• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B63B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B63B
管理番号 1335392
審判番号 不服2016-17547  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-24 
確定日 2018-01-09 
事件の表示 特願2013-240492号「自航式重機搭載作業船」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月 4日出願公開、特開2015-101104号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月21日の出願であって、平成28年1月27日付けで拒絶理由が通知され、同年3月31日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月30日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、同年11月24日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成29年10月12日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月13日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1及び4に係る発明は、以下の引用文献1?4に記載された発明に基いて、また、請求項2及び3に係る発明は、以下の引用文献1?5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.英国特許出願公開第2166089号明細書
2.英国特許出願公告第1462775号明細書
3.実願昭47-104430号(実開昭49-060489号)
のマイクロフィルム
4.実公昭39-021822号公報
5.米国特許第2876726号明細書

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明(以下「本願発明1?3」という。)は、平成29年11月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
船首から船尾にかけて並列された複数の船体構成部材を連結してなる船体と、
前記船体を推進させるための船体推進機とを備え、
前記船体には、該船体の上面及び船首側が開放されてなる重機搭載用凹部が設けられており、
前記複数の船体構成部材のそれぞれは、隣接する船体構成部材同士を分離可能に連結するための連結機構を備えており、
前記船体の底面から喫水線までの距離が、重機搭載時に座礁することなく水上を走行できる深さであり、
船体の幅方向の寸法が、重機搭載用凹部の幅方向の寸法の200%以上であり、
前記重機搭載用凹部の前記船首側の開放面近傍に、波止め部材が取り外し可能に設けられ、前記波止め部材は重機搭載用凹部の底面から船体の上面までの高さを有している
ことを特徴とする自航式重機搭載作業船。
【請求項2】
前記連結機構は、前記船体構成部材の連結面に対向して設けられた第1連結部材と第2連結部材とからなり、
前記第1連結部材は凸型部材を、前記第2連結部材は凹型部材を備え、該凸型部材と該凹型部材とが係脱自在に係合されており、
前記第1連結部材は、前記凸型部材を係合状態でロックするロック機構を備えていることを特徴とする請求項1記載の自航式重機搭載作業船。
【請求項3】
前記凸型部材は略円柱状であって、両側部に上下方向に延びる溝部が形成されており、
前記ロック機構は、所定間隔を置いて平行に配置され上下方向に延びる一対の長手部材と、該一対の長手部材の間に固定配置されたロック部材とを備え、
前記ロック部材は、前記凸型部材の前記溝部に対応する係止部を備えており、該係止部が前記溝部に嵌まり込むことにより、前記凸型部材がロックされるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の自航式重機搭載作業船。」

第5 当審の判断
1 当審拒絶理由について
当審は、補正前の請求項3について、「前記凸型部材は略円柱状であって、・・・、前記ロック機構は、所定間隔を置いて平行に配置され上下方向に延びる一対の長手部材と、該一対の長手部材の間に固定配置されたロック部材とを備え、・・・ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自航式重機搭載作業船。」と記載されているが、請求項1を引用する場合、「前記凸型部材」及び「前記ロック機構」を特定することができず、発明が不明確である旨の拒絶の理由を通知したところ、平成29年11月13日付けの手続補正により、本願の請求項3は、上記「第4」のとおり補正された。
そして、この補正により、上記拒絶の理由は解消した。

2 原査定について
2-1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の記載がある(なお、引用文献1の記載事項は、当審が作成した訳文で示す。また、下線は当審で付した。以下同様。)
(1a)「本発明は、運河等の水路から、雑草等の障害物を除去することに関する。
本発明によれば、水路内の障害物を除去するための装置を支持するためのプラットフォームが提供され、前記プラットフォームは、水路上で浮遊可能である。プラットフォームは、以後、はしけと呼ばれる。」(1頁左欄6?14行)
(1b)「はしけは、船外機などの水を介して推進するための適切な手段が設けられていてもよい。」(1頁左欄53?55行)
(1c)「図1をより詳細に参照すると、はしけは、左舷・右舷ヒンジ及びボルト付きアングルバー接続具13によって接続される前部船体部分10と後部船体部分11とを含む。・・・
組み立てられたはしけは、側壁15によって側面が囲まれた床14を有し、床は、トラクター掘削機のためのアクセスポイントを提供するために両端で開いている。」(1頁右欄69?95行)
(1d)引用文献1には、以下の図が示されている。



(2)引用文献3の記載事項
引用文献3には、次の記載がある
(2a)「本考案は、搭載車輌の乗降に際し岸壁側に架橋した橋板兼用の波除扉が、波浪による船体のローリングあるいは首振り動作等により岸壁に対し揺動することを防止して、安全なる乗降をなし得ることを目的としたフェリーボート用扉開閉装置に関するもので、・・・しかも扉閉状態における航行時は該扉部の防水効果を完全に保持し得るごとく構成したことを特徴とするものである。
図の実施例により詳述すれば、1は橋板兼用の波除扉で、下部中央に嵌入した球面軸受2と船体3側に突設したブラケット4を軸5により連結して蝶番状に開閉自在なるごとくし、該扉先端両側に一端を固定した索6を船体側に設けた中継滑車7を介し適宜巻取装置(図示せず)と連結し、該巻取装置の巻取り・巻戻し(自重降下)操作で扉の開閉を行うごとくしてある。」(明細書1頁12行?2頁9行)
(2b)引用文献3には、以下の図が示されている。


(3)引用文献4の記載事項
引用文献4には、次の記載がある。
(3a)「本考案は、フェリーボート船体1の船尾または船首に蝶番40,40’を介して開閉とびら2を枢着し、該とびら2に取付金具5,5’を固定し、ワイヤー6を装着し、軸8,8’に遊着せる滑車7,7’に係合させ、さらに軸11,11’に遊着せる滑車9,9’,10,10’と軸12,12’に遊着せる滑車13,13’,14,14’に各二段式に係合させて、ピストンロッド15,15’に係合し、・・・て成るフェリーボート用とびら油圧開閉装置の構造に係るもので、その目的とするところは、従来フェリーボート用のとびらの開閉装置は、ウインチ等により開閉されたものを、本考案により、油圧装置により開閉せんとする考案に係るものである。」(1頁左欄17行?同頁右欄2行)
(3b)引用文献4には、以下の図が示されている。



2-2 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、運河等の水路から、雑草等の障害物を除去する技術について開示されており(摘示(1a))、水路内の障害物を除去するための装置を支持するはしけの構造として(摘示(1a))、
はしけは、船外機などの水を介して推進するための手段が設けられること(摘示(1b))、及び、
はしけは、左舷・右舷ヒンジ及びボルト付きアングルバー接続具13によって接続される前部船体部分10と後部船体部分11とを含み、組み立てられたはしけは、側壁15によって側面が囲まれた床14を有し、床14は、トラクター掘削機のためのアクセスポイントを提供するために両端で開いていること(摘示(1c))、が明らかである。

したがって、引用文献1には、
「水路内の障害物を除去するための装置を支持するはしけにおいて、
前記はしけは、船外機などの水を介して推進するための手段が設けられ、
前記はしけは、左舷・右舷ヒンジ及びボルト付きアングルバー接続具13によって接続される前部船体部分10と後部船体部分11とを含み、組み立てられたはしけは、側壁15によって側面が囲まれた床14を有し、床14は、トラクター掘削機のためのアクセスポイントを提供するために両端で開いている、はしけ。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

2-3 対比・判断
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「前部船体部分10」及び「後部船体部分11」は、本願発明1の「複数の船体構成部材」に相当する。
また、引用発明の「前部船体部分10」及び「後部船体部分11」は、「左舷・右舷ヒンジ及びボルト付きアングルバー接続具13によって接続される」ものであるから、そのように接続された「前部船体部分10」及び「後部船体部分11」は、本願発明1の「船首から船尾にかけて並列された複数の船体構成部材を連結してなる船体」に相当するものといえる。
イ 引用発明は、「前記はしけは、船外機などの水を介して推進するための手段が設けられ」るものであるところ、かかる手段によって、はしけの前部船体部分10及び後部船体部分11が推進させられることは技術的に明らかであるから、引用発明の「船外機などの水を介して推進するための手段」は、本願発明1の「前記船体を推進させるための船体推進機」に相当するものといえる。
ウ 引用発明の「床14」は、「側壁15によって側面が囲まれ」ており、側壁15との配設関係上、それが凹部を形成することは技術的に明らかである(図1、3(摘示(1d))にもそのように記載されている。)。さらに、引用発明の「床14」は、「トラクター掘削機のためのアクセスポイントを提供するために両端で開いている」ものであるから、それが重機搭載用の凹部をなすことも技術的に明らかである(図3、4(摘示(1d)にもそのように記載されている。)。
したがって、引用発明の「組み立てられたはしけは、側壁15によって側面が囲まれた床14を有し、床14は、トラクター掘削機のためのアクセスポイントを提供するために両端で開いている」という構成は、本願発明1の「前記船体には、該船体の上面及び船首側が開放されてなる重機搭載用凹部が設けられており」という構成に相当するものといえる。
エ 引用発明の「左舷・右舷ヒンジ及びボルト付きアングルバー接続具13」は、「前部船体部分10と後部船体部分11」を「接続」するものであるから、本願発明1の「隣接する船体構成部材同士を分離可能に連結するための連結機構」に相当するものといえる。
また、引用発明の「前部船体部分10」と「後部船体部分11」は、「左舷・右舷ヒンジ及びボルト付きアングルバー接続具13によって接続される」ものであり、言い換えれば、上記「前部船体部分10」と「後部船体部分11」のそれぞれは、それらを分離可能に連結する左舷・右舷ヒンジ及びボルト付きアングルバー接続具13を備えたものということもできるから、かかる構成は、本願発明1の「前記複数の船体構成部材のそれぞれは、隣接する船体構成部材同士を分離可能に連結するための連結機構を備えており」という構成に相当するものといえる。
オ 引用発明の「はしけ」は、「水路内の障害物を除去するための装置を支持する」ものであって、「床14は、トラクター掘削機のためのアクセスポイントを提供するために両端で開いて」おり、また、「船外機などの水を介して推進するための手段が設けられ」るものであるから、その機能・構造に照らして本願発明1の「自航式重機搭載作業船」に相当するものといえる。
以上によれば、本願発明1と引用発明とは、
「船首から船尾にかけて並列された複数の船体構成部材を連結してなる船体と、
前記船体を推進させるための船体推進機とを備え、
前記船体には、該船体の上面及び船首側が開放されてなる重機搭載用凹部が設けられており、
前記複数の船体構成部材のそれぞれは、隣接する船体構成部材同士を分離可能に連結するための連結機構を備えている、
自航式重機搭載作業船。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明1は、「前記船体の底面から喫水線までの距離が、重機搭載時に座礁することなく水上を走行できる深さであり、船体の幅方向の寸法が、重機搭載用凹部の幅方向の寸法の200%以上であ」るのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
本願発明1は、「重機搭載用凹部の前記船首側の開放面近傍に、波止め部材が取り外し可能に設けられ、前記波止め部材は重機搭載用凹部の底面から船体の上面までの高さを有している」のに対し、引用発明は、そのような波止め部材を具備していない点。

(2)判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
ここで、原査定においては、「車両等が乗り降りする船舶の技術分野において船首又は船尾側の開放面近傍に取り外し可能な波止め部材としての扉を設けることは例えば引用文献3(特に第1-2図における波止め部材としての扉(1)参照)、引用文献4(特に第1-2図における波止め部材としての開閉とびら(2)参照)に開示されているように周知技術であることから、引用文献1記載の発明において該周知技術を適用し、該重機搭載用凹部の船首側の開放面近傍に取り外し可能な波止め部材を設けることは、当業者が容易になし得たことである。」と判断されているので、以下、引用発明に、引用文献3及び4に記載された技術事項を適用することで、上記相違点2に係る本願発明1の構成が容易想到であるのか否か検討する。
ア 引用文献3には、「フェリーボート用扉開閉装置」について開示されており、具体的には、搭載車輌の乗降に際し岸壁側に架橋した橋板兼用の波除扉が、波浪による船体のローリングあるいは首振り動作等により岸壁に対し揺動することを防止して、安全なる乗降をなし得ることを目的とし、橋板兼用の波除扉1を、下部中央に嵌入した球面軸受2と船体3側に突設したブラケット4を軸5により連結して蝶番状に開閉自在なるごとくし、該扉先端両側に一端を固定した索6を船体側に設けた中継滑車7を介し適宜巻取装置と連結し、該巻取装置の巻取り・巻戻し操作で扉の開閉を行うことが記載されている(摘示(2a))。
ここで、上記橋板兼用の波除扉1は、扉閉状態における航行時は該扉部の防水効果を完全に保持し得るごとく構成されるものであるから(摘示(2a))、フェリーボートへの設置の態様として、波止め部材として機能することは明らかである。
しかし、上記橋板兼用の波除扉1は、あくまでも、搭載車輌の乗降に際し岸壁側に架橋した橋板として機能させるものであって、その構造は、下部中央に嵌入した球面軸受2と船体3側に突設したブラケット4を軸5により連結して蝶番状に開閉自在なるごとくし、該扉先端両側に一端を固定した索6を船体側に設けた中継滑車7を介し適宜巻取装置と連結し、該巻取装置の巻取り・巻戻し操作で扉の開閉を行うというものであるから、その配設構造は、第1?3図(摘示(2b))にも示されるとおり、あくまでも「開閉」を目的とした取付け構造であって、重機搭載用凹部の船首側の開放面を開放すべく「取り外し可能」に構成されたというものではない。
イ また、引用文献4には、「フェリーボート用とびら油圧開閉装置」について開示されており、具体的には、従来、ウインチ等により開閉されていた開閉扉を、油圧装置により開閉することを目的として、少なくとも、フェリーボート船体1の船尾または船首に蝶番40,40’を介して開閉扉2を枢着し、該とびら2に取付金具5,5’を固定し、ワイヤー6を装着し、軸8,8’に遊着せる滑車7,7’に係合させ、さらに軸11,11’に遊着せる滑車9,9’,10,10’と軸12,12’に遊着せる滑車13,13’,14,14’に各二段式に係合させて、ピストンロッド15,15’に係合させて、フェリーボート用とびら油圧開閉装置を構成することが記載されている(摘示(3a)(3b))。
しかし、上記「フェリーボート用とびら油圧開閉装置」も上記引用文献3に記載された「橋板兼用の波除扉1」と同様に、あくまでも「開閉」を目的とした取付け構造であって、重機搭載用凹部の船首側の開放面を開放すべく「取り外し可能」に構成されたというものではない。
ウ したがって、引用発明に引用文献3及び4に記載された技術事項を適用しても、上記相違点2に係る本願発明1の構成に至るものではない。また、原査定の拒絶の理由で引用された他の引用文献2及び5にも、上記相違点2に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていない。
エ そして、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の構成により、「重機搭載用凹部(3)内に波が浸入するのを防ぐことができるので、波が高い時でも波に重機(A)が晒されて回収車が故障するのを防止することができる。」(段落【0023】)という格別の効果を奏するものである。
オ 以上のとおりであるから、上記相違点2に係る本願発明1の構成は容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点を検討するまでもなく、本願発明1は、引用文献1?4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明2?3は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本願発明1と同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-18 
出願番号 特願2013-240492(P2013-240492)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B63B)
P 1 8・ 537- WY (B63B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 泰二郎川村 健一  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
平田 信勝
発明の名称 自航式重機搭載作業船  
代理人 清原 義博  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ