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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01D
管理番号 1335422
審判番号 不服2016-5117  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-07 
確定日 2017-12-13 
事件の表示 特願2011-153391「弓形凹状の前縁を有するタービンノズルセグメント」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 9日出願公開、特開2012- 26439〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本件出願は、平成23年7月12日の出願(パリ条約による優先権主張2010年7月22日、米国)であって、平成26年7月4日に手続補正書が提出され、平成27年4月23日付けで拒絶理由が通知され、平成27年7月27日に意見書が提出されるとともに、明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成27年12月1日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年4月7日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、さらに、平成28年5月24日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出され、その後、平成28年10月14日付けで拒絶理由が当審より通知され、平成29年4月18日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたものである。

2.本件発明

本件出願の請求項1ないし7に係る発明は、平成26年7月4日、平成27年7月27日、平成28年4月7日、及び、平成29年4月18日の手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
タービン静止ノズル翼形部(10)であって、当該タービン静止ノズル翼形部(10)が、
弓形凹状の前縁(12)と、
平坦な後縁(14)と、
前縁(12)と後縁(14)の間の本体部分(16)であって、負圧側面(18)と正圧側面(20)とを有する本体部分(16)と
を含んでおり、前縁(12)が前縁(12)の半径方向高さの3/4?5/4の弓形半径を有しており、前縁(12)が中間点(Mle)及び端点(Ple)を有していて、後縁(14)が中間点(Mte)及び端点(Pte)を有しており、前縁(12)の中間点(Mle)から本体部分(16)の負圧側面(18)に沿って後縁(14)の中間点(Mte)まで延びる弓形の長さ(Lm)が、前縁(12)の端点(Ple)から本体部分(16)の負圧側面(18)に沿って後縁(14)の端点(Pte)まで延びる弓形の長さ(Lsb)よりも小さい、タービン静止ノズル翼形部(10)。」

3.引用文献に記載された発明

(1)引用文献の記載事項
平成28年10月14日付けの拒絶理由の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日の前に頒布された特開2002-256811号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

a)「【0011】
【発明の実施の形態】先に述べたように、本発明はタービンのノズル段、好ましくは第1段用の閉冷却回路に関する。タービンの多様な態様、その構成、及び作動方法の説明については、先に摘示した特許を参照する。図1には、円周方向に間隔を置いて配置された複数の羽根の1つを含む羽根10の断面概略図を示しており、各羽根は、ガスタービン用の第1段ノズルの弓形セグメント11の一部を形成している。セグメント11は、互いに結合され、タービンの第1段ノズルを通る高熱ガス通路を形成するセグメントの環状配列を構成していることが分かるであろう。各セグメントは、半径方向に間隔を置いて配置された外側及び内側バンド12及び14をそれぞれ含んでおり、1つ又はそれ以上のノズル羽根10が外側及び内側バンドの間に延びている。セグメントは、隣接するセグメントが互いにシールされて、タービンの内側シェル(図示せず)の周りに支持されている。本説明においては、羽根10はセグメントの唯一の羽根を構成しているものとして説明するが、各セグメント11は、2つ又はそれ以上の羽根を備えてもよいことは明らかであろう。図示するように、ノズル羽根10は、前縁18及び後縁20を有している。」(段落【0011】)

b)「【0014】前縁空洞42及び後部空洞44の各々は、それぞれインサート54及び56を有しており、・・・中略・・・インサートは、それらを設ける特定の空洞の形状に合わせて成型される。・・・中略・・・例えば、前縁空洞42において、インサート54の前縁部は弓形であり、側壁は一般に空洞42の側壁の形状に一致しており、インサートのこれらの壁は全てインピンジメント開口を有している。・・・後略・・・」(段落【0014】)

(2)上記(1)及び図面の記載より分かること

ア)上記(1)a)ないしb)及び図1の記載によれば、ノズル羽根10の前縁18は弓形であり、内側に凹んでいること、及び、ノズル羽根10の後縁20は平坦であることが分かる。

イ)技術常識から想定されるタービンのノズル羽根の全体の形状を考慮すると、上記(1)a)及び図1の記載によれば、ノズル羽根10の前縁18と後縁20の間には本体部分を有し、本体部分は負圧側面と正圧側面を有することが分かる。

(3)引用発明

したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>

「タービンのノズル羽根10であって、当該羽根が、
弓形であり内側に凹んでいる前縁18と、
平坦な後縁20と、
前縁18と後縁20の間の本体部分であって、負圧側面と正圧側面とを有する本体部分と
を有している、タービンのノズル羽根10。」


4.対比・判断

本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「タービンのノズル羽根10」、「弓形であり内側に凹んでいる」、「前縁18」、「後縁20」、「有している」ことは、その機能、構造又は技術的意義からみて、それぞれ、本件発明における「タービン静止ノズル翼形部」、「弓形凹状の」、「前縁」、「後縁」、「含んでいる」ことに、それぞれ相当する。

してみると、本件発明と引用発明とは、
「タービン静止ノズル翼形部であって、当該タービン静止ノズル翼形部が、
弓形凹状の前縁と、
平坦な後縁と、
前縁と後縁の間の本体部分であって、負圧側面と正圧側面とを有する本体部分と
を含んでいるタービン静止ノズル翼形部。」の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>

本件発明においては、「前縁が前縁の半径方向高さの3/4?5/4の弓形半径を有しており、前縁が中間点(Mle)及び端点(Ple)を有していて、後縁が中間点(Mte)及び端点(Pte)を有しており、前縁の中間点(Mle)から本体部分の負圧側面に沿って後縁の中間点(Mte)まで延びる弓形の長さ(Lm)が、前縁の端点(Ple)から本体部分の負圧側面に沿って後縁の端点(Pte)まで延びる弓形の長さ(Lsb)よりも小さい」のに対し、
引用発明においては、そのような事項を備えるかどうか、明らかでない点(以下、「相違点」という。)。
上記相違点について検討する。

引用発明において、前縁18は弓形であり内側に凹んでおり、後縁20は平坦であるから、前縁18の中間点と後縁20の中間点を結ぶ直線が、前縁18の端点と後縁20の端点を結ぶ直線より短いことは明らかである。引用文献全体を参酌しても、前縁18の中間点と後縁20の中間点を通る面で切った断面形状と、前縁18の端点と後縁20の端点を通る面で切った断面形状が大きく異なるとは認められないことから、引用発明において、前縁18の中間点から本体部分の負圧側面に沿って後縁20の中間点まで延びる弓形の長さを、前縁18の端点から本体部分の負圧側面に沿って後縁20の端点まで延びる弓形の長さよりも小さくすることには、格別の困難性を見いだせない。
また、本願の明細書や提出された全ての意見書を参酌しても、3/4?5/4という数値範囲の上下限値に臨界的意義があるとは認められず、該数値範囲は広範であり、該数値範囲の数値が格別なものともいえないこと(例えば、3/4の場合、前縁は中心角約44°の円弧に近似され、そのような円弧は、引用文献の図1の前縁18や当審が通知した拒絶理由で引用した特表2005-521825号公報の図1及び図3の前縁2と大差は認められない)から、引用発明において、上記数値範囲内の値とすることは、適宜なし得る設計的事項にすぎない。

してみると、引用発明において、相違点に係る本件発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば、容易に想到できたことである。

そして、本件発明は、全体としてみても、引用発明から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

5.まとめ

以上のとおり、本件発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび

上記2.ないし5.で述べたとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-13 
結審通知日 2017-07-18 
審決日 2017-08-01 
出願番号 特願2011-153391(P2011-153391)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 公志郎  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 佐々木 芳枝
八木 誠
発明の名称 弓形凹状の前縁を有するタービンノズルセグメント  
代理人 黒川 俊久  
代理人 田中 拓人  
代理人 小倉 博  
代理人 荒川 聡志  

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