66とを含む。図3では見えないが、グリッドは従来型で、直交関係にかみ合う4本のストラップの隣接する内面がほぼ正方形の支持セルを画定し、セルを貫通する燃料棒66を互いに横方向に間隔を保って支持する卵箱パターン構造を有する。従来設計では多くの場合、支持セルを形成するストラップの対向壁にばねとディンプルとが打抜きにより形成される。ばねとディンプルとは支持セル内に半径方向に延び、それらの間に燃料棒を捕捉し、燃料棒の被覆に圧力を作用させることによって燃料棒を定位置に固定する。また、集合体22の中心には、下部ノズル58と上部ノズル62の間を延びて、これら両ノズル58,62に取り付けられる計測管68がある。各部品をこのように配置することで、燃料集合体22は部品の集合体を損傷させることなく取扱うことができる一体的構造を形成する。」

(2)以上(1)によれば、上記引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「原子燃料集合体の燃料棒の被覆に圧力を加えるスペーサグリッドの、支持セルを形成するストラップの対向壁にばねとディンプルとが打抜きにより形成される点。」

3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特表2002-508075号公報)には次の事項が記載されている。
ア 「発明の分野
本発明は一般的に原子炉の燃料要素支持グリッドに関し、さらに詳細には、保持用斜行ばねを有する支持グリッドに関する。」(4頁7?9行)

イ 「図1は17×17個のセルを有するアレーを示すが、本発明の原理は集合体内の燃料要素の数には限定されない。図1に示す直交部材14,16を形成する格子ストラップは実質的に同一設計である。格子ストラップ14,16は実質的に同一であるが、一部の格子ストラップ16の設計は他の格子ストラップ16とは異なり、また一部のストラップ14も他のストラップ14と異なる場合があり、これにより案内管及び計装シンブルの設置場所が提供される。図1の参照番号42は燃料要素を支持するセルを示し、参照番号34は案内管及び計装シンブルが固定されたセルを示す。図3に示すように、燃料要素を収容するセルのほとんどの壁には打ち抜き加工により形成した多数の突出部分があり、それらは当業界でよく知られ使用されているように適当な型により加工形成される。上方及び下方の打ち抜き部分26は1つの方向に膨出し、対向するセルの壁から突出する並置関係の斜行ばねに対して燃料要素を押圧支持するディンプルを形成する。上述したディンプルと同じ壁の中央にある残りの打ち抜き部分28は隣接するセル内に反対方向に膨出し、対向する壁から隣接するセル内へ突出するディンプル26対して燃料要素を押圧支持する斜行ばねを形成する。」(9頁20行?10頁6行)

(2)以上(1)によれば、上記引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「保持用斜行ばねを有する原子炉の燃料要素支持グリッドの燃料要素を収容するセルのほとんどの壁に形成した多数の突出部分であって、上方及び下方の打ち抜き部分26は1つの方向に膨出し、対向するセルの壁から突出する並置関係の斜行ばねに対して燃料要素を押圧支持するディンプル、及び、前記ディンプルと同じ壁の中央にある残りの打ち抜き部分28は隣接するセル内に反対方向に膨出し、対向する壁から隣接するセル内へ突出するディンプル26対して燃料要素を押圧支持する斜行ばねを、打ち抜き加工により形成する点。」

4 引用文献4について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特表2001-512562号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「原子炉の燃料集合体におけるばねが固定されたスペーサ
本発明は、請求の範囲第1項または第7項の前文に記載の軽水冷却形原子炉における燃料集合体のスペーサに関する。」(7頁2?4行)

イ 「図示の実施例は、四角形の格子目を形成する縦帯板と横帯板とから成るスペーサである。図1において縦帯板1およびそれに対して直角に交差する横帯板2、3、4は格子目を形成し、図1において左側の格子目の中にまだばねははめ込まれておらず、右側の格子目の中にはばね5が横帯板2の中央から突出している。この実施例において湾曲された弾性中央部分6は、上側および下側がそれぞれ凸状湾曲部7を介してばね上側終端片8およびばね下側終端片9に移行している。格子目の中に挿入すべき燃料棒の中心軸線はA-A線で示され、このA-A線は作動位置において両帯板2、4間の中央に位置している。
ばね5の上下両終端片のA-A線に対して平行な両側縁にそれぞれ形材片が存在し、即ちばねは全部で4個の形材片を有している。図1ではこれらの形材片のうち、上側前方形材片10と下側前方形材片11しか見えず、それらの後方にそれぞれ位置する形材片10’、11’は隠れているので見えていない。更に図1の右側部分における縦帯板1も、同様にこの縦帯板1の後ろに位置する格子目の中に突出するばねを支持している。図1においてこのばねは、開口12、13、14、15を通して突出しているがこれらの開口を通して見えている部分(残りは隠れている)しか示されていない。このばねの見えている部分は上下のばね終端片16、17、その両側縁にある形材片18、19、20、21である。図1の左側部分には縦帯板にある開口12、13、14、15が示されている。
これらの各開口12、13、14、15は、A-A線に対して直角に同じ方向に(即ち左向きに)延びているスリット状開口部分22、23、24、25を含み、これらの終端に形材片18?21が置かれている。これらの形材片はスリット状開口部分22?25の横側終端縁26、27、28、29に突き当たっている。
各スリット状開口部分22?25は拡大開口部分30、31、32、33に開口し、図1の右側部分において理解できるように、ばねの作動位置においてスリット状開口部分22?25を通って突出する形材片18?21は、これらがスリット状開口部分22?25に沿って右向きに拡大開口部分30?33まで移動されたときに開口12?15から取り外せる。この移動された位置はばねの組立位置に相当する。
これらの組立開口12、13、14、15のスリット状開口部分は実際にはばねの両側縁間の距離の半分(即ちばね幅の半分)に相当する長さを有している。即ち拡大開口部分30、31は終端縁26と終端縁28との間ないしは終端縁27と終端縁29との間の中央に位置する。この寸法づけの意味は図2から理解でき、燃料棒35が格子目の中にはめ込まれたとき、燃料棒35がこのばね5の弾性中央部分6を押して、それに続く凸状湾曲部7、8を拡大開口部分36、37の中に押し込む。これらの拡大開口部分36、37は、その上縁ないし下縁がばね5の上端ないし下端より上ないし下に位置するように拡大されている。
即ちこのようにして凸状湾曲部7、8は、ばね5が燃料棒35によって押され、燃料棒35をその保持要素(例えばばね5の反対側に位置する格子目側にある突起38、39)に押しつけたとき、ばね5を固定するために利用される。」(12頁13行?13頁24行)

ウ 図1ないし19は次のものである。


(2)以上(1)によれば、上記引用文献4には次の技術的事項(以下「引用文献4に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「縦帯板1およびそれに対して直角に交差する横帯板2、3、4は格子目を形成し、湾曲された弾性中央部分6は、上側および下側がそれぞれ凸状湾曲部7を介してばね上側終端片8およびばね下側終端片9に移行し、
格子目の中に挿入すべき燃料棒の中心軸線は作動位置において両帯板2、4間の中央に位置し、
ばね5の上下両終端片の燃料棒の中心軸線に対して平行な両側縁にそれぞれ形材片が存在してばねは全部で4個の形材片を有し、
前記各開口12、13、14、15は、燃料棒の中心軸線に対して直角に同じ方向に延びているスリット状開口部分22、23、24、25を含み、これらの終端に形材片18?21が置かれ、前記形材片はスリット状開口部分22?25の横側終端縁26、27、28、29に突き当たっているものであって、
前記燃料棒が格子目の中にはめ込まれたとき、燃料棒がこのばね5の弾性中央部分6を押して、それに続く凸状湾曲部7、8を拡大開口部分36、37の中に押し込み、前記凸状湾曲部7、8は、ばね5が燃料棒によって押され、燃料棒をその保持要素に押しつけたとき、ばね5を固定するために利用される、
燃料集合体のスペーサ。」

5 引用文献5について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開昭64-072095号公報)には次の事項が記載されている。
ア 「発明の詳細な説明
本発明は原子炉燃料集合体、ことに強度および炉性能を改善するように設計され従来のグリッドよりも低コストで製造できるジルカロイ燃料集合体グリッドに関する。」(1頁左欄17行?右欄1行)

イ 「周辺ストリップ32はまた、窓34のそれぞれの上下に、内方に延びるディンプル38をそなえている。ディンプル38は当業界で既知のように周辺ストリップ32の剛性を増大せしめる。すなわち、ディンプル38の存在は、周辺ストリップの全長に沿う方向の力の成分に応じる曲げに対するこの周辺ストリップ32の抵抗力を増大せしめるのである。さらに、燃料棒12の場合に見られるように、ディンプル38はストリップ部材46および46′と一体であるばね20および22によって燃料棒が押し付けられる停止部材またはアーチとして機能する。ディンプル38は周辺ストリップの窓34のそれぞれの上方および下方に設けてある。ディンプル39はばね36を有する周辺ストリップのセクタに設けてある。図面の理解を容易にするために、このディンプル39は第3図には図示していない。ディンプル39は燃料棒接触ばね36まではセクタ内に延びていない。従ってこのディンプルは、万一燃料集合体が正規運転中過度の振動にさらされた場合ばね36の弾性限界を越えることを防止するバックアップアーチとして機能する。ディンプル39の対を設けると周辺ストリップ32の剛性も高めることができる。
周辺ストリップ32はまた、窓34のそれぞれの上方および下方に、内方に盛り上った水平方向のリブ40をそなえている。これは第5図および第6図によく示されている。当業界において知られているようにリブ40はまた周辺ストリップ32の剛性を高めている。リブ40の存在は周辺ストリップの断面モジュラスを増し、リブなしの平らな周辺ストリップまたは複数の不整部分をそなえたストリップに比較して、曲げに対する抵抗力が増大することとなる。」(6頁右下欄7行?7頁左上欄18行)

(2)以上(1)によれば、上記引用文献5には、次の技術的事項(以下「引用文献5に記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「ジルカロイ燃料集合体グリッドの周辺ストリップが、窓のそれぞれの上下に、内方に延びるディンプルであって、周辺ストリップの剛性を増大せしめ、万一燃料集合体が正規運転中過度の振動にさらされた場合ばねの弾性限界を越えることを防止するバックアップアーチとして機能するディンプルを備える点。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「ばね50」、「燃料棒」、「剛性ストッパ53」及び「燃料集合体のスペーサ」は、本願発明1における「弾性抵抗部材」、「燃料棒」、「たわみ制限器」及び「燃料スペーサ」に相当する。
また、引用発明の燃料スペーサが核燃料集合体で使用するためのものであることは明らかであり、また、引用発明1の燃料スペーサが軸方向に延在する燃料棒を前記燃料スペーサ内に固定するように構成された内部開口部を形成する内部部材を備えることも明らかである。
そして、引用発明における「ばね50」、及び「剛性ストッパ53」がロッドはロッド接点であることは明らかである。
さらに、横方向を燃料棒の径方向とすることは取決め事項にすぎない。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「核燃料集合体で使用するための燃料スペーサであって、
軸方向に延在する燃料棒を収容し、前記燃料棒を前記燃料スペーサ内に固定するように構成された内部開口部を形成する少なくとも1つの内部部材と、
前記内部部材から延出し、前記開口部の中を通過する前記燃料棒に接触するロッド接点と、
を備え、
前記ロッド接点が、弾性抵抗部材と、対応するたわみ制限器とを含み、
前記横方向は、前記燃料棒の径方向である、
燃料スペーサ。」

(相違点)
「燃料スペーサ」が、本願発明1では「方向の長さを有」し、「弾性抵抗部材と反対方向に延出する剛性止め具とを含み」、「内部部材、前記弾性抵抗部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具が、単一の基板で形成され、前記内部部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具は同じ厚さを有し、かつ前記弾性抵抗部材よりも厚い」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、相違点に係る本願発明1の「内部部材、前記弾性抵抗部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具が、単一の基板で形成され、前記内部部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具は同じ厚さを有し、かつ前記弾性抵抗部材よりも厚い」という構成は、「弾性抵抗部材」は、「内部部材、たわみ制限器、および剛性止め具」とともに「単一の基板で形成され」ていて、「内部部材、たわみ制限器、および剛性止め具」は「同じ厚さ」であるにもかかわらず、「弾性抵抗部材」の厚みは薄いと解される構成であるところ、上記引用文献2ないし5には記載されていない。
また、引用発明にはこのように構成する動機はなく、また、引用文献2ないし5にもこのように構成することの動機付けとなり得る記載は見当たらないい。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明10及び17について
本願発明10及び17も、本願発明1の相違点に係る「内部部材、前記弾性抵抗部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具が、単一の基板で形成され、前記内部部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具は同じ厚さを有し、かつ前記弾性抵抗部材よりも厚い」という構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明2ないし9及び本願発明11ないし16について
本願発明2ないし9は本願発明1を減縮した発明であり、本願発明11ないし16は本願発明10を減縮した発明である。
したがって、いずれも本願発明1の相違点に係る「内部部材、前記弾性抵抗部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具が、単一の基板で形成され、前記内部部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具は同じ厚さを有し、かつ前記弾性抵抗部材よりも厚い」という構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、(平成27年12月21日付け手続補正における)請求項1、3、5、7?15、17、19について引用文献1?3、5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、また、(平成27年12月21日付け手続補正における)請求項1?19について上記引用文献1?5に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成29年11月9日付け手続補正により補正された請求項1?17は、それぞれ「内部部材、前記弾性抵抗部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具が、単一の基板で形成され、前記内部部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具は同じ厚さを有し、かつ前記弾性抵抗部材よりも厚い」構成を有するものであるから、上記第4で検討したとおり、本願発明1?17は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 当審では、
(1)本願請求項1には、「前記燃料棒を前記スペーサ内に固定する」との記載があるが、「前記スペーサ」の前に「スペーサ」がなく、不明確な記載である。
(2)本願請求項11ないし16は、「・・・核燃料集合体。」の発明である請求項10を引用する発明であるが、末尾が「・・・燃料集合体。」であって、用語が不統一で不明確な記載である。
(3)本願請求項17には、「前記内部部材」との記載があるが、当該「前記内部部材」の前に「内部部材」の記載がなく、不明確な記載である。
との理由で、本件出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年11月9日付けの補正において以下のとおり補正された結果、この拒絶の理由は解消した(下線は、当審が付した。補正箇所を示すものである。)。
「【請求項1】
核燃料集合体で使用するための燃料スペーサであって、
軸方向に延在する燃料棒を収容し、前記燃料棒を前記燃料スペーサ内に固定するように構成された内部開口部を形成する少なくとも1つの内部部材と、
前記内部部材から延出し、前記開口部の中を通過する前記燃料棒に接触する横方向の長さを有するロッド接点と、
を備え、
前記ロッド接点が、弾性抵抗部材と、対応するたわみ制限器と、および前記弾性抵抗部材と反対方向に延出する剛性止め具とを含み、
前記横方向は、前記燃料棒の径方向であり、
前記内部部材、前記弾性抵抗部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具が、単一の基板で形成され、
前記内部部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具は同じ厚さを有し、かつ前記弾性抵抗部材よりも厚い、
燃料スペーサ。
(・・・途中省略・・・)
【請求項11】
前記スペーサがさらに、複数のロッド接点を含み、
前記ロッド接点が、複数の前記内部開口部へと延出する、
請求項10に記載の核燃料集合体。
【請求項12】
前記ロッド接点が、第1および第2の前記弾性抵抗部材ならびに第1および第2の前記剛性止め具を備え、
前記燃料棒のそれぞれが、
第1の地点において、第1の弾性抵抗部材によって接触され、
第2の地点において、第2の弾性抵抗部材によって接触され、
第3の地点において、第1の剛性止め具によって接触され、
第4の地点において、第2の該剛性止め具によって接触されており、
前記第1、第2、第3および第4の地点は、前記燃料棒の周りに90度の間隔で分散されており、
前記第1の地点は、前記燃料棒上で前記第3の地点と対向している、
請求項10または11に記載の核燃料集合体。
【請求項13】
各々の弾性抵抗部材、剛性止め具およびたわみ制限器が、前記内部部材のものと材料が中断していない、請求項10から12のいずれかに記載の核燃料集合体。
【請求項14】
前記弾性抵抗部材が、湾曲した突起を含み、
前記突起が、前記湾曲の頂点のみにおいて前記燃料棒に接触するように構成される、請求項10から13のいずれかに記載の核燃料集合体。
【請求項15】
前記たわみ制限器が、前記弾性抵抗部材より短い前記横方向の長さを有することで、前記燃料棒および弾性抵抗部材は、前記たわみ制限器に接触するのに前記内部部材に向かって前記横方向に移動する必要がある、請求項10から14のいずれかに記載の核燃料集合体。
【請求項16】
前記たわみ制限器の前記横方向の長さと、前記弾性抵抗部材の前記横方向の長さの差が、前記弾性抵抗部材の可塑的変形の閾値にほぼ等しい、請求項15に記載の核燃料集合体。
【請求項17】
燃料ロッドを収容するための開口部を形成する複数の内部スパンと、
燃料スペーサを囲むように延在する外周バンドと、
を有する燃料スペーサを形成するステップを含む核燃料集合体を作製する方法であって、
前記形成するステップが、
弾性抵抗部材と、対応するたわみ制限器と、前記弾性抵抗部材および前記たわみ制限器が中へと延出する開口部に隣接する開口部の中へと延出する剛性止め具とを同一の内部スパン上に設けるステップと、
1枚の基板を打ち抜き加工することで前記内部スパン、前記弾性抵抗部材、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具を形成するステップと、
を含み、
前記弾性抵抗部材が、横方向に弾性式に移動し、
前記対応するたわみ制限器が前記横方向に剛性であり、
前記横方向は、前記燃料棒の径方向であり、
前記内部スパン、前記たわみ制限器、および前記剛性止め具は同じ厚さを有し、かつ前記弾性抵抗部材よりも厚い、
方法。」

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし17は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし5の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-04 
出願番号 特願2013-175114(P2013-175114)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G21C)
P 1 8・ 537- WY (G21C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 青木 洋平  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 野村 伸雄
松川 直樹
発明の名称 核燃料集合体用のたわみが制限されたロッド接点を備えたスペーサおよびそれを作成する方法  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  
代理人 小倉 博  
代理人 荒川 聡志  

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