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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1335172
異議申立番号 異議2017-700873  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-14 
確定日 2017-12-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6095499号発明「顧客誘導システム及び顧客誘導方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6095499号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第6095499号に係る出願は、平成25年6月19日に特許出願され、平成29年2月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 赤松智信(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件発明

特許第6095499号の請求項1?請求項7の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?請求項7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
店舗に来店した顧客を複数の窓口のいずれかに誘導する顧客誘導システムであって、
前記顧客による電子的な記帳データの入力を受け付け、受け付けた記帳データを、取引処理を行う窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理する電子記帳機を備え、
前記電子記帳機は、前記顧客により複数の記帳データの入力を受け付けた場合に、複数の記帳データと関連付けられた受付番号を採番する
ことを特徴とする顧客誘導システム。

【請求項2】
前記電子記帳機は、前記複数の記帳データの入力の受け付けに先だって、入力を受け付ける記帳データの少なくとも数を事前指定データとして受け付け、当該事前指定データに示された数の記帳データが入力された場合に前記受付番号を採番することを特徴とする請求項1に記載の顧客誘導システム。

【請求項3】
前記電子記帳機は、複数の記帳データの入力を行う場合に、全ての記帳データの入力が完了したことを示す操作が行われたならば、前記受付番号を採番することを特徴とする請求項1に記載の顧客誘導システム。

【請求項4】
前記電子記帳機は、前記記帳データと前記受付番号とを対応付けて所定のサーバに登録するとともに、前記受付番号が特定可能な可搬媒体を出力し、
前記窓口端末は、前記可搬媒体により特定した受付番号に対応する記帳データを前記所定のサーバから取得することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の顧客誘導システム。

【請求項5】
前記電子記帳機は、
前記記帳データに係る情報が含まれる書類の画像データを読み取る読取部と、
前記読取部により読み取られた画像データから前記書類に含まれる記帳データに係る情報を抽出する抽出部とを備え、
前記抽出部により抽出された記帳データと前記受付番号とを関連付けて記憶することを特徴とする請求項1?4のいずれか一つに記載の顧客誘導システム。

【請求項6】
前記電子記帳機は、前記記帳データと前記受付番号とを含む伝票を印刷する伝票印刷部をさらに備えたことを特徴とする請求項1?5のいずれか一つに記載の顧客誘導システム。

【請求項7】
店舗に来店した顧客を複数の窓口のいずれかに誘導する顧客誘導方法であって、
前記顧客による複数の記帳データの入力を受け付ける記帳データ入力受付ステップと、
前記記帳データ入力受付ステップにより受け付けた複数の記帳データとを関連付けた受付番号を採番する採番ステップと
を含んだことを特徴とする顧客誘導方法。」


第3 申立理由の概要

特許異議申立人は、以下の各甲号証を提出し、申立理由として「取消理由1」及び「取消理由2」の2つの理由を掲げ、請求項1?7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1?7に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

甲第1号証:特開平11-232362号公報
甲第2号証:特開平11-328285号公報
甲第3号証:特開2008-234033号公報
甲第4号証:特開平1-100672号公報
甲第5号証:特開2007-140893号公報
甲第6号証:特開2011-164831号公報

(以下、各甲号証は「甲1」のように略記し、甲第1号証に記載された発明は「甲1発明」、甲第6号証に記載された発明は「甲6発明」と記す。)

なお、「取消理由1」及び「取消理由2」の要点は、以下に示すとおりである。

(取消理由1)
・請求項1
甲1発明、甲4、甲5に記載された事項、及び甲2、甲4、甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。
・請求項2
甲1発明、甲4、甲5に記載された事項、及び甲2?甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。
・請求項3
甲1発明、甲4、甲5に記載された事項、及び甲2、甲4、甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。
・請求項4
甲1発明、甲4、甲5に記載された事項、及び甲2、甲4、甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。
・請求項5
甲1発明、甲4、甲5に記載された事項、及び甲2、甲4、甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。
・請求項6
甲1発明、甲4、甲5に記載された事項、及び甲2、甲4、甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。
・請求項7
甲1発明、甲4、甲5に記載された事項、及び甲2、甲4、甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。

(取消理由2)
・請求項1
甲6発明、及び甲1、甲4、甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。
・請求項2
甲6発明、及び甲1?甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。
・請求項3
甲6発明、及び甲1、甲4、甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。
・請求項4
甲6発明、甲5に記載された事項、及び甲1、甲4、甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。
・請求項5
甲6発明、及び甲1、甲4、甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。
・請求項6
甲6発明、及び甲1、甲4、甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。
・請求項7
甲6発明、及び甲1、甲4、甲5に記載された周知の事項から当業者が容易に想到。


第4 甲号証の記載

1.甲1について

甲1には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は特許異議申立人が付したものである。)

(ア)「【発明の属する技術分野】本発明は、銀行、郵便局、証券会社等の金融機関における各種業務を実行する金融店舗システム、その他帳票に基づく業務処理を行う帳票データ処理システム及び帳票読取装置に関する。」(【0001】)

(イ)「本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、来店した客の待ち時間を極力短くでき、客が来店してから、希望する業務が終了して、店を出るまでの全体の所要時間を短縮でき、かつ、金融機関側にとつても、客に応対する窓口業務を極力減少でき、業務の信頼性と省人化を図ることができる金融店舗システムを提供することを目的とする。」(【0012】)

(ウ)「そして、出入口2から店舗1内へ入った客10は右奥のATM5aの自動機コーナー5へ行くか、正面のロビーカウンター3へ行く。ロビーカウンター3へ赴いた客10は、このロビーカウンター3で図2に示すこのロビーカウンター3における1台の入力機3aを操作して、希望する業務を入力する。そして、このロビーカウンター3が発行する受付番号票11を持って、記帳カウンター4で自己の受付番号が表示及び呼ばれるのを待つ。
客10は、自己の受付番号が呼ばれると、受付番号票11を記帳カウンター4に挿入して、例えば現金の授受を含む精算処理をこの記帳カウンター4の表示画面に示される操作案内に従って行う。客10は、精算処理が終了すると、記帳カウンター4が発行する受領票(計算書)13を取って、出入口2から外へ出る。」(【0040】、【0041】)

(エ)「図2はロビーカウンター3を構成する一部の入力機3aを示す斜視図である。ついたて17で仕切られた各入力機3aの記帳台を兼用する上面18には、この銀行の備え付けの入金伝票及び払出伝票を収納した伝票ケース19が載置されている。さらに、各入力機3aには、キャッシュカードを兼用するICカード20が挿入されるカードリーダ21、客10がセットした帳票(伝票)の全体イメージを読取るためのイメージリーダ機能及び受付番号票を発行する機能を有するカードリーダ22、客10に対して操作案内を表示するとともに、金額や希望業務を操作入力させるための操作表示部23、及び案内板24が設けられている。」(【0044】)

(オ)「図4は、客10がICカード20をICカードリーダライタ21へ挿入して、自己が希望する業務を実行させるための入力機3aのICカード応対処理部33、受付データ作成部36、受付番号票発行部37、受付データ送信部38が行う動作を示す流れ図である。
ICカード20が挿入されると、このICカード20に記憶されている各種情報を読取る。そして、客10がタッチパネル23bを用いて入力した暗証番号が正当であれば(S1,S2)、このICカード20が実施可能な例えば「振替」「送金」「入金」「払出し」等の業務メニューを操作表示部23の表示部23aに表示出力する(S3)。
客10がタッチパネル23bを用いて選択した一つの業務が自己の口座からの「振替」の場合(S4,S5)、図5に示すように、このICカード20から読出した、振込先口座番号及び該当口座の名義人の一覧表39を操作表示部23に表示する(S6)。そして、客10がタッチパネル23bを用いて一つの振込先口座番号を選択した場合は(S7)、次に、客10が振替え金額をタッチパネル23bを用いて入力すると(S9)、選択された口座番号及び該当口座の名義人と入力された金額と、読取ったICカード情報とを受付データとしてバックオフィスシステム15へ送信する(S10)。
次に、この受付データ及び受付番号41が記載された図6に示す受付番号票11を発行し、図2に示すカードリーダライタ21から排出する(S11)。続いて、カードリーダライタ21からこのICカード20を排出する(S12)。」(【0052】?【0055】)

(カ)図6には、「発行される受付番号票11には、受付番号41のほかに、「送金」、「振出し」、「入金」などの複数の業務について、銀行名や口座番号、金額と合計金額が印刷されていること」が記載されている。(【図6】)

(キ)「図16は記帳カウンター4における各精算機4aの具体的精算処理動作を示す流れ図である。バックオフィスシステム14から一つの受付番が付された業務結果が入力されると(U1)、受付番号を受付番号表示器55へ表示出力する(U2)。受付番号票読取機49から正しい受付番号が入力されると(U3)、この入力された業務結果に対する精算業務において、客10が行うべき精算操作の操作案内を操作表示部53の表示部53aに表示する(U4)。
そして、精算業務が現金支払の場合(U5)、金銭処理部59を介して硬貨入出金口50、紙幣入出金口51に対して金庫から現金を搬入して、硬貨入出金口50、紙幣入出金口51を開放する(U6)。受領書13が必要な場合は(U7)、プリンタ61を駆動して、取引内容を記載した受領書13を作成して、受領書発行機54から発行する(U8)。その後、該当精算データを記帳データとしてバックオフィスシステム14へ送信する(U9)。
また、精算業務が現金収納(入金)の場合(U10)、硬貨入出金口50、紙幣入出金口51を開放して、客10が金銭を投入すると、金銭処理部59を介し投入金銭の金額を調べ、投入金銭を金庫に収納する(U11)。そして、受領書13が必要な場合は(U7)、プリンタ61を駆動して、取引内容を記載した受領書13を作成して、受領書発行機54から発行する(U8)。その後、該当精算データを記帳データとしてバックオフィスシステム14へ送信する(U9)。
また、精算業務が通帳記帳の場合(U12)、通帳記帳部52に挿入された通帳に対して、業務結果で指示された金額を記帳する(U13)。そして、記帳後の通帳を排出する(U14)。そして、U7へ進む。この場合、受領書13は必要ない。
したがって、この記帳カウンター4においては、客10がロビーカウンター3でICカード20や各種の帳票を用いて入力した入金、払出し、振替、各種公共料金の支払等の業務要求における実際の金融処理がバックオフィスシステム14で実施された後における、客10との間の金銭の受渡し処理や受領書13発行や通帳記帳等の精算業務が客10との間で自動的に実施される。」(【0084】?【0088】)

(ク)「このように、客10は、従来は窓口の係員に依頼していた各種の業務を、ロビーカウンター3及び記帳カウンター4を用いて自分自身の操作で簡単に実施できる。」(【0093】)

上記(ア)から(ク)の記載より、甲1には、

「入力機3aには、ICカードリーダ、帳票読み取り用イメージリーダ、受付番号票発行機能、操作表示部、案内板が設けられていて、客が一つの業務を選択して必要なデータ入力を行うと、選択された口座番号及び該口座番号の名義人と入力された金額と、読取ったICカード情報とを受付データとしてバックオフィスシステム15へ送信されるとともに、受付番号41のほかに、「送金」、「振出し」、「入金」などの複数の業務について、銀行名や口座番号、金額と合計金額が印刷された受付番号票を発行すると、客は、受付番号票を持って、記帳カウンターで自己の受付番号が表示及び呼ばれるのを待ち、バックオフィスシステム15から記帳カウンター4における各精算機4aに、一つの受付番号が付された業務結果が入力されると、受付番号が表示された客は各精算機4aにおいて、受付番号票読取機49から正しい受付番号が入力されると、各種精算業務を行う金融店舗システム。」の発明が記載されている。

2.甲2について

甲2には、「【従来の技術】従来、金融機関の窓口や集中センタでの振込帳票等の帳票入力は、手入力あるいはOCRにより入力し、入力結果は目視により行うものであり、堅確性については人間の目のみに委ねられるものであった。」(【0002】)、及び、「複数の記帳データの入力の受付に先立って、帳票の枚数を入力し、合計表から入力された帳票枚数のデータと、入力された帳票の枚数が一致するかにより、正しく帳票の入力がされたのかの確認をシステムで行うこと」が記載されている。(【0010】?【0013】)

3.甲3について

甲3には、「伝票の代行収納データ処理装置において、伝票の代行収納の受付開始時に伝票の受付枚数を登録し、受付終了時に実際に処理した受付枚数と登録された受付枚数とを比較することにより、伝票の登録洩れなどのエラーを検出すること」が記載されている。(【0007】)

4.甲4について

甲4には、「(従来の技術)銀行などにおいては、入出金や振込等の各種取引を大型計算機で処理しているが、これらの取引データは、顧客が記入した伝票に基づいてテラーによって取引処理用の端末装置から入力される。また、最近は伝票入力時間短縮のために、顧客の記入した伝票をテラーが受け取り、光学式文字読取装置(OCR)で伝票を読み取る事も行なわれている。」(第1頁右下欄第11行?第19行)、及び、「顧客が複数の伝票の作成を行う場合に、各伝票の作成完了指示は完了キーにより行い、全入力の終了指示は終了キーにより行うこと」(第3頁左下欄第1行?同頁右下欄第7行)が記載されている。

5.甲5について

甲5には、「顧客が操作可能であり、営業店への来訪の受付処理などを行う顧客操作型端末が、顧客の氏名、振込先金融機関、口座番号、金額等を入力し、営業店システムサーバに格納するとともに、顧客の希望する複数の取引を受け付ける場合に、次の取引の有無の確認をするための画面を表示すること、入力が終了すると受付票を出力すること、複数の取引を受け付けた場合には、順次案内を行うこと、窓口端末から受信した仮カードIDにより特定した取引情報を営業店システムサーバが窓口端末に送信して、窓口端末が取引情報に基づいて取引のための処理を実行すること」が記載されている。(【0007】、【0037】?【0041】、【0054】、【0060】?【0063】、【0077】?【0079】)

6.甲6について

甲6には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は特許異議申立人が付したものである。)

(ケ)「しかし、他の用件を対応する別の窓口の順番待ちの受付番号カードを、複数の用件で来店した顧客に新たに発行すると、他の用件の対応順番は既に呼出しを待っている他の顧客の最後になる。このため、複数の用件で来店した顧客より後に来店した顧客が先に窓口に呼び出されてしまい、顧客サービスが低下してしまうという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、複数用件で来店した顧客を複数窓口において効果的に呼び出すことが可能な、新規かつ改良された受付管理装置および受付処理方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、顧客の操作に応じて用件を受け付けて受付番号カードを発行する受付端末と、顧客を呼出すための呼出操作機とネットワークを介して接続された受付管理装置であって、前記受付端末を介して受付けられた1または2以上の用件を1つの受付グループに属する用件として受け付ける受付部と、前記用件毎に異なる番号帯の受付番号を採番する採番部と、前記番号帯毎に、前記番号帯に含まれる前記受付番号を受付番号順に呼出すことを前記呼出操作機に指示する呼出指示部と、前記用件の処理状態を示す情報を保持する保持部と、を備え、前記呼出指示部は、呼出し対象となった前記用件の処理状態および該用件と同一の受付グループに属する他の用件の処理状態に応じて、前記受付番号の呼出し順序を変更することを特徴とする、受付管理装置が提供される。」(【0005】、【0006】)

(コ)「受付端末20には、例えば、来店用件指定画面401と、受付番号カード発行画面402が表示される。来店用件指定画面401は、来店した顧客に用件を指定させるための画面である。また、受付番号カード発行画面402は、印字して発行した受付番号カードの受取りを顧客に誘導する画面である。
来店用件指定画面401には、来店した顧客が対応してほしい用件を指定するための10個程度の「用件ボタン」と、用件指定の終了時に押下する「用件指定終了」ボタンが設けられている。顧客は、来店用件指定画面401の「用件ボタン」を押下することにより、対応してほしい1または2以上の用件を指定する。」(【0034】、【0035】)

(サ)「また、顧客により「用件指定終了」ボタンが押下されて、受付番号カード発行画面402が表示されると、受付番号カードが発行される。受付番号カードは、後述する発行指示部112の指示のもと受付け端末20から発行される。ここで、図4を参照して、受付番号カードについて説明する。図4は、受付番号カードについて説明する説明図である。図4に示したように、受付番号カードには、受付番号とともに、指定された用件の名称などが記載される。また、受付端末20が設置されている銀行の銀行名や支店名が記載されていてもよい。
顧客により指定された用件が1件の場合には、受付番号カード501のように、1件分の受付番号と指定された用件の名称が記載される。また、顧客により指定された用件が2件以上の場合には、受付番号カード502?506のように、件数分の受付番号と指定された用件の名称が追加されていく。受付番号カードを受け取った顧客は、受付番号カードを持って窓口からの呼出しを待つ。窓口では、受付番号カードに印字された受付番号で顧客の呼出しを行う。」(【0037】、【0038】)

上記(ケ)から(サ)の記載より、甲6には、

「複数用件で来店した顧客を複数窓口において効果的に呼び出すことが可能な受付管理装置および受付処理方法であって、来店した顧客が、受付端末20の「用件ボタン」を押下することにより、対応してほしい1または2以上の用件を指定すると、受付端末20は、受付番号とともに、顧客により指定された件数分の受付番号と指定された用件の名称が追加された受付番号カードを発行して、受付番号カードを受け取った顧客は、受付番号カードを持って窓口からの呼出しを待ち、窓口では受付番号で顧客の呼び出しを行う受付管理装置。」の発明が記載されている。


第5 判断

1.取消理由1について

(1-1)請求項1に係る発明について

請求項1に係る発明と甲1発明とを対比すると、両者は以下の点において相違している。

[相違点1]
請求項1に係る発明は、『店舗に来店した顧客を複数の窓口のいずれかに誘導する顧客誘導システム』であるのに対して、甲1発明は、客を複数の窓口のいずれかに誘導することは特定されていない点。

[相違点2]
請求項1に係る発明は、電子記帳機は、『受け付けた記帳データを、取引処理を行う窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理する』ことが特定されているのに対し、甲1発明の記帳機3aは「受付データをバックオフィスシステム15に送信」し、各精算機4aは「バックオフィスシステム15から一つの受付番号が付された業務結果が入力される」点。

上記相違点について検討する。

●相違点1について

請求項1に係る発明の目的は、本件特許明細書に「本発明は、上述した従来技術の課題を解消するためのものであって、顧客が複数の取引を所望している場合であっても円滑かつ効果的に窓口に誘導することのできる顧客誘導システム及び顧客誘導方法を提供することを目的とする。」(【0008】)と記載されている様に“顧客が複数の取引を所望している場合であっても円滑かつ効果的に窓口に誘導すること”である。
一方、甲1発明の目的は、上記「第4 甲号証の記載」の(イ)で摘記した様に、“来店した客の待ち時間を極力短くでき、客が来店してから、希望する業務が終了して、店を出るまでの全体の所要時間を短縮でき、かつ、金融機関側にとつても、客に応対する窓口業務を極力減少でき、業務の信頼性と省人化を図ることができる金融店舗システムを提供することを目的とする。”ものである。

また、“金融機関などの店舗において、顧客の業務を職員が窓口端末を用いて、「窓口」において処理すること”は、甲2、甲4、甲5に開示されている様に本件特許の出願日前において周知の業務形態である。

しかしながら、“来店した客の待ち時間を極力短くでき、客が来店してから、希望する業務が終了して、店を出るまでの全体の所要時間を短縮でき、かつ、金融機関側にとつても、客に応対する窓口業務を極力減少でき、業務の信頼性と省人化を図ることができる金融店舗システムを提供することを目的とする。”甲1発明に対して周知の業務形態を適用して、敢えてその目的に反する様な業務形態に変更しようとする動機づけがなく、むしろ、甲1発明に周知の業務形態を適用することには阻害要因があると認められる。

したがって、甲1発明に甲2、甲4、甲5に開示されている様な周知の業務形態を適用することは、当業者といえども容易になし得るものではない。

●相違点2について

甲2、甲4、甲5に開示されている様に“金融機関などの店舗において、顧客の業務を職員が窓口端末を用いて、「窓口」において処理すること”は、本件特許の出願日前において周知の業務形態であるものの、上記「相違点1について」で言及した様に、甲1発明に対して周知の業務形態を適用して、敢えてその目的に反する様な業務形態に変更しようとする動機づけがなく、むしろ、甲1発明に周知の業務形態を適用することには阻害要因がある、のであるから、甲1発明において、受付データをバックオフィスシステム15に送信し、バックオフィスシステム15から精算機に業務結果を入力し、客が精算機において各種精算業務を行うことに代えて、顧客の業務を職員が窓口端末を用いて、「窓口」において処理する周知の構成を採用した場合に、処理に必要なデータである「受け付けた記帳データ」を取引処理を行う窓口に設けられた「窓口端末」に対して送信処理するよう構成することは、当業者といえども容易になし得るものではない。

●小括

以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、甲1発明、及び甲2、甲4、甲5に記載された事項から当業者が容易になし得るものではない。

(1-2)請求項2?請求項6に係る発明について

請求項2?請求項6に係る発明は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、甲1発明との間には、上記「(1-1)請求項1に係る発明について」で言及した[相違点1]及び[相違点2]が存在し、上記「(1-1)請求項1に係る発明について」で検討したのと同様の理由により、請求項2?請求項6に係る発明は、甲1発明、及び甲2、甲4、甲5に記載された事項から当業者が容易になし得るものではない。

(1-3)請求項7に係る発明について

請求項7に係る発明と甲1発明とは、上記「(1-1)請求項1に係る発明について」で言及した[相違点1]と実質的に同様の相違点を有していると認められるが、上記「(1-1)請求項1に係る発明について」の「●相違点1について」で検討したのと同様の理由により、請求項7に係る発明は、甲1発明、及び甲2、甲4、甲5に記載された事項から当業者が容易になし得るものではない。

2.取消理由2について

(2-1)請求項1に係る発明について

請求項1に係る発明と甲6発明とを対比すると、両者は以下の点において相違している。

[相違点3]
請求項1に係る発明は、電子記帳機が『顧客による電子的な記帳データの入力を受け付け、受け付けた記帳データを、取引処理を行う窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理する』のに対して、甲6発明は、受付端末20が「電子的な記帳データの入力を受け付ける」点、及び、「受け付けた記帳データを、取引処理を行う窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理する」点について特定されていない点。

[相違点4]
請求項1に係る発明は、電子記帳機は、『顧客により複数の記帳データの入力を受け付けた場合に、複数の記帳データと関連付けられた受付番号を採番する』ことが特定されているのに対し、甲6発明の受付端末20は「受付番号とともに、顧客により指定された件数分の受付番号と指定された用件の名称が追加された受付番号カードを発行」するものであり、「採番」を行っていない点。

上記相違点について検討する。

●相違点3について

甲1、甲4、甲5には、“金融機関において顧客が取引データを入力する機能を備えた端末を操作することにより、振込先口座番号や振込金額等の取引データの入力を行う”ことが開示されているものの、入力された取引データ(請求項1に係る発明でいうところの『受け付けた記帳データ』に対応する。)を“窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理する”ことは記載されていない。(甲1においては、入力機3aを利用して顧客が入力したデータは、バックオフィスシステム15に送信されること、甲5においては、顧客操作型端末104に対して顧客が入力した取引情報は、営業店システムサーバ103に送信されることが記載されており、甲4においては、電子伝票記帳台を利用して顧客が伝票を作成することのみが記載されている。)

してみると、甲6発明に係る受付端末20に対して、甲1、甲4、甲5に開示されている様な「電子的な記帳データの入力を受け付ける」機能を付加し、更に、「受け付けた記帳データを、取引処理を行う窓口に設けられた窓口端末に対して送信処理する」機能を付加することは、当業者といえども容易になし得るものではない。

●相違点4について

甲1には、図6に記載されている様に、入力機3aが“顧客により複数の記帳データの入力を受け付けた場合に、複数の記帳データと関連付けられた受付番号を採番する”との事項が開示されているものの、甲6発明は、受付管理装置10の採番部104が、顧客の操作に応じて受付端末20が受け付けた用件毎に異なる番号帯の受付番号を採番するのであるから、甲1に開示されている上記採番に関する事項を甲6発明に係る受付端末20に適用すると、甲6発明が有する“用件毎に異なる番号帯の受付番号を採番する”との特徴を失うことになるので、その様にする動機づけがなく、むしろ、阻害要因があると認められる。
また、甲6発明において、受付管理装置10が行っている採番に関する機能を受付端末20に備えさせるよう変更する合理的な動機があるとも考えられない。

してみると、甲6発明に係る受付端末20に“採番を行う機能”を備えさせることは、当業者といえども容易になし得るものではない。

●小括

以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、甲6発明、及び甲1、甲4、甲5に記載された事項から当業者が容易になし得るものではない。

(2-2)請求項2?請求項6に係る発明について

請求項2?請求項6に係る発明は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、甲1発明との間には、上記「(2-1)請求項1に係る発明について」で言及した[相違点3]及び[相違点4]が存在し、上記「(2-1)請求項1に係る発明について」で検討したのと同様の理由により、請求項2?請求項6に係る発明は、甲6発明、及び甲1、甲4、甲5に記載された事項から当業者が容易になし得るものではない。

(2-3)請求項7に係る発明について

請求項7に係る発明と甲6発明とを対比すると、両者は以下の点において相違している。

[相違点5]
請求項7に係る発明は、『顧客による複数の記帳データの入力を受け付ける記帳データ入力受付ステップ』、及び、『記帳データ入力受付ステップにより受け付けた複数の記帳データとを関連付けた受付番号を採番する採番ステップ』を備えるのに対して、甲6発明は、「複数の電子的な記帳データの入力を受け付ける」点、及び、「複数の記帳データとを関連付けた受付番号を採番する」点について特定されていない点。

上記相違点について検討する。

●相違点5について

甲1、甲4、甲5には、“金融機関において顧客が取引データを入力する機能を備えた端末を操作することにより、振込先口座番号や振込金額等の取引データの入力を行う”ことが開示されているものの、甲1には、図6に記載されている様に、“顧客により複数の記帳データの入力を受け付けた場合に、複数の記帳データと関連付けられた受付番号を採番する”との事項が開示されているものの、甲6発明は、受付管理装置10の採番部104が、顧客の操作に応じて受付端末20が受け付けた用件毎に異なる番号帯の受付番号を採番するのであるから、甲1に開示されている上記採番に関する事項を甲6発明に適用すると、甲6発明が有する“用件毎に異なる番号帯の受付番号を採番する”との特徴を失うことになるので、その様にする動機づけがなく、むしろ、阻害要因があると認められる。

してみると、甲6発明に甲1、甲4、甲5に開示されている様な「複数の電子的な記帳データの入力を受け付ける」ステップを付加し、更に、「複数の記帳データとを関連付けた受付番号を採番する」ステップを付加することは、当業者といえども容易になし得るものではない。

したがって、請求項7に係る発明は、甲6発明、及び甲1、甲4、甲5に記載された事項から当業者が容易になし得るものではない。


第6 むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1?請求項7に係る特許を取り消すことはできない。

さらに、他に請求項1?請求項7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-11-27 
出願番号 特願2013-129072(P2013-129072)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 塩田 徳彦  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 佐藤 智康
宇多川 勉
登録日 2017-02-24 
登録番号 特許第6095499号(P6095499)
権利者 グローリー株式会社
発明の名称 顧客誘導システム及び顧客誘導方法  
代理人 中辻 史郎  

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