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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01D
管理番号 1335739
審判番号 不服2016-15979  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-26 
確定日 2017-12-28 
事件の表示 特願2012- 59889「ターボ機械」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月22日出願公開、特開2012-202406〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成24年3月16日(パリ条約による優先権主張2011年3月24日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、平成27年10月20日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月26日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成28年6月30日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年10月26日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明

本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成28年1月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
それぞれの背面部(3a,3b)が互いに対向する少なくとも1つの第1の動翼(1)及び第2の動翼(2)と、
これら第1の動翼(1)及び第2の動翼(2)を支持するロータシャフト(4)と、
軸受装置と
を備えて成り、それぞれロータ軸受半部(6a,6b)及びステータ軸受半部(7a,7b)を有するアキシャル軸受(5a,5b)が前記第1の動翼(1)及び前記第2の動翼(2)それぞれの近傍において形成され、前記第1の動翼(1)及び前記第2の動翼(2)それぞれの前記背面部(3a,3b)において前記ロータ軸受半部(6a,6b)が形成されているターボ機械において、
前記第1の動翼(1)を前記ロータシャフト(4)に固設する一方、前記第2の動翼(2)を取外し可能に前記ロータシャフト(4)に結合し、前記ロータシャフト(4)を、前記第1の動翼(1)から前記第2の動翼(2)へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成したことを特徴とするターボ機械。」

3.刊行物

3.1 刊行物1

(1) 刊行物1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2009-57850号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「ターボチャージャ」に関し、図面とともに次の記載がある。

(ア)「【0012】
以下、本発明を具体化したターボチャージャの一実施形態を図1?図5に従って説明する。
図1に示すように、横円筒状をなす収容孔11aを形成したセンタハウジング11の左端面には排気通路12を有するタービンハウジング13が接合固定されている。前記センタハウジング11の右端面には吸気通路14を有するコンプレッサハウジング15が接合固定されている。前記センタハウジング11の収容孔11aには複数のラジアルベアリング16を介してロータ軸17が回転可能に支持されている。前記ロータ軸17の左端部にはタービン18が嵌合固定され、タービンハウジング13内に収容されている。前記ロータ軸17の右端部にはインペラ19が嵌合固定され、コンプレッサハウジング15内に収容されている。
【0013】
前記センタハウジング11の左端面にはスラスト受板20が図示しない複数のボルトによって接合固定されている。前記タービン18の背面には前記スラスト受板20と第1隙間g1(例えば5?20μm)をもって対向するスラスト板21が図示しない複数のボルトによって接合固定されている。前記スラスト板21には図3に示すように円弧状の第1溝21aが形成されている。前記第1隙間g1には、タービンハウジング13の排気通路12に供給された高圧力の排気ガスの一部が供給されるようになっている。前記ロータ軸17には第1隙間g1内の空気を前記排気通路12に還流するためのオリフィス機能を有する第1還流路17aが形成されている。この実施形態では前記第1還流路17a、スラスト受板20、スラスト板21及び第1隙間g1によって第1スラスト空気軸受S1が構成されている。
【0014】
前記センタハウジング11の他端面にはスラスト受板22が図示しない複数のボルトによって接合固定されている。前記インペラ19の背面には前記スラスト受板22と第2隙間g2(例えば5?20μm)をもって対向するスラスト板23が図示しない複数のボルトによって接合固定されている。前記スラスト板23には図5に示すように円弧状の第2溝23aが形成されている。前記第2隙間g2には、コンプレッサハウジング15の吸気通路14に吸い込まれて高圧力に圧縮された吸入空気の一部が供給されるようになっている。ロータ軸17には、前記第2隙間g2内の空気を低圧状態の吸気通路14に還流するためのオリフィス機能を有する第2還流路17bが形成されている。この実施形態では前記第2還流路17b、スラスト受板22、スラスト板23及び第2隙間g2等によって第2スラスト空気軸受S2が構成されている。」(段落【0012】ないし【0014】)

(2)刊行物1記載の事項
上記(1)(ア)及び図1の記載から、以下の事項が分かる。

(イ)上記(1)(ア)及び図1の記載から、刊行物1には、複数のラジアルベアリング16、第1スラスト空気軸受S1及び第2スラスト空気軸受S2からなる軸受装置が記載されていることが分かる。

(3)刊行物1発明
上記(1)及び(2)並びに図面の記載から、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認める。

<刊行物1発明>
「それぞれの背面部が互いに対向するタービン18及びインペラ19と、
これらタービン18及びインペラ19を支持するロ-タ軸17と、
軸受装置と
を備えて成り、それぞれスラスト板21,23及びスラスト受板20,22を有する第1スラスト空気軸受S1及び第2スラスト空気軸受S2が前記タービン18及び前記インペラ19それぞれの近傍において形成され、前記タービン18及び前記インペラ19それぞれの前記背面部において前記スラスト板21,23が形成されているターボチャージャにおいて、
前記タービン18及び前記インペラ19は前記ロータ軸17に嵌合固定されているターボチャージャ。」

3.2 刊行物2

(1)刊行物2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-205253号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0010】
本発明の実施形態について、以下に図面に従って説明する。図1において、本発明の実施形態のタービンロータ1は、自動車内燃機関用の過給機において用いられるものであり、タービン軸2およびタービンホイール3から構成されたロータ組立体4を含んで構成されている。タービン軸2には、コンプレッサホイール5、スペーサ6、および、不図示のスラストベアリングを保持するためのスラストカラー7が、ボルト8によって螺着されている。ロータ組立体4は、シールリング9を配置するためのリング溝10を有する。」(段落【0010】)

(イ)「【0012】
図2に示されるように、タービン軸2の端部には大径部20が回転対称に形成されている。大径部20の円柱状の軸端部21の基部には、タービンホイール3と接合するための軸側接合面2aが形成されている。この軸側接合面2aは、シールリング9(図1参照)を配置するためのリング溝10の底面22の一部をなす軸側部分底面22aに隣接している。大径部20にはまた、中間部11を収容するケース内部空間からシールリング9に向かうオイルの移動を抑制するためのスリンガー部23が形成されている。」(段落【0012】)

(ウ)「【0014】
以上のとおり構成されたタービンロータ1の組立は、以下のようにして行う。まず、タービン軸2の軸端部21を、タービンホイール3の挿入孔32に挿入する。軸端部21と挿入孔32との挿入は、圧入または焼きばめであってもよい。そして、タービン軸2の軸側接合面2aと、タービンホイール3のホイール側接合面3aとを当接させ、その状態で電子ビームガンまたはレーザー溶接機により、接合面2a,3aからなる接合部30を照射することにより、タービン軸2とタービンホイール3とを溶接する。この溶接により、軸側部分底面22aとホイール側部分底面22bとが結合されて、単一の底面22を有するリング溝10が形成される。リング溝10へのシールリング9の設置は、溶接後の状態のまま行ってもよいし、溶接後の底面22を切削加工によって平滑に仕上げてから行ってもよい。」(段落【0014】)

(2)刊行物2の記載事項
上記(1)(ア)ないし(ウ)並びに図1及び2の記載から、以下の事項が分かる。

(エ)上記(1)(ウ)及び図2の記載から、タービン軸2の軸端部21はタービンホイール3の挿入孔32に圧入または焼きばめにより挿入され、タービン軸2の大径部20はタービンホイール3に溶接されるものであるから、タービンホイール3はタービン軸2に固設されるものであることが分かる。

(オ)上記(1)(ア)及び図1の記載から、コンプレッサホイール5は、ボルト8によって取外し可能にタービン軸2に結合していることが分かる。

(カ)上記(ア)ないし(ウ)並びに図1及び図2の記載から、タービン軸2は、タービンホイール3からコンプレッサホイール5へ向けて順に、軸端部21、大径部20、中間部11、中間部11より小径でありスペーサ6及びスラストカラーが挿入される部分、スペーサ6及びスラストカラーが挿入される部分と同径のコンプレッサホイール5が挿入される部分、スペーサ6及びスラストカラーが挿入される部分と同径のボルト8によって螺着される部分からなることが分かる。

(3)刊行物2記載技術
上記(1)及び(2)並びに図1の記載から、刊行物2には次の技術(以下、「刊行物2記載技術」という。)が記載されていると認める。

「タービン軸2、タービンホイール3及びコンプレッサホイール5を備えたタービンロータ1において、タービンホイール3をタービン軸2に固設する一方、コンプレッサホイール5を取外し可能にタービン軸2に結合し、タービン軸2は、タービンホイール3からコンプレッサホイール5へ向けて順に、大径部20、中間部11、中間部11より小径でありスペーサ6及びスラストカラーが挿入される部分、スペーサ6及びスラストカラーが挿入される部分と同径のコンプレッサホイール5が挿入される部分、スペーサ6及びスラストカラーが挿入される部分と同径のボルト8によって螺着される部分からなるタービンロータ1。」

4.対比・判断
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、その構造、機能又は技術的意義からみて、刊行物1発明における「タービン18及びインペラ19」は本願発明における「少なくとも1つの第1の動翼及び第2の動翼」に相当し、以下同様に、「タービン18」は「第1の動翼」に、「インペラ19」は「第2の動翼」に、「ロ-タ軸17」は「ロータシャフト」に、「スラスト板21,23」は「ロータ軸受半部」に、「スラスト受板20,22」は「ステータ軸受半部」に、「第1スラスト空気軸受S1及び第2スラスト空気軸受S2」は「アキシャル軸受」に、それぞれ相当する。
また、刊行物1発明において、「前記タービン18及び前記インペラ19は前記ロータ軸2に嵌合固定されている」ことは、「第1の動翼と第2の動翼は、ロータシャフトに結合されている」という限りにおいて、本願発明の「前記第1の動翼を前記ロータシャフトに固設する一方、前記第2の動翼を取外し可能に前記ロータシャフトに結合し、前記ロータシャフトを、前記第1の動翼から前記第2の動翼へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成した」ことに相当する。

以上から、本願発明の用語に倣って整理すると、本願発明と刊行物1発明とは、
「それぞれの背面部が互いに対向する少なくとも1つの第1の動翼及び第2の動翼と、
これら第1の動翼及び第2の動翼を支持するロータシャフトと、
軸受装置と
を備えて成り、それぞれロータ軸受半部及びステータ軸受半部を有するアキシャル軸受が第1の動翼及び第2の動翼それぞれの近傍において形成され、第1の動翼及び第2の動翼それぞれの背面部においてロータ軸受半部が形成されているターボ機械において、
第1の動翼と第2の動翼は、ロータシャフトに結合されているターボ機械。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
「第1の動翼と第2の動翼は、ロータシャフトに結合されている」ことに関して、
本願発明は、「前記第1の動翼を前記ロータシャフトに固設する一方、前記第2の動翼を取外し可能に前記ロータシャフトに結合し、前記ロータシャフトを、前記第1の動翼から前記第2の動翼へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成した」のに対し、
刊行物1発明は、タービン18及びインペラ19はロータ軸2に嵌合固定されている点(以下、「相違点」という。)。

上記相違点について検討する。

刊行物1発明とターボ機械という同一の技術分野に属する刊行物2記載技術は、コンプレッサホイール5を取外し可能にタービン軸2に結合したものであるところ、刊行物1発明や刊行物2記載技術のようなターボ機械において、メンテナンスなどのためにロータ軸に対してタービン、インペラ及び軸受装置等の取付け、取外しを容易にすべき課題が存在することは、当業者にとって技術常識であり、かかる課題を踏まえ、刊行物1発明において、刊行物2記載技術を適用し、ロータ軸2に対して嵌合固定されているタービン18とインペラ19のいずか一方を取外し可能とすることは、当業者が容易になし得たことである。

次に、「ロータシャフトを、第1の動翼から第2の動翼へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成」することの意義を知るために、本願の明細書及び図面を参照する。
本願の明細書の段落【0021】には、「・・・取付時には、ステータ軸受半部7a,7b及び第2の動翼2を前後してロータシャフト4上で摺動させることが可能である。そして、このために、本実施の形態においては、ロータシャフト4は、第1の動翼から第2の動翼へ向けて先細状に形成されている。」との記載があり、段落【0025】には、「また、取付に際しては、まずステータ軸受半部7a、次にラジアル軸受12、もう一方のステータ軸受半部7b、最後に第2の動翼2が、対応するロータ軸受半部6bにその背面部3bにおいて順番に取り付けられる。ここで、このような取付を容易にするために、ロータシャフト4が複数の段部において先細状となっており、各段部は、それぞれ上記の構成部材に対応するよう割り当てられている。」との記載がある。
かかる記載によれば、各軸受部材(ステータ軸受半部7a、ラジアル軸受12、ステータ軸受半部7b)や第2の動翼2のロータシャフト4への取付を容易にするために、ロータシャフト4が複数の段部において先細状とされていることが分かる。
そして、上記明細書の段落【0025】に記載の「複数の段部において先細状」がどのような構造を意味するかは不明であるが、その字義からみて、複数の段部それぞれにおいて先細状となっている構造、あるいは、複数の段部が第1の動翼から第2の動翼に向けて順に小径となっている構造の2通りに解釈することができる。
してみれば、本願発明の「ロータシャフトを、第1の動翼から第2の動翼へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成」することの意義は、軸受部材や第2の動翼のロータシャフト4への取付を容易にするために、複数の段部それぞれにおいて先細状、または同一の径を有する構造とすること、または、複数の段部が第1の動翼から第2の動翼に向けて順に小径となっている構造とするものであるということができる。

他方、刊行物2記載技術のタービン軸2に着目すると、かかるタービン軸2は、タービンホイール3からコンプレッサホイール5へ向けて順に、大径部20、中間部11、中間部11より小径でありスペーサ6及びスラストカラーが挿入される部分、スペーサ6及びスラストカラーが挿入される部分と同径のコンプレッサホイール5が挿入される部分、スペーサ6及びスラストカラーが挿入される部分と同径のボルト8によって螺着される部分からなるものである。
また、刊行物2記載技術の軸端部21は、タービンホイール3の挿入孔32に挿入されるから、タービンホイール3と一体にみなすことができる。そうすると、刊行物2記載技術のタービン軸2は、複数の段部が、タービンホイール3からコンプレッサホイール5に向けて順に小径となっているといえるか、又は同一の径になっているといえる。

してみれば、刊行物1発明において、刊行物2記載技術を適用して、タービン18とインペラ19のいずれか一方をロータ軸2に対して取外し可能とする際に、ロータ軸2をタービン18とインペラ19のうち、固定されている方から取外し可能な方へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するように形成することは、取付け、取外しの容易性の観点から技術常識ともいえるところ、刊行物2記載技術は、タービン軸2を、タービンホイール3からコンプレッサホイール5へ向けて、先細状に形成するか、又は同一の径を有するように形成したものであり、取付け、取外しの容易性がターボ機械共通の課題であることに鑑みれば、刊行物1発明においても、かかる構造を採用することも適宜なし得ることというべきである。
そして、刊行物1発明に、刊行物2記載技術を適用して、タービン18とインペラ19のいずれか一方をロータ軸2に対して取外し可能とする際に、ロータ軸2をタービン18とインペラ19のうち、固定されている方から取外し可能な方へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するように形成すれば、取付に際して、まずスラスト受板20,22、次にラジアルベアリング16、もう一方のスラスト受板22,20、最後にインペラ19又はタービン18が、対応するスラスト板21,23にその背面部において容易に順番に取り付けることが可能となることも、当業者であれば、予測し得ることである。

なお、刊行物2記載技術のような、ロータシャフト、第1の動翼及び第2の動翼を備えたタービン機械において、第1の動翼をロータシャフトに固設する一方、第2の動翼を取外し可能にロータシャフトに結合し、ロータシャフトを、第1の動翼から第2の動翼へ向けて先細状に形成するか、同一の径を有するように形成したタービン機械は、例えば、特開平5-71358号公報(特に、段落【0012】及び図1)、特開昭61-142329号公報(特に、第3ページ右下欄第13ないし19行及び第4ページ左下欄第11ないし17行並びに第1図)、特開昭56-138423号公報(特に、第2ページ右上欄第5ないし17行及び第1図)に記載されるように周知でもある。

以上からすると、刊行物1発明において、刊行物2記載技術を適用して相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。

そして、本願発明は、全体としてみても、刊行物1発明及び刊行物2記載技術から予測される以上の格別の効果を奏するものではない。

以上に関して、請求人は、審判請求書において、「引用文献3(当審注:本審決の刊行物2)には、ターボチャージャのためのタービンロータが記載されている。ターボチャージャは比較的小さなターボ機械であり、構造的な観点においても、また技術的な観点においても、本願発明による大規模なターボ機械とは比較できない。ターボチャージャは、通常、本質的にはタービンインペラ、コンプレッサインペラ及びロータシャフトの3つの構成要素で構成されている。ここで、タービンインペラは、原動機の排ガスの流れによって駆動されるとともに、ロータシャフトを介してコンプレッサインペラへトルクを伝達する。したがって、ロータシャフト上に設けられる、例えば電動機のような他の駆動要素は不要である。さらに、小さな寸法のため、ロータインペラの非常に単純な固定並びにより単純な軸受及び取付を行うことが可能である。」と主張する。
しかしながら、本願発明において、ターボ機械の規模については何ら限定がなく、上記請求人の主張は本願発明の発明特定事項に基づくものでなく失当である。
また、請求人は、審判請求書において、「また、引用文献3には、『ロータシャフト(4)を、前記第1の動翼(1)から前記第2の動翼(2)へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成』する点が全く開示又は示唆されていない。すなわち、シャフト上に配置されロータシャフトと等しく形成された接合部30が例えば図1から分かる。この接合部の両側ではロータシャフトがより小さな直径を備えていることから、ロータシャフトが『第1の動翼(1)から前記第2の動翼(2)へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成』されていないことが明らかである。」と主張する。
請求人は、かかる主張において、刊行物2記載技術のタービンホイール3を本願発明の第2の動翼に相当するものとしていると解されるが、原査定において、「ここで、引用文献3には、一方の動翼(タービンホイール3)をロータシャフト(タービン軸2)に圧入または焼きばめする一方、他方の動翼(コンプレッサホイール5)は取外し可能な構成(ボルト8による螺着構造)が記載されている。」と認定しているように、刊行物2記載技術において、本願発明の第2の動翼に相当するものはコンプレッサホイール5であり、上述したとおり、刊行物2記載技術のタービン軸2は、タービンホイール3からコンプレッサホイール5へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成されているものであるから、刊行物2に、ロータシャフトが「第1の動翼(1)から前記第2の動翼(2)へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成」する点が全く開示又は示唆されていないとする請求人の主張は失当である。
さらに、請求人は、審判請求書において、「結局のところ、本願発明のこの特徴は、ターボチャージャにとって全く決定的ではない。その理由は、ターボ機械の異なる軸受要求にある。
上述のとおり、引用文献3に示されたターボ機械はターボチャージャであり、このターボチャージャは、本発明によるターボ機械よりも比較的小さな寸法であるとともに、より小さな軸方向の駆動力を備えるものである。これに対応して、ロータの軸方向の軸受のために小さな玉軸受が設定される必要がある。」と主張する。
しかしながら、本願発明のこの特徴(すなわち、ロータシャフトが「第1の動翼(1)から前記第2の動翼(2)へ向けて先細状に形成するか、又は同一の径を有するよう形成」されていること)と、ターボ機械の異なる軸受要求とにどのような関連があるのか不明であるところ、固定されている方から取外し可能な方へ向けて先細状に形成するか、または同一の径を有するように形成することは、取付け、取外しの容易性の観点から技術常識であることは、上述したとおりであり、かかる事項は、アキシャル軸受であるか、小さな玉軸受であるかによって変わるものではない。

5.まとめ
以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び刊行物2記載技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.結語
以上に述べたとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-27 
結審通知日 2017-08-02 
審決日 2017-08-18 
出願番号 特願2012-59889(P2012-59889)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米澤 篤  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 三島木 英宏
佐々木 芳枝
発明の名称 ターボ機械  
代理人 江崎 光史  
代理人 清田 栄章  
代理人 篠原 淳司  
代理人 鍛冶澤 實  

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