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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1335069
審判番号 不服2016-18047  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-02 
確定日 2017-11-29 
事件の表示 特願2015-514919「現場診断の免疫クロマトグラフィー用の凍結乾燥接合体構造物、これを利用する免疫分析用キット及び前記キットを利用する分析方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 5日国際公開、WO2013/180533、平成27年 6月25日国内公表、特表2015-518162〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月31日(パリ条約による優先権主張 2012年5月31日 韓国)を国際出願日とする出願であって、平成27年10月22日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月25日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、同年12月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1?21に係る発明は,平成28年2月25日付け手続補正により補正された請求項1?21に記載された事項により特定される発明である。そのうち,請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
免疫クロマトグラフィー用の凍結乾燥接合体構造物として、信号検出のための第1標識物質及び分析物質と反応する第1リガンドを含む第1接合体を含み、
前記第1標識物質と第1リガンドは、物理的又は化学的に連結されており、
前記凍結乾燥接合体構造物は、既知濃度の前記第1接合体が、溶媒内に分散されている分散液を5μL以上30μL以下の均一体積の滴形態として急速冷凍させた後、凍結乾燥して溶媒を除去して形成され、急速冷凍された滴から溶媒が占める空間は、溶媒除去によって孔隙を形成し、
前記凍結乾燥接合体構造物は、70%以上90%以下の孔隙率を有し、
前記第1標識物質は、ラテックス粒子、金粒子、着色ポリスチレン微細粒子、酵素、蛍光性染料及び伝導性高分子からなる群より選択されることを特徴とする凍結乾燥接合体構造物。」

第3 引用例
1 引用例1
(1)引用例1に記載の事項
原査定において引用され、本願の国際出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされた引用例1(国際公開第2010/132453号)には、以下の記載がある。(以下、下線は当審にて付した。)

(引1a)「[0011 ] In another aspect, the invention provides a test device that comprises a lateral flow membrane, a chamber comprising fluid upstream of the direction of lateral flow, wherein the chamber is capable of controllably releasing the fluid into the lateral flow material. The device includes a plurality of addressable lines comprising one or more test zones and one or more control regions; and a plurality of capture moiety partners disposed in each of the addressable lines. In one embodiment, the test device comprises a test strip The test strip comprises at least two adjacent addressable lines having a different category of capture moiety partner immobilized thereto In one embodiment, each addressable line is configured to detect a different target analyte.」(当審訳「[0011] 別の態様において、本発明は、ラテラルフロー膜と、ラテラルフローの方向の上流に流体を含むチャンバと、を含む試験装置を提供する。チャンバは流体をラテラルフロー膜内へと制御しながら放出することができる。装置は、1つ以上の試験ゾーン及び1つ以上の制御領域を含む複数のアドレス指定可能ラインと、アドレス指定可能ラインの各々に配置された複数の捕捉部分パートナーと、を含む。一実施形態では、試験装置は試験ストリップを含む。試験ストリップは、異なるカテゴリの捕捉部分パートナーが固定化された少なくとも2つの隣接したアドレス指定可能ラインを含む。一実施形態では、各アドレス指定可能ラインは異なる標的検体を検出するように構成されている。」)

(引1b)「[00166] In some embodiments, each Analyte Binding Set includes detection probes in which the specific binding agent is conjugated to a different fluorescent label emitting a different wavelength. Therefore, where a plurality of Analyte Binding Sets are provided in a SCD, each Analyte Binding Set utilizes a label different than any other Analyte Binding Set. For example, a first group of antibodies which specifically bind to influenza A can be conjugated to one type of fluorescent label (i.e., detection probe specific binding agents conjugated to a first fluorescent label), while second and subsequent groups of specific binding antibodies (i.e., detection probe specific binding agents conjugated to a second and subsequent fluorescent labels) for example, to influenza B can each comprise distinguishable detection binding agents conjugated to different fluorescent labels. Of course, it should be evident that detection probes can also utilize the same label or the Analyte Binding Sets may use various different labels, such as, fluorescent label(s), metal(s), chromophore(s), or any other appropriate label. In one embodiment, the fluorescent labels emit wavelengths that are sufficiently distinct so that several test lines can be differentiated.」(当審訳「[00166] いくつかの実施形態において、各検体結合セットが含む検出プローブでは、特異的結合因子は異なる波長を発する異なる蛍光標識に結合している。従って、SCDにおいて複数の検体結合セットが与えられた場合、各検体結合セットは他のいずれの検体結合セットとも異なる標識を用いる。例えば、インフルエンザA型と特異的に結合する第1の抗体群を1つのタイプの蛍光標識に結合することができ(すなわち検出プローブに特異的な結合因子が第1の蛍光標識に結合する)、例えばインフルエンザB型に対して特異的な第2及び以降の結合抗体(すなわち検出プローブに特異的な結合因子が第2及び以降の蛍光標識に結合する)は、各々、異なる蛍光標識に結合している区別可能な検出結合因子を含むことができる。勿論、検出プローブが同一の標識を利用可能であること、又は検体結合セットが、蛍光標識、金属、発色団、又は他の任意の適切な標識等の様々な異なる標識を使用可能であることは明らかである。一実施形態では、蛍光標識は充分に識別可能な波長を発するので、いくつかの試験ラインを区別することができる。」)

(引1c)「[00278] "Label" refers to any substance which is capable of producing a signal that is detectable by visual or instrumental means. Various labels suitable for use include labels which produce signals through either chemical or physical means. Such labels can include enzymes and substrates, chromogens, catalysts, fluorescent or fluorescent like compounds and/or particles, magnetic compounds and/or particles, chemiluminescent compounds and or particles, and radioactive labels. Other suitable labels include particulate labels such as colloidal metallic particles such as gold, colloidal non-metallic particles such as selenium or tellurium, dyed or colored particles such as a dyed plastic or a stained microorganism, organic polymer latex particles and liposomes, colored beads, polymer microcapsules, sacs, erythrocytes, erythrocyte ghosts, or other vesicles containing directly visible substances, and the like. Typically, a visually detectable label is used as the label component of the label reagent, thereby providing for the direct visual or instrumental readout of the presence or amount of the analyte in the test sample without the need for additional signal producing components at the detection sites.」(当審訳「[00278] 「標識」とは、視覚的又は用具を用いた手段によって検出可能な信号を生成することができる任意の物質のことである。使用に適した様々な標識には、化学的又は物理的手段のいずれかによって信号を生成する標識が含まれる。かかる標識は、酵素及び基質、クロモゲン、触媒、蛍光又は蛍光のような化合物及び/又は粒子、磁気化合物及び/又は粒子、化学発光化合物及び/又は粒子、並びに放射性標識を含むことができる。他の適切な標識には、金等のコロイド金属粒子、セレン又はテルル等のコロイド非金属粒子、染めたプラスチック等の染めた又は着色した粒子、染色した微生物、有機ポリマーラテックス粒子及びリポソーム、着色ビード、ポリマーマイクロカプセル、袋(sac)、赤血球、血球影、又は直接目に見える物質を含む他の小胞等の微粒子標識が含まれる。典型的に、標識試薬の標識成分として視覚的に検出可能な標識が用いられ、これによって試験試料における検体の存在又は量を直接視覚的に又は用具の使用によって読み取ることができ、検出部位において追加の信号生成要素は必要ない。」)

(引1d)「[00370] In this example, a test device is used to assay for different subtypes of influenza virus. A test device is designed with a test strip having separate addressable lines to assay for influenza A, H1, H3, H5, and B analytes. The device utilizes 5 analyte binding sets of probe conjugates and detection probes for reaction with the sample in the sample collection device before application to the test device. Analyte binding set 1 comprises a capture probe of an antibody to influenza A conjugated to a pRNA and a detection probe comprising an second antibody to Influenza A coupled to a Europium label. Set 2 includes a capture probe comprising an antibody to H1 conjugated to biotin and a detection probe comprising a second antibody to H1 coupled to a Europium label. Analyte binding set 3 comprises a capture probe of an antibody to H3 conjugated to a pRNA and a detection probe comprising a second antibody to H3 coupled to a Europium label.」(当審訳「[00370] この実施例では、試験装置を用いてインフルエンザウイルスの異なるサブタイプについてアッセイを行う。試験装置は、A型、H1型、H3型、及びB型の検体のアッセイのために別個のアドレス指定可能ラインを有する試験ストリップを含むように設計されている。試験装置に適用する前に、装置は、試料収集装置において試料と反応させるためにプローブ結合体及び検出プローブの5つの検体結合セットを用いる。検体結合セット1は、pRNAに結合したインフルエンザA型に対する抗体の捕捉プローブと、ユーロピウム標識に結合されたインフルエンザA型に対する第2の抗体を含む検出プローブと、を含む。セット2は、ビオチンに結合したH1型に対する抗体を含む捕捉プローブと、ユーロピウム標識に結合されたH1型に対する第2の抗体を含む検出プローブと、を含む。検体結合セット3は、pRNAに結合したH3型に対する抗体の捕捉プローブと、ユーロピウム標識に結合されたH3型に対する第2の抗体を含む検出プローブと、を含む。」)

(引1e)「[00385] Lyophilized reagent pellets:
[00386] Reagents are lyophilized as 20 μl pellets by dispensing 20 μl of reagent formulation into liquid nitrogen. The frozen reagent pellets are then lyophilized and kept dry until used. Reagent formulations used are as follows:
[00387] pRNA pellets: pRNA-antibody conjugates; A, B, H1, H3, H5 0.05-0.5 ug each per 20μl reagent pellet; 10 mM Tris, pH 8.0; 1 % BSA; and 0.3 M Trehalose.
[00388] Europium pellets: Europium conjugates; A, B, H1, H3 and H5 1.0-10 ug Euopium-antibody beads per 20 μl reagent pellet; 10 mM Tris, pH 8.0; 1 % BSA; and 0.3 M Trehalose.」(当審訳「[00385] 凍結乾燥試薬ペレット
[00386] 20μlの試薬調合物を液体窒素に分配することによって、試薬を20μlペレットとして凍結乾燥する。次いで、凍結した試薬ペレットを凍結乾燥させて、使用するまで乾燥状態で維持する。試薬調合物は以下の通りである。
[00387] pRNAペレット:pRNA-抗体結合体;10mMトリス、pH8.0、1%BSA、0.3Mトレハロースからなる試薬ペレット20μlあたりA型、B型、H1型、H3型、H5型 各々0.05?0.5ug。
[00388] ユーロピウムペレット:ユーロピウム結合体;10mMトリス、pH8.0、1%BSA、0.3Mトレハロースからなる試薬ペレット20μlあたりA型、B型、H1型、H3型、H5型のユーロピウム-抗体ビーズ1.0?10ug。」)

(引1f)「1. A system for detecting the presence, absence, or level of one or more analytes in a sample, comprising; a sample collection device configured for mixing a patient sample with one or more immunoreagents to form one or more capturable and detectable immunocomplex(es ' ); and a test device comprising a lateral flow membrane for capturing the immunocomplex(es), wherein the sample collection device and the test device are configured to form an air-tight seal and/or to release the sample through a split septum onto the lateral flow membrane」(当審訳「【請求項1】
試料中の1つ以上の検体の存在、不在、又はレベルを検出するためのシステムであって、患者の試料を1つ以上の免疫試薬と混合して1つ以上の捕捉可能かつ検出可能な免疫複合体を形成するために構成された試料収集装置と、前記免疫複合体を捕捉するためのラテラルフロー膜を含む試験装置と、を含み、前記試料収集装置及び前記試験装置が、気密封止を形成するように及び/又は分割隔壁を介して前記試料を前記側方流動膜上に放出するように構成されている、システム。」)

(2)引用例1に記載の発明
上記(引1e)より、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「20μlの試薬調合物を液体窒素に分配することによって、試薬を20μlペレットとして凍結乾燥する凍結乾燥ペレットであって、
次いで、凍結した試薬ペレットを凍結乾燥させて、使用するまで乾燥状態で維持する凍結乾燥試薬ペレットであって、
試薬調合物は、10mMトリス、pH8.0、1%BSA、0.3Mトレハロースからなる試薬ペレット20μlあたりA型、B型、H1型、H3型、H5型のユーロピウム-抗体ビーズ1.0?10ugのユーロピウム結合体としたものである
凍結乾燥試薬ペレット。」

2 引用例2に記載の事項
原査定において引用され、本願の国際出願日前に頒布された引用例2(特表2002-522767号公報)には、以下の記載がある。

(引2a)「 【0005】
この性質の典型的な免疫クロマトグラグ装置は、いくつかの米国および外国特許に記載されている。例えば、米国特許4,861,711は、分析体が、一連の端対端接触した同一平面の膜で起こった抗原/抗体反応によって検出される装置を記載している。その他の装置が米国特許4,774,192;4,753,776;4,933,092;4,987,065;5,075,078;5,120,643;5,079,142;5,096,809、5,110,724;5,144,890;5,591,645;5,135,716に記載されている。全てのこれら特許は、積層構造について記載している。」


(引2b)「 【0008】
免疫アッセイ装置は全血で心臓の分析物を検出に採用したとき、検出し得る産物を産生するようなそれらの抗原と反応する標識抗体を利用する。抗原/抗体反応を利用するそのような診断または分析手段に広く利用されている一つの方法は、多孔性膜ストリップの検出領域において形成される標識抗体/抗原複合体を生成する抗原のエピトープと反応する、標識した検出抗体を採用している。複合体は、毛管作用によって膜に沿って、捕捉抗体を含んでいる固定されたラインと接するまで移動し、そこで抗原の別のエピトープと反応し、検出し得る反応産物を濃縮し形成する。典型的には、産物は、着色しているので可視的に検出される。ある構成では、色は肉眼に明らかである。より洗練された装置においては、抗原の存在または濃縮は、産物の産生した色または他の性状の強度を適当な機器、例えば光学センサーで測定することによって決定される。この方法は、全血で心臓の分析物を検出するのに使用されるいくつかの装置において利用されている。これらの全ての装置において、赤血球が色の展開または捕捉領域に入るのを予防する必要がある、なぜならそれはセルロースの強い色相のために呈色した反応産物の適切な可視化を妨害するからである。」

(引2c)「 【0036】
更なる実施態様において、標識検出抗体のような試薬は、膜より前の液体経路中に試薬が試料と混合するように装置のチャンネル内に備えられる。試薬は、ビーズ、マイクロビーズ、または凍結乾燥粉末として前記したチャンネルにおける非限定的例のように、供給される。」

(引2d)「 【0191】
前に記載したのは1またはそれ以上の抗体が、検出領域3に移動性に沈殿するものであったが、検出抗体の代りの位置、およびその他の試薬は、本発明に含まれる。検出抗体は、例えば冷結乾燥ビーズ、例えば一つの大きなビーズ、または複数の小さなビーズを膜の少し上流の液体経路にビーズが液体に溶解するようにおかれる。
【0192】
そのようなビーズの非限定的実施例は、共通して所有する同時係属出願(米国代理人Docket No. 1112-1-999, 1999年7月14日出願)に記載されている。この係続出願は、以下を開示する:即ち複数の均一な、冷結乾燥、硬い、界面活性剤フリーの試薬粒子を形成するほう方法で、各粒子はカーボハイドレイトマトリックスを含有し、体液中の1つ以上の抗原の存在を決定するのに有用な少なくとも1つの抗体が全体に分布している。その方法はカーボハイドレイトおよび抗体の界面活性剤フリー水溶液を生成し、溶液の均一な滴を生成し、そしてそれらを容器中の液体チッソに、各滴が分離した凍結小粒を窒素中でつくるように加え;凍結粒滴を液体窒素で覆われた容器内に保持し、粒滴を凍結乾燥して窒素を除き、乾燥小粒をつくるものである。」

3 引用例3に記載の事項
原査定において引用され、本願の国際出願日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能とされた引用例3(国際公開第2011/059512号)には、以下の記載がある。

(引3a)「[0012] The device can be used for immuno-assays. The device can be used for nucleic acid, small molecule and inorganic molecule testing, or combinations thereof.」(当審訳「[0012]デバイスは、免疫アッセイに使用することができる。デバイスは、核酸、小分子および無機分子検査、あるいはそれらを組み合わせたものに使用することができる。」

(引3b)「[0041] The magnetic particles 10 can be dried in a microsphere 90 by lyophilization. The microsphere 90 can contain the magnetic particles 10 coated with antibodies 30 in PBS solution with about 0.05% Polyoxyethylene (20) sorbitan monolaurate (i.e., Polysorbate 20, Tween-20), and a bulking agent 8. The bulking agent 8 can be a sugar, a polymer, such as trehalose and/or poly (ethylene glycol), or combinations thereof. The poly (ethylene glycol) can be used with a molecular weight of about 4-8 kDa. The bulking agent can be over about 90% of the mass of the microsphere 90.」(当審訳「[0041] 磁性粒子10は凍結乾燥によってマイクロスフェア90内で乾燥させることができる。マイクロスフェア90は、約0.05%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(すなわちポリソルベート20、Tween-20)含有PBS溶液中の抗体30がコーティングされた磁性粒子10と、充填剤8を含むことができる。充填剤8は、糖、高分子、例えばトレハロースおよび/またはポリ(エチレングリコール)あるいはそれらを組み合わせたものなどであってよい。ポリ(エチレングリコール)は約4-8kDaの分子量で使用することができる。充填剤は、マイクロスフェア90集合体の約90%を超える場合もある。」)

(引3c)「[0045] Once dry, the microsphere 90 can be protected from moisture. The volume of the dried microsphere, as defined by the outer perimeter of the sphere, can include about 90% void. The microsphere 90 can have a very large effective surface area and can be very hydrophilic. In the presence of liquid water, the microsphere 90 can dissolve very quickly. Since the whole three dimensional structure of the microsphere 90 can collapse all at once, the magnetic particles 10 contained in the microsphere 90 can be mixed with the water and be re-suspended upon collapse of the microsphere 90 without clustering. The volume of the liquid that dissolves the microsphere 90 can be controlled, and the concentration of all components in the solution resulting from the re-hydration of the microsphere 90 can be calculated. There can be approximately 1,000,000 magnetic particles 10 in each about 7.5μl microsphere 90.」(当審訳「[0045]いったん乾燥させると、マイクロスフェア90を湿気から保護することができる。乾燥マイクロスフェアの体積は、球体の外周部によって定義され、約90%の空隙を含むことができる。マイクロスフェア90は、極めて大きな有効表面積を有することが可能であり、極めて親水性であり得る。液体の水の存在下で、マイクロスフェア90は極めて迅速に溶融することができる。マイクロスフェア90の全体の三次元構造は一度に全て崩壊することが可能であるため、マイクロスフェア90中に含まれる磁性粒子10が水と混ざり合い、マイクロスフェア90が崩壊すると塊にならずに再懸濁することができる。マイクロスフェア90を溶融させる液体の体積は調節することができ、マイクロスフェア90が再度水和した結果生じる溶液中の全ての成分の濃度を計算することができる。それぞれ約7.5μlのマイクロスフェア90中に、おおよそ1 ,000,000の磁性粒子10が存在する可能性がある。」)

第4 対比
本願発明1と、引用発明1とを対比する。

1 引用発明1の「凍結乾燥試薬ペレット」は、本願発明1の、「凍結乾燥接合体構造物」に相当する。

2 「検体結合セット1は、」「ユーロピウム標識に結合されたインフルエンザA型に対する第2の抗体を含む検出プローブ」を含む((引1c)参照)ものであるから、引用発明1の「ユーロピウム-抗体ビーズ」は、「ユーロピウム標識」と、該「ユーロピウム標識」に結合された「抗体」である点が理解される。
また、「「標識」とは、視覚的又は用具を用いた手段によって検出可能な信号を生成することができる任意の物質のことであ」る((引1c)参照)。
そして、引用発明1の「抗体」は、インフルエンザA型やB型などの分析物質と特異的に結合するものである((引1b)参照)。
そうすると、引用発明1の「ユーロピウム-抗体ビーズ」の「ユーロピウム」及び「抗体」は、それぞれ本願発明1の、「信号検出のための第1標識物質」及び「分析物質と反応する第1リガンド」に相当し、引用発明1の「ユーロピウム結合体」は、本願発明1の「第1接合体」に相当する。そして、引用発明1における「結合」するとは、物理的又は化学的に連結することであることは明らかであるから、引用発明1の「ユーロピウム結合体」の「ユーロピウム」と「抗体」、本願発明の「第1標識物質」と「第1リガンド」は、「物理的又は化学的に連結」している点で共通する。

3 引用発明1の「凍結乾燥試薬ペレット」は、「20μlの試薬調合物を液体窒素に分配することによって、試薬を20μlペレットとして凍結乾燥し、次いで、凍結した試薬ペレットを凍結乾燥させて、使用するまで乾燥状態で維持」することで形成される。
そして、引用発明1の「試薬調合物」内の「ユーロピウム結合体」の濃度は既知である。
そうすると、引用発明1の「凍結乾燥試薬ペレット」と、本願発明1の「凍結乾燥接合体構造物」とは、「既知濃度の前記第1接合体が、溶媒内に分散されている5μL以上30μL以下の分散液を急速冷凍させた後、凍結乾燥して溶媒を除去して形成」している点で共通する。

4 引用発明1の「ユーロピウム」は、蛍光性染料であるから、引用発明1の「凍結乾燥試薬ペレット」と、本願発明1の「凍結乾燥接合体構造物」とは、「前記第1標識物質は、ラテックス粒子、金粒子、着色ポリスチレン微細粒子、酵素、蛍光性染料及び伝導性高分子からなる群より選択される」点で共通する。

以上のことから 両発明の間には、次の(一致点)及び(相違点)がある。

(一致点)
「凍結乾燥接合体構造物として、信号検出のための第1標識物質及び分析物質と反応する第1リガンドを含む第1接合体を含み、
前記第1標識物質と第1リガンドは、物理的又は化学的に連結されており、
前記凍結乾燥接合体構造物は、既知濃度の前記第1接合体が、溶媒内に分散されている5μL以上30μL以下の分散液を急速冷凍させた後、凍結乾燥して溶媒を除去して形成され、
前記第1標識物質は、ラテックス粒子、金粒子、着色ポリスチレン微細粒子、酵素、蛍光性染料及び伝導性高分子からなる群より選択されることを特徴とする凍結乾燥接合体構造物。」

(相違点1)凍結乾燥接合体構造物が、本願発明1は、免疫クロマトグラフィー用のものであるのに対し、引用発明1は、そのような特定がない点。

(相違点2)凍結乾燥接合体構造物が、本願発明1は、均一体積の滴形態として急速冷凍させたものであるのに対し、引用発明1は、どの様な形態であるか特定されていない点。

(相違点3)凍結乾燥接合構造物が、本願発明は、急速冷凍された滴から溶媒が占める空間は、溶媒除去によって孔隙を形成し、70%以上90%以下の孔隙率を有しているのに対し、引用発明1は、孔隙率に関し特定されていない点。

第5 判断
1 相違点1について
上記(引1a)及び(引1f)より、引用発明1の「凍結乾燥試薬ペレット」は、ラテラルフロー膜を含む装置に使用されるものである点が理解できる。そして、ラテラルフロー膜を含む装置は、免疫クロマトグラフィーに使われるものであることは周知であるから、相違点1は実質的な相違点とはいえない。例え、相違点であったとしても、当業者が容易に想到できる程度のものであるといえる。

2 相違点2について
上記(引2a)及び(引2b)より、引用例2は、「免疫クロマトグラフ装置」の「多孔性膜ストリップの検出領域において形成される標識抗体/抗原複合体を生成する抗原のエピトープと反応する、標識した検出抗体」が採用されるものである点が理解され、該「標識検出抗体のような試薬」は、「凍結乾燥粉末」として供給され(上記(引2c)参照)、「検出抗体」は、「冷結乾燥ビーズ」からなり、該「ビーズ」は、「カーボハイドレイトおよび抗体の界面活性剤フリー水溶液を生成し、溶液の均一な滴を生成し、そしてそれらを容器中の液体チッソに、各滴が分離した凍結小粒を窒素中でつくるように加え、凍結粒滴を液体窒素で覆われた容器内に保持し、粒滴を凍結乾燥して窒素を除く」ことにより形成される点が理解されるから、引用例2には、「免疫クロマトグラフ装置」に使用される、「標識検出抗体」は、「溶液の均一な滴」を「凍結乾燥する」ことにより形成されたものである点が記載されていると認められる。
また、引用発明1の「凍結乾燥試薬ペレット」は、「20μlの試薬調合物を液体窒素に分配することによって、試薬を20μlペレットとして凍結乾燥し」たものであり、「20μlの試薬調合物」を「液体窒素に分配」した場合、「20μlの試薬調合物」が滴形態となることは明らかである。
そして、引用発明1の「凍結乾燥試薬ペレット」の滴形態として、引用例2に記載された溶液の均一な滴を凍結乾燥することにより形成されたもの、即ち、均一体積の滴形態であるという構成を適用することは、当業者が容易に想到できことであるといえる。

3 相違点3について
凍結乾燥することにより、急速冷凍された滴から溶媒が占める空間は、溶媒除去によって孔隙が形成されること、及び、「凍結乾燥試薬ペレット」の孔隙率は、分散液中の溶媒の割合を調節することにより調節可能であることは、当該技術分野において自明の事項である。
また、免疫クロマトグラフィー用の試薬と分析物質との反応が早くなければならず、そのためには、試薬として「凍結乾燥試薬ペレット」を使用した場合、早急に溶けなければならないことは自明の課題である。そして、孔隙率が高くなれば溶ける速度が速くなること、逆に、孔隙率が高くなれば構造的に弱くなることも自明である
そして、引用例3には、免疫アッセイにおいて使用される凍結乾燥により形成された乾燥マイクロスフェアが、約90%の空隙(本願の「孔隙」に相当)を含み、液体の水の存在下で、極めて迅速に溶融することができる旨記載されている。
そうすると、引用発明1の「凍結乾燥試薬ペレット」の孔隙率をどの程度とするかは、使用される抗体や標識の種類などに応じ適宜設定されるべきものであって、70%以上90%以下という数値範囲も、引用例3に見られるように特別な値であるとも認められないから、本願発明1の空隙率は、引用発明1の「凍結乾燥試薬ペレット」として最適な値を単に示したに過ぎないものであるから、引用発明1の「凍結乾燥試薬ペレット」の孔隙率を70%以上90%以下と設定することは当業者が容易に想到できたことである。

第6 本願発明1の効果について
本願発明1の効果は、引用例1ないし3から当業者が予測し得る程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

第7 結語
以上のとおり,本願発明は,引用例1ないし3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-29 
結審通知日 2017-07-04 
審決日 2017-07-19 
出願番号 特願2015-514919(P2015-514919)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 草川 貴史  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 渡戸 正義
福島 浩司
発明の名称 現場診断の免疫クロマトグラフィー用の凍結乾燥接合体構造物、これを利用する免疫分析用キット及び前記キットを利用する分析方法  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  

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