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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1335443
審判番号 不服2017-4307  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-27 
確定日 2017-12-14 
事件の表示 特願2013-225456号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月 7日出願公開、特開2015- 84918号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月30日に出願したものであって、平成27年6月18日に手続補正書が提出され、平成28年5月9日付けで拒絶理由が通知され、平成28年7月1日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年8月2日付けで拒絶理由が通知(いわゆる「最後の拒絶理由通知」)され、平成28年9月16日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成29年1月6日付けで平成28年9月16日付けの手続補正書が却下されると共に拒絶査定がなされ、これに対し平成29年3月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1?2の記載を含む補正であり、平成28年7月1日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は、本件補正箇所を示す。)。

(補正前:平成28年7月1日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技を行う遊技機であって、
表示領域を有する表示装置と、
第1位置と当該第1位置とは異なる第2位置との間を少なくとも移動可能な可動部材と、
遊技制御プログラムに基づいて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
該遊技制御手段から出力される指令情報に基づいて演出の実行を制御する演出制御手段と、
異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段が前記異常を検出したことに応じて、当該異常が発生したことを示す異常情報を表示させる異常表示制御を行う異常表示制御手段と、を備え、
前記遊技制御手段は、前記遊技制御プログラムにより実行される第1の処理および第2の処理のそれぞれにおいて、指令情報を出力可能であり、
前記第1の処理と、前記第2の処理とでは、出力する指令情報の設定順序が異なり、
前記可動部材は、少なくとも前記第1位置に位置するときに表示領域の一部を遊技者側から覆い、
前記異常表示制御手段は、前記第1位置に位置する前記可動部材によって覆われない表示領域に前記異常情報を表示させ、
前記演出制御手段は、表示領域の所定の位置において実行する演出表示を、前記異常情報が表示されているときにも継続して実行することが可能であることを特徴とする遊技機。」

(補正後:本件補正である平成29年3月27日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技を行う遊技機であって、
少なくとも識別情報の可変表示を実行可能な領域を含む表示領域を有する表示装置と、
第1位置と当該第1位置とは異なる第2位置との間を少なくとも移動可能な可動部材と、
遊技制御プログラムに基づいて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
該遊技制御手段から出力される指令情報に基づいて演出の実行を制御する演出制御手段と、
異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段が前記異常を検出したことに応じて、当該異常が発生したことを示す異常情報を表示させる異常表示制御を行う異常表示制御手段と、を備え、
前記遊技制御手段は、前記遊技制御プログラムにより実行される第1の処理および第2の処理のそれぞれにおいて、指令情報を出力可能であり、
前記第1の処理と、前記第2の処理とでは、出力する指令情報の設定順序が異なり、
前記可動部材は、少なくとも前記第1位置に位置するときに表示領域の一部を遊技者側から覆い、
前記異常表示制御手段は、前記第1位置に移動した前記可動部材によって覆われない位置に前記異常情報を表示させ、
前記演出制御手段は、前記異常情報が表示されているときにも表示領域の所定の位置において、可変表示される識別情報とは異なるキャラクタ画像の表示を、前記可動部材の移動により位置関係を変更することなく継続して実行することが可能であることを特徴とする、遊技機。」

2.補正の適否
(1)補正事項
本件補正は、補正前の請求項1について、以下に挙げる補正事項を含むものである。

ア 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「表示装置」に関して、「表示領域を有する」という記載を、「少なくとも識別情報の可変表示を実行可能な領域を含む表示領域を有する」という記載にする補正(以下、「補正事項ア」という。)。

イ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「異常表示制御手段」に関して、「前記第1位置に位置する前記可動部材によって覆われない表示領域に前記異常情報を表示させ」という記載を、「前記第1位置に移動した前記可動部材によって覆われない位置に前記異常情報を表示させ」という記載にする補正(以下、「補正事項イ」という。)。

ウ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「演出制御手段」に関して、「表示領域の所定の位置において実行する演出表示を、前記異常情報が表示されているときにも継続して実行することが可能であること」という記載を、「前記異常情報が表示されているときにも表示領域の所定の位置において、可変表示される識別情報とは異なるキャラクタ画像の表示を、前記可動部材の移動により位置関係を変更することなく継続して実行することが可能であること」という記載にする補正(以下、「補正事項ウ」という。)。

(2)新規事項
補正事項ウについては、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に記載される「演出制御手段」について、補正前の「表示領域の所定の位置において実行する演出表示を、前記異常情報が表示されているときにも継続して実行することが可能であること」なる記載から、「前記異常情報が表示されているときにも表示領域の所定の位置において、可変表示される識別情報とは異なるキャラクタ画像の表示を、前記可動部材の移動により位置関係を変更することなく継続して実行することが可能であること」なる記載に補正されている。
ここで、上記「可変表示される識別情報とは異なるキャラクタ画像の表示」については、明細書の段落【0086】、【0087】、【0230】の記載内容を検討すると、飾り図柄(すなわち識別情報)の可変表示中に、画像表示装置5の画面上に当該飾り図柄とは異なるキャラクタ画像を表示させる旨が記載されていることから、可変表示される識別情報とは異なるキャラクタ画像が表示される点に関しては、出願当初の明細書等に明示的に記載された事項であると認められる。
しかしながら、上記キャラクタ画像が当該画像表示装置5のどの位置に表示されるのか、特に、異常情報が表示されたときにどの位置に表示されるのか、そして、可動部材が移動したときに当該キャラクタ画像の表示の位置関係が変化するのか否かに関しては、出願当初の明細書等に何ら明示的に記載されておらず、出願時の遊技機分野における技術常識に照らしても、当該キャラクタ画像を、異常情報が表示され、かつ可動部材が移動したときに、位置関係を変更することなく継続して表示させることが、出願当初の明細書等の記載から自明な事項であると解することもできない。
よって、当該補正事項ウは、新たな技術的事項を導入するものである。
同様に、明細書の段落【0008】に関する補正も、上述の理由により、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、この補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

(3)補正の目的
(ア)補正事項アは、「表示装置」における「表示領域を有する」ことについて、「少なくとも識別情報の可変表示を実行可能な領域を含む」と限定する補正であり、また、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(イ)補正事項イは、「前記異常情報を表示させ」る場所が、「前記第1位置に位置する前記可動部材によって覆われない表示領域」から「前記第1位置に移動した前記可動部材によって覆われない位置」へと変更されており、「表示領域」以外の場所も含まれるようになり、発明特定事項の限定とはいえない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮(補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明となるように請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものに限る。)」を目的とするものに該当しない。
また、本件補正は、同項第1号の請求項の削除、第3号の誤記の訂正、及び、第4号の明瞭でない記載の釈明(拒絶理由に示された事項についてするものに限る。)、のいずれを目的とするものでもないことは明らかである。

したがって、上記(イ)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていないものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

なお、上記(2)、(3)のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、また、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしていないものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるところ、上記本件補正が、もし仮に、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たし、特許法第17条の2第3項の規定に違反しない補正であった場合についても検討してみると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同様第126条第7項の規定に適合するか否か、についても一応、以下で検討する。

3.独立特許要件
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記1.の本件補正の概要において示した次のとおりのものである(A?Mは本件補正発明を分説するため当審で付した。)。

「A 遊技を行う遊技機であって、
B 少なくとも識別情報の可変表示を実行可能な領域を含む表示領域を有する表示装置と、
C 第1位置と当該第1位置とは異なる第2位置との間を少なくとも移動可能な可動部材と、
D 遊技制御プログラムに基づいて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
E 該遊技制御手段から出力される指令情報に基づいて演出の実行を制御する演出制御手段と、
F 異常を検出する異常検出手段と、
G 前記異常検出手段が前記異常を検出したことに応じて、当該異常が発生したことを示す異常情報を表示させる異常表示制御を行う異常表示制御手段と、を備え、
H 前記遊技制御手段は、前記遊技制御プログラムにより実行される第1の処理および第2の処理のそれぞれにおいて、指令情報を出力可能であり、
I 前記第1の処理と、前記第2の処理とでは、出力する指令情報の設定順序が異なり、
J 前記可動部材は、少なくとも前記第1位置に位置するときに表示領域の一部を遊技者側から覆い、
K 前記異常表示制御手段は、前記第1位置に移動した前記可動部材によって覆われない位置に前記異常情報を表示させ、
L 前記演出制御手段は、前記異常情報が表示されているときにも表示領域の所定の位置において、可変表示される識別情報とは異なるキャラクタ画像の表示を、前記可動部材の移動により位置関係を変更することなく継続して実行することが可能であることを特徴とする、
M 遊技機。」

(2)刊行物に記載された事項
(2-1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-147581号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0021】
パチンコ機100は、遊技に関する抽選を行いその抽選の結果に応じて遊技者に利益を付与する遊技台であって、外枠102と、本体104と、前面枠扉106と、球貯留皿付扉108と、発射装置110と、遊技盤200と、をその前面(遊技者側)に備える。」

(イ)「【0032】
装飾図柄表示装置208は、本発明における報知手段の一例に相当するものである。この装飾図柄表示装置208は、その表示画面(本発明の表示領域の一例に相当)に装飾図柄ならびに演出に用いる様々な表示を行うための画像表示装置であり、本実施形態では液晶表示装置(Liquid Crystal Display)によって構成する。この装飾図柄表示装置208は、左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cおよび演出表示領域208dの4つの表示領域に分割し、左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208bおよび右図柄表示領域208cはそれぞれ異なった装飾図柄を表示し、演出表示領域208dは演出に用いる画像を表示する。さらに、各表示領域208a、208b、208c、208dの位置や大きさは、装飾図柄表示装置208の表示画面内で自由に変更することを可能としている。なお、装飾図柄表示装置208として液晶表示装置を採用しているが、液晶表示装置でなくとも、種々の演出や種々の遊技情報を表示可能に構成されていればよく、例えば、ドットマトリクス表示装置、7セグメント表示装置、有機EL(ElectroLuminescence)表示装置、リール(ドラム)式表示装置、リーフ式表示装置、プラズマディスプレイ、プロジェクタを含む他の表示デバイスを採用してもよい。」

(ウ)「【0049】
パチンコ機100の制御部は、大別すると、遊技の中枢部分を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」と呼ぶ)に応じて主に演出の制御を行う第1副制御部400と、第1副制御部400より送信されたコマンドに基づいて各種機器を制御する第2副制御部500と、主制御部300が送信するコマンドに応じて主に遊技球の払い出しに関する制御を行う払出制御部600と、遊技球の発射制御を行う発射制御部630と、パチンコ機100に供給される電源を制御する電源管理部660と、によって構成している。本実施形態では、主制御部300、第1副制御部400および第2副制御部500はそれぞれ別の回路基板からなるものであるが、これら3つの制御部(300,400,500)は、共通の一つの回路基板からなるものであってもよいし、第1副制御部400と第2副制御部500が、主制御部300の回路基板とは別の共通の一つの回路基板からなるものであってもよい。
・・・
【0056】
また、主制御部300には、電源が投入されると起動信号(リセット信号)を出力する起動信号出力回路(リセット信号出力回路)340を設けており、CPU304は、この起動信号出力回路340から起動信号を入力した場合に、遊技制御を開始する(後述する主制御部メイン処理を開始する)。」

(エ)「【0077】
図4(b)は装飾図柄の一例を示したものである。本実施形態の装飾図柄には、「装飾1」?「装飾10」の10種類がある。第1特図始動口230または第2特図始動口232に球が入賞したこと、すなわち、第1特図始動口230に球が入球したことを第1始動口センサが検出したこと、あるいは第2特図始動口232に球が入球したことを第2始動口センサが検出したことを条件にして、装飾図柄表示装置208の左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cの各図柄表示領域に、「装飾1」→「装飾2」→「装飾3」→・・・・「装飾9」→「装飾10」→「装飾1」→・・・の順番で表示を切り替える「装飾図柄の変動表示」を行う。すなわち、装飾図柄表示装置208は、特図表示装置212とは別に、装飾図柄を変動表示するものである。そして、「特図A」を報知する場合には、図柄表示領域208a?208cに、同じ奇数の装飾図柄が3つ並んだ“装飾図柄の組合せ2”(例えば「装飾3-装飾3-装飾3」や「装飾7-装飾7-装飾7」等)を停止表示する。また、「特図B」を報知する場合には、図柄表示領域208a?208cに、同じ偶数の装飾図柄が3つ並んだ“装飾図柄の組合せ1”(例えば「装飾2-装飾2-装飾2」や「装飾4-装飾4-装飾4」等)を停止表示する。さらに、はずれ図柄である「特図C」を報知する場合には、図柄表示領域208a?208cに、“装飾図柄の組合せ1”および“装飾図柄の組合せ2”以外の装飾図柄の組合せ(例えば、ばらけ目)を停止表示する。」

(オ)「【0079】
<主制御部メイン処理>
次に、図5を用いて、図3に示す主制御部300のCPU304が実行する主制御部メイン処理について説明する。図5は主制御部メイン処理の流れを示すフローチャートである。
【0080】
上述したように、図3に示す主制御部300には、電源が投入されると起動信号(リセット信号)を出力する起動信号出力回路(リセット信号出力回路)340を設けている。この起動信号を入力した基本回路302のCPU304は、リセット割込によりリセットスタートしてROM306に予め記憶している制御プログラムに従って図6に示す主制御部メイン処理を実行する。
・・・
【0087】
ステップS111では、復電時処理を行う。この復電時処理では、電断時にRAM308に設けられたスタックポインタ退避領域に記憶しておいたスタックポインタの値を読み出し、スタックポインタに再設定(本設定)する。また、電断時にRAM308に設けられたレジスタ退避領域に記憶しておいた各レジスタの値を読み出し、各レジスタに再設定した後、割込許可の設定を行う。以降、CPU304が、再設定後のスタックポインタやレジスタに基づいて制御プログラムを実行する結果、パチンコ機100は電源断時の状態に復帰する。すなわち、電断直前にタイマ割込処理(後述)に分岐する直前に行った(ステップS115内の所定の)命令の次の命令から処理を再開する。また、図3に示す主制御部300における基本回路302に搭載されているRAM308には、送信情報記憶領域が設けられている。このステップS111では、その送信情報記憶領域に、復電コマンドをセットする。この復電コマンドは、電源断時の状態に復帰したことを表すコマンドであり、後述する、主制御部300のタイマ割込処理におけるステップS229において、第1副制御部400へ送信される。
【0088】
ステップS113では、初期化処理を行う。この初期化処理では、割込禁止の設定、スタックポインタへのスタック初期値の設定(本設定)、RAM308の全ての記憶領域の初期化などを行う。さらにここで、主制御部300のRAM308に設けられた送信情報記憶領域に正常復帰コマンドをセットする。この正常復帰コマンドは、主制御部300の初期化処理(ステップS113)が行われたことを表すコマンドであり、復電コマンドと同じく、主制御部300のタイマ割込処理におけるステップS229において、第1副制御部400へ送信される。」

(カ)「【0091】
<主制御部タイマ割込処理>
次に、図6を用いて、主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割込処理について説明する。図6は主制御部タイマ割込処理の流れを示すフローチャートである。
・・・
【0127】
続いて、コマンド設定送信処理(ステップS229)について説明する。このコマンド設定送信処理では、各種のコマンドが第1副制御部400に送信される。なお、第1副制御部400に送信する出力予定情報は本実施形態では16ビットで構成しており、ビット15はストローブ情報(オンの場合、データをセットしていることを示す)、ビット11?14はコマンド種別(本実施形態では、基本コマンド、図柄変動開始コマンド、図柄変動停止コマンド、入賞演出開始コマンド、終了演出開始コマンド、復電コマンド、RAMクリアコマンドなどコマンドの種類を特定可能な情報)、ビット0?10はコマンドデータ(コマンド種別に対応する所定の情報)で構成している。
・・・
【0131】
ステップS233では、デバイス監視処理を行う。このデバイス監視処理では、上述の入力ポート状態更新処理(ステップS205)において信号状態記憶領域に記憶した各種センサの信号状態を読み出して、前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無などを監視し、前面枠扉開放エラーまたは下皿満タンエラーを検出した場合に、第1副制御部400に送信すべき送信情報に、前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無を示すデバイス情報を設定する。ここで設定したデバイス情報は基本コマンドに含められて、第1副制御部400に送信される。また、図3に示す各種ソレノイド332を駆動して第2特図始動口232や、可変入賞口234の開閉を制御したり、駆動回路324、326、330を介して普通図柄表示装置210、特図表示装置212、各種状態表示部328などに出力する表示データを、I/O310の出力ポートに設定する。また、払出要求数送信処理(ステップS219)で設定した出力予定情報を出力ポート(I/O310)を介して第1副制御部400に出力する。」

(キ)「【0193】
図13(a)は、図柄変動パターンAと付加演出Aのタイミングを示す図である。ここで付加演出Aは、演出可動体224による役物演出(遮蔽演出)である。この図13(a)では、図柄変動パターンAによる図柄変動と付加演出Aとが同時に始まり、図柄変動がリーチ変動に変わる前に役物演出が終了していることが示されている。
・・・
【0195】
図13(c)は、図13(a)および(b)で示した図柄変動パターンA、付加演出A、および付加演出Bの3つの演出の実行タイミングを示す図である。この図において付加演出Aと付加演出Bとが同時に行われている期間が左下がりのハッチングで示されている。上記説明したとおり、操作有効期間内にチャンスボタン136を押下するとチャンスボタン演出である画像カットイン演出が実行される。本実施形態のパチンコ機100では、装飾図柄表示装置208の表示画面の一部にキャラクタ画像が表示される演出が実行される。この際に遮蔽演出が実行されていると、演出可動体224が装飾図柄表示装置208の表示画面の一部を遮蔽してしまうため、遊技者がこの画像カットイン演出を視認することができない状態、あるいは視認し難い状態になる。しかし、この状態を回避するために、上記操作有効期間よりも前に遮蔽演出を中止する等して、上記表示画面を遮蔽しない位置まで演出可動体224を移動させると、チャンスボタン演出の発生が遊技者に予測される可能性がある。さらに、パチンコ機100が遊技者に有利な状態であるときに画像カットイン演出が実行されるような場合には、パチンコ機100の遊技状態についても遊技者に推測されてしまう可能性がある。遊技状態が推測されてしまうと、遊技の趣向を殺ぐ結果となりかねない。そのため、遮蔽演出を実行中であって上記操作有効期間内にチャンスボタン136が押下された場合、すなわち遮蔽演出中に画像カットイン演出を開始した時点で、遮蔽演出を途中で終了すべく演出可動体224を待機位置まで移動(以降、待機位置まで移動することを退避と称することがある)させる処理を行う。しかし、本実施形態のパチンコ機100では演出可動体224を退避させるのに最大2秒かかる。そのため、この退避が完了するまでの間画像カットイン演出によって表示される画像の位置を、遊技者が視認可能な位置へ変更する。以降、この様子の詳細を図14および図15を用いて説明する。」

(ク)「【0196】
図14(a)は、役物演出における演出可動体224の初期動作を示す図である。この図では演出装置206内に設けられた、装飾図柄表示装置208および演出可動体224(本発明の可動部材の一例に相当)が示されている。この演出可動体224は第2副制御部500のCPU504によって、駆動回路516を介して制御されている。図14(a)では、この演出可動体224が待機状態から装飾図柄表示装置208の表示画面(本発明の表示領域の一例に相当)を遮蔽していく様子が上から順に示されている。
【0197】
まず一番上の図では、装飾図柄表示装置208に対する演出可動体224の待機状態が示されている。演出可動体224は、役物演出をしない場合はこの待機位置(本発明の可動部材における所定位置に相当)で待機している。この演出可動体224は、大きく分けて2段階の動作を行う。具体的には、まず最初に一番上の図から真ん中の図にかけて示されている、前腕部224bを持ち上げる1つめの動作と、真ん中の図から一番下の図にかけて示されている、上腕部224aを持ち上げる2つめの動作を行う。これは、前腕部224bを持ち上げずに上腕部224aを持ち上げると、前腕部224bが演出装置206の枠に衝突(図中の円で示す部分を参照)してしまうため、これを回避するために上記2段階の動作を行っている。この動作によって、可動部材224は装飾図柄表示装置208の遊技者側にあって、この装飾図柄表示装置208の表示画面の一部を遮蔽する遮蔽位置に移動する。なお、真ん中の図では、前腕部224bの一部が上記表示画面の一部を遮蔽しており、また、一番下の図では、前腕部224bの全体と上腕部224aの一部が上記表示画面の一部を遮蔽している。すなわち、これらの図に示す演出可動体224の位置が本発明の遮蔽位置の一例に相当する。なお、上記2段階の動作後は、前腕部224bが上記表示領域の遊技者側で上下動を繰り返す。」

(ケ)「【0204】
上述したとおり、チャンスボタン136の操作有効期間が操作された画像カットイン演出時に役物演出が実行されている場合、図2に示す演出可動体224による役物演出を退避させつつ、画像カットイン演出の表示位置およびサイズを変更するが、この期間は復帰タイマおよび復帰フラグによって制御されている。この復帰タイマには役物演出中に画像カットイン演出が発生した時点で1000が代入され、それと同時に画像カットイン演出を実行する領域を表す座標が通常配置座標から特別配置座標へ変更される(図10に示すステップS609およびステップS611)。この特別配置座標に変更されることによって、画像カットイン演出は装飾図柄表示装置208の表示画面左上に表示される。この復帰タイマの値は演出可動体224を退避させるには最大で2秒を要することと、割込処理が2m秒の周期であることから算出されたものである。この復帰タイマ変数の値は図6(c)に示すステップS335で1ずつ減少され、復帰タイマが0になると図6(c)に示すステップS339で復帰フラグがオンになる。この復帰フラグがオンされると図9に示すステップS505で画像カットイン演出を実行する領域を表す座標が特別配置座標から通常配置座標に変更され、画像カットイン演出が装飾図柄表示装置208の表示画面中央で表示されることになる。ここで図6(c)に示すタイマ割込処理は2ms毎に行われるため、復帰フラグがオンされるまで2秒を要する。すなわち演出可動体224が退避するために必要な2秒の間、画像カットイン演出は特別配置座標で表示されることとなるため、演出可動体224によって遮蔽されることなく報知を行うことができる。なお、本実施形態のパチンコ機100は、演出可動体224が待機位置まで移動(退避)するまでの間(2秒間)に限って、上記特別配置座標に基づく画像カットイン演出を実行するものであるが、例えば、演出可動体224を退避させずに、上記特別配置座標に基づく画像カットイン演出を実行し続けるものであってもよい。
【0205】
ここで、これまで説明したもののうち、本発明に関する部分について説明する。まず、図2に示す装飾図柄表示装置208はその表示領域に表示することによって種々の報知情報を報知するものであり、本発明の表示装置の一例に相当する。さらにこの装飾図柄表示装置208に、スピーカ120および各種ランプ(チャンスボタンランプ138、遊技台枠用ランプ122、および遊技盤用ランプ532)を加えたものが、本発明にいう報知手段の一例に相当する。そして、図3に示す第1副制御部400において、ROM406内のプログラムを実行することによってこれらの報知手段を制御するCPU404は、これらの報知手段に種々の報知情報を報知させるものであり、本発明にいう報知情報制御手段の一例に相当する。さらに、演出可動体224は、待機位置(所定位置の一例に相当)から、装飾図柄表示装置208よりも遊技者側でその表示装置における表示領域の少なくとも一部に重なりその一部を遮蔽する所定の遮蔽位置へ移動するものであり、本発明の可動部材の一例に相当する。
【0206】
上述したとおり、第1副制御部400のCPU404は本発明の報知手段制御手段の一例に相当するものである。この第1副制御部400のCPU404は、図7に示すチャンスボタン制御処理(より詳細には図10のステップS601からステップS611までの処理)に従って、役物演出を実行せずにチャンスボタン演出を実行することが決定した場合(演出可動体224が所定位置にある場合)には、画像カットイン演出(所定の報知情報の表示の一例に相当)を通常配置座標に基づき装飾図柄表示装置208の表示画面中央(本発明の所定領域の一例に相当)に表示させ、役物演出中にチャンスボタン演出が実行される場合(演出可動体224が遮蔽位置にある場合)には、画像カットイン演出を特別配置座標に基づき装飾図柄表示装置208の表示画面左上(本発明の非遮蔽領域の一例に相当)に表示させるものである。
・・・
【0210】
また遊技中の演出だけでなく、演出可動体224が装飾図柄表示装置208を遮蔽している状態でパチンコ機100にエラーが生じた場合に、そのエラーの報知態様を変更するものであってもよい。例えばエラーメッセージを出力する表示画面が演出可動体224によって遮蔽されている場合に、演出可動体224に遮蔽されていない領域で表示するものであったり、特定の音を出力するものであったり、特定のパターンの発光をするものであってもよい。」

(コ)【図5】には、「主制御部メイン処理」が図示されており、S101?S115が図示されている。

(サ)【図6】には、「主制御部タイマ割込処理」が図示されており、S201?S239が図示されている。

なお、上記【0080】に「リセット割込によりリセットスタートしてROM306に予め記憶している制御プログラムに従って図6に示す主制御部メイン処理を実行する。」と記載されているものの、【0079】の「図5を用いて、図3に示す主制御部300のCPU304が実行する主制御部メイン処理について説明する。図5は主制御部メイン処理の流れを示すフローチャートである」と記載され、【図5】に主制御部メイン処理が図示され、【図6】に主制御部タイマ割込処理が図示されていることを考慮すれば、上記【0080】の「図6」は「図5」の誤記であることは明らかである(以下、【0080】の「図6」は「図5」とする)。
また、上記【0117】、【0118】に「コマンド設定送信処理(ステップS215)」と記載されているものの、【0127】の「コマンド設定送信処理(ステップS229)」と記載されていることを考慮すれば、上記【0117】、【0118】の「コマンド設定送信処理(ステップS215)」は「コマンド設定送信処理(ステップS229」の誤記であることは明らかである(以下、【0117】、【0118】の「コマンド設定送信処理(ステップS215)」は「コマンド設定送信処理(ステップS229」とする)。

上記(ア)?(ケ)の記載事項、上記(コ)、(サ)の図示内容から、以下の事項がいえる。なお、(a)?(h)、(j)?(m)は、本件補正発明の構成A?H、J?Mに対応した事項を示している。

(a)上記(ア)の【0021】に「パチンコ機100は、遊技に関する抽選を行いその抽選の結果に応じて遊技者に利益を付与する遊技台」と記載されている。
したがって、刊行物1には、遊技に関する抽選を行いその抽選の結果に応じて遊技者に利益を付与する遊技台であるパチンコ機100が記載されているといえる。

(b)上記(エ)の【0077】に「装飾図柄には、「装飾1」?「装飾10」の10種類がある」、「装飾図柄表示装置208の左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cの各図柄表示領域に、「装飾1」→「装飾2」→「装飾3」→・・・・「装飾9」→「装飾10」→「装飾1」→・・・の順番で表示を切り替える「装飾図柄の変動表示」を行う」と記載され、上記(イ)の【0032】に「装飾図柄表示装置208は、左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cおよび演出表示領域208dの4つの表示領域」と記載されている。
したがって、刊行物1には、「装飾1」?「装飾10」の10種類の装飾図柄の変動表示を行う左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cを含む4つの表示領域を有する装飾図柄表示装置208が記載されているといえる。

(c)上記(ク)の【0197】に「演出可動体224は、役物演出をしない場合はこの待機位置(本発明の可動部材における所定位置に相当)で待機している」、「可動部材224は装飾図柄表示装置208の遊技者側にあって、この装飾図柄表示装置208の表示画面の一部を遮蔽する遮蔽位置に移動する」と記載されている。
したがって、刊行物1には、装飾図柄表示装置208の表示画面の一部を遮蔽する遮蔽位置と待機位置とを移動する演出可動体(可動部材)224が記載されているといえる。

(d)上記(オ)の【0079】に「主制御部300のCPU304」、【0080】に「CPU304は、リセット割込によりリセットスタートしてROM306に予め記憶している制御プログラムに従って図5に示す主制御部メイン処理を実行する」と記載され、上記(ウ)の【0056】に「CPU304は、この起動信号出力回路340から起動信号を入力した場合に、遊技制御を開始する(後述する主制御部メイン処理を開始する)」と記載されている。
したがって、刊行物1には、制御プログラムに従って遊技制御を実行するCPU304が記載されているといえる。

(e)上記(ウ)の【0049】に「主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」と呼ぶ)に応じて主に演出の制御を行う第1副制御部400」と記載されている。
また、上記(カ)の【0091】に「図6を用いて、主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割込処理について説明する」、【0127】に「コマンド設定送信処理(ステップS229)について説明する。このコマンド設定送信処理では、各種のコマンドが第1副制御部400に送信される」と記載され、上記(サ)で言及したように、「主制御部タイマ割込処理」にS229が含まれている。
したがって、刊行物1には、CPU304が送信するコマンドに応じて演出の制御を行う第1副制御部400が記載されているといえる。

(f)上記(カ)の【0091】に「図6を用いて、主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割込処理について説明する」、【0131】に「ステップS233では、デバイス監視処理を行う。このデバイス監視処理では、上述の入力ポート状態更新処理(ステップS205)において信号状態記憶領域に記憶した各種センサの信号状態を読み出して、前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無などを監視し」と記載され、上記(サ)で言及したように、「主制御部タイマ割込処理」にS233が含まれている。
したがって、刊行物1には、各種センサの信号状態を読み出して、前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無などを監視するデバイス監視処理を行うCPU304が記載されているといえる。

(g)上記(f)で言及したように、CPU304が前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無などを監視するデバイス監視処理を行うものであり、上記(カ)の【0131】に「前面枠扉開放エラーまたは下皿満タンエラーを検出した場合に、第1副制御部400に送信すべき送信情報に、前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無を示すデバイス情報を設定する。ここで設定したデバイス情報は基本コマンドに含められて、第1副制御部400に送信される」と記載されているから、CPU304が前面枠扉開放エラーまたは下皿満タンエラーを検出した場合に、該CPU304は前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無を示すデバイス情報を設定し、この設定したデバイス情報を第1副制御部400に送信していることが記載されているといえる。
また、上記(ケ)の【0205】に「装飾図柄表示装置208はその表示領域に表示することによって種々の報知情報を報知するもの」、「第1副制御部400において、ROM406内のプログラムを実行することによってこれらの報知手段を制御するCPU404は、これらの報知手段に種々の報知情報を報知させるもの」、【0210】に「演出可動体224が装飾図柄表示装置208を遮蔽している状態でパチンコ機100にエラーが生じた場合に、そのエラーの報知態様を変更するものであってもよい。例えばエラーメッセージを出力する表示画面が演出可動体224によって遮蔽されている場合に、演出可動体224に遮蔽されていない領域で表示するものであったり」と記載されているから、パチンコ機100にエラーが生じた場合に、CPU404はエラーメッセージを装飾図柄表示装置208の表示領域に表示させることが記載されているといえる。
そうすると、パチンコ機100にエラーが生じた場合には、CPU304が、前面枠扉開放エラーまたは下皿満タンエラーを検出し、前面枠扉開放エラーの有または下皿満タンエラーの有を示すデバイス情報を第1副制御部400に第1副制御部400に送信し、これにより、CPU404がエラーメッセージを装飾図柄表示装置208の表示領域に表示させるといえるから、該「CPU404」が「エラーメッセージを装飾図柄表示装置208の表示領域に表示させる」のは、「CPU304が前面枠扉開放エラーまたは下皿満タンエラーを検出した」ことに応じているのは明らかである。
したがって、刊行物1には、CPU304が前面枠扉開放エラーまたは下皿満タンエラーを検出したことに応じて、エラーメッセージを装飾図柄表示装置208の表示領域に表示させるCPU404が記載されているといえる。

(h)上記(オ)の【0079】に「主制御部300のCPU304が実行する主制御部メイン処理」、【0080】に「CPU304は、リセット割込によりリセットスタートしてROM306に予め記憶している制御プログラムに従って図5に示す主制御部メイン処理を実行する」、【0087】に「図3に示す主制御部300における基本回路302に搭載されているRAM308には、送信情報記憶領域が設けられている。このステップS111では、その送信情報記憶領域に、復電コマンドをセットする。この復電コマンドは、電源断時の状態に復帰したことを表すコマンドであり、後述する、主制御部300のタイマ割込処理におけるステップS229において、第1副制御部400へ送信される」、【0088】に「ステップS113では、初期化処理を行う。この初期化処理では、割込禁止の設定、スタックポインタへのスタック初期値の設定(本設定)、RAM308の全ての記憶領域の初期化などを行う。さらにここで、主制御部300のRAM308に設けられた送信情報記憶領域に正常復帰コマンドをセットする。この正常復帰コマンドは、主制御部300の初期化処理(ステップS113)が行われたことを表すコマンドであり、復電コマンドと同じく、主制御部300のタイマ割込処理におけるステップS229において、第1副制御部400へ送信される」と記載され、上記(コ)で言及したように、「主制御部メイン処理」にS111、113が含まれている。
また、上記(カ)の【0091】に「主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割込処理」、【0127】に「コマンド設定送信処理(ステップS229)について説明する。このコマンド設定送信処理では、各種のコマンドが第1副制御部400に送信される」と記載され、上記(サ)で言及したように、「主制御部タイマ割込処理」にS229が含まれている。
ここで、主制御部タイマ割込処理について制御プログラムに従って実行されるのかは明記されていないものの、上記(オ)の【0079】に「主制御部300のCPU304が実行する主制御部メイン処理」、上記(カ)の【0091】に「次に、図6を用いて、主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割込処理について説明する」と記載され、主制御部メイン処理と主制御部タイマ割込処理とはともに主制御部300のCPU304が実行する処理であるから、主制御部タイマ割込処理も制御プロクラムに従って実行されているのは自明である。
したがって、刊行物1には、CPU304は、制御プログラムに実行される、復電コマンドまたは正常復帰コマンドをRAM308の送信情報記憶領域にセットし、該コマンドを主制御部300から第1副制御部400へ送信する処理において、コマンドを送信することが記載されているといえる。

(j)上記(ク)の【0197】に「可動部材224は装飾図柄表示装置208の遊技者側にあって、この装飾図柄表示装置208の表示画面の一部を遮蔽する遮蔽位置に移動する」と記載されている。
したがって、刊行物1には、可動部材224は、遮蔽位置に移動すると装飾図柄表示装置208の表示画面の一部を遊技者側から遮蔽することが記載されているといえる。

(k)上記(ケ)の【0205】に「第1副制御部400において、ROM406内のプログラムを実行することによってこれらの報知手段を制御するCPU404は、これらの報知手段に種々の報知情報を報知させるもの」、【0210】に「演出可動体224が装飾図柄表示装置208を遮蔽している状態でパチンコ機100にエラーが生じた場合に、そのエラーの報知態様を変更するものであってもよい。例えばエラーメッセージを出力する表示画面が演出可動体224によって遮蔽されている場合に、演出可動体224に遮蔽されていない領域で表示するものであったり」と記載されている。
したがって、刊行物1には、CPU404は、エラーメッセージを出力する表示画面が演出可動体224によって遮蔽されている場合に、演出可動体224に遮蔽されていない領域で表示させることが記載されているといえる。

(l)上記(ケ)の【0206】に「この第1副制御部400のCPU404は、図7に示すチャンスボタン制御処理(より詳細には図10のステップS601からステップS611までの処理)に従って、・・・役物演出中にチャンスボタン演出が実行される場合(演出可動体224が遮蔽位置にある場合)には、画像カットイン演出を特別配置座標に基づき装飾図柄表示装置208の表示画面左上(本発明の非遮蔽領域の一例に相当)に表示させるものである」と記載され、上記(ケ)の【0204】に「本実施形態のパチンコ機100は、演出可動体224が待機位置まで移動(退避)するまでの間(2秒間)に限って、上記特別配置座標に基づく画像カットイン演出を実行するものであるが、例えば、演出可動体224を退避させずに、上記特別配置座標に基づく画像カットイン演出を実行し続けるものであってもよい」と記載されているから、第1副制御部400は、役物演出中にチャンスボタン演出が実行される場合であって、演出可動体224を退避させない場合には、特別配置座標に基づき装飾図柄表示装置208の表示画面左上において、画像カットイン演出を実行し続けることが記載されているといえる。
また、上記(キ)の【0195】に「操作有効期間内にチャンスボタン136を押下するとチャンスボタン演出である画像カットイン演出が実行される。本実施形態のパチンコ機100では、装飾図柄表示装置208の表示画面の一部にキャラクタ画像が表示される演出が実行される」と記載されているから、画像カットイン演出は装飾図柄表示装置208の表示画面の一部にキャラクタ画像が表示される演出であるといえる。
したがって、刊行物1には、第1副制御部400は、役物演出中にチャンスボタン演出が実行される場合であって、演出可動体224を退避させない場合には、特別配置座標に基づく装飾図柄表示装置208の表示画面左上において、装飾図柄表示装置208の表示画面の一部にキャラクタ画像が表示される演出である画像カットイン演出を実行し続けることが記載されている。

(m)上記(ア)の【0021】に「パチンコ機100」と記載されている。
したがって、刊行物1には、パチンコ機100が記載されている。

したがって、上記(ア)?(ケ)の記載事項、(コ)、(サ)の図示内容および上記(a)?(h)、(j)?(m)の認定事項を総合すれば、刊行物1には、次の発明が記載されている(以下、「刊行物1発明A」という。a?h、j?mは刊行物1発明Aを分説するため当審で付した。)。

「a 遊技に関する抽選を行いその抽選の結果に応じて遊技者に利益を付与する遊技台であるパチンコ機100であって、
b 「装飾1」?「装飾10」の10種類の装飾図柄の変動表示を行う左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cを含む4つの表示領域を有する装飾図柄表示装置208と、
c 装飾図柄表示装置208の表示画面の一部を遮蔽する遮蔽位置と待機位置とを移動する演出可動体(可動部材)224と、
d 制御プログラムに従って遊技制御を実行するCPU304と、
e CPU304が送信するコマンドに応じて演出の制御を行う第1副制御部400と、
f 各種センサの信号状態を読み出して、前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無などを監視するデバイス監視処理を行うCPU304と、
g CPU304が前面枠扉開放エラーまたは下皿満タンエラーを検出したことに応じて、エラーメッセージを装飾図柄表示装置208の表示領域に表示させるCPU404と、を備え、
h CPU304は、制御プログラムに実行される、復電コマンドまたは正常復帰コマンドをRAM308の送信情報記憶領域にセットし、該コマンドを主制御部300から第1副制御部400へ送信する処理において、コマンドを送信し、
j 可動部材224は、遮蔽位置に移動すると装飾図柄表示装置208の表示画面の一部を遊技者側から遮蔽し、
k CPU404は、エラーメッセージを出力する表示画面が演出可動体224によって遮蔽されている場合に、演出可動体224に遮蔽されていない領域で表示させ、
l 第1副制御部400は、役物演出中にチャンスボタン演出が実行される場合には、演出可動体224を退避させずに、装飾図柄表示装置208の表示画面の一部にキャラクタ画像が表示される演出である画像カットイン演出を、演出可動体224によって遮蔽されることなく報知を行うことができる座標である特別配置座標に基づき装飾図柄表示装置208の表示画面左上に表示させ続ける
m パチンコ機100。」

(2-2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-115299号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0096】
<主制御部メイン処理>
次に、図6を用いて、主制御部300のCPU304が実行する主制御部メイン処理について説明する。なお、同図は主制御部メイン処理の流れを示すフローチャートである。
・・・
【0107】
ステップS106では、復電時処理を行う。この復電時処理では、電断時にRAM308に設けられたスタックポインタ退避領域に記憶しておいたスタックポインタを読み出し、スタックポインタに再設定する。また、電断時にRAM308に設けられたレジスタ退避領域に記憶しておいた各レジスタの値を読み出し、各レジスタに再設定した後、割り込み許可の設定を行う。以降、CPU304が、再設定後のスタックポインタやレジスタに基づいて制御プログラムを実行する結果、パチンコ機100は電源断時の状態に復帰する。すなわち、電断直前に主制御部タイマ割り込み処理に分岐する直前に行った(ステップS108、ステップS109内の所定の)命令の次の命令から処理を再開する。また、ステップS106の復電時処理では、レジスタに退避記憶しておいた現在大当たり中か否かの情報に基づいて、正常復帰(大当たり中)コマンドまたは正常復帰(大当たり中以外)コマンド(図10参照)を副制御部400に対して送信させるための情報を送信情報記憶領域に追加記憶する。」

(イ)「【0114】
<主制御部タイマ割り込み処理>
次に、図7を用いて、主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割り込み処理について説明する。なお、同図は主制御部タイマ割り込み処理の流れを示すフローチャートである。
・・・
【0170】
ステップS215では、コマンド設定送信処理を行う。なお、副制御部400に送信する出力予定情報は16ビットで構成しており、ビット15(上位バイトのビット7)はストローブ情報(オンの場合、データをセットしていることを示す)、ビット11?14(上位バイトのビット4?ビット6)はコマンド種別(詳細は後述する)、ビット8?10(上位バイトのビット0?ビット3)は詳細種別(詳細は後述する)、ビット0?ビット7(下位バイトのビット0?ビット7)は出力内容(詳細は後述する)で構成している。このコマンドの構成の詳細については、図10を参照して後述する。」

(ウ)「【0218】
<<実施例2>>
図11は、主制御部300から副制御部400に送信する各コマンドの構造の例であって、図10とは別の例を示す図である。
【0219】
この例では、復帰コマンドの正常復帰(大当たり中以外)コマンドは、遊技状態(第1の情報)、特図1保留数(第2の情報)、特図2保留数(第3の情報)、大当たり種別(第4の情報)および特図作動状態(第5の情報)を含んでいる。また、復帰コマンドの正常復帰(大当たり中)コマンドは、特図1保留数(第2の情報)、大当たり種別(第4の情報)および特図2保留数(第3の情報)を含んでいる。また、基本コマンドの基本情報コマンドは、第入賞口(第6の情報)、始動口2(第7の情報)、始動口1(第8の情報)、特図2保留数(第3の情報)および特図1保留数(第2の情報)を含んでいる。
【0220】
この場合、正常復帰(大当たり中以外)コマンドおよび正常復帰(大当たり中)コマンドは、ともに特図2保留数(第3の情報)および大当たり種別(第4の情報)を含んでいるが、第3の情報に対して第4の情報は、正常復帰(大当たり中以外)コマンドと正常復帰(大当たり中)コマンドとで、コマンド出力の際の出現する順序が異なる順序となっている。
・・・
【0222】
さらに、正常復帰(大当たり中以外)コマンドおよび正常復帰(大当たり中)コマンドは、ともに特図1保留数(第2の情報)および特図2保留数(第3の情報)を含んでいるが、正常復帰(大当たり中以外)コマンドでは第2の情報の直後に第3の情報が出現しているが、正常復帰(大当たり中)コマンドでは第2の情報と第3の情報との間に第4の情報が挿入されており、正常復帰(大当たり中以外)コマンドと正常復帰(大当たり中)コマンドとで、出現する順序が異なる順序となっている。」

(エ)【図6】には、「主制御部メイン処理」が図示されており、S101?S109が図示されている。

(オ)【図7】には、「主制御部タイマ割り込み処理」が図示されており、S201?S220が図示されている。

(3)対比
本件補正発明と刊行物1発明Aとを対比する。対比の見出しとしての(a)?(h)、(j)?(m)は刊行物1発明Aの分説構成と対応させた。

(a)刊行物1発明Aの「パチンコ機100」は、遊技台であることから遊技を行うための機器であるといえるので、本件補正発明の「遊技機」に相当する。
したがって、刊行物1発明Aの「遊技に関する抽選を行いその抽選の結果に応じて遊技者に利益を付与する遊技台であるパチンコ機100」は、本件補正発明の「遊技を行う遊技機」に相当する。

(b)刊行物1発明Aの「「装飾1」?「装飾10」の10種類の装飾図柄」、「4つの表示領域」、「装飾図柄表示装置208」は、それぞれ本件補正発明の「識別情報」、「表示領域」、「表示装置」に相当する。
また、刊行物1発明Aの「装飾図柄の変動表示を行う」ことは、装飾図柄の変動表示を実行可能であることを含んでいることは明らかであるから、刊行物1発明Aの「装飾図柄の変動表示を行う左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208c」は、本件補正発明の「識別情報の可変表示を実行可能な領域」に相当する。
したがって、刊行物1発明Aの「「装飾1」?「装飾10」の10種類の装飾図柄の変動表示を行う左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cを含む4つの表示領域を有する飾図柄表示装置208」は、本件補正発明の「少なくとも識別情報の可変表示を実行可能な領域を含む表示領域を有する表示装置」に相当する。

(c)刊行物1発明Aの「遮蔽位置」、「待機位置」は、それぞれ本件補正発明の「第1位置」、「第2位置」に相当する。
また、刊行物1発明Aの「遮蔽位置と待機位置とを移動する」ことは、遮蔽位置と待機位置との間を移動可能であることを含んでいることは明らかであるから、本件補正発明の「第1位置と当該第1位置とは異なる第2位置との間を少なくとも移動可能」であることに相当する。
したがって、刊行物1発明Aの「装飾図柄表示装置208の表示画面の一部を遮蔽する遮蔽位置と待機位置とを移動する演出可動体(可動部材)224」は、本件補正発明の「第1位置と当該第1位置とは異なる第2位置との間を少なくとも移動可能な可動部材」に相当する。

(d)刊行物1発明Aの「遊技制御を実行する」ことは、遊技の進行を制御しているといえるから、本件補正発明の「遊技の進行を制御する」ことに相当する。
また、刊行物1発明Aの「CPU304」は、本件補正発明の「遊技制御手段」に相当する。
したがって、刊行物1発明Aの「制御プログラムに従って遊技制御を実行するCPU304」は、本件補正発明の「遊技制御プログラムに基づいて遊技の進行を制御する遊技制御手段」に相当する。

(e)刊行物1発明Aの「CPU304が送信するコマンド」、「第1副制御部400」は、それぞれ本件補正発明の「遊技制御手段から出力される指令情報」、「演出制御手段」に相当する。
したがって、上記(d)で言及したように刊行物1発明Aの「CPU304」は、本件補正発明の「遊技制御手段」に相当するから、刊行物1発明Aの「CPU304が送信するコマンドに応じて演出の制御を行う第1副制御部400」は、本件補正発明の「該遊技制御手段から出力される指令情報に基づいて演出の実行を制御する演出制御手段」に相当する。

(f)刊行物1発明Aの「CPU304」は、前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無などを監視しているから異常を検出しているともいえるので、本件補正発明の「異常検出手段」にも相当する。
したがって、刊行物1発明Aの「各種センサの信号状態を読み出して、前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無などを監視するデバイス監視処理を行うCPU304」は、本件補正発明の「異常を検出する異常検出手段」に相当する。

(g)上記(f)で言及したように刊行物1発明Aの「CPU304」は、本件補正発明の「異常検出手段」に相当するから、刊行物1発明Aの「CPU304が前面枠扉開放エラーまたは下皿満タンエラーを検出したことに応じて、エラーメッセージを装飾図柄表示装置208の表示領域に表示させるCPU404」は、本件補正発明の「前記異常検出手段が前記異常を検出したことに応じて、当該異常が発生したことを示す異常情報を表示させる異常表示制御を行う異常表示制御手段」に相当する。

(h)刊行物1発明Aの「復電コマンドまたは正常復帰コマンドをRAM308の送信情報記憶領域にセットし、該コマンドを第1副制御部400へ送信する処理」、「コマンド」は、それぞれ本件補正発明の「処理」、「指令情報」に相当する。
また、刊行物1発明Aの「該コマンドを第1副制御部400へ送信する」ことは、コマンドを第1副制御部400へ送信可能であることを含んでいることは明らかであるから、本件補正発明の「指令情報を出力可能であ」ることに相当する。
したがって、上記(d)で言及したように刊行物1発明Aの「CPU304」は、本件補正発明の「遊技制御手段」に相当するから、刊行物1発明Aの「CPU304は、制御プログラムに実行される、復電コマンドまたは正常復帰コマンドをRAM308の送信情報記憶領域にセットし、該コマンドを第1副制御部400へ送信する処理において、コマンドを送信」することは、本件補正発明と「前記遊技制御手段は、前記遊技制御プログラムにより実行される」「処理」「において、指令情報を出力可能であ」る点で共通している。

(j)上記(c)で言及したように刊行物1発明Aの「遮蔽位置」は、本件補正発明の「第1位置」に相当するから、刊行物1発明Aの「可動部材224は、遮蔽位置に移動すると装飾図柄表示装置208の表示画面の一部を遊技者側から遮蔽」することは、本件補正発明の「前記可動部材は、少なくとも前記第1位置に位置するときに表示領域の一部を遊技者側から覆」うことに相当する。

(k)刊行物1発明Aの「演出可動体224に遮蔽されていない領域」は、本件補正発明の「前記第1位置に移動した前記可動部材によって覆われない位置」に相当する。
したがって、上記(g)で言及したように刊行物1発明Aの「エラーメッセージ」、「CPU404」は、それぞれ本件補正発明の「異常情報」、「異常表示制御手段」に相当するから、刊行物1発明Aの「CPU404は、エラーメッセージを出力する表示画面が演出可動体224によって遮蔽されている場合に、演出可動体224に遮蔽されていない領域で表示させ」ることは、本件補正発明の「前記異常表示制御手段は、前記第1位置に移動した前記可動部材によって覆われない位置に前記異常情報を表示させ」ることに相当する。

(l)上記(2-1)(キ)の【0195】に「遮蔽演出を実行中であって上記操作有効期間内にチャンスボタン136が押下された場合、すなわち遮蔽演出中に画像カットイン演出を開始した時点で、遮蔽演出を途中で終了すべく演出可動体224を待機位置まで移動(以降、待機位置まで移動することを退避と称することがある)させる処理を行う」と記載されているから、刊行物発明の「演出可動体224を退避しない場合」とは、遮蔽演出は途中で終了しないで続けられる場合であることは明らかである。また、上記(2-1)(キ)の【0193】に「演出可動体224による役物演出(遮蔽演出)である」、上記(2-1)(ク)の【0196】に「図14(a)は、役物演出における演出可動体224の初期動作を示す図である」、【0197】に「上記2段階の動作後は、前腕部224bが上記表示領域の遊技者側で上下動を繰り返す」と記載されているから、遮蔽演出が続けられることとは、演出可動体224が上下動を繰り返し続けることである。そうすると、刊行物発明の「演出可動体224を退避しない場合」とは、演出可動体224が上下動を繰り返し続ける場合といえる。
ここで、上記(2-1)(ケ)の【0204】に「画像カットイン演出は特別配置座標で表示されることとなるため、演出可動体224によって遮蔽されることなく報知を行うことができる」と記載されているから、特別配置座標とは、演出可動体224によって遮蔽されることなく報知を行うことができる座標である。そうすると、刊行物発明の「特別配置座標に基づく装飾図柄表示装置208の表示画面左上」の位置とは、演出可動体224の上下動によって遮蔽されることなく報知を行うことができる位置であるから、この位置では、演出可動体224の上下動によって画像カットイン演出の位置を変更せずにを実行し続けることが可能であることは明らかである。
また、刊行物発明の「装飾図柄表示装置208の表示画面左上」の位置は、本件補正発明の「表示領域の所定の位置」に相当する。
これらのことから、刊行物1発明Aの「演出可動体224を退避させない場合には、特別配置座標に基づく装飾図柄表示装置208の表示画面左上において、装飾図柄表示装置208の表示画面の一部にキャラクタ画像が表示される演出である画像カットイン演出を実行し続けること」は、本件補正発明の「前記演出制御手段は、表示領域の所定の位置において、可変表示される識別情報とは異なるキャラクタ画像の表示を、前記可動部材の移動により位置関係を変更することなく継続して実行することが可能であること」に相当する。
したがって、上記(e)で言及したように刊行物1発明Aの「第1副制御部400」は、本件補正発明の「演出制御手段」に相当するから、刊行物1発明Aの「第1副制御部400は、役物演出中にチャンスボタン演出が実行される場合であって、演出可動体224を退避させない場合には、特別配置座標に基づく装飾図柄表示装置208の表示画面左上において、装飾図柄表示装置208の表示画面の一部にキャラクタ画像が表示される演出である画像カットイン演出を実行し続けること」は、本件補正発明と「前記演出制御手段は、」「表示領域の所定の位置において、可変表示される識別情報とは異なるキャラクタ画像の表示を、前記可動部材の移動により位置関係を変更することなく継続して実行することが可能であること」で共通している。

(m)刊行物1発明Aの「パチンコ機100」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。

上記(a)?(h)、(j)?(m)の検討より、本件補正発明と刊行物1発明Aとは、
「A 遊技を行う遊技機であって、
B 少なくとも識別情報の可変表示を実行可能な領域を含む表示領域を有する表示装置と、
C 第1位置と当該第1位置とは異なる第2位置との間を少なくとも移動可能な可動部材と、
D 遊技制御プログラムに基づいて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
E 該遊技制御手段から出力される指令情報に基づいて演出の実行を制御する演出制御手段と、
F 異常を検出する異常検出手段と、
G 前記異常検出手段が前記異常を検出したことに応じて、当該異常が発生したことを示す異常情報を表示させる異常表示制御を行う異常表示制御手段と、を備え、
H’ 前記遊技制御手段は、前記遊技制御プログラムにより実行される処理において、指令情報を出力可能であり、
J 前記可動部材は、少なくとも前記第1位置に位置するときに表示領域の一部を遊技者側から覆い、
K 前記異常表示制御手段は、前記第1位置に移動した前記可動部材によって覆われない位置に前記異常情報を表示させ、
L’ 前記演出制御手段は、表示領域の所定の位置において、可変表示される識別情報とは異なるキャラクタ画像の表示を、前記可動部材の移動により位置関係を変更することなく継続して実行することが可能である、
M 遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
「遊技制御手段」について、本件補正発明は、「前記遊技制御プログラムにより実行される第1の処理および第2の処理のそれぞれにおいて、指令情報を出力可能であり、前記第1の処理と、前記第2の処理とでは、出力する指令情報の設定順序が異な」るのに対して、刊行物1発明Aは、遊技制御プログラムにより実行される処理において、指令情報を出力可能であること以外は特定がなされていない点。(構成H、I)

[相違点2]
「演出制御手段」の、「表示領域の所定の位置において、可変表示される識別情報とは異なるキャラクタ画像の表示を、前記可動部材の移動により位置関係を変更することなく継続して実行すること」に関して、本件補正発明は、「前記異常情報が表示されているときにも」であるのに対して、刊行物1発明Aは、そのような特定がなされていない点。(構成L)

(4)判断
(ア)上記[相違点1]について検討する。
刊行物2には、上記(2-2)(ア)の【0096】に「主制御部300のCPU304が実行する主制御部メイン処理」、【0107】に「ステップS106の復電時処理では、レジスタに退避記憶しておいた現在大当たり中か否かの情報に基づいて、正常復帰(大当たり中)コマンドまたは正常復帰(大当たり中以外)コマンド(図10参照)を副制御部400に対して送信させるための情報を送信情報記憶領域に追加記憶する」、上記(2-2)(イ)の【0114】に「主制御部300のCPU304が実行する主制御部タイマ割り込み処理」、【0170】に「ステップS215では、コマンド設定送信処理を行う」と記載され、上記(2-2)(エ)で言及したように、「主制御部メイン処理」にS106が含まれ、上記(2-2)(オ)で言及したように、「主制御部タイマ割り込み処理」にS215が含まれ、また、上記(2-2)(ウ)の【0220】に「正常復帰(大当たり中以外)コマンドおよび正常復帰(大当たり中)コマンドは、ともに特図2保留数(第3の情報)および大当たり種別(第4の情報)を含んでいるが、第3の情報に対して第4の情報は、正常復帰(大当たり中以外)コマンドと正常復帰(大当たり中)コマンドとで、コマンド出力の際の出現する順序が異なる順序となっている」、【0222】に「正常復帰(大当たり中以外)コマンドおよび正常復帰(大当たり中)コマンドは、ともに特図1保留数(第2の情報)および特図2保留数(第3の情報)を含んでいるが、正常復帰(大当たり中以外)コマンドでは第2の情報の直後に第3の情報が出現しているが、正常復帰(大当たり中)コマンドでは第2の情報と第3の情報との間に第4の情報が挿入されており、正常復帰(大当たり中以外)コマンドと正常復帰(大当たり中)コマンドとで、出現する順序が異なる順序となっている」と記載されているから、刊行物2には、主制御部メイン処理で正常復帰(大当たり中)コマンドを記憶して、該記憶した正常復帰(大当たり中)コマンドを副制御部400に対して送信する処理と、主制御部メイン処理で正常復帰(大当たり中以外)コマンドを記憶して、該記憶した正常復帰(大当たり中以外)コマンドを副制御部400に対して送信する処理とをそれぞれ有し、それぞれの処理においてコマンドは送信されており、また、それぞれの処理で送信される正常復帰(大当たり中)コマンドと正常復帰(大当たり中以外)コマンドとで、特図1保留数(第2の情報)と特図2保留数(第3の情報)とを異なる順序とすることが記載されているといえる。
ここで、刊行物1発明Aと刊行物2の記載事項とはともに主制御部から副制御部にコマンドを送信する技術で共通しており、また、刊行物1発明Aにおいても、電断時が大当たり中および大当たり中以外の場合の両方の場合があり、それぞれの場合において主制御部から副制御部にコマンドを送信する処理を行うことは自明である。
そうすると、刊行物1発明Aに刊行物2の記載事項を適用して、主制御部から副制御部にコマンドを送信する処理として、コマンド正常復帰(大当たり中)コマンドを記憶して、該記憶した正常復帰(大当たり中)コマンドを副制御部400に対して送信する処理、および、主制御部メイン処理で正常復帰(大当たり中以外)コマンドを記憶して、該記憶した正常復帰(大当たり中以外)コマンドを副制御部400に対して送信する処理とをそれぞれ設定し、それぞれの処理において出力する指令情報の設定順序が異なる順序とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、刊行物1発明Aに刊行物2の記載事項を適用して、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(イ)上記[相違点2]について検討する。
刊行物1の上記(2-1)(ケ)の【0210】に「演出可動体224が装飾図柄表示装置208を遮蔽している状態でパチンコ機100にエラーが生じた場合に、そのエラーの報知態様を変更するものであってもよい。例えばエラーメッセージを出力する表示画面が演出可動体224によって遮蔽されている場合に、演出可動体224に遮蔽されていない領域で表示するものであったり」と記載されているから、演出可動体224が装飾図柄表示装置208を遮蔽している状態でパチンコ機100にエラーが生じた場合に、演出可動体224に遮蔽されていない領域でエラーメッセージを表示することが記載されているといえる。
よって、演出可動体224が装飾図柄表示装置208を遮蔽している状態である刊行物1発明Aにおいてもエラーが生じることはあるから、刊行物1発明Aに刊行物1の上記記載事項を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。その際、演出可動体224に遮蔽されていない領域に、画像カットイン演出のキャラクタ画像およびエラーメッセージの両方が表示されるようにすることは、当業者が適宜設定し得た事項である。
したがって、刊行物1発明Aに刊行物1の記載事項を適用して、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(ウ)まとめ
そうすると、刊行物1発明Aにおいて刊行物1、2の記載事項を適用することにより、上記相違点1、2に係る本件補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正発明は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成28年7月1日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.の本件補正の概要において示した次のとおりものである(A?Lは本願発明を分説するため当審で付した。)。

「A 遊技を行う遊技機であって、
B 表示領域を有する表示装置と、
C 第1位置と当該第1位置とは異なる第2位置との間を少なくとも移動可能な可動部材と、
D 遊技制御プログラムに基づいて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
E 該遊技制御手段から出力される指令情報に基づいて演出の実行を制御する演出制御手段と、
F 異常を検出する異常検出手段と、
G 前記異常検出手段が前記異常を検出したことに応じて、当該異常が発生したことを示す異常情報を表示させる異常表示制御を行う異常表示制御手段と、を備え、
H 前記遊技制御手段は、前記遊技制御プログラムにより実行される第1の処理および第2の処理のそれぞれにおいて、指令情報を出力可能であり、
I 前記第1の処理と、前記第2の処理とでは、出力する指令情報の設定順序が異なり、
J 前記可動部材は、少なくとも前記第1位置に位置するときに表示領域の一部を遊技者側から覆い、
K 前記異常表示制御手段は、前記第1位置に位置する前記可動部材によって覆われない表示領域に前記異常情報を表示させ、
L 前記演出制御手段は、表示領域の所定の位置において実行する演出表示を、前記異常情報が表示されているときにも継続して実行することが可能であることを特徴とする
M 遊技機。」

1.刊行物に記載された事項
(1-1)刊行物1
原査定の拒絶理由に引用された刊行物1は、上記第2の3.(2-1)(ア)?(ケ)の記載事項、(コ)、(サ)の図示内容から、以下の事項がいえる。なお、(a)?(h)、(j)?(m)は、本願発明の構成A?H、J?Mに対応した事項を示している。ここで、上記第2の3.(2-1)において示した(a)?(h)、(j)、(k)、(m)については共通するので、(a)?(h)、(j)、(k)、(m)については省略する。

(l)上記(エ)の【0077】に「装飾図柄には、「装飾1」?「装飾10」の10種類がある」、「装飾図柄表示装置208の左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cの各図柄表示領域に、「装飾1」→「装飾2」→「装飾3」→・・・・「装飾9」→「装飾10」→「装飾1」→・・・の順番で表示を切り替える「装飾図柄の変動表示」を行う」と記載され、上記(イ)の【0032】に「装飾図柄表示装置208は、左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cおよび演出表示領域208dの4つの表示領域」と記載されている。
したがって、刊行物1には、装飾図柄表示装置208の4つの表示領域のうち左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cにおいて装飾図柄の変動表示を行うことが記載されているといえる。

したがって、上記第2の3.(2-1)(ア)?(ケ)の記載事項、(コ)、(サ)の図示内容、(a)?(h)、(j)、(k)、(m)の認定事項および上記(l)の認定事項を総合すれば、刊行物1には、次の発明が記載されている(以下、「刊行物1発明B」という。a?h、j?mは刊行物1発明Bを分説するため当審で付した。)。
「a 遊技に関する抽選を行いその抽選の結果に応じて遊技者に利益を付与する遊技台であるパチンコ機100であって、
b 「装飾1」?「装飾10」の10種類の装飾図柄の変動表示を行う左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cを含む4つの表示領域を有する装飾図柄表示装置208と、
c 装飾図柄表示装置208の表示画面の一部を遮蔽する遮蔽位置と待機位置とを移動する演出可動体(可動部材)224と、
d 制御プログラムに従って遊技制御を実行するCPU304と、
e CPU304が送信するコマンドに応じて演出の制御を行う第1副制御部400と、
f 各種センサの信号状態を読み出して、前面枠扉開放エラーの有無または下皿満タンエラーの有無などを監視するデバイス監視処理を行うCPU304と、
g CPU304が前面枠扉開放エラーまたは下皿満タンエラーを検出したことに応じて、エラーメッセージを装飾図柄表示装置208の表示領域に表示させるCPU404と、を備え、
h CPU304は、制御プログラムに実行される、復電コマンドまたは正常復帰コマンドをRAM308の送信情報記憶領域にセットし、該コマンドを主制御部300から第1副制御部400へ送信する処理において、コマンドを送信し、
j 可動部材224は、遮蔽位置に移動すると装飾図柄表示装置208の表示画面の一部を遊技者側から遮蔽し、
k CPU404は、エラーメッセージを出力する表示画面が演出可動体224によって遮蔽されている場合に、演出可動体224に遮蔽されていない領域で表示させ、
l 装飾図柄表示装置208の4つの表示領域のうち左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cにおいて装飾図柄の変動表示を行う
m パチンコ機100。」

(1-2)刊行物2
原査定の拒絶理由に引用された刊行物2の記載事項は、上記第2の3.(2-2)において示したとおりのものである。

(1-3)刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-40447号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0351】
図70は、可変表示装置9に表示される異常報知画面の例を示す説明図である。図70(A)には、演出制御用CPU101が、第1異常入賞報知指定コマンドの受信に応じて可変表示装置9に表示する第1異常報知画面の例が示され、かつ、飾り図柄の変動が開始されても、第1異常報知画面の表示が継続されることが示されている(図70(A)の右側参照)。図70(B)には、演出制御用CPU101が、第2異常入賞報知指定コマンドの受信に応じて可変表示装置9に表示する第2異常報知画面の例が示され、かつ、飾り図柄の変動が開始されても、第2異常報知画面の表示が継続されることが示されている(図70(B)の右側参照)。図70(C)には、演出制御用CPU101が、第3異常入賞報知指定コマンドの受信に応じて可変表示装置9に表示する第3異常報知画面の例が示され、かつ、飾り図柄の変動が開始されても、第3異常報知画面の表示が継続されることが示されている(図70(C)の右側参照)。図70(D)には、演出制御用CPU101が、排出異常報知指定コマンドの受信に応じて可変表示装置9に表示する排出異常報知画面の例が示され、かつ、飾り図柄の変動が開始されても、排出異常報知画面の表示が継続されることが示されている(図70(D)の右側参照)。」

2.対比
本願発明と刊行物1発明Bとの対比でも、上記第2の3.(3)において示した(a)、(c)?(h)、(j)、(m)の対比については共通するので、(a)、(c)?(h)、(j)、(m)の対比については省略し、(b)、(k)、(l)の対比をする。

(a)、(c)?(h)、(j)、(m)は省略。

(b)刊行物1発明Bの「4つの表示領域」、「飾図柄表示装置208」は、それぞれ本願発明の「表示領域」、「表示装置」に相当する。
したがって、刊行物1発明Bの「「装飾1」?「装飾10」の10種類の装飾図柄の変動表示を行う左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cを含む4つの表示領域を有する飾図柄表示装置208」は、本願発明の「表示領域を有する表示装置」に相当する。

(k)刊行物1発明Bの「エラーメッセージを出力する表示画面が演出可動体224によって遮蔽されている場合」とは、「演出可動体224」が「遮蔽位置」に位置する場合であり、この場合の「演出可動体224」は、刊行物1発明Bの「遮蔽位置」が本願発明の「第1位置」に相当するから、本願発明の「前記第1位置に位置する前記可動部材」に相当する。
また、刊行物1発明Bの「演出可動体224に遮蔽されていない領域」は、本願発明の「前記第1位置に位置する前記可動部材によって覆われない位置」に相当する。
そして、刊行物1発明Bの「エラーメッセージ」、「CPU404」は、それぞれ本願発明の「異常情報」、「異常表示制御手段」に相当する。
したがって、刊行物1発明Bの「CPU404は、エラーメッセージを出力する表示画面が演出可動体224によって遮蔽されている場合に、演出可動体224に遮蔽されていない領域で表示させ」ることは、本願発明の「前記異常表示制御手段は、前記第1位置に位置する前記可動部材によって覆われない表示領域に前記異常情報を表示させ」ることに相当する。

(l)刊行物1発明Bの「装飾図柄表示装置208の4つの表示領域のうち左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208c」は、本願発明の「表示領域の所定の位置」に相当する。
また、刊行物1発明Bの「装飾図柄の変動表示」は、本願発明の「演出表示」に相当する。
そして、刊行物1発明Bの「装飾図柄の変動表示を行う」ことは、「左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208c」において実行されることであり、程度の差はあるものの、ある程度の時間継続して行われることは自明であり、また、実行することが可能であることを含んでいることが明らかであるから、本願発明の「演出表示を、継続して実行することが可能である」ことに相当する。
したがって、刊行物1発明Bの「装飾図柄表示装置208の4つの表示領域のうち左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cにおいて装飾図柄の変動表示を行う」ことは、本願発明の「前記演出制御手段は、表示領域の所定の位置において実行する演出表示を、継続して実行することが可能である」ことに相当する。

上記(a)?(h)、(j)?(m)の検討より、本願発明と刊行物1発明Bとは、
「A 遊技を行う遊技機であって、
B 表示領域を有する表示装置と、
C 第1位置と当該第1位置とは異なる第2位置との間を少なくとも移動可能な可動部材と、
D 遊技制御プログラムに基づいて遊技の進行を制御する遊技制御手段と、
E 該遊技制御手段から出力される指令情報に基づいて演出の実行を制御する演出制御手段と、
F 異常を検出する異常検出手段と、
G 前記異常検出手段が前記異常を検出したことに応じて、当該異常が発生したことを示す異常情報を表示させる異常表示制御を行う異常表示制御手段と、を備え、
H’ 前記遊技制御手段は、前記遊技制御プログラムにより実行される処理において、指令情報を出力可能であり、
J 前記可動部材は、少なくとも前記第1位置に位置するときに表示領域の一部を遊技者側から覆い、
K 前記異常表示制御手段は、前記第1位置に位置する前記可動部材によって覆われない表示領域に前記異常情報を表示させ、
L’ 前記演出制御手段は、表示領域の所定の位置において実行する演出表示を、継続して実行することが可能である、
M 遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
「遊技制御手段」について、本件補正発明は、「前記遊技制御プログラムにより実行される第1の処理および第2の処理のそれぞれにおいて、指令情報を出力可能であり、前記第1の処理と、前記第2の処理とでは、出力する指令情報の設定順序が異な」るのに対して、刊行物1発明Bは、遊技制御プログラムにより実行される処理において、指令情報を出力可能であること以外は特定がなされていない点。(構成H、I)

[相違点2]
「演出制御手段」の、「表示領域の所定の位置において実行する演出表示を、継続して実行すること」に関して、本願発明は、「前記異常情報が表示されているときにも」であるのに対して、刊行物1発明Bは、そのような特定がなされていない点。(構成L)

3.判断
(ア)上記[相違点1]について検討する。
上記第2の3.(4)で示したのと同様であり、刊行物1発明Bに刊行物2の記載事項を適用して、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。である。

(イ)上記[相違点2]について検討する。
刊行物1の上記(2-1)(ケ)の【0210】に「演出可動体224が装飾図柄表示装置208を遮蔽している状態でパチンコ機100にエラーが生じた場合に、そのエラーの報知態様を変更するものであってもよい。例えばエラーメッセージを出力する表示画面が演出可動体224によって遮蔽されている場合に、演出可動体224に遮蔽されていない領域で表示するものであったり」と記載されているから、パチンコ機100にエラーが生じた場合に、エラーメッセージを表示することが記載されているといえる。
また、刊行物3の【0351】に「演出制御用CPU101が、第1異常入賞報知指定コマンドの受信に応じて可変表示装置9に表示する第1異常報知画面の例が示され、かつ、飾り図柄の変動が開始されても、第1異常報知画面の表示が継続されることが示されている」と記載されているから、可変表示装置9に異常報知画面が表示され、飾り図柄の変動が開始されても異常報知画面の表示が継続され、飾り図柄の変動も継続されることが記載されているといえる。
ここで、刊行物1の記載事項と刊行物3の記載事項とはともにパチンコ機に異常が生じた場合に異常の報知を表示装置で表示する技術で共通している。
よって、左図柄表示領域208a、中図柄表示領域208b、右図柄表示領域208cにおいて装飾図柄の変動表示を行う刊行物1発明Bにおいて、該装飾図柄の変動表示中にもエラーが生じることはあるから、刊行物1発明Bに刊行物1、3の上記記載事項を採用して、装飾図柄の変動表示中にエラーが生じた場合に、装飾図柄表示装置208にエラーメッセージを表示すること、および、エラーメッセージの表示と装飾図柄の変動表示とを継続することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、刊行物1発明Bに刊行物1、3の記載事項を適用して、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

(ウ)まとめ
そうすると、刊行物1発明Bにおいて刊行物1-3の記載事項を適用することにより、上記相違点1、2に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-11 
結審通知日 2017-10-17 
審決日 2017-10-30 
出願番号 特願2013-225456(P2013-225456)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瓦井 秀憲  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 樋口 宗彦
青木 洋平
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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