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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H02J
管理番号 1335167
異議申立番号 異議2017-700708  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-07-24 
確定日 2017-12-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第6067278号発明「電力管理装置、電力管理システム、及び電力管理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6067278号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6067278号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成24年8月10日に特許出願され、平成29年1月6日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人星野裕司より特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第6067278号の請求項1?10の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。(以下、本件請求項1?10に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明10」という。)(「A:」?「Q:」の文字は、本件発明を分説した構成要件として当審で付与。)

「【請求項1】
A:複数の検出器それぞれが計測する電力情報を取得可能な電力管理装置であって、
B:前記複数の検出器のうちのいずれかの割当を、発電装置を含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する制御部を備え、
C/D:前記制御部において、前記複数の検出器の中で少なくとも2つの特定の検出器の割当が前記複数の測定対象のうち、前記発電装置、負荷機器、分電盤の分岐回路、又はパワーコンディショニングシステムの電力情報の測定用途のいずれかに設定変更可能であり、当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は前記分電盤の主幹および前記分電盤の分岐回路用に定められている
E:ことを特徴とする電力管理装置。
【請求項2】
F:請求項1に記載の電力管理装置であって、前記制御部において、前記少なくとも2つの特定の検出器の割当が、発電装置の単相3線の測定用に1組に定められるか、それぞれ個別の測定対象に定められるかを設定変更可能であることを特徴とする電力管理装置。
【請求項3】
G:請求項1又は請求項2に記載の電力管理装置であって、前記制御部は、前記少なくとも2つの特定の検出器の測定値に対し、現在設定されている測定対象を識別する情報を付して外部に対して出力することを特徴とする電力管理装置。
【請求項4】
H:請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の電力管理装置であって、前記制御部は、前記分電盤の主幹および前記分電盤の分岐回路用に割当てられた検出器から、前記分電盤の主幹および前記分電盤の支幹における消費電力を取得することを特徴とする電力管理装置。
【請求項5】
I:請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の電力管理装置であって、前記少なくとも2つの特定の検出器の割当ては、特定の前記負荷機器に設定されることを特徴とする電力管理装置。
【請求項6】
J:請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の電力管理装置であって、前記少なくとも2つの特定の検出器の割当てを前記発電装置から特定の前記負荷機器へ変更することを特徴とする電力管理装置。
【請求項7】
K:請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の電力管理装置であって、前記検出器が内蔵されていることを特徴とする電力管理装置。
【請求項8】
A:複数の検出器それぞれが計測する電力情報を取得可能な電力管理装置と、
L:前記電力管理装置と通信を行い、電力情報に基づく画面を表示可能な通信端末とを含む電力管理システムであって、
B:前記電力管理装置は、
前記複数の検出器のうちのいずれかの割当を、発電装置を含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する制御部を備え、
C/D:前記制御部において、前記複数の検出器の中で少なくとも2つの特定の検出器の割当が前記複数の測定対象のうち、前記発電装置、負荷機器、分電盤の分岐回路、又はパワーコンディショニングシステムの電力情報の測定用途のいずれかに設定変更可能であり、当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は前記分電盤の主幹および前記分電盤の分岐回路用に定められていることを特徴とし、
M:前記通信端末は、
前記複数の検出器の測定値を前記電力管理装置から受信し、
N:受信した測定値に基づいて測定対象の電力情報を表示する
O:ことを特徴とする電力管理システム。
【請求項9】
P:請求項8に記載の電力管理システムであって、前記通信端末は、同一種類の機器における電力を合算して表示可能であることを特徴とする電力管理システム。
【請求項10】
A:複数の検出器それぞれが計測する電力情報を取得可能な電力管理装置と、
L:前記電力管理装置と通信を行い、電力情報に基づく画面を表示可能な通信端末とを含む電力管理システムにおける電力管理方法であって、
B:前記電力管理装置が、前記複数の検出器のうちのいずれかの割当を、発電装置を含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更するステップと、
C/D:当該ステップにおいて、前記複数の検出器の中で少なくとも2つの特定の検出器の割当が前記複数の測定対象のうち、前記発電装置、負荷機器、分電盤の分岐回路、又はパワーコンディショニングシステムの電力情報の測定用途のいずれかに設定変更可能であり、当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は前記分電盤の主幹および前記分電盤の分岐回路用に定められていることを特徴とし、
M:前記通信端末が、前記複数の検出器の測定値を前記電力管理装置から受信するステップと、
N:前記通信端末が、受信した測定値に基づいて測定対象の電力情報を表示するステップとを有する
Q:ことを特徴とする電力管理方法。」

3.申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として、
甲第1号証:特開2011-112464号公報(以下「刊行物1」という。)
甲第2号証:特開2012-60738号公報(以下「刊行物2」という。)
甲第3号証:特開2012-63299号公報(以下「刊行物3」という。)
甲第4号証:特開2010-181159号公報(以下「刊行物4」という。)
甲第5号証:特開2011-120324号公報(以下「刊行物5」という。)
を提出し、請求項1?6,8,10に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?10に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?10に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4.刊行物の記載
(1)刊行物1には、「電力監視システム」に関して、次の事項が記載されている。(下線部は、当審で付与。以下同様。)
(ア)「【0012】この発明によれば、売電可能な発電ユニットと売電不可能な発電ユニットとを併用する配電システム、売電可能な発電ユニットのみを用いる配電システムのいずれであっても、同一の電力計測ユニットを各計測場所で使用可能となる。すなわち、配電システムの構成、計測場所に関わらず、電力計測ユニットを共用でき、構成の簡易化を図ることが可能となり、使い勝手が向上する。」
(イ)「【0024】本システムでは、宅内に電力を供給する電力供給源として、商用電源AC、太陽発電ユニットUv、ガス発電ユニットUgがあり、統合演算部1が、住戸全体の電力収支や、発電/消費の内訳を算出して電力情報を生成し、当該生成した電力情報を含むウェブコンテンツを、LAN等のネットワークNTを介して接続されたパーソナルコンピュータ等の表示モニタ2(表示部)に表示させる。なお、統合演算部1と表示モニタ2との間は、電力線搬送通信を用いて情報授受を行ってもよく、さらに統合演算部1および表示モニタ2は、一体構成でもよい。
【0025】そして、3つの電力計測ユニット3(31,32,33)が、電路上の各部の電力を計測しており、1つ目の電力計測ユニット31は、主幹ブレーカBmの二次側に設置されて、主幹ブレーカBmから二次側主幹電路La2に供給される主幹電力Pmを計測する。2つ目の電力計測ユニット32は、発電用ブレーカBvの一次側(太陽発電ユニットUv側)に設置されて、太陽発電ユニットUvが一次側主幹電路La1に供給する発電電力Pv(太陽発電電力Pv)を計測する。3つ目の電力計測ユニット33は、発電用ブレーカBgの一次側(ガス発電ユニットUg側)に設置されて、ガス発電ユニットUgが二次側主幹電路La2に供給する発電電力Pg(ガス発電電力Pg)を計測する。そして、電力計測ユニット31,32,33は、宅内ネットワークを構成する共通のローカルバスW1によって統合演算部1に接続しており、電力計測ユニット31,32,33の各計測結果は、ローカルバスW1を介して統合演算部1へ送信される。なお、電力計測ユニット3は、太陽発電電力Pv、ガス発電電力Pg等の発電電力が負値となるように電路に対して設置され、負荷X等での消費電力が正値となるように電路に対して設定される。」
(ウ)「【0030】そこで、本実施形態では、電力計測ユニット31,32,33の各計測対象の機器情報を機器情報設定部3cで設定し、電力計測ユニット31,32,33の各設置場所の場所情報を場所情報設定部3dで設定する。」
(エ)「【0031】機器情報設定部3cは、DIPスイッチ等で構成され、計測対象の機器情報を設定する。図1のシステム構成において、電力計測ユニット31は、機器情報『主幹ブレーカ』に設定され、電力計測ユニット32は、機器情報『太陽発電ユニット』に設定され、電力計測ユニット33は、機器情報『ガス発電ユニット』に設定される。一方、図2のシステム構成において、電力計測ユニット31は、機器情報『主幹ブレーカ』に設定され、電力計測ユニット32は、機器情報『太陽発電ユニット』に設定される。」
(オ)「【0035】統合演算部1は、電力計測ユニット3から各々受信した計測電力、機器情報、場所情報に基づいて、住戸全体の電力収支や、発電/消費の内訳を算出して、電力情報を生成し、生成した電力情報を含むウェブコンテンツを表示モニタ2に表示させる。以下、この電力情報の生成処理について説明する。」
(カ)「【0042】また、ヒートポンプ式の給湯システム等の蓄熱設備を負荷として接続してもよく、例えば、一次側主幹電路La1に、売電可能な分散電源の代わりにヒートポンプ式の給湯システム等を接続し、一次側主幹電路La1から供給される電力によって蓄熱を行う場合、電力計測ユニット32によって一次側主幹電路La1から蓄熱設備に供給される電力(蓄熱用電力Pt)を計測すると、蓄熱用電力Ptの計測結果は正値となる。この場合、電力計測ユニット32は、機器情報『蓄熱設備』に設定され、場所情報『主幹ブレーカの一次側』に設定される。」
(キ)「【0049】分岐回路4は、図5に示すように、二次側主幹電路La2から分岐した分岐電路Lb毎に分岐ブレーカ41を介挿し、分岐電力計測部42が、各分岐電路Lbから負荷Xに供給される電力を計測している。」
(ク)「【0050】分岐電力計測部42は、センサ部42a、電力演算部42b、分岐情報設定部42c、送信部42d(第2の送信手段)を備え、ロゴスキーコイルおよび電圧センサで構成されるセンサ部42aが各分岐電路Lbを流れる電流および電圧を検出し、電力演算部42bは、検出した電流値と当該分岐電路Lbの電圧とを用いて電力を算出しており、センサ部42aと電力演算部42bとで計測手段(第2の計測手段)を構成している。また、分岐情報設定部42cは、押ボタン等で構成され、計測対象の分岐電路Lbの情報(分岐電路情報)を設定する。分岐電路情報には、当該分岐電路Lbに設けられた分岐ブレーカ41の定格電流(15A,20A,30A,...)や接続される負荷Xの名称(照明機器,空調装置,避雷器,地震計,...)等が設定される。」
(ケ)「【0052】統合演算部1は、電力計測ユニット31,32,33から各々受信した計測電力、機器情報、場所情報に基づく、住戸全体の電力収支や、発電/消費の内訳以外に、分岐電力計測部42から各々受信した計測電力、分岐情報に基づく、分岐電路Lb毎の消費電力も含んで電力情報を生成し、生成した電力情報を含むウェブコンテンツを表示モニタ2に表示させる。分岐電路Lb毎の消費電力は、分岐情報設定部42cで設定した分岐ブレーカ41の定格電流や名称等とともに表示され、ユーザは分岐電路Lb毎の消費電力を把握し易くなり、省電力化のための対応を適切に実行可能となる。」
(コ)「【0053】また、当該分岐電路Lbには、負荷Xだけでなく、分散電源が接続されてもよく、この場合、分岐情報設定部42cは、分岐電路情報として、当該分岐電路Lbに接続される分散電源の名称(ガス発電ユニット,太陽発電ユニット,...)が設定される。」
(サ)「【0063】したがって、統合演算部1は、ガス発電ユニットUgが貯湯ユニット5へ直接供給する電力も含めて電力情報を生成できるので、配電システムの構成に依らず、電力監視が可能となる。なお、ガス発電ユニットUgの代わりに、燃料電池による発電電力を利用した燃料電池発電ユニットを用いてもよい。」
(シ)【図4】には、実施形態2のシステム構成を示す図が記載されている。
(ス)【図5】には、実施形態2のシステム構成の分岐回路の構成を示す図が記載されている。

(a)統合演算部1は、記載事項(ケ)の「統合演算部1は、電力計測ユニット31,32,33から各々受信した計測電力、機器情報、場所情報に基づく、住戸全体の電力収支や、発電/消費の内訳以外に、分岐電力計測部42から各々受信した計測電力、分岐情報に基づく、分岐電路Lb毎の消費電力も含んで電力情報を生成し、生成した電力情報を含むウェブコンテンツを表示モニタ2に表示させる。」ものであるので、電力計測ユニット(31、32、33)、分岐電力計測部(42)それぞれが計測する計測電力を取得可能な統合演算部(1)といえる。
(b)電力計測ユニット(31)(32)(33)は、記載事項(ア)「売電可能な発電ユニットと売電不可能な発電ユニットとを併用する配電システム、売電可能な発電ユニットのみを用いる配電システムのいずれであっても、同一の電力計測ユニットを各計測場所で使用可能となる。すなわち、配電システムの構成、計測場所に関わらず、電力計測ユニットを共用でき、構成の簡易化を図ることが可能となり、使い勝手が向上する。」、記載事項(イ)「3つの電力計測ユニット3(31,32,33)が、電路上の各部の電力を計測しており」と記載されている様に同一の電力計測ユニットである。
そして、電力計測ユニット(31)(32)(33)は、それぞれが記載事項(ウ)の「電力計測ユニット31,32,33の各計測対象の機器情報を機器情報設定部3cで設定し、電力計測ユニット31,32,33の各設置場所の場所情報を場所情報設定部3dで設定する」ものであって、記載事項(エ)の「機器情報設定部3cは、DIPスイッチ等で構成され、計測対象の機器情報を設定する。図1のシステム構成において、電力計測ユニット31は、機器情報『主幹ブレーカ』に設定され、電力計測ユニット32は、機器情報『太陽発電ユニット』に設定され、電力計測ユニット33は、機器情報『ガス発電ユニット』に設定される。一方、図2のシステム構成において、電力計測ユニット31は、機器情報『主幹ブレーカ』に設定され、電力計測ユニット32は、機器情報『太陽発電ユニット』に設定される。」ものであるので、【図4】の電力計測ユニット(31)(32)(33)それぞれの機器情報設定部(3c)は、各電力計測ユニット(31)(32)(33)の割当を、発電ユニットを含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する各機器情報設定部(3c)といえる。
(c)分岐回路(4)は、記載事項(キ)の「分岐回路4は、図5に示すように、二次側主幹電路La2から分岐した分岐電路Lb毎に分岐ブレーカ41を介挿し、分岐電力計測部42が、各分岐電路Lbから負荷Xに供給される電力を計測している。」ものであって、記載事項(ク)の「分岐電力計測部42は・・分岐情報設定部42c・・を備え、・・分岐情報設定部42cは、押ボタン等で構成され、計測対象の分岐電路Lbの情報(分岐電路情報)を設定する。分岐電路情報には、当該分岐電路Lbに設けられた分岐ブレーカ41の定格電流(15A,20A,30A,...)や接続される負荷Xの名称(照明機器,空調装置,避雷器,地震計,...)等が設定される。」、記載事項(コ)の「当該分岐電路Lbには・・分散電源が接続されてもよく、この場合、分岐情報設定部42cは、分岐電路情報として、当該分岐電路Lbに接続される分散電源の名称(ガス発電ユニット,太陽発電ユニット,...)が設定される。」ものであるので、分岐回路(4)の各分岐電力計測部(42)の分岐情報設定部(42c)は、各分岐電力計測部(42)の割当を、発電ユニットを含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する各分岐情報設定部(42c)といえる。
(d)電力計測ユニット(31)(32)(33)は、記載事項(エ)の「図1のシステム構成において、電力計測ユニット31は、機器情報『主幹ブレーカ』に設定され、電力計測ユニット32は、機器情報『太陽発電ユニット』に設定され、電力計測ユニット33は、機器情報『ガス発電ユニット』に設定される。一方、図2のシステム構成において、電力計測ユニット31は、機器情報『主幹ブレーカ』に設定され、電力計測ユニット32は、機器情報『太陽発電ユニット』に設定される。」ものであり、電力計測ユニット(31)(32)(33)が、上記(b)の「同一の電力計測ユニット」であって、少なくとも例示された全ての測定対象に設定変更可能と解するのが相当であるので、各電力計測ユニット(31)(32)(33)は、各機器情報設定部(3c)において、電力計測ユニットの割当が複数の測定対象のうち、少なくとも「主幹ブレーカ」「太陽発電ユニット」「蓄熱設備」「ガス発電ユニット」に設定変更可能であるといえる。
(e)分岐回路(4)の各分岐電力計測部(42)は、記載事項(ク)の「分岐電力計測部42は・・分岐情報設定部42c・・を備え、・・分岐情報設定部42cは、押ボタン等で構成され、計測対象の分岐電路Lbの情報(分岐電路情報)を設定する。分岐電路情報には、当該分岐電路Lbに設けられた分岐ブレーカ41の定格電流(15A,20A,30A,...)や接続される負荷Xの名称(照明機器,空調装置,避雷器,地震計,...)等が設定される。」、記載事項(コ)の「当該分岐電路Lbには・・分散電源が接続されてもよく、この場合、分岐情報設定部42cは、分岐電路情報として、当該分岐電路Lbに接続される分散電源の名称(ガス発電ユニット,太陽発電ユニット,...)が設定される。」ものであるので、分岐回路(4)の各分岐電力計測部(42)は、各分岐情報設定部(42c)において、分岐電力計測部の割当が照明機器,空調装置,避雷器,地震計,ガス発電ユニット,太陽発電ユニット等に設定変更可能であるといえる。

上記記載事項及び図面の記載から、刊行物1には、次の発明(以下、引用発明という。)が記載されているものと認められる。
「A1:電力計測ユニット(31、32、33)、分岐電力計測部(42)それぞれが計測する計測電力を取得可能な統合演算部(1)を有する電力監視システムであって、
B1:各電力計測ユニット(31)(32)(33)の割当を、発電ユニットを含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する各機器情報設定部(3c)、
各分岐電力計測部(42)の割当を、発電ユニットを含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する各分岐情報設定部(42c)、
を備え、
C1:各電力計測ユニット(31)(32)(33)は、各機器情報設定部(3c)において、電力計測ユニットの割当が複数の測定対象のうち、少なくとも『主幹ブレーカ』『太陽発電ユニット』『蓄熱設備』『ガス発電ユニット』に設定変更可能であり、
D1:分岐回路(4)の各分岐電力計測部(42)は、各分岐情報設定部(42c)において、分岐電力計測部の割当が照明機器,空調装置,避雷器,地震計,ガス発電ユニット,太陽発電ユニット等に設定変更可能である
E1:電力監視システム」

(2)刊行物2には、「通信システム」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0006】この発明の目的は、システムを簡単に構築することのできる通信システムを提供することにある。」
(イ)「【0023】そして、このコンピュータ41のモニタ(図示せず)に、集計管理装置303のデータ蓄積部33に記録された計測値、サーバ4に蓄積された計測値、それらの計測値の統計処理結果、電力消費量の評価などを表示させることができる。また、計測された計測値の詳細データを、リアルタイムにモニタに表示させることもできる。」
(ウ)「【0029】電力監視システム300は、集計管理装置303と、計測ユニット400と、計測対象である主幹20aの交流電流(物理量)を検出する電流検出器40と、計測対象である各分岐幹20b,21a?21iの交流電流(物理量)を検出する電流検出器(分岐幹電流検出器)320b,321a?321iと、パワーコンディショナ51から出力される交流電流すなわち計測対象である補助線20cの交流電流(物理量)を検出する電流検出器320cと、複数の計測タップ(計測ユニット)500a?500iとを備えている。各分岐幹21a?21iには、計測タップ500a?500iを介して電力負荷装置10A,10Bと同様な家電負荷510a?510iが接続されている。」
(エ)「【0032】計測ユニット400は、図2および図3に示すように、筐体401内に設けられた位相差検出回路(位相差検出器:アナログ回路)110と電圧検出回路120とデータ制御部420と送受信部430とを有している。また、計測ユニット400は電源コンセントに差し込む電源プラグ(プラグ)404を備えている。電源プラグ404は電源コード405を介して位相差検出回路110と電圧検出回路120とに接続されている。なお、図2に示すL1?Lnは電流検出器40,320b,321a?321iに接続されている信号線であり、この信号線L1?Lnは壁の内側に配線される。」
(オ)「【0033】位相差検出回路110は、電流検出器40が検出する交流電流と、分岐幹20bすなわち主幹20aの交流電圧との位相差(物理量)を検出するものであり、位相差を検出したときHレベル信号である位相差検出信号を出力する。」
(カ)「【0037】位相差検出回路110は、主幹20aの電圧がプラスのときHレベル(図7参照)の信号を出力する比較器113(図示せず)と、主幹20aの電流がプラスのときHレベルの信号を出力する比較114(図示せず)と、比較器113,114から出力される信号の排他的論理和をとる論理回路115(図示せず)とで位相差の有無を検出するようにしたものである。すなわち、位相差検出回路110は、図7に示すように位相差があるときHレベルの信号を出力し、位相差がないときLレベルの信号を出力するようになっている。」
(キ)【図1】には、この発明に係る通信システムを用いた電力監視システムと太陽光発電システムの構成等を示したブロック図が記載されている。
(ク)【図2】には、図1に示す電力監視システムの計測ユニットの外観を示した斜視図が記載されている。
(ケ)【図3】には、計測ユニット内の回路構成を示したブロック図が記載されている。

(3)刊行物3には、「電力計測作業の支援装置」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0003】一般に使われる給電方式としては三相3線式と単相3線式があるが、いずれの方式でも電力を計測するには3線のうち、2線に流れる電流を測定する必要があるため、前記電力計測装置は2個の電流測定手段を備えている必要がある。」
(イ)「【0009】図13は多回路電力計測装置を用いて単相3線と単相2線とを混在して測定する構成の例である。図中1は多回路電力計測装置であり、4a?4hは多回路電力計測装置1が備えるCT接続端子である。電力計測装置1に内蔵されている電流計測手段は図示していないが、端子ごとに対応する電流計測手段が内蔵されている。」
(ウ)「【0017】図中、多回路電力計測装置1aは、図13の多回路電力計測装置1に加えスイッチSW1、SW2を搭載しており、このスイッチを切り替えることによって、計測できる回路の種類と個数を切り替えられる。7r、7tは多回路電力計測装置1aが内蔵する電圧計測手段であり、それぞれR-S間、T-S間の電圧を計測し出力する。8a?8dは電力演算部であり、対応するCT端子で検出される電流値と、電圧計測手段から出力される電圧値から各回路の使用電力を算出し、演算部9へと出力する。」
(エ)「【0042】多回路電力計測装置1bは図17にて示したものと同等の機能を持つ計測装置であり、三相3線と単相3線各1個の分電盤を計測できる。6r1、6s1、6t1は多回路電力計測装置1bの三相3線の電圧計測手段の接続端子である。6r2、6s2、6t2は多回路電力計測装置1bの単相3線の電圧計測手段の接続端子である。4a?4hは多回路電力計測装置1bの電流計測手段に連なるCTの接続端子である。多回路電力計測装置1bは端子4a?4hを、三相3線、単相3線とそこから分岐する単相2線の計測のために任意に割り振れる。」
(オ)【図7】には、発明の実施形態の説明において、本発明によって作成された分電盤と多回路電力計測装置との結線図が記載されている。

(4)刊行物4には、「電力測定装置」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0138】また、ユーザインタフェース装置800では、電力測定装置700に接続された電気機器による電力消費の状況を、機器の種別および、機器の動作の種別ごとに集計して、ユーザに表示(ステップ906)する。これにより、より多くの電力消費に寄与した機器および動作をユーザに伝え、省エネのために、どの機器のどの動作モードを削減すればよいかの指針を与える。」

(5)刊行物5には、「消費電力計測システム、コンセント装置、制御装置、計測装置、及び消費電力計測方法」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0054】例えば、一日の各時間帯について、負荷の種別毎の消費電力量をグラフ化して、各時間帯でどれだけ電力が消費されているかをユーザが容易に判別できるようにする。」

5.判断
(1)本件特許発明1について
ア.対比
(a)引用発明の「電力計測ユニット(31、32、33)」及び「分岐電力計測部(42)」は、それぞれ本件特許発明1の「検出器」に相当する。
そして、引用発明の「電力計測ユニット(31、32、33)、分岐電力計測部(42)それぞれが計測する計測電力を取得可能な統合演算部(1)を有する電力監視システム」は、本件特許発明1の「複数の検出器それぞれが計測する電力情報を取得可能な電力管理装置」に相当する。
(b)引用発明の「各電力計測ユニット(31)(32)(33)の割当を、発電ユニットを含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する各機器情報設定部(3c)」は、各機器情報設定部(3c)各々が電力計測ユニット(31)(32)(33)のうちの対応するものの測定用途を設定変更するものであって、複数の検出器のうちのいずれかの割当を設定変更するものといえるものであるので、引用発明の「各電力計測ユニット(31)(32)(33)の割当を、発電ユニットを含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する各機器情報設定部(3c)」は、それぞれが本件特許発明1の「前記複数の検出器のうちのいずれかの割当を、発電装置を含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する制御部」に相当する。
また、引用発明の「各分岐電力計測部(42)の割当を、発電ユニットを含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する各分岐情報設定部(42c)」も、各分岐情報設定部各々が各分岐電力計測部(42)のうちの対応するものの測定用途を設定変更するものであるので、それぞれが本件特許発明1の「前記複数の検出器のうちのいずれかの割当を、発電装置を含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する制御部」に相当する。
そして、引用発明の「B1:各電力計測ユニット(31)(32)(33)の割当を、発電ユニットを含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する各機器情報設定部(3c)、
各分岐電力計測部(42)の割当を、発電ユニットを含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する各分岐情報設定部(42c)、
を備え」る構成は、本件特許発明1の「B:前記複数の検出器のうちのいずれかの割当を、発電装置を含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する制御部を備え」る構成に相当する。
(c)引用発明の「太陽発電ユニット」及び「ガス発電ユニット」は、本件特許発明1の「発電装置」に相当し、以下同様に、「蓄熱設備」は「負荷機器」に、「主幹ブレーカ」は「分電盤の主幹」に相当する。
(c1)そして、引用発明の「各電力計測ユニット(31)(32)(33)」は、3個であり、「分岐回路(4)の各分岐電力計測部(42)」と、別構成のものであるので、本件特許発明1の「少なくとも2つの特定の検出器」に相当するものであり、それらが「電力計測ユニットの割当が複数の測定対象のうち、少なくとも『主幹ブレーカ』『太陽発電ユニット』『蓄熱設備』『ガス発電ユニット』に設定変更可能」であることは、本件特許発明1の「検出器の割当が前記複数の測定対象のうち、前記発電装置、負荷機器、分電盤の分岐回路、又はパワーコンディショニングシステムの電力情報の測定用途のいずれかに設定変更可能」であることに相当する。
(c2)また、引用発明の「分岐回路(4)の各分岐電力計測部(42)」は、「各電力計測ユニット(31)(32)(33)」と、別構成のものであるので、本件特許発明1の「少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器」に相当するものであり、それらは「分岐電力計測部」と計測対象が分岐電力に特定されたものであるので、分岐回路用に定められたものといえものであり、それらが「分岐回路(4)の各分岐電力計測部(42)は、各分岐情報設定部(42c)において、分岐電力計測部の割当が照明機器,空調装置,避雷器,地震計,ガス発電ユニット,太陽発電ユニット等に設定変更可能」であることと、本件特許発明1の「当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は前記分電盤の主幹および前記分電盤の分岐回路用に定められている」こととは、「当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は分電盤の分岐回路用に定められている」点で共通する。
(c3)ただし、引用発明の「各機器情報設定部(3c)」及び「各分岐情報設定部(42c)」(それぞれが本件特許発明1の「制御部」に相当するもの。)は、各電力計測ユニット(31)(32)(33)及び各分岐電力計測部(42)毎に、別々に設けられたものであるので、何れの「機器情報設定部(3c)」「各分岐情報設定部(42c)」も、本件特許発明1の「制御部において・・少なくとも2つの特定の検出器の割当が・・設定変更可能であり、・・当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は・・定められている」構成を備えているとはいえない。

そうすると、両者は、
「複数の検出器それぞれが計測する電力情報を取得可能な電力管理装置であって、
前記複数の検出器のうちのいずれかの割当を、発電装置を含む複数の測定対象の測定用途のいずれかに設定変更する制御部を備える
電力管理装置。」
で一致し、次の点で相違する。

相違点:本件特許発明1は「前記制御部において、前記複数の検出器の中で少なくとも2つの特定の検出器の割当が前記複数の測定対象のうち、前記発電装置、負荷機器、分電盤の分岐回路、又はパワーコンディショニングシステムの電力情報の測定用途のいずれかに設定変更可能であり、当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は前記分電盤の主幹および前記分電盤の分岐回路用に定められている」のに対し、
引用発明は「C1:各電力計測ユニット(31)(32)(33)は、各機器情報設定部(3c)において、電力計測ユニットの割当が複数の測定対象のうち、少なくとも『主幹ブレーカ』『太陽発電ユニット』『蓄熱設備』『ガス発電ユニット』に設定変更可能であり、
D1:分岐回路(4)の各分岐電力計測部(42)は、各分岐情報設定部(42c)において、分岐電力計測部の割当が照明機器,空調装置,避雷器,地震計,ガス発電ユニット,太陽発電ユニット等に設定変更可能である」ものであって、
(a)前者は、少なくとも2つの特定の検出器の割当てが設定変更可能である制御部が当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当てを定めているのに対し、後者は、いずれの「機器情報設定部(3c)」「各分岐情報設定部(42c)」(それぞれが本件特許発明1の「制御部」に相当するもの。)も、1つの検出器の割当が設定変更可能又は定めているものであり、
(b)さらに、前者は、「当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は前記分電盤の主幹および前記分電盤の分岐回路用に定められている」のに対し、後者は、「分岐回路(4)の各分岐電力計測部(42)」(本件特許発明1の「少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器」に相当するもの)が、分電盤の分岐回路用に定められているものであって、「分電盤の主幹」に定められたものはない点。

イ.相違点についての検討
(ア)引用発明について、各電力計測ユニット(31)(32)(33)それぞれが機器情報設定部(3c)を備え、各機器情報設定部は、当該機器情報設定部が備えられた電力計測ユニットの割当てを設定しているものであり、各分岐電力計測部(42)それぞれが各分岐情報設定部(42c)を備え、各分岐情報設定部は、当該分岐情報設定部が備えられた分岐電力計測部の割当てを設定しているものであって、当該別々に存在する各機器情報設定部(3c)及び各分岐情報設定部(42c)(それぞれが本件発明1の「制御部」に相当するもの)をあえて1つの設定部として、「制御部において・・少なくとも2つの特定の検出器の割当が・・設定変更可能であり、・・当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は・・定められている」ものとすることは、甲第1?5号証のいずれにも記載も示唆もされていないといわざるえない。
(イ)また、「分岐回路(4)の各分岐電力計測部(42)」(本件特許発明1の「少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器」に相当するもの)は、分岐回路(4)に設けられているものであって、「分電盤の主幹」用にできるようなものではなく、その割当を「前記分電盤の主幹および」前記分電盤の分岐回路用に定められたものとすることは、甲第1?5号証のいずれにも記載も示唆もされていない。

[特許異議申立人の主張について]
(ウ)特許異議申立人は、特許異議申立書第13頁第9?26行で「段落[0031]の記載、段落[0042]の記載、段落[0063]の記載および図4の記載から、甲第1号証には、複数の電力計測ユニット(31,32,33,42)のうち、電力計測ユニット(32)の割当を、発電装置を含む複数の測定対象(太陽発電ユニット(UV)または蓄熱設備)に設定変更可能、電力計測ユニット(33)の割当を、発電装置を含む複数の測定対象(ガス発電ユニット(Ug)または燃料電池発電ユニット)に設定変更可能である機器情報設定部3cが開示されている。甲第1号証には、電力計測ユニット(33)の割当を発電装置から蓄熱設備に変更することについて明記はない。しかし、当業者であれば、電力計測ユニットを共用することによりシステム構成の簡易化を目的とする甲1発明において、出願時の技術常識を参酌し、電力計測ユニット(33)についても、電力計測ユニット(32)と同様、その割当を発電装置から蓄熱設備に変更することは当然に導き出せる事項である。
段落[0031]の記載、段落[0050]および図4の記載から、甲第1号証には、2つの電力計測ユニット(32,33)以外の電力計測ユニット(31)の割当を主幹ブレーカ(Bm)に定める機器情報設定部3c、電力計測ユニット(42)の割当を分岐回路(4)用に定める分岐情報設定部42cが開示されている。」と主張し、同第14頁第12?19行において、刊行物1に「C1:機器情報設定部(3c,42c)において、複数の電力計測ユニット(31,32,33,42)の中で少なくとも2つの特定の電力計測ユニット(32,33)の割当が複数の測定対象のうち、蓄熱設備又は燃料電池発電ユニットの電力情報の測定用途のいずれかに設定変更可能であり、
D1:少なくとも2つの特定の電力計測ユニット(32,33)以外の電力計測ユニット(31)の割当は主幹プレーカ(Bm)に、電力計測ユニット(42)の割当は分岐回路(4)用に定められている」発明が記載されている旨主張している。

しかし、上記請求人の主張は下記の様に採用できるものではない。
(a)前記4.(1)(b)?(d)に記載した様に、刊行物1の機器情報設定部3c、及び分岐情報設定部42cは、各電力計測ユニット、各分岐電力計測部、各々に設けられ、各電力計測ユニットや各分岐電力計測部の割当を設定するものであって、各々が各1つの電力計測ユニット及び、分岐電力計測部の割当を設定変更するものであるので、いずれかも「少なくとも2つの特定の検出器の割当が・・設定変更可能であり、・・当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は・・定められている」「機器情報設定部(3c,42c)」といえるものではなく、刊行物1に請求人の主張する発明が記載されているとはいえない。
(b)さらに、いずれかの機器情報設定部3c、分岐情報設定部42cを「少なくとも2つの特定の検出器の割当が・・設定変更可能であり、・・当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は・・定められている」構成(換言すると、「少なくとも2つの特定の検出器の割当が・・設定変更可能であり、・・当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は・・定められ」た制御部)とすることが、刊行物1に示唆されているともいえない。

(エ)特許異議申立人は、特許異議申立書第20頁第5?11行で「本件発明1の構成Dにおける「当該少なくとも2つの特定の検出器(21)以外の検出器(19,20)の割当は前記分電盤(29)の主幹および前記分電盤の分岐回路用に定められている」とは、特許請求の範囲の記載に基づいて要旨を認定すると、検出器(19,20)の割当が、分電盤の主幹および分岐回路用に単に設定されていることを意味するものであり、その割当が分電盤の主幹および分岐回路に固定され、それ以外のものに設定できないことまでをも意味するとは解釈できない。旨主張している。

しかし、本件発明1の構成Dを請求人の主張の様に解したとしても、本件特許発明1が少なくとも2つの特定の検出器の割当てが設定変更可能である制御部が当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当てを定めているのに対し、刊行物1には「制御部において・・少なくとも2つの特定の検出器の割当が・・設定変更可能であり、・・当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は・・定められている」構成が記載されていないとの判断が変わるものではない。

(オ)特許異議申立人は、特許異議申立書第20頁第18行?第21頁第7行において、「甲第1号証には電力計測ユニット31,32,33及び分岐電力計測部42が記載されており、その内、太陽発電ユニットUVの電力計測を行う電力計測ユニット32の測定対象の割当を蓄熱設備に変更すること、及びガス発電ユニットUgの電力計測を行う電力計測ユニット33の測定対象の割当を燃料電池発電ユニットに変更することが開示されている(段落0042、0063)。その一方、これらの計測対象の設定変更を行う場面であっても電力計測ユニット31は主幹ブレーカBmの計測用に維持されており、分岐電力計測部42は分岐回路4用に設定が維持されている。したがって、甲第1号証には、主幹ブレーカ用、分岐回路用の電力計測ユニットはその測定対象の設定を変更せず、主幹ブレーカ用、分岐回路用以外の電力計測ユニット32、33については計測対象の設定を変更可能とすることが示唆されている。加えて、分岐電力計測部42は分岐回路4内に設けられたものであり、その回路構成及びその名称からも明らかなように分岐回路専用の電力計測部となっていることから(図5)、電力計測ユニット31についても主幹ブレーカBmの計測専用とし、それ以外の計測対象に設定できないようにすることは単なる設計事項にすぎない。」旨主張している。

しかし、上記請求人の主張は下記の様に採用できるものではない。
(a)前記4.(1)(b)に記載した様に、刊行物1の各電力計測ユニット(31)(32)(33)は、同一の電力計測ユニットと解すべきものでものである。
そうすると、刊行物1【0031】に「図1のシステム構成において、電力計測ユニット31は、機器情報『主幹ブレーカ』に設定され、電力計測ユニット32は、機器情報『太陽発電ユニット』に設定され、電力計測ユニット33は、機器情報『ガス発電ユニット』に設定される。一方、図2のシステム構成において、電力計測ユニット31は、機器情報『主幹ブレーカ』に設定され、電力計測ユニット32は、機器情報『太陽発電ユニット』に設定される。」実施形態が記載されていることを根拠に、一種類(「ガス発電ユニット」)の測定対象が示されている電力計測ユニット33について「電力計測ユニットを共用することによりシステム構成の簡易化を目的とする甲1発明において、出願時の技術常識を参酌し、電力計測ユニット(33)についても、電力計測ユニット(32)と同様、その割当を発電装置から蓄熱設備に変更することは当然に導き出せる事項である。」とする一方、同様に一種類(「主幹ブレーカ」)の測定対象が示されている電力計測ユニット31については、設定を変更しないことが示唆されていると解することはできない。
(b)また、電力計測ユニット33については「計測対象の設定を変更可能とすることが示唆されている。」としつつ、電力計測ユニット33と同様に一種類の測定対象が示されている電力計測ユニット31については「主幹ブレーカBmの計測専用とし、それ以外の計測対象に設定できないようにすること」を「単なる設計事項にすぎない。」とすることもできない。
(c)さらに、電力計測ユニット31についても主幹ブレーカBmの計測専用とし、それ以外の計測対象に設定できないようにしても、電力計測ユニット(31)は、1つの検出器の割当が主幹に定められているものとなるだけであって、本件発明1の「制御部において・・少なくとも2つの特定の検出器の割当が・・設定変更可能であり、・・当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は・・定められている」構成を容易に想到しえるものではない。

(カ)特許異議申立人は、特許異議申立書第21頁第10行?第22頁第8行において、「また、甲第2号証(特開2012-60738号公報)には、位相差検出回路110が、主幹20aの交流電流と交流電圧との位相差を検出することが記載されており(段落0033、0037)、主幹20aの交流電流は電流検出器40から信号線L1を介して取得されることが記載されている(段落0032、図2及び図3)。このような構成で、電流検出器40の割当を主幹20a以外の対象に設定変更すると、位相差検出回路110が上記位相差を検出することができなくなることから、当業者であれば、甲第2号証における電流検出器40は主幹20aの計測専用で、それ以外の計測対象に設定変更できないものであると理解する。そのため、甲1発明の電力計測ユニット31を甲2号証に記載の電流検出器40のように主幹ブレーカの計測専用とすることは、当業者が容易に想到できたものである。
甲2発明は、上述した通り、各家電装置の消費電力を求めて総消費電力を出力する電力監視システムに関する発明であり、システム構築の簡易化を課題とするものである(段落0006)。
一方で、甲1発明は、電力計測ユニットを共用することによりシステム構成の簡易化を課題とするものであることから(段落0012)、甲1発明と甲2発明とはシステムの簡易化という点で課題が共通する。
さらに、甲1発明に甲第2号証に記載の技術を適用して、電力計測ユニット(31,42)の割当をそれぞれ主幹ブレーカ(Bm)、分岐回路(4)専用にしたとしても、電力計測ユニット(32,33)を共用してシステム構成の簡易化を図ることができ、甲1発明の目的の達成が妨げられるものでもない。
以上のとおり、甲1発明と甲第2号証に記載の技術とは、システム構成の簡易化という共通の課題を有する点、および甲1発明に甲第2号証の技術を適用しても甲1発明の目的は達成できることから、甲1発明に甲第2号証の技術を適用する上で格別な困難性は存在しない。」旨主張している。

しかし、上記請求人の主張は下記の様に採用できるものではない。
(a)請求人が主張する引用発明の電力計測ユニット(31)を主幹ブレーカの計測専用とすることは、「電力計測ユニットを共用することによるシステム構成の簡易化」という引用発明が解決しようとする課題に反するものであり、そのような構成変更を当業者が容易になしえることとはいえない。
(b)さらに、電力計測ユニット(31)を主幹ブレーカの計測専用としても、電力計測ユニット(31)は、1つの検出器の割当が主幹に定められているものとなるだけであって、本件発明1の「制御部において・・少なくとも2つの特定の検出器の割当が・・設定変更可能であり、・・当該少なくとも2つの特定の検出器以外の検出器の割当は・・定められている」構成を容易に想到しえるものではない。

(キ)そうすると、請求人の主張を検討してみても、引用発明及び甲第1?5号証記載の事項に基づいて、本件特許発明1の相違点に係る発明特定事項とすることが当業者が容易に想到し得たことということはできない。

ウ.小括
上記の如く、本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明ではない。
また、本件特許発明1は、引用発明及び甲第1?5号証記載の事項に基づいて、当業者が容易になし得るものでもない。

(2)本件特許発明2?7について
本件特許発明2?7は、本件特許発明1にさらに構成要件F?Kの限定を付した発明であるので、本件特許発明2?7と引用発明とは、少なくとも上記相違点で相違するものである。
そして、上記(1)記載の如く、本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明ではなく、引用発明及び甲第1?5号証記載の事項に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできないので、本件特許発明2?7も同様に、刊行物1に記載された発明ではなく、引用発明及び甲第1?5号証記載の事項に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(3)本件特許発明8、9について
本件特許発明8は、本件特許発明1にさらに構成要件L、M、Nの限定を付した電力管理システムの発明であるので、本件特許発明8と引用発明とは、少なくとも上記相違点で相違するものである。
また、本件特許発明9は、本件特許発明8にさらに構成要件Pの限定を付した発明であるので、本件特許発明9と引用発明とも、少なくとも上記相違点で相違するものである。
そして、上記(1)記載の如く、本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明ではなく、引用発明及び甲第1?5号証記載の事項に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできないので、本件特許発明8、9も同様に、刊行物1に記載された発明ではなく、引用発明及び甲第1?5号証記載の事項に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(4)本件特許発明10について
本件特許発明10は、本件特許発明1にさらに構成要件L、M、Nの限定を付し、電力管理方法とした発明であるので、本件特許発明10と引用発明とは、少なくとも上記相違点で相違するものである。
そして、上記(1)記載の如く、本件特許発明1は、刊行物1に記載された発明ではなく、引用発明及び甲第1?5号証記載の事項に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできないので、本件特許発明8、9も同様に、刊行物1に記載された発明ではなく、引用発明及び甲第1?5号証記載の事項に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-11-22 
出願番号 特願2012-179061(P2012-179061)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (H02J)
P 1 651・ 121- Y (H02J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高野 誠治  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 矢島 伸一
中川 真一
登録日 2017-01-06 
登録番号 特許第6067278号(P6067278)
権利者 京セラ株式会社
発明の名称 電力管理装置、電力管理システム、及び電力管理方法  
代理人 太田 昌宏  
代理人 杉村 憲司  
代理人 橋本 大佑  

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