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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B32B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B |
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管理番号 | 1335118 |
異議申立番号 | 異議2017-700094 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-02-02 |
確定日 | 2017-10-23 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5964718号発明「シリコーン離型ポリエステルフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5964718号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 特許第5964718号の請求項1?4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第5964718号(以下「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成28年7月8日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成29年4月13日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年6月9日に意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。 なお、特許権者による訂正の請求について、申立人に意見を提出する機会を与えたが、申立人からの意見書の提出はなかった。 第2 訂正の請求 1 訂正の内容 平成29年6月9日付け訂正請求書による訂正の請求は、「特許第5964718号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「アルケニル基含有シリコーンの水分散体」とあるのを「下記の一般式(I)で示される構造を有するオルガノポリシロキサンであるアルケニル基含有シリコーンの水分散体」に訂正し、下記一般式(I)を追加する。 [一般式(I)] R^(1)_(a)R^(2)_(b)SiO_((4-a-b)/2) ・・・(I) (式(I)中、R^(1)は炭素数2?8のアルケニル基、R^(2)はアルキル基またはアリール基から選択される炭素数1?16の1価の飽和炭化水素基であり、aは1?3、bは0?2で、かつa+b≦3を満たす整数をそれぞれ表す) (請求項1の記載を引用する請求項2?4も同様に訂正する。) 2 訂正の適否 (1) 一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1?4について、請求項2は請求項1を引用し、請求項3は請求項1または2を引用しており、請求項4は請求項1?3のいずれか1項を引用しており、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (2) 訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、「アルケニル基含有シリコーンの水分散体」とあるのを、「下記の一般式(I)で示される構造を有するオルガノポリシロキサンであるアルケニル基含有シリコーンの水分散体」とし、一般式(I)を追加する訂正であり、アルケニル基含有シリコーンを具体的に特定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、訂正後の請求項1を引用する請求項2?4についても同様に減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、「アルケニル基含有シリコーンの水分散体」とあるのを「下記の一般式(I)で示される構造を有するオルガノポリシロキサンであるアルケニル基含有シリコーンの水分散体」とし、一般式(I)を追加するという訂正であり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2?4に記載された発明についてもカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。 よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること 訂正事項1は、願書に添付した明細書の 「該アルケニル基含有シリコーンとして、下記の一般式(I)で示される構造を有するオルガノポリシロキサンが例示される。 R^(1)_(a)R^(2)_(b)SiO_((4-a-b)/2) ・・・(I) (式(I)中、R^(1)は炭素数2?8のアルケニル基、R^(2)はアルキル基またはアリール基から選択される炭素数1?16の1価の飽和炭化水素基であり、aは1?3、bは0?2で、かつa+b≦3を満たす整数をそれぞれ表す)」(【0014】) という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 3 まとめ したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同条第4項並びに同条第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1?4」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 【請求項1】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、下記の一般式(I)で示される構造を有するオルガノポリシロキサンであるアルケニル基含有シリコーンの水分散体、Si-H基で表されるSi原子と直接結合した水素原子を有するシリコーンの水分散体、架橋反応抑制剤および白金系触媒を含む離型用コーティング組成物を用いて形成される塗布層を有するシリコーン離型ポリエステルフィルムにおいて、該アルケニル基含有シリコーンの数平均分子量が10000?30000、該白金系触媒の白金元素重量がアルケニル基含有シリコーン重量に対して10?120ppm、かつ架橋反応抑制剤の含有量が塗布層の形成に用いられる塗布液重量に対して10ppm以上であり、該塗布層厚みが10?100nmである、シリコーン離型ポリエステルフィルム。 R^(1)_(a)R^(2)_(b)SiO_((4-a-b)/2) ・・・(I) (式(I)中、R^(1)は炭素数2?8のアルケニル基、R^(2)はアルキル基またはアリール基から選択される炭素数1?16の1価の飽和炭化水素基であり、aは1?3、bは0?2で、かつa+b≦3を満たす整数をそれぞれ表す) 【請求項2】 ポリエステルフィルムが、粒子を含まない表面層を有し、塗布層が該表面層上に形成されてなる、請求項1に記載のシリコーン離型ポリエステルフィルム。 【請求項3】 該アルケニル基含有シリコーンのアルケニル基がビニル基である、請求項1または2に記載のシリコーン離型ポリエステルフィルム。 【請求項4】 積層セラミックコンデンサ製造におけるセラミックグリーンシート成形に用いられる、請求項1?3のいずれか1項に記載のシリコーン離型ポリエステルフィルム。 第4 当審の判断 1 平成29年4月13日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要 [理由1] 本件発明1及び3は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 [理由2] 本件発明1?4は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <刊行物> 甲第1号証 韓国公開特許2008-0081832号公報 甲第2号証 特開2012-40762号公報 甲第3号証 特開平5-262986号公報 甲第4号証 特開平9-125004号公報 甲第5号証 特開平9-143371号公報 (以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。また、「甲第1号証に記載された発明」、「甲第2号証に記載された事項」等を、それぞれ「甲1発明」、「甲2記載事項」等という。) 理由1-1 本件発明1及び3は、甲1発明である。 理由2-1 本件発明1及び3は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 理由2-2 本件発明1?4は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 理由2-3 本件発明1?4は、甲3、甲4、甲5発明のいずれかに、甲1又は甲2記載事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、上記取消理由通知は、本件特許異議の申立てにおいて申立てられた全ての申立理由を採用した。 2 上記取消理由についての判断 (1) 理由1-1について ア 甲1発明 甲1には、 「ポリエステルフィルムの基材上に、 (A) 下記(A1)成分と(A2)成分とをアルカリ触媒を用いて加熱反応させて得られた生成物100質量部、 (A1) 一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有し、該アルケニル基の含有量が0.010?0.05モル/100gの範囲内であり、25℃における粘度が100?1,500mpa・sであるジオルガノポリシロキサン97?80質量部、 (A2) R_(3)SiO_(1/2)単位(ここで、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の炭素数が1から10の1価炭化水素基、または水酸基)及びSiO_(4/2)単位を含有し、R_(3)SiO_(1/2)単位とSiO_(4/2)単位とのモル比が0.6?1.5の範囲内であるポリオルガノシロキサン3?20質量部、 (ここで、(A1)成分と(A2)成分の合計量は100質量部である) (B) 一分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有し、25℃における粘度が5?1,000mpa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン0.5?10質量部、 (C) (A)成分100質量部に対して、0.01?10質量部の付加反応抑制剤、及び (D) (A)成分の重量に対する添加量が1?1,000ppmの白金族金属系触媒 を含有し、25℃における粘度が100?1,500mpa・sの範囲内である、 プラスチックフィルム用の無溶剤型硬化性シリコーン剥離剤組成物 を塗布し、硬化させた、0.01μm?5.0μmの厚みの硬化皮膜が形成された、剥離フィルム。」 という甲1発明が記載されている(請求項1、段落<46>、<48>、<59>、<60>等の記載参照)。 イ 本件発明1と甲1発明との対比、判断 本件発明1と甲1発明を対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。 [相違点A] 離型用コーティング組成物について、本件発明1は、 「下記の一般式(I)で示される構造を有するオルガノポリシロキサンであるアルケニル基含有シリコーンの水分散体 R^(1)_(a)R^(2)_(b)SiO_((4-a-b)/2) ・・・(I) (式(I)中、R^(1)は炭素数2?8のアルケニル基、R^(2)はアルキル基またはアリール基から選択される炭素数1?16の1価の飽和炭化水素基であり、aは1?3、bは0?2で、かつa+b≦3を満たす整数をそれぞれ表す)」を含むものであるのに対して、 甲1発明は、 「(A) 下記(A1)成分と(A2)成分とをアルカリ触媒を用いて加熱反応させて得られた生成物 (A1) 一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有し、該アルケニル基の含有量が0.010?0.05モル/100gの範囲内であり、25℃における粘度が100?1,500mpa・sであるジオルガノポリシロキサン97?80質量部、 (A2) R_(3)SiO_(1/2)単位(ここで、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同種又は異種の炭素数が1から10の1価炭化水素基、または水酸基)及びSiO_(4/2)単位を含有し、R_(3)SiO_(1/2)単位とSiO_(4/2)単位とのモル比が0.6?1.5の範囲内であるポリオルガノシロキサン3?20質量部、 (ここで、(A1)成分と(A2)成分の合計量は100質量部である)」を含む「無溶剤型」のものである点。 そして、上記相違点Aは実質的な相違点であるから、本願発明1は、甲1発明であるとはいえない。 ウ 本件発明3について 本件発明3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記(1)イの説示を踏まえれば、甲1発明であるとはいえない。 エ 小括 よって、本件発明1及び3は、甲1発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないとすることはできない。 したがって、本件発明1及び3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 (2) 理由2-1及び理由2-2について ア 本件発明1と甲1発明との対比、判断 上記(1)に示したとおり、本件発明1と甲1発明は上記相違点Aにおいて相違する。 そこで、上記相違点Aについて検討すると、甲1発明は、プラスチックフィルム基材に対する密着性がよく、しかも剥離性に優れた無溶剤型の硬化性シリコーン剥離剤組成物、及びこの組成物の硬化被膜が形成されてなる剥離フィルムを提供することを目的とするものであり(甲1<12>等参照)、その目的のために、「無溶剤型の硬化性シリコーン剥離剤組成物」において上記「(A1)成分と(A2)成分とをアルカリ触媒を用いて加熱反応させて得られた生成物」を含むようにしたものであるから、甲1に接した当業者にとって、甲1発明において、上記「(A1)成分と(A2)成分とをアルカリ触媒を用いて加熱反応させて得られた生成物」を含む「無溶剤型」のものに代えて、上記一般式(I)で示される構造を有するオルガノポリシロキサンであるアルケニル基含有シリコーンの水分散体を含むようにした水系溶剤型のものを用いようとする動機を見出すことはできない。そうすると、たとえ上記一般式(I)で示される構造を有するオルガノポリシロキサンであるアルケニル基含有シリコーンの水分散体を含むようにした水系溶剤型の離型用コーティング組成物を用いた離型ポリエステルフィルムが甲2にみられるように公知であったとしても、甲1発明について上記相違点Aに係る本件発明1の構成を得るようにすることは、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 そして、本件発明1は、上記相違点Aに係る構成等を備えることにより、薄膜セラミックグリーンシート成形に適した軽剥離性とグリーンシートの表面性に影響する微細なシリコーン凝集物由来の突起が低減されたシリコーン離型ポリエステルフィルムを提供することができる(本件特許明細書【0009】参照)という効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲1発明に基いて、又は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2?4について 本件発明2?4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記(2)アの説示を踏まえれば、甲1発明に基いて、又は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 よって、本件発明1?4は、甲1発明に基いて、又は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件発明1?4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 (3) 理由2-3について ア 本件発明1と、甲3、甲4及び甲5発明との対比、判断 本件発明1と、甲3、甲4及び甲5発明とをそれぞれ対比すると、これらのものは、オルガノポリシロキサンであるアルケニル基含有シリコーン、Si-H基で表されるSi原子と直接結合した水素原子を有するシリコーン、架橋反応抑制剤および白金系触媒を含むシリコーン組成物の塗布層を有する点において共通するものであるが、本件発明1は、甲3、甲4及び甲5発明のいずれとも、少なくとも以下の点において相違する。 [相違点B] 本件発明1は、 「該アルケニル基含有シリコーンの数平均分子量が10000?30000、該白金系触媒の白金元素重量がアルケニル基含有シリコーン重量に対して10?120ppm、かつ架橋反応抑制剤の含有量が塗布層の形成に用いられる塗布液重量に対して10ppm以上であり、該塗布層厚みが10?100nmである」のに対して、 甲3、甲4及び甲5発明のいずれについても、上記「アルケニル基含有シリコーンの数平均分子量」、「白金系触媒の白金元素重量」の「アルケニル基含有シリコーン重量」に対する量、「架橋反応抑制剤の含有量」の「塗布層の形成に用いられる塗布液重量」に対する量、及び、「塗布層厚み」が、上記数値範囲であるか明らかでない点。 そこで、上記相違点Bについて検討する。 本件発明1は、薄膜セラミックグリーンシート成形に適した軽剥離性とグリーンシートの表面性に影響する微細なシリコーン凝集物由来の突起が低減されたシリコーン離型ポリエステルフィルムを提供するために、シリコーンエマルジョン中のアルケニル基含有シリコーンの分子量と白金触媒の濃度及び離型層厚みに着目して、軽剥離化と表面平滑性の両方を解決できることを見出し(本件特許明細書【0006】?【0007】参照)、「アルケニル基含有シリコーンの分子量」、「白金触媒の濃度」及び「離型層厚み」の3つのパラメータについて上記相違点Bに係る数値範囲に特定したものである。 一方、甲3、甲4及び甲5発明は、本件発明の上記点に着目したものではないから、甲3、甲4又は甲5に接した当業者にとって、上記3つのパラメータについて上記相違点Bに係る本件発明1の構成を得ようとする動機を見出すことはできない。また、上記3つのパラメータについての上記相違点Bに係る本件発明1の構成は、甲1及び甲2には記載されていないし、示唆する記載もない。また、上記3つのパラメータについて上記相違点Bに係る数値範囲とすることが、当業者において当然の設計的事項又は技術常識であるとするに足る証拠はない。 そして、本件発明1は、上記相違点Bに係る構成等を備えることにより、薄膜セラミックグリーンシート成形に適した軽剥離性とグリーンシートの表面性に影響する微細なシリコーン凝集物由来の突起が低減されたシリコーン離型ポリエステルフィルムを提供することができる(本件特許明細書【0009】参照)という効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲3、甲4、甲5発明のいずれかに、甲1又は甲2記載事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 イ 本件発明2?4について 本件発明2?4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記(3)アの説示を踏まえれば、甲3、甲4、甲5発明のいずれかに、甲1又は甲2記載事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 小括 よって、本件発明1?4は、甲3、甲4、甲5発明のいずれかに、甲1又は甲2記載事項を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件発明1?4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、下記の一般式(I)で示される構造を有するオルガノポリシロキサンであるアルケニル基含有シリコーンの水分散体、Si-H基で表されるSi原子と直接結合した水素原子を有するシリコーンの水分散体、架橋反応抑制剤および白金系触媒を含む離型用コーティング組成物を用いて形成される塗布層を有するシリコーン離型ポリエステルフィルムにおいて、該アルケニル基含有シリコーンの数平均分子量が10000?30000、該白金系触媒の白金元素重量がアルケニル基含有シリコーン重量に対して10?120ppm、かつ架橋反応抑制剤の含有量が塗布層の形成に用いられる塗布液重量に対して10ppm以上であり、該塗布層厚みが10?100nmである、シリコーン離型ポリエステルフィルム。 R^(1)_(a)R^(2)_(b)SiO_((4-a-b)/2) ・・・(I) (式(I)中、R^(1)は炭素数2?8のアルケニル基、R^(2)はアルキル基またはアリール基から選択される炭素数1?16の1価の飽和炭化水素基であり、aは1?3、bは0?2で、かつa+b≦3を満たす整数をそれぞれ表す) 【請求項2】 ポリエステルフィルムが、粒子を含まない表面層を有し、塗布層が該表面層上に形成されてなる、請求項1に記載のシリコーン離型ポリエステルフィルム。 【請求項3】 該アルケニル基含有シリコーンのアルケニル基がビニル基である、請求項1または2に記載のシリコーン離型ポリエステルフィルム。 【請求項4】 積層セラミックコンデンサ製造におけるセラミックグリーンシート成形に用いられる、請求項1?3のいずれか1項に記載のシリコーン離型ポリエステルフィルム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-10-13 |
出願番号 | 特願2012-231958(P2012-231958) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B32B)
P 1 651・ 113- YAA (B32B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 北澤 健一 |
特許庁審判長 |
渡邊 豊英 |
特許庁審判官 |
蓮井 雅之 千壽 哲郎 |
登録日 | 2016-07-08 |
登録番号 | 特許第5964718号(P5964718) |
権利者 | 帝人フィルムソリューション株式会社 |
発明の名称 | シリコーン離型ポリエステルフィルム |
代理人 | 為山 太郎 |
代理人 | 為山 太郎 |