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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する H01L
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する H01L
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H01L
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する H01L
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H01L
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する H01L
管理番号 1335355
審判番号 訂正2017-390078  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2017-08-08 
確定日 2017-12-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5177317号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5177317号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める。  
理由 第1 訂正の要旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件訂正審判に係る特許第5177317号の明細書及び特許請求の範囲を本件訂正審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める、との審決を求めるものである。

1 訂正の内容(当審注:訂正箇所に下線を付した。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、」とあるのを、
「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、」と訂正する(訂正請求書第3頁)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、「Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、」とあるのを、
「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、」と訂正する(訂正請求書第3ないし4頁)。

(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0012】に記載された、
「すなわち、本発明の発光装置は、白色系を発光する発光ダイオードであって、該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含むこと、を特徴とする発光ダイオードである。」を、
「すなわち、本発明の発光装置は、白色系を発光する発光ダイオードであって、該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含むこと、を特徴とする発光ダイオードである。」と訂正する(訂正請求書第4頁)。

(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0012】に記載された、
「また、本発明の発光装置は、白色系を発光するLED光源であって、該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、ことを特徴とするLED光源でもある。」を、
「また、本発明の発光装置は、白色系を発光するLED光源であって、該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、ことを特徴とするLED光源でもある。」と訂正する(訂正請求書第4ないし5頁)。

2 訂正の目的・新規事項の有無等について
(1)上記訂正事項1及び訂正事項2は、「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」に含まれる元素として択一的に列挙されたものから、Sm(サマリウム)を削除することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、訂正事項3及び訂正事項4は、訂正後の請求項の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るために、発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。

(2)上記訂正事項1ないし訂正事項4は、元素として択一的に列挙されたものから、単に「Sm」を削除するものであるから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてなされるものであることは明らかである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)また、訂正事項3は請求項1に関する訂正であり、訂正事項4は請求項2に関する訂正であることから、訂正事項3及び訂正事項4は、特許法第126条第4項の規定に適合する。

第2 独立特許要件について
訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、同条第7項の規定に基づき、訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて、以下に検討する。

1 訂正後の発明
訂正後の請求項1及び訂正後の請求項2に係る発明は、以下のとおりのものである(以下「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明2」という。)。

「【請求項1】
白色系を発光する発光ダイオードであって、
該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、
ことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
白色系を発光するLED光源であって、
該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、
ことを特徴とするLED光源。」

2 特許無効の抗弁
本件特許(特許第5177317号)に関し、東京地方裁判所において侵害訴訟事件(平成28年(ワ)第35157号)が係属中であるところ、特許法第168条第5項に基づき裁判所より、特許無効の抗弁がなされた旨の通知があった。

その理由とは、以下のものである。
無効理由1:サポート要件違反
(被告第1準備書面第14ないし28頁を参照。)
無効理由2:サポート要件違反及び明確性要件違反
(被告第3準備書面第11ないし22頁を参照。)
無効理由3:分割要件違反
(被告第1準備書面第28ないし29頁を参照。)
無効理由4:乙第10号証に記載された発明に基づく進歩性欠如
(被告第1準備書面第29ないし42頁を参照。)
無効理由5:乙第33号証に記載された発明に基づく新規性進歩性欠如
(被告第3準備書面第22ないし29頁を参照。)

そこで、これら無効理由1ないし無効理由5の観点から、本件訂正発明1及び本件訂正発明2が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
なお、訂正前の請求項1に係る発明及び訂正前の請求項2に係る発明を、まとめて、「訂正前発明」という。

3 無効理由1
(1)無効理由1の概要
訂正前発明の「白色系を発光する」(白色光)については、LED光とYAG系蛍光体以外の他の蛍光体の蛍光光との混色により発せられた白色光も含むものであるところ、本件特許明細書には、LEDチップからの発光(LED光)と、当該発光の一部がYAG系蛍光体により波長変換された発光(YAG光)との混色により白色光が発光されることが開示されているにすぎず、訂正前発明は、発明の詳細な説明に記載されていない態様を包含するものである。

(2)当審の判断
ア 本件訂正発明1及び本件訂正発明2は、以下のものである(なお、下線は、当審で付した。)。
「【請求項1】
白色系を発光する発光ダイオードであって、
該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、
ことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
白色系を発光するLED光源であって、
該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、
ことを特徴とするLED光源。」

イ 本件訂正発明1(本件訂正発明2)のサポート要件について
(ア)特許請求の範囲の記載について
侵害訴訟事件の被告が、訂正前発明の「白色系(の光)」は、LED光とYAG系蛍光体以外の他の蛍光体の蛍光光との混色により発せられた白色光も含むものである旨主張していることから、本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「白色系」の光の意義についてまず検討する

本件訂正発明1(本件訂正発明2)の白色系を発光する発光ダイオード(LED光源)は、
a 「発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップ」
b 「LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」
の二つの事項を少なくとも含むものであると認められる。

ここで、「白色系」の光は、補色関係にある光の混色により生成されることは技術常識であることから、上記aのLEDチップが発光する青色系の光を用いて「白色系の光」を生成するためには、黄色系の光を発光する要素の必要となることは明らかである。
他方、上記bの「ガーネット系蛍光体」は、黄色系の光を発光可能なことが技術常識であるし、本件特許明細書の【0044】にもその趣旨の記載がある。
そして、特許請求の範囲には、上記a及びbの二つが明示的に特定されていることからすれば、本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「白色系」の光とは、LEDチップとセリウムで付活されたガーネット系蛍光体との組合せにより生成されるものであると解するのが自然である。
この点、本件特許明細書の記載を見ても、「白色系」の光として、LEDチップとセリウムで付活されたガーネット系蛍光体との組合せにより生成されるもののみが記載されているから、上記の解釈は、本件特許明細書の記載にも沿うものである。
以上によれば、本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「白色系」の光は、LEDチップとセリウムで付活されたガーネット系蛍光体との組合せにより生成されるものであると解すべきである。

そこで、上記のクレーム解釈に基づき、本件訂正発明1(本件訂正発明2)のサポート要件充足性につき判断する。

(イ)本件特許明細書の記載から把握できる事項
a 本件特許明細書の【技術分野】、【発明が解決しようとする課題】及び【課題を解決するための手段】の記載からして、
本件訂正発明1(本件訂正発明2)は、従来の、青色発光素子とその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体の混色により白色系を発光する発光ダイオード(LED光源)において、蛍光体が劣化して、色調がずれたり、光の外部取り出し効率が低下する場合があるという事情に鑑みて、「耐光性及び耐熱性等に優れたガーネット系蛍光体」を採用することにより、長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれが極めて少ないという効果を奏するものであることが理解できる。

b 本件特許明細書の【0045】及び【0050】の記載からして、「ガーネット系蛍光体」は、ガーネット型の結晶構造を有する蛍光体であって、熱、光及び水分に強いことが理解できる。

c 本件特許明細書の実施例及び比較例から、「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」の組成を具体化した実施例1、2、5ないし11では、上記課題を解決できるのに対して、これとは異なる「(ZnCd)S:Cu、Al」を採用した比較例1及び「緑色有機蛍光顔料と赤色有機蛍光顔料」を採用した比較例2では、上記課題を解決できないことが理解できる。

d 本件特許明細書には、「白色系の光」を「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」以外の他の蛍光体の蛍光光との混色により生成することは、記載されていないし、示唆もされていない。

上記aないしdによれば、
本件特許明細書の記載に接した当業者は、「LEDチップ」の発光光(青色系の光)と「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」の蛍光光を混色して「白色系の光」を生成することで、上記課題を解決できるものと認識できる。

(ウ)サポート要件について
本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「白色系」の光は、LEDチップとセリウムで付活されたガーネット系蛍光体との組合せにより生成されるものであるから、訂正後の特許請求の範囲は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであり、サポート要件を充足していると認められる。

(エ)侵害訴訟被告の主張について
これに対し、侵害訴訟被告は、訂正前発明の「白色系(の光)」は、LED光とYAG系蛍光体以外の他の蛍光体の蛍光光との混色により発せられた白色光も含む旨主張するが、上記イ(ア)のとおり失当である。

ウ まとめ
よって、無効理由1には、理由がない。

4 無効理由2
(1)無効理由2の概要
訂正前発明は、「Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」から「Sm」のみが選択される発明であってもよいところ、本件特許明細書には、「Sm」のみが選択される態様は開示されていない。
また、訂正前発明は、「Sm」の割合についての限定はなく、不明確である。

(2)当審の判断
ア 本件訂正発明1及び本件訂正発明2は、以下のものである(なお、下線は、当審で付した。)。

「【請求項1】
白色系を発光する発光ダイオードであって、
該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、
ことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
白色系を発光するLED光源であって、
該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、
ことを特徴とするLED光源。」

イ 本件訂正発明1(本件訂正発明2)のサポート要件及び明確性要件について
(ア)特許請求の範囲の記載について
侵害訴訟事件の被告が、訂正前発明において、「Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」から「Sm」のみを選択した発明は、本件特許明細書には開示されていない旨主張しているが、「Sm」は訂正により含まれないことになった。
そこで、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」を含む発明がサポートされているか否かについて検討する。

本件訂正発明1(本件訂正発明2)の白色系を発光する発光ダイオード(LED光源)は、
a 「発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップ」
b 「LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」
の二つの事項を少なくとも含むものであると認められる。

ここで、上記aの「ガーネット系蛍光体」とは、ガーネット型の結晶構造を有する蛍光体(複合酸化物)であって、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなる」との発明特定事項からして、前段の元素として「Y」を選択し、後段の元素として「Al」を選択したYAG蛍光体に代表されるような、「一般式[A]_(3)[B]_(5)O_(12)」で表される蛍光体」であることは、当業者にとって明らかである。

(イ)発明の詳細な説明の記載から把握される事項
a 本件特許明細書の【技術分野】、【発明が解決しようとする課題】及び【課題を解決するための手段】の記載からして、
本件訂正発明1(本件訂正発明2)は、従来の、青色発光素子とその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体の混色により白色系を発光する発光ダイオード(LED光源)において、蛍光体が劣化して、色調がずれたり、光の外部取り出し効率が低下する場合があるという事情に鑑みて、「耐光性及び耐熱性等に優れたガーネット系蛍光体」を採用することにより、長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれが極めて少ないという効果を奏するものであることが理解できる。

b 本件特許明細書の【0045】及び【0050】の記載からして、「ガーネット系蛍光体」は、ガーネット型の結晶構造を有する蛍光体であって、熱、光及び水分に強いことが理解できる。

c 本件特許明細書の【0052】の記載からして、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」とは、「一般式(Y_(1-a)Gd_(a))_(3)(Al_(1-b)Ga_(b))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体」であることが理解できる。

d 「一般式(Y_(1-a)Gd_(a))_(3)(Al_(1-b)Ga_(b))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体」の組成を具体化した実施例1、2、5ないし11では、上記課題を解決できるのに対して、これとは異なる「(ZnCd)S:Cu、Al」を採用した比較例1及び「緑色有機蛍光顔料と赤色有機蛍光顔料」を採用した比較例2では、上記課題を解決できないことが理解できる。

e 上記aないしdによれば、
本件特許明細書の記載に接した当業者は、「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」として、「一般式(Y_(1-a)Gd_(a))_(3)(Al_(1-b)Ga_(b))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体」を採用することにより、上記課題を解決できるものと認識できる。

(ウ)サポート要件について
本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」とは、「一般式(Y_(1-a)Gd_(a))_(3)(Al_(1-b)Ga_(b))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体」であるから、訂正後の特許請求の範囲は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであり、サポート要件を充足していると認められる。
してみると、サポート要件に関する無効理由には、理由がない。

(エ)明確性要件について
訂正により、本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」には「Sm」は含まれないことになった。
そして、訂正後の特許請求の範囲の記載に不明確なところは認められない。
してみると、明確性要件に関する無効理由には、理由がない。

ウ まとめ
よって、無効理由2には、理由がない。

5 無効理由3
(1)無効理由3の概要
訂正前発明の「白色系を発光する」(白色光)については、LED光とYAG系蛍光体以外の他の蛍光体の蛍光光との混色により発せられた白色光も含むものである。
しかしながら、原出願(特願2008-269号)には、LEDチップからの発光(LED光)と、当該発光の一部がYAG系蛍光体により波長変換された発光(YAG光)との混色により白色光が発光されることが開示されているにすぎない。
したがって、本件特許出願は分割要件違反であり、新規性及び進歩性の判断基準日は現実の出願日である2012年8月29日であるから、訂正前発明は、国際公開第98/05078号(国際公開日:1998年2月5日)に記載された発明と同一である。

(2)当審の判断
ア 上記「3 無効理由1」で検討したように、本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「白色系(の光)」は、LEDチップとセリウムで付活されたガーネット系蛍光体との組合せにより生成されるものである。

イ そして、本件特許第5177317号の出願である特願2012-189084号(以下「本件特許出願」という。)は、特願2008-269号(以下「第5出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものであり、第5出願は、特願2006-196344号(以下「第4出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものであり、第4出願は、特願2005-147093号(以下「第3出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものであり、第3出願は、特願2002-278066号(以下「第2出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものであり、第2出願は、特願平10-508693号(以下「第1出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものであるところ、
「第1出願」ないし「第5出願」の、それぞれの願書に最初に添付した明細書及び図面にも、「LEDチップ」の発光(青色系の光)と「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」の蛍光光を混色して「白色系(の)光」を生成することが記載されていることから、本件訂正発明1(本件訂正発明2)は、「第1出願」ないし「第5出願」の、それぞれの願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された発明であると認められる。
よって、本件特許出願は、適法な分割出願であると認められる。

ウ そうすると、本件特許出願の出願日は、「第1出願」の国際出願日である1997年7月29日(最先の優先日:1996年7月29日)まで遡及し、国際公開第98/05078号(国際公開日:1998年2月5日)により新規性が欠如することはない。

エ まとめ
よって、無効理由3には、理由がない。

6 無効理由4
(1)無効理由4の概要
訂正前発明は、当業者が乙第10号証(特開平5-152609号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

(2)当審の判断
ア 乙第10号証には、図とともに、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】 ステム上に発光素子を有し、それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて、前記発光素子が、一般式Ga_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1である)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりなり、さらに前記樹脂モールド中に、前記窒化ガリウム系化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発する蛍光染料、または蛍光顔料が添加されてなることを特徴とする発光ダイオード。」

(イ)「【0003】通常、樹脂モールド4は、発光素子の発光を空気中に効率よく放出する目的で、屈折率が高く、かつ透明度の高い樹脂が選択されるが、他に、その発光素子の発光色を変換する目的で、あるいは色を補正する目的で、その樹脂モールド4の中に着色剤として無機顔料、または有機顔料が混入される場合がある。例えば、GaPの半導体材料を有する緑色発光素子の樹脂モールド中に、赤色顔料を添加すれば発光色は白色とすることができる。
【0004】
……
【0005】ところで、現在、LEDとして実用化されているのは、赤外、赤、黄色、緑色発光のLEDであり、青色または紫外のLEDは未だ実用化されていない。……それによるとpn接合の窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDの発光波長は、主として430nm付近にあり、さらに370nm付近の紫外域にも発光ピークを有している。その波長は上記半導体材料の中で最も短い波長である。しかし、そのLEDは発光波長が示すように紫色に近い発光色を有しているため視感度が悪いという欠点がある。
【0006】本発明はこのような事情を鑑みなされたもので、その目的とするところは、発光ピークが430nm付近、および370nm付近にある窒化ガリウム系化合物半導体材料よりなる発光素子を有するLEDの視感度を良くし、またその輝度を向上させることにある。」

(ウ)「【0008】図2は本発明のLEDの構造を示す一実施例である。11はサファイア基板の上にGaAlNがn型およびp型に積層されてなる青色発光素子、2および3は図1と同じくメタルステム、メタルポスト、4は発光素子を包囲する樹脂モールドである。発光素子11の裏面はサファイアの絶縁基板であり裏面から電極を取り出せないため、GaAlN層のn電極をメタルステム2と電気的に接続するため、GaAlN層をエッチングしてn型層の表面を露出させてオーミック電極を付け、金線によって電気的に接続する手法が取られている。また他の電極は図1と同様にメタルポスト3から伸ばした金線によりp型層の表面でワイヤボンドされている。さらに樹脂モールド4には420?440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料5が添加されている。」

(エ)「【0009】
【発明の効果】蛍光染料、蛍光顔料は、一般に短波長の光によって励起され、励起波長よりも長波長光を発光する。……そのためそれを発光素子の材料として使用した場合、その発光素子を包囲する樹脂モールドに蛍光染料、蛍光顔料を添加することにより、最も好適にそれら蛍光物質を励起することができる。したがって青色LEDの色補正はいうにおよばず、蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することができる。さらに、短波長の光を長波長に変え、エネルギー効率がよい為、添加する蛍光染料、蛍光顔料が微量で済み、輝度の低下の点からも非常に好都合である。」

(オ)図2は、以下のものである。


イ 乙第10号証に記載された発明
(ア)上記ア(ア)の記載からして、乙第10号証には、
「ステム上に発光素子を有し、それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて、
前記発光素子が、一般式Ga_(X)Al_(1-X)N(但し0≦X≦1である)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりなり、さらに前記樹脂モールド中に、前記窒化ガリウム系化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発する蛍光染料、または蛍光顔料が添加されている、発光ダイオード。」が記載されているものと認められる。

(イ)上記ア(イ)ないし(オ)の記載から、以下のことが理解できる。
a 上記(ア)の「発光素子」は、具体的には、発光ピークが430nm付近及び370nm付近にある紫色に近い発光色を有するGaAlNよりなる発光素子であること。

b 上記(ア)の「蛍光染料、または蛍光顔料」は、具体的には、420?440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料であること。

c 上記(ア)の「発光ダイオード」は、視感度が良く、輝度が向上していること。

(ウ)上記(ア)及び(イ)より、乙第10号証には、次の発明(以下「乙10発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ステム上に発光素子を有し、それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて、
前記発光素子が、発光ピークが430nm付近及び370nm付近にある紫色に近い発光色を有するGaAlNよりなり、
さらに前記樹脂モールド中に、420?440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料が添加されている、視感度が良く、輝度が向上した発光ダイオード。」

ウ 本件訂正発明1(本件訂正発明2)と乙10発明とを対比する。
(ア)乙10発明の「発光ダイオード」は、「発光ダイオード」及び「LED光源」であるといえる。
乙10発明の「発光素子」は、「発光ピークが430nm付近及び370nm付近にある紫色に近い発光色を有するGaAlNより」なるものであるから、「(発光層が)窒化ガリウム系化合物半導体」からなり、「発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にある」「LEDチップ」であるといえる。
乙10発明の「480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料」は、「発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、蛍光体」であるといえる。

(イ)そうすると、本件訂正発明1(本件訂正発明2)と乙10発明は、以下の点で一致する。

<本件訂正発明1と乙10発明との一致点>
「発光ダイオードであって、
該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、蛍光体とを含む、発光ダイオード。」

<本件訂正発明2と乙10発明との一致点>
「LED光源であって、
該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、蛍光体とを含む、LED光源。」

(ウ)一方、本件訂正発明1(本件訂正発明2)と乙10発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
発光ダイオード(LED光源)の発光する色に関して、
本件訂正発明1(本件訂正発明2)は、「白色を発光する」のに対して、
乙10発明は、「白色を発光する」ものではない点。

<相違点2>
LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、蛍光体に関して、
本件訂正発明1(本件訂正発明2)は、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」であるのに対して、
乙10発明は、そのような蛍光体であるか否か不明である点。

エ 判断
(ア)上記<相違点1>及び<相違点2>について検討する。
a 乙第10号証には「…例えば、GaPの半導体材料を有する緑色発光素子の樹脂モールド中に、赤色顔料を添加すれば発光色は白色とすることができる。」(【0003】)及び「…青色LEDの色補正はいうにおよばず、蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することができる。」(【0009】)と記載され、混色により「白色」を生成することのできること、及びLEDと蛍光材料を組合わせることにより数々の波長に変換できることが示唆されている。
しかしながら、乙10発明の「発光ダイオード(LED光源)」は、その目的とするところが、発光ピークが430nm付近及び370nm付近にある発光素子を有するLEDの視感度を良くし、またその輝度を向上させること(【0006】)にあり、照明等に利用される「白色光」を生成するものではない。

b また、乙10発明の「発光素子」は、青色光(発光ピークが430nm付近)だけではなく、紫色光(370nm付近)を放射することから、青色光を吸収して青色の補色の光を発光する蛍光体として、「セリウムによって付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体」が周知技術であるとしても、該蛍光体は紫色光(370nm付近)を吸収せず、そのまま外部に放射することになることから、当該蛍光体を採用して混色により白色光を生成することには、阻害要因があるといえる(370nm付近の有害な近紫外線を含む光を、照明光に利用することが望ましくないことは、当業者にとって明らかである。)。

c してみると、乙10発明において、上記<相違点1>及び<相違点2>に係る本件訂正発明1(本件訂正発明2)の発明特定事項を採用することは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことであるとすることはできない。

オ まとめ
よって、無効理由4には、理由がない。

7 無効理由5
(1)無効理由5の概要
本件訂正発明1(本件訂正発明2)は、ドイツ法人が発行したチラシ(乙第33号証)に記載された発明と同一、または、そのチラシに記載された発明と周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

(2)当審の判断
ア 乙第33号証のチラシ(以下「本件チラシ」という。)を見ると、その右上側に「02/1995」と数字が印字されていることが読み取れるが、その数字が何を意味するのか直ちには明らかではない。
仮に、「1995年2月」を意味するものであるとしても、そのことから直ちに、本件チラシが本件特許の最先の優先日(1996年7月29日)前に頒布されたことを認めることはできない。

イ 本件チラシの頒布日を立証するために、
(ア)乙第34号証(納入伝票)と、それに添付された乙第35号証(チラ
シ)
(イ)乙第36号証(製品サンプル5個とチラシの在庫取り出しリスト)
(ウ)乙第37号証(書簡)と、それに添付された乙第38号証(チラシ)
が提出されている。
しかしながら、乙第34号証(納入伝票)及び乙第37号証(書簡)からでは、そこに印字された日付けに、本件チラシが配布されたことを認めることはできない。
また、乙第36号証(リスト)に手書きされた「250…02/1995」が本件チラシであるか不明である。
よって、本件チラシが、本件特許の最先の優先日(1996年7月29日)前に頒布されたことを認めることはできない。

ウ してみると、本件チラシは、本件特許の最先の優先日前に頒布されたものとはいえない。

エ まとめ
よって、無効理由5には、理由がない。

8 独立特許要件についてのまとめ
以上の検討によれば、本件訂正発明1及び本件訂正発明2について、特許出願の際独立して特許を受けられないとすべき理由を発見しない。
また、他に本件訂正発明1及び本件訂正発明2について、特許出願の際独立して特許を受けられないとすべき理由を発見しない。
よって、訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第126条第7号の規定に適合するものである。

第4 むすび
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号又は同第3号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第4項から第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
発光装置と表示装置
【技術分野】
【0001】
本願発明は、LEDディスプレイ、バックライト光源、信号機、照光式スイッチ及び各種インジケータなどに利用される発光ダイオードに関し、特に発光素子が発生する光の波長を変換して発光するフォトルミネセンス蛍光体を備えた発光
装置及びそれを用いた表示装置に関する。
【0002】
発光ダイオードは、小型で、効率が良く鮮やかな色の光の発光が可能で、半導体素子であるため、球切れの心配がなく、初期駆動特性及び耐震性に優れ、さらにON/OFF点灯の繰り返しに強いという特長を有する。そのため、各種インジケータや種々の光源として広く利用されている。また、最近では、超高輝度、高効率なRGB(赤、緑、青色)の発光ダイオードがそれぞれ開発され、これらの発光ダイオードを用いた大画面のLEDディスプレーが使用されるようになった。このLEDディスプレーは、少ない電力で動作させることができ、軽量でしかも長寿命であるという優れた特性を有し、今後益々使用されるものと期待される。
【0003】
さらに、最近では、発光ダイオードを用いて、白色発光光源を構成する試みが種々なされている。発光ダイオードを用いて白色光を得るためには、発光ダイオードが単色性ピーク波長を有するので、例えば、R、G、Bの3つの発光素子を近接して設けて発光させて拡散混色する必要がある。このような構成によって白色光を発生させようとした場合、発光素子の色調や輝度等のバラツキにより所望の白色を発生させることができないという問題点があった。また、発光素子がそれぞれ異なる材料を用いて形成されている場合、各発光素子の駆動電力などが異なり個々に所定の電圧を印加する必要があり、駆動回路が複雑になるという問題点があった。さらに、発光素子が半導体発光素子であるため、個々に温度特性や経時変化が異なり、色調が使用環境によって変化したり、各発光素子によって発生される光を均一に混色させる事ができずに色むらを生ずる場合がある等の多くの問題点を抱えていた。すなわち、発光ダイオードは、個々の色を発光させる発光装置としては有効であったが、発光素子を用いて白色光を発生させることができる満足な光源は得られていなかった。
【0004】
そこで、本出願人は先に発光素子によって発生された光が、蛍光体で色変換されて出力される発光ダイオードを、特開平5-152609号公報、特開平7-99345号公報、特開平7-176794号公報、特開平8-8614号公報などにおいて発表した。これらに開示された発光ダイオードは、1種類の発光素子を用いて白色系など他の発光色を発光させることができるというものであり、以下のように構成される。
【0005】
上記公報に開示された発光ダイオードは、具体的には、発光層のエネルギーバンドギャッブが大きい発光素子をリードフレームの先端に設けられたカップ上に配置し、発光素子を被覆する樹脂モールド部材中に発光素子からの光を吸収して、吸収した光と波長の異なる光を発光する(波長変換)蛍光体を含有させて構成する。
【0006】
上述の開示された発光ダイオードにおいて、発光素子として、青色系の発光が可能な発光素子を用いて、該発光素子をその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体を含有した樹脂によってモールドすることにより、混色により白色系の光が発光可能な発光ダイオードを作製することができる。
【0007】
しかしながら、従来の発光ダイオードは、蛍光体の劣化によって色調がずれたり、あるいは蛍光体が黒ずみ光の外部取り出し効率が低下する場合があるという問題点があった。
ここで、黒ずむというのは、例えば、(Cd,Zn)S蛍光体等の無機系の蛍光体を用いた場合には、この蛍光体を構成する金属元素の一部が析出したり変質したりして着色することであり、また、有機系の蛍光体材料を用いた場合には、2重結合が切れる等により着色することをいう。特に、発光素子である高エネルギーバンドギャッブを有する半導体を用い、蛍光体の変換効率を向上させた場合(すなわち、半導体によって発光される光のエネルギーが高くなり、蛍光体が吸収することができるしきい値以上の光が増加し、より多くの光が吸収されるようになる。)、又は蛍光体の使用量を減らした場合(すなわち、相対的に蛍光体に照射されるエネルギー量が多くなる。)等においては、蛍光体が吸収する光のエネルギーが必然的に高くなるので、蛍光体の劣化が著しい。また、発光素子の発光強度を更に高め長期にわたって使用すると、蛍光体の劣化がさらに激しくなる。
【0008】
また、発光素子の近傍に設けられた蛍光体は、発光素子の温度上昇や外部環境(例えば、屋外で使用された場合の太陽光によるもの等)によって高温にもさらされ、この熱によって劣化する場合がある。
【0009】
さらに、蛍光体によっては、外部から侵入する水分や、製造時に内部に含まれた水分と、上記光及び熱とによって、劣化が促進されるものもある。
またさらに、イオン性の有機染料を使用すると、チップ近傍では直流電界により電気泳動を起こし、色調が変化する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本願発明は上記課題を解決し、より高輝度で、長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれの極めて少ない発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、この目的を達成するために、発光素子と蛍光体とを備えた発光装置において、
(1)発光素子としては、高輝度の発光が可能で、かつその発光特性が長期間の使用に対して安定していること、
(2)蛍光体としては、上述の高輝度の発光素子に近接して設けられて、該発光素子からの強い光にさらされて長期間使用した場合においても、特性変化の少ない耐光性及び耐熱性等に優れていること(特に発光素子周辺に近接して配置される蛍光体は、我々の検討によると太陽光に比較して約30倍?40倍に及ぶ強度を有する光にさらされるので、発光素子として高輝度のものを使用すれば使用する程、蛍光体に要求される耐光性は厳しくなる)、
(3)発光素子と蛍光体との関係としては、蛍光体が発光素子からのスペクトル幅をもった単色性ピーク波長の光を効率よく吸収すると共に効率よく異なる発光波長が発光可能であること、が必要であると考え、鋭意検討した結果、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明の発光装置は、白色系を発光する発光ダイオードであって、該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含むこと、を特徴とする発光ダイオードである。また、本発明の発光装置は、白色系を発光するLED光源であって、該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、ことを特徴とするLED光源でもある。
【0013】
ここで、窒化物系化合物半導体(一般式IniGajAlkN、ただし、0≦i,0≦j,0≦k,i+j+k=1)としては、InGaNや各種不純物がドープされたGaNを始め、種々のものが含まれる。
【0014】
また、前記フォトルミネセンス蛍光体としては、Y_(3)Al_(5)O_(12):Ce、Gd_(3)In_(5)O_(12):Ceを始め、上述のように定義される種々のものが含まれる。
この本願発明の発光装置は、高輝度の発光が可能な窒化物系化合物半導体からなる発光素子を用いているので、高輝度の発光をさせることができる。また、該発光装置において、使用している前記フォトルミネッセンス蛍光体は、長時間、強い光にさらされても蛍光特性の変化が少ない極めて耐光性に優れている。これによって、長時間の使用に対して特性劣化を少なくでき、発光素子からの強い光のみならず、野外使用時等における外来光(紫外線を含む太陽光等)による劣化も少なくでき、色ずれや輝度低下が極めて少ない発光装置を提供できる。また、この本願発明の発光装置は、使用している前記フォトルミネッセンス蛍光体が、短残光であるため、例えば、120nsecという比較的速い応答速度が要求される用途にも使用することができる。
【0015】
本発明の発光ダイオードにおいては、前記フォトルミネセンス蛍光体が、YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく、これによって、発光装置の輝度を高くできる。
【0016】
本発明の発光装置においては、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いることができ(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。
)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体用いた場合と同様の優れた特性が得られる。
【0017】
また、本発明の発光装置では、発光特性(発光波長や発光強度等)の温度依存性を小さくするために、前記フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12)で表される蛍光体(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)を用いることが好ましい。
【0018】
また、本発明の発光装置において、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれYとAlとを含んでなる互いに組成の異なる2以上の、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むようにしてもよい。これによって、発光素子の特性(発光波長)に対応して、フォトルミネッセンス蛍光体の発光スペクトルを調整して、所望の発光色の発光をさせることができる。
【0019】
さらに、本発明の発光装置では、発光装置の発光波長を所定の値に設定するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれ一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ce(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)で表され、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を含むことが好ましい。
【0020】
また、本発明の発光装置においては、発光波長を調整するために前記フォトルミネッセンス蛍光体は、一般式Y_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される第1の蛍光体と、一般式Re_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される第2の蛍光体とを含んでもよい。
但し、0≦s≦1、Reは、Y、Ga、Laから選択される少なくとも一種である。
また、本発明の発光装置においては、発光波長を調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、イットリウムの一部がガドリニウムに置換され、互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを含むようにしてもよい。
【0021】
さらに、本発明の発光装置において、前記発光素子の発光スペクトルの主ピークが400nmから530nmの範囲内に設定し、かつ前記フォトルミネッセンス蛍光体の主発光波長が前記発光素子の主ピークより長くなるように設定することが好ましい。これによって、白色系の光を効率よく発光させることができる。
【0022】
またさらに、前記発光素子において、該発光素子の発光層がInを含む窒化ガリウム系半導体を含んでなり、前記フォトルミネセンス蛍光体が、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、Alの一部がGaによってGa:Al=1:1から4:6の範囲内の比率になるように置換されかつYの一部がGdによってY:Gd=4:1から2:3の範囲内の比率になるように置換されていることがさらに好ましい。このように調整されたフォトルミネセンス蛍光体の吸収スペクトルは、発光層としてInを含む窒化ガリウム系半導体を有する発光素子の発光する光の波長と非常によく一致し、変換効率(発光効率)を良くできる。また、該発光素子の青色光と該蛍光体の蛍光光との混色による光は、演色性のよい良質な白色となり、その点で極めて優れた発光装置を提供できる。
【0023】
本発明の1つの態様の発光装置は、その一側面に前記フォトルミネセンス蛍光体を介して前記発光素子が設けられ、かつその三主表面を除く表面が実質的に反射部材で覆われた略矩形の導光板を備え、前記発光素子が発光した光を前記フォトルミネセンス蛍光体と導光板とを介して面状にして、前記導光板の前記一主表面から出力することを特徴とする。
【0024】
本発明の別の態様の発光装置は、その一側面に前記発光素子が設けられ、
その一主表面に前記フォトルミネセンス蛍光体が設けられかつ該一主表面を除く表面が実質的に反射部材で覆われた略矩形の導光板を備え、前記発光素子が発光した光を導光板と前記フォトルミネセンス蛍光体とを介して面状にして、前記導光板の前記一主表面から出力することを特徴とする。
【0025】
また、本発明を用いたLED表示装置は、本発明の発光装置をマトリックス状に配置したLED表示器と、該LED表示器を入力される表示データに従って駆動する駆動回路とを備える。これによって、高精細表示が可能でかつ視認角度によって色むらの少ない、比較的安価なLED表示装置を提供できる。
【0026】
本発明の一態様の発光装置は、カップ部とリード部とを有するマウント・リードと、
前記マウント・リードのカップ内に載置されかつ一方の電極がマウント・リードに電気的に接続されたLEDチップと、
該LEDチップの他方の電極に電気的に接続させたインナー・リードと、
前記LEDチップを覆うように前記カップ内に充填された透光性のコーティング部材と、
前記マウント・リードのカップ部と、前記インナーリードと該LEDチップの他方の電極との接続部分とを含み、前記コーティング部材で覆われたLEDチップを被覆するモールド部材とを有する発光ダイオードであって、
前記LEDチップが窒化物系化合物半導体であり、かつ前記コーティング部材が、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体からなるフォトルミネッセンス蛍光体を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明の発光ダイオードにおいては、前記フォトルミネッセンス蛍光体が、YとAlを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むことが好ましく、
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)を用いても良い。
また、本発明の発光ダイオードでは、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12)で表される(ただし、0≦p≦0.8、0.003≦q≦0.2、0.0003≦r≦0.08、0≦s≦1)蛍光体を用いることもできる。
【0028】
本発明の発光ダイオードにおいては、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれYとAlとを含んでなる互いに組成の異なる2以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含むようにすることが好ましい。
【0029】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、それぞれ一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表され(ただし、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種である。)、互いに組成の異なる2以上の蛍光体を用いてもよい。
【0030】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体として、一般式Y_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表される第1の蛍光体と、一般式Re_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される第2の蛍光体とを用いてもよい。ここで、0≦s≦1、Reは、Y、Ga、Laから選択される少なくとも一種である。
【0031】
本発明の発光ダイオードでは同様に、発光波長を所望の波長に調整するために、前記フォトルミネッセンス蛍光体は、それぞれイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体において、それぞれイットリウムの一部がガドリニウムに置換されてなり、互いに置換量が異なる第1の蛍光体と第2の蛍光体とを用いてもよい。
【0032】
また、一般的に蛍光体では、短波長の光を吸収して長波長の光を発光するものの方が、長波長の光を吸収して短波長の光を発光するものに比較して効率がよい。発光素子としては、樹脂(モールド部材やコーティング部材等)を劣化させる紫外光を発光するものより可視光を発光するものを用いる方が好ましい。従って、本発明の発光ダイオードにおいては、発光効率の向上及び長寿命化のために、前記発光素子の発光スペクトルの主ピークを、可視光のうちで比較的短波長の400nmから530nmの範囲内に設定し、かつ前記フォトルミネッセンス蛍光体の主発光波長を前記発光素子の主ピークより長く設定することが好ましい。また、このようにすることにより、蛍光体により変換された光は、発光素子が発光する光よりも長波長であるため、蛍光体等により反射された変換後の光が発光素子に照射されても、発光素子によって吸収されることはない(バンドギャップエネルギーより変換された光のエネルギーの方が小さいため)。このように、蛍光体等により反射された光は、発光素子を載置したカップにより反射され、さらに効率のよい発光が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る実施の形態のリードタイプの発光ダイオードの模式的断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のチップタイプの発光ダイオードの模式的断面図である。
【図3】(A)は実施形態1のセリウムで付活されたガーネット系蛍光体の励起スペクトルを示すグラフであり、(B)は実施形態1のセリウムで付活されたガーネット系蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施の形態1の発光ダイオードの発光スペクトルを示すグラフである。
【図5】(A)は実施形態2のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の励起スペクトルを示すグラフであり、(B)は実施形態2のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の発光スペクトルを示すグラフである。
【図6】実施形態2の発光ダイオードの発光色を説明するための色度図であり、図中、A及びB点は発光素子が発光する光の発光色を示し、C点、D点は、それぞれ2種類のフォトルミネッセンス蛍光体からの発光色を示す。
【図7】本発明に係る別の実施形態の面状発光光源の模式的な断面図である。
【図8】図7とは異なる面状発光光源の模式的な断面図である。
【図9】図7及び図8とは異なる面状発光光源の模式的な断面図である。
【図10】本願発明の応用例である表示装置のブロック図10である。
【図11】図10の表示装置のLED表示器の平面図である。
【図12】本願発明の発光ダイオード及びRGBの4つの発光ダイオードを用いて一絵素を構成したLED表示器の平面図である。
【図13】(A)は、実施例1及び比較例1の発光ダイオードの寿命試験の結果を示すグラフであって、25℃における結果であり、(B)は、実施例1及び比較例1の発光ダイオードの寿命試験の結果を示すグラフであって、60℃,90%RHにおける結果である。
【図14】(A)は、実施例9及び比較例2の耐候性試験の結果を示すグラフであり、経過時間に対する輝度保持率を示し、(B)は、実施例9及び比較例2の耐候性試験の結果を示すグラフであり、試験前後の色調の変化を示す。
【図15】(A)は、実施例9及び比較例2の発光ダイオードの信頼性試験における輝度保持率と時間との関係を示すグラフであり、(B)は、実施例9及び比較例2の発光ダイオードの信頼性試験における色調と時間との関係を示したグラフである。
【図16】表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LEDとを組み合わせた発光ダイオードにより実現できる色再現範囲を示す色度図である。
【図17】表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LEDとを組み合わせた発光ダイオードにおける蛍光体の含有量を変化させたときの発光色の変化を示す色度図である。
【図18】(A)は、(Y_(0.6)Gd_(0.4))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例2のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B)は、発光ピーク波長460nmを有する実施例2の発光素子の発光スペクトルを示し、(C)は、実施例2の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【図19】(A)は、(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例5のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B)は、発光ピーク波長450nmを有する実施例5の発光素子の発光スペクトルを示し、(C)は、実施例5の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【図20】(A)は、Y_(3)A_(15)O_(12):Ceで表される実施例6のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B)は、発光ピーク波長450nmを有する実施例6の発光素子の発光スペクトルを示し、(C)は、実施例6の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【図21】(A)は、Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される実施例7のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B(は、発光ピーク波長450nmを有する実施例7の発光素子の発光スペクトルを示し、(C)は、実施例7の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【図22】(A)は、(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例11のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(B)は、(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される実施例11のフォトルミネセンス蛍光体の発光スペクトルを示し、(C)は、発光ピーク波長470nmを有する実施例11の発光素子の発光スペクトルを示す。
【図23】実施例11の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の説明をする。
図1の発光ダイオード100は、マウント・リード105とインナーリード106とを備えたリードタイプの発光ダイオードであって、マウント・リード105のカップ部105a上に発光素子102が設られ、カップ部105a内に、発光素子102を覆うように、所定のフォトルミネッセンス蛍光体を含むコーティング樹脂101が充填された後に、樹脂モールドされて構成される。ここで、発光素子102のn側電極及びp側電極はそれぞれ、マウント・リード105とインナーリード106とにワイヤー103を用いて接続される。
【0035】
以上のように構成された発光ダイオードにおいては、発光素子(LEDチップ)102によって発光された光(以下、LED光という。)の一部が、コーティング樹脂101に含まれたフォトルミネッセンス蛍光体を励起してLED光と異なる波長の蛍光を発生させて、フォトルミネッセンス蛍光体が発生する蛍光と、フォトルミネッセンス蛍光体の励起に寄与することなく出力されるLED光とが混色されて出力される。その結果、発光ダイオード100は、発光素子102が
発生するLED光とは波長の異なる光も出力する。
【0036】
また、図2に示すものはチップタイプの発光ダイオードであって、筺体204の凹部に発光素子(LEDチップ)202が設けられ、該凹部に所定のフォトルミネッセンス蛍光体を含むコーティング材が充填されてコーティング部201が形成されて構成される。ここで、発光素子202は、例えばAgを含有させたエポキシ樹脂等を用いて固定され、該発光素子202のn側電極とp側電極とをそれぞれ、筺体204に設けられた端子金属205に、導電性ワイヤー203を用いて接続される。 以上のように構成されたチップタイプの発光ダイオードにおいて、図1のリードタイプの発光ダイオードと同様に、フォトルミネッセンス蛍光体が発生する蛍光と、フォトルミネッセンス蛍光体に吸収されることなく伝搬されたLED光とが混色されて出力され、その結果、発光ダイオード200は、発光素子102が発生するLED光とは波長の異なる光も出力する。
【0037】
以上説明したフォトルミネセンス蛍光体を備えた発光ダイオードは、以下のような特徴を有する。
1.通常、発光素子(LED)から放出される光は、発光素子に電力を供給する電極を介して放出される。放出された光は、発光素子に形成された電極の陰となり、特定の発光パターンを有し、そのために全ての方向に均一に放出されない。しかしながら、蛍光体を備えた発光ダイオードは、蛍光体により発光素子からの光を散乱させて光を放出するので、不要な発光パターンを形成することなく、広い範囲に均一に光を放出することができる。
2.発光素子(LED)からの光は、単色性ピークを有するといっても、ある程度のスペクトル幅をもつので演色性が高い。このことは、比較的広い範囲の波長を必要とする光源として使用する場合には欠かせない長所になる。例えば、スキャナーの光源等に用いる場合は、スペクトル幅が広いほうが好ましい。
【0038】
以下に説明する実施形態1,2の発光ダイオードは、図1又は図2に示す構造を有する発光ダイオードにおいて、可視光域における光エネルギーが比較的高い窒化物系化合物半導体を用いた発光素子と、特定のフォトルミネッセンス蛍光体とを組み合わせたことを特徴とし、これによって、高輝度の発光を可能にし、長時間の使用に対して発光効率の低下や色ずれが少ないという良好な特性を有する。
【0039】
一般的に蛍光体においては、短い波長の光を吸収して長い波長の光を放出する蛍光体の方が、長い波長の光を吸収して短い光を放出する蛍光体に比較して変換効率が優れているので、本発明の発光ダイオードにおいては、短い波長の青色系の発光が可能な窒化ガリウム系半導体発光素子(発光素子)を用いることが好ましい。また、高い輝度の発光素子を用いることが好ましいことは言うまでもない。
【0040】
このような窒化ガリウム系半導体発光素子と組み合わせて用いるのに適したフォトルミネセンス蛍光体としては、
1.発光素子102,202に近接して設けられ、太陽光の約30倍から40倍にもおよぶ強い光にさらされることになるので、強い強度の光の照射に対して長時間耐え得るように、耐光性に優れていること。
【0041】
2.発光素子102,202によって励起するために、発光素子の発光で効率よく発光すること。特に、混色を利用する場合、紫外線ではなく青色系発光で効率よく発光すること。
【0042】
3.青色系の光と混色されて白色になるように、緑色系から赤色系の光が発光可能なこと。
4.発光素子102,202に近接して設けられ、該チップを発光させる際の発熱による温度変化の影響を受けるので、温度特性が良好であること。
【0043】
5.色調が組成比あるいは複数の蛍光体の混合比を変化させることにより、連続的に変化させることができること。
6.発光ダイオードが使用される環境に応じた耐候性があること、
などの特性が要求される。
【0044】
実施の形態1.
本願発明に係る実施の形態1の発光ダイオードは、発光層に高エネルギーバンドギャッブを有し、青色系の発光が可能な窒化ガリウム系化合物半導体素子と、黄色系の発光が可能なフォトルミネセンス蛍光体である、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体とを組み合わせたものである。これによって、この実施形態1の発光ダイオードにおいて、発光素子102,202からの青色系の発光と、その発光によって励起されたフォトルミネセンス蛍光体からの黄色系の発光光との混色により白色系の発光が可能になる。
【0045】
また、この実施形態1の発光ダイオードに用いた、セリウムで付活されたガーネット系フォトルミネッセンス蛍光体は耐光性及び耐候性を有するので、発光素子102,202から放出された可視光域における高エネルギー光を長時間その近傍で高輝度に照射した場合であっても発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少ない白色光が発光できる。
【0046】
以下、本実施形態1の発光ダイオードの各構成部材について詳述する。
(フォトルミネセンス蛍光体)
本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、半導体発光層から発光された可視光や紫外線で励起されて、励起した光と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体である。具体的にはフォトルミネセンス蛍光体として、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。本発明では、該蛍光体として、YとAlを含みセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、又は、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ce(但し、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種)であらわされる蛍光体を用いることが好ましい。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子が発光するLED光と、ボディーカラーが黄色であるフォトルミネセンス蛍光体が発光する蛍光光が補色関係にある場合、LED光と、蛍光光とを混色して出力することにより、全体として白色系の光を出力することができる。
【0047】
本実施形態1において、このフォトルミネセンス蛍光体は、上述したように、コーテイング樹脂101,コーテイング部201を形成する樹脂(詳細は後述する)に混合して使用されるので、窒化ガリウム系発光素子の発光波長に対応させて、樹脂などとの混合比率、若しくはカップ部105又は筺体204の凹部への充填量を種々調整することにより、発光ダイオードの色調を、白色を含め電球色など任意に設定できる。
【0048】
このフォトルミネセンス蛍光体の含有分布は、混色性や耐久性にも影響する。例えば、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側から発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度を高くした場合は、外部環境からの水分などの影響をより受けにくくでき、水分による劣化を防止することができる。他方、フォトルミネセンス蛍光体を、発光素子からモールド部材等の表面側に向かって分布濃度が高くなるように分布させると、外部環境からの水分の影響を受けやすいが発光素子からの発熱、照射強度などの影響をより少なくでき、フォトルミネセンス蛍光体の劣化を抑制することができる。このような、フォトルミネセンス蛍光体の分布は、フォトルミネセンス蛍光体を含有する部材、形成温度、粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状、粒度分布などを調整することによって種々の分布を実現することができ、発光ダイオードの使用条件などを考慮して分布状態が設定される。
【0049】
実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は、発光素子102,202と接したり、あるいは近接して配置され、照射強度(Ee)として、3W・cm^(-2)以上10W・cm^(-2)以下においても高効率でかつ十分な耐光性を有するので、該蛍光体を用いることにより、優れた発光特性の発光ダイオードを構成することができる。
【0050】
また、実施形態1のフォトルミネセンス蛍光体は、ガーネット構造を有するので、熱、光及び水分に強く、図3(A)に示すように、励起スペクトルのピークを450nm付近にすることができる。また、発光ピークも図3(B)に示すように、580nm付近にあり700nmまで裾を引くブロードな発光スペクトルを持つ。また、実施形態1のフォトルミネッセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、460nm以上の長波長域における励起発光効率を高くすることができる。Gdの含有量の増加により、発光ピーク波長が、長波長に移動し、全体の発光波長も長波長側にシフトする。すなわち、赤みの強い発光色が必要な場合、Gdによる置換量を多くすることで達成することができる。
一方、Gdが増加するするとともに、青色光によるフォトルミネッセンスの発光輝度は低下する傾向にある。
【0051】
特に、ガーネット構造を有するYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで、発光波長が、短波長側にシフトするまた組成のYの一部をGdで置換することにより、発光波長が長波長側にシフトする。
【0052】
表1に一般式(Y1-aGda)_(3)(Al1-bGab)_(5)O_(12):Ceで表されるYAG系蛍光体の組成とその発光特性を示す。
【0053】
【0054】
【表1】

表1に示した各特性は、460nmの青色光で励起して測定した。又表1における輝度と効率は一の材料を100として相対値で示している。
AlをGaによって置換する場合、発光効率と発光波長を考慮してGa:Al=1:1から4:6の間の比率に設定することが好ましい。同様に、Yの一部をGdで置換する場合は、Y:Gd=9:1?1:9の範囲の比率に設定することが好ましく、4:1?2:3の範囲に設定することがより好ましい。Gdの置換量が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなるからであり、Gdの置換量が6割以上になると、赤み成分を増やすことができるが、輝度が急激に低下する。特に、発光素子の発光波長によるがYAG系蛍光体中のYとGdとの比率を、Y:Gd=4:1?2:3の範囲に設定することにより、1種類のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いて黒体放射軌跡にほぼ沿った白色光の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。また、YAG系蛍光体中のYとGdとの比率を、Y:Gd=2:3?1:4の範囲に設定すると、輝度は低いが電球色の発光が可能な発光ダイオードを構成することができる。
尚、Ceの含有量(置換量)は、0.003?0.2の範囲に設定することにより、発光ダイオードの相対発光光度を70%以上にできる。含有量が0.003未満では、Ceによるフォトルミネッセンスの励起発光中心の数が減少することにより光度が低下し、逆に0.2より大きくなると濃度消光が生じる。
【0055】
以上のように、組成のAlの一部をGaで置換することにより発光波長を短波長にシフトさせることができ、また、組成のYの一部をGdで置換することで、発光波長を長波長へシフトさせることができる。このように組成を変化することで発光色を連続的に調節することが可能である。また、波長が254nmや365nmであるHg輝線ではほとんど励起されず450nm付近の青色系発光素子からのLED光による励起効率が高い。さらに、ピーク波長がGdの組成比で連続的に変えられるなど窒化物半導体発光素子の青色系発光を白色系発光に変換するための理想条件を備えている。
【0056】
また、実施形態1では、窒化ガリウム系半導体を用いた発光素子と、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット蛍光体(YAG)に希土類元素のサマリウム(Sm)を含有させたフォトルミネセンス蛍光体とを組み合わせることにより、発光ダイオードの発光効率をさらに向上させることができる。
【0057】
このようなフォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ce、Sm、Al及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを所定の化学量論比で十分に混合して混合原料を作製し、作製された混合原料に、フラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350?1450℃の温度範囲で2?5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でポールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことにより作製できる。
【0058】
上述の作製方法において、混合原料は、Y、Gd、Ce、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合することにより作製してもよい。
【0059】
一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)Al_(5)O_(12)で表すことができるフォトルミネセンス蛍光体は、結晶中にGdを含有することにより、特に460nm以上の長波長域の励起発光効率を高くすることができる。また、ガドリニウムの含有量を増加させることにより、発光ピーク波長を、530nmから570nmまで長波長に移動させ、全体の発光波長も長波長側にシフトさせることができる。赤みの強い発光色が必要な場合、Gdの置換量を多くすることで達成できる。一方、Gdが増加すると共に、青色光によるフォトルミネセンスの発光輝度は徐々に低下する。したがって、pは0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましい。さらに好ましくは0.6以下である。
【0060】
また、一般式(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)Al_(5)O_(12)で表されるSmを含むフォトルミネセンス蛍光体は、Gdの含有量を増加させても温度特性の低下を少なくできる。
すなわち、Smを含有させることにより、高温度におけるフォトルミネセンス蛍光体の発光輝度の劣化は大幅に改善される。その改善される程度はGdの含有量が多くなるほど、大きくなる。特に、Gdの含有量を増加させてフォトルミネセンスの発光の色調に赤みを付与した組成の蛍光体は、温度特性が悪くなるので、Smを含有させて温度特性を改善することが有効である。なお、ここで言う温度特性とは、450nmの青色光による常温(25℃)における励起発光輝度に対する、同蛍光体の高温(200℃)における発光輝度の相対値のことである。
【0061】
Smの含有量rは0.0003≦r≦0.08の範囲であることが好ましく、これによって温度特性を60%以上にすることができる。この範囲よりrが小さいと、温度特性の改良効果が小さくなる。また、この範囲よりrが大きくなると温度特性は逆に低下してくる。また、Smの含有量rは0.0007≦r≦0.02の範囲であることがさらに好ましく、これによって温度特性は80%以上にできる。
【0062】
Ceの含有量qは、0.003≦q≦0.2の範囲であることが好ましく、これによって、相対発光輝度が70%以上にできる。ここで、相対発光輝度とは、q=0.03の蛍光体の発光輝度を100パーセントとした場合における発光輝度のことをいう。
【0063】
Ceの含有量qが0.003以下では、Ceによるフォトルミネセンスの励起発光中心の数が減少するために輝度が低下し、逆に、0.2より大きくなると濃度消光が生ずる。
ここで、濃度消光とは、蛍光体の輝度を高めるために付活剤の濃度を増加していくとある最適値以上の濃度では発光強度が低下することである。
【0064】
本願発明の発光ダイオードにおいては、Al、Ga、Y及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上の(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)_(3)Al_(5)O_(12)フォトルミネセンス蛍光体を混合して用いてもよい。これによって、蛍光発光中のRGBの波長成分を増やすことができ、これに、例えばカラーフィルターを用いることによりフルカラー液晶表示装置用としても利用できる。
【0065】
(発光素子102、202)
発光素子は、図1及び図2に示すように、モールド部材に埋設されることが好ましい。
本願発明の発光ダイオードに用いられる発光素子は、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体を効率良く励起できる窒化ガリウム系化合物半導体である。窒化ガリウム系化合物半導体を用いた発光素子102,202は、MOCVD法等により基板上にInGaN等の窒化ガリウム系半導体を発光層として形成することにより作製される。発光素子の構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合などを有するホモ構造ヘテロ構造あるいはダブルヘテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる程度に薄く形成した単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。特に、本願発明においては、発光素子の活性層をInGaNの単一量子井戸構造とすることにより、フォトルミネセンス蛍光体の劣化がなく、より高輝度に発光する発光ダイオードとして利用することができる。
【0066】
窒化ガリウム系化合物半導体を使用した場合、半導体基板にはサファイヤ、スピネル、SiC、Si、ZnO等の材料が用いることができるが、結晶性の良い窒化ガリウムを形成させるためにはサファイヤ基板を用いることが好ましい。このサファイヤ基坂上にGaN、AlN等のバッファー層を介してPN接合を形成するように窒化ガリウム半導体層を形成する。窒化ガリウム系半導体は、不純物をドーブしない状態でN型導電性を示すが、発光効率を向上させるなど所望の特性(キャリヤ濃度等)のN型窒化ガリウム半導体を形成するためには、N型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜ドープすることが好ましい。一方、p型窒化ガリウム半導体を形成する場合は、p型ドーパンドであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープする。尚、窒化ガリウム系化合物半導体は、p型ドーパントをドーブしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱、低速電子線照射やプラズマ照射等によりp型化させることが好ましい。エッチングなどによりp型及びN型の窒化ガリウム半導体の表面を露出させた後、各半導体層上にスバッタリング法や真空蒸着法などを用いて所望の形状の各電極を形成する。
【0067】
次に、以上のようにして形成された半導体ウエハー等を、ダイシングソーにより直接フルカットする方法、又は刃先幅よりも広い幅の溝を切り込んだ後(ハーフカット)、外力によって半導体ウエハーを割る方法、あるいは、先端のダイヤモンド針が往復直線運動するスクライバーにより半導体ウエハーに極めて細いスクライブライン(経線)を例えば碁盤目状に引いた後、外力によってウエハーを割る方法等を用いて、半導体ウエハーをチップ状にカットする。このようにして窒化ガリウム系化合物半導体からなる発光素子を形成することができる。
【0068】
本実施形態1の発光ダイオードにおいて白色系を発光させる場合は、フォトルミネセンス蛍光体との補色関係や樹脂の劣化等を考慮して発光素子の発光波長は400nm以上530nm以下に設定することが好ましく、420nm以上490nm以下に設定することがより好ましい。発光素子とフォトルミネセンス蛍光体との効率をそれぞれより向上させるためには、450nm以上475nm以下に設定することがさらに好ましい。実施形態1の白色系発光ダイオードの発光スペクトルの一例を図4に示す。ここに例示した発光ダイオードは、図1に示すリードタイプのものであって、後述する実施例1の発光素子とフォトルミネッセンス蛍光体とを用いたものである。ここで、図4において、450nm付近にピークを持つ発光が発光素子からの発光であり、570nm付近にピークを持つ発光が発光素子によって励起されたフォトルミネセンスの発光である。
【0069】
また、表1に示した蛍光体とピーク波長465nmの青色LED(発光素子)とを組み合わせた白色系発光ダイオードで、実現できる色再現範囲を図16に示す。この白色系発光ダイオードの発光色は、青色LED起源の色度点と蛍光体起源の色度点とを結ぶ直線上のいずれかに位置するので、表1の1?7の蛍光体を使用することにより、色度図中央部の広範な白色領域(図16中斜線を付した部分)をすべてカバーすることができる。図17は、白色系発光ダイオードにおける蛍光体の含有量を変化させた時の発光色の変化を示したものである。ここで、蛍光体の含有量は、コーティング部に使用する樹脂に対する重量パーセントで示している。図17から明らかなように、蛍光体の量を増やせば蛍光体の発光色に近付き、減らすと青色LEDに近付く。
【0070】
なお、本願発明では、蛍光体を励起する光を発生する発光素子に加えて、蛍光体を励起しない発光素子を一緒に用いることもできる。具体的には、蛍光体を励起可能な窒化物系化合物半導体である発光素子に加えて、蛍光体を実質的に励起しない、発光層がガリウム燐、ガリウムアルミニウムひ素、ガリウムひ素燐やインジウムアルミニウム燐などである発光素子を一緒に配置する。このようにすると、蛍光体を励起しない発光素子からの光は、蛍光体に吸収されることなく外部に放出される。これによって、紅白が発光可能な発光ダイオードとすることができる。
【0071】
以下、図1及び図2の発光ダイオードの他の構成要素について説明する。
(導電性ワイヤー103、203)
導電性ワイヤー103、203としては、発光素子102、202の電極とのオーミック性、機械的接続性、電気伝導性及び熱伝導性がよいものが求められる。熱伝導度としては0.01cal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは0.5cal/(s)(cm2)(℃/cm)以上である。また、作業性を考慮すると導電性ワイヤーの直径は、10μm以上、45μm以下であることが好ましい。特に、蛍光体が含有されたコーティング部とモールド部材とをそれぞれ同一材料を用いたとしても、どちらか一方に蛍光体が入ることによる熱膨張係数の違いにより、それらの界面においては、導電性ワイヤーは断線し易い。そのために導電性ワイヤーの直径は、25μm以上がより好ましく、発光面積や取り扱い易さの観点から35μm以下が好ましい。導電性ワイヤーの材質としては、金、銅、白金、アルミニウム等の金属及びそれらの合金が挙げられる。
このような材質、形状からなる導電性ワイヤーを用いることにより、ワイヤーボンディング装置によって、各発光素子の電極と、インナー・リード及びマウント・リードとを容易に接続することができる。
【0072】
(マウント・リード105)
マウント・リード105は、カップ部105aとリード部105bとからなり、カップ部105aに、ダイボンディング装置で発光素子102を載置する十分な大きさがあれば良い。また、複数の発光素子をカップ内に設け、マウント・リードを発光素子の共通電極として利用する場合においては、異なる電極材料を用いる場合があるので、それぞれに十分な電気伝導性とボンディングワイヤー等との接続性が求められる。また、マウント・リード上のカップ内に発光素子を配置すると共に蛍光体をカップ内部に充填する場合は、蛍光体からの光が当方的に放出されたとしても、カップにより所望の方向に反射されるので、近接して配置させた別の発光ダイオードからの光による疑似点灯を防止することができる。ここで、擬似点灯とは、近接して配置された別の発光ダイオードに電力を供給していなくても発光しているように見える現象のことをいう。
【0073】
発光素子102とマウント・リード105のカップ部105aとの接着は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂やイミド樹脂等の熱硬化性樹脂などを用いて行うことができる。また、フェースダウン発光素子(基板側から発光を取り出すタイプであって、発光素子の電極をカップ部105aに対向させて取り付けるように構成されたもの)を用いる場合は、該発光素子をマウント・リードと接着させると共に電気的に導通させるために、Agペースト、カーボンペースト、金属バンプ等を用いることができる。さらに、発光ダイオードの光利用効率を向上させるために発光素子が配置されるマウント・リードのカップ部の表面を鏡面状とし、表面に反射機能を持たせても良い。この場合の表面粗さは、0.1S以上0.8S以下が好ましい。また、マウント・リードの具体的な電気抵抗としては300μΩ・cm以下が好ましく、より好ましくは、3μΩ・cm以下である。また、マウント・リード上に複数の発光素子を積置する場合は、発光素子からの発熱量が多くなるため熱伝導度がよいことが求められ、その熱伝導度は、0.01cal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上が好ましく、より好ましくは0.5cal/(s)(cm^(2))(℃/cm)以上である。これらの条件を満たす材料としては、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅、メタライズパターン付きセラミック等が挙げられる。
【0074】
(インナー・リード106)
インナー・リード106は、マウント・リード105上に配置された発光素子102の一方の電極に、導電性ワイヤー等で接続される。マウント・リード上に複数の発光素子を設けた発光ダイオードの場合は、インナーリード106を複数設け、各導電性ワイヤー同士が接触しないよう各インナーリードを配置する必要がある。例えば、マウント・リードから離れるに従って、各インナー・リードのワイヤーボンディングされる各端面の面積を順次大きくすることによって、導電性ワイヤー間の間隔を開けるようにボンディングし、導電性ワイヤー間の接触を防ぐことができる。インナーリードの導電性ワイヤーとの接続端面の粗さは、密着性を考慮して1.6S以上1OS以下に設定することが好ましい。
【0075】
インナー・リードは、所望の形状になるように型枠を用いた打ち抜き加工等を用いて形成することができる。さらには、インナー・リードを打ち抜き形成後、端面方向から加圧することにより所望の端面の面積と端面高さを調整するようにしても良い。
【0076】
また、インナー・リードは、導電性ワイヤーであるボンディングワイヤー等との接続性及び電気伝導性が良いことが求められる。具体的な電気抵抗としては、300μΩ・cm以下であることが好ましく、より好ましくは3μΩ・cm以下である。これらの条件を満たす材料としては、鉄、銅、鉄入り銅、錫入り銅及び銅、金、銀をメッキしたアルミニウム、鉄、銅等が挙げられる。
【0077】
(コーティング部101)
コーティング部101は、モールド部材104とは別にマウント・リードのカップに設けられるものであり、本実施の形態1では、発光素子の発光を変換するフォトルミネセンス蛍光体が含有されるものである。コーティング部の具体的材料としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーンなどの耐侯性に優れた透明樹脂や硝子などが適する。また、フォトルミネセンス蛍光体と共に拡散剤を含有させても良い。具体的な拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等を用いることが好ましい。
さらに、蛍光体をスパッタリングにより形成する場合、コーティング部を省略することもできる。この場合、膜厚を調整したり蛍光体層に開口部を設けることで混色表示が可能な発光ダイオードとすることができる。
【0078】
(モールド部材104)
モールド部材104は、発光素子102、導電性ワイヤー103、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部101などを外部から保護する機能を有する。本実施形態1では、モールド部材104にさらに拡散剤を含有させることが好ましく、これによって発光素子102からの指向性を緩和させることができ、視野角を増やすことができる。また、モールド部材104は、発光ダイオードにおいて、発光素子からの発光を集束させたり拡散させたりするレンズ機能を有する。従って、モールド部材104は、通常、凸レンズ形状、凹レンズ形状さらには、発光観測面から見て楕円形状やそれらを複数組み合わせた形状に形成される。また、モールド部材104は、それぞれ異なる材料を複数積層した構造にしてもよい。モールド部材104の具体的材料としては、主としてエポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂などの耐候性に優れた透明樹脂や硝子などが好適に用いられる。また、拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等を用いることができる。さらに、本願発明では、拡散剤に加えてモールド部材中にフォトルミネセンス蛍光体を含有させてもよい。すなわち、本願発明では、フォトルミネセンス蛍光体をコーティング部に含有させても良いし、モールド部材中に含有させてもよい。モールド部材にフォトルミネセンス蛍光体を含有させることにより、視野角をさらに大きくすることができる。また、コーティング部とモールド部材の双方に含有させてもよい。またさらに、コーティング部をフォトルミネセンス蛍光体が含有された樹脂とし、モールド部材を、コーティング部と異なる部材である硝子を用いて形成しても良く、このようにすることにより、水分などの影響が少ない発光ダイオードを生産性良く製造できる。また、用途によっては、屈折率を合わせるために、モールド部材とコーティング部とを同じ部材を用いて形成してもよい。本願発明においてモールド部材に拡散剤や着色剤を含有させることによって、発光観測面側から見た蛍光体の着色を隠すことができると共により混色性を向上させることができる。すなわち、蛍光体は強い外光のうち青色成分を吸収し発光し、黄色に着色しているように見える。しかしながら、モールド部材に含有された拡散剤はモールド部材を乳白色にし、着色剤は所望の色に着色する。これによって、発光観測面から蛍光体の色が観測されることはない。さらに、発光素子の主発光波長が430nm以上では、光安定化剤である紫外線吸収剤を含有させることがより好ましい。
【0079】
発明の実施2.
本発明に係る実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子として発光層に高エネルギーバンドギャップを有する窒化ガリウム系半導体を備えた素子を用い、フォトルミネセンス蛍光体として、互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体、好ましくはセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含む蛍光体を用いる。これにより実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子によって発光されるLED光の発光波長が、製造バラツキ等により所望値からずれた場合でも、2種類以上の蛍光体の含有量を調節することによって所望の色調を持った発光ダイオードを作製できる。
この場合、発光波長が比較的短い発光素子に対しては、発光波長が比較的短い蛍光体を用い、発光波長が比較的長い発光素子には発光波長が比較的長い蛍光体を用いることで発光ダイオードから出力される発光色を一定にすることができる。蛍光体に関して言うと、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)_(3)(Al1-sGas)_(5)O_(12):Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体を用いることもできる。但し、0<r≦1、0≦s≦1、Reは、Y、Gd、Laから選択される少なくとも一種である。これにより発光素子から放出された可視光域における高エネルギーを有する光が長時間高輝度に照射された場合や種々の外部環境の使用下においても蛍光体の変質を少なくできるので、発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少なく、かつ高輝度の所望の発光成分を有する発光ダイオードを構成できる。
【0080】
(実施の形態2のフォトルミネセンス蛍光体)
実施の形態2の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体について詳細に説明する。実施の形態2においては、上述したように、フォトルミネセンス蛍光体として組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたフォトルミネセンス蛍光体を使用した以外は、実施の形態1と同様に構成され、蛍光体の使用方法は実施の形態と同様である。
【0081】
また、実施形態1と同様に、フォトルミネセンス蛍光体の分布を種々変える(発光素子から離れるに従い濃度勾配をつける等)ことによって耐候性の強い特性を発光ダイオードに持たせることができる。このような分布はフォトルミネセンス蛍光体を含有する部材、形成温度、粘度やフォトルミネセンス蛍光体の形状、粒度分布などを調整することによって種々調整することができる。
したがって、実施形態2では、使用条件などに対応させて、蛍光体の分布濃度が設定される。また、実施の形態2では、2種類以上の蛍光体をそれぞれ発光素子から出力される光に対応して配置を工夫(例えば、発光素子に近い方から順番に配置する等)することによって発光効率を高くすることができる。
【0082】
以上のように構成された実施形態2の発光ダイオードは、実施形態1と同様、照度強度として(Ee)=3W・cm^(-2)以上10W・cm^(-2)以下の比較的高出力の発光素子と接する或いは近接して配置された場合においても高効率でかつ十分な耐光性を有する発光ダイオードを構成できる。
【0083】
実施形態2に用いられるセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)は、実施形態1と同様、ガーネット構造を有するので、熱、光及び水分に強い。また、実施形態2のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、図5(A)の実線に示すように励起スペクトルのピークを450nm付近に設定でき、かつ発光スペクトルの発光ピークを図5(B)の実線に示すように510nm付近に設定でき、しかも発光スペクトルを700nmまで裾を引くようにブロードにできる。
これによって、緑色系の発光をさせることができる。また、実施形態2の別のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、励起スペクトルのピークを図5Aの破線に示すように450nm付近にでき、かつ発光スペクトルの発光ピークを図5(B)の破線に示すように600nm付近に設定でき、しかも発光スペクトルを750nmまで裾を引くブロードにできる。これによって、赤色系の発光が可能となる。
ガーネット構造を持ったYAG系蛍光体の組成の内、Alの一部をGaで置換することで発光波長が短波長側にシフトし、また組成のYの一部をGd及び/又はLaで置換することで、発光波長が長波長側へシフトする。AlのGaへの置換は、発光効率と発光波長を考慮してGa:Al=1:1から4:6が好ましい。同様に、Yの一部をGd及び/又はLaで置換することは、Y:Gd及び/又はLa=9:1から1:9であり、より好ましくは、Y:Gd及び/又はLa=4:1から2:3である。置換が2割未満では、緑色成分が大きく赤色成分が少なくなる。また、6割以上では、赤み成分が増えるものの輝度が急激に低下する。
【0084】
このようなフォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ce、La、Al、Sm及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ce、La、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350?1450℃の温度範囲で2?5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことで得ることができる。本実施形態2において、組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、混合して用いても良いし、それぞれ独立して配置(例えば、積層)して用いても良い。2種類以上の蛍光体を混合して用いた場合、比較的簡単に量産性よく色変換部を形成することができ、2種類以上の蛍光体を独立して配置した場合は、所望の色になるまで重ね合わせることにより、形成後に色調整をすることができる。また、蛍光体をそれぞれ独立して配置して用いる場合、LED素子に近いほうに、光をより短波長側で吸収発光しやすい蛍光体を設け、LEDより離れた所に、それよりも長波長側で吸収発光しやすい蛍光体を配置することが好ましい。これによって効率よく吸収及び発光させることができる。
【0085】
以上のように本実施形態2の発光ダイオードは、蛍光物質として、組成の異なる2種類以上のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いている。これによって、所望の発光色が効率よく発光可能な発光ダイオードを構成することができる。即ち、半導体発光素子が発光する光の発光波長が、図6に示す色度図のA点からB点に至る線上に位置する場合、組成の異なる2種類以上のイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体の色度点(C点及びD点)である図6のA点,B点,C点及びD点で囲まれた斜線内にある任意の発光色を発光させることができる。実施形態2では、LED素子、蛍光体の組成若しくはその量を種々選択することによって調節することができる。特に、LED素子の発光波長に対応して、所定の蛍光体を選択することによりLED素子の発光波長のバラツキを補償することにより、発光波長のバラツキが少ない発光ダイオードを構成することができる。また、蛍光物質の発光波長を選択することにより、RGBの発光成分を高輝度に含んだ発光ダイオードを構成することができる。
【0086】
さらに、実施形態2に用いるイットリウム・アルミニウム・ガーネット系(YAG系)蛍光体は、ガーネット構造を有するので、実施形態2の発光ダイオードは、長時間高輝度に発光させることができる。また、実施形態1及び2の発光ダイオードは、発光観測面からみて蛍光体を介して発光素子を設ける。また、発光素子からの光よりもより長波長側に発光する蛍光物質を用いているので、効率よく発光させることができる。さらに、変換された光は発光素子から放出される光よりも長波長側になっているために、発光素子の窒化物半導体層のバンドギャップよりも小さく、該窒化物半導体層に吸収されにくい。従って、蛍光体が等方的に発光するために発光された光はLED素子にも向かうが、蛍光体によって発光された光はLED素子に吸収されることはないので、発光ダイオードの発光効率を低下させることはない。
【0087】
(面状発光光源)
本発明に係る別の実施形態である面状発光光源の例を図7に示す。
図7に示す面状発光光源では、実施形態1又は2で用いたフォトルミネセンス蛍光体が、コーティング部701に含有されている。これによって、窒化ガリウム系発光素子が発生する青色系の光を、コーティング部で色変換した後、導光板704及び散乱シート706を介して面状にして出力する。
【0088】
詳細に説明すると、図7の面状発光光源において、発光素子702は、絶縁層及び導電性パターン(図示せず)が形成されたコの字形状の金属基板703内に固定される。発光素子の電極と導電性パターンとを導通させた後、フォトルミネセンス蛍光体をエポキシ樹脂と混合して発光素子702が積載されたコの字型の金属基板703の内部に充填する。
こうして固定された発光素子702は、アクリル性の導光板704の一方の端面にエポキシ樹脂などで固定される。導光板704の一方の主面上の散乱シート706が形成されていない部分には、点状に発光する蛍現象防止のため白色散乱剤が含有されたフィルム状の反射部材707が形成される。
【0089】
同様に、導光板704の他方の主表面(裏面側)全面及びや発光素子が配置されていない他方の端面上にも反射部材705を設け発光効率を向上させるように構成する。これにより、例えば、LCDのバックライト用として十分な明るさを有する面状発光の発光ダイオードを構成することができる。
【0090】
この面状発光の発光ダイオードを用いた液晶表示装置は、例えば、導光板704の一方の主面上に、透光性導電性パターンが形成された硝子基板間(図示せず)に液晶が注入された液晶装置を介して偏光板を配し構成する。
【0091】
本発明に係る別の実施形態である面状の発光装置の例を、図8、図9とに示す。図8に示す発光装置は、発光ダイオード702によって発生された青色系の光を、フォトルミネセンス蛍光体が含有された色変換部材701を介して白色系の光に変換した後、導光板704によって面状にして出力するように構成されている。
【0092】
図9に示す発光装置は、発光素子702が発光する青色系の光を、導光板704によって面状にした後、導光板704の一方の主表面に形成された、フォトルミネッセンス蛍光体を有する散乱シート706によって白色光に変換して面状の白色光を出力するように構成されている。ここで、フォトルミネッセンス蛍光体は、散乱シート706に含有させても良いし、或いはバインダー樹脂と共に散乱シート706に塗布してシート状に形成してもよい。さらには、導光板704上にフォトルミネセンス蛍光体を含むバインダーを、シート状ではなく、ドット状に直接形成してもよい。
【0093】
<応用例>
(表示装置)
次に、本願発明に係る表示装置について説明する。図10は本願発明に係る表示装置の構成を示すブロック図である。該表示装置は、図10に示すように、LED表示器601と、ドライバー回路602、画像データ記憶手段603及び階調制御手段604を備えた駆動回路610とからなる。
ここで、LED表示器601は、図11に示すように、図1又は図2に示す白色系の発光ダイオード501が、筺体504にマトリクス状に配列され、白黒用のLED表示装置として使用される。ここで、筺体504には遮光部材505が一体で成形されている。
【0094】
駆動回路610は、図10に示すように、入力される表示データを一時的に記憶する画像データ記憶手段(RAM)603と、RAM603から読み出したデータに基づいてLED表示器601のそれぞれの発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算して出力する階調制御手段604と、階調制御手段604から出力される信号によってスイッチングされて、発光ダイオードを点灯させるドライバー602とを備える。
階調制御回路604は、RAM603に記憶されるデータを取り出してLED表示器601の発光ダイオード点灯時間を演算して点滅させるパルス信号をLED表示器601に出力する。以上のように構成された表示装置において、LED表示器601は、駆動回路から入力されるパルス信号に基づいて表示データに対応した画像を表示することができ、以下のような利点がある。
【0095】
すなわち、RGBの3つの発光ダイオードを用いて白色系の表示をさせるLED表示器は、RGBの各発光ダイオードの発光出力を調節して表示させる必要があるため、各発光ダイオードの発光強度、温度特性などを考慮して各発光ダイオードを制御しなけれはならないので、該LED表示器を駆動する駆動回路は複雑になるという問題点があった。しかしながら、本願発明の表示装置においては、LED表示器601が、RGBの3種類の発光ダイオードを用いることなく、本願発明に係る白色系の発光が可能な発光ダイオード501を用いて構成されているので、駆動回路がRGBの各発光ダイオードを個別に制御する必要がなく、駆動回路の構成を簡単にでき、表示装置を安価にできる
【0096】
また、RGBの3つの発光ダイオードを用いて白色系の表示をさせるLED表示器は、1画素毎に、RGBの3つの発光ダイオードを組み合わせて白色表示させるためには、3つの各発光ダイオードをそれぞれ同時に発光させて混色する必要があり、一画素あたりの表示領域が大きくなり、高精細に表示させることができなかった。しかしながら、本願発明の表示装置におけるLED表示器は、1個の発光ダイオードで白色表示できるので、より高精細に白色系表示させることができる。さらに、3つの発光ダイオードの混色によって表示するLED表示器は、見る方向や角度によって、RGBの発光ダイオードのいずれかが部分的に遮光され表示色が変化する場合があるが、本願発明のLED表示器ではそのようなことはない。
【0097】
以上のように本願発明に係る白色系の発光が可能な発光ダイオードを用いたLED表示器を備えた表示装置は、より高精細化が可能であり、安定した白色系の表示ができ、さらに、色むらを少なくできる特長がある。また、本願発明に係る白色表示が可能なLED表示器は、従来の赤色、緑色のみを用いたLED表示器に比べ人間の目に対する刺激が少なく長時間の使用に適している。
【0098】
(本願発明の発光ダイオードを用いた他の表示装置の例)
本願発明の発光ダイオードを用いることにより、図12に示すように、RGBの3つの発光ダイオードに本願発明の発光ダイオードを加えたものを1絵素とするLED表示器を構成することができる。そして、このLED表示器と所定の駆動回路とを接続することにより種々の画像を表示することができる表示装置を構成できる。この表示装置における駆動回路は、モノクロームの表示装置と同様に、入力される表示データを一時的に記憶する画像データー記憶手段(RAM)と、RAMに記憶されたデータに基づいて各発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路と、階調制御回路の出力信号でスイッチングされて、各発光ダイオードを点灯させるドライバーとを備える。ただし、この駆動回路は、RGBと白色系に発光する各発光ダイオードをそれぞれ制御する専用の回路を必要とする。階調制御回路は、RAMに記憶されるデータから、それぞれの発光ダイオードの点灯時間を演算して、点滅させるパルス信号を出力する。ここで、白色系の表示を行う場合は、RGB各発光ダイオードを点灯するパルス信号のパルス幅を短く、あるいは、パルス信号のピーク値を低く、あるいは全くパルス信号を出力しないようにする。他方、それを補償するように(すなわち、パルス信号のパルス幅を短く、あるいは、パルス信号のピーク値を低く、あるいは全くパルス信号を出力しない分を補うように)白色系発光ダイオードにパルス信号を供給する。これにより、LED表示器の白色を表示する。
【0099】
このように、RGBの発光ダイオードに白色発光ダイオードを追加することによって、ディスプレーの輝度を向上させることができる。また、RGBの組合せで白色を表示しようとすると、見る角度によってRGBのうちのいずれか1つ又はいずれか2つの色が強調され、純粋な白を表現することができないが、本表示装置のように白色の発光ダイオードを追加することにより、そのような問題を解決することができる。
【0100】
このような表示装置における駆動回路では、白色系発光ダイオードを所望の輝度で点灯させるためのパルス信号を演算する階調制御回路としてCPUを別途備えることが好ましい。階調制御回路から出力されるパルス信号は、白色系発光ダイオードのドライバーに入力されてドライバをスイッチングさせる。ドライバーがオンになると白色系発光ダイオードが点灯され、オフになると消灯される。
【0101】
(信号機)
本願発明の発光ダイオードを表示装置の1種である信号機として利用した場合、長時間安定して発光させることが可能であると共に発光ダイオードの一部が消灯しても色むらなどが生じないという特長がある。本願発明の発光ダイオードを用いた信号機の概略構成として、導電性パターンが形成された基坂上に白色系発光ダイオードを所定の配列に配置する。このような発光ダイオードを直列又は直並列に接続された発光ダイオードの回路を発光ダイオード群として扱う。発光ダイオード群を2つ以上用いそれぞれ渦巻き状に発光ダイオードを配置させる。全ての発光ダイオードが配置されると円状に全面に配置される。
各発光ダイオード及び基板から外部電力と接続させる電源コードをそれぞれ、ハンダにより接続した後、鉄道信号用の匡体内に固定する。LED表示器は、遮光部材が付いたアルミダイキャストの匡体内に配置され表面にシリコーンゴムの充填材で封止されている。匡体の表示面は、白色レンズを設けてある。また、LED表示器の電気的配線は、筺体の裏面から筺体を密閉するためにゴムパッキンを介して通し、筺体内を密閉する。このようにして白色系信号機を形成することができる。本願発明の発光ダイオードを、複数の群に分け中心部から外側に向け輪を描く渦巻き状などに配置し、並列接続することでより信頼性が高い信号機を構成することができる。この場合、中心部から外側に向け輪を描くことにより、信頼性が高い信号機を構成することができる。中心部から外側に向け輪を描くことには、連続的に輪を描くものも断続的に配置するものの双方を含む。したがって、LED表示器の表示面積などを考慮して、配置される発光ダイオードの数や発光ダイオード群の数を種々選択することができる。この信号機により、一方の発光ダイオード群や一部の発光ダイオードが何らかのトラブルにより消灯したとしても他方の発光ダイオード群や残った発光ダイオードにより信号機を円形状に均一に発光させることが可能となるり、色ずれが生ずることもない。渦巻き状に配置してあることから中心部を密に配置することができ電球発光の信号と何ら違和感なく駆動させることができる。
【実施例】
【0102】
<実施例>
以下、本願発明の実施例について説明するが、本願発明は、以下に示す実施例のみに限定されるものではないことを念のために言っておく。
(実施例1)
実施例1は、発光素子として、GaInN半導体を用いた発光ピークが450nm、半値幅30nmの発光素子を用いた例である。実施例1の発光素子は、洗浄されたサファイ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジウム)ガス、窒素ガス及びドーバントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜することにより作製される。成膜時に、ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成する。実施例1のLED素子は、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層と、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体層であるコンタクト層を備え、N型導電性を有するコンタクト層とP型導電性を有するクラッド層との間に厚さ約3nmの、単一量子井戸構造を構成するためのノンドープInGaNからなる活性層が形成されている。尚、サファイア基板上には、バッファ層として低温で窒化ガリウム半導体層が形成されている。また、P型窒化ガリウム半導体は、成膜後400℃以上の温度でアニールされている。
【0103】
エッチングによりP型及びN型の各半導体表面を露出させた後、スパッタリングによりn側p側の各電極がそれぞれ形成される。こうして作製された半導体ウエハーにスクライブラインを引いた後、外力を加えて個々の発光素子に分割した。
【0104】
以上のようにして作製された発光素子を、銀メッキした鋼製のマウント・リードのカップ部にエポキシ樹脂でダイボンディングした後、発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードとをそれぞれ直径が30μmの金線を用いてワイヤーボンディングして、リードタイプの発光ダイオードを作製した。
【0105】
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ceの希土類元素を所定の化学量論比で酸に溶解した溶解液を修酸で共沈させ、沈澱物を焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムを混合して、この混合原料にフラックスとしてフツ化アンモニウムを混合して坩堝に詰めて、空気中1400℃の温度で3時間焼成した後、その焼成品をボールミルを用いて湿式粉砕して、洗浄、分離、乾燥後、最後に篩を通すことにより作製した。その結果、フォトルミネセンス蛍光体は、YがGdで約2割置換されたイットリウム・アルミニウム酸化物として(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceが形成された。尚、Ceの置換は0.03であった。
【0106】
以上のようにして作製した(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ce蛍光体80重量部とエポキシ樹脂100重量部とをよく混合してスラリーとし、このスラリーを発光素子が載置されたマウント・リードのカップ内に注入した後、130℃の温度で1時間で硬化させた。こうして発光素子上に厚さ120μmのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部を形成した。なお、本実施例1では、コーティング部においては、発光素子に向かってフォトルミネセンス蛍光体が徐々に多く分布するように構成した。
【0107】
照射強度は、約3.5W/cm^(2)である。その後、さらに発光素子やフォトルミネセンス蛍光体を外部応力、水分及び塵芥などから保護する目的でモールド部材として透光性エポキシ樹脂を形成した。ここで、モールド部材は、砲弾型の型枠の中に、リードフレームにボンディングされ、フォトルミネセンス蛍光体を含んだコーティング部に覆われた発光素子を挿入して、透光性エポキシ樹脂を注入した後、150℃5時間にて硬化させて形成した。
【0108】
この要に形成した発光ダイオードは、発光観測正面から見ると、フォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色されていた。
こうして得られた白色系が発光可能な発光ダイオードの色度点、色温度、演色性指数を測定した結果、それぞれ、色度点は、(x=0.302、y=0.280)、色温度8080K、演色性指数(Ra)=87.5と三波長型蛍光灯に近い性能を示した。また、発光効率は9.51m/wと白色電球並であった。さらに、温度25℃60mA通電、温度25℃20mA通電、温度60℃90%RH下で20mA通電の各寿命試験においても蛍光体に起因する変化は観測されず通常の青色発光ダイオードと寿命特性に差がないことが確認できた。
【0109】
(比較例1)
フォトルミネセンス蛍光体を(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ce蛍光体から(ZnCd)S:Cu、Alとした以外は、実施例1と同様にして発光ダイオードの形成及び寿命試験を行った。形成された発光ダイオードは通電直後、実施例1と同様、白色系の発光が確認されたが輝度は低かった。また、寿命試験においては、約100時間で出力がゼロになった。劣化原因を解析した結果、蛍光体が黒化していた。
【0110】
これは、発光素子の発光光と蛍光体に付着していた水分あるいは外部環境から進入した水分により光分解し蛍光体結晶表面にコロイド状亜鉛金属を析出し外観が黒色に変色したものと考えられる。温度25℃20mA通電、温度60℃90%RH下で20mA通電の寿命試験結果を実施例1の結果と共に図13に示す。輝度は初期値を基準にしそれぞれの相対値を示す。図13において、実線が実施例1であり波線が比較例1を示す。
【0111】
(実施例2)
実施例2の発光ダイオードは、発光素子における窒化物系化合物半導体のInの含有量を実施例1の発光素子よりも増やすことにより、発光素子の発光ピークを460nmとし、フォトルミネセンス蛍光体のGdの含有量を実施例1よりも増やし(Y_(0.6)Gd_(0.4))_(3)Al_(5)O_(12):Ceとした以外は実施例1と同様にして発光ダイオードを作製した。
以上のようにして作製した発光ダイオードは、白色系の発光可能であり、その色度点、色温度、演色性指数を測定した。それぞれ、色度点(x=0.375、y=0.370)、色温度4400K、演色性指数(Ra)=86.0であった。
【0112】
図18(A?C)にそれぞれ、実施例2のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、この実施例2の発光ダイオードを100個作製し、初期の光度に対する1000時間発光させた後における光度を調べた。その結果、初期(寿命試験前)の光度を100%とした場合、1000時間経過後における平均光度は、平均して98.8%であり特性に差がないことが確認できた。
【0113】
(実施例3)
実施例3の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体としてY、Gd、Ceの希土類元素に加えSmを含有させた、一般式(Y_(0.39)Gd_(0.57)Ce_(0.03)Sm_(0.01))_(3)Al_(5)O_(12)蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様に作製した。この実施例3の発光ダイオードを100個作製し、130℃の高温下において評価した結果、実施例1の発光ダイオードと比較して平均温度特性が8%ほど良好であった。
【0114】
(実施例4)
実施例4のLED表示器は、実施例1の発光ダイオードが、図11に示すように銅パターンを形成したセラミックス基坂上に、16×16のマトリックス状に配列されて構成される。尚、実施例4のLED表示器では、発光ダイオードが配列された基板は、フェノール樹脂からなり遮光部材505が一体で形成された筺体504内部に配置され、発光ダイオードの先端部を除いて筺体、発光ダイオード、基板及び遮光部材の一部をピグメントにより黒色に着色したシリコンゴム506が充填される。また、基板と発光ダイオードとの接続は、自動ハンダ実装装置を用いてハンダ付けを行た。
【0115】
以上のように構成されたLED表示器を、入力される表示データを一時的に記憶するRAM及びRAMに記憶されるデータを取り出して発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路と階調制御回路の出力信号でスイッチングされて発光ダイオードを点灯させるドライバーとを備えた駆動手段によって駆動することにより白黒LED表示装置として使用できることを確認した。
【0116】
(実施例5)
実施例5の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例5の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、色度点(平均値)は(x=0.450,y=0.420)であり、電球色の光を発光することができた。
【0117】
図19(A?C)にそれぞれ、実施例5のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、実施例5の発光ダイオードは、実施例1の発光ダイオードに比較して輝度が約40%低かったが、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
【0118】
(実施例6)
実施例6の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例6の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、実施例1に比較してやや黄緑色がかった白色の光を発光することができた。
図20(A?C)にそれぞれ、実施例6のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
また、実施例6の発光ダイオードは、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
【0119】
(実施例7)
実施例7の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例7の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、実施例7の発光ダイオードは、輝度は低いが緑色がかった白色の光を発光することができ、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
図21(A?C)にそれぞれ、実施例7のフォトルミネセンス蛍光体、発光素子及び発光ダイオードの各発光スペクトルを示す。
【0120】
(実施例8)
実施例8の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式Gd_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表されるYを含まない蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして作製した。この実施例8の発光ダイオードを100個作製して諸特性を測定した。
その結果、実施例8の発光ダイオードは、輝度は低いが、寿命試験においては、実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
【0121】
(実施例9)
実施例9の発光ダイオードは、図7に示す構成を有する面状発光の発光装置である。
発光素子として発光ピークが450nmのIn_(0.05)Ga_(0.95)N半導体を用いた。発光素子は、洗浄させたサファイヤ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジュウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜することにより形成した。ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成しPN接合を形成した。半導体発光素子としては、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層、N型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層を形成した。N型導電性を有するクラッド層とP型導電性を有するクラッド層との間にダブルヘテロ接合となるZnドープInGaNの活性層を形成した。なお、サファイア基板上には、低温で窒化ガリウム半導体を形成し、バッファ層として用いた。P型窒化物半導体層は、成膜後400℃以上の温度でアニールされている。
【0122】
各半導体層を成膜した後、エッチングによりPN各半導体表面を露出させた後、スパッタリングにより各電極をそれぞれ形成し、こうして出来上がった半導体ウエハーをスクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子として発光素子を形成した。
銀メッキした銅製リードフレームの先端にカップを有するマウント・リードに発光素子をエポキシ樹脂でダイボンディングした。発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードと、をそれぞれ直径が30μmの金線でワイヤボンディングし電気的導通を取った。
【0123】
モールド部材は、砲弾型の型枠の中に発光素子が配置されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させ青色系発光ダイオードを形成させた。青色系発光ダイオードを端面が全て研磨されたアクリル性導光板の一端面に接続させた。アクリル板の片面及び側面は、白色反射部材としてチタン酸バリウムをアクリル系バインダー中に分散したものでスクリーン印刷及び硬化させた。
【0124】
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、緑色系及び赤色系をそれぞれ必要なY、Gd、Ce、Laの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400℃の温度範囲で3時間焼成して焼成品を得た。焼成品をそれぞれ水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して形成した。
【0125】
以上のようにして作製された、一般式Y_(3)(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体120重量部と、同様にして作製された、一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体100重量部とを、エポキシ樹脂100重量部とよく混合してスラリーとし、このスラリーを厚さ0.5mmのアクリル層上にマルチコーターを用いて均等に塗布、乾燥し、厚さ約30μmの色変換部材として蛍光体膜を形成した。
蛍光体層を導光板の主発光面と同じ大きさに切断し導光板上に配置することにより面状の発光装置を作製した。以上のように作製した発光装置の色度点、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.29,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)は、92.0と三波長型蛍光灯に近い性能を示した。また、発光効率は12 lm/wと白色電球並であった。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においても蛍光体に起因する変化は観測されなかった。
【0126】
(比較例2)
実施例9の一般式Y3(Al_(0.6)Ga_(0.4))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体、及び一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体からなるフォトルミネセンス蛍光体に代えて、それぞれペリレン系誘導体である緑色有機蛍光顔料(シンロイヒ(SINLOIHI)化学製FA-001)と赤色有機蛍光顔料(シンロイヒ化学製FA-005)とを用いて同量で混合攪拌した以外は、実施例9と同様にして発光ダイオードを作製して実施例9と同様の耐侯試験を行った。作製した比較例1の発光ダイオードの色度点は、(x=0.34,y=0.35)であった。耐侯性試験として、カーボンアークで紫外線量を200hrで太陽光の1年分とほぼ同等とさせ時間と共に輝度の保持率及び色調を測定した。また、信頼性試験として発光素子を発光させ70℃一定における時間と共に発光輝度及び色調を測定した。この結果を実施例9と共に図14及び図15にそれぞれ示す。図14,15から明らかなように、いずれの試験においても、実施例9は、比較例2より劣化が少ない。
【0127】
(実施例10)
実施例10の発光ダイオードは、リードタイプの発光ダイオードである。
実施例10の発光ダイオードでは、実施例9と同様にして作製した450nmのIn_(0.05)Ga_(0.95)Nの発光層を有する発光素子を用いた。そして、銀メッキした銅製のマウントリードの先端のカップに発光素子をエポキシ樹脂でダイボンディングし、発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードとをそれぞれ金線でワイヤーボンディングし電気的に導通させた。
【0128】
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、一般式Y_(3)(Al_(0.5)Ga_(0.5))_(5)O_(12):Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体と一般式(Y_(0.2)Gd_(0.8))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体とをそれぞれ以下のようにして作製して混合して用いた。すなわち、必要なY、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400℃の温度範囲で3時間焼成してそれぞれ焼成品を得た。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して所定の粒度の第1と第2の蛍光体を作製した。
【0129】
以上のようにして作製された第1の蛍光体及び第2の蛍光体それぞれ40重量部を、エポキシ樹脂100重量部に混合してスラリーとし、このスラリーを発光素子が配置されたマウント・リード上のカップ内に注入した。注入後、注入されたフォトルミネセンス蛍光体を含有する樹脂を130℃1時間で硬化させた。こうして発光素子上に厚さ120μのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部材を形成した。なお、このコーティング部材は、発光素子に近いほどフォトルミネセンス蛍光体の量が徐々に多くなるように形成した。その後、さらに発光素子やフォトルミネセンス蛍光体を外部応力、水分及び塵芥などから保護する目的でモールド部材として透光性エポキシ樹脂を形成した。モールド部材は、砲弾型の型枠の中にフォトルミネセンス蛍光体のコーティング部が形成されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させて形成した。このようにして作製された実施例10の発光ダイオードは、発光観測正面から視認するとフォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色されていた。
【0130】
以上のように作製した実施例10の発光ダイオードの色度点、色温度、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.32,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)=89.0、発光効率は10lm/wであった。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においてもフォトルミネセンス蛍光体に起因する変化は観測されず通常の青色系発光ダイオードと寿命特性に差がないことが確認できた。
【0131】
(実施例11)
LED素子として発光ピークが470nmのIn_(0.4)Ga_(0.6)N半導体を用いた。
発光素子は、洗浄させたサファイヤ基板上にTMG(トリメチルガリウム)ガス、TMI(トリメチルインジュウム)ガス、窒素ガス及びドーパントガスをキャリアガスと共に流し、MOCVD法で窒化ガリウム系化合物半導体を成膜させることにより形成した。ドーパントガスとしてSiH_(4)とCp_(2)Mgと、を切り替えることによってN型導電性を有する窒化ガリウム半導体とP型導電性を有する窒化ガリウム半導体を形成しPN接合を形成した。LED素子としては、N型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層、P型導電性を有する窒化ガリウムアルミニウム半導体であるクラッド層、P型導電性を有する窒化ガリウム半導体であるコンタクト層を形成した。N型導電性を有するコンタクト層とP型導電性を有するクラッド層との間に厚さ約3nmのノンドープInGaNの活性層を形成することにより単一井戸構造とした。なお、サファイア基板上には、低温で窒化ガリウム半導体をバッファ層として形成した。
【0132】
以上のように各層を形成した後、エッチングによりPN各半導体表面を露出させ、スパッタリングによりp側及びn側の各電極を形成した。こうして出来上がった半導体ウエハーをスクライブラインを引いた後、外力により分割させ発光素子として発光素子を形成した。
【0133】
この発光素子を銀メッキした銅製のマウントリードのカップにエポキシ樹脂を用いてダイボンディングした。発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードと、をそれぞれ直径30μmの金線でワイヤーボンディングし電気的導通を取った。
【0134】
モールド部材は、砲弾型の型枠の中に発光素子が配置されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させ青色系発光ダイオードを形成した。青色系発光ダイオードを端面が全て研磨されたアクリル性導光板の一端面に接続した。アクリル板の片面及び側面は、白色反射部材としてチタン酸バリウムをアクリル系バインダー中に分散したものをスクリーン印刷及び硬化して膜状に形成した。
【0135】
一方、フォトルミネセンス蛍光体は、一般式(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表され比較的短波長側の黄色系が発光可能な蛍光体と、一般式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表され比較的長波長側の黄色系が発光可能な蛍光体とを以下のようにして作製して混合して用いた。これらの蛍光体は、それぞれ必要なY、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400℃の温度範囲で3時間焼成して焼成品を得た。焼成品をそれぞれ水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して形成した。
【0136】
以上のように作製した比較的短波長側の黄色系蛍光体100重量部と比較的長波長側の黄色系蛍光体100重量部とを、アクリル樹脂1000重量部とよく混合して押し出し成形し、厚さ約180μmの色変換部材として用いる蛍光体膜を形成した。蛍光体膜を導光板の主発光面と同じ大きさに切断し導光板上に配置することにより発光装置を作製した。
このようにして作製した実施例11の発光装置の色度点、演色性指数を測定した結果、色度点は、(x=0.33,y=0.34)であり、演色性指数(Ra)=88.0を示した。また、発光効率は10 lm/wであった。
【0137】
図22(A?C)にはそれぞれ、実施例11に使用した、式(Y_(0.8)Gd_(0.2))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体、式(Y_(0.4)Gd_(0.6))_(3)Al_(5)O_(12):Ceで表される蛍光体及び発光素子の各発光スペクトルを示す。また、図23には、実施例11の発光ダイオードの発光スペクトルを示す。 さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においても蛍光体に起因する変化は観測されなかった。同様に、この蛍光体の含有量を種々変えることによって発光素子からの波長が変化しても所望の色度点を維持させることができる。
【0138】
(実施例12)
実施例12の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として一般式Y_(3)In_(5)O_(12):Ceで表されるAlを含まない蛍光体を用いた以外は、実施例1と同様にして発光ダイオードを100個作製した。実施例9の発光ダイオードは、輝度は低いが寿命試験において実施例1と同様に優れた耐候性を示していた。
【0139】
以上説明したように、本発明に係る発光ダイオードは、所望の色を有する光を発光することができ、長時間高輝度の使用においても発光効率の劣化が少なくしかも耐候性に優れている。従って、一般的な電子機器に限られず、高い信頼性が要求される車載用、航空産業用、港内のブイ表示用及び高速道路の標識照明など屋外での表示や照明として新たな用途を開くことができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色系を発光する発光ダイオードであって、
該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、
ことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項2】
白色系を発光するLED光源であって、
該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420?490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、
ことを特徴とするLED光源。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-11-09 
結審通知日 2017-11-13 
審決日 2017-11-28 
出願番号 特願2012-189084(P2012-189084)
審決分類 P 1 41・ 851- Y (H01L)
P 1 41・ 856- Y (H01L)
P 1 41・ 841- Y (H01L)
P 1 41・ 855- Y (H01L)
P 1 41・ 853- Y (H01L)
P 1 41・ 854- Y (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡田 吉美  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 星野 浩一
森林 克郎
登録日 2013-01-18 
登録番号 特許第5177317号(P5177317)
発明の名称 発光装置と表示装置  
代理人 鮫島 睦  
代理人 田村 啓  
代理人 言上 惠一  
代理人 山尾 憲人  
代理人 鮫島 睦  
代理人 玄番 佐奈恵  
代理人 山尾 憲人  
代理人 玄番 佐奈恵  
代理人 言上 惠一  
代理人 田村 啓  

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