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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1335427
審判番号 不服2016-11348  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-28 
確定日 2017-12-14 
事件の表示 特願2012- 31864「移動車両及び非接触電力伝送装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月29日出願公開、特開2013-169109〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月16日の出願であって、平成27年11月11日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月7日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成28年6月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年7月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成28年7月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の結論の決定]
平成28年7月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は次の通り補正された。(下線部は補正箇所を示す。)
「【請求項1】
移動のための動力を発生するモータと、該モータを駆動する電力を供給する蓄電池とを備える移動車両において、
外部の一次側コイルから非接触で給電される電力を受電する二次側コイルと、
前記二次側コイルが受電した受電電力を消費する負荷装置と、
前記二次側コイルが受電した電力の供給先を前記負荷装置あるいは前記蓄電池の何れかに設定する電力供給先設定手段と、
前記二次側コイルが受電した電力の供給先が前記電力供給先設定手段によって前記負荷装置に設定された状態において前記二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求める受電量演算部と、
前記モータを制御して前記一次側コイルに対する前記二次側コイルの位置を調整する制御部と、
前記一次側コイルが前記二次側コイルに給電する電力の電力量を示す給電量が外部から入力される入力部と
を備えており、
前記制御部は、前記受電量と前記給電量とに基づいて前記一次側コイルから前記二次側コイルへの電力伝送効率を求め、前記電力伝送効率を参照しつつ前記モータを制御し、
前記負荷装置の負荷は、前記電力供給先設定手段よりも軽い
ことを特徴とする移動車両。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年1月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
移動のための動力を発生するモータと、該モータを駆動する電力を供給する蓄電池とを
備える移動車両において、
外部の一次側コイルから非接触で給電される電力を受電する二次側コイルと、
前記二次側コイルが受電した受電電力を消費する負荷装置と、
前記二次側コイルが受電した電力の供給先を前記負荷装置あるいは前記蓄電池の何れかに設定する電力供給先設定手段と、
前記二次側コイルが受電した電力の供給先が前記電力供給先設定手段によって前記負荷装置に設定された状態において前記二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求める受電量演算部と、
前記モータを制御して前記一次側コイルに対する前記二次側コイルの位置を調整する制御部と、
前記一次側コイルが前記二次側コイルに給電する電力の電力量を示す給電量が外部から入力される入力部と
を備えており、
前記制御部は、前記受電量と前記給電量とに基づいて前記一次側コイルから前記二次側コイルへの電力伝送効率を求め、前記電力伝送効率を参照しつつ前記モータを制御することを特徴とする移動車両。」

2 補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「負荷装置」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に公開された文献である国際公開2011/132272号(以下、「引用例1」という。)には、「車両の駐車支援装置およびそれを備える電動車両」に関して、図面とともに次の記載がある。

(ア)「[0001] この発明は、車両の駐車支援装置およびそれを備える電動車両に関し、特に、車両外部に設けられる給電設備の送電ユニットから送出される電力を受電ユニットにより非接触で受電して蓄電装置に蓄電可能な車両の駐車支援装置およびそれを備える電動車両に関する。」
(イ)「[0025] ステアリングの制御が終了し、送電ユニット220に対して予め定められた位置まで車両100が誘導されると、第1段階から第2段階に切替わる。この第2段階では、送電ユニット220から受電ユニット110への給電が行なわれ、受電ユニット110の受電状況に基づいて車両100の速度を制御(減速/停止)することによって、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせが行なわれる。より詳しくは、受電ユニット110の受電状況に基づいて、送電ユニット220と受電ユニット110との間の距離が推定される。そして、その推定結果に基づいて車両100の速度を制御(減速/停止)することによって、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせが行なわれる。」
(ウ)「[0027] なお、上記の第2段階時に送電ユニット220から送出される電力の大きさは、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせの完了後に送電ユニット220から受電ユニット110へ供給される電力よりも小さく設定される。上記第2段階時に送電ユニット220から電力を送出するのは、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせのためであり、本格的な給電を行なう際の大電力は不要だからである。」
(エ)「[0031] なお、図1との対応関係については、二次自己共振コイル340および二次コイル350が図1の受電ユニット110に対応し、一次コイル320および一次自己共振コイル330が図1の送電ユニット220に対応する。」
(オ)「[0032] 図3は、図1に示した車両100の詳細構成図である。図3を参照して、車両100は、蓄電装置150と、システムメインリレーSMR1と、昇圧コンバータ162と、インバータ164,166と、モータジェネレータ172,174と、エンジン176と、動力分割装置177と、駆動輪178とを含む。また、車両100は、二次自己共振コイル112と、二次コイル114と、整流器140と、DC/DCコンバータ142と、システムメインリレーSMR2と、電圧センサ190とをさらに含む。さらに、車両100は、制御装置180と、カメラ120と、通信部130と、ハイトセンサ135と、タッチディスプレイ182と、駐車支援スイッチ(以下「PA(Parking Assist)スイッチ」とも称する。)184と、給電要求スイッチ186とをさらに含む。」
(カ)「[0033] この車両100は、エンジン176およびモータジェネレータ174を動力源として搭載する。エンジン176およびモータジェネレータ172,174は、動力分割装置177に連結される。そして、車両100は、エンジン176およびモータジェネレータ174の少なくとも一方が発生する駆動力によって走行する。エンジン176が発生する動力は、動力分割装置177によって2経路に分割される。すなわち、一方は駆動輪178へ伝達される経路であり、もう一方はモータジェネレータ172へ伝達される経路である。」
(キ)「[0035] モータジェネレータ174も、交流回転電機であり、モータジェネレータ172と同様に、たとえばロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機から成る。モータジェネレータ174は、蓄電装置150に蓄えられた電力およびモータジェネレータ172により発電された電力の少なくとも一方を用いて駆動力を発生する。そして、モータジェネレータ174の駆動力は、駆動輪178に伝達される。」
(ク)「[0040] 二次自己共振コイル112は、両端がオープン(非接続)のLC共振コイルであり、給電設備200の一次自己共振コイル(後述)と電磁場を介して共鳴することにより給電設備200から受電する。なお、二次自己共振コイル112の容量成分は、コイルの浮遊容量とするが、コイルの両端に接続されるコンデンサを設けてもよい。この二次自己共振コイル112については、給電設備200の一次自己共振コイルとの距離や、一次自己共振コイルおよび二次自己共振コイル112の共鳴周波数等に基づいて、一次自己共振コイルと二次自己共振コイル112との共鳴強度を示すQ値(たとえば、Q>100)およびその結合度を示すκ等が大きくなるようにその巻数が適宜設定される。」
(ケ)「[0041] 二次コイル114は、二次自己共振コイル112と同軸上に配設され、電磁誘導により二次自己共振コイル112と磁気的に結合可能である。この二次コイル114は、二次自己共振コイル112により受電された電力を電磁誘導により取出して整流器140へ出力する。なお、二次自己共振コイル112および二次コイル114は、図1に示した受電ユニット110を形成する。」
(コ)「[0042] 整流器140は、二次コイル114によって取出された交流電力を整流する。DC/DCコンバータ142は、制御装置180からの信号PWDに基づいて、整流器140によって整流された電力を蓄電装置150の電圧レベルに変換して蓄電装置150へ出力する。システムメインリレーSMR2は、DC/DCコンバータ142と蓄電装置150との間に配設される。システムメインリレーSMR2は、制御装置180からの信号SE2が活性化されると、蓄電装置150をDC/DCコンバータ142と電気的に接続し、信号SE2が非活性化されると、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断する。電圧センサ190は、整流器140とDC/DCコンバータ142との間の電圧VHを検出し、その検出値を制御装置180へ出力する。」
(サ)「[0044] 制御装置180は、アクセル開度や車両速度、その他種々のセンサからの信号に基づいて、昇圧コンバータ162およびモータジェネレータ172,174をそれぞれ駆動するための信号PWC,PWI1,PWI2を生成し、その生成した信号PWC,PWI1,PWI2をそれぞれ昇圧コンバータ162およびインバータ164,166へ出力する。そして、車両の走行時、制御装置180は、信号SE1を活性化してシステムメインリレーSMR1をオンさせるとともに、信号SE2を非活性化してシステムメインリレーSMR2をオフさせる。」
(シ)「[0045] また、PAスイッチ184および給電要求スイッチ186が利用者によりオンされると、制御装置180は、カメラ120によって撮影された画像の情報をカメラ120から受け、その受けた画像情報をタッチディスプレイ182へ出力する。さらに、制御装置180は、タッチディスプレイ182において利用者によって入力された駐車位置の情報をタッチディスプレイ182から受ける。また、さらに、制御装置180は、電圧センサ190によって検出される電圧VHの検出値を電圧センサ190から受ける。そして、制御装置180は、これらのデータに基づいて、給電設備200の送電ユニット220(図1)へ車両100を誘導するように、後述の方法により駐車支援制御を実行する。」
(ス)「[0046] そして、送電ユニット220と車両100の受電ユニット110との位置合わせが完了すると、制御装置180は、通信部130を介して給電設備200へ給電指令を送信するとともに、信号SE2を活性化してシステムメインリレーSMR2をオンさせる。さらに、制御装置180は、DC/DCコンバータ142を駆動するための信号PWDを生成し、その生成した信号PWDをDC/DCコンバータ142へ出力する。これにより、給電設備200による蓄電装置150の充電が開始される。」
(セ)「[0048] 図4は、図3に示した制御装置180の機能ブロック図である。図4を参照して、制御装置180は、駐車支援ECU(Electronic Control Unit)410と、ステアリングECU420と、車両ECU430と、モータ制御ECU440と、充電ECU450とを含む。」
(ソ)「[0055] そして、送電ユニット220に対して所定位置まで車両100が誘導されたことを示す通知を駐車支援ECU410から受けると、車両ECU430は、受電ユニット110の受電状況に基づいて車両100の速度を制御(減速/停止)する。これにより、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせが行なわれる。」
(タ)「[0063] モータ制御ECU440は、車両ECU430からの指令に基づいて、モータジェネレータ172,174および昇圧コンバータ162を制御する。詳しくは、モータ制御ECU440は、モータジェネレータ172,174および昇圧コンバータ162を駆動するための信号を生成してそれぞれインバータ164,166および昇圧コンバータ162へ出力する。」
(チ)「[0067] なお、受電ユニット110の受電電圧(電圧VH)に代えて、送電ユニット220から受電ユニット110への送電効率を受電状況の指標として用いてもよい。」

(a)「モータジェネレータ‥‥174」は、記載事項(キ)の「モータジェネレータ174は‥‥駆動力を発生する。そして、モータジェネレータ174の駆動力は、駆動輪178に伝達される。」ものであって、記載事項(カ)の「車両100は、エンジン176およびモータジェネレータ174の少なくとも一方が発生する駆動力によって走行する。」ものであるので、「走行のための駆動力を発生するモータジェネレータ174」といえる。
(b)「蓄電装置150」は、記載事項(キ)の「モータジェネレータ174は、蓄電装置150に蓄えられた電力‥‥を用いて駆動力を発生する。」ものであるので、「モータジェネレータ174が駆動力を発生するために用いる電力を蓄える蓄電装置150」といえる。
(c)「車両100」は、記載事項(オ)の「車両100は、蓄電装置150と、‥‥モータジェネレータ172,174と‥‥を含む。」ものであるので、「‥‥モータジェネレータ174と、‥‥蓄電装置150とを備える車両100」といえる。
(d)「二次自己共振コイル112」は、記載事項(エ)の「二次自己共振コイル340および二次コイル350が図1の受電ユニット110に対応」するものであり、記載事項(ク)の「二次自己共振コイル112は、両端がオープン(非接続)のLC共振コイルであり、給電設備200の一次自己共振コイル(後述)と電磁場を介して共鳴することにより給電設備200から受電する。」ものであって、その「受電」は、記載事項(ア)の「受電ユニットにより非接触で受電」であるので、「外部の一次自己共振コイルから非接触で給電される電力を受電する二次自己共振コイル」といえる。
(e)「整流器140」は、記載事項(コ)の「整流器140は、二次コイル114によって取出された交流電力を整流する。」ものであって、その電力は、記載事項(ケ)の「この二次コイル114は、二次自己共振コイル112により受電された電力を電磁誘導により取出して整流器140へ出力する。」ものであるので、「二次自己共振コイルで受電された電力を整流する整流器140」といえる。
(f)「DC/DCコンバータ142」は、記載事項(コ)の「DC/DCコンバータ142は、‥‥整流器140によって整流された電力を蓄電装置150の電圧レベルに変換して蓄電装置150へ出力する。」ものであるので、「整流器140によって整流された電力を変換して蓄電池150へ出力するDC/DCコンバータ142」といえる。
(g)「システムメインリレーSMR2」は、記載事項(コ)の「システムメインリレーSMR2は、DC/DCコンバータ142と蓄電装置150との間に配設される。システムメインリレーSMR2は、制御装置180からの信号SE2が活性化されると、蓄電装置150をDC/DCコンバータ142と電気的に接続し、信号SE2が非活性化されると、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断する。」ものであるので、「DC/DCコンバータ142と蓄電装置150との間に配設され、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断及び接続するシステムメインリレーSMR2」といえる。
(h)「制御装置180」は、記載事項(セ)の「制御装置180は、駐車支援ECU(Electronic Control Unit)410と、ステアリングECU420と、車両ECU430と、モータ制御ECU440と、充電ECU450とを含む。」ものであって、その車両ECU430、モータ制御ECU440は、記載事項(タ)の「モータ制御ECU440は、車両ECU430からの指令に基づいて、モータジェネレータ172,174および昇圧コンバータ162を制御する。」ものであって、その車両ECU430が、記載事項(ソ)の「車両ECU430は、受電ユニット110の受電状況に基づいて車両100の速度を制御(減速/停止)する。これにより、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせが行なわれる。」ものであり、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせは、記載事項(エ)の「二次自己共振コイル340および二次コイル350が図1の受電ユニット110に対応し、一次コイル320および一次自己共振コイル330が図1の送電ユニット220に対応する。」ことから、一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの位置合わせでもあるので、「モータジェネレータ174を制御することで一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの位置合わせを行う制御装置180」といえる。
(i)(i1)記載事項(ス)の「送電ユニット220と車両100の受電ユニット110との位置合わせが完了すると‥‥制御装置180は、通信部130を介して給電設備200へ給電指令を送信するとともに、信号SE2を活性化してシステムメインリレーSMR2をオンさせる。」の「位置合わせが完了」迄の間は、上記(h)の「位置合わせ」の間であり、記載事項(サ)の「車両の走行時、制御装置180は‥‥信号SE2を非活性化してシステムメインリレーSMR2をオフ」であるから、上記(h)の「位置合わせ」の間、「制御装置180」は「システムメインリレーSRM2をオフ」させていることになる。
また、記載事項(シ)「制御装置180は、‥‥電圧センサ190によって検出される電圧VHの検出値を電圧センサ190から受ける。そして、制御装置180は、これらのデータに基づいて、給電設備200の送電ユニット220(図1)へ車両100を誘導する」の「電圧VH」は、記載事項(チ)で「受電ユニット110の受電電圧(電圧VH)に代えて、送電ユニット220から受電ユニット110への送電効率を受電状況の指標として用いてもよい。」とされたものであり、送電は一次自己共振コイルから二次自己共振コイルへ行われるものであるから、「制御装置180」は受電状況の指標に「一次自己共振コイルから二次自己共振コイルへの送電効率」を取得して用いることになる。
そして、「制御装置180」は上記(h)のとおり「モータジェネレータ174を制御することで一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの位置合わせ」を行うものであるから、記載事項(イ)の「送電ユニット220に対して予め定められた位置まで車両100が誘導されると、‥‥送電ユニット220から受電ユニット110への給電が行なわれ、受電ユニット110の受電状況に基づいて車両100の速度を制御(減速/停止)することによって、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせが行なわれる。」及び、記載事項(サ)?(ス)の一連の動作は、上記(h)の「位置合わせ」の間、「制御装置180は、システムメインリレーSMR2をオフにし、一次自己共振コイルから二次自己共振コイルへの送電効率を取得し、送電効率に基づいてモータジェネレータ174を制御」しているといえる。
(i2)また、「送電効率」は電力が受電されることで定義されるものであって、位置合わせの間、システムメインリレーSMR2がオフの状態でも電力を消費する負荷が存在し、送電効率を取得する為の電力が受電されることは、適当な負荷が存在しない場合、送電効率を定義するための適切な送電が実施されず、共振による異常電圧発生等の不都合が生じるという技術常識からしても自明なことであるから、整流器140からDC/DCコンバータ142までの間に「位置合わせの間に二次自己共振コイルが受電した電力を消費する負荷」が存在し、位置合わせの間、二次自己共振コイルが受電した電力が同負荷に供給されることは明らかである。
(i3)また、「送電効率」が送電する電力の電力量と受電した電力の電力量とに基づいて求められることは技術常識であり、「一次自己共振コイルから二次自己共振コイルへの送電効率を取得」することは、「二次自己共振コイルで受電された電力の電力量と一次自己共振コイルが送電する電力の電力量とに基づいて、一次自己共振コイルから二次自己共振コイルへの送電効率を求め」るものであって、「送電効率を求め」るためには、送電する電力の電力量を取得するための手段及び受電した電力の電力量を取得する手段が必須であり、受電した電力から電力量を求めるためには演算手段が必要であることは明らかであるから、「位置合わせの間」の「一次自己共振コイルから二次自己共振コイルへの送電効率を求め」るために、車両が「位置合わせの間、一次自己共振コイルが送電する電力の電力量を取得する手段」及び「位置合わせの間、二次自己共振コイルが受電した電力の電力量を演算する手段」を有することも明らかである。
そして、(i1)?(i3)をまとめると、引用例1の車両100は、
「位置合わせの間に二次自己共振コイルが受電した電力を消費する負荷と、
位置合わせの間、二次自己共振コイルが受電した電力の電力量を演算する手段と、
位置合わせの間、一次自己共振コイルが送電する電力の電力量を取得する手段と」を備えるといえ、一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの位置合わせの間の動作は、
「位置合わせの間、制御装置180は、システムメインリレーSMR2をオフにし、二次自己共振コイルで受電された電力を前記位置合わせの間に二次自己共振コイルが受電した電力を消費する負荷に供給し、前記二次自己共振コイルで受電された電力の電力量と前記一次自己共振コイルが送電する電力の電力量とに基づいて、一次自己共振コイルから二次自己共振コイルへの送電効率を求め、送電効率に基づいてモータジェネレータ174を制御」しているといえる。
(j)記載事項(ク)の「二次自己共振コイル112は‥‥給電設備200から受電する」、それに続く記載事項(ケ)の「この二次コイル114は、二次自己共振コイル112により受電された電力を‥‥整流器140へ出力する。」、それに続く記載事項(コ)の「DC/DCコンバータ142は‥‥整流器140によって整流された電力を蓄電装置150の電圧レベルに変換して蓄電装置150へ出力する。」は、受電した電力は整流器140とDC/DCコンバータ142との間の回路へ供給されることであって、受電される電力は記載事項(ウ)の「上記の第2段階時に送電ユニット220から送出される電力の大きさは、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせの完了後に送電ユニット220から受電ユニット110へ供給される電力よりも小さく設定される。」ものであるので、「受電した電力は整流器140とDC/DCコンバータ142との間の回路へ供給され、一次自己共振コイルから送出される電力の大きさは、位置合わせの完了後に送出される電力よりも小さく設定され」ているといえる。
(k)記載事項(ス)の「送電ユニット220と車両100の受電ユニット110との位置合わせが完了すると、制御装置180は、‥‥信号SE2を活性化してシステムメインリレーSMR2をオンさせる。さらに、制御装置180は、DC/DCコンバータ142を駆動するための信号PWDを生成‥‥」することは、記載事項(エ)の「二次自己共振コイル340および二次コイル350が図1の受電ユニット110に対応し、一次コイル320および一次自己共振コイル330が図1の送電ユニット220に対応する。」するものであり、「一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの位置合わせが完了すると、制御装置180は、システムメインリレーSMR2をオンにし、DC/DCコンバータ142を駆動」しているといえる。
(l)記載事項(ケ)の「二次コイル114は、二次自己共振コイル112により受電された電力を‥‥整流器140へ出力する。」、記載事項(コ)の「整流器140は、二次コイル114によって取出された交流電力を整流する。DC/DCコンバータ142は‥‥整流器140によって整流された電力を蓄電装置150の電圧レベルに変換して蓄電装置150へ出力する。」ことは、「受電した電力はDC/DCコンバータ142により変換され蓄電装置150へ供給される」ことといえる。

そうすると引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「走行のための駆動力を発生するモータジェネレータ174と、モータジェネレータ174が駆動力を発生するために用いる電力を蓄える蓄電装置150とを備える車両100において、
外部の一次自己共振コイルから非接触で給電される電力を受電する二次自己共振コイルと、
二次自己共振コイルで受電された電力を整流する整流器140と、
整流器140によって整流された電力を変換して蓄電池150へ出力するDC/DCコンバータ142と、
DC/DCコンバータ142と蓄電装置150との間に配設され、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断及び接続するシステムメインリレーSMR2と、
モータージェネレータ174を制御することで一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの位置合わせを行う制御装置180と、
前記位置合わせの間に二次自己共振コイルが受電した電力を消費する負荷と、
前記位置合わせの間、二次自己共振コイルが受電した電力の電力量を演算する手段と、
前記位置合わせの間、一次自己共振コイルが送電する電力の電力量を取得する手段と
を備えており、
前記位置合わせの間、制御装置180は、システムメインリレーSMR2をオフにし、二次自己共振コイルで受電された電力を前記位置合わせの間に二次自己共振コイルが受電した電力を消費する負荷に供給し、前記二次自己共振コイルで受電された電力の電力量と前記一次自己共振コイルが送電する電力の電力量とに基づいて、一次自己共振コイルから二次自己共振コイルへの送電効率を求め、送電効率に基づいてモータジェネレータ174を制御し、
受電した電力は整流器140とDC/DCコンバータ142との間の回路へ供給され、一次自己共振コイルから送出される電力の大きさは、位置合わせの完了後に送出される電力よりも小さく設定され、
一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの位置合わせが完了すると、制御装置180は、システムメインリレーSMR2をオンにし、DC/DCコンバータ142を駆動し、
受電した電力はDC/DCコンバータ142により変換され蓄電装置150へ供給される
車両100」

イ 引用例2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に公開された文献である特開2011-188679号公報(以下、「引用例2」という。)には、「車両の駐車支援装置およびそれを備える車両」に関して、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【0026】なお、上記の第2段階時に送電ユニット220からテスト信号として送出される電力の大きさは、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせの完了後に送電ユニット220から受電ユニット110へ供給される充電のための電力よりも小さく設定される。上記第2段階時に送電ユニット220から電力を送出するのは、送電ユニット220と受電ユニット110との間の距離を検知するためであり、本格的な給電を行なう際の大電力は不要だからである。」
(イ)「【0039】図5を参照して、給電装置200は、送電ユニット220と、高周波電源装置210と、通信ユニット240とを含む。車両100は、通信ユニット130と、受電ユニット110と、整流器140と、リレー146と、抵抗負荷144と受電電圧計測部(電圧センサ)190と、図示しない蓄電装置に充電を行なう充電装置(DC/DCコンバータ142)とを含む。
【0040】通信ユニット240と通信ユニット130とが無線で通信を行ない、受電ユニット110と送電ユニット220の位置合わせを行なうための情報をやり取りする。抵抗負荷144を一時的にリレー146で送電ユニットの出力に接続することによって、受電電圧計測部190が受電条件を満たすか否かの電圧情報を得ることができる。この電圧情報を得るための微弱電力の送電要求が通信ユニット130,240を介して車両100から給電装置200に伝えられる。
【0041】図6は、図1、図5に示した車両100の詳細を示す構成図である。
図6を参照して、車両100は、蓄電装置150と、システムメインリレーSMR1と、昇圧コンバータ162と、インバータ164,166と、モータジェネレータ172,174と、エンジン176と、動力分割装置177と、駆動輪178とを含む。」
(ウ)「【0046】モータジェネレータ174も、交流回転電機であり、モータジェネレータ172と同様に、たとえばロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機を含む。モータジェネレータ174は、蓄電装置150に蓄えられた電力およびモータジェネレータ172により発電された電力の少なくとも一方を用いて駆動力を発生する。そして、モータジェネレータ174の駆動力は、駆動輪178に伝達される。」
(エ)「【0054】二次コイル114は、二次自己共振コイル112と同軸上に配設され、電磁誘導により二次自己共振コイル112と磁気的に結合可能である。この二次コイル114は、二次自己共振コイル112により受電された電力を電磁誘導により取出して整流器140へ出力する。‥‥
【0055】整流器140は、二次コイル114によって取出された交流電力を整流する。DC/DCコンバータ142は、制御装置180からの信号PWDに基づいて、整流器140によって整流された電力を蓄電装置150の電圧レベルに変換して蓄電装置150へ出力する。」
(オ)「【0056】システムメインリレーSMR2は、DC/DCコンバータ142と蓄電装置150との間に配設される。システムメインリレーSMR2は、制御装置180からの信号SE2が活性化されると、蓄電装置150をDC/DCコンバータ142と電気的に接続し、信号SE2が非活性化されると、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断する。電圧センサ190は、整流器140とDC/DCコンバータ142との間の電圧VRを検出し、その検出値を制御装置180へ出力する。」
(カ)「【0057】整流器140とDC/DCコンバータ142との間には直列に接続された抵抗144およびリレー146が設けられる。リレー146は、後に説明するように、車両100が非接触給電を行なう場合に車両位置を調整する際に制御装置180によって導通状態に制御される。」
(キ)「【0058】制御装置180は、アクセル開度や車両速度、その他種々のセンサからの信号に基づいて、昇圧コンバータ162およびモータジェネレータ172,174をそれぞれ駆動するための信号PWC,PWI1,PWI2を生成する。制御装置180は、生成した信号PWC,PWI1,PWI2をそれぞれ昇圧コンバータ162およびインバータ164,166へ出力する。そして、車両の走行時、制御装置180は、信号SE1を活性化してシステムメインリレーSMR1をオンさせるとともに、信号SE2を非活性化してシステムメインリレーSMR2をオフさせる。
【0059】また、給電装置200(図1)から車両100への給電が行なわれるとき、制御装置180は、カメラ120によって撮影された画像をカメラ120から受ける。また、制御装置180は、給電装置200から送出される電力の情報(電圧および電流)を給電装置200から通信ユニット130を介して受け、電圧センサ190によって検出される電圧VRの検出値を電圧センサ190から受ける。そして、制御装置180は、これらのデータに基づいて、給電装置200の送電ユニット220(図1)へ当該車両を誘導するように後述の方法により車両の駐車制御を実行する。
【0060】送電ユニット220への駐車制御が完了すると、制御装置180は、通信ユニット130を介して給電装置200へ給電指令を送信するとともに、信号SE2を活性化してシステムメインリレーSMR2をオンさせる。そして、制御装置180は、DC/DCコンバータ142を駆動するための信号PWDを生成し、その生成した信号PWDをDC/DCコンバータ142へ出力する。」
(ク)「【0063】送電ユニット220は、高周波電源装置210に接続される一次コイル232と、電磁誘導により一次コイル232と磁気的に結合される一次自己共振コイル234と、一次自己共振コイル234の両端に接続されたコンデンサ242とを含む。
【0064】受電ユニット110は、一次自己共振コイル234と、電磁場を介して共鳴する二次自己共振コイル112と、二次自己共振コイル112の両端に直列に接続されるコンデンサ111およびリレー113とを含む。リレー113は、受電する場合に導通状態に制御される。」
(ケ)「【0065】受電ユニット110は、二次自己共振コイル112と磁気的に結合される二次コイル114をさらに含む。二次コイル114で受電された交流電力は整流器140で整流される。整流器140の出力にはコンデンサC1が接続されており、車両と給電設備との位置を調整する場合に用いられるリレー146および抵抗144がコンデンサC1の電極間に接続されている。整流器140の出力側にはさらに充電器(DC/DCコンバータ142)が接続され適切な充電電圧に電圧が変換され、変換後の充電電圧はバッテリ(蓄電装置150)に与えられる。」
(コ)「【0130】好ましくは、図7に示すように、受電ユニット110は、送電ユニット220の送電コイルである一次自己共振コイル234から電磁共鳴により非接触で電力を受電する受電コイルである二次自己共振コイル112を含む。」

・記載事項(イ)の「モータジェネレータ‥‥174」は、記載事項(ウ)の「モータジェネレータ174は‥‥駆動力を発生する。」ものであって、車両100は駆動力によって走行するので、「走行のための駆動力を発生するモータジェネレータ174」といえる。
・記載事項(イ)の「蓄電装置150」は、記載事項(ウ)の「モータジェネレータ174は、蓄電装置150に蓄えられた電力‥‥を用いて駆動力を発生する。」ものであるので、「モータジェネレータ174が駆動力を発生するために用いる電力を蓄える蓄電装置150」といえる。
・記載事項(イ)の「車両100」は、「車両100は、蓄電装置150と、‥‥モータジェネレータ172,174と‥‥を含む。」ものであるので、「‥‥モータジェネレータ174と、‥‥蓄電装置150とを備える車両100」といえる。
・記載事項(コ)の「二次自己共振コイル112」は、「送電ユニット220の送電コイルである一次自己共振コイル234から電磁共鳴により非接触で電力を受電する受電コイルである」ので、「外部の一次自己共振コイルから非接触で給電される電力を受電する二次自己共振コイル」といえる。
・記載事項(イ)の「整流器140」は、記載事項(エ)の「整流器140は、二次コイル114によって取出された交流電力を整流する。」ものであって、その電力は、記載事項(エ)の「二次自己共振コイル112により受電された電力」であるので、「二次自己共振コイルで受電された電力を整流する整流器140」といえる。
・記載事項(イ)の「DC/DCコンバータ142」は、記載事項(エ)の「DC/DCコンバータ142は、‥‥整流器140によって整流された電力を蓄電装置150の電圧レベルに変換して蓄電装置150へ出力する。」ものであるので、「整流器140によって整流された電力を変換して蓄電池150へ出力するDC/DCコンバータ142」といえる。
・記載事項(イ)の「リレー146」は、記載事項(カ)の「リレー146は、後に説明するように、車両100が非接触給電を行なう場合に車両位置を調整する際に制御装置180によって導通状態に制御される」ものであるので、「車両100が非接触給電を行なう場合に車両位置を調整する際に制御装置180によって導通状態に制御されるリレー146」といえる。
・記載事項(イ)の「抵抗負荷144」は、「位置合わせを行なうための情報をやり取りする。抵抗負荷144を一時的にリレー146で送電ユニットの出力に接続する」ものであるので、「位置合わせを行なうため一時的にリレー146で送電ユニットの出力に接続する抵抗負荷144」といえる。
・記載事項(オ)の「システムメインリレーSMR2」は、記載事項(キ)の「車両の走行時‥‥システムメインリレーSMR2をオフさせる。‥‥駐車制御が完了すると、‥‥システムメインリレーSMR2をオンさせる」ものであって、記載事項(オ)の「システムメインリレーSMR2は、制御装置180からの信号SE2が活性化されると、蓄電装置150をDC/DCコンバータ142と電気的に接続し、信号SE2が非活性化されると、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断する」ものであるので、「車両の走行時オフされ、駐車制御が完了するとオンされ、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断及び接続するシステムメインリレーSMR2」といえる。
・記載事項(キ)の「制御装置180」は、「制御装置180は‥‥車両の駐車制御を実行する。」ものであるので、「車両の駐車制御を実行する制御装置180」といえる。

そうすると引用例2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「走行のための駆動力を発生するモータジェネレータ174と、モータジェネレータ174が駆動力を発生するために用いる電力を蓄える蓄電装置150とを備える車両100において、
外部の一次自己共振コイルから非接触で給電される電力を受電する二次自己共振コイルと、
二次自己共振コイルで受電された電力を整流する整流器140と、
整流器140によって整流された電力を変換して蓄電池150へ出力するDC/DCコンバータ142と、
車両100が非接触給電を行なう場合に車両位置を調整する際に制御装置180によって導通状態に制御されるリレー146と、
位置合わせを行なうため一時的にリレー146で送電ユニットの出力に接続する抵抗負荷144と、
車両の走行時オフされ、駐車制御が完了するとオンされ、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断及び接続するシステムメインリレーSMR2と、
車両の駐車制御を実行する制御装置180と
を備えており、
テスト信号として送出される電力の大きさは、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせの完了後に送電ユニット220から受電ユニット110へ供給される充電のための電力よりも小さく設定される
車両100」

ウ 引用例3
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に公開された文献である特開2010-252497号公報(以下、「引用例3」という。)には、「無線電力伝送装置および無線電力伝送方法」に関して、図面とともに次の記載がある。
(ア)「【0039】ステップS101では、送電が開始される。送電コントローラ17は、予め設定されている内容か、またはデータ送受信ユニット12、22を介した受電側との通信結果に従って発振回路18を制御し、決定された周波数および電圧でコイルに電流を流す。この周波数は送電ユニット10および受電ユニット20の共振周波数であるため、この送電によって送電コイル15と受電コイル25との間で磁界共鳴が起き、受電ユニット20は電力を受電することが出来る。その後、処理はステップS102へ進む。」
(イ)「【0040】ステップS102では、伝送効率が算出される。送電コントローラ17および受電コントローラ27の少なくとも何れか(以下、単に「コントローラ17、27」と記載する)は、送電アンプ14でモニタされた送電電力に対する、整流回路28でモニタされた受電電力の割合を算出することで、伝送効率を算出する。なお、送電コントローラ17は、データ送受信ユニット12、22を介して、受電ユニット20側から受電電力を取得することが出来る。また、受電コントローラ27は、データ送受信ユニット12、22を介して、送電ユニット10側から送電電力を取得することが出来る。即ち、送電アンプ14およびコントローラ17、27は、本発明の送電電力取得手段に相当し、整流回路28およびコントローラ17、27は、本発明の受電電力取得手段に相当する。その後、処理はステップS103へ進む。」

・記載事項(イ)の「整流回路28でモニタされた受電電力」は、記載事項(ア)の「受電コイル25」で受電される電力の電力量であるので、受電コイル25で受電された電力の電力量を示す受電量といえる。
そして、記載事項(イ)の「受電コントローラ27」は、送電アンプ14でモニタされた送電電力に対する、受電コイル25で受電された電力の電力量を示す受電量の割合を算出することで、伝送効率を算出する受電コントローラ27といえる。
・記載事項(イ)の「送電アンプ14でモニタされた送電電力」は、送電コイル15から送電されるものであって、受電コイル25に対して送電されるものであるので、送電コイル15が受電コイル25に対して送電する電力の電力量といえる。
そして、記載事項(イ)の「データ送受信ユニット12、22を介して、送電ユニット10側から送電電力を取得」する「データ送受信ユニット22」は、送電コイル15が受電コイル25に対して送電する電力の電力量を示す送電電力がデータ送受信ユニット12を介して取得されるデータ送受信ユニット22といえる。
・記載事項(イ)の「送電アンプ14でモニタされた送電電力に対する、整流回路28でモニタされた受電電力の割合を算出することで、伝送効率を算出」する受電コントローラ27は、車両に搭載されるものであるので、当該車両は、送電電力に対する、受電量の割合を算出することで、伝送効率を算出する無線電力伝送装置を備えた車両といえる。

そうすると引用例3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「送電アンプ14でモニタされた送電電力に対する、受電コイル25で受電された電力の電力量を示す受電量の割合を算出することで、伝送効率を算出する受電コントローラ27、
送電コイル15が受電コイル25に対して送電する電力の電力量を示す送電電力がデータ送受信ユニット12を介して取得されるデータ送受信ユニット22
を備え、
送電電力に対する、受電量の割合を算出することで、伝送効率を算出する無線電力伝送装置を備えた車両。」

(3)本願補正発明と引用発明1との対比
ア 対比
(a)引用発明1の「走行のための駆動力を発生するモータジェネレータ174」は、本願補正発明の「移動のための動力を発生するモータ」に相当する。
(b)引用発明1の「モータジェネレータ174が駆動力を発生するために用いる電力を蓄える蓄電装置150」は、本願補正発明の「モータを駆動する電力を供給する蓄電池」に相当する。
(c)引用発明1の「車両100」は、本願補正発明の「移動車両」に相当する。
(d)引用発明1の「外部の一次自己共振コイル」は、本願補正発明の「外部の一次側コイル」に相当する。
そして、引用発明1の「外部の一次自己共振コイルから非接触で給電される電力を受電する二次自己共振コイル」は、本願補正発明の「外部の一次側コイルから非接触で給電される電力を受電する二次側コイル」に相当する。
(e)引用発明1の「位置合わせの間に二次自己共振コイルが受電した電力を消費する負荷」と、本願補正発明の「二次側コイルが受電した受電電力を消費する負荷装置」とは、二次側コイルが受電した受電電力を消費する負荷である点で共通する。
(f)引用発明1の「整流器140によって整流された電力」は、「二次自己共振コイルで受電された電力を整流」したものであるので、本願補正発明の「二次側コイルが受電した電力」に相当する。
(g)引用発明1のDC/DCコンバータ142、システムメインリレーSMR2は「一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの位置合わせが完了すると、制御装置180は、システムメインリレーSMR2をオンにし、DC/DCコンバータ142を駆動し、
受電した電力はDC/DCコンバータ142により変換され蓄電装置150へ供給」するものであって、二次側コイルが受電した電力を蓄電池へ供給するか、蓄電池へ供給しないかの何れかに設定する電力供給先設定手段といえるものである。
そうすると、引用発明1の「整流器140によって整流された電力を変換して蓄電池150へ出力するDC/DCコンバータ142と、
DC/DCコンバータ142と蓄電装置150との間に配設され、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断及び接続するシステムメインリレーSMR2」と、本願補正発明の「前記二次側コイルが受電した電力の供給先を前記負荷装置あるいは前記蓄電池の何れかに設定する電力供給先設定手段」とは、二次側コイルが受電した電力を蓄電池へ供給するか、蓄電池へ供給しないかの何れかに設定する電力供給先設定手段である点で共通する。
(h)引用発明1は「一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの位置合わせの間、制御装置180は、システムメインリレーSMR2をオフにし、二次自己共振コイルで受電された電力を位置合わせの間に二次自己共振コイルが受電した電力を消費する負荷に供給」するものであるので、引用発明1の「位置合わせの間」は、上記(g)の二次側コイルが受電した電力が電力供給先設定手段によって蓄電池へ供給しないように設定された状態であって、かつ、二次側コイルが受電した電力を消費する負荷に供給されている状態である。
そして、引用発明1の「位置合わせの間において、前記二次自己共振コイルが受電した電力の電力量を演算する手段」と、本願補正発明の「前記二次側コイルが受電した電力の供給先が前記電力供給先設定手段によって前記負荷装置に設定された状態において前記二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求める受電量演算部」とは、二次側コイルが受電した電力が電力供給先設定手段によって蓄電池へ供給しないように設定され、かつ、受電した電力を消費する負荷に供給されている状態において二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求める受電量演算部である点で共通する。
(i)引用発明1の「モータージェネレータ174を制御することで一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの位置合わせを行う制御装置180」は、本願補正発明の「前記モータを制御して前記一次側コイルに対する前記二次側コイルの位置を調整する制御部」に相当する。
(j)引用発明1の「一次自己共振コイルから二次自己共振コイルへの送電効率」は、本願補正発明の「前記一次側コイルから前記二次側コイルへの電力伝送効率」に相当する。
そして、引用発明1の「制御装置180」が「位置合わせの間、制御装置180は、システムメインリレーSMR2をオフにし、二次自己共振コイルで受電された電力を位置合わせの間に二次自己共振コイルが受電した電力を消費する負荷に供給し、前記二次自己共振コイルで受電された電力の電力量と前記一次自己共振コイルが送電する電力の電力量とに基づいて、一次自己共振コイルから二次自己共振コイルへの送電効率を求め、送電効率に基づいてモータジェネレータ174を制御」することは、本願補正発明の「前記制御部は、前記受電量と前記給電量とに基づいて前記一次側コイルから前記二次側コイルへの電力伝送効率を求め、前記電力伝送効率を参照しつつ前記モータを制御」することに相当する。

イ 一致点と相違点
[一致点]
「移動のための動力を発生するモータと、該モータを駆動する電力を供給する蓄電池とを備える移動車両において、
外部の一次側コイルから非接触で給電される電力を受電する二次側コイルと、
前記二次側コイルが受電した受電電力を消費する負荷と、
前記二次側コイルが受電した電力を蓄電池へ供給するか、蓄電池へ供給しないかの何れかに設定する電力供給先設定手段と、
前記二次側コイルが受電した電力が電力供給先設定手段によって蓄電池へ供給しないように設定され、かつ、受電した電力を消費する負荷に供給されている状態において前記二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求める受電量演算部と、
前記モータを制御して前記一次側コイルに対する前記二次側コイルの位置を調整する制御部と、
を備えており、
前記制御部は、前記受電量と前記給電量とに基づいて前記一次側コイルから前記二次側コイルへの電力伝送効率を求め、前記電力伝送効率を参照しつつ前記モータを制御する
移動車両。」

[相違点1]
本願補正発明は、
(A)二次側コイルが受電した受電電力を消費する負荷が「負荷装置」であり、
(B)電力供給制御手段は、二次側コイルが受電した電力「の供給先を前記負荷装置あるいは前記蓄電池の何れか」に設定する電力供給先設定手段であり、
(C)二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求める受電量演算部が、「二次側コイルが受電した電力の供給先が前記電力供給先設定手段によって前記負荷装置に設定された状態」において前記二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求める受電量演算部であり、
(D)「前記負荷装置の負荷は、前記電力供給先設定手段よりも軽い」のに対して、引用発明1は、
(a)二次側コイルが受電した受電電力を消費する負荷の構成が特定されておらず、
(b)DC/DCコンバータ142及びシステムメインリレーSMR2(本願補正発明の「電力供給制御手段」に相当するもの)は、二次側コイルが受電した電力を蓄電池へ供給するか、蓄電池へ供給しないかの何れかに設定するものであるものの、供給先を「前記負荷装置あるいは前記蓄電池」の何れかに設定するものか明らかではなく、
(c)二次自己共振コイルが受電した電力の電力量を演算する手段(本願補正発明の「受電量演算部」に相当するもの)が受電量を求める状態は、二次側コイルが受電した電力が電力供給先設定手段によって蓄電池へ供給しないに設定され、かつ、受電した電力を消費する負荷に供給されている状態であるものの、「受電した電力の供給先が電力供給先設定手段によって前記負荷装置」に設定された状態ではなく、
(d)「負荷装置」の負荷の大きさが特定されていない点。

[相違点2]
本願補正発明の移動車両は、「前記一次側コイルが前記二次側コイルに給電する電力の電力量を示す給電量が外部から入力される入力部」を備えているのに対して、引用発明1は、これをを有していない点。

(4)容易想到性の判断
相違点について検討する。
ア 相違点1について
(ア)引用発明2と本願補正発明の対応関係
(a)引用発明2の「走行のための駆動力を発生するモータジェネレータ174」は、本願補正発明の「移動のための動力を発生するモータ」に相当し、以下同様に、
「モータジェネレータ174が駆動力を発生するために用いる電力を蓄える蓄電装置150」は、「モータを駆動する電力を供給する蓄電池」に、
「車両100」は、「移動車両」に、
「外部の一次自己共振コイルから非接触で給電される電力を受電する二次自己共振コイル」は、「外部の一次側コイルから非接触で給電される電力を受電する二次側コイル」に、
「車両の駐車制御を実行する制御装置180」は、「前記モータを制御して前記一次側コイルに対する前記二次側コイルの位置を調整する制御部」に相当する。
(b)引用発明2の「抵抗負荷144」は、「位置合わせを行なうため一時的にリレー146で送電ユニットの出力に接続する」ものであって、位置合わせ時に、二次自己共振コイル(本願補正発明の「二次側コイル」に相当)が受電した受電電力を消費するものであることが自明であるので、本願補正発明の「二次側コイルが受電した受電電力を消費する負荷装置」に相当する。
(c)引用発明2の「車両の走行時オフされ、駐車制御が完了するとオンされ、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断及び接続するシステムメインリレーSMR2」は、車両位置を調整する駐車制御が完了すると、二次自己共振コイル(本願補正発明の「二次側コイル」に相当)が受電した電力の供給を蓄電装置(本願補正発明の「蓄電池」に相当)に対して行うものである。
また、引用発明2の「車両100が非接触給電を行なう場合に車両位置を調整する際に制御装置180によって導通状態に制御されるリレー146」は、車両位置を調整する際に、二次自己共振コイル(本願補正発明の「二次側コイル」に相当)が受電した電力の供給を抵抗負荷144(本願補正発明の「負荷装置」に相当)に対して行うものである。
そうすると、引用発明2の「車両100が非接触給電を行なう場合に車両位置を調整する際に制御装置180によって導通状態に制御されるリレー146」及び「車両の走行時オフされ、駐車制御が完了すると、オンされるシステムメインリレーSMR2」は、両方で本願補正発明の「前記二次側コイルが受電した電力の供給先を前記負荷装置あるいは前記蓄電池の何れかに設定する電力供給先設定手段」に相当する。
(d)また、引用発明2は「テスト信号として送出される電力の大きさは、送電ユニット220と受電ユニット110との位置合わせの完了後に送電ユニット220から受電ユニット110へ供給される充電のための電力よりも小さく設定される」ものであり、充電のための比較的大きな電力を変換するDC/DCコンバータ142において、当該大きな電力を受け入れるように設計した場合に、ある程度負荷が重くなることは自明であり、また、位置合わせ時の無駄な電力消費を抑えるために、テスト信号として送出される電力は、受電後に検出可能な程度で十分小さく設定され、受電した受電電力を消費する負荷装置の負荷が比較的軽く設定されることも自明である。
そして、技術常識に基づいて供給される電力の大きさを勘案して、センシングのために用いられる小さな電力を消費する負荷と、車両の駆動力を発生するモータジェネレータに電力を供給する蓄電装置へ、大きな充電電力を変換するDC/DCコンバータとの負荷とを比較すると、前者の負荷が軽くなることは自ずと明らかであるので、引用発明2の「負荷装置」の負荷は、実質的にDC/DCコンバータより軽いものと認められ、当該構成は本願補正発明の「前記負荷装置の負荷は、前記電力供給先設定手段よりも軽い」構成に相当する。

そうすると、引用発明2は、本願補正発明の表現に倣うと
「移動のための動力を発生するモータと、該モータを駆動する電力を供給する蓄電池とを備える移動車両において、
外部の一次側コイルから非接触で給電される電力を受電する二次側コイルと、
前記二次側コイルが受電した受電電力を消費する負荷装置と、
前記二次側コイルが受電した電力の供給先を前記負荷装置あるいは前記蓄電池の何れかに設定する電力供給先設定手段と、
前記モータを制御して前記一次側コイルに対する前記二次側コイルの位置を調整する制御部と、
を備えており、
前記負荷装置の負荷は、前記電力供給先設定手段よりも軽い
移動車両。」であるといえる。

(イ)引用発明1への引用発明2の適用
(a)引用発明2は、「走行のための駆動力を発生するモータジェネレータ174と、モータジェネレータ174が駆動力を発生するために用いる電力を蓄える蓄電装置150とを備える車両100において、
外部の一次自己共振コイルから非接触で給電される電力を受電する二次自己共振コイルと、
二次自己共振コイルで受電された電力を整流する整流器140と、
整流器140によって整流された電力を変換して蓄電池150へ出力するDC/DCコンバータ142と、
蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断及び接続するシステムメインリレーSMR2と、
制御装置180と
を備えた車両100」であるという基本構成において、引用発明1と共通するものである。
(b)引用発明1は、「位置合わせの間に二次自己共振コイルが受電した電力を消費する負荷」をどのように実装して、当該負荷へどのように電力を供給するものか具体的に特定されていないところ、上記負荷及び当該負荷への電力の供給を実現するために、引用発明2の構成を採用して、引用発明1の「DC/DCコンバータ142と蓄電装置150との間に配設され、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断及び接続するシステムメインリレーSMR2」、「一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの位置合わせの間、制御装置180は、システムメインリレーSMR2をオフにし」、「一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの位置合わせが完了すると、制御装置180は、システムメインリレーSMR2をオンにし」という構成を、引用発明2の「車両100が非接触給電を行なう場合に車両位置を調整する際に制御装置180によって導通状態に制御されるリレー146と、
位置合わせを行なうため一時的にリレー146で送電ユニットの出力に接続する抵抗負荷144と、
車両の走行時オフされ、駐車制御が完了するとオンされ、蓄電装置150とDC/DCコンバータ142との間の電路を遮断及び接続するシステムメインリレーSMR2」という具体的なものに置換して、負荷を「負荷装置」とし、電力供給制御手段を、二次側コイルが受電した電力「の供給先を前記負荷装置あるいは前記蓄電池の何れか」に設定する電力供給先設定手段とすることは当業者が容易になし得ることである。
(c)また、上記(b)の電力供給制御手段を、二次側コイルが受電した電力「の供給先を前記負荷装置あるいは前記蓄電池の何れか」に設定する電力供給先設定手段とすることとすれば、引用発明1の「位置合わせの間において、前記二次自己共振コイルが受電した電力の電力量を演算する手段」(本願補正発明の「受電量演算部」と、「二次側コイルが受電した電力が電力供給先設定手段によって蓄電池へ供給しないように設定され、かつ、受電した電力を消費する負荷に供給されている状態において二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求める受電量演算部」である点で共通するもの)の受電量演算が、「二次側コイルが受電した電力の供給先が前記電力供給先設定手段によって前記負荷装置に設定された状態」においてなされるものとなることも当然なされるものとなる。
(d)また、引用発明1も、位置合わせの間の「一次自己共振コイルから送出される電力の大きさ」が、「位置合わせの完了後に送出される電力よりも小さく設定され」たものであるので、当該小さい電力を消費する抵抗負荷144の消費電力が、位置合わせの完了後の消費電力より小さいものとなること(すなわち、「前記負荷装置の負荷は、前記電力供給先設定手段よりも軽い」構成となること)も自明である。
そうすると、引用発明1に引用発明2を適用して、本願補正発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到することである。

イ 相違点2について
(ア)引用発明3と本願補正発明の対応関係
(a)引用発明3の「車両」は、本願補正発明の「移動車両」に相当する。
(b)引用発明3の「受電コイル25」は、本願補正発明の「二次側コイル」に相当し、同様に「受電コイル25で受電された電力の電力量を示す受電量」は、本願補正発明の「二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量」に相当する。
また、引用発明3の「送電アンプ14でモニタされた送電電力に対する、受電コイル25で受電された電力の電力量を示す受電量の割合を算出することで、伝送効率を算出する受電コントローラ27」は、「受電された電力の電力量」を求める部分を有していることが自明であり、その部分は、本願補正発明の「前記二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求める受電量演算部」に相当する。
(c)引用発明3の「送電コイル15」は、本願補正発明の「一次側コイル」に相当し、同様に「受電コイル25に対して送電する電力の電力量を示す送電電力」は、「前記一次側コイルが前記二次側コイルに給電する電力の電力量を示す給電量」に相当する。
そして、引用発明3の「送電コイル15が受電コイル25に対して送電する電力の電力量を示す送電電力がデータ送受信ユニット12を介して取得されるデータ送受信ユニット22」は、「前記一次側コイルが前記二次側コイルに給電する電力の電力量を示す給電量が外部から入力される入力部」に相当する。
(d)引用発明3は「無線電力伝送装置」に関するものであって、引用発明3の「受電コイル25」は、上記(b),(c)より、「送電コイル15」から送電される電力を受電するものであるから、本願補正発明の「外部の一次側コイルから非接触で給電される電力を受電する二次側コイル」に相当する。
そして、引用発明3の「送電電力に対する、受電量の割合を算出することで、伝送効率を算出する」ことは、本願補正発明の「前記受電量と前記給電量とに基づいて前記一次側コイルから前記二次側コイルへの電力伝送効率を求め」ることに相当する。

そうすると、引用発明3は、本願補正発明の表現に倣うと
「移動車両において、
外部の一次側コイルから非接触で給電される電力を受電する二次側コイルと、
前記二次側コイルで受電された電力の電力量を示す受電量を求める受電量演算部と、
前記一次側コイルが前記二次側コイルに給電する電力の電力量を示す給電量が外部から入力される入力部と、
を備えており、
前記受電量と前記給電量とに基づいて前記一次側コイルから前記二次側コイルへの電力伝送効率を求める
移動車両。」であるといえる。

(イ)引用発明1への引用発明3の適用
(a)引用発明1と、引用発明3は、いずれも車両に無線で電力を送電する技術分野に属し、無線電力送電の効率を高めることを課題としたものであって、同一の技術分野に属し、課題を共有するものである。
(b)引用発明1は、「一次自己共振コイルから二次自己共振コイルへの送電効率を取得し、送電効率に基づいてモータジェネレータ174を制御」するものであって、送電効率を取得するために、一次自己共振コイルから送電する電力量を取得することが必須であるところ、具体的な方法が特定されていない。
上記取得方法を実現するために、引用発明1に引用発明3の「送電コイル15が受電コイル25に対して送電する電力の電力量を示す送電電力がデータ送受信ユニット12を介して取得されるデータ送受信ユニット22」(本願補正発明の「前記一次側コイルが前記二次側コイルに給電する電力の電力量を示す給電量が外部から入力される入力部」に相当するもの)を適用して、一次自己共振コイルから送電する電力量を取得するよう構成することは、当業者が容易になし得ることである。
(c)そうすると、引用発明1の送電効率取得を、引用発明3で具現化して、本願補正発明の相違点2に係る構成とすることも、当業者が容易に想到することである。

(5)総合判断
そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明1、引用発明2及び引用発明3から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願補正発明は、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願補正発明について
1 本願発明
平成28年7月28日付けでなされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年1月7日付けでなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2の1(2)に記載されたとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1-3及びその記載事項は、前記第2の2(2)に記載したとおりのものである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2の2で検討した本願補正発明から、「負荷装置」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-29 
結審通知日 2017-10-03 
審決日 2017-10-27 
出願番号 特願2012-31864(P2012-31864)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 相羽 昌孝  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 遠藤 尊志
矢島 伸一
発明の名称 移動車両及び非接触電力伝送装置  
代理人 高橋 久典  
代理人 寺本 光生  
代理人 志賀 正武  

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