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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B01D
管理番号 1335100
異議申立番号 異議2016-700559  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-22 
確定日 2017-10-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5835937号発明「CO2のゼオライト膜分離回収システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5835937号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。 特許第5835937号の請求項1?7に係る特許を維持する。 特許第5835937号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1.手続の経緯

本件特許第5835937号は、平成23年5月9日に出願された特願2011-104382号の特許請求の範囲に記載された請求項1?8に係る発明について、平成27年11月13日に設定登録がされたものであり、その後、全特許について特許異議の申立てがされ、以下の手続がされたものである。
平成28年12月12日付けの取消理由通知
平成29年 2月13日付けの訂正請求及び意見書提出(特許権者)
同年 3月24日付けの意見書提出(申立人)
同年 5月29日付けの取消理由通知
同年 7月26日付けの訂正請求及び意見書提出(特許権者)
なお、訂正請求について、平成29年 8月 1日付けで申立人に意見を求めたが応答はなかった。

第2.訂正請求について

1.訂正の内容

平成29年7月26日付けの訂正請求(以下、「本訂正」という。)は、特許請求の範囲に係る次の訂正事項1?3よりなる(下線部が訂正箇所)。なお、本訂正により、同年2月13日付けの訂正請求(以下、「先の訂正」という。)は取り下げられたものとみなす。

訂正事項1
請求項1に「CO_(2)を含有する60℃以下の混合ガス」とあるのを「CO_(2)を含有する60℃以下の、炭化水素またはアルコールから水素を製造するプロセスから生じた混合ガス」に訂正する。

訂正事項2
請求項1に「脱水処理されたもの」とあるのを「脱水処理された、60℃以下のCO_(2)(50%)/水素(50%)の混合ガスに対してCO_(2)透過度5×10^(-7)[mol/(m^(2)・s・Pa)]以上かつCO_(2)/H_(2)分離選択性が10以上のもの」に訂正する

訂正事項3
請求項8を削除する。

2.訂正要件の判断

(1)訂正事項1について
この訂正は、請求項1に記載された膜分離回収システムの発明において、発明特定事項である「混合ガス」について発生源を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許請求の範囲の【請求項5】に、請求項1に記載された膜分離回収システムを用いた方法に関し、
「炭化水素またはアルコールから水素を製造するプロセスにおいてCO_(2)を分離回収する」と記載されていたから、この訂正は、願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
この訂正は、請求項1に記載された膜分離回収システムの発明において、発明特定事項である「親水性ゼオライト膜」について物性を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、本件特許明細書の【0010】に、
「これら分離膜のCO_(2)透過度は・・・大規模水素製造プラントへの応用を考えると、CO_(2)透過度5×10^(-7)[mol/(m^(2)・s・Pa)]以上であり、かつCO_(2)/H_(2)分離選択性が10以上である」と記載され、
さらに実施例において【0042】【0047】【0048】に、
「供給ガス組成:CO_(2)(50%)/水素(50%)」を用い、
「図2に示されるように、CO_(2)の透過度は60℃付近で極大となり10^(-6)[mol/m^(2)・s・Pa]以上の非常に高い透過度を示し」かつ、
「CO_(2)と水素の透過度の比は図3に示すように低温ほど高くなり、60℃の作動条件ではCO_(2)分離選択性は10を超え」た
と記載されていたから、この訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
この訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、新たな技術的事項を導入するものではないから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1を、請求項2?8が直接又は間接的に引用していたから、訂正前の請求項1?8は一群の請求項である。
したがって、訂正事項1を含む本訂正は、一群の請求項1?8について請求をするものと認められる。

3.むすび

以上のとおりであるから、本訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に規定された事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。

第3.本件発明について

本件特許の請求項1?7に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、このうち請求項1には次のとおり記載されている。

「CO_(2)膜分離手段の前段に脱水手段を具備し、かつ、CO_(2)膜分離手段は、多孔質基体上に製膜したCO_(2)選択的透過性を示す親水性ゼオライト膜を具備し、該多孔質基体上に製膜した親水性ゼオライト膜は、100?800℃の加熱処理により脱水処理された、60℃以下のCO_(2)(50%)/水素(50%)の混合ガスに対してCO_(2)透過度5×10^(-7)[mol/(m^(2)・s・Pa)]以上かつCO_(2)/H_(2)分離選択性が10以上のものであることを特徴とする、CO_(2)を含有する60℃以下の、炭化水素またはアルコールから水素を製造するプロセスから生じた混合ガスからCO_(2)を分離回収するCO2の膜分離回収システム。」

第4.通知した取消理由について

当審にて通知した平成28年12月12日及び平成29年5月29日付けの取消理由は、それぞれ以下の理由1?3及び理由4,5である。

理由1:訂正前の請求項1に記載された「親水性ゼオライト膜」について、特許異議申立書に添付された、
甲第7号証:辰巳敬監修「機能性ゼオライトの合成と応用」
株式会社シ-エムシ-、1999年7月1日、第196?201頁
に記載されるように、その定義は明確ではないから、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

理由2:訂正前の請求項1に記載された「100?800℃の加熱処理」について、本件明細書の【0040】に「管状の膜エレメントを3cmに切断分割し、ステンレス製の膜モジュールに取付けを行い、膜の脱水処理として300℃の温度で加熱乾燥を行った。」と記載されるのみで、その手法や加熱温度がどの部分の温度なのか読み取れないから、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

理由3:訂正前の請求項1,2,4,7,8に係る発明は、特許異議申立書に添付された、
甲第4号証:Shiguang Li, Guerrero Alvarado, Richard D. Noble,
John L. Falconer, ”Effects of impurities on CO_(2)/CH_(4)
separations through SAPO-34 membranes”,
Journal of Membrane Science251(2005),ELSEVIER,
Available online 2004.12.23,p.59?66
に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

理由4:請求項1に記載された「親水性ゼオライト膜」という用語が、「選択的透過処理に際して水が絡んでくるもの」という程度の意味であれば、先の訂正後の請求項1の記載は、本件明細書の【0010】【0014】に記載されている優れたCO_(2)透過度及びCO_(2)分離選択性という課題の達成を認識することができる範囲内のものであるとはいえない

理由5:先の訂正後の請求項8の記載は、同請求項が間接的に引用する先の訂正後の請求項1の記載と整合しない。

1.理由1,4について

訂正事項2により、「親水性ゼオライト膜」は、そのCO_(2)透過度及びCO_(2)分離選択性が特定され明確となった。その結果、請求項1の記載は、その課題の達成を認識することができる範囲内のものといえる。
したがって、理由1,4には理由がない。

2.理由2について

100℃以上の加熱温度は、脱水処理を目的とするものだから、膜エレメント自体の温度を意味することは明らかであり、実施例に記載された膜エレメントの大きさでは、特殊な加熱装置を要するものとは認められない。
したがって、理由2には理由がない。

3.理由3,5について

「第2.2.(1)」で述べたように、訂正事項1により、請求項1に記載された膜分離回収システムは、取消理由を通知してない訂正前の請求項5に記載された方法に使用するものとなった。請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2,4,7も同様である。また、訂正事項3により、請求項8は削除された。
したがって、理由3,5には理由がない。

第5.採用しなかった申立理由について

申立人は、
「訂正前の請求項1,2,4,7,8に係る発明は、上記甲第4号証に加え、特許異議申立書に添付された、
甲第1号証:Ind.Eng.Chem.Rev.,Vol.47,No.7,2008 pp.2109?2121
甲第2号証:88th Annual Convention,Maech 8?11 2009
表紙、目次、pp.556?570
甲第3号証:Membrane Separation Processes,Supp.A,February
1990 表紙、目次、pp.8-1?8-13
甲第5号証:Journal of Membrane Science 186(2001)25?40
甲第6号証:第40回石油・石油化学討論会(2010年11月26日)
公益社団法人石油学会232頁
に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。」と主張している。

しかしながら、「第2.2.(1)」で述べたように、訂正事項1により、請求項1に記載された膜分離回収システムは、申立理由のない訂正前の請求項5に記載された方法に使用するものとなり、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2,4,7も同様である。また、訂正事項3により、請求項8は削除された。
したがって、この申立理由には理由がない。

第6.むすび

以上のとおりであるから、取消理由及び申立理由によっては、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項8に係る特許は、訂正により削除されたため、この特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CO_(2)膜分離手段の前段に脱水手段を具備し、かつ、CO_(2)膜分離手段は、多孔質基体上に製膜したCO_(2)選択的透過性を示す親水性ゼオライト膜を具備し、該多孔質基体上に製膜した親水性ゼオライト膜は、100?800℃の加熱処理により脱水処理された、60℃以下のCO_(2)(50%)/水素(50%)の混合ガスに対してCO_(2)透過度5×10^(-7)[mol/(m^(2)・s・Pa)]以上かつCO_(2)/H_(2)分離選択性が10以上のものであることを特徴とする、CO_(2)を含有する60℃以下の、炭化水素またはアルコールから水素を製造するプロセスから生じた混合ガスからCO_(2)を分離回収するCO_(2)の膜分離回収システム。
【請求項2】
前記親水性ゼオライトは、FAUまたはCHA型である、請求項1に記載のCO_(2)の膜分離回収システム。
【請求項3】
脱水手段の後段に水素を選択的に透過させるシリカやゼオライトによって構成された有効細孔径0.28?0.33nmの多孔質分子篩膜が備えられている、請求項1に記載のCO_(2)の膜分離回収システム。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1つに記載のCO_(2)の膜分離回収システムを用いたCO_(2)の膜分離回収方法であって、
CO_(2)膜分離工程の前段に脱水工程を具備し、かつ、CO_(2)膜分離工程は、供給ガス露点が-80?0℃の乾燥状態に保たれる、方法。
【請求項5】
炭化水素またはアルコールから水素を製造するプロセスにおいてCO_(2)を分離回収する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
水素精製を行う工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
CO_(2)を含有する混合ガスからCO_(2)を分離回収する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-10-02 
出願番号 特願2011-104382(P2011-104382)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B01D)
P 1 651・ 121- YAA (B01D)
P 1 651・ 536- YAA (B01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 泰三山本 吾一中村 俊之  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 中澤 登
大橋 賢一
登録日 2015-11-13 
登録番号 特許第5835937号(P5835937)
権利者 JXTGエネルギー株式会社 日立造船株式会社
発明の名称 CO2のゼオライト膜分離回収システム  
代理人 松村 直都  
代理人 松村 直都  
代理人 松村 直都  
代理人 渡邉 彰  
代理人 岸本 瑛之助  
代理人 岸本 瑛之助  
代理人 渡邉 彰  
代理人 渡邉 彰  
代理人 岸本 瑛之助  

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