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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02B
管理番号 1334995
審判番号 不服2017-5965  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-26 
確定日 2017-12-19 
事件の表示 特願2015-518466号「排気ガスターボチャージャ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月27日国際公開、WO2013/192029、平成27年8月20日国内公表、特表2015-524038号、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年6月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年6月21日 ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成26年12月5日に国内書面が、明細書の翻訳文、請求の範囲の翻訳文及び要訳書の翻訳文とともに提出され、平成28年9月21日付けで拒絶理由が通知され、平成28年12月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年2月2日付けで拒絶査定がされ、それに対して平成29年4月26日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、平成29年6月7日に前置報告がされ、平成29年9月20日及び平成29年10月19日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定(平成29年2月2日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。

●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項1、3、5、6及び9
・刊行物1
・備考
刊行物1には、ウェイストゲートダクト(ウエストゲート穴111a)を有するタービンハウジング(タービンハウジング110)と、前記ウェイストゲートダクトを開閉するための旋回可能なフラッププレートを有するフラップ装置(ウエストゲートバルブ201)とを備える排気ガスターボチャージャであって、前記フラッププレート(弁体211,皿ばね213)が弾性ばねディスク(皿ばね213)の形態であり、前記フラップ装置が、フラップシャフト(リンクシャフト221)とレバー(揺動アーム212)を備え、前記レバーが、共に回転するように前記ばねディスクを前記フラップシャフトに接続し、前記ばねディスクが凹部を備え、前記レバーが、前記凹部を通して突出するピン(支持ピン214)によって前記ばねディスクに接続され、前記ばねディスクが前記レバーに直接当接し、シール面(皿ばね213の環状端部)が前記ウェイストゲートダクトに向かって前方に曲げられることが記載されている(段落0026,0037-0039,図2参照)。刊行物1に記載された発明において、弁体211及び皿ばね213を一体とすることに格別の困難性はみられない。

よって、請求項1、3、5、6及び9に係る発明は、依然として刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

・請求項2、4、7及び10
・刊行物1及び2
・備考
刊行物1に記載された発明において、弁体211及び皿ばね213を一体として、刊行物2に記載された発明における弁体3aのようにして、フラップ装置が閉鎖状態にあるときに、ばねディスクがタービンハウジングと直接シール接触するように配置することに格別の困難性はみられない。なお一般に金属は、降伏点までの変形は弾性変形であるから、所定の荷重に対しては弾性ばねであると認められる。
刊行物1に記載された発明において、フラップシャフト(リンクシャフト221)がレバー(揺動アーム212)と一体に製造されるか、又は前記フラップシャフトが前記レバーに溶接されることに格別の困難性はみられない。
よって、請求項2、4、7及び10に係る発明は、依然として刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

・請求項8
・刊行物1ないし4
・備考
シール面にビードを形成することは周知技術である(例えば、刊行物3のビード部31e、刊行物4のビード23参照)。
よって、請求項8に係る発明は、依然として刊行物1及び2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

<刊行物一覧>
1.特開2012-67698号公報
2.特開2009-236088号公報
3.特開平10-9423号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2000-28010号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、明細書の翻訳文及び平成29年4月26日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに国際出願時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)

「【請求項1】
- タービンハウジング(2)であって、
・排気ガス用のタービンハウジング入口(8)及びタービンハウジング出口(9)を有し、
・前記タービンハウジング入口(8)と前記タービンハウジング出口(9)との間にウェイストゲートダクト(19)を有するタービンハウジング(2)と、
- 前記ウェイストゲートダクト(19)を開閉するための旋回可能なフラッププレートを有するフラップ装置(10)とを備える排気ガスターボチャージャ(1)であって、
- 前記フラッププレートが弾性ばねディスク(11)の形態であり、
前記フラップ装置(10)が、前記タービンハウジング(2)に回転可能に取り付けられたフラップシャフト(13)を備え、レバー(12)を備え、
前記レバー(12)が、共に回転するように前記ばねディスク(11)を前記フラップシャフト(13)に接続し、
前記ばねディスク(11)が前記レバー(12)に直接当接し、
前記ばねディスク(11)がばね鋼から製造される、
排気ガスターボチャージャ(1)。
【請求項2】
前記フラップ装置(10)が閉鎖状態にあるときに、前記ばねディスク(11)が前記タービンハウジング(2)と直接シール接触するように配置される請求項1に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項3】
前記フラップシャフト(13)が前記レバー(12)と一体に製造されるか、又は前記フラップシャフト(13)が前記レバー(12)に溶接される請求項1に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項4】
前記ばねディスク(11)が凹部を備え、前記レバー(12)が、前記凹部を通して突出するピン(16)によって前記ばねディスク(11)に接続される請求項1又は3に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項5】
前記ばねディスク(11)の環状外側部分が、当該ばねディスク(11)と前記タービンハウジング(2)との間のシール面として形成される請求項2?4のいずれか一項に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項6】
前記シール面がビード(18)の形態である請求項5に記載の排気ガスターボチャージャ。
【請求項7】
前記シール面が前記ウェイストゲートダクト(19)に向かって前方に曲げられる請求項5又は6に記載の排気ガスターボチャージャ。」

第4 刊行物
1.刊行物1(特開2012-67698号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物1には、「ウエストゲートバルブ装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

(1)刊行物1の記載事項
1a)「【請求項1】
過給機のタービンホイールをバイパスするバイパス通路を開閉する弁体と、前記弁体を開閉方向に移動するアームとを有するウエストゲートバルブと、
電動モータの回転運動を弁開閉運動に変換して前記弁体に前記アームを介して伝達する開閉機構とを備えたウエストゲートバルブ装置において、
前記弁体は前記アームに対して弁開閉方向に接離可能に取り付けられているとともに、前記弁体とアームとの間にばねが設けられていることを特徴とするウエストゲートバルブ装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

1b)「【0009】
本発明は、過給機のタービンホイールをバイパスするバイパス通路(排気バイパス通路)を開閉する弁体と、その弁体を開閉方向に移動するアーム(揺動アーム)とを有するウエストゲートバルブと、電動モータの回転運動を弁開閉運動に変換して前記弁体に前記アームを介して伝達する開閉機構とを備えたウエストゲートバルブ装置を前提としており、このようなウエストゲートバルブ装置において、前記弁体は前記アームに対して弁開閉方向に接離可能に取り付けられているとともに、前記弁体とアームとの間にばねが設けられていることを技術的特徴としている。」(段落【0009】)

1c)「【0035】
-ウエストゲートバルブ装置-
次に、ウエストゲートバルブ装置200について図1?図5を参照して説明する。
【0036】
この例のウエストゲートバルブ装置200は、ウエストゲートバルブ201、リンク機構202、ギヤ機構203、及び、電動モータ(例えばDCモータ)204などを備えている。
【0037】
まず、ウエストゲートバルブ装置200を説明する前に、タービンハウジング110の構成の一部について説明する。この例のタービンハウジング110には、図1?図4に示すように、タービンホイール101をバイパスする排気バイパス通路111が形成されている。排気バイパス通路111は、タービンハウジング110の壁体110bを貫通する円形のウエストゲート穴111aを備えており、タービンホイール101の上流側(排気ガス流れの上流側)と排気ガス出口通路110aとに連通している。上記ウエストゲート穴111aの周縁部(排気ガス出口通路110a側の周縁部)には弁座(バルブシート)112が設けられている。
【0038】
ウエストゲートバルブ201は、タービンハウジング110に設けられた上記弁座112に着座または離座して上記排気バイパス通路111を開閉する円形の弁体211と、この弁体211を開閉方向(弁座112に対して接離する方向)に移動する揺動アーム212とを備えており、この揺動アーム212の揺動により、弁体211を排気バイパス通路111を閉鎖する位置(全閉位置:図2)と、排気バイパス通路111を完全に開放する位置(全開位置:図3)との間において移動させることができる。なお、タービンハウジング110の弁座112もウエストゲートバルブ201の構成部材に含まれる。
【0039】
そして、この例のウエストゲートバルブ201においては、揺動アーム212の先端部に、この揺動アーム212に対して直交する方向に延びる支持ピン214が設けられており、この支持ピン214に弁体211がスライド自在に設けられている。つまり、弁体211が揺動アーム212の先端部に、この揺動アーム212に対して弁開閉方向に接離可能に取り付けられており、その弁体211と揺動アーム212の先端部との間にばね(この例では「皿ばね」)213が挟み込まれている。さらに、揺動アーム212に対し離反する向きへの弁体211の移動はストッパ(例えば、止め輪やナットなど)215によって規制されており、弁体211に外力(揺動アーム212側への押圧力)が作用しない状態ときには、上記ばね213の力により弁体211がストッパ215に押圧された状態で当接する。
【0040】
なお、ストッパ215は、支持ピン214の先端部を「かしめる」ことによって設けておいてもよい。また、この例において、支持ピン214の外径に対して弁体211の貫通穴211aの内径が所定量だけ大きく形成されており、弁体211は支持ピン214に対して傾動可能となっている。
【0041】
上記ウエストゲートバルブ201の揺動アーム212は、リンク機構202及びギヤ機構203を介して電動モータ204の回転軸241に連結されている。
【0042】
リンク機構202は、リンクシャフト221、駆動アーム222、駆動ロッド223、及び、クランクアーム224などを備えている。
【0043】
リンクシャフト221の一端部には、上記ウエストゲートバルブ201の揺動アーム212の端部(弁体211とは反対側の端部)が一体的に取り付けられている。リンクシャフト221はタービンハウジング110の壁体110bを貫通してハウジング外部に突出している。また、リンクシャフト221はタービンハウジング110の壁体110bに回転自在に支持されている。
【0044】
リンクシャフト221の他端部(揺動アーム212とは反対側の端部)には駆動アーム222の一端部が一体的に取り付けられている。駆動アーム222の他端部は駆動ロッド223の一端部に連結ピン(リンク)225を介して回転自在に連結されている。駆動ロッドの他端部はクランクアーム224の先端部に連結ピン(リンク)226を介して回転自在に連結されており、この駆動ロッド223の前進・後退により駆動アーム222が揺動してリンクシャフト212がその軸心を中心として回転する。」(段落【0035】ないし【0044】)

1d)「【0059】
以上説明したように、この例のウエストゲートバルブ装置によれば、ウエストゲートバルブ201の弁体211を、当該弁体211を移動する揺動アーム212に対し弁開閉方向に接離可能に取り付けるとともに、その弁体211と揺動アーム212との間にばね213を設けているので、バルブ全閉時において弁体211がタービンハウジング110の弁座112に突き当たるときの荷重をばね213によって低減することができ、電動モータ204にかかる力を小さくすることができる。これによってバルブ全閉時に電動モータ204に大きな電流が流れないようにすることができ、電動モータ204の寿命を延ばすことができる。さらに、バルブ全閉時において弁体211が弁座112に突き当たるときの衝撃力をばね213にて低減することができるので、電動モータ204、ウエストゲートバルブ201(弁体211や弁座112等)、ギヤ機構203、及び、リンク機構202の各部の磨耗を抑制することができる。
【0060】
また、バルブ閉じ時において電動モータ204への通電制御により上記バルブ全閉時の目標ギヤ角度θgtに制御したときに、バルブ全閉位置(弁体211の実際の閉鎖位置)がばらついても、そのばらつき分をばね213にて吸収することができるので、バルブを常に確実に閉じることができる。」(段落【0059】及び【0060】)

(2)引用発明
上記(1)及び図面からみて、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「タービンハウジング110であって、
タービンホイール101の上流側と排気ガス出口通路110aを有し、
タービンホイール101の上流側と排気ガス出口通路110aとの間にウエストゲート穴111aを有するタービンハウジング110と、
ウエストゲート穴111aを開閉するために揺動可能な弁体211を有するリンク機構202とを備えるターボチャージャ100であって、
リンク機構202が、タービンハウジング110に回転自在に支持されたリンクシャフト221を備え、揺動アーム212を備え、
揺動アーム212が、共に回転するように弁体211をリンクシャフト221に接続し、
弁体211が、揺動アーム212に対して直交する方向に延びる支持ピン214にスライド自在に設けられており、
弁体211と揺動アーム212との間にばね213が挟み込まれている、
ターボチャージャ100。」

2.刊行物2(特開2009-236088号公報)について
原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物2には、「排気制御バルブを備えた排気タービン」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

(1)刊行物2の記載事項
2a)「【0003】
図3には、排気ターボ過給機の排気タービンにおけるウェストゲートバルブ(排気制御バルブ)周辺の構造を示し、図3(A)はウェストゲートバルブ駆動部の縦断面図、(B)は(A)のA?A断面図である。
図3(A)、(B)において、100は排気タービンで次のように構成されている。
1はタービンケーシングで内部にタービン(内容は図示省略)2を備えている。
3はウェストゲートバルブで、図示を省略したエンジンから排気ガス通路6を通って前記タービン2に供給される排気ガスを、前記タービン2の上流の排気ガス通路6から分岐し、前記タービン2をバイパスして排気バイパス通路5を流し、排気ガス出口通路5aに連通させている。4はエンジンからの排気ガス入口フランジである。
【0004】
前記ウェストゲートバルブ3の弁体3aは、往復動することにより前記排気バイパス通路5の弁座5bを開閉し、開弁時には、図3(B)のように、排気ガス通路6の排気ガス(バイパス流)が排気ガス出口通路5aへと、矢印のように流れる。
前記ウェストゲートバルブ3の弁体3aには、L字状の支軸8の端部8bがリベット8cにより固定されている。前記支軸8の回動部は、前記タービンケーシング1に固定されたブッシュ7に回動自在に嵌合されている。
【0005】
9はアームで、前記支軸8の軸端部にかしめ9a等により固定されている。該アーム9の一端部には、図示しないアクチュエータへの連結部13を備えている。従って、前記アクチュエータによる該連結部13の往復動により、前記支軸8をその軸心8aの周りに回動させ、かかる支軸8の軸心8a周りの回動によって、前記弁体3aが弁座5bを開閉する。」(段落【0003】ないし【0005】)

2b)「【0019】
図1(A)は、本発明の第1実施例にかかる排気ターボ過給機の排気タービンにおけるウェストゲートバルブ(排気制御バルブ)周辺の構造を示し、図1(B)は(A)のZ矢視図である。
図1において、100は排気タービンで次のように構成されている。
タービンケーシング1は、内部にタービン(内容は図示省略)2を備えている。
3はウェストゲートバルブで、図3に示すように、エンジン(図示省略)から排気ガス通路6を通って前記タービン2に供給される排気ガスを、前記タービン2の上流の排気ガス通路6から分岐し、前記タービン2をバイパスして排気バイパス通路5を流し、排気ガス出口通路5aに連通させている。4はエンジンから排気ガス入口フランジである。
【0020】
図3(A)、(B)に示すように、前記ウェストゲートバルブ3の弁体3aは、往復動することにより前記排気バイパス通路5の弁座5bを開閉し、開弁時には、図3(B)のように、排気ガス通路6の排気ガス(バイパス流)が排気ガス出口通路5aへと、矢印のように流れる。
前記ウェストゲートバルブ3の弁体3aには、L字状の支軸8の端部8bがリベット8cにより固定されている。前記支軸8の回動部は、前記タービンケーシング1に固定されたブッシュ7に回動自在に嵌合されている
9はアームで、前記支軸8の軸端部にかしめ9a等により固定されている。該アーム9の一端部には、図示しないアクチュエータへの連結部13を備えている。
【0021】
以上の構成は、図3(A)、(B)と同様である。本発明は、前記アームの前記軸心に対して前記駆動源への連結部とは反対側の端部に装着された錘を備えている。
前記ウェストゲートバルブ3は、錘10を、前記アーム9の支軸8の軸心8aに対して前記アクチュエータへの連結部13とは反対側の端部10sに、ボルト12とセルフロックナット11とで前記アーム9に固着されている。
即ちウェストゲートバルブ3は中心が、図1(A)のように、アクチュエータへの連結部13から一定距離Sをおいたウェストゲートバルブ軸心3cに配置されており、前記錘10は前記連結部13と前記ウェストゲートバルブ軸心3cとの間に配置されることとなる。
【0022】
従って、前記アクチュエータによる該連結部13の往復動により、前記支軸8をその軸心8aの周りに、前記錘10の慣性に対向して回動させ、かかる支軸8の軸心8a周りの回動によって、前記弁体3aが弁座5bを開閉する。」(段落【0019】ないし【0022】)

(2)刊行物2技術
上記(1)及び図面からみて、刊行物2には以下の技術(以下、「刊行物2技術」という。)が記載されている。

「タービンケーシング1に回動自在に嵌合されているL字状の支軸8の端部8bに、ウェストゲートバルブ3の弁体3aをリベット8cにより固定する技術。」

3.刊行物3(特開平10-9423号公報)について
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物3には、「転倒ガス遮断弁」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

(1)刊行物3の記載事項
3a)「【請求項1】 バーナへガスを供給するガス供給路に設けられた開閉弁の、上流又は下流に介設された本体内に往復動自在の弁体と、該弁体の上流側に位置し該本体の傾斜によって本体内を移動することによって弁体を上流側から押して往動させ弁体のシール面を本体に設けた弁座に押接させてガス供給路を遮断する可動子とを備えた転倒ガス遮断弁において、上記弁体を、基体と該基体に貼着される可撓性材料から成るシール部材とで構成し、該シール部材にシール面を形成すると共に、基体とシール部材との間のうち少なくともシール面に対応する部分に隙間を設けたことを特徴とする転倒ガス遮断弁。
【請求項2】 上記シール部材に連続した環状のビード部を突設し、該ビード部の頂部をシール面としたことを特徴とする請求項1記載の転倒ガス遮断弁。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】及び【請求項2】)

3b)「【0016】図4に示すごとく、弁体31とシール部材31cとの間に間隔L(0.5mm)の隙間31fが環状に形成されている。また、シール部材31cの上面には環状のビード部31e(高さB=0.8mm)を突設した。従って、弁体31が可動子32に押し上げられ往動すると弁座35にはビード部31eの頂部がシール面となって接触し、更に可動子32に押し上げられることによりシール部材31cが隙間31fを狭める方向にたわむことになる。たわみ量は弁体31とシール部材31cとが密着している部分の直径Dが小さいほど多くなる。本実施形態ではシール部材31cの直径を17mmとして、Dを13mmとした。従って、シール部材31cは全周にわたって2mmの幅で基体31aから突き出し、隙間31fが形成される。尚、シール部材31cの厚さtは約1mmと薄く、たわみによる変形量は間隔L分のみ許容され、それ以上は基体31aに当接して変形できないようになっている。従って、ガス圧が大きくシール部材31cが大きな力で弁座35に押圧されてもシール部材31cが破損したり、シール不良にならない。また、シール部材31cの上面外周にビード部31eを突設してシール面を形成したので、シール面が弁座35により密着し異物が噛み込んだ場合でもシールが確実になる。」(段落【0016】)

(2)刊行物3技術
上記(1)及び図面からみて、刊行物3には以下の技術(以下、「刊行物3技術」という。)が記載されている。

「開閉弁において、往復動自在の弁体が備えるシール部材31cの上面に、環状のビード部31eを突設する技術。」

4.刊行物4(特開2000-28010号公報)について
原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物4には、「バルブ装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

(1)刊行物4の記載事項
4a)「【請求項1】 弁座(22)に接離するゴム状弾性材製のビード(23)が弁体(8)のシール部(8a)に設けられるとともに、前記ビード(23)より高さの高いシールリップ(24)が前記ビード(23)の移送流体側に一体成形されていることを特徴とするバルブ装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

4b)「【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明のバルブ装置は、弁座に接離するゴム状弾性材製のビードが弁体のシール部に設けられるとともに、前記ビードより高さの高いシールリップが前記ビードの移送流体側に一体成形されていることにした。
【0009】上記構成を備えた本発明のバルブ装置においては、弁体のシール部に設けられたゴム状弾性材製のビードが弁座に接離することにより当該バルブが開閉せしめられる。」(段落【0008】及び【0009】)

4c)「【0020】弁体8のシール部8aである下面に、ゴム状弾性材製のシール部材(パッキンまたはゴムパッキンとも称する)21が取り付けられており、このシール部材21の下面に、弁座(バルブシール面またはシール面とも称する)22に接離する環状のビード23が一体成形されており、このビード23の移送流体側すなわち内周側に、同じく弁座22に接離する環状のシールリップ(リップとも称する)24が一体成形されている。」(段落【0020】)

(2)刊行物4技術
上記(1)及び図面からみて、刊行物4には以下の技術(以下、「刊行物4技術」という。)が記載されている。

「バルブ装置において、弁座(22)に接離するゴム状弾性材製の環状のビード(23)が弁体(8)のシール部(8a)に設けられるとともに、環状のビード(23)より高さの高い弁座22に接離する環状のシールリップ(24)がビード(23)の移送流体側に一体成形される技術。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「タービンハウジング110」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「タービンハウジング」に相当し、以下同様に、「タービンホイール101の上流側と排気ガス出口通路110a」は「排気ガス用のタービンハウジング入口及びタービンハウジング出口」に、「ウエストゲート穴111a」は「ウェイストゲートダクト」に、「揺動可能な」は「旋回可能な」に、「リンク機構202」は「フラップ装置」に、「ターボチャージャ100」は「排気ガスターボチャージャ」に、「支持された」は「取り付けられた」に、「リンクシャフト221」は「フラップシャフト」に、「揺動アーム212」は「レバー」に、それぞれ相当する。
さらに、引用発明における「弁体211」と、本願発明1における「フラッププレート」または「弾性ばねディスク」とは、「弁部材」という限りにおいて一致する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「タービンハウジングであって、
排気ガス用のタービンハウジング入口及びタービンハウジング出口を有し、
タービンハウジング入口とタービンハウジング出口との間にウェイストゲートダクトを有するタービンハウジングと、
ウェイストゲートダクトを開閉するための旋回可能な弁部材を有するフラップ装置とを備える排気ガスターボチャージャであって、
フラップ装置が、タービンハウジングに回転可能に取り付けられたフラップシャフトを備え、レバーを備え、
レバーが、共に回転するように弁部材をフラップシャフトに接続する、
排気ガスターボチャージャ。」

[相違点]
「弁部材」に関して、本願発明1においては、「フラッププレート」が「弾性ばねディスクの形態」であって、「ばねディスクがレバーに直接当接し、ばねディスクがばね鋼から製造される」のに対して、
引用発明においては、「弁体211」が揺動アーム212に対して直交する方向に延びる支持ピン214にスライド自在に設けられており、弁体211と揺動アーム212との間にばね213が挟み込まれている点。

上記相違点について検討する。

[相違点について]
引用発明における「弁体211」は、揺動アーム212に対して直交する方向に延びる支持ピン214を介してスライド自在に設けられることを前提とするものであるから、弁体211を揺動アーム212に直接当接するように構成することの動機付けが見出せない。
また、弁体211と揺動アーム212との間に挟み込まれるようにしたばね213と弁体211とを一体とする動機付けも見出せないが、仮にばね213と弁体211を一体とすることができたとしても、それらを一体としたものは、ばね213と弁体211を単に接合したものにすぎないから、弁体として直ちにばね鋼から製造される弾性ばねディスクを得ることが当業者にとって容易であるとはいえない。
さらに、刊行物2技術は、「タービンケーシング1に回動自在に嵌合されているL字状の支軸8の端部8bに、ウェストゲートバルブ3の弁体3aをリベット8cにより固定する技術」である。
しかしながら、刊行物2技術は、弁体3a自体がばね鋼から製造される弾性ばねディスクではなく、弁体3aに対してばねの性質を設けることを示唆するものでもない。
また、刊行物3技術は、「開閉弁において、往復動自在の弁体が備えるシール部材31cの上面に、環状のビード部31eを突設する技術」であり、刊行物4技術は、「バルブ装置において、弁座(22)に接離するゴム状弾性材製の環状のビード(23)が弁体(8)のシール部(8a)に設けられるとともに、環状のビード(23)より高さの高い弁座22に接離する環状のシールリップ(24)がビード(23)の移送流体側に一体成形される技術」であるが、いずれも弁体に設けられたシール部材の弁座への接離面の形状に関するものであって、弁体をばね鋼から製造される弾性ばねディスクで構成することを示唆するものではない。

したがって、本願発明1は、引用発明に基いて、または引用発明及び刊行物2技術ないし刊行物4技術に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

2.本願発明2ないし7について
本願の特許請求の範囲における請求項2ないし7は、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし7は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2ないし7は、本願発明1と同様の理由で、引用発明に基いて、または引用発明及び刊行物2技術ないし刊行物4技術に基いて当業者が容易に想到し得たとすることはできない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1ないし7は、「フラップ装置が、タービンハウジングに回転可能に取り付けられたフラップシャフトを備え、レバーを備え、レバーが、共に回転するようにばねディスクをフラップシャフトに接続し、ばねディスクがレバーに直接当接し、ばねディスクがばね鋼から製造される」という発明特定事項を有するものとなったから、当業者であっても、原査定の理由において引用された刊行物1ないし刊行物4に記載された発明又は技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし7に係る発明は、いずれも引用発明または引用発明及び刊行物2技術ないし刊行物4技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-04 
出願番号 特願2015-518466(P2015-518466)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北村 亮  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 松下 聡
西山 智宏
発明の名称 排気ガスターボチャージャ  
代理人 百本 宏之  
代理人 大賀 眞司  
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