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審決分類 |
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B22F 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B22F |
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管理番号 | 1335106 |
異議申立番号 | 異議2017-700174 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-02-24 |
確定日 | 2017-10-16 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5977267号発明「表面処理された金属粉、及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5977267号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?18〕について、訂正することを認める。 特許第5977267号の請求項1?4、8?18に係る特許を維持する。 特許第5977267号の請求項5?7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5977267号の請求項1?33に係る特許についての出願は、2013年2月8日(優先権主張2012年2月8日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年7月29日にその特許権の設定登録がされ、同年8月24日に特許掲載公報が発行されたものである。 そして、本件特許の請求項1?18に係る特許に対して、平成29年2月24日に、特許異議申立人高橋美穂(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年4月26日付けで当審から取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月27日受付で特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)がされ、同年7月26日付けで当審から申立人に対し通知書を送付し期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは応答がなかった。 第2 本件訂正の適否について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)?(8)のとおりである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、「Ti、Al、Si、Zr、Ce、Snのいずれか」を「Ti、Al、Siのいずれか」へと訂正し、「表面処理された銅粉。」を「表面処理された銅粉であって、 Ti、Al、Siのいずれかがカップリング剤処理で吸着されており、加水分解したカップリング剤が銅粉に直接に吸着しており、 カップリング剤がシラン、チタネート、アルミネートのいずれかであり、 末端がアミノ基であるカップリング剤である、表面処理された銅粉。」へと訂正し、その結果として、請求項1を引用する請求項3?18も訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2において、「Ti、Al、Si、Zr、Ce、Snのいずれか」を「Ti、Al、Siのいずれか」へと訂正し、「表面処理された銅粉。」を「表面処理された銅粉であって、 Ti、Al、Siのいずれかがカップリング剤処理で吸着されており、加水分解したカップリング剤が銅粉に直接に吸着しており、 カップリング剤がシラン、チタネート、アルミネートのいずれかであり、 末端がアミノ基であるカップリング剤である、表面処理された銅粉。」へと訂正し、その結果として、請求項2を引用する請求項3?18もする。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7削除する。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項8における、「請求項1?7のいずれか」を「請求項1?4のいずれか」へと訂正し、その結果として、請求項8を引用する請求項9?10も訂正する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項11における、「請求項1?10のいずれか」を「請求項1?4及び8?10のいずれか」へと訂正し、その結果として、請求項11を引用する請求項12?18も訂正する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項12における、「請求項1?11のいずれか」を「請求項1?4及び8?11のいずれか」へと訂正し、その結果として、請求項12を引用する請求項13?18も訂正する。 2 訂正の適否についての判断 (1) 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1?2は、訂正前の請求項1または2における「Ti、Al、Si、Zr、Ce、Snのいずれか」との特定から「Ti、Al、Siのいずれか」との特定に減縮するとともに、「Ti、Al、Siのいずれかがカップリング剤処理で吸着されており、加水分解したカップリング剤が銅粉に直接に吸着しており、 カップリング剤がシラン、チタネート、アルミネートのいずれかであり、 末端がアミノ基であるカップリング剤である」という発明特定事項を追加するものであり、請求項1または2記載の発明の減縮を図るものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、この追加された発明特定事項は、訂正前の請求項5?7に記載された事項であることから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものでもない。 イ 訂正事項3?5は、請求項5?7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。さらに、請求項5?7は、特許異議の申立てがなされていない請求項ではない。 ウ 訂正事項6?8は、訂正事項3?5に伴い、引用請求項から請求項5?7を削除する訂正であるから、それぞれ、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ そして、訂正事項1?8は一群の請求項について適法に請求されたものである。 (2) 訂正の適否についての結論 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項?第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?18〕について訂正を認める。 第3 特許異議申立について 1 請求項1?4、8?18に係る発明 上記のとおり、本件訂正請求により訂正は認められるので、本件請求項1?4、8?18に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4、8?18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「 【請求項1】 励起源をAl K_(α)、出力を210W、検出面積800μmφ、入射角・取出角を45°とするXPSのsurvey測定で、Nの光電子が1000cps(count per second)以上で検出され、かつTi、Al、Siのいずれかの光電子が1000cps以上で検出され、焼結開始温度が400℃以上である、表面処理された銅粉であって、D_(50)が1.0μm以下である、表面処理された銅粉であって、 Ti、Al、Siのいずれかがカップリング剤処理で吸着されており、加水分解したカップリング剤が銅粉に直接に吸着しており、 カップリング剤がシラン、チタネート、アルミネートのいずれかであり、 末端がアミノ基であるカップリング剤である、表面処理された銅粉。 【請求項2】 励起源をAl K_(α)、出力を210W、検出面積800μmφ、入射角・取出角を45°とするXPSのsurvey測定で、表面のNが1%以上で検出され、かつTi、Al、Siのいずれか1種以上が0.6%以上で検出され、焼結開始温度が400℃以上である、表面処理された銅粉であって、D_(50)が1.0μm以下である、表面処理された銅粉であって、 Ti、Al、Siのいずれかがカップリング剤処理で吸着されており、加水分解したカップリング剤が銅粉に直接に吸着しており、 カップリング剤がシラン、チタネート、アルミネートのいずれかであり、 末端がアミノ基であるカップリング剤である、表面処理された銅粉。 【請求項3】 XPSのsurvey測定で、表面のNが1%以上で検出され、かつSi、Ti又はAlが0.6%以上で検出される、請求項1又は2に記載の表面処理された銅粉。 【請求項4】 XPSのsurvey測定で、表面のNが1%以上で検出され、Nの光電子が1000cps(count per second)以上で検出され、かつSi又はTiが0.6%以上で検出され、Si、Ti又はAlの光電子が1000cps以上で検出される、請求項1?3のいずれかに記載の表面処理された銅粉。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 表面処理された銅粉が、シランカップリング剤で表面処理された銅粉である、請求項1?4のいずれかに記載の表面処理された銅粉。 【請求項9】 シランカップリング剤がアミノシランである、請求項8に記載の表面処理された銅粉。 【請求項10】 アミノシランが、モノアミノシラン又はジアミノシランである、請求項9に記載の表面処理された銅粉。 【請求項11】 請求項1?4及び8?10のいずれかに記載の表面処理された銅粉が、さらに有機化合物で表面処理されてなる、表面処理された銅粉。 【請求項12】 請求項1?4及び8?11のいずれかに記載の表面処理された銅粉を使用した導電性金属粉ペースト。 【請求項13】 請求項12に記載のペーストを使用して製造されたチップ積層セラミックコンデンサー。 【請求項14】 内部電極断面に直径が10nm以上のSiO_(2)、TiO_(2)又はAl_(2)O_(3)が存在している、請求項13に記載のチップ積層セラミックコンデンサー。 【請求項15】 内部電極断面に最大径0.5μm以上のSiO_(2)、TiO_(2)又はAl_(2)O_(3)が0.5個/μm^(2)以下で存在している、請求項13又は14に記載のチップ積層セラミックコンデンサー。 【請求項16】 請求項13?15のいずれかに記載のチップ積層セラミックコンデンサーを最外層に実装した多層基板。 【請求項17】 請求項13?15のいずれかに記載のチップ積層セラミックコンデンサーを内層に実装した多層基板。 【請求項18】 請求項16又は17に記載の多層基板を搭載した電子部品。」 2 取消理由の概要 訂正前の請求項1?6、8?18に係る特許に対して、平成29年4月26日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。 請求項1?6、8?18に係る特許は、「末端がアミノ基であるカップリング剤」で処理されたという、本件特許の発明が解決すべき課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、特許法第36条第6項第1項の規定に違反してされたものである。 3 当審の判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第36条第6項第1号)について ア 特許異議申立書の第6頁下から第3行?第7頁第18行に記載の理由(特許法第36条第6項第1号違反)について (ア)訂正前の請求項1?請求項2の記載は、以下のとおりである。 「【請求項1】 励起源をAl K_(α)、出力を210W、検出面積800μmφ、入射角・取出角を45°とするXPSのsurvey測定で、Nの光電子が1000cps(count per second)以上で検出され、かつTi、Al、Si、Zr、Ce、Snのいずれかの光電子が1000cps以上で検出され、焼結開始温度が400℃以上である、表面処理された銅粉であって、D_(50)が1.0μm以下である、表面処理された銅粉。 【請求項2】 励起源をAl K_(α)、出力を210W、検出面積800μmφ、入射角・取出角を45°とするXPSのsurvey測定で、表面のNが1%以上で検出され、かつTi、Al、Si、Zr、Ce、Snのいずれか1種以上が0.6%以上で検出され、焼結開始温度が400℃以上である、表面処理された銅粉であって、D_(50)が1.0μm以下である、表面処理された銅粉。」 (イ)また、本件特許公報の発明の詳細な説明【0014】によると「チップ積層セラミックコンデンサー用電極の製造に好適に使用可能な、焼結遅延性に優れた、表面処理された銅粉、及びその製造方法を、提供すること」を解決すべき課題(以下、「課題」という。)とするものと認められる。 (ウ)ここで、本件特許公報の発明の詳細な説明の実施例において、上記課題が解決されていると認められるものは、末端にアミノ基を有するもののみであり、比較例4のようにアミノ基を有するシランカップリング剤であるものの末端にアミノ基がないシランカップリング剤である3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランを使用した場合は、上記課題を解決できていないことから、訂正前の請求項1及び請求項2に係る発明は、「末端がアミノ基であるカップリング剤」で処理されたという、本件特許の発明が解決すべき課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、特許法第36条第6項第1項の規定に違反してされたものである。 (エ)これに対し、本件訂正請求により、請求項1及び請求項2、それぞれに、訂正前の請求項7の発明特定事項であった「カップリング剤がシラン、チタネート、アルミネートのいずれかであり、末端がアミノ基であるカップリング剤である」という課題を解決するための手段を発明特定事項として備えることになったことから、上記の取消理由は解消し、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものではないこととなった。 (オ)また、本件訂正請求により請求項1又は2を引用する、3?5、及び8?18の特許についても、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものではない。 (2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア 特許異議申立書の第5頁第14行?第6頁第25行に記載の理由(特許法第36条第6項第1号違反)について (ア) 訂正前の請求項1?18に係る特許に対して、取消理由で通知しなかった上記申立理由の概要は、次のとおりである。 訂正前の請求項1に係る特許は、「表面処理された銅粉」であるものの、これに包含される「カップリング剤を使用しない方法で表面処理された銅粉」及び「アミノシラン以外のカップリング剤によって表面処理された銅粉」が本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されていない。 したがって、訂正前の請求項1に係る特許及び訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2?18に係る特許は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない。 (イ) 本件特許公報の発明の詳細な説明【0015】には、「銅粉とアミノシラン水溶液を混合して、アミノシランを銅粉表面に吸着させることで、表面処理後の凝集がなく、焼結遅延性が劇的に向上することを見出して、本発明に到達した。」、【0024】には、「本発明においては、銅粉を、アミノシラン水溶液と混合して、銅粉分散液を調製する工程、を行って、この銅粉分散液から、表面処理された銅粉を得ることができる。」と記載されており、「アミノシランからなるカップリング剤を用いて銅粉の表面を処理する」部分を強調して記載していると認められる。しかしながら、【0015】には、上記摘記された部分以降に、「さらに、・・・アミノシラン以外のカップリング剤によって表面処理した場合にも、同様に優れた特性の表面処理された金属粉を得られることがわかった。」と記載されているし(当審注:「・・・」は、記載の省略を表す。)、【0054】には、「本発明は、銅粉について上述した通り、シランカップリング剤で表面処理を行うことによって、好適に実施することができるが、シランカップリング剤以外のカップリング剤で表面処理を行うことによっても、好適に実施することができる。シランカップリング剤以外のカップリング剤としては、チタネート、アルミネートを挙げることができる。」とも記載されているので、アミノシラン以外のチタネートやアルミネートのカップリング剤を用いて銅粉の表面処理をすることによっても、本件発明の目的を達成できることが記載されている。更に、【0089】?【0099】に記載される実施例15?17においては、アミノ基含有の「チタネートカップリング剤KR44」により表面処理された銅粉の態様においても、アミノシランカップリング剤を用いて表面処理された銅粉と同様に、上記課題を解決することが記載されていることから、発明の詳細な説明、全体として、課題を解決する手段として、「アミノシランからなるカップリング剤を用いて銅粉の表面を処理する」ことのみが必須なものであるとはいえない。 (ウ) したがって、上記特許異議申立書に記載の理由により、請求項1?4及び8?18に係る特許が、発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできず、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものではない。 イ 特許異議申立書の第7頁第19行?第8頁第19行に記載の理由(特許法第36条第4項第1号(委任省令要件)違反)について (ア) 本件特許明細書の発明の詳細な説明に対して、取消理由で通知しなかった上記申立理由の概要は、次のとおりである。 訂正前の請求項1に係る特許に関し、発明の詳細な説明【0015】には、「アミノシラン以外のカップリング剤によって表面処理した場合にも同様に優れた特性の表面処理された金属粉が得られる」と記載されているが、【0084】には、「十分な焼結遅延性を実現するには、シランカップリング剤としては、アミノ基を有するアミノシランであることが必要であることがわかった。」と記載されており、また、特許権者が平成28年6月15日付けで提出した意見書においても、【0084】の記載と同旨の主張があることから、使用するカップリング剤の点で、発明の詳細な説明の記載内容に矛盾が生じているため、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、銅粉においてカップリング剤を施す発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものとはいえない。 よって、本件特許に係る発明の詳細な説明は、銅粉に係る訂正前の請求項1?18に係る特許について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (イ) 上記アで示したように、本件特許公報の発明の詳細な説明には、アミノシラン以外のカップリング剤を用いて表面処理をした銅粉が、課題を解決することが発明の詳細な説明【0015】「アミノシラン以外のカップリング剤によって表面処理した場合にも、同様に優れた特性の表面処理された金属粉を得られることがわかった。」の他に、【0054】及び【0089】?【0099】(実施例)に記載されている。そして、【0084】の「十分な焼結遅延性を実現するためには、シランカップリング剤としては、アミノ基を有するアミノシランであることが必要であることがわかった」との記載は、本件発明においてアミノシランを使用する部分を強調して記載したものであり、また、特許権者による平成28年6月15日付け提出の意見書における、カップリング剤の使用に関する「引用文献1に記載のシランカップリング剤のうち、アミノシランでないものについては、本願発明において使用したとしても、焼結遅延性を期待することができないカップリング剤です。」という主張についても(但し、特許異議申立書に括弧書きで記載される特許権者の上記主張は、直接は確認できない。)、引用文献1のカップリング剤がアミノシランでないことから本件特許発明と異なることを主張するものであり、本件特許発明においてアミノシランでないカップリング剤が焼結遅延性を実現できないという主張ではないと解されることから、これらの記載が【0015】の上記記載と、直ちに矛盾するものとは認められない。 (ウ) したがって、上記特許異議申立書に記載の理由により、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載したものではないということはできず、特許法36条第4項第1号の規定に違反するものでない。 4 むすび 以上のとおり、取消理由、特許異議の申立理由によっては、本件訂正請求によって訂正された請求項1?4、8?18に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に、本件訂正請求により訂正された請求項1?4、8?18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正請求により、請求項5?7に係る特許は削除されたため、当該請求項5?7に係る特許に対する特許異議の申立てについては、対象となる特許が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 励起源をAl Kα、出力を210W、検出面積800μmφ、入射角・取出角を45°とするXPSのsurvey測定で、Nの光電子が1000cps(count per second)以上で検出され、かつTi、Al、Siのいずれかの光電子が1000cps以上で検出され、焼結開始温度が400℃以上である、表面処理された銅粉であって、D_(50)が1.0μm以下である、表面処理された銅粉であって、 Ti、Al、Siのいずれかがカップリング剤処理で吸着されており、加水分解したカップリング剤が銅粉に直接に吸着しており、 カップリング剤がシラン、チタネート、アルミネートのいずれかであり、 末端がアミノ基であるカップリング剤である、表面処理された銅粉。 【請求項2】 励起源をAl Kα、出力を210W、検出面積800μmφ、入射角・取出角を45°とするXPSのsurvey測定で、表面のNが1%以上で検出され、かつTi、Al、Siのいずれか1種以上が0.6%以上で検出され、焼結開始温度が400℃以上である、表面処理された銅粉であって、D_(50)が1.0μm以下である、表面処理された銅粉であって、 Ti、Al、Siのいずれかがカップリング剤処理で吸着されており、加水分解したカップリング剤が銅粉に直接に吸着しており、 カップリング剤がシラン、チタネート、アルミネートのいずれかであり、 末端がアミノ基であるカップリング剤である、表面処理された銅粉。 【請求項3】 XPSのsurvey測定で、表面のNが1%以上で検出され、かつSi、Ti又はAlが0.6%以上で検出される、請求項1又は2に記載の表面処理された銅粉。 【請求項4】 XPSのsurvey測定で、表面のNが1%以上で検出され、Nの光電子が1000cps(count per second)以上で検出され、かつSi又はTiが0.6%以上で検出され、Si、Ti又はAlの光電子が1000cps以上で検出される、請求項1?3のいずれかに記載の表面処理された銅粉。 【請求項5】(削除) 【請求項6】(削除) 【請求項7】(削除) 【請求項8】 表面処理された銅粉が、シランカップリング剤で表面処理された銅粉である、請求項1?4のいずれかに記載の表面処理された銅粉。 【請求項9】 シランカップリング剤がアミノシランである、請求項8に記載の表面処理された銅粉。 【請求項10】 アミノシランが、モノアミノシラン又はジアミノシランである、請求項9に記載の表面処理された銅粉。 【請求項11】 請求項1?4及び8?10のいずれかに記載の表面処理された銅粉が、さらに有機化合物で表面処理されてなる、表面処理された銅粉。 【請求項12】 請求項1?4及び8?11のいずれかに記載の表面処理された銅粉を使用した導電性金属粉ペースト。 【請求項13】 請求項12に記載のペーストを使用して製造されたチップ積層セラミックコンデンサー。 【請求項14】 内部電極断面に直径が10nm以上のSiO_(2)、TiO_(2)又はAl_(2)O_(3)が存在している、請求項13に記載のチップ積層セラミックコンデンサー。 【請求項15】 内部電極断面に最大径0.5μm以上のSiO_(2)、TiO_(2)又はAl_(2)O_(3)が0.5個/μm^(2)以下で存在している、請求項13又は14に記載のチップ積層セラミックコンデンサー。 【請求項16】 請求項13?15のいずれかに記載のチップ積層セラミックコンデンサーを最外層に実装した多層基板。 【請求項17】 請求項13?15のいずれかに記載のチップ積層セラミックコンデンサーを内層に実装した多層基板。 【請求項18】 請求項16又は17に記載の多層基板を搭載した電子部品。 【請求項19】 銅粉を、末端にアミノ基を有するカップリング剤の水溶液と混合して、銅粉分散液を調製する工程、を含む、焼結開始温度が400℃以上である、表面処理された銅粉を製造する方法であって、 表面処理された銅粉は、D_(50)が1.0μm以下であり、励起源をAl Kα、出力を210W、検出面積800μmφ、入射角・取出角を45°とするXPSのsurvey測定で、表面のNが1%以上で検出され、かつTi、Al、Si、Zr、Ce、Snのいずれか1種以上が0.6%以上で検出される、表面処理された銅粉である、方法。 【請求項20】 銅粉を、末端にアミノ基を有するカップリング剤の水溶液と混合して、銅粉分散液を調製する工程、を含む、銅粉を表面処理して焼結遅延させる方法であって、 表面処理された銅粉は、D_(50)が1.0μm以下であり、励起源をAl Kα、出力を210W、検出面積800μmφ、入射角・取出角を45°とするXPSのsurvey測定で、表面のNが1%以上で検出され、かつTi、Al、Si、Zr、Ce、Snのいずれか1種以上が0.6%以上で検出される、表面処理された銅粉である、方法。 【請求項21】 銅粉分散液を撹拌する工程を含む、請求項19?20のいずれかに記載の方法。 【請求項22】 銅粉分散液を超音波処理する工程を含む、請求項19?21のいずれかに記載の方法。 【請求項23】 超音波処理する工程が、1?180分間の超音波処理を行う工程である、請求項22に記載の方法。 【請求項24】 銅粉分散液をろ過して銅粉を回収する工程、 ろ過して回収された銅粉を乾燥して、表面処理された銅粉を得る工程、 を含む、請求項19?23のいずれかに記載の方法。 【請求項25】 乾燥が、酸素雰囲気又は不活性雰囲気下で行われる、請求項24に記載の方法。 【請求項26】 銅粉分散液が、銅粉1gに対してカップリング剤0.025g以上を含んでいる、請求項19?25のいずれかに記載の方法。 【請求項27】 カップリング剤水溶液が、次の式I: H_(2)N-R^(1)-Si(OR^(2))_(2)(R^(3)) (式I) (ただし、上記式Iにおいて、 R1は、直鎖状又は分枝を有する、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の、環式又は非環式の、複素環を有する又は複素環を有しない、C1?C12の炭化水素の二価基であり、 R2は、C1?C5のアルキル基であり、 R3は、C1?C5のアルキル基、又はC1?C5のアルコキシ基である。) で表されるアミノシランの水溶液である、請求項19?26のいずれかに記載の方法。 【請求項28】 R1が、 -(CH_(2))_(n)-、-(CH_(2))_(n)-(CH)_(m)-(CH_(2))_(j-1)-、-(CH_(2))_(n)-(CC)-(CH_(2))_(n-1)-、-(CH_(2))_(n)-NH-(CH_(2))_(m)-、-(CH_(2))_(n)-NH-(CH_(2))_(m)-NH-(CH_(2))_(j)-、-(CH_(2))_(n-1)-(CH)NH_(2)-(CH_(2))_(m-1)-、-(CH_(2))_(n-1)-(CH)NH_(2)-(CH_(2))_(m-1)-NH-(CH_(2))_(j)- からなる群から選択された基である(ただし、n、m、jは、1以上の整数である)、請求項27に記載の方法。 【請求項29】 カップリング剤水溶液が、次の式II: (H_(2)N-R^(1)-O)_(p)Ti(OR^(2))_(q) (式II) (ただし、上記式IIにおいて、 R1は、直鎖状又は分枝を有する、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の、環式又は非環式の、複素環を有する又は複素環を有しない、C1?C12の炭化水素の二価基であり、 R2は、直鎖状又は分枝を有する、C1?C5のアルキル基であり、 p及びqは、1?3の整数であり、p+q=4である。) で表されるアミノ基含有チタネートの水溶液である、請求項19?26のいずれかに記載の方法。 【請求項30】 R1が、 -(CH_(2))_(n)-、-(CH_(2))_(n)-(CH)_(m)-(CH_(2))_(j-1)-、-(CH_(2))_(n)-(CC)-(CH_(2))_(n-1)-、-(CH_(2))_(n)-NH-(CH_(2))_(m)-、-(CH_(2))_(n)-NH-(CH_(2))_(m)-NH-(CH_(2))_(j)-、-(CH_(2))_(n-1)-(CH)NH_(2)-(CH_(2))_(m-1)-、-(CH_(2))_(n-1)-(CH)NH_(2)-(CH_(2))_(m-1)-NH-(CH_(2))_(j)- からなる群から選択された基である(ただし、n、m、jは、1以上の整数である)、請求項29に記載の方法。 【請求項31】 銅粉が、湿式法によって製造された銅粉である、請求項19?30のいずれかに記載の方法。 【請求項32】 請求項19?31のいずれかに記載の製造方法によって製造された表面処理された銅粉を、溶媒及び/又はバインダーと配合して、導電性金属粉ペーストを製造する方法。 【請求項33】 請求項19?31のいずれかに記載の製造方法によって製造された表面処理された銅粉を、溶媒及び/又はバインダーと配合して、導電性金属粉ペーストを得る工程、 導電性金属粉ペーストを基材に塗布する工程、 基材に塗布された導電性金属粉ペーストを加熱焼成する工程、 を含む、電極を製造する方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-10-02 |
出願番号 | 特願2013-557609(P2013-557609) |
審決分類 |
P
1
652・
536-
YAA
(B22F)
P 1 652・ 537- YAA (B22F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 田中 永一 |
特許庁審判長 |
鈴木 正紀 |
特許庁審判官 |
小川 進 宮本 純 |
登録日 | 2016-07-29 |
登録番号 | 特許第5977267号(P5977267) |
権利者 | JX金属株式会社 |
発明の名称 | 表面処理された金属粉、及びその製造方法 |
代理人 | アクシス国際特許業務法人 |
代理人 | アクシス国際特許業務法人 |