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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G21C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G21C
管理番号 1335013
審判番号 不服2016-14936  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-05 
確定日 2017-11-30 
事件の表示 特願2013-550118「小型原子力発電システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月27日国際公開、WO2013/094196〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)12月19日(優先権主張 平成23年12月20日 日本)を国際出願日とする出願であって、平成28年3月28日付け(発送同年4月5日)で拒絶理由が通知され、同年6月6日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年6月30日付け(送達 同年7月5日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年10月5日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年10月5日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、本件補正前(平成28年6月6日になされた手続補正)の特許請求の範囲を、以下のとおりに補正する内容を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1につき、
「ウラニウム(235,238)及びプルトニウム239のいずれか一方又は双方を含有する金属燃料が被覆管に封入され、直径を5?15mmとしその長さを2.5m以下に形成された燃料棒を複数束ねて一体化してなる燃料集合体を複数備える炉心と、
直径を2m以下とし高さを12m以下とする円筒状に形成されるとともに、底部側に前記燃料集合体が装填され、上部側に1m以上の高さの空間部が設けられた原子炉容器と、
前記原子炉容器内に充填され、前記金属燃料の反応度に応じて温度を可変させるとともにその密度を変化させ、前記金属燃料の反応度を自動的に制御する金属ナトリウムからなる一次冷却材と、
前記炉心の外周囲を囲んで設置され、前記炉心の金属燃料から放射される中性子を前記金属燃料側に反射し、前記金属燃料から放射される中性子の実効倍増係数を約1以上に維持して前記金属燃料を臨界状態とする中性子反射体とを備え、
前記中性子反射体は、前記原子炉容器の上部側に設けられた空間部の高さより低い高さであって前記燃料棒の高さの1/2以下の高さに形成されるとともに、前記燃料棒の高さ方向に移動可能に支持され、移動機構により前記炉心の下方側から上方側に向かって移動操作されることにより、前記炉心の金属燃料と対向する位置が下方側から上方側に向かって移動され、前記金属燃料を下方側から上方側に向かって順次臨界状態とする原子炉と、
前記原子炉の外部に設置され、前記原子炉によって加熱された前記一次冷却材が導管を介して供給されるとともに、前記一次冷却材と熱交換されて加熱される超臨界二酸化炭素よりなる二次冷却材が循環する主熱交換器と、
前記主熱交換器によって加熱されて循環する前記超臨界二酸化炭素よりなる二次冷却材によって駆動されるタービンと、
前記二次冷却材によって駆動されるタービンにより駆動される発電機と
を備えることを特徴とする小型原子力発電システム。」
とあったものを、
「ジルコニウム、ウラニウム(235,238)及びプルトニウム239とを含有する合金からなる金属燃料がフェライト系ステンレス鋼又はクロム・モリブデン鋼からなる被覆管に封入され、直径を5?15mmとしその長さを2.5m以下に形成された燃料棒を複数束ねて一体化してなる燃料集合体を複数備える炉心と、
直径を2m以下とし高さを12m以下とする円筒状に形成されるとともに、底部側に前記燃料集合体が装填され、上部側に1m以上の高さの空間部が設けられた原子炉容器と、
前記原子炉容器内に充填され、前記金属燃料の反応度に応じて温度を可変させるとともにその密度を変化させ、前記金属燃料の反応度を自動的に制御する金属ナトリウムからなる一次冷却材と、
前記炉心の外周囲を囲んで設置され、前記炉心の金属燃料から放射される中性子を前記金属燃料側に反射し、前記金属燃料から放射される中性子の実効倍増係数を約1以上に維持して前記金属燃料を臨界状態とする中性子反射体とを備え、
前記中性子反射体は、前記原子炉容器の上部側に設けられた空間部の高さより低い高さであって前記燃料棒の高さの1/2以下の高さに形成されるとともに、前記燃料棒の高さ方向に移動可能に支持され、移動機構により前記炉心の下方側から上方側に向かって移動操作されることにより、前記炉心の金属燃料と対向する位置が下方側から上方側に向かって移動され、前記金属燃料を下方側から上方側に向かって順次臨界状態とする原子炉と、
前記原子炉の外部に設置され、前記原子炉によって加熱された前記一次冷却材が導管を介して供給されるとともに、前記一次冷却材と熱交換されて加熱される超臨界二酸化炭素よりなる二次冷却材が循環する主熱交換器と、
前記主熱交換器によって加熱されて循環する前記超臨界二酸化炭素よりなる二次冷却材によって駆動されるタービンと、
前記二次冷却材によって駆動されるタービンにより駆動される発電機と
を備えることを特徴とする小型原子力発電システム。」
に補正。

2 補正の目的
(1)本件補正は、補正前の請求項1において、「金属燃料」に関して、「ウラニウム(235,238)及びプルトニウム239のいずれか一方又は双方を含有する金属燃料」であったもののうち「ウラニウム(235,238)及びプルトニウム239の双方を含有する金属燃料」に限定した上で、さらに、「ジルコニウム」も含有するとの限定を付加するとともに、「被覆管」に関して、「フェライト系ステンレス鋼又はクロム・モリブデン鋼からなる」との限定を付加するものである。

(2)上記補正について検討する。
上記(1)の補正は、いずれも限定を付加する補正であるから、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。
(1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、上記「1」において、本件補正後のものとして記載したとおりのものと認める。

(2)刊行物の記載及び引用発明
ア 原査定における拒絶理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、米国特許出願公開第2010/303193号明細書(以下「引用文献1」という。訳は特表2012-529051号公報に基づいて当審が付した。)には、以下の記載がある(なお、下線は当審が付した。以下同じ。)。
(ア)「Traditional Metal Fuels
[0008] Metal fuel was the first fuel to be used in nuclear reactors. Later ceramic fuels became common because the early metal fuels were not capable of extended life in a reactor core. Furthermore, there were concerns of excessive fuel cladding interaction at high temperatures.
[0009] The deficiencies of the early metal fuels were addressed with a configuration capable of very high reactor exposures where metal fuel alloys prevented excessive fuel cladding interactions (See FIG. 1). FIG. 2 shows a cross-section of an irradiated metal fuel element. The types of metal fuels used in FIG. 1 had significant safety advantages over ceramic fuels because of high thermal conductivities of the metal fuels. Over 100,000 metal fuel elements have been utilized as driver fuel in the Experimental Breeder Reactor (EBR-II) and the metal fuel elements have been tested in the Fast Flux Test Facility (FFTF). The fabrication and performance of these metal fuels will be described briefly to allow comparison to the metal fuels of the present invention.
・・・
[0011] The fuel pin inside the cladding of the older EBR-II and FFTF metal fuel is an alloy of uranium-molybdenum, uranium-zirconium, or uranium-plutonium-zirconium.」
(従来の金属燃料
[0008] 金属燃料は、核反応炉で使用された最初の燃料である。その後、セラミックが普及し出したが、これは、初期の金属燃料には炉心内での延命化を図る余地がなかったためである。また、高温での燃料とクラッディングの過剰な相互作用も懸念事項であった。
[0009] 初期の金属燃料の欠陥は、金属燃料合金が過剰な燃料クラッディング相互作用を生じさせない非常に高い反応炉曝露を可能にする構成によって解決が図られた(図1参照)。図2は、照射された金属燃料要素の断面を示している。図1の使用されている金属燃料の型式は、当該金属燃料の高い熱伝導率のおかげで、セラミック燃料に勝る安全上の有意な利点を有している。100,000を超す金属燃料要素が実験用増殖炉(Experimental Breeder Reactor)(「EBR-II」)の中でドライバ燃料として利用され、またそれら金属燃料要素は高速線束試験施設(Fast Flux Test Facility)(FFTF)で試験されてきた。これらの金属燃料の加工と性能を、本発明の金属燃料との比較ができるように簡単に説明する。
・・・
[0011] 旧式のEBR-II及びFFTF金属燃料の、クラッディング内部の燃料ピンは、ウラン-モリブデン、ウラン-ジルコニウム、又はウラン-プルトニウム-ジルコニウム、の合金である。)

(イ)「[0018] Certain embodiments of the present invention may provide a long-life fuel cartridge core that fixes fuel costs for 15 or more years. Other embodiments may provide a Small Modular Reactor (SMR) including a long-life fuel cartridge core that fixes fuel costs for multiple years, including 15 or more years, and eliminates on-site refueling needs.」
([0018] 本発明の一部の特定の実施形態は、燃料コストを15年又はそれ以上に亘って固定化する長寿命の燃料カートリッジ炉心を提供するものである。他の実施形態は、燃料コストを15年又はそれ以上の年数を含め多年に亘って固定化し且つオンサイト燃料補給の必要性を排除する長寿命の燃料カートリッジ炉心を含んでいる小型モジュール式反応炉(Small Modular Reactor)(「SMR」)を提供するものである。)

(ウ)「[0030] A metal particulate fuel system is described. The metal fuel system may include particulate metal fuel for use in nuclear reactors. The particulate metal fuel may include a plurality of particles of at least one enriched alloy where the particles are compacted into a fuel column. The metal particulate fuel system may also include a cladding and/or a gas-filled plenum.
[0031] A metal fuel system 301 according to an embodiment of the present invention can be seen in FIG. 3. A fuel cladding tube 303 may be provided. Cladding dimensions may depend on reactor design. For existing reactor designs, cladding outer diameter ranges from approximately 0.5 to approximately 1.5 cm and wall thickness ranges from approximately 0.03 to approximately 0.08 cm. The fuel cladding tube 303 may be composed of low swelling HT-9 or oxide dispersion strengthened (ODS) HT-9. Other compositions or additional materials may be used for various applications. The fuel cladding tube 303 may be any low-swelling alloy compatible with a particular coolant.
・・・
[0034] The metal fuel particles 307 may be vibrated or impacted in the fuel cladding tube 303 , preferably to a density of 75% or less, into a fuel column 305. The smear density may be an initial volume occupied by the fuel divided by a total volume. A smear density of approximately 75% may be a maximum value where interconnected porosity and gas release occur before the fuel swells to the cladding. Vibration and impaction procedures may be known, and may be applied to metal fuel particles.
[0035] The fuel column 305 may be held in place by a restrainer 309, such as a simple spring arrangement or some other device to at least temporarily maintain pressure. Other restraining devices may be used, such as a small diameter rod instead of a spring. An initial gas in a plenum 311 would preferably be a gas sufficient to enhance thermal conductivity, e.g., helium. The fuel column 305 to gas plenum 311 volume ratio may be approximately 0.8 to approximately 2.0. A height of the fuel column 305 may range between approximately 0.5 m and approximately 1.5 m, dependent on a particular reactor. A length of the gas plenum 311 may range between approximately 0.8 and approximately two times the length of the fuel column 305, again dependent on the reactor.」
([0030]金属微粒子燃料システムを説明する。金属燃料システムは、核反応炉で使用するための微粒子状金属燃料を含むことができる。微粒子状金属燃料は、少なくとも1つの濃縮合金の複数粒子を含んでおり、それら粒子は燃料カラムへ締固められている。金属微粒子燃料システムは、更に、クラッディング及び/又はガス充填プレナムを含むことができる。
[0031]本発明の或る実施形態による金属燃料システム301は、図3に見ることができる。燃料クラッディング管303が提供されている。クラッディングの寸法は、反応炉設計によって異なる。既存の反応炉設計については、クラッディング外径は、大凡0.5cmから大凡1.5cmの範囲であり、壁厚さは、大凡0.03cmから大凡0.08cmの範囲である。燃料クラッディング管303は、低スウェリングHT-9又は酸化物分散強化型(oxide dispersion strengthened)(「ODS」)HT-9から構成されていてもよい。様々な用途に合わせて他の組成又は追加の材料を使用することもできる。燃料クラッディング管303は、それぞれ特定の冷却材との適合性のある如何なる低スウェリング合金であってもよい。
・・・
[0034] 金属燃料粒子307は、燃料クラッディング管303の中で、好適には75%又はそれ以下の密度まで、加振されるか又は突固められて、燃料カラム305にされる。スメア密度は、燃料によって占められている初期体積を総体積で割ったものである。大凡75%のスメア密度を、燃料がクラッディングに向かって膨らむ前に空孔の相互接続とガス放出が起こる最大値とすることができる。加振及び突固めの手順は知られており、金属燃料粒子に適用することができる。
[0035]燃料カラム305は、単純なばね仕掛け又は少なくとも一時的に加圧を維持する何か他の装置の様な拘束具309によって所定の場所に保持されている。ばねの代わりに小径ロッドの様な他の拘束用装置が使用されていてもよい。プレナム311の中の初期ガスは、好適には、熱伝導率を高めるのに十分であるガス、例えば、ヘリウムということになろう。燃料カラム305対ガスプレナム311の体積比は、大凡0.8対大凡2.0とすることができる。燃料カラム305の高さは、それぞれ特定の反応炉に応じて、大凡0.5mから大凡1.5mの間の範囲とすることができる。ガスプレナム311の長さは、同様に反応炉に応じて、燃料カラム305の長さの大凡0.8倍から大凡2倍の間の範囲とすることができる。)

(エ)「[0075] An exemplary SMR system 501 of the present invention, as shown in FIG. 5 , may include a uranium-fueled core 503, submerged in a tank 505 of ambient pressure liquid sodium 507. The SMR system 501 may also include control rods 513 and be encased in concrete 515. The liquid sodium 507 from the tank 505 may be pumped by a pump 509 through the core 503 to carry heat away to a heat exchanger 511, also submerged in the tank 505 of sodium 507. The sodium 507 may be heated to about 510 degrees Celsius.
[0076] FIG. 6 shows the SMR system 501 within a larger energy generation system 601. The heated sodium 507 may pass through the heat exchanger 511 to heat secondary sodium, which in turn passes through a heat exchanger 603 where the secondary sodium heats supercritical (almost liquid) carbon dioxide. The heated supercritical carbon dioxide may then be used to spin a gas turbine to make electricity in an electrical generator 605 in a carbon dioxide Brayton cycle building 607.」
([0075]図5に示されている、本発明の例示となるSMRシステム501は、大気圧液体ナトリウム507のタンク505に沈められているウラン燃料炉心503を含んでいる。SMRシステム501は、更に、制御棒513を含んでいて、コンクリート515に包まれている。タンク505からの液体ナトリウム507はポンプ509によって炉心503に送り込まれ、炉心を通って、熱を、同じくナトリウム507のタンク505内に沈められている熱交換器511へ運び去る。ナトリウム507は、摂氏約510度まで加熱されてもよい。
[0076]図6は、大型エネルギー生成システム601内のSMRシステム501を示している。加熱されたナトリウム507は、熱交換機511に通され、二次的なナトリウムを加熱することができ、加熱された二次的なナトリウムが今度は熱交換器603に通され、そこで二次的なナトリウムは、超臨界(殆ど液状)二酸化炭素を加熱する。加熱された超臨界二酸化炭素は、次に、二酸化炭素ブレイトンサイクル建屋607内の発電機605で電気を作るためのガスタービンを回すのに使用される。)

(オ)FIG.5,6(図5及び6)は次のものである。


(カ)上記(ア)ないし(エ)の記載を踏まえて、上記(オ)の図5を見ると、小型モジュール式反応炉(SMR)システム501のタンク505の底部側にウラン燃料炉心503が沈められ、上部側のウラン燃料炉心503の高さより十分に高い空間にナトリウム507が充填されている点を見てとることができ、また、上記(オ)の図6を見ると、熱交換器603は小型モジュール式反応炉(SMR)システム501の外部に設置され、超臨界二酸化炭素は熱交換器603によって加熱されて循環して発電機605のガスタービンを回すのに使用される点がみてとれる。

(キ)引用文献1の小型モジュール式反応炉(SMR)システム501は、旧式の実験用増殖炉(EBR-II)及び高速線束試験施設(FFTF)の課題を解決して、「金属燃料の加工」(上記「ア」「(ア)」)により、「燃料コストを15年又はそれ以上の年数を含め多年に亘って固定化し且つオンサイト燃料補給の必要性を排除する長寿命の燃料カートリッジ炉心」を提供するものである(上記「ア」「(イ)」)から、旧式の実験用増殖炉(EBR-II)及び高速線束試験施設(FFTF)の金属燃料であるウラン-モリブデン、ウラン-ジルコニウム、又はウラン-プルトニウム-ジルコニウムの合金のいずれかが用いられることは明らかである。
そして、引用文献1の小型モジュール式反応炉(SMR)システム501のウラン燃料炉心503に関して、「燃料クラッディング管303の寸法は、反応炉設計によって異なり、既存の反応炉設計については、クラッディング外径は、大凡0.5cmから大凡1.5cmの範囲であり、低スウェリングHT-9又は酸化物分散強化型(ODS)HT-9から構成されていてもよい」(上記「ア」「(ウ)」)とされ、また、「金属燃料粒子307は、燃料クラッディング管303の中で、好適には75%又はそれ以下の密度まで、加振されるか又は突固められて、燃料カラム305にされ、燃料カラム305の高さは、それぞれ特定の反応炉に応じて、大凡0.5mから大凡1.5mの間の範囲とすることができる」(上記「ア」「(ウ)」)とされるから、引用文献1の小型モジュール式反応炉(SMR)システム501のウラン燃料炉心503は、金属燃料のクラッディング内部の燃料ピンが、ウラン-モリブデン、ウラン-ジルコニウム、又はウラン-プルトニウム-ジルコニウムの合金のいずれかであって、また、ウラン燃料炉心503の燃料クラッディング管が、外径が0.5?1.5cmの低スウェリングHT-9又は酸化物分散強化型(ODS)HT-9のいずれかからなるものであってよいといえる。
ここで、当該HT-9はフェライトステンレススチール(フェライト系ステンレス鋼)であり(後記引用文献4に記載の技術的事項参照)、また、燃料としてのウラン及びプルトニウムがウラン(235,238)及びプルトニウム239であることは本願優先日当時の技術常識である。
そうすると、引用文献1には、燃料ピンをウラン(235,238)-プルトニウム239-ジルコニウムの合金となし、燃料クラッディング管の外径を0.5?1.5cmのHT-9(フェライト系ステンレス鋼)となし、燃料クラッディング管の中の燃料カラム305の高さを0.5?1.5mとなす小型モジュール式反応炉(SMR)システム501が記載されているといえる。

(ク)引用発明1
上記(ア)ないし(キ)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「加熱されたナトリウム507が、熱交換機511に通され、二次的なナトリウムを加熱し、加熱された二次的なナトリウムが今度は熱交換器603に通され、そこで二次的なナトリウムが、超臨界二酸化炭素を加熱し、前記加熱された超臨界二酸化炭素が、次に、二酸化炭素ブレイトンサイクル建屋607内の発電機605で電気を作るためのガスタービンを回すのに使用される大型エネルギー生成システム601内の、
燃料ピンをウラン(235,238)-プルトニウム239-ジルコニウムの合金となし、燃料クラッディング管の外径を0.5?1.5cmのHT-9(フェライト系ステンレス鋼)となし、燃料クラッディング管の中の燃料カラム305の高さを0.5?1.5mとなす小型モジュール式反応炉(SMR)システム501であって、
前記小型モジュール式反応炉(SMR)システム501は、大気圧液体ナトリウム507のタンク505に沈められているウラン燃料炉心503を含み、更に、制御棒513を含んでいて、コンクリート515に包まれ、前記タンク505からの液体ナトリウム507はポンプ509によって炉心503に送り込まれ、炉心を通って、熱を、同じくナトリウム507のタンク505内に沈められている熱交換器511へ運び去り、
前記小型モジュール式反応炉(SMR)システム501のタンク505の底部側にウラン燃料炉心503が沈められ、上部側のウラン燃料炉心503の高さより十分に高い空間にナトリウム507が充填され、前記熱交換器603は小型モジュール式反応炉(SMR)システム501の外部に設置され、超臨界二酸化炭素は熱交換器603によって加熱されて循環して発電機605のガスタービンを回すのに使用される、
大型エネルギー生成システム601。」

イ 原査定における拒絶理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平8-15473号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は制御棒に代えて炉心外周に設けた反射体により炉心燃料の燃焼を制御するナトリウム冷却型の高速炉に係り、特に炉外の駆動機構部を排除し、構造の簡略化を図った高速炉の反射体駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の反射体駆動装置の一例としては、特開平6-59069号(特願平4-212848号)公報に開示されたものがある。この反射体駆動装置を用いた原子炉は、図30に示すように原子炉容器1内に、複数の核燃料を装荷した炉心2と、この炉心2の外周に同心状に配設される環状の反射体3と、この反射体3のさらに外周に同心状に配設される環状の中性子遮蔽体4とをナトリウムからなる冷却材(一次ナトリウム)5とともに収容し、炉心2を炉心支持板6により支持している。
【0003】また、原子炉容器1は、その上部内に冷却材5を原子炉容器1内で強制循環させる電磁ポンプ7と、冷却材5を媒体として送られる熱を別系統に熱交換する中間熱交換器8と、原子炉運転停止後の崩壊熱を除去する崩壊熱除去コイル9を収容している。冷却材5であるナトリウムは図中実線矢印で示すように炉心2を流出してその上方の中間熱交換器8に流入し、その後、電磁ポンプ7から噴出されて再び炉心2に流入して循環する。二次ナトリウムは二次ナトリウム入口10から流入し、図中破線矢印で示すように中間熱交換器8を介して冷却材(一次ナトリウム)5と熱交換した後、二次ナトリウム出口11から流出する。
【0004】ところで、反射体3は炉心2の核燃料から放射される中性子を受けて、この中性子を再び炉心2側へ反射して戻すことにより、炉心2内の核燃料の燃焼を促進させるものである。したがって、反射体3が炉心2の外周に位置するときは、炉心2の核燃料の燃焼が促進される。逆に、反射体3が炉心2の外周に位置しないときは、炉心2からの中性子は反射体3で反射されずに、径方向外方へ拡散され、炉心2の核燃料の燃焼は促進されない。
【0005】この反射体3の位置を制御する従来の反射体駆動装置は、原子炉起動時および停止時にその起動位置と停止位置とに、それぞれ反射体3を高速に移動させる高速反射体駆動装置Aと、原子炉通常運転時に上記起動位置から炉心2の核燃料の燃焼最終位置まで反射体3を超微速で徐々に移動させる超微速反射体駆動装置Bとを有し、高速反射体駆動装置Aが超微速反射体駆動装置Bを昇降自在に支持することにより、反射体3を高速に上昇または降下駆動可能な構成となっている。
【0006】つまり、超微速反射体駆動装置Bは反射体3を例えば3m/10年の超微速で上昇させ、10年で炉心2の核燃料を完全に燃焼させるものであり、その間燃料の交換は行わない。」

(イ)「【0074】図24?図26は本発明に係る高速炉の反射体駆動装置の第7実施例を示す。この実施例は支持部材29にばね103を取り付けたものである。図24は原子炉起動前の状態を示し、図25は冷却材5の流体圧を利用して反射体3を原子炉の起動位置に流体駆動した状態を示し、図26は反射体駆動装置40の上昇駆動に伴って反射体3が原子炉燃料を燃焼させる最終位置まで超微速に移動された状態を示す。
【0075】まず、図24に示すように原子炉起動前の状態において、反射体3はその自重によりばね103を圧縮した位置にある。原子炉を起動させる位置には、図25に示すように反射体駆動装置40が炉心バレル30に吸着支持されており、この反射体駆動装置40がストッパとなって流体圧により上昇した反射体3を原子炉の起動位置で固定し、図示しない連結機構により反射体駆動装置40と反射体3を連結する。この時、ばね103は起動時の流体駆動負荷を軽減して反射体3の迅速な移動を可能にするとともに、原子炉の停止時においては流体圧を与える電磁ポンプ7の停止による反射体3下降時の衝撃を軽減する。原子炉通常運転時の燃焼状態において、反射体3は図26に示すように反射体駆動装置40の上昇駆動に伴って原子炉起動位置から原子炉燃料を燃焼させる最終位置まで超微速に移動される。」

(ウ)図23ないし26は次のものである。


(エ)上記(ア)及び(イ)の記載を踏まえて、上記(ウ)の図23ないし26を見ると、原子炉の反射体3は炉心2の高さと比較すると小さな高さを有するものとして記載されている。

(オ)引用発明2
上記(ア)ないし(エ)によれば、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「反射体が炉心の核燃料から放射される中性子を受けて、この中性子を再び炉心側へ反射して戻すことにより、炉心内の核燃料の燃焼を促進させるものであって、反射体が炉心の外周に位置するときは、炉心の核燃料の燃焼が促進され、逆に、反射体が炉心の外周に位置しないときは、炉心らの中性子は反射体で反射されずに、径方向外方へ拡散され、炉心の核燃料の燃焼は促進されない、制御棒に代えて炉心外周に設けた反射体により炉心燃料の燃焼を制御するナトリウム冷却型の高速炉であって、
原子炉の前記反射体は前記炉心の高さと比較すると小さな高さを有し、
超微速反射体駆動装置は反射体を例えば3m/10年の超微速で上昇させ、10年で炉心の核燃料を完全に燃焼させるものであり、その間燃料の交換は行わない、ナトリウム冷却型の高速炉。」

ウ 原査定における拒絶理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開2005-49135号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体金属冷却型原子力プラント(液体金属冷却型原子炉)に関し、特に、冷却材の液体金属の漏洩時に火災などの危険が小さい液体金属冷却型原子力プラントに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の典型的な液体金属冷却型原子力プラントでは、炉心を冷却する1次冷却材である液体金属としてナトリウムが主に使われている。1次冷却材のナトリウムにより加熱される2次冷却材である液体金属も主にナトリウムが使われ、2次冷却材のナトリウムは原子炉容器の外部に設けた冷却器を介して3次冷却材によって冷却される構成となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ナトリウムは熱伝導率が高く、熱輸送の点で優れている。しかし、ナトリウムは漏洩時の火災発生と水との急激な反応の可能性があるので、その影響を緩和するために、漏洩時の検知装置、火災防止装置などの安全対策設備が必要である。また、融点が98℃で、純度管理を考慮して150℃以上に予熱して温度で使われる。系統の配管、弁、機器などナトリウムが流れる部分には予熱昇温するヒータ、温度制御器、保温設備が必要とされ、これらの設備が膨大である。このためこれらの設備を簡素化し、建設コストを削減するとともに信頼性を確保することが課題とされている。

(イ)「【0019】
[第3の実施の形態]
図3は本発明に係る液体金属冷却原子力プラントの第3の実施の形態の概略構成図である。本実施の形態の液体金属冷却原子力プラントでは、2次冷却材系を省略し、1次冷却材(液体金属)3を原子炉容器1の外部に設けた1次熱交換器5で直接3次冷却材(水)9で冷却する。1次熱交換器5で3次冷却材9の水から発生する蒸気によりタービン11を駆動し、タービン11により発電機12を駆動し、電力を発生する。」

(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3に記載の技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「従来の典型的な液体金属冷却型原子力プラントでは、炉心を冷却する1次冷却材である液体金属としてナトリウムが主に使われ、1次冷却材のナトリウムにより加熱される2次冷却材である液体金属も主にナトリウムが使われ、2次冷却材のナトリウムは原子炉容器の外部に設けた冷却器を介して3次冷却材によって冷却される構成となっているが、2次冷却材系を省略し、1次冷却材3を原子炉容器1の外部に設けた1次熱交換器5で直接3次冷却材9で冷却することで設備を簡素化し建設コストを削減する点。」

エ 本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開昭60-211389号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「本発明は、原子炉燃料要素被覆管に関し、・・・」(1頁左欄最下行)

(イ)「HT-9はCr12W/O、Mo1W/Oを含むフェライトステンレススチール合金である。」(4頁右下欄10?12行)

(ウ)上記(ア)及び(イ)によれば、引用文献4には、次の技術的事項(以下「引用文献4に記載の技術的事項」という。)が記載されているものと認められる。
「原子炉燃料要素被覆管に関して、HT-9はフェライトステンレススチール合金である点。」

(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明1を対比する。
(ア)引用発明1の「小型モジュール式反応炉(SMR)システム501のウラン燃料炉心503」は、「燃料ピンをウラン(235,238)-プルトニウム239-ジルコニウムの合金となし、燃料クラッディング管の外径を0.5?1.5cmのHT-9(フェライト系ステンレス鋼)となし、燃料クラッディング管の中の燃料カラム305の高さを0.5?1.5mとなす」ものであるところ、当該燃料クラッディング管を複数束ねて一体化することは従来周知の構成であるから、上記引用発明1の「小型モジュール式反応炉(SMR)システム501のウラン燃料炉心503」と、本願補正発明の「ジルコニウム、ウラニウム(235,238)及びプルトニウム239とを含有する合金からなる金属燃料がフェライト系ステンレス鋼又はクロム・モリブデン鋼からなる被覆管に封入され、直径を5?15mmとしその長さを2.5m以下に形成された燃料棒を複数束ねて一体化してなる燃料集合体を複数備える炉心」とは、「ジルコニウム、ウラニウム(235,238)及びプルトニウム239とを含有する合金からなる金属燃料がフェライト系ステンレス鋼からなる被覆管に封入され、直径を5?15mmに形成された燃料棒を複数束ねて一体化してなる燃料集合体を複数備える炉心」の点で一致する。

(イ)引用発明1の小型モジュール式反応炉(SMR)システム501の原子炉容器としての「タンク505」は、「底部側にウラン燃料炉心503が沈められ、上部側のウラン燃料炉心503の高さより十分に高い空間にナトリウム507が充填され」るものであるから、本願補正発明の「直径を2m以下とし高さを12m以下とする円筒状に形成されるとともに、底部側に前記燃料集合体が装填され、上部側に1m以上の高さの空間部が設けられた原子炉容器」と「底部側に前記燃料集合体が装填され、上部側に空間部が設けられた原子炉容器」の点で一致する。

(ウ)引用発明1の小型モジュール式反応炉(SMR)システム501は、「加熱されたナトリウム507が、熱交換機511に通され、二次的なナトリウムを加熱し、加熱された二次的なナトリウムが今度は熱交換器603に通され、そこで二次的なナトリウムが、超臨界二酸化炭素を加熱し、前記加熱された超臨界二酸化炭素が、次に、二酸化炭素ブレイトンサイクル建屋607内の発電機605で電気を作るためのガスタービンを回すのに使用され」、「前記熱交換器603は小型モジュール式反応炉(SMR)システム501の外部に設置され、超臨界二酸化炭素は熱交換器603によって加熱されて循環して発電機605のガスタービンを回すのに使用される」ものである。
よって、引用発明1の「加熱されたナトリウム507が、熱交換機511に通され、二次的なナトリウムを加熱し、加熱された二次的なナトリウムが今度は熱交換器603に通され、そこで二次的なナトリウムが、超臨界二酸化炭素を加熱し、前記加熱された超臨界二酸化炭素が、次に、二酸化炭素ブレイトンサイクル建屋607内の発電機605で電気を作るためのガスタービンを回すのに使用され」、「前記熱交換器603は小型モジュール式反応炉(SMR)システム501の外部に設置され、超臨界二酸化炭素は熱交換器603によって加熱されて循環して発電機605のガスタービンを回すのに使用される」小型モジュール式反応炉(SMR)システム501と、本願補正発明の「前記原子炉容器内に充填され、前記金属燃料の反応度に応じて温度を可変させるとともにその密度を変化させ、前記金属燃料の反応度を自動的に制御する金属ナトリウムからなる一次冷却材」及び「前記原子炉の外部に設置され、前記原子炉によって加熱された前記一次冷却材が導管を介して供給されるとともに、前記一次冷却材と熱交換されて加熱される超臨界二酸化炭素よりなる二次冷却材が循環する主熱交換器」を備える原子炉とは、それぞれ、「前記原子炉容器内に充填され、金属ナトリウムからなる一次冷却材」及び「前記原子炉の外部に設置され、前記原子炉によって加熱された前記一次冷却材が導管を介して供給されるとともに、冷却材と熱交換されて加熱される超臨界二酸化炭素よりなる冷却材が循環する主熱交換器」の点で一致する。
また、引用発明1の「加熱されたナトリウム507が、熱交換機511に通され、二次的なナトリウムを加熱し、加熱された二次的なナトリウムが今度は熱交換器603に通され、そこで二次的なナトリウムが、超臨界二酸化炭素を加熱し、前記加熱された超臨界二酸化炭素が、次に、二酸化炭素ブレイトンサイクル建屋607内の発電機605で電気を作るためのガスタービンを回すのに使用され」、「前記熱交換器603は小型モジュール式反応炉(SMR)システム501の外部に設置され、超臨界二酸化炭素は熱交換器603によって加熱されて循環して発電機605のガスタービンを回すのに使用される」小型モジュール式反応炉(SMR)システム501と、本願補正発明の「前記主熱交換器によって加熱されて循環する前記超臨界二酸化炭素よりなる二次冷却材によって駆動されるタービンと、前記二次冷却材によって駆動されるタービンにより駆動される発電機」とは、「前記主熱交換器によって加熱されて循環する前記超臨界二酸化炭素よりなる冷却材によって駆動されるタービンと、前記冷却材によって駆動されるタービンにより駆動される発電機」の点で一致する。

(エ)引用発明1の「小型原子力発電システム」は本願補正発明の「大型エネルギー生成システム601」に相当する。

(オ)以上(ア)ないし(エ)での検討によれば、本願補正発明と引用発明1は、
「ジルコニウム、ウラニウム(235,238)及びプルトニウム239とを含有する合金からなる金属燃料がフェライト系ステンレス鋼からなる被覆管に封入され、直径を5?15mmに形成された燃料棒を複数束ねて一体化してなる燃料集合体を複数備える炉心と、
底部側に前記燃料集合体が装填され、上部側に空間部が設けられた原子炉容器と、
前記原子炉容器内に充填され、金属ナトリウムからなる一次冷却材と、
前記原子炉の外部に設置され、前記原子炉によって加熱された前記一次冷却材が導管を介して供給されるとともに、冷却材と熱交換されて加熱される超臨界二酸化炭素よりなる冷却材が循環する主熱交換器と、
前記主熱交換器によって加熱されて循環する前記超臨界二酸化炭素よりなる冷却材によって駆動されるタービンと、
前記冷却材によって駆動されるタービンにより駆動される発電機と
を備える小型原子力発電システム。」
である点で一致し、下記各点で相違する。

a 「燃料棒」が、本願補正発明は、「長さを2.5m以下」とするのに対して、引用発明1は、このような特定がない点(以下「相違点1」という。)。

b 本願補正発明の、「原子炉容器」は、「直径を2m以下とし高さを12m以下とする円筒状に形成されるとともに」、上部側に「1m以上の高さの」空間部が設けられたのに対して、引用発明1の原子炉容器としての「タンク505」は、このような特定がない点(以下「相違点2」という。)。

c 本願補正発明は、「金属ナトリウム」は、「前記金属燃料の反応度に応じて温度を可変させるとともにその密度を変化させ、前記金属燃料の反応度を自動的に制御する」ものであるのに対して、引用発明1の「ナトリウム」は、このような特定がない点(以下「相違点3」という。)。

d 「原子炉」が、本願補正発明では、「前記炉心の外周囲を囲んで設置され、前記炉心の金属燃料から放射される中性子を前記金属燃料側に反射し、前記金属燃料から放射される中性子の実効倍増係数を約1以上に維持して前記金属燃料を臨界状態とする中性子反射体とを備え、前記中性子反射体は、前記原子炉容器の上部側に設けられた空間部の高さより低い高さであって前記燃料棒の高さの1/2以下の高さに形成されるとともに、前記燃料棒の高さ方向に移動可能に支持され、移動機構により前記炉心の下方側から上方側に向かって移動操作されることにより、前記炉心の金属燃料と対向する位置が下方側から上方側に向かって移動され、前記金属燃料を下方側から上方側に向かって順次臨界状態とする」原子炉であるのに対して、引用発明1では、「制御棒513を含」む原子炉である点(以下「相違点4」という。)。

e 「超臨界二酸化炭素」が、本願補正発明では、「一次冷却材と熱交換されて加熱される」「二次冷却材」であるのに対して、引用発明1では、「二次的なナトリウムが、超臨界二酸化炭素を加熱」する、三次冷却材である点(以下「相違点5」という。)。

イ 判断
(ア)相違点1及び2について検討する。
引用発明1は、小型モジュール式反応炉(SMR)システム501であるところ、原子炉容器を円筒状とすることは常套手段である。
また、(中に燃料カラム305を含む)燃料クラッディング管303を複数束ねたものであるといえるウラン燃料炉心503の大きさに関して、「燃料クラッディング管の中の燃料カラム305の高さを0.5?1.5mとなす」ことに照らして、燃料クラッディング管の高さ(長さ)を「燃料クラッディング管の中の燃料カラム305の高さを0.5?1.5m」を含み得る適宜の高さ(長さ)として2.5m以下となし、かつ、当該大きさのウラン燃料炉心503を収容し得る適宜の大きさとして、タンク505(原子炉容器)の直径を2m以下とし高さを12m以下とする円筒状に形成することは、当業者が適宜なし得た事項である。
また、引用発明1は、「小型モジュール式反応炉(SMR)システム501のタンク505の底部側にウラン燃料炉心503が沈められ、上部側のウラン燃料炉心503の高さより十分に高い空間にナトリウム507が充填され」るものであるところ、燃料カラム305の高さを0.5?1.5mの間の範囲とするから、上部側のウラン燃料炉心503の高さより十分に高い空間を1m以上とすることも、当業者が適宜なし得る事項である。
そうすると、引用発明1において、タンク505(原子炉容器)の直径を2m以下とし高さを12m以下とする円筒状に形成するとともに、上部側のウラン燃料炉心503の高さより十分に高い空間を1m以上とすることにより、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得た事項である。

(イ)相違点3について検討する。
金属燃料の反応度に応じて温度を可変させるとともにその密度を変化させ、前記金属燃料の反応度を自動的に制御する機能は、金属ナトリウム自体が備える性質であって、周知の機能にすぎない。
よって、相違点3については、実質的な相違点ではない。

(ウ)相違点4について検討する。
引用発明1は、制御棒513を有する小型モジュール式反応炉(SMR)システム501であるところ、設備を簡素化し建設コストを削減するという周知の課題を解決するために、引用発明2における「反射体が炉心の核燃料から放射される中性子を受けて、この中性子を再び炉心側へ反射して戻すことにより、炉心内の核燃料の燃焼を促進させるものであって、反射体が炉心の外周に位置するときは、炉心の核燃料の燃焼が促進され、逆に、反射体が炉心の外周に位置しないときは、炉心らの中性子は反射体で反射されずに、径方向外方へ拡散され、炉心の核燃料の燃焼は促進されない、制御棒に代えて炉心外周に設けた反射体により炉心燃料の燃焼を制御するナトリウム冷却型の高速炉であって、原子炉の前記反射体は前記炉心の高さと比較すると小さな高さを有し、超微速反射体駆動装置は反射体を例えば3m/10年の超微速で上昇させ、10年で炉心の核燃料を完全に燃焼させるものであり、その間燃料の交換は行わない、ナトリウム冷却型の高速炉」の構成を採用し、さらに、適宜に設計変更することによって、ウラン燃料炉心503のタンク505の外周囲を囲んで設置され、前記ウラン燃料炉心503の金属燃料から放射される中性子を前記金属燃料側に反射し、炉心の核燃料の燃焼が促進されるよう(前記金属燃料から放射される中性子の実効倍増係数を約1以上)に維持して前記金属燃料を臨界状態とする反射体を備え、前記反射体は、前記タンク505の上部側に設けられた空間部の高さより低い高さであって、(中に燃料カラム305を含む)燃料クラッディング管303の高さの1/2以下の高さに形成されるとともに、前記燃料クラッディング管303の高さ方向に超微速反射体駆動装置で移動可能とし、前記超微速反射体駆動装置により前記ウラン燃料炉心503の下方側から上方側に向かって上昇させることにより、前記ウラン燃料炉心503の金属燃料と対向する位置が下方側から上方側に向かって移動され、前記金属燃料を下方側から上方側に向かって順次臨界状態とする原子炉となすことは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
なお、上記の適宜に設計変更することの意味は、引用発明2は、「原子炉の反射体は前記炉心の高さと比較すると小さな高さを有」するものであって、「3m/10年の超微速で上昇させ、10年で炉心の核燃料を完全に燃焼させるものであ」るから、反射体が燃料クラッディング管303の高さの1/2以下の高さであることは直接記載されていないものの、このような大きさとなすことは、当業者が適宜なし得た設計事項である。

(エ)相違点5について検討する。
引用発明1は、二次的なナトリウムが三次冷却材である超臨界二酸化炭素を加熱する構成であるところ「従来の典型的な液体金属冷却型原子力プラントでは、炉心を冷却する1次冷却材である液体金属としてナトリウムが主に使われ、1次冷却材のナトリウムにより加熱される2次冷却材である液体金属も主にナトリウムが使われ、2次冷却材のナトリウムは原子炉容器の外部に設けた冷却器を介して3次冷却材によって冷却される構成となっているが、2次冷却材系を省略し、1次冷却材3を原子炉容器1の外部に設けた1次熱交換器5で直接3次冷却材9で冷却することで設備を簡素化し建設コストを削減する点」(引用文献3に記載の技術的事項)が引用文献3に記載されているところ、設備を簡素化し建設コストを削減することは引用発明1の「小型原子力発電システム」の一般的な課題であるから、引用発明1に上記引用文献3に記載の技術的事項を適用して、二次冷却材のナトリウムの系統を省略することは、当業者が容易に想到し得た事項である。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び引用文献3、4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定についてのむすび
上記3の検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、平成28年6月6日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]「1 補正の内容」において、本件補正前のものとして示したとおりのものである。

2 刊行物の記載及び引用発明
上記「第2」[理由]「3 独立特許要件について」「(2)」「ア」ないし「ウ」のとおりである。

3 対比・判断
本願発明について
(1)上記「第2」[理由]「2 補正の目的」のとおり、本件補正は、補正前の請求項1において、下記ア及びイの補正を行うものである。
ア 「金属燃料」に関して、「ウラニウム(235,238)及びプルトニウム239のいずれか一方又は双方を含有する金属燃料」であったもののうち「ウラニウム(235,238)及びプルトニウム239の双方を含有する金属燃料」に限定した上で、さらに、「ジルコニウム」も含有するとの限定を付加する。
イ 「被覆管」に関して、「フェライト系ステンレス鋼又はクロム・モリブデン鋼からなる」との限定を付加する。

(2)したがって、本願発明は、上記「第2」[理由]「3 独立特許要件について」で検討した本願補正発明を特定するための事項である、「金属燃料」に関して、「ウラニウム(235,238)及びプルトニウム239の双方を含有」し、さらに、「ジルコニウム」も含有するとの限定を省くとともに、「被覆管」に関して、「フェライト系ステンレス鋼又はクロム・モリブデン鋼からなる」との限定を省いたものである。

(3)これに対して、上記「第2」[理由]「3 独立特許要件について」「(3)」で検討したとおり、上記限定を含む本願補正発明が引用発明1、引用発明2及び引用文献3、4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、上記「第2」[理由]「3」での検討と同様の理由により、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び引用文献3に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明し得るものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び引用文献3に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-29 
結審通知日 2017-10-03 
審決日 2017-10-16 
出願番号 特願2013-550118(P2013-550118)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G21C)
P 1 8・ 121- Z (G21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 洋平  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 松川 直樹
野村 伸雄
発明の名称 小型原子力発電システム  
代理人 田村 榮一  
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