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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1335372
審判番号 不服2017-2790  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-27 
確定日 2018-01-05 
事件の表示 特願2015- 2927「コンテンツベースのソーシャルネットワーキングシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月27日出願公開、特開2015-135675、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2010年3月30日(パリ条約による優先権主張 2009年3月30日、米国)を国際出願日とする特願2012-503629号の一部を平成27年1月9日に新たな特許出願としたものであって、平成28年3月9日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月14日付けで手続補正がなされたが、同年11月22日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成29年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要

原査定(平成28年11月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

請求項1,4,7-10,11,14,17,18に係る発明は、引用文献2,3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.(略)
2.特開2007-166189号公報
3.国際公開第2009/018562号

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
なお、審判請求時の補正は、次の補正をするものである。
1.補正前の請求項1を、当該請求項を引用していた補正前の請求項2に係る構成で限定し、補正前の請求項2を削除する補正。
2.補正前の請求項4を独立記載形式に変更し、補正後の請求項3とする補正。
3.補正前の請求項3、5-10の項番を繰上げ、補正後の請求項2、4-9とする補正。
4.補正前の請求項11を、当該請求項を引用していた補正前の請求項12に係る構成で限定して補正後の請求項10とし、補正前の請求項12を削除する補正。
5.補正前の請求項13を独立記載形式に変更し、補正後の請求項11とする補正。
6.補正前の請求項14-18の項番を繰上げ、補正後の請求項12-16とし、補正後の請求項12の引用請求項を請求項11とする補正。
7.補正後の請求項7-10、15、16において、「前記」の記載を追加する補正。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-16に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-16に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明16」という。)は、平成29年2月27日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-16に記載された事項により特定される発明である。
ここで、原査定は、補正前の請求項2、3、5,6、12、13、15、16に係る発明を拒絶理由の対象としていないことから、補正後の本願発明1-16について、次のことがいえる。
本願発明1は、補正前の請求項2に係る発明に相当するが、原査定は、当該発明を拒絶理由の対象としていない。
本願発明2、6、7は、当該本願発明1に係る構成を全て含むものとなったから、原査定の拒絶理由を維持できない。
本願発明4、5は補正前の請求項5、6に係る発明にそれぞれ相当し、原査定は、当該発明を拒絶理由の対象としていない。
本願発明10は、補正前の請求項12に係る発明に相当するが、原査定は、当該発明を拒絶理由の対象としていない。
本願発明15は、当該本願発明10に係る構成を全て含むことから、当該拒絶理由を維持できない。
本願発明11は補正前の請求項13に係る発明に相当し、原査定は、当該発明について拒絶理由の対象としていない。
本願発明12?14、16は、当該本願発明11に係る構成を全て含むことから、当該拒絶理由を維持できない。
したがって、拒絶の理由を有さないとされた発明を除いた、本願発明3、8、9についての進歩性を検討する。
そして、本願発明3は以下のとおりの発明である。

<本願発明3>
「【請求項3】
ネットワーキングユニットと、1件又はそれ以上のデジタルコンテンツを記憶しているコンテンツ記憶部と、システムのそれぞれのユーザー毎の前記デジタルコンテンツのライブラリと、を有しているコンピュータと、
前記コンピュータにリンク上で接続することができる1つ又はそれ以上のモバイルハンドセットであって、それぞれのモバイルハンドセットは、デジタルコンテンツを利用するためのユニットと、利用している前記デジタルコンテンツの識別子を前記コンピュータに連絡するためのユニットと、を有している、モバイルハンドセットと、を備えており、
前記ネットワーキングユニットは、前記利用しているデジタルコンテンツが前記コンテンツ記憶部に記憶されているかどうかを判定するコンテンツ識別ユニットと、前記利用しているデジタルコンテンツに係るサービスを、当該利用しているデジタルコンテンツに基づく1つ又はそれ以上の異なったモバイルハンドセット向けに提供するネットワークユニットと、を更に備えており、
前記コンピュータは、或る地理的区域内にいる前記システムのユーザーを確定する地理ユニットを更に備えており、前記ネットワークユニットは、前記利用しているデジタルコンテンツに係るサービスを、前記地理的区域内の、当該利用しているデジタルコンテンツに基づく1つ又はそれ以上の異なったモバイルハンドセット向けに提供する、システム。」

第5 引用文献、引用発明等

1.引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開2007-166189号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「【0001】
本発明は、複数の携帯通信機間でメッセージの送受信を行うメッセージ送受信システム、及び当該メッセージ送受信システム内で使用される携帯通信機に関する。」

イ.「【0013】
・・・(中略)・・・
図1に示すように、メッセージ送受信システムは、複数の携帯電話機100A?100D、複数のGPS衛星200A?200B、移動体通信用の基地局300、及び基地局300とネットワークを介して接続されているDGPS(Differential GPS)サーバ400を含んで構成されている。」

ウ.「【0024】
・・・(中略)・・・
(2.データ)
ここで、DGPSサーバ400が記憶部403に記憶するリストについて、図4を参照しながら、説明する。
【0025】
図4に示すように、DGPSサーバ400は、記憶部403に、位置情報の算出を行った携帯電話機100について、各携帯電話機を識別するためのIPアドレスと算出した位置情報(緯度及び経度)をリスト化して記憶する。
DGPSサーバ400は、携帯電話機100からIPアドレスとともにGPS受信部105で測定した時間情報を受信するたびに、位置情報計算部402での算出結果とIPア
ドレスとを対応付けてリストを更新していく。
(3.動作)
次に、本実施形態のメッセージ送受信システム上における、携帯電話機100の動作について、図5?9を参照しながら説明する。
【0026】
ここでは、ユーザ0?3が、それぞれ携帯電話機100A?100Dを所持しているものとし、ユーザ0がユーザ2にメッセージを送信して話しかける例を挙げて説明する。
図5を参照すると、まず、ユーザ0が携帯電話機100Aの操作部108から所定の操作を行い、見知らぬユーザ間で位置情報を表示し合うモード(以下、「位置情報表示モード」と呼ぶ)に設定すると、携帯電話機100Aはこの操作を受付け、GPS受信部105で複数のGPS衛星200から電波を受信するとともに、受信に要した時間に関する時間情報と記憶部109に記憶している自機の識別情報とを含むリクエストをDGPSサーバ400に送信する(ステップS101)。これが、位置情報表示モードの開始通知である。
【0027】
DGPSサーバ400は、受信した時間情報に基づいて、位置情報計算部402により位置を算出し、算出した結果と携帯電話機100Aとを対応付けて記憶部403内のリストに登録する(ステップS102)。
ここで、ユーザ2の携帯電話機100Cについても同様に、事前に位置情報表示モードの開始通知をしていたものとする(ステップS100)。その他、携帯電話機100B及び100Dについても、特には図示しないが、位置情報表示モードの開始通知を完了しているものとする。
【0028】
ステップS102の結果、DGPSサーバ400の記憶部403内のリストは更新され、図4に示すように、ユーザ0?3それぞれのIPアドレス及び位置情報(緯度及び経度)が登録された状態となる。
続いて、DGPSサーバ400は、リスト内の、同じ基地局300に属する全ユーザ(ユーザ0?3)に対し、全ユーザのIPアドレス及び位置情報を送信する(ステップS103及び104)。このとき、記憶部403に記憶している地図上に位置をプロットして送信する。
【0029】
ユーザ0?3のIPアドレス及び位置情報を受信すると、携帯電話機100Aと100Cともに、IPアドレス及び位置情報とを対応付けて記憶部109に記憶するとともに、地図上にプロットされたユーザ0?3の位置を表示部107に表示する(ステップS105及び106)。このとき、例えば、図6に示すように、自機(ユーザ0)を示すアイコン500とともに、ユーザ1?3を示すアイコン501?503が表示される。
【0030】
ここで、ユーザ0がユーザ2にメッセージを送信して話しかけることを決意し、操作部108を操作してユーザ2を選択すると(ステップS107)、図7に示すように、携帯電話機100Aは、ユーザ2へメッセージを送信することの確認画面を表示部107に表示する。
ユーザ0が図7に示す確認画面から、「はい」601を選択すると、携帯電話機100Aはメッセージの作成を受付け、ユーザが操作部108を介して入力した文字をメッセージとして記憶部109に一時的に記憶することで、メッセージの作成を行う(ステップS108)。ユーザによる文字入力が完了すると、この携帯電話機100Aは、図8に示すように、入力されたメッセージを表示部107に表示する。
【0031】
なお、ユーザ0が図8に示す画面から「いいえ」602を選択すると、メッセージの作成はキャンセルとなる。
ユーザ0が図7に示す確認画面から「送信」603を選択すると、携帯電話機100A
は、記憶部109から、入力されたメッセージと携帯電話機100CのIPアドレスを読み出し、このIPアドレスを指定して携帯電話機100Cにメッセージを送信する(ステップS109)。」

前記ア.?ウ.によれば、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「複数の携帯通信機間でメッセージの送受信を行うメッセージ送受信システムにおいて(【0001】)、
複数の携帯電話機100A?100D、複数のGPS衛星200A?200B、移動体通信用の基地局300、及び基地局300とネットワークを介して接続されているDGPS(Differential GPS)サーバ400を含んで構成され(【0013】)、
ユーザ0が携帯電話機100Aを操作して、見知らぬユーザ間で位置情報を表示し合う位置情報表示モードに設定すると、携帯電話機100Aは、GPS受信部105で複数のGPS衛星200から電波を受信するとともに、受信に要した時間に関する時間情報と記憶部109に記憶している自機のIPアドレスとを含むリクエストをDGPSサーバ400に送信し、これが位置情報表示モードの開始通知となり(ステップS101、【0026】【0025】)、
ユーザ1?3の携帯電話機についても同様に、事前に位置情報表示モードの開始通知を完了しており(ステップS100、【0027】)、
DGPSサーバ400は、受信した時間情報に基づいて、位置情報計算部402により位置を算出し、算出した結果と携帯電話機100Aとを対応付けて記憶部403内のリストに登録し(ステップS102、【0027】)、その結果、ユーザ0?3それぞれのIPアドレス及び位置情報が登録され(【0028】)、
DGPSサーバ400は、リスト内の、同じ基地局300に属する全ユーザ(ユーザ0?3)に対し、全ユーザのIPアドレス及び位置情報を送信し、このとき、記憶部403に記憶している地図上に位置をプロットして送信し(ステップS103及び104、【0028】)、
携帯電話機は、ユーザ0?3のIPアドレス及び位置情報を受信すると、IPアドレス及び位置情報とを対応付けて記憶部109に記憶するとともに、地図上にプロットされたユーザ0?3の位置を表示部107に表示し(ステップS105及び106、【0029】)。
ユーザ0が操作部108を操作してユーザ2を選択すると、携帯電話機100Aは、ユーザ2へメッセージを送信することの確認画面を表示部107に表示し(ステップS107、【0030】)
ユーザ0が確認画面から「はい」601を選択すると、携帯電話機100Aはメッセージの作成を受付け、ユーザが操作部108を介して入力した文字をメッセージとして記憶部109に一時的に記憶することで、メッセージの作成を行い(ステップS108、【0030】)、ユーザによる文字入力が完了すると、入力されたメッセージを表示部107に表示し、
ユーザ0が確認画面から「送信」603を選択すると、携帯電話機100Aは、記憶部109から、入力されたメッセージと携帯電話機100CのIPアドレスを読み出し、このIPアドレスを指定して携帯電話機100Cにメッセージを送信する(ステップS109、【0031】)、メッセージ送受信システム。」

2.引用文献3について

原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(国際公開第2009/018562号)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。

ア.「The present invention provides a system for distributing audio files. As part of this system, a new type of digital file is presented, which is hereinafter referred to as an SB3 file, that is backward compatible with all current MP3 players, and uses the same data compression and header format as standard MP3 files. 」(2ページ16-20行)
(当審訳: 本発明は、オーディオファイルを配信するためのシステムを提供する。このシステムの一部として、全ての現在のMP3プレーヤと下位互換性があり、標準的MP3ファイルと同じデータ圧縮及びヘッダフォーマットを使用する以下SB3ファイルと呼ぶ新しいタイプのデジタルファイルを呈示する。)

イ.「The system 700 may include one or more content providers 702, one or more physical retailers 704, a distributed computer network 706 and a master server. ・・・(中略)・・・ In addition to the physical retailers, the system may also include one or more online retailers 720.
Finally the system includes several users such as Alice, Bob and Charlie. Each user may have one or more desktop PCs 722, one or more portable devices 724 and one or more cellular phones 726. Each of these devices are networked and incorporate a player that receive digital audio file such as an SB3 and selectively play back its audio data as a sound program. 」(20ページ6?18行)
(当審訳:
システム700は、1つ又はそれよりも多くのコンテンツプロバイダ702、1つ又はそれよりも多くの物理的小売業者704、分散コンピュータネットワーク706、及びマスターサーバを含むことができる。・・・(中略)・・・物理的小売業者に加えて、システムは、1つ又はそれよりも多くのオンライン小売業者720を含むことができる。
最後に、システムは、アリス、ボブ、及びチャーリーのような幾人かのユーザを含む。各ユーザは、1つ又はそれよりも多くのデスクトップPC722、1つ又はそれよりも多くの携帯式デバイス724、及び1つ又はそれよりも多くの携帯電話726を有することができる。これらのデバイスの各々は、ネットワーク化されており、SB3のようなデジタルオーディオファイルを受け取るプレーヤを組込み、音声プログラムの通りにそのオーディオデータを選択的に再生する。)

ウ.「One value-added service that many consumers desire is the ability to share their content with their friends. Suppose that Alice has just purchased a song, and she wants to share it with her friend, Bob. As described above, one way she can do this is by sending the corresponding SB3 file. Another method is presented here. According to this embodiment, inside the secure portion of the header of Alice's SB3 file, there are several web links that are securely sent to Bob's compliant media player. Once such link could point to a centralized server 716 (Fig. 7) that hosts a stream of the song Alice just downloaded. Alternatively, the centralized share can point to a link to access another site that provides the respective stream. Alice can send Bob this link by selecting an appropriate button such as 377 on Fig. 3A, which would enable him to stream a version of Alice's song (a "Shared Stream" link) from the centralized server 716 to his compliant media player. Another link (a "Purchase Song" link) points towards an online retailer 720 that Bob would use if he wanted to purchase the song for himself. This process is now described in conjunction with Figure 5. Bob's compliant media player could be within any of his networked devices, including his cell phone 726, an application on one of his standalone PCs 722, or it could be a widget embedded application within his social network profile web page.
As shown in Fig. 5, Alice receives an SB3 file 130A which has been authenticated as discussed above. Embedded in one of the fields of the header, for example in the encrypted header, there is a VACS field 562 constituting value added content and services in the form of one or more links, such as a share link, a purchase link and a set of rules determining the usage of these links. This field is extracted in step 502. Information is also presented to Alice to indicate to her that she can share an audio file as either a streamed digital file or as a purchase opportunity. For example, a button 374 may appear on the player screen (Fig. 3A) with the legend SHARE to indicate this available option to Alice.
When Alice selects or activates button 374 (step 503), the data field 562 is transmitted to Bob's player as part of an e-mail, IM, blog, widget or other similar electronic means. The field is received in step 504.
Once the field 562 is received, Bob is provided with one or more options, for example, on the screen of his player (not shown). One option is for Bob to purchase the song just heard or purchased by Alice. If Bob selects this option (step 508), his player, or other device contacts the website of the retailer identified by the information from Alice as a purchase link 562A. The link 562A may be a direct or an indirect link. Bob's device then performs the purchase from retailer 704 or 720 and a new file SB3 is sent to Bob. Bob can now play the purchased file anytime on a compliant or legacy player.」(30ページ8行?32ページ2行)
(当審訳:
多くの消費者が望む1つの付加価値サービスは、自分のコンテンツを友人と共有する機能である。アリスが曲を購入し、この曲を彼女の友人のボブと共有したいとする。上述のように、アリスがこれを実行することができる1つの方法は、対応するSB3ファイルを送信することである。別の方法をここで呈示する。この実施形態によると、アリスのSB3ファイルのヘッダのセキュア部分の内側に、ボブの準拠メディアプレーヤにセキュアに送信されるいくつかのウェブリンクが存在する。以前は、このようなリンクは、アリスがダウンロードしたばかりの曲のストリームをホストする集中化サーバ716(図7)に向けることができた。代替的に、集中化した共有は、それぞれのストリームを提供する別のサイトにアクセスするためのリンクに向けることができる。アリスは、図3Aの377のような適切なボタンを選択することによってこのリンクをボブに送信することができ、このリンクにより、ボブは、集中化サーバ716からボブの準拠メディアプレーヤにアリスの曲のバージョン(「共有ストリーム」リンク)をストリームすることができるようなる。別のリンク(「曲購入」リンク)は、ボブが自分のために曲を購入したい場合に使用するオンライン小売業者720に関する。この処理を図5と共に説明する。ボブの準拠メディアプレーヤは、ボブの携帯電話726、ボブの独立型PC722の1つにおけるアプリケーションを含むボブのネットワーキングデバイスのいずれかに存在することができ、又はボブのソーシャルネットワークプロフィールウェブページ内のウィジェット埋め込みアプリケーションとすることができる。
図5に示すように、アリスは、上述のように本物であるSBファイル130Aを受け取る。ヘッダのフィールドの1つ、例えば、暗号化ヘッダに埋め込まれて、共有リンク、購入リンク、及びこれらのリンクの使用を判断する1組の規則のような1つ又はそれよりも多くのリンクの形式で付加価値コンテンツ及びサービスを構成するVACSフィールド562が存在する。このフィールドは、段階502で抽出される。アリスがストリームドデジタルファイル又は購入機会のいずれかとしてオーディオファイルを共有することができることをアリスに示すための情報がアリスに示される。例えば、アリスにこの利用可能なオプションを指示するために、ボタン374が、タイトル「共有(SHARE)」と共にプレーヤ画面(図3A)上に表示される。
アリスがボタン374を選択又はアクティベートすると(段階503)、データフィールド562は、電子メール、IM、ブログ、ウィジェット、又は他の類似の電子手段の一部としてボブのプレーヤに送信される。フィールドは、段階504で受信される。
フィールド562を受信した状態で、ボブには、1つ又はそれよりも多くのオプションが例えばボブのプレーヤ画面(図示せず)上に提供される。1つのオプションは、ボブがアリスによって試聴又は購入された曲を購入することができることである。ボブがこのオプションを選択した場合(段階508)、ボブのプレーヤ又は他のデバイスが、購入リンク562Aとしてアリスからの情報によって識別された小売業者のウェブサイトにコンタクトする。リンク562Aは、直接又は間接リンクとすることができる。次に、ボブのデバイスは、小売業者704又は720からの購入を実行し、新しいファイルSB3がボブに送信される。ボブは、ここで準拠又はレガシープレーヤにおいていつでも購入したファイルを再生することができる。)

前記ア.?ウ.によれば、引用文献3には次の事項が記載されている。

<引用文献3の記載事項>
「アリスが曲を購入し、この曲を彼女の友人のボブと共有する方法において、
システム700は、物理的小売業者704、オンライン小売業者720、アリス、ボブ、のようなユーザを含み、各ユーザの携帯電話は、ネットワーク化されており、SB3のようなデジタルオーディオファイルを受け取るプレーヤを組込み、そのオーディオデータを選択的に再生し、
SB3ファイルは、全ての現在のMP3プレーヤと下位互換性があり、標準的MP3ファイルと同じデータ圧縮及びヘッダフォーマットを使用するデジタルファイルであり、
アリスは、SBファイル130Aを受け取り、
当該SBファイルのヘッダから、購入リンクを構成するデータフィールド562を抽出し(段階502)、
アリスがボタン374を選択又はアクティベートすると(段階503)、データフィールド562を、電子メール、IM、ブログ、ウィジェット、又は他の類似の電子手段の一部として送信し、
ボブのプレーヤは、当該データフィールドを受信し(段階504)、
データフィールド562を受信した状態で、ボブにはオプションがボブのプレーヤ画面上に提供され、1つのオプションは、ボブがアリスによって試聴又は購入された曲を購入することができることであり、
ボブがこのオプションを選択した場合(段階508)、ボブのプレーヤは、購入リンク562Aとして識別された小売業者のウェブサイトにコンタクトし、次に、ボブのプレーヤは、小売業者704又は720からの購入を実行し、新しいファイルSB3がボブに送信され、ボブはプレーヤにおいて購入したファイルを再生する、方法。」

第6 対比・判断

1.本願発明3について

(1)対比

本願発明3と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

・引用発明の「DGPS(Differential GPS)サーバ400」は、本願発明3の「コンピュータ」に相当する。

・引用発明の、ネットワークを介してDGPSサーバ400と接続された複数の携帯電話機100A?100Dは、本願発明3の「前記コンピュータにリンク上で接続することができる1つ又はそれ以上のモバイルハンドセット」に相当する。

・引用発明のDGPSサーバ400は、携帯電話機のIPアドレス及び位置情報を登録し、同じ基地局300に属する携帯電話機に、全ユーザのIPアドレス及び位置情報を送信する手段を備えており、この手段は、基地局周辺の地理的区域内にいるユーザーを確定する地理ユニットといえる。
したがって、引用発明のDGPSサーバ400が当該手段を備えることは、本願発明3の「前記コンピュータは、或る地理的区域内にいる前記システムのユーザーを確定する地理ユニットを更に備えており」に相当する。

したがって、本願発明3と引用発明との一致点・相違点は次の通りである。

<一致点>
「コンピュータと、
前記コンピュータにリンク上で接続することができる1つ又はそれ以上のモバイルハンドセットを備えており、
前記コンピュータは、或る地理的区域内にいる前記システムのユーザーを確定する地理ユニットを備えている、システム。」

<相違点1>
コンピュータが、本願発明3では「ネットワーキングユニットと、1件又はそれ以上のデジタルコンテンツを記憶しているコンテンツ記憶部と、システムのそれぞれのユーザー毎の前記デジタルコンテンツのライブラリ」を有しているのに対し、引用発明では、これらの構成を有していない点。

<相違点2>
モバイルハンドセットが、本願発明3では「デジタルコンテンツを利用するためのユニットと、利用している前記デジタルコンテンツの識別子を前記コンピュータに連絡するためのユニット」を有しているのに対し、引用発明では、これらのユニットを有していない点。

<相違点3>
本願発明3は「前記ネットワーキングユニットは、前記利用しているデジタルコンテンツが前記コンテンツ記憶部に記憶されているかどうかを判定するコンテンツ識別ユニットと、前記利用しているデジタルコンテンツに係るサービスを、当該利用しているデジタルコンテンツに基づく1つ又はそれ以上の異なったモバイルハンドセット向けに提供するネットワークユニットと、を更に備えており」に係る構成を有するのに対し、引用発明は当該ネットワーキングユニットを有しない点。

<相違点4>
本願発明3は「前記ネットワークユニットは、前記利用しているデジタルコンテンツに係るサービスを、前記地理的区域内の、当該利用しているデジタルコンテンツに基づく1つ又はそれ以上の異なったモバイルハンドセット向けに提供する」に係る構成を有するのに対し、引用発明は、当該ネットワークユニットを有しない点。

(2)判断

次に、上記相違点1?4について検討する。
引用文献3に記載された携帯電話は、デジタルコンテンツを利用するプレーヤを有するものの、相違点2に係る「利用している前記デジタルコンテンツの識別子を前記コンピュータに連絡するためのユニット」を有していない。
また、引用文献3には、デジタルオーディオファイルを販売してボブのプレーヤに送る小売業者のウェブサイトが記載されているものの、当該ウェブサイトのコンピュータが、相違点1に係る「システムのそれぞれのユーザー毎の前記デジタルコンテンツのライブラリ」や、相違点3に係る「前記利用しているデジタルコンテンツが前記コンテンツ記憶部に記憶されているかどうかを判定するコンテンツ識別ユニット」、相違点4に係る「前記利用しているデジタルコンテンツに係るサービスを、前記地理的区域内の、当該利用しているデジタルコンテンツに基づく1つ又はそれ以上の異なったモバイルハンドセット向けに提供する」ネットワークユニットを有することは記載されていない。
したがって、本願発明3は、当業者であっても引用発明、引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明8、9について
本願発明8、9も、本願発明3の「利用している前記デジタルコンテンツの識別子を前記コンピュータに連絡するためのユニット」、「システムのそれぞれのユーザー毎の前記デジタルコンテンツのライブラリ」、「前記利用しているデジタルコンテンツが前記コンテンツ記憶部に記憶されているかどうかを判定するコンテンツ識別ユニット」、「前記利用しているデジタルコンテンツに係るサービスを、前記地理的区域内の、当該利用しているデジタルコンテンツに基づく1つ又はそれ以上の異なったモバイルハンドセット向けに提供する」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明3と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について

審判請求時の補正により、本願発明3、8、9は「利用している前記デジタルコンテンツの識別子を前記コンピュータに連絡するためのユニット」、「システムのそれぞれのユーザー毎の前記デジタルコンテンツのライブラリ」、「前記利用しているデジタルコンテンツが前記コンテンツ記憶部に記憶されているかどうかを判定するコンテンツ識別ユニット」、「前記利用しているデジタルコンテンツに係るサービスを、前記地理的区域内の、当該利用しているデジタルコンテンツに基づく1つ又はそれ以上の異なったモバイルハンドセット向けに提供する」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献2,3に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明1、2、4-7、10-16は、拒絶の理由を有さないとされたものである。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-15 
出願番号 特願2015-2927(P2015-2927)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小原 正信  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 金子 幸一
相崎 裕恒
発明の名称 コンテンツベースのソーシャルネットワーキングシステム及び方法  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 木内 敬二  
代理人 崔 允辰  

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