• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1335574
審判番号 不服2016-7918  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-31 
確定日 2017-12-07 
事件の表示 特願2014-143113「熱伝導性シート」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月18日出願公開、特開2014-239236〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年2月12日に出願した特願2009?029685号の一部を、平成26年7月11日に新たな特許出願としたものであって、平成27年7月31日付けで拒絶理由が通知され、同年9月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月28日付けで拒絶査定されたところ、同年5月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において平成29年5月16日付けで拒絶理由が通知され、同年7月19日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-9に係る発明は、平成29年7月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
電子部品と、この電子部品が発熱する熱を放熱させる金属製放熱部材との間にシート全体が単層で配置される熱伝導性シートにおいて、
当該熱伝導性シート全体は、
球状の磁性金属粒子と、上記磁性金属粒子よりも熱伝導性が高い熱伝導性粒子とを含有する可撓性樹脂の単層からなり、
上記磁性金属粒子の平均粒径は、上記熱伝導性粒子の平均粒径よりも大きく、
当該熱伝導性シートに占める上記磁性金属粒子の体積率は、55[vol%]以上であり、
上記磁性金属粒子と上記熱伝導性粒子との体積率の合計が70[vol%]より大きいことを特徴とする熱伝導性シート。」

第3 当審の判断
1.引用例の記載事項及び引用発明
当審において平成29年5月16日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)で引用した特開2002-129019号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。
(1)「【0013】 本発明の電磁波吸収性シリコーンゴム組成物中の軟磁性粉末は、鉄又は鉄合金であることが好ましい。軟磁性材料は、概略フェライト系と金属系に分類できるが、フェライト系では良好な電磁波吸収性能が得られる周波数帯域が比較的低周波数領域であり、用途が限定されてしまうため金属系が好ましい。金属系の中では、鉄や鉄合金が比較的高周波側まで電磁波吸収性能が良好であり、価格的にも安価であるためより好ましい。鉄合金としては、Fe-Cr系、Fe-Si系、Fe-Ni系、Fe-Al系、Fe-Co系、Fe-Al-Si系、Fe-Cr-Si系、Fe-Si-Ni系等が例示されるが、これらに限定されるものではない。これらの軟磁性粉末は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。軟磁性粉末の形状は扁平状、粒子状のどちらかを単独で用いてもよいし、両者を併用してもよい。
【0014】 軟磁性粉末の平均粒子径は0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。特には1μm以上50μm以下のものを用いることが好ましい。粒子径が0.1μm未満の場合には、粒子の比表面積が大きくなりすぎて高充填化が困難となるおそれがある。粒子径が100μmを超える場合には、特に高周波側での軟磁性粉の単位重量当たりの電磁波吸収性能が十分ではなくなると共に、電磁波吸収性シリコーンゴム組成物の表面に微小な凹凸が現れ、熱伝導性能が必要な場合、接触熱抵抗が大きくなってしまうおそれがある。
【0015】 軟磁性粉末の含有量は、電磁波吸収性シリコーンゴム組成物全量に対して5vol%以上80vol%以下、特には20vol%以上70vol%以下であることが好ましい。5vol%未満では十分な電磁波吸収性能が得られない場合があり、80vol%を超えた場合にはシリコーンゴム組成物の硬度が高く、脆くなってしまう場合がある。本発明の電磁波吸収性シリコーンゴム組成物を電子機器要素として適用した場合、目的の周波数でのノイズ減衰率が5dB以上、特に10dB以上とすることが好ましい。
【0016】 本発明の電磁波吸収性シリコーンゴム組成物は、熱伝導性能が必要な部位に使用される場合、高い熱伝導性能を得るため、軟磁性粉末と熱伝導性粉末を併用することが好ましい。この場合、このシリコーンゴム組成物の硬化物の熱伝導率は2.0W/mK以上、特に3.0W/mK以上であることが好ましい。
【0017】 熱伝導性粉末の材質としては、銅やアルミニウム等の金属、アルミナ、シリカ、マグネシア、ベンガラ、ベリリア、チタニア等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の金属窒化物、あるいは炭化ケイ素などを用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0018】 熱伝導性粉末の平均粒子径は0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。特には1μm以上50μm以下であることが好ましい。粒子径が0.1μm未満の場合には、粒子の比表面積が大きくなりすぎて高充填化が困難となるおそれがある。粒子径が100μmを超える場合には、電磁波吸収性シリコーンゴム組成物の表面に微小な凹凸が現れ、熱的な接触抵抗が大きくなってしまうおそれがある。
【0019】 本発明に係る熱伝導性粉末は、軟磁性粉末との最密充填化を図り、熱伝導率の向上を目的として使用するものであり、その含有量は10vol%以上85vol%以下とすることが好ましく、更に軟磁性粉末と熱伝導性粉末の合計の含有量が15vol%以上90vol%以下、特に30vol%以上80vol%以下とすることが好ましい。軟磁性粉末と熱伝導性粉末の合計の含有量が15vol%未満では十分な熱伝導率が得られないおそれがある。また、軟磁性粉末と熱伝導性粉末の合計の含有量が90vol%を超える場合にはシリコーンゴム組成物の硬度が高く、非常に脆いものとなってしまうおそれがある。」

(2)「【0046】 本発明の電磁波吸収性シリコーンゴム組成物を硬化成形したシートを電子機器内部に設置することにより、電子機器内部の電磁波ノイズを抑制することができる。更に、熱伝導性能を付与した本発明の電磁波吸収性シリコーンゴム組成物を硬化成形したシートを電子機器内部の電子機器要素と放熱要素の間に設置することにより、電磁波ノイズを抑制すると共に、電子機器要素から発生した熱の機器外部への放熱が可能となる。」

(3)「【0048】 [実施例1?13] 軟磁性粉末及び熱伝導性粉末を含むシリコーンゴム硬化物を以下のように作製した。
【0049】 液状型付加反応タイプとするため、室温での粘度が30Pa・sであり、ジメチルビニルシロキシ基で両末端を封止したビニル基含有ジメチルポリシロキサンをベースオイルとし、表1に示すように(a)下記に示す一分子中に少なくとも一個のケイ素原子結合アルコキシ基、ケイ素原子結合水酸基、又は官能性有機基を含有するオルガノポリシロキサン、(b)チタネート系カップリング剤であるイソプロピルトリステアロイルチタネート又は(c)アルミニウム系カップリング剤であるアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートのうち一種類を、軟磁性粉末と熱伝導性粉末の合計量100部に対して所定量添加し、更に軟磁性粉末、熱伝導性粉末を加えて、室温にて撹拌混合後、更に撹拌混合しながら120℃、1時間の熱処理を行ってベース組成物を作製した。このとき、軟磁性粉末は表1に示した組成のものを使用した。また、熱伝導性粉末として、アルミナはアドマファインAO-41R,AO-502((株)アドマテックス製)の混合物、窒化アルミニウムはUM-53E9(東洋アルミニウム(株)製)を使用した。
CH_(3)-((CH_(3))_(2)SiO)_(m)-Si(OCH_(3))_(3 )(a-1)
CH_(3)-((CH_(3))_(2)SiO)_(m)-Si(OC_(2)H_(5))_(3 )(a-2)
CH_(3)-((CH_(3))_(2)SiO)_(m)-Si(CH_(3))_(2)C_(3)H_(6)NH_(2)(a-3)
HO-((CH_(3))_(2)SiO)_(m)-Si(CH_(3))_(2)OH (a-4)
CH_(3)-((CH_(3))_(2)SiO)_(m)-Si(CH_(3))_(2)OH(a-5)
(mは5?100の整数)
【0050】 次に、一分子中にケイ素原子に直接結合した水素原子を2個以上含有したオルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金族金属系触媒、アセチレンアルコール系付加反応制御剤を添加混合し、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化させ、厚さ1.0mmのシートを得た。なお、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、プレス成形にて120℃、15分間加熱硬化させて得られた厚さ6mmのシートを2枚重ねにし、その硬さが、アスカーC硬度計(高分子計器製)にて20?70となる量に調整した。この調整した結果のアスカーC硬度を表2に示す。
【0051】 得られたシートの引張強度、ノイズ減衰量、熱伝導率を評価し、結果を表2に示した。ここで、ノイズ減衰量(ノイズ抑制効果)を評価するためのテスト方法は下記の通りである。
【0052】 まず、電波暗室内において、本発明の電磁波吸収性シリコーンゴム組成物より成形した前記シート(幅40mm、長さ40mm、厚さ1.0mm)をCPU(動作周波数500MHz)とアルミニウム製ヒートシンクの間に挟み込んだパーソナルコンピュータを動作させ、そのパーソナルコンピュータより3m離れた位置に受信アンテナを通して電磁波ノイズ発生量を測定した。即ち、これはFCC準拠3m法に合致するものである。この測定結果と本発明の電磁波吸収性シリコーンゴム組成物である前記成形シートを設置しない場合のノイズ発生量との差をノイズ減衰量とした。」

(4)表1は以下のとおりである。



上記(1)?(4)及び当業者の技術常識を考慮すると、

ア 上記(2)?(4)によれば、引用例には、「電子機器内部の電子機器要素と放熱要素の間に設置」される「熱伝導性能を付与した電磁波吸収性シリコーンゴム組成物を硬化成形したシート」(【0046】)の実施例として、粒径が11μmの粒状のFe-Cr-Siである軟磁性粉末を60vol%、アルミナからなる熱伝導性粉末を15vol%含むシリコーンゴム硬化物(表1の実施例5)が記載されている。また、該シートは、上記軟磁性粉末及び上記熱伝導性粉末を含むベース組成物を作製した後、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等を添加混合し、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化して得られた厚さ1.0mmのシートであり(【0049】、【0050】)、該シート(幅40mm、長さ40mm、厚さ1.0mm)をCPU(動作周波数500MHz)とアルミニウム製ヒートシンクの間に挟み込むこと(【0052】)が記載されている。

イ そして、上記(3)によれば、上記アルミナとして、アドマファインAO-41R,AO-502((株)アドマテックス製)の混合物が使用されているところ(【0049】)、(株)アドマテックス製アルミナ粉末AO-41R及びAO-502は、それぞれ、粒径10μm及び0.7μmの球状アルミナ粉末である(例えば、特開2004-130646号公報(当審拒絶理由で提示した引用文献3)の段落48「平均粒径10μmの球状酸化アルミニウム粉アドマファインAO-41R(商品名、アドマテックス(株)製)・・・および平均粒径0.7μmの球状酸化アルミニウム粉末アドマファインAO-502(商品名、アドマテックス(株)製)・・・」又はアドマテックス(株)ホームページの製品紹介>アドマファイン>製品一覧>アルミナ(http://www.admatechs.co.jp/product-admafine-alumina.html)の「粒径ラインナップ」の欄参照)。

ウ そうすると、引用例には、「CPUとアルミニウム製ヒートシンクの間に挟み込まれる厚さ1.0mmの」、「熱伝導性能を付与した電磁波吸収性シリコーンゴム組成物を硬化成形したシート」であって、「粒径が11μmで粒状のFe-Cr-Siからなる軟磁性粉末と、粒径10μm及び粒径0.7μmの球状アルミナ粉末の混合物である熱伝導性粉末とを含み、上記軟磁性粉末及び熱伝導性粉末を含むベース組成物を作製した後、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等を添加混合し、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化して得られた、厚さ1.0mmのシート」が記載されているといえる。
また、該シートが、Fe-Cr-Siである軟磁性粉末を60vol%、アルミナからなる熱伝導性粉末を15vol%含むことも記載されているから、「上記軟磁性粉末を60vol%含み」、「上記軟磁性粉末と上記熱伝導性粉末とを合計で」、60vol%+15vol%=「75vol%含む」といえる。

以上を総合すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「CPUとアルミニウム製ヒートシンクの間に挟み込まれる厚さ1.0mmのシートであって、
当該シートは、
粒径が11μmで粒状のFe-Cr-Siからなる軟磁性粉末と、粒径10μm及び粒径0.7μmの球状アルミナ粉末の混合物である熱伝導性粉末とを含み、
上記軟磁性粉末及び熱伝導性粉末を含むベース組成物を作製した後、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等を添加混合し、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化して得られた、厚さ1.0mmのシートであり、
上記軟磁性粉末を60vol%含み、
上記軟磁性粉末と上記熱伝導性粉末とを合計で75vol%含む、
熱伝導性能を付与した電磁波吸収性シリコーンゴム組成物を硬化成形したシート。」

2.対比
(1)引用発明の「CPU」及び「アルミニウム製ヒートシンク」は、それぞれ本願発明の「電子部品」、「この電子部品が発熱する熱を放熱させる金属製放熱部材」に相当する。また、引用発明の「CPUとアルミニウム製ヒートシンクの間に挟み込まれる厚さ1.0mmのシート」は、「上記軟磁性粉末及び熱伝導性粉末を含むベース組成物を作製した後、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等を添加混合し、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化して得られた、厚さ1.0mmのシート」であるから、厚さ1.0mmのシートを「単層で」挟み込むものと解するのが自然であり、本願発明と同様、「電子部品と、この電子部品が発熱する熱を放熱させる金属製放熱部材との間にシート全体が単層で配置される熱伝導性シート」といえる。

(2)引用発明の「粒径が11μmで粒状のFe-Cr-Siからなる軟磁性粉末」は、球状といえるかどうかは別として、本願発明にいう「磁性金属粒子」に対応する。
また、上記1(1)の【0016】及び【0019】の記載によれば、引用発明の「熱伝導性粉末」は、熱伝導率の向上を目的として「軟磁性粉末」と併用したものであるから、上記「熱伝導性粉末」の方が、上記「軟磁性粉末」よりも熱伝導率が高いことは明らかである。
そうすると、引用発明の「粒径10μm及び粒径0.7μmの球状アルミナ粉末の混合物である熱伝導性粉末」は、本願発明にいう「上記磁性金属粒子よりも熱伝導性が高い熱伝導性粒子」に相当する。

(3)本願明細書には、「熱伝導性シート全体」が「可撓性樹脂の単層からな」ることについての明示の記載はないものの、本願明細書の段落53-61の記載によれば、可撓性樹脂材料に、磁性金属粒子と熱伝導性粒子を真空攪拌機にて攪拌した後に、所定の厚さのシートにし、100度で60分間加熱して硬化させることにより、実施例に係るシートを作製しているから、本願発明の「熱伝導性シート全体」は、「可撓性樹脂の単層からな」ると推察される。
そして、引用発明の「熱伝導性能を付与した電磁波吸収性シリコーンゴム組成物を硬化成形したシート」も、「上記軟磁性粉末及び熱伝導性粉末を含むベース組成物を作製した後、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等を添加混合し、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化して得られた」ものであるから、本願発明と同様、「可撓性樹脂の単層からな」るシートといえる。
そうすると、引用発明において「CPUとアルミニウム製ヒートシンクの間に挟み込まれる厚さ1.0mm」の「熱伝導性能を付与した電磁波吸収性シリコーンゴム組成物を硬化成形したシート」の全体は、本願発明と同様、「当該熱伝導性シート全体は」、「磁性金属粒子と、上記磁性金属粒子よりも熱伝導性が高い熱伝導性粒子とを含有する可撓性樹脂の単層からなり、」といえる。

(3)引用発明の「軟磁性粉末」は、「粒径が11μm」であり、引用発明の「熱伝導性粉末」は、「粒径10μm」及び「粒径0.7μm」の球状アルミナ粉末の混合物であるから、本願発明と同様、「上記磁性金属粒子の平均粒径は、上記熱伝導性粒子の平均粒径よりも大きい」といえる。

(4)引用発明の「熱伝導性能を付与した電磁波吸収性シリコーンゴム組成物を硬化成形したシート」は、「上記軟磁性粉末を60vol%含み」、「上記軟磁性粉末と上記熱伝導性粉末とを合計で75vol%含む」から、引用発明では、熱伝導性シートに占める磁性金属粒子の体積率、及び、磁性金属粒子と熱伝導性粒子との体積率の合計は、それぞれ「60vol%」及び「75vol%」である。
そうすると、本願発明では、熱伝導性シートに占める磁性金属粒子の体積率、及び、磁性金属粒子と熱伝導性粒子との体積率の合計を、それぞれ「55[vol%]以上」及び「70[vol%]より大きい」として、数値範囲で特定しているものの、引用発明の「60vol%」及び「75vol%」は、いずれも本願発明で特定した数値範囲に含まれるといえる。

よって、本願発明と先願発明とは、以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「 電子部品と、この電子部品が発熱する熱を放熱させる金属製放熱部材との間にシート全体が単層で配置される熱伝導性シートにおいて、
当該熱伝導性シート全体は、
磁性金属粒子と、上記磁性金属粒子よりも熱伝導性が高い熱伝導性粒子とを含有する可撓性樹脂の単層からなり、
上記磁性金属粒子の平均粒径は、上記熱伝導性粒子の平均粒径よりも大きく、
当該熱伝導性シートに占める上記磁性金属粒子の体積率は、60[vol%]であり、
上記磁性金属粒子と上記熱伝導性粒子との体積率の合計が75[vol%]であることを特徴とする熱伝導性シート。」

(相違点1)
磁性金属粒子が、本願発明では「球状」であるのに対し、引用発明では「粒状」である点。

(相違点2)
熱伝導性シートに占める磁性金属粒子の体積率、及び、磁性金属粒子と熱伝導性粒子との体積率の合計が、本願発明では、それぞれ「55[vol%]以上」及び「70[vol%]より大きい」として、数値範囲で特定しているいるのに対し、引用発明では、「60vol%」及び「75vol%」である点。

3.判断
(1)相違点1について
引用例では、「軟磁性粉末の形状は扁平状、粒子状のどちらかを単独で用いてもよいし、両者を併用してもよい」(上記1(1)【0013】)との記載からみて、「扁平状」との対比で「粒子状」(表1においては「粒状」)の用語を用いているといえる。
そして、本願明細書に「球状の磁性金属粒子は、偏平形状の磁性金属粒子に比べて、粒子単体での透磁率は低いが、分散性が高く高充填することが可能である。」(段落33)と記載されているように、本願発明においても、「扁平形状」との対比で「球状」の用語を用いており、かつ、本願発明の「磁性金属粒子」について、「球状」の精度に関する記載や真球度の具体的な特定もないことからみて、本願発明にいう「球状」と引用発明にいう「粒状」とは、同義であると解するのが相当である。
よって、上記相違点1は、実質的な相違点とはいえない。

また、熱伝導性シートの技術分野において、「球状」の磁性金属粒子を用いることは周知技術(例えば、特開2006-310812号公報(当審拒絶理由の引用文献4)の段落31)又は特開2005-15679号公報(当審拒絶理由の引用文献5)の段落72)参照)である。
また、扁平状の磁性金属粒子を使用する場合は、充填量が少なくなり易いことも、当該技術分野の技術常識であるから(必要ならば、特開2001-294752号公報(当審拒絶理由の引用文献1)の段落9参照)、引用発明において、軟磁性粉末を60vol%充填するべく「球状」の軟磁性粉末を用いることは、当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
引用発明の「60vol%」及び「75vol%」は、いずれも本願発明の「55[vol%]以上」及び「70[vol%]より大きい」とした数値範囲に含まれるから、上記相違点2は実質的な相違点とはいえない。

また、本願発明の数値範囲についても、以下(i)、(ii)のとおり、格別の技術的特徴は認められない。

(i)熱伝導性シートに占める上記磁性金属粒子の体積率を、「55[vol%]以上」とする点について
引用例には、電磁波吸収性能を考慮して熱伝導性シートに占める磁性金属粒子の体積率の数値範囲(下限)を設定することについて示唆があるといえる(上記(1)【0015】)。
一方、本願明細書の図4や表1等をみても、熱伝導性シートに占める上記磁性金属粒子の体積率が大きい方が電磁波抑制効果が大きいことは開示されているものの、該体積率が特定の数値範囲にある場合において顕著な効果を奏することを示す記載や示唆はない。
そして、本願発明は、高調波ノイズの発生源となる「電子部品」や「金属製放熱部材」の具体的構成、電磁波抑制効果に寄与する「磁性金属粒子」の組成や複素比透磁率等を特定することなく、単に、熱伝導性シートに占める上記磁性金属粒子の体積率が、「55[vol%]以上」であることを特定したものであり、本願明細書の記載を見ても、「55[vol%]以上」とした点に臨界的意義は見い出せないから、上記(i)のように体積率の下限の数値のみを特定することで、引用発明からは予測できない格別の効果が得られるとはいえない。

よって、上記(i)の点は、当業者が必要とする電磁波吸収性能を考慮して適宜なし得ることであって、その効果も格別のものとはいえない。

(ii)上記磁性金属粒子と上記熱伝導性粒子との体積率の合計を、「70[vol%]より大きい」とする点について
引用例には、熱伝導率を考慮して磁性金属粒子と熱伝導性粒子との体積率の合計の数値範囲(下限)を設定することについて示唆があるといえる(上記(1)【0019】)。
一方、本願明細書の図5や表1等をみても、上記磁性金属粒子と上記熱伝導性粒子との体積率の合計が特定の数値範囲にある場合に顕著な効果を奏することを示すような記載や示唆はない。
そして、本願発明は、高調波ノイズの発生源となる「電子部品」や「金属製放熱部材」の具体的構成、熱伝導性に寄与する「磁性金属粒子」及び「熱伝導性粒子」の組成や熱伝導率等を特定することなく、単に、磁性金属粒子と熱伝導性粒子との体積率の合計が、「70[vol%]より大きい」ことを特定したものであり、明細書の記載を見ても、「70[vol%]以上」とした点に臨界的意義は見い出せないから、上記(ii)のように体積率の合計の下限の数値のみを特定することで、引用発明からは予測できない格別の効果が得られるとはいえない。

よって、上記(ii)の点は、当業者が必要とする電磁波吸収性能及び熱伝導率を考慮して適宜なし得ることであって、その効果も格別のものとはいえない。

(3)小括
以上より、上記相違点1及び2は、実質的な相違点ではなく、本願発明は引用発明と同一である。

そして、相違点1及び2を総合して検討しても、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものである。

(4)平成29年7月19日付け意見書における主張について
請求人は、引用例の段落50の記載を参照して、引用発明は、「取り扱い性等の観点からアスカーC硬度を所定の範囲とするためにシートを2層構造としているため、この点において本願請求項1に係る発明と異なります」と主張する。

そこで検討するに、引用例の段落50には、次の記載がある。
「【0050】 次に、一分子中にケイ素原子に直接結合した水素原子を2個以上含有したオルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金族金属系触媒、アセチレンアルコール系付加反応制御剤を添加混合し、プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化させ、厚さ1.0mmのシートを得た。なお、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、プレス成形にて120℃、15分間加熱硬化させて得られた厚さ6mmのシートを2枚重ねにし、その硬さが、アスカーC硬度計(高分子計器製)にて20?70となる量に調整した。この調整した結果のアスカーC硬度を表2に示す。」

上記段落50第2文のなお書きは、シートが所望の硬さとなるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量を求めるために、15分間加熱硬化させて得られた厚さ6mmのシートを2枚重ねにして、その硬さをアスカーC硬度計(高分子計器製)で測定したことを意味するものである。

そして、上記1で認定したとおり、引用発明は、上記段落50第1文で「プレス成形にて120℃、10分間加熱硬化させ」て得たとする「厚さ1.0mmのシート」を、「CPUとアルミニウム製ヒートシンクの間に挟み込まれる厚さ1.0mmのシート」としたものであることは明らかである。

よって、請求人の上記主張は失当である。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-04 
結審通知日 2017-10-10 
審決日 2017-10-24 
出願番号 特願2014-143113(P2014-143113)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
P 1 8・ 113- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 遠藤 邦喜  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 北岡 浩
川口 貴裕
発明の名称 熱伝導性シート  
代理人 小池 晃  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ