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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E04F
管理番号 1335386
審判番号 不服2016-19611  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-28 
確定日 2018-01-09 
事件の表示 特願2012- 32025「建築板」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月29日出願公開、特開2013-167124、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月16日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 6月15日:拒絶理由通知(起案日)
平成27年 8月 3日:意見書、手続補正書
平成28年 2月 9日:拒絶理由通知(最後)(起案日)
平成28年 4月18日:意見書、手続補正書
平成28年 9月28日:補正の却下の決定(起案日。平成28年4月18日付け手続補正の却下。)
平成28年 9月28日:拒絶査定(起案日)
平成28年12月28日:審判請求書、手続補正書
平成29年 8月10日:上申書


第2 平成28年9月28日付けの補正の却下の決定及び原査定の概要
1 平成28年9月28日付けの補正の却下の決定の概要は以下のとおりである。
平成28年4月18日付けの補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるが、当該補正後の本願請求項1、2に係る発明は、下記引用文献1ないし5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、独立特許要件を満たさないから、平成28年4月18日付けの補正は却下すべきものである。

引用文献等一覧
1.特開平10-278497号公報
2.特開平3-241160号公報
3.特開2010-144384号公報
4.特開平10-159308号公報
5.特開2002-21290号公報

2 原査定(平成28年9月28日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。
本願の請求項1、2に係る発明は、上記引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第3 本願発明
本願請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成28年12月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
基板の表面に印刷による着色部を形成した建築板であって、
前記基板の表面に、当該基板の長手方向に並ぶように複数の凸柄が設けられ、これら凸柄の前記基板の短手方向における幅は、互いに略同一であり、
前記着色部は前記基板の長手方向と略平行に長い帯状に形成され、
前記着色部は明度、彩度、色相の群から選ばれる少なくとも一つが異なる複数種からなる色で着色されて形成されており、
前記着色部の前記色は、前記基板の長手方向に並ぶ前記複数の凸柄の表面において、当該基板の長手方向の全長に亙って印刷されており、
前記複数の凸柄の各々の高さはばらついて形成され、
前記凸柄の各々の表面は凹凸面により構成されるものであり、
前記建築板は、前記基板の短手方向に並ぶ別の建築板と突き合わせ可能に構成されており、
前記複数の凸柄は、前記基板の長手方向の全長にわたって設けられ、
前記基板の長手方向にわたって設けられた前記複数の凸柄は、前記基板の短手方向に複数並設されており、
前記基板の短手方向に並設された複数の凸柄の間には、前記基板の長手方向の全長にわたる凹溝が形成されていることを特徴とする建築板。」

「【請求項2】
前記基板の表面に凸柄が形成され、この凸柄の幅寸法とこの凸柄の表面に形成される着色部の幅寸法とが略同一に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建築板。」


第4 引用例の記載事項
1 原査定の拒絶の理由に引用例1として引用された特開平10-278497号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は審決で付した。)。

(1) 「【請求項1】化粧板基材上に下地塗装層とジェットインキ塗装層と転写絵柄層と表面保護層とを順次積層した化粧板であって、前記ジェットインキ塗装層はインキジェット方式により下地塗装層上の任意の部分に形成されていることを特徴とする化粧板。
【請求項2】凹部と平坦部とを有する化粧板基材上の全面に下地塗装層が形成されてあり、該下地塗装層における平坦部の下地塗装層上にはインキジェット方式により任意の箇所にジェットインキ塗装層が形成されてあり、平坦部であってインキジェットインキ塗装層上とインキジェット塗装層の形成されてない下地塗装層上には転写絵柄層が設けられてあり、該転写絵柄層上及び凹部の下地塗装層上との全面に表面保護層を形成されていることを特徴とする化粧板。
【請求項3】化粧板基材上の全面に下地塗装層を形成し、該下地塗装層上の任意の箇所にインキジェット方式によりジェットインキ塗装層を形成し、次いで全面に転写方式により転写絵柄層を形成し、しかる後全面に表面保護層を形成することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項4】凹部と平坦部とを有する化粧板基材上の全面に下地塗装層を形成し、次いで平坦部の下地塗装層上の任意の箇所にインキジェット方式によりジェットインキ塗装層を形成し、次いで平坦部上に転写方式により転写絵柄層を形成し、しかる後全面に表面保護層を形成したことを特徴とする化粧板の製造方法。」

(2) 「【0001】本発明は、住宅の内装材及び外装材として用いる意匠性に優れた、特に表面に部分的に色調に変化を持たせたものに化粧板及びその製造方法に関する。」

(3) 「【0009】本発明を図を用いて説明する。図1は凹部7を有する化粧板1の断面図である。この化粧板1は、凹部7を有する化粧板基材2の上に、下地塗装層3、インキジェット方式によるジェットインキ塗装層4、転写方式による転写シート10から転写された転写絵柄層5、表面保護層6が順次積層されたものである。図2に示すように、転写シート10は、基体フィルム11の表面に転写絵柄層5としての剥離層12、絵柄層13を順次設けた構成となっている。図3に示すように、凹部7を有する化粧板基材2の上に、下地塗装層を設け、この下地塗装層の任意の部分にインキジェット方式によりジェットインキ塗装層4を形成されている。図4に示すように、転写絵柄層5は転写シート10から平坦部に転写して設けられる。」

(4) 「【0014】インキジェット方式は、インキジェット塗装機20による塗装方式であり、本発明では、図3に示すように複数のノズル21を備えられたものを使用した。このインキジェット塗装機は、コンベア上を搬送されてきた化粧板基材2が、インキジェット塗装機20の下を通過するときに、予めコンピュータにプログラムしたタイミングで左右にノズルを動かしながら任意の箇所だけ塗装するものであり、図3に示すようなレンガ状の凹部7を有する化粧板基材2の場合、その任意の平坦部8だけを塗装するものである。本発明では、下地塗装層3上にインキジェット方式に用いるジェットインキ塗装層4を形成するためジェットインキは、アクリル樹脂系等のワニスと着色材を混合したものであり、目詰まりなどを配慮したものである。」

(5) 「【0017】【実施例】以下実施例により本発明を図を用いて詳細に説明する。基体シート11としての厚さ80μmのポリ塩化ビニル樹脂フィルムの表面に、剥離層12としてポリビニルブチラール樹脂層を設け、続いて絵柄層13として、塩酢ビ樹脂をバインダーとするインキを用いてグラビア印刷法によりレンガ調の絵柄を印刷し転写絵柄層5を有する転写シート10を作成した。化粧板基材2としてケイ酸カルシウム板を使用し、表面を削って図3に示すような凹部を作成し長方形の平坦部8を有する化粧板基材2とした。この平坦部8の形状は標準的なレンガの大きさとした。除塵処理した後、下地塗装層3をアクリルウレタン樹脂系塗料をエアレススプレーにて全面に塗布、乾燥して作成した。続いて、図3に示すように、インキジェット塗装機20で、化粧板基材2の図に示す平坦部8に、ジェットインキとしてアクリル樹脂系インキを塗装してジェットインキ塗装層4を設けた。さらに、図4に示すように、転写シート10の転写絵柄層5面が化粧板基材2の平坦部8に接するように載せ、140℃に加熱された表面硬度が40゜のシリコンで形成された転写ロール14を用いて、前記化粧板基材2の平坦部8にのみ転写絵柄層5を転写できた。・・・転写シート10の基体フィルム11を剥離後、化粧板基材2全面に表面保護層6としてアクリルウレタン樹脂系のトップコートをエアレススプレーにて塗装して設けた。・・・この化粧板1は、凹部7がレンガを並べた目地を模し、平坦部8にレンガ調の精巧な転写絵柄層5を有し、転写絵柄層5を通して下地塗装層3の下地色とジェットインキ塗装層4の色がそれぞれ見え、色調の変化に富んだ極めて意匠性に優れたものであった。
【0018】【発明の効果】本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。請求項1によれば、ジェットインキ塗装層をインキジェット方式により任意の箇所に形成することができ、転写絵柄層5を通して下地塗装層の下地色とジェットインキ塗装層の色がそれぞれ見え、従来にない色調の変化に富んだ化粧板を作成できる。請求項2によれば、表面に凹部を設けることにより、更に意匠性を高めることができる。請求項3、4によれば、上記効果を有する化粧板の製造方法を提供できる。従って本発明は、 内装材及び外装材に用いる意匠性に優れた化粧板として、実用上の効果を発揮する。」

(6) 「【図面の簡単な説明】・・・
【図3】本発明の実施例を示す、インキジェット方式により塗装している状態の斜視図である。

(7) 図3は次のものである。



(8) 図3は「化粧板基材2」の「平坦部8」にインキジェット方式により塗装している状態を示すための略図であるが、上記(3)ないし(6)の記載を参酌すれば、図3から以下のことが看て取れる。
「化粧板基材2」は、同図左下の一方向の矢印(「化粧板基材2」が「コンベア上を搬送されて」「インキジェット塗装機20の下を通過」していく方向を示している矢印。)方向に長く(以下「長手方向」という。)、他の方向に短い(以下「短手方向」という。)。
「凹部7」は、「化粧板基材2」の表面に、「化粧板基材2」の長手方向及び短手方向に平行に略同一間隔で複数、「化粧板基材2」の長手方向及び短手方向の全長にわたって形成されている。そして「凹部7」により、標準的なレンガの大きさの形状である長方形の「平坦部8」が、「化粧板基材2」の表面に、「化粧板基材2」の長手方向及び短手方向の全長にわたって並ぶように設けられ、これら「平坦部8」の「化粧板基材2」の長手方向及び短手方向それぞれにおける幅は互いに略同一である。

(9) 上記(1)ないし(8)からみて、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ケイ酸カルシウム板の化粧板基材2上に下地塗装層3とインキジェット方式によるジェットインキ塗装層4と転写絵柄層5と表面保護層6とを順次積層した化粧板1であって、
ジェットインキ塗装層4を形成するためのジェットインキは着色材を混合したものであり、
化粧板基材2の表面を削って、化粧板基材2の長手方向及び短手方向に平行に略同一間隔で複数、長手方向及び短手方向の全長にわたる凹部7が形成され、凹部7により、標準的なレンガの大きさの形状である長方形の平坦部8が、化粧板基材2の長手方向及び短手方向の全長にわたって並ぶように複数形成され、これら長方形の平坦部8の化粧板基材2の長手方向及び短手方向における幅は、互いに略同一であり、
化粧板基材2上の全面に下地塗装層3が形成され、該下地塗装層3における平坦部8の下地塗装層3上にはインキジェット方式により任意の平坦部8にジェットインキ塗装層4が形成され、平坦部8であってインキジェットインキ塗装層4上とインキジェット塗装層4の形成されてない下地塗装層3上に転写絵柄層5が設けられ、転写絵柄層5上及び凹部7の下地塗装層4上の全面に表面保護層6が形成される、
住宅の内装材及び外装材として用いる、化粧板1。」

2 原査定の拒絶の理由に引用例2として引用された特開平3-241160号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(1) 「2.特許請求の範囲 (1)立体駐車場外壁を複数枚の規格ボードで形成するに際し、街の環境色調査に基づき、その基調色をホワイト系、グレー系、クリーム系、ブラウン系の4つに大別し、それから街並に調和する標準色を選定し、更に同系色相の専用色を選定し、その各選定色を前記ボードの表面色として、各表面色のボードを適宜に配置して成る立体駐車場外壁カラーコーディネートシステム。」(1頁左欄4から12行)」

(2) 「〔産業上の利用分野〕この発明は、立体駐車場外壁のカラーコーデイネートシステム、詳しくは、街中における立体駐車場外壁をなすボードの色合せ方法に関するものである。」(1頁左欄14から18行)

(3) 「「課題を解決するための手段〕上記課題を解決するために、この発明にあっては、立体駐車場外壁を複数枚の規格ボードで形成するに際し、街の環境色調査に基づき、その基調色をホワイト系、グレー系、クリーム系、ブラウン系の4つに大別し、それから街並に調和する標準色を選定し、更に同系色相の専用色を選定し、その各選定色を前記ボードの表面色として、各表面色のボードを適宜に配置して戒る構成を採用したのである。」(2頁左上欄3から12行)

(4) 「〔実施例]まず、街の環境色調査を行い、その基調色を、ホワイト系、グレー系、クリーム系、ブラウン系の4つに大別するとともに、将来の環境色彩の流れを予見し、それから街並に調和する標準色を選定し、更に同系色相の専用色を選定して、A:ライトグレー、B:ライトブルーイッシュグレイ、C:ペールデイツシュイエロー、D:ベージュの4色を採用した。
・・・
ボードaとしては、本出願人が商品化したユニオンボード(商品名)を採用した。このボードaは、木毛セメント板を芯材とし、その片面又は両面に石綿スレート板をセメントペーストで圧着硬化酸型したサンドインチパネルであり・・・前記石綿スレート板表面を適宜に前記色に合わせる。
この4色のボードaによって立体駐車場の外壁面を構築するが、下記の点に基づき、その色合い等のコーデイネートを考える。
・・・まず、第1図に示すモノクロ(MONOCHROME)、第2図に示す2トーン(TWO-TONE)、第3図に示すストライブ(STRIPE)を考える。この3タイプにおいて、上記A、B、C,Dの各色のボードaでもって種々のパターンを作る。
例えば、第1図のもの(MONOCHROME)は、ホテル、大型店舗、オフィスビル等の専用駐車場として、色調に一体感をもたせた演出に、
第2図のもの(TWO-TONE)は、ファッションビル等の専用駐車場として美しさを表現するオシャレな演出に、
第3図のもの(STRIPE)は、見通しのよい立地で、立体駐車場らしさを効果的に表現する演出に、それぞれ適している。
さらに、色合わせパターンとしては、・・・第5図(a)?(d)に示すもの等の種々のものが考えられる。
なお、図中、濃淡がボードaの色の相違を示し、同じ濃淡でも同系色AorB、CorDを採用できる。」(2頁左上欄13行から9頁左上欄3行)

(5) 第5図(c)は次のものである。




(6) 上記(4)に摘記した「実施例」についての記載を参酌すると、第5図(c)において、立体駐車場の外壁面は図面の上下方向に長く、その長手方向の全長にわたって、濃色のボードaが長手方向に並ぶように設けられ、長手方向と略平行に長い帯状の濃色領域が複数形成されていることが看て取れる。また、淡色のボードaについても同様に、長手方向の全長にわたって、長手方向に並ぶように設けられ、長手方向と略平行に長い帯状の淡色領域が複数形成されていることが看て取れる。

3 原査定の拒絶の理由に引用例3として引用された特開2010-144384号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。

(1) 「【特許請求の範囲】【請求項1】 木粉と樹脂とを含む押出材を押出成形してなる同一断面の複数の長尺材を、これら長尺材の長さ方向と直交する方向に並設するようにして支持材に取り付けてなる面材であって、
前記複数の長尺材の彩色は、全て同一の色相に設定されるとともに、所定の本数ずつ、段階的に異なる明度に設定されており、
これら複数の長尺材は、同一の明度に設定された長尺材同士が、互いに隣り合わないように配置されていることを特徴とする面材。」

(2) 「【技術分野】【0001】本発明は、木粉と樹脂とを含む押出材を押出成形してなる同一断面の複数の長尺材を、これら長尺材の長さ方向と直交する方向に並設するようにして支持材に取り付けてなる面材と、この面材の設置方法および設置構造に関する。」

(3) 「【発明を実施するための最良の形態】【0018】 以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】本実施の形態の面材10は、図1?図5に示すように、木粉と樹脂とを含む押出材1を押出成形してなる同一断面の複数の長尺材10a,10b,10c,10dを、これら長尺材10a,10b,10c,10dの長さ方向と直交する方向に並設するようにして支持材12に取り付けてなるものである。
そして、前記複数の長尺材10a,10b,10c,10dの彩色は、全て同一の色相に設定されるとともに、所定の本数ずつ、段階的に異なる明度に設定されており、これら複数の長尺材10a,10b,10c,10dは、同一の明度に設定された長尺材10a,10b,10c,10d同士が、互いに隣り合わないように配置されている。
・・・
【0022】また、前記複数の長尺材10a,10b,10c,10dは、上述のように、彩色が、全て同一の色相に設定されるとともに、所定の本数ずつ、段階的に異なる明度に設定されており、本実施の形態においては、明度の差によって区別される3?5種類のものが用いられている。
これによって、これら複数の長尺材10a,10b,10c,10dを、適度にばらけさせた状態で並設することができる。
【0023】なお、本実施の形態では、以下のように明度の差を4種類とする。なお、明度0に近づくほど明るく、明度3に近づくほど暗く見えるように設定されている。
明度0=長尺材10a
明度1=長尺材10b
明度2=長尺材10c
明度3=長尺材10d
本実施の形態においては、前記面材10を構成する複数の長尺材10a,10b,10c,10dの本数を10本とし、図1に示すようなパターンで並設するものとする。
すなわち、「明度1・明度3・明度1・明度3・明度0・明度1・明度3・明度2・明度0・明度2」と並設されている。このような並設パターンによれば、極端に単純な並設パターンになることで、単調な印象を与えることを確実に防ぐことができる。また、極端に複雑な並設パターンになることで、製造や建築現場での作業が煩雑化することを確実に防ぐことができる。
・・・
【0039】このような面材10の設置構造であれば、目隠し壁10A,10Bである面材10を遠くから見た場合であっても、この面材10に単調な印象を与えることがないので、この面材10が設置される凹部13,15の付近や、延いては建物自体の外観性を向上させることができる。」

(4) 「【0059】・・・ また、このように単調な印象を与えることを防ぐことができるので、例えば様々な色の着色剤を用いて木目柄を際立たせたり、新たな押出成形技術の開発を行うなどの長尺材10a?10d,20a?20d,30a?30d,40a?40dの製造に係るコストの上昇を抑えることが可能となる。」

(5) 図1は次のものである。



(6) 図4は次のものである。



(6) 図5は次のものである。



(7) 上記(4)に摘記した「【発明を実施するための最良の形態】」についての記載を参酌すると、図1、4、5において、明度の異なる各長尺材の長手となる方向及びその長手方向の長さは、それら長尺材により構成される各面材10の長手となる方向及びその長手方向の長さと一致しており、各面材において、明度の異なる各長尺材により、面材の長手方向と略平行に長い帯状に各明度の領域が形成されていることが看て取れる。

4 補正の却下の決定において引用例4として引用された特開平10-159308号公報(以下「引用例4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1) 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は内装材および外装材として使用することのできる表面に複数の凸状ブロック体が配列形成された建築用板に関する。」

(2) 「【0009】図3は図2の建築用板1に着色塗膜層を形成した状態を示すものである。3段階に異なる高さの凸部2の表面に、3種類の着色塗膜層3a,3b,3cが1層のみまたは積層して形成されている。図3は着色塗膜層の積層状態を明確に説明するため、その他の塗装塗膜、例えば下地塗膜あるいは上塗り塗膜等は省略して示している。」

(3) 「【0015】同一高さの凸部2の表面に形成する着色塗膜層3の層数を同一となるように形成することにより、凸部2の高さの相違による立体感に加え、その凸部の表面から露出する着色塗膜層の色調が同期することにより、凸部3の立体感がより強調されるものとなる。」

(4) 「【0020】図5は本発明の建築用板の凸部断面図を示すものであるが、凸部表面がタイルあるいはれんがのように平滑なものだけでなく、凸部表面に凹部を形成したものも使用できる。このように凸部表面に凹部を形成することにより、石材からなる1個1個の異なるブロック体を配列固定した施工化粧面に類似したものと成る。
【0021】また、このような凹部を形成した凸部の表面に形成する着色塗膜層として、その層数が凸部表面の層数と凹部の層数が異なるように形成することができる。このように着色塗膜層の層数を異ならせることにより、凹部形成による石目調凹凸面に加え色調の変化が加わりより石材ブロックを配列固定した施工化粧面に類似したものとなる。」

(5) 「【0025】【効果】本発明の建築用板は、れんが積み状の凸部表面に形成される着色塗膜層の層数が異なることにより、凸部表面に露出する着色塗膜層が異なることとなり、従来の1個1個の異なる表面意匠を有するブロック体を配列固定した施工化粧面と類似したものが得られる。」

5 補正の却下の決定において引用例5として引用された特開2002-21290号公報(以下「引用例5」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1) 「【0001】本発明は、建築用板に係り、特に縦横に延在する目地状の凹条によってタイル調の凸部が区画されている建築用板に関するものである。」

(2) 「【0013】この建築用板の前面には、縦横に延在する目地部2によって多数のタイル部1が区画形成されている。各タイル部1の前面は非平坦であり、自然石又はその割石の肌様のランダムな凹凸面となっている。隣接するタイル部1の高さ(建築用板の裏面からの距離)は異なっている。」

(3) 「【0018】この建築用板は、タイル部1の前面が非平坦状であり、タイル部1の角縁部5は不規則な曲線よりなり、隣接するタイル部1の高さが異なっており、また側面6の傾斜角度がその側面の延長線上に位置する隣接するタイル部側面と異なっており、目地幅が不規則に変化し、目地がゆらいで見える。そして、全体として自然石を張ったかの如く視覚される意匠性の良好なものである。
【0019】この建築用板は、複数枚並設した場合でもジョイント部が目立たない。なお、隅辺部4が一直線状に揃っているため、寸法合わせのために建築用板を切断する場合、一直線状の目地に沿って切断することができる。」

(4) 「【0022】本発明では、タイル部の前面にスポンジローラー等によって塗料を付着させ、例えばランダムな色斑などを付してもよい。
【0023】【発明の効果】以上の通り、本発明によると、自然石を張ったかの如く視覚される意匠性に優れた建築用板が提供される。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「住宅の内装材及び外装材として用いる、化粧板1」は建築用の板であるから本願発明1の「建築板」に相当する。
また、引用発明の「化粧板用基材2」は「化粧板1」の基材を成すものであり、また「ケイ酸カルシウム板」すなわち板であるから、本願発明1の「基板」に相当する。
さらに、引用発明において「ジェットインキ塗装層4を形成するためのジェットインキは着色材を混合したもの」なので、「インキジェット方式によるジェットインキ塗装層4」は着色されたものであり、本願請求項1における「印刷による着色部」に相当する。
よって、引用発明において「ケイ酸カルシウム板の化粧板基材2上に下地塗装層3とインキジェット方式によるジェットインキ塗装層4と転写絵柄層5と表面保護層6とを順次積層」していることは、本願発明1の「基板の表面に印刷による着色部を形成」していることに相当する。

イ 引用発明の各「平坦部8」は、「凹部7」に対して「標準的なレンガの大きさの形状」が凸状となっているものであるから、引用発明において「化粧板基材2の表面を削って、化粧板基材2の長手方向及び短手方向に平行に略同一間隔で複数、長手方向及び短手方向の全長にわたる凹部7が形成され、凹部7により、標準的なレンガの大きさの形状である長方形の平坦部8が、化粧板基材2の長手方向及び短手方向の全長にわたって並ぶように複数形成され、これら長方形の平坦部8の化粧板基材2の長手方向及び短手方向における幅は、互いに略同一」であることは、本願発明1において「前記基板の表面に、当該基板の長手方向に並ぶように複数の凸柄が設けられ、これら凸柄の前記基板の短手方向における幅は、互いに略同一であり、」「前記複数の凸柄は、前記基板の長手方向の全長にわたって設けられ、前記基板の長手方向にわたって設けられた前記複数の凸柄は、前記基板の短手方向に複数並設されて」いることに相当する。

ウ 引用発明において「平坦部8の下地塗装層3上にはインキジェット方式により任意の平坦部8にジェットインキ塗装層4が形成され」ることと、本願発明1において「前記着色部は前記基板の長手方向と略平行に長い帯状に形成され、前記着色部は明度、彩度、色相の群から選ばれる少なくとも一つが異なる複数種からなる色で着色されて形成されており、前記着色部の前記色は、前記基板の長手方向に並ぶ前記複数の凸柄の表面において、当該基板の長手方向の全長に亙って印刷されて」いることとは、「前記着色部の前記色は、前記基板の前記複数の凸柄の表面に印刷されて」いることで共通する。

以上アないしウより、本願発明1と引用発明は、下記の点で一致している。

[一致点]
「基板の表面に印刷による着色部を形成した建築板であって、
前記基板の表面に、当該基板の長手方向に並ぶように複数の凸柄が設けられ、これら凸柄の前記基板の短手方向における幅は、互いに略同一であり、
前記着色部の前記色は、前記基板の前記複数の凸柄の表面に印刷されており、
前記複数の凸柄は、前記基板の長手方向の全長にわたって設けられ、
前記基板の長手方向にわたって設けられた前記複数の凸柄は、前記基板の短手方向に複数並設されており、
前記基板の短手方向に並設された複数の凸柄の間には、前記基板の長手方向の全長にわたる凹溝が形成されている建築板。」

他方、本願発明1と引用発明は、下記の点で相違する。

[相違点1]
「着色部」について、本願発明1においては「前記着色部は前記基板の長手方向と略平行に長い帯状に形成され、前記着色部は明度、彩度、色相の群から選ばれる少なくとも一つが異なる複数種からなる色で着色されて形成されており、前記着色部の前記色は、前記基板の長手方向に並ぶ前記複数の凸柄の表面において、当該基板の長手方向の全長に亙って印刷され」るのに対し、引用発明の「ジェットインキ塗装層4」はそのような特定を有していない点。

[相違点2]
「凸柄」について、本願発明1においては「前記複数の凸柄の各々の高さはばらついて形成され、前記凸柄の各々の表面は凹凸面により構成される」のに対し、引用発明の「平坦部8」はそのような特定を有していない点。

[相違点3]
本願発明1においては「前記建築板は、前記基板の短手方向に並ぶ別の建築板と突き合わせ可能に構成されている」のに対し、引用発明は「突き合わせ」に関する特定を有していない点

(2)判断
ア 相違点1について検討する。
引用発明では、「ジェットインキ塗装層4」の配置について、「任意の平坦部8」に形成されるというまでの特定であり、相違点1に係る本願発明1の「前記着色部は前記基板の長手方向と略平行に長い帯状に形成され、前記着色部は明度、彩度、色相の群から選ばれる少なくとも一つが異なる複数種からなる色で着色されて形成されており、前記着色部の前記色は、」「当該基板の長手方向の全長に亙って印刷され」るという「着色部」の色や位置についての構成は記載されていない。
一方、引用例2には、上記第4の2において摘記したとおり、「立体駐車場外壁」を各色の「ボードa」(「実施例」では「A、B、C,Dの各色のボードa」。)を組み合わせて色合わせして「MONOCHROME」、「TWO-TONE」、そして「STRIPE」といったカラーコーデイネートとするものが、また引用例3には、上記第4の3において摘記したとおり、それぞれ異なる明度の「長尺材」(「実施の形態」では「明度0=長尺材10a 明度1=長尺材10b 明度2=長尺材10c 明度3=長尺材10d」の4種類の「長尺材」。)を並設して建物の「面材」をなすことが記載され、そして引用例2、3ともに、各「色」あるいは「明度」が、長手方向と略平行に長い帯状に、長手方向の全長にわたり形成されることが記載されている。しかしながら、引用例2の「ボードa」あるいは引用例3の「長尺材」自体は単一の色あるいは明度であって、本願発明1のように、長手方向と略平行に長い帯状に、長手方向の全長にわたる複数種の色の着色部が「基板」に形成されるものではなく、複数種の色あるいは明度の着色部を各「ボードa」あるいは各「長尺材」に形成することは、引用例2、3には記載も示唆もされていない。
また引用例4は、上記第4の4において摘記したとおり、建築用板に異なる色調の「着色塗膜層」を形成するものであるが、それは各「れんが積み状の凸部」を「1個1個の異なる表面意匠を有するブロック体を配列固定した施工化粧面と類似」するようにするためであって、着色部を「長手方向と略平行に長い帯状に」「長手方向の全長に亙って」形成することは記載も示唆もされていない。
さらに引用例5は、上記第4の5において摘記したとおり、建築用板について「例えばランダムな色斑などを付してもよい」という記載はあるが、「自然石を張ったかの如く視覚される」ようにするという目的のものであり、複数種の色の着色部を「長手方向と略平行に長い帯状に」「長手方向の全長に亙って」形成することが示唆されるものではない。
このように、相違点1に係る本願発明1の「前記着色部は前記基板の長手方向と略平行に長い帯状に形成され、前記着色部は明度、彩度、色相の群から選ばれる少なくとも一つが異なる複数種からなる色で着色されて形成されており、前記着色部の前記色は、」「当該基板の長手方向の全長に亙って印刷され」るという構成は引用例2ないし5のいずれにも記載されておらず、また本願出願時における周知技術であるともいえない。
そして本願発明1は、相違点1に係る構成によって、「突き合わせにより形成される建築板A、Aの境目(目地)と隣接する凸柄2,2の間の凹溝3とが区別しにくくなる。従って、隣接する建築板A、Aの突き合わせ部分Tが目立ちにくくなって、複数枚の建築板Aを並設して形成される建物の外観が損なわれにくくすることができる。」(本願明細書段落【0016】)という本願明細書記載の効果を発揮するものである。
よって、相違点1に係る本願発明1の構成は、当業者が引用発明及び引用例2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に想到できることではない。

イ 小括
以上より、相違点2、3について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明および引用例2ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

ウ なお、原審の補正却下の決定においては、「先の拒絶理由」を引用する形で、「各平坦部をどのような色で着色するかは、当業者が適宜設定し得ることであり、例えば、引用文献2(特に第5図)及び引用文献3(特に第4,5図)に示すような長手方向の全長に亘って着色部が形成される周知のストライプ状とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。」との判断がなされている。
しかしながら、上記第5の(2)で検討したように、本願発明1の相違点1に係る構成は引用例2ないし5のいずれにも記載されておらず、本願発明1は、当業者であっても引用発明および引用例2ないし5に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の相違点1に係る構成と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明および引用例2ないし5に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
本願発明1、2は、上記第5の(2)で検討した相違点1に係る「着色部は基板の長手方向と略平行に長い帯状に形成され、前記着色部は明度、彩度、色相の群から選ばれる少なくとも一つが異なる複数種からなる色で着色されて形成されており、前記着色部の前記色は、前記基板の長手方向に並ぶ前記複数の凸柄の表面において、当該基板の長手方向の全長に亙って印刷され」という構成を有するものであるから、上記第5の(2)で検討したとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし3に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-19 
出願番号 特願2012-32025(P2012-32025)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E04F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 津熊 哲朗  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 井上 博之
前川 慎喜
発明の名称 建築板  
代理人 坂口 武  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  
代理人 北出 英敏  
代理人 竹尾 由重  
代理人 木村 豊  
代理人 西川 惠清  
代理人 水尻 勝久  
代理人 仲石 晴樹  
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