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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1335744 |
審判番号 | 不服2017-1883 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-08 |
確定日 | 2017-12-28 |
事件の表示 | 特願2012-136374号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月9日出願公開、特開2014-172号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年6月15日の特許出願であって、平成28年3月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月31日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月8日)、それに対し、平成29年2月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成29年2月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成29年2月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正により、平成28年5月25日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項2における 「【請求項2】 各々が識別可能な複数種類の識別情報が所定の順番で配置された表示帯を移動させることで変動表示可能な可変表示部を複数備え、 可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、 可変表示部の変動速度が規定速度となったときに前記導出操作手段の操作を有効化する導出操作有効化手段と、 前記導出操作手段が操作されたときに表示結果を導出する制御を行う導出制御手段と、 複数の可変表示部を構成する表示帯同士の相対的な位置関係が特定位置関係となるように複数の可変表示部の変動制御を行う特殊変動制御を行うことが可能な特殊変動制御手段と、 前記特殊変動制御が行われた後、一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する第1の変動速度変更手段と、 前記一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更させる制御が開始されてから特定時間が経過したことに基づいて他の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する第2の変動速度変更手段と、 前記特定時間を前記一の可変表示部が一周するまでの時間範囲内からランダムに決定する特定時間決定手段と、 を備える ことを特徴とするスロットマシン。」を、 審判請求時に提出された手続補正書(平成29年2月8日付け)における 「【請求項2】 A 各々が識別可能な複数種類の識別情報が所定の順番で配置された表示帯を移動させることで変動表示可能な可変表示部を複数備え、 B 可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 C 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、 D 可変表示部の変動速度が規定速度となったときに前記導出操作手段の操作を有効化する導出操作有効化手段と、 E 前記導出操作手段が操作されたときに表示結果を導出する制御を行う導出制御手段と、 F 複数の可変表示部を構成する表示帯同士の相対的な位置関係が特定位置関係となるように複数の可変表示部の変動制御を行う特殊変動制御を行うことが可能な特殊変動制御手段と、 G 前記特殊変動制御が行われた後、一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する第1の変動速度変更手段と、 H 前記一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更させる制御が開始されてから特定時間が経過したことに基づいて他の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する第2の変動速度変更手段と、 I 前記特定時間を前記一の可変表示部が一周するまでの時間範囲内からランダムに決定する特定時間決定手段と、 J 一定時間間隔毎に定期処理を実行する定期処理実行手段と、 を備え、 K 前記特定時間決定手段は、前記特定時間として前記定期処理の時間間隔と特定値から算出される時間が前記一の可変表示部が一周するまでの時間範囲内となるように特定値をランダムに決定し、 L 前記特定時間決定手段により決定された特定値は前記定期処理において更新され、 M 前記第2の変動速度変更手段は、前記定期処理により更新された特定値が所定値となったことに基づいて他の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する ことを特徴とするスロットマシン。」に補正するものである(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。また、A?Mは、当審にて分説して付した。)。 2 補正の目的 上記補正は、補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「特定時間決定手段」に関して、「一定時間間隔毎に定期処理を実行する定期処理実行手段と、を備え、前記特定時間決定手段は、前記特定時間として前記定期処理の時間間隔と特定値から算出される時間が前記一の可変表示部が一周するまでの時間範囲内となるように特定値をランダムに決定し、前記特定時間決定手段により決定された特定値は前記定期処理において更新され、前記第2の変動速度変更手段は、前記定期処理により更新された特定値が所定値となったことに基づいて他の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する」構成を加えるものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項2に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。 3 独立特許要件について そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?2に係る発明は、その請求項1?2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項2に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)刊行物1 原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-95966号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下同じ。)。 ・記載事項 ア 「【請求項1】 周囲に複数の図柄が付された複数個の回転リールと、 回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、 回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、 回転リールの図柄の停止表示の態様により構成される当選役を抽選により決定するための役抽選手段とを備え、 スタートスイッチの操作により回転リールの回転を開始させるとともに、役抽選手段により複数の役のいずれかに当選か又はハズレかの抽選を行い、その抽選の結果及びストップスイッチの操作に基づいて回転リールの回転を停止させ、当選した役に係る図柄の組み合わせが表示窓の所定位置に揃ったか否かの判定を行い、その判定の結果に応じて所定の利益を遊技者に付与する又は付与しないことで1回の遊技が終了する遊技機であって、 ・・・」 イ 「【技術分野】 【0001】 この発明は、回転リールによる回胴演出が可能な遊技機に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかし、上記した回転中に所定の図柄を揃えてしまう回胴演出は、当該所定の図柄を揃えることができるかもしれないという期待感の高揚はあるものの、所定図柄が並列した状態で回転するため、そのままでは、いわゆる目押しの補助となってしまうという問題点があった。所定図柄が並列した状態で回転することにより、通常の目押しに比べて、回転中の図柄の認識を著しく容易にしてしまい、そうでない場合と比較してあまりにも不公平になってしまうものである。そして、熟練した遊技者によっては、そのような目押し補助となるようなものは、面白みが半減してしまう者もいた。 そこで、本発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回胴演出後、目押しの補助とならないようにして、遊技の興趣を向上させようとするものである。」 ウ 「【0016】 また、前扉14の上部には、上パネル12aを備え、前扉14の下部には、下パネル12bを備え、前扉14の前面における、上パネル12aと下パネル12bとの間には、前方へ向けて突出する操作部12cを備えている。 前記上扉3には、遊技者側に向かって臨む略四角窓状の上パネル12aが形成されている。そして、この上パネル12aの略中央には、三個の回転リール40の円周に貼付したリールテープ42上の図柄61、いわゆる停止図柄61を見ることができる表示窓13が形成されている。この表示窓13は、3個全ての回転リール40の回転が停止した際には、縦3列横3行に配置した合計9個の図柄を遊技者に見せるように形成されている。 ・・・ 【0020】 そして、下扉4の下部には、所定の役の図柄が有効ライン上に表示された場合に、貯留払い出し手段65からメダルが払い出される払い出し口32が形成され、この払い出し口32の下方には、払い出し口32から払い出されたメダルを貯留するため、上方に向かって開口する皿状の払い出し皿33が形成されている。 本実施の形態に係る遊技機10は、原則として、ベットスイッチ16操作又はメダル投入後のスタートスイッチ30の押下により、回転リール40の回転を開始すると共に、役抽選を行い、各回転リール40のストップスイッチ50の押下タイミング及び役抽選の結果に基づいて、回転リール40の回転を役抽選の結果に適合するように停止させ、停止時の図柄の組み合わせによって、当選した役の所定図柄が有効ライン上に停止表示された場合に、所定枚数のメダルを払い出す等の所定の特典(利益)を遊技者に付与するスロットマシンである。 ・・・ 【0022】 回転リール40は、21個の図柄を周囲に均等に配列した筒状のものである。そして、各回転リール40は、合成樹脂からなる回転ドラムと、この回転ドラムの周囲に貼付されるとともに、複数個(21個)の図柄61が表示されているテープ状のリールテープ42とを備えている。 前記回転位置検知装置46は、回転リール40の回転ドラムから横方向に突出している突出片状のインデックス47と、回転リール40の周囲の支持部材49から突出するとともにインデックス47の通過を光センサーの遮断によって検知するためのインデックスセンサ48とを備えている。」 エ 「【0029】 そして、前記通常遊技制御手段70は、通常遊技を行わせるために通常遊技に関する制御を行うものであり、前記特別遊技制御手段80は、特別遊技を行わせるために特別遊技に関する制御を行う。 (通常遊技制御手段70) 通常遊技制御手段70は、通常遊技を制御するものである。 以下、遊技機10における通常遊技について説明する。1回の遊技につき、遊技媒体としてのメダルを3枚ベットすることが可能である。3枚のメダルをベットすると、5本全てのラインが有効になる。なお、3枚投入だけしか有効にならない3枚専用機とすることもできる。そして、有効になったラインを、以下、「有効ライン」と称する。また、メダルのベットには、メダル投入口18からメダルを投入することによるベットと、ベットスイッチ16を操作することによるクレジットされているメダルのベットとがある。また、再遊技のときには、前回の遊技でベットした枚数と同数のメダルが自動的にベットされる。また、3枚のメダルのベットを条件に、遊技を開始することが可能となり、スタートスイッチ30を操作すると、複数の役のいずれかに当選か又はハズレかの役抽選が行われるとともに、3個すべての回転リール40の回転が開始する。その後、3個すべての回転リール40の回転が所定の定常回転速度になって定常回転するようになると、3個すべてのストップスイッチ50が有効になり、ストップスイッチ50の操作が有効になる。そして、3個のストップスイッチ50のうちの1個を操作すると、当該ストップスイッチ50に対応した回転リール40の回転が停止する。そして、3個すべてのストップスイッチ50の操作を終えると、3個すべての回転リール40の回転が停止する。このとき、いずれかの有効ライン上に、役抽選で当選した役に対応する図柄の組み合わせが停止表示されると、当該役に応じた枚数のメダルを獲得できる。また、獲得したメダルは、クレジットされ、クレジット数が上限値に達したときには、貯留払い出し手段65が駆動して、上限値を超えた分が払い出し口32から払い出される。また、メダルの獲得に代えて、あるいはメダルの獲得とともに、遊技者に対して所定の利益が付与されることもある。」 オ 「【0041】 (回転中図柄位置抽選手段184) 回転中図柄位置抽選手段184は、一部又は全部の回転中の複数の回転リール40同士の図柄61の位置を抽選により決定するためのものである。具体的には、回転中図柄位置抽選手段184は、回転中の3個の回転リール40同士の図柄の相対的な位置関係を抽選により決定する。 具体的には、回転中図柄位置抽選手段184は、基準となる左リール43の特定図柄61aとしての図柄「赤7」に対して、中リール44及び右リール45の図柄「赤7」を何コマずらすかを抽選により決定するものである。左リール43の図柄「赤7」の横に中リール44又は右リール45の図柄「赤7」が位置しているときのずれは0コマとなり、その位置から中リール44又は右リール45の図柄「赤7」が回転下流側に1コマずれた場合のずれは1コマとなる。通常、全周で0コマから20コマのずれが発生し得ることになるが、回転中図柄位置抽選手段184は、この0コマから20コマの21個の数値のうち、0コマを除く、1コマから20コマまでの20個のうちから1つの数値を、中リール44について抽選で決定する。そして、更に、それらの20個のうちから中リール44について抽選で決定したものを除く、19個のうちから1つの数値を、右リール45について抽選で決定する。なお、0コマを除外したのは、目押し補助となるような左リール43と、中リール44及び右リール45との横並びの位置を除いたものであり、中リール44の抽選で決定した位置を除いたものから右リール45の抽選をするのは、中リール44と右リール45とが目押しの補助となるような横並びの位置を除いたものである。」 カ 「【0048】 また、本実施の形態では、回転リール40を所定の定常回転速度で回転させるための移行処理、いわゆる定常回転処理(速度調整処理)が終了してから、ストップスイッチ50の操作が有効となるように形成されている。 (ウェイト制御手段190) ウェイト制御手段190は、1回の遊技における遊技時間が、予め定められた所定時間(以下、「ウェイト時間」と称す。)以下とならないように制御するものである。本実施の形態では、ウェイト時間は、4.1秒に設定されている。また、本実施の形態では、ウェイト制御手段190は、計時手段150によりウェイト時間を計時している。具体的には、ウェイト制御手段190は、一の遊技において、回転制御手段250により回転リール40の回転が開始されたことを契機に、計時手段150に計時を開始させる。そして、次の遊技において、回転制御手段250により回転リール40の回転が開始されたことを契機に、計時手段150による計時をリセットして再度計時を開始させる。そして、それ以降の遊技においても同様に、毎遊技、回転制御手段250により回転リール40の回転が開始されたことを契機に、計時手段150による計時をリセットして再度計時を開始させる。」 キ 「【0051】 (停止制御手段130) 停止制御手段130は、役抽選手段110の抽選の結果と、各ストップスイッチ50が操作された際における対応する回転リール40の回転位置とに基づいて、各回転リール40の回転を停止させるものである。 具体的には、停止制御手段130は、各ストップスイッチ50が操作された際における対応する回転リール40の回転位置を、対応するインデックスが検知されてから対応するストップスイッチ50が操作されるまでの間における対応するステッピングモータのステップ数で特定しつつ、ストップスイッチ50が操作された時点で、有効ライン上に直ちに停止できる図柄(すなわち、回転リール40の回転位置)を基準として、この図柄から回転方向に予め定められた個数(最大スベリコマ数、例えば4コマ)移動した図柄までの範囲内で、対応する回転リール40を停止させるように形成されている。」 ク 「【0054】・・・ (停止図柄判定手段140) 停止図柄判定手段140は、すべての回転リール40の回転が停止した際に、いずれかの役に対応する図柄の組み合わせがいずれかの有効ライン上に停止表示されているか否かを判定し、この判定結果に基づいた制御を行うものである。すなわち、所定の役を構成する図柄の組み合わせが停止表示された場合に、この停止表示された役に応じた信号を出力するように形成されている。 【0055】 具体的には、停止図柄判定手段140は、各制御手段に信号を出力する。そして、例えば、小役に係る信号が入力された遊技制御手段27は、貯留払い出し手段65を作動させて所定枚数のメダルを払い出すように制御する。また、例えば、再遊技役に係る信号が入力された遊技制御手段27は、再度の遊技の制御を行う。また、例えば、ボーナス役に係る信号が入力された特別遊技制御手段80は、特別遊技を開始する。より具体的には、例えば、BB役に係る信号が入力された特別遊技制御手段80は、BBゲームを開始する。 (計時手段150) 計時手段150は、所定時間を計時するためのものであって、本実施の形態を実施するにあたって、種々の時間を時間するものであり、複数のタイマー機構を備えているものである。例えば、1回の遊技制限時間である4.1秒の計時も行うとともに、停止演出制御手段300による回胴演出の所定図柄が揃った状態(所定態様を維持した状態)で回転させる時間等の計時等も行うものである。また、その他の種々の時間を、計時或いはカウントするためのものである。その方法は、所定時間までのカウントアップによるものであるが、これに限定されず所定時間からのカウントダウンによるものでもよい。」 ケ 「【0058】 また、本実施の形態では、停止演出制御手段300は、回胴演出抽選手段120の抽選の結果に基づいて、回胴演出データ記憶手段210から入手した回胴演出データによって、回胴演出を実行するように形成されている。 停止演出制御手段300は、回転位置検出手段160により検出した特定図柄61aの位置を回転中の複数の回転リール40同士で比較したときに特定図柄61aが複数の回転リール40により構成される所定の配置態様のままで回転するように所定の回転リール40の回転態様を変更させ、その後、その所定の配置態様を維持した複数の回転リール40を同一回転速度で回転させ、その後、そのままの状態で停止させる回胴演出(停止演出)を行うものである。本実施の形態では、回転態様として、回転リール40の回転速度を変更させている。 ・・・ 【0062】 これにより、停止演出制御手段300は、時刻T3からT4までの途中で時間tだけ、3個の回転リール40の図柄「赤7」を横並びに並列させた状態で、回転を停止させる回胴演出としての停止演出を実施することができる。 停止演出制御手段300は、回転位置判断手段161からの回転リール40の回転位置データ及び回胴演出データ記憶手段210に記憶させている回転速度及び維持時間等のデータに基づき、内部の演算手段により時間等を算出しているものである。そして、この演算算出は、回転位置判断手段161からの最新の回転位置データの更新により、その都度、演算結果の修正を行いながら実行しているものである。すなわち、停止演出制御手段300は、回転リール40を制御するのに回転位置及び回転速度から算出される所定の時間等の時間経過情報と、回転位置判断手段161から入ってくる回転リール40の回転位置情報との両方で、回転リール40を制御しているものである。なお、停止演出制御手段300は、これに限定されることなく、所定の時間経過情報を主として回転リール40を制御してもよく、また、回転位置情報を主として回転リール40を制御してもよい。 【0063】 例えば、現在の図柄位置情報だけを判定して、その判定結果が所定の図柄位置になるまで、所定の回転速度を継続するように制御し、所定の図柄位置となったときに回転速度を変更等するように形成してもよい。 また、例えば、停止演出制御手段300は、回胴演出開始時に、各回転リール40について、所定の回転速度で所定の時間、回転させることをセットする。そして、計時手段150のタイマー手段が、タイムアップしたら、速度調整処理等を行うように、主に時間経過を判定するだけで制御するように形成してもよい。 また、停止演出制御手段300は、上述したように、採取した各種データに基づいて内部の演算手段により回転リール40の回転を制御しているが、特にこのようなものに限定されるものではなく、最初の停止位置データから、予め全ての位置データ及びその位置データから算出される回転速度及びその維持時間等を記録したデータテーブルを、回胴演出データ記憶手段210に設けておき、当初の停止位置データ及び予め記憶したデータに基づいて、回転リール40を制御するようにしてもよい。」 コ 「【0065】 ・・・ (再回転制御手段310) 再回転制御手段310は、停止演出制御手段300による停止演出(回胴演出)後、ストップスイッチ50による停止操作が可能となる前に、回転リール40を再回転させると共に、この再回転中複数の回転リール40の特定図柄61aの位置を所定の配置態様から崩れたものが表示窓13に表示可能な状態で回転するように各回転リール40の回転態様を異ならせる。そして、その後、再回転制御手段310は、その所定の配置態様を崩したものが表示窓13に表示可能な状態で複数の回転リール40を同一回転速度で回転させるものである。」 サ 「【0074】 ・・・なお、再回転制御手段310は、停止演出制御手段300と同様に、これに限定されることなく、所定の時間経過情報を主として回転リール40を制御してもよく、また、回転位置情報を主として回転リール40を制御してもよい。 【0075】 なお、再回転制御手段310は、上述したように、採取した各種データに基づいて内部の演算手段により回転リール40の回転を制御しているが、特にこのようなものに限定されるものではなく、予め全ての位置データ及びその位置データから算出される回転速度及びその維持時間等を記録したデータテーブルを、回胴演出データ記憶手段210に設けておき、上当初の停止位置データ及び予め記憶したデータに基づいて、回転リール40を制御するようにしてもよい。・・・」 シ 「【0085】 ステップ151において、回胴演出に当選しているか否かが判定される。そして、回胴演出に当選していると判定された場合、次のステップ152に進む。 ステップ152において、回転中図柄位置抽選手段184により、基準となる左リール43の図柄「赤7」に対して、中リール44の図柄「赤7」が何コマ(nコマ)離れているかのコマ数nを1?20の整数から抽選により決定する処理が行われる。そして、次のステップ153に進む。 ステップ153において、回転中図柄位置抽選手段184により、基準となる左リール43の図柄「赤7」に対して、右リール45の図柄「赤7」が何コマ(mコマ)離れているかのコマ数mを1?20の整数のうち、ステップ152で決定した数値を除外したものから抽選により決定する処理が行われる。そして、次のステップ154に進む。なお、n=mとなる数値を予め除外して抽選をしているが、抽選方法は同様の効果を有するものであればこれに限定されることなく、例えばn=mとなった場合には、n=mとならないものになるまで抽選処理を繰り返すようなものでもよい。」 ス 「【0098】 (回胴演出における回転態様(3)) ・・・ 【0099】 このように、回転リール40の回転開始タイミングをずらすことにより、回転リール40の回転加速度及び回転速度は、3個の回転リール40で全て同一に設定することができる。これにより、回転リール40の回転制御プログラミングの製作において、変動させるパラメータを時間だけに設定して、回転加速度及び回転速度は、全て共通にすることができ、制御プログラミングを容易なものにすることができる。 なお、かかる場合には、前回の遊技において、回転リール40の停止位置を記憶し、その記憶を今回の遊技まで維持する必要があるため、その記憶手段を有しているものである。 ・・・」 セ 「【0106】 (再配置における回転態様(4)) また、図22に示すように、時間Dの時刻R4まで、3個の回転リール40は、図柄「赤7」が揃った状態で、同一回転速度V2で回転している。そして、時刻R4からR5にかけて、3個の回転リール40は、同一回転加速度で回転速度を減速し、時刻R5において、3個の回転リール40は同時に停止する。その状態で、図柄「赤7」は、揃った状態で停止しているものである。その際、3個の回転リール40の図柄「赤7」は、表示窓13の中段ラインL2で横一直線に並んで停止している。そして、時間Fだけ、その停止状態が続き、時刻R6において、基準となる実線で示される左リール43が回転を開始し、回転速度V1まで回転速度を増加させる。一方、一点鎖線で示す中リール44も左リール43に時間Gだけ遅れて時刻R7で左リール43と同一回転加速度で回転を開始し、回転速度V1まで速度を増加させる。そして、時刻R9において、左リール43と中リール44との図柄「赤7」が、所定コマ数(nコマ)離れた状態の配置態様で同一回転速度で回転を続ける。そして、時刻R8において、二点鎖線で示される右リール45も回転を開始、時刻R10において、左リール43と右リール45との図柄「赤7」が、所定コマ数(mコマ)離れた状態の配置態様で同一回転速度V1(定常回転速度)で回転を続ける。」 ソ 「【0122】 ここで、再配置制御手段による所定の配置態様を崩す手法、すなわち、図柄「赤7」が揃った状態から、その揃った状態を崩す手法としては、図24のフローに示すように、3個の回転リール40の回転速度を別々の回転速度で行うことができる。そして、その後は、上述した第1の実施の形態で説明した所定コマ数だけ離す離間再配置により所定の配置態様の再配置を行うことができる。 具体的な遊技の流れは、第1の実施の形態のステップ120の回胴演出処理及び再配置処理が、図13のフローの代わりに図24に示すようなフローとなるものである。 また、上述した第1?第4の実施の形態で、再回転制御手段310又は再配置制御手段は、図柄「赤7」の選択再配置、ランダム再配置、又は離間再配置を、1つの回転リールだけで実施するようにしてもよい。具体的には、残りの2つの回転リール40は、揃った状態のままであるが、1つの回転リール40だけが、その揃った所定の配置態様から崩れた状態になっているものである。」 ・認定事項 タ 認定1 【0016】の「・・・三個の回転リール40の円周に貼付したリールテープ42上の図柄61、・・・回転リール40の回転・・・」との記載、【0022】の「回転リール40は、21個の図柄を周囲に均等に配列した筒状のものである。そして、各回転リール40は、合成樹脂からなる回転ドラムと、この回転ドラムの周囲に貼付されるとともに、複数個(21個)の図柄61が表示されているテープ状のリールテープ42とを備えている。」との記載から、刊行物1には、複数個(21個)の図柄61が均等に配列されているテープ状のリールテープ42が周囲に貼付され、回転可能な回転リール40を三個備えることが示されているものと認められる。 チ 認定2 【0065】の「再回転制御手段310は、停止演出(回胴演出)後、・・・回転リール40を再回転させる・・・」との記載から、刊行物1には、再回転制御手段310は、停止演出(回胴演出)後、回転リール40を再回転させる制御を行うことが記載されている。 そして、【0074】の「・・・再回転制御手段310は、停止演出制御手段300と同様に、・・・所定の時間経過情報を主として回転リール40を制御してもよく、・・・」との記載、及び、【0063】の「停止演出制御手段300は、回胴演出開始時に、各回転リール40について、・・・計時手段150のタイマー手段が、タイムアップしたら、速度調整処理等を行うように、主に時間経過を判定するだけで制御するように形成してもよい。」との記載から、刊行物1には、再回転制御手段310は、各回転リール40について、所定の回転速度で所定の時間、回転させることをセットし、計時手段150のタイマー手段が、タイムアップしたら、速度調整処理等を行う、主に時間経過を判定するだけで制御することが記載されている。 また、【0099】には、回胴演出における回転態様(3)に関してではあるが、「回転リール40の回転制御プログラミングの製作において、変動させるパラメータを時間だけに設定して、回転加速度及び回転速度は、全て共通にすることができ」ることが記載されている。 また、【0106】には、「・・・図22に示すように、・・・時間Fだけ、その停止状態が続き、時刻R6において、・・・左リール43が回転を開始し、回転速度V1まで回転速度を増加させる。・・・中リール44も左リール43に時間Gだけ遅れて時刻R7で左リール43と同一回転加速度で回転を開始し、回転速度V1まで速度を増加させる。」ことが記載されている。 さらに、【図22】には、左リール43が回転を開始した後、時間G経過後、中リール44が回転を開始することが図示されている。 これらの記載事項及び認定事項からみて、刊行物1には、 「再回転制御手段310は、回転加速度及び回転速度を全て共通にし、時間をパラメータにしてリールの回転を制御するものであって、 停止演出(回胴演出)後、計時手段150のタイマー手段がタイムアップすると(時間F経過後)、左リール43の回転を開始し、回転速度V1まで回転速度を増加させ、 左リール43が回転を開始した後、計時手段150のタイマー手段がタイムアップすると(時間G経過後)、左リール43と同一回転加速度で中リール4の回転を開始し、回転速度V1まで速度を増加させる 速度調整処理を行う」ことが示されているものと認められる。 ツ 認定3 【0085】の「・・・全周で0コマから20コマのずれが発生し得ることになるが、回転中図柄位置抽選手段184により、基準となる左リール43の図柄「赤7」に対して、中リール44の図柄「赤7」が何コマ(nコマ)離れているかのコマ数nを1?20の整数から抽選により決定する処理が行われる。・・・」との記載、及び、【0041】の「・・・回転中図柄位置抽選手段184は、この0コマから20コマの21個の数値のうち、0コマを除く、1コマから20コマまでの20個のうちから1つの数値を、中リール44について抽選で決定する。・・・」との記載から、刊行物1には、回転中図柄位置抽選手段184が、基準となる左リール43の図柄「赤7」に対して、中リール44の図柄「赤7」が何コマ(nコマ)離れているかのコマ数nを、0コマから20コマの21個の数値のうち、0コマを除く、1コマから20コマまでの20個のうちから1つ抽選により決定する処理が行われることが記載されている。 そして、【図22】には、例えば、揃っていた2個のリールの特定図柄が、速度V1を時間Gだけ維持することにより所定コマ数だけ離れること、すなわち、回転中図柄位置抽選手段184により抽選で決定されたコマ数n分離間することによる回転リール40周面における距離が、時間Gに回転速度V1を乗算することにより求められることが図示されている。これは、時間Gが、「コマ数n分だけ離間することによる回転リール40周面における距離」を「回転速度V1」で除算して求められることを意味するものである。 また、【0075】の「・・・予め全ての位置データ及びその位置データから算出される回転速度及びその維持時間等を記録したデータテーブルを、回胴演出データ記憶手段210に設けておき、上当初の停止位置データ及び予め記憶したデータに基づいて、回転リール40を制御するようにしてもよい。・・・」との記載から、刊行物1には、「維持時間」を予め求めておくことが示されているといえる。 したがって、刊行物1には、再回転制御手段310は、回転中図柄位置抽選手段184により抽選で決定された、全周に相当する0コマから20コマの21個の数値のうち、0コマを除く、1コマから20コマまでの20個のうちから1つの数値nを用いて、時間Gを予め求めておくことが示されているといえる。 テ 上記ア?ソの記載事項、上記タ?ツの認定事項から、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる(a?mは、本件補正発明のA?Mに対応させて付与した。)。 「a 複数個(21個)の図柄61が均等に配列されているテープ状のリールテープ42が周囲に貼付され、回転可能な回転リール40を三個備え(認定1)、 b 各回転リール40のストップスイッチ50の押下タイミング及び役抽選の結果に基づいて図柄を停止表示し、停止時の図柄の組み合わせによって、所定枚数のメダルを払い出す等の所定の特典(利益)を遊技者に付与するスロットマシンにおいて(【0020】)、 c 回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチ(【請求項1】)と、 d 回転リール40の回転が所定の定常回転速度になって定常回転するようになると、ストップスイッチ50の操作を有効とする通常遊技制御手段70(【0029】、【0048】)と、 e 各回転リール40のストップスイッチ50の押下タイミング及び役抽選の結果に基づいて、回転リール40の回転を役抽選の結果に適合するように所定の図柄の組み合わせで停止させる停止演出制御手段300 (【0020】、【0051】)とを備え、 f 停止演出制御手段300 は、所定の配置態様を維持した複数の回転リール40を同一回転速度で回転させ、その後、そのままの状態で停止させる回胴演出を行い(【0058】)、 g、h、(m) 回転加速度及び回転速度を全て共通にし、時間をパラメータにしてリールの回転を制御するものであって、 停止演出(回胴演出)後、計時手段150のタイマー手段がタイムアップすると(時間F経過後)、左リール43の回転を開始し、回転速度V1まで回転速度を増加させ、 左リール43が回転を開始した後、計時手段150のタイマー手段がタイムアップすると(時間G経過後)、左リール43と同一回転加速度で中リール44の回転を開始し、回転速度V1まで速度を増加させる 速度調整処理を行う再回転制御手段310(認定2)を備え、 i、(k) 再回転制御手段310は、回転中図柄位置抽選手段184により抽選で決定された、全周に相当する0コマから20コマの21個の数値のうち、0コマを除く、1コマから20コマまでの20個のうちから1つの数値nを用いて、時間Gを予め求め(認定3)、 j 所定時間を計時するためのタイマー機構を有する計時手段150(【0055】)を備えた スロットマシン。」 (2)当審にて新たに提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-72332号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ・記載事項 ア 「【0001】 本発明は、遊技者が遊技媒体を投入し、リールを回転させた後に停止させ、そのときに表示されているリールに描かれた図柄の組合せによって遊技結果が定まるスロットマシンに関する。」 イ 「【0039】 ≪主制御回路の説明≫ 中央処理装置(以下、CPUと称する)106は、入出力バス104を介して入力される各種情報に応じて、ROM108に記憶されている各種制御プログラムを実行することで、スロットマシン10における遊技の制御を行う。CPU106は、各種制御プログラムの処理を、クロック発生回路112から供給されるクロック信号CLKおよび割込信号IRに従って行っている。ROM108は、スロットマシンの全体の流れを制御する制御プログラムや、制御プログラムを実行するための各種データを記憶する。ROM108に記憶されているデータとしては、前述した図柄識別情報の他、例えば、後述する各種の役に対応する図柄組合せ(図8参照)、各種役抽選テーブル(図9?図11参照)、各リールの加速パターン(図12参照)、ストップスイッチ37L,37C,37Rの操作順序に応じたリール停止制御情報(図13参照)などがある。また、ROM108に記憶される制御プログラムとしては、図14に示すメインルーチン、図15?図19に示す各種サブルーチンの処理を実行するためのプログラムなどがある。 ・・・ 【0046】 このように、モータ駆動回路116L、116C及び116Rが、CPU106から駆動パルスが出力されるごとに、電流を供給する相を切り替えることで、対応するステッピングモータを回転させている。このため、CPU106から出力される駆動パルスの周期が短くなれば回転速度が増加し、周期が長くなれば回転速度が低下することになる。ここで、クロック発生回路112から出力される割込信号IRは、1.49ミリ秒(以下、msecという)周期で定期的に出力されるものとする。よって、割込信号IRが出力されるごとに各ステッピングモータに供給する電流の相を切り替えたときに、各リールの回転速度が最大となり、具体的には、回転速度を1分間当たりの回転数(単位をrpmとする)で表した場合、1/(504[ステップ]×1.49[msec])×60≒79.90[rpm]となる。」 ウ 「【0071】 図12に示す加速パターンでは、各駆動パルスの出力タイミングを指定する情報が、クロック発生回路112から割込信号IRが出力された数によって表されている。例えば、(a)の通常加速パターンにおいて、各リールの回転を開始するときに、最初の駆動パルスは、回転開始から割込信号IRが90回出力されたとき(時間にして1.49[msec]×90=134.10[msec]が経過した時)に出力される。また、2発目の駆動パルスは、最初の駆動パルスが出力されてから割込信号IRが15回出力されたとき(時間にして1.49[msec]×15=22.35[msec]が経過した時)に出力される。また、3発目から8発目までの駆動パルスは、各々、直前の駆動パルスが出力されてから割込信号IRが7回出力されたとき(時間にして1.49[msec]×7=10.43[msec]が経過した時)に出力される。」 エ 「【0110】 RT移行フラグがオンになっていた(YES)場合は、RT遊技へ移行したことを示す演出を実行すべく、CPU106は、図12(b)に示したRT移行時加速パターンに従って、モータ駆動回路116L、116C、116Rへ駆動パルスを出力する(ステップS96)。この駆動パルスの出力に関する処理は、図3に示したクロック発生回路112から割込信号IRが出力されるごとに実行する割込処理(図示省略)によって行われる。」 オ 「【0149】 本実施形態におけるリール演出回転処理に関する処理では、モータ駆動回路116R,116C,116Lに対して駆動パルスを出力する割込処理で使用する各種変数の初期値をセットするとともに、当該割込処理の開始を指示している。以下、図23および図24を参照して、RT遊技へ移行後の最初の遊技において実行される、第2実施形態でのリール40L,40C,40Rを用いた演出を行うための割込処理(以下、リール加速処理という)について説明する。 【0150】 なお、この加速処理は、図3に示したクロック発生回路112から割込信号IRが出力されるごとに、モータ駆動回路116R,116C,116Lの各々について個別に実行されるものである。この加速処理を行うことによって、モータ駆動回路116R,116C,116Lに対し、図12(b)に示したRT移行時加速パターンに従った駆動パルスが出力される。また、この加速処理で参照する変数には、リール駆動状態、遅延カウンタ、割込カウンタ、ステップカウンタ、および、再加速カウンタなどがあり、これらの変数は、RAM110に記憶されている。ここで、リール駆動状態は、RT遊技に移行したときの各リールの加速段階において、「加速中」、「仮定速中」、「再加速中」のいずれの状態にあるのかを示す情報を記憶するための変数である。また、「加速中」は、リールが停止している状態から仮定速(回転速度が約39.95[rpm])に達する間の状態、「仮定速中」は、仮定速で回転している状態、および、「再加速中」は、仮定速から定常回転速度(約79.90[rpm])に達する間の状態を示している。」 カ 「【0160】 ここで、再加速カウンタの値は、割込信号IRが出力されるごと(すなわち、リール加速処理が行われるごと)に、初期値から「1」ずつ減算され、「0」になったときに、仮定速中の回転速度から定常回転速度へ再加速を行う。また、再加速カウンタの初期値は、各リール対応するモータ駆動回路ごとに異なっており、リール駆動回路116Lについては「72」、リール駆動回路116Cについては「24」、リール駆動回路116Rについては「0」になっている。 ・・・ 【0162】 ステップS350で、再加速カウンタに各々初期値がセットされると、CPU106は、ステップS346で割込カウンタの値に「2」をセットしてリール加速処理を終了し、次の割り込みから再加速中の処理を行う。 ・・・ 【0166】 以上に説明したリール加速処理を、RT遊技へ移行した最初の遊技におけるリール40L,40C,40Rの回転開始時に行うことにより、図21に示した図柄配列において、ボーナス図柄が横一列に並んだ状態で各リールが仮定速(39.95[rpm])で回転し、その状態で所定時間が経過すると、定常回転速度に再加速することになる。ここで、仮定速中に横一列に並ぶボーナス図柄は、小役4に対応する図柄組合せが、有効ラインL1に沿って停止表示されたときは「青7」図柄、有効ラインL5に沿って停止表示されたときは「BAR」図柄、有効ラインL2、L3、または、L4のいずれかに沿って停止表示されたときは「赤7」図柄となる。また、再加速時には各リール間の相対的な図柄位置が、前回の遊技で小役4が入賞したときの位置関係に戻される。」 キ 「【0190】 また、第2実施形態において、図24のステップS344で、「仮定速中」に移行してから、所定時間が経過した(YES)と判断されると、CPU106は、同図のステップS350で、各リールについて再加速を開始するタイミングを調整するため、各リール駆動回路116に対応する再加速カウンタの値に、各々、予め適宜定めておいた初期値をセットしていた。ここで、各再加速カウンタの値にセットする初期値を、予め定めた値ではなく、例えば、各々乱数に基づく抽選を行って、当該抽選によって決定された任意の値をセットするようにしてもよい。このよう構成した場合、すべてのリールが定常回転速度に達したときの、各リール間の相対位置がランダムな位置関係となるので、遊技者が特定の図柄を狙ってストップスイッチを操作するという技術介入性に影響を与えにくくすることができる。」 ・認定事項 ク 認定1 【0039】の「CPU106は、各種制御プログラムの処理を、クロック発生回路112から供給されるクロック信号CLKおよび割込信号IRに従って行っている。」との記載、【0110】の「CPU106は、・・・モータ駆動回路116L、116C、116Rへ駆動パルスを出力する・・・。この駆動パルスの出力に関する処理は、・・・クロック発生回路112から割込信号IRが出力されるごとに実行する割込処理・・・によって行われる。」との記載から、刊行物2には、CPU106が、モータ駆動回路への駆動パルスの出力処理を割込処理により行うことが記載されていると認められる。 ケ 認定2 上記認定事項1に加え、刊行物2には、次の事項が記載されている。 【0046】の「割込信号IRは、1.49ミリ秒(以下、msecという)周期で定期的に出力される」との記載、【0071】の「(a)の通常加速パターンにおいて、各リールの回転を開始するときに、最初の駆動パルスは、回転開始から割込信号IRが90回出力されたとき(時間にして1.49[msec]×90=134.10[msec]が経過した時)に出力される。また、2発目の駆動パルスは、最初の駆動パルスが出力されてから割込信号IRが15回出力されたとき(時間にして1.49[msec]×15=22.35[msec]が経過した時)に出力される。また、3発目から8発目までの駆動パルスは、各々、直前の駆動パルスが出力されてから割込信号IRが7回出力されたとき(時間にして1.49[msec]×7=10.43[msec]が経過した時)に出力される。」との記載から、刊行物1には、割込信号IRの出力回数に、割込信号IRの出力される周期である1.49ミリ秒の周期と乗算することにより、時間を算出することが記載されているといえる。 そして、上記【0160】の「再加速カウンタの値は、割込信号IRが出力されるごと(すなわち、リール加速処理が行われるごと)に、初期値から「1」ずつ減算され、「0」になったときに、仮定速中の回転速度から定常回転速度へ再加速を行う。」との記載によると、「再加速カウンタの値」は、クロック発生回路112から供給される「割込信号IR」が出力されるごとに、「1」ずつ減算されて更新されるものであるといえ、時間に関連する値であるといえる。 また、【0162】に「ステップS350で、再加速カウンタに各々初期値がセットされる」との記載があり、【0190】に「各リールについて再加速を開始するタイミングを調整するため、・・・各再加速カウンタの値にセットする初期値を、・・・各々乱数に基づく抽選を行って、当該抽選によって決定された任意の値をセットする」との記載がある。 したがって、刊行物2には、各リールについて再加速を開始するタイミングを調整するために、各々乱数に基づく抽選によって決定され、1.49ミリ秒の周期と乗算することにより時間を算出することができる、任意の値を各再加速カウンタにセットするCPU106について記載されていると認められる。 コ 認定3 上記認定事項1、2に加え、刊行物2には、次の事項が記載されている。 【0046】には、「割込信号IRは、1.49ミリ秒(以下、msecという)周期で定期的に出力される」との記載、【0149】の「割込処理(以下、リール加速処理という)」ことが記載され、【0150】には、「この加速処理は、・・・クロック発生回路112から割込信号IRが出力されるごとに、モータ駆動回路116R,116C,116Lの各々について個別に実行される」ことが記載されている。 したがって、刊行物2には、CPU106は、割込処理において、クロック発生回路112から、1.49ミリ秒周期で定期的に出力される割込信号IRが出力されるごとに、モータ駆動回路の各々について個別に実行することについて記載されていると認められる。 サ 上記ア?キの記載事項、上記けク?コの認定事項から、刊行物2には、次の発明(以下「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。 「RT遊技へ移行した最初の遊技におけるリール40L,40C,40Rの回転開始時に行うことにより、ボーナス図柄が横一列に並んだ状態で各リールが仮定速で回転し、その状態で所定時間が経過すると、定常回転速度に再加速するスロットマシンにおいて(【0166】、【0001】)、 モータ駆動回路への駆動パルスの出力処理を割込処理により行うCPU106(認定1)を備え、 g CPU106は、 各リールについて再加速を開始するタイミングを調整するために、各々乱数に基づく抽選によって決定され、1.49ミリ秒の周期と乗算することにより時間を算出することができる、任意の値を各再加速カウンタにセットし(認定2)、 j 割込処理において、クロック発生回路112から、1.49ミリ秒周期で定期的に出力される割込信号IRが出力されるごとに、モータ駆動回路の各々について個別に実行し(認定3)、 k 各再加速カウンタの値にセットされる初期値には、各々乱数に基づく抽選によって決定された任意の値をセットし(【0190】、【図24】)、 l、m 再加速カウンタの値は、割込信号IRが出力されるごとに、初期値から「1」ずつ減算され、「0」になったときに、仮定速中の回転速度から定常回転速度へ再加速を行うことにより、各リールについて再加速を開始するタイミングを調整する(【0149】、【0160】、【0190】)、 スロットマシン。」 (3)対比 本件補正発明と刊行物1発明とを、分説に従い対比する。 (a)刊行物1発明における 「複数個(21個)の図柄61」、 「均等に配列されている」こと、 「テープ状のリールテープ42」、 「回転可能な」こと、 「回転リール40」は、それぞれ、 本件補正発明における 「各々が識別可能な複数種類の識別情報」、 「所定の順番で配置された」こと、 「表示帯」、 「移動させることで変動表示可能な」こと、 「可変表示部」に相当する。 したがって、刊行物1発明における構成aの「…回転リール40を三個備え」ることは、本件補正発明における構成Aの「…可変表示部を複数備え」ることに相当する。 (b)刊行物1発明における 「各回転リール40のストップスイッチ50の押下タイミング及び役抽選の結果に基づいて図柄を停止表示」すること、 「停止時の図柄の組み合わせによ」ること、 「所定枚数のメダルを払い出す等の所定の特典(利益)を遊技者に付与する」ことは、それぞれ、 本件補正発明における 「可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出」すること、 「複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じ」ること、 「入賞が発生可能」なことに相当する。 したがって、刊行物1発明における構成bは、本件補正発明における構成Bに相当する。 (c)刊行物1発明において、「回転リールの回転を停止させる」と、図柄が停止表示されることから、刊行物発明における構成cの「…ストップスイッチ」は、本件補正発明における構成Cの「…導出操作手段」に相当する。 (d)刊行物1発明における 「回転リール40の回転が所定の定常回転速度になって定常回転するようになる」こと、 「ストップスイッチ50の操作を有効とする」ことは、それぞれ、 本件補正発明における 「変動速度が規定速度となったとき」、 「導出操作手段の操作を有効化する」ことに相当する。 したがって、刊行物1発明における構成dの「…通常遊技制御手段70」は、本件補正発明における構成Dの「…導出操作有効化手段」に相当する。 (e)刊行物1発明における 「各回転リール40のストップスイッチ50の押下タイミング」、 「回転リール40の回転を役抽選の結果に適合するように所定の図柄の組み合わせで停止させ」ることは、それぞれ、 本件補正発明における 「導出操作手段が操作されたとき」、 「表示結果を導出する制御を行う」ことに相当する。 したがって、刊行物1発明における構成eの「…停止演出制御手段300 」は、本件補正発明における構成Eの「…導出操作有効化手段」に相当する構成を備えるものといえる。 (f)刊行物1発明における 「所定の配置態様を維持した複数の回転リール40を同一回転速度で回転させ、その後、そのままの状態で停止させる」こと、 「回胴演出」は、それぞれ、 本件補正発明における 「複数の可変表示部を構成する表示帯同士の相対的な位置関係が特定位置関係となるように複数の可変表示部の変動制御を行う」こと、 「特殊変動制御」に相当する。 したがって、刊行物1発明における構成fの「…停止演出制御手段300」は、本件補正発明における構成Fの「…特殊変動制御手段」に相当する。 (g)刊行物1発明における 「停止演出(回胴演出)後、計時手段150のタイマー手段がタイムアップした(時間F経過後)」とき、 「左リール43」、 「回転速度V1」、 「回転を開始し、回転速度V1まで回転速度を増加させ」ることは、それぞれ、 本件補正発明における 「特殊変動制御が行われた後」、 「一の可変表示部」、 「規定速度」、 「変動速度を規定速度に向けて変更する」ことに相当する。 したがって、刊行物1発明における構成g、hの「停止演出(回胴演出)後、計時手段150のタイマー手段がタイムアップすると(時間F経過後)、左リール43の回転を開始し、回転速度V1まで回転速度を増加させ」る「速度調整処理を行う再回転制御手段310」は、本件補正発明における構成Gの「前記特殊変動制御が行われた後、一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する第1の変動速度変更手段」に相当する。 (h)刊行物1発明における 「時間G」、 「計時手段150のタイマー手段がタイムアップすると(時間G経過後)」、 「左リール43と同一回転加速度で中リール44の回転を開始し、回転速度V1まで速度を増加させ」ることは、それぞれ、 本件補正発明における 「特定時間」、 「一の可変表示部の変動速度を規定速度に向けて変更させる制御が開始されてから特定時間が経過した」とき、 「他の可変表示部の変動速度を規定速度に向けて変更する」ことに相当する。 したがって、刊行物1発明における構成g、hの「左リール43が回転を開始した後、計時手段150のタイマー手段がタイムアップした(時間G経過後)ら、左リール43と同一回転加速度で中リール44の回転を開始し、回転速度V1まで速度を増加させる」「速度調整処理を行う再回転制御手段310」は、本件補正発明における構成Hの「前記一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更させる制御が開始されてから特定時間が経過したことに基づいて他の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する第2の変動速度変更手段」に相当する。 (i)まず、上記(h)より、刊行物1発明における「時間G」は、本件補正発明における「特定時間」に相当する。 ところで、特定時間の決定に関して、本願明細書の発明の詳細な説明には、次の記載等がある。 まず、【0109】には、「・・・本実施例では、リールモータ32L、32C、32Rに、336ステップ(0?335)の周期で1周するステッピングモータを用いている。すなわちリールモータ32L、32C、32Rを336ステップ駆動させることでリール2L、2C、2Rが1周することとなる。そして、リール1周に対して16ステップ(1図柄が移動するステップ数)毎に分割した21の領域(コマ)が定められており、これらの領域には、リール基準位置から0?20の領域番号が割り当てられている。一方、1リールに配列された図柄数も21であり、各リールの図柄に対して、リール基準位置から0?20の図柄番号が割り当てられているので、0番図柄から20番図柄に対して、それぞれ0?20の領域番号が順に割り当てられていることとなる。・・・」ことが記載され、 【0441】には、「詳しくは、図32に示すように、左リール用タイマ値(Lt)は、左遅延用乱数値(Lr)を21で除して余った値であり、中リール用タイマ値(Ct)は、中遅延用乱数値(Cr)を21で除して余った値であり、右リール用タイマ値(Rt)は、右遅延用乱数値(Rr)を21で除して余った値であり、いずれも0?20の値となる。」ことが記載され、また、 【0451】には、「前述のように遅延用タイマカウンタ値は、約0.56ms毎に実行されるタイマ割込処理(メイン)が実行される毎に1ずつ減算されることとなり、((中リール用タイマ値×60)/0.56)msの時間が計時されることとなり、中リール用タイマ値は0?20の範囲の値であり、リールが1図柄移動するのに本実施例では、約33.6ms要することとなるので、中リールの加速完了後、0?リール1周するまでのタイミングで右リールの回転が開始することとなる。」ことが記載されている。 これらの記載から、本願明細書には、決定されるタイマ値を、0?20の値の範囲、すなわち、「リールが1周するまで」の値の範囲から決定することが記載されているといえる。 また、【0021】には、「リール2L、2C、2Rの外周部には、図3に示すように、それぞれ・・・互いに識別可能な複数種類の図柄が所定の順序で、それぞれ21個ずつ描かれている。リール2L、2C、2Rの外周部に描かれた図柄は、前面扉1bの略中央に設けられた透視窓3において各々上中下三段に表示される。」こと、すなわち、各リールに21個の図柄が描かれていることが記載されている。 これらの記載からみて、本願明細書には、特定時間を「リールが1周するまで」の値の範囲、すなわち、0?各リールに描かれた図柄のコマ数である20の値の範囲内から決定することが記載されているといえる。 したがって、本件補正発明における「一の可変表示部が一周するまでの時間範囲内」とは、「0?各リールに描かれた図柄の個数である20の値の範囲」内を意味するものと解される。 一方、刊行物1発明における「時間G」は、「全周に相当する1コマから20コマまでの20個のうちから1つの数値nを用い」て決定されるものである。 ゆえに、刊行物1発明における「時間G」の決定される範囲である「1コマから20コマ」の時間範囲と、本件補正発明における「一の可変表示部が一周するまでの時間範囲」とは、「一の可変表示部が略一周するまでの時間範囲」である点で共通する。 また、刊行物1発明における「抽選で決定」することは、本件補正発明における「ランダムに決定」することに相当する。 よって、刊行物1発明における構成iの「…再回転制御手段310」と、本件補正発明における構成Iの「…特定時間決定手段」とは、「特定時間を一の可変表示部が略一周するまでの時間範囲内からランダムに決定する特定時間決定手段」である点で共通する。 (j)刊行物1発明における「所定時間を計時するためのタイマー機構」と、本件補正発明における「一定時間間隔毎に定期処理を実行する」こととを対比する。 ここで、後者における「定期処理」は、時間を算出するための処理であることから、両者は、「時間を算出するための処理を実行する」点で共通する。 したがって、刊行物発明における「所定時間を計時するためのタイマー機構を有する計時手段150」と本件補正発明における「一定時間間隔毎に定期処理を実行する定期処理実行手段」とは、「時間を算出するための処理を実行する時間算出手段」である点で共通する。 (k)刊行物1発明における構成iと、本件補正発明における構成Kとは、上記(i)における検討内容を踏まえると、「特定時間決定手段は、特定時間として算出される時間が一の可変表示部が略一周するまでの時間範囲内となるようにランダムに決定」する点で共通する。 (m)刊行物1発明における構成g、hと、本件補正発明における構成Mとは、本件補正発明において、「特定値」と「定期処理の時間間隔」が、時間を算出するための値であること、及び、上記(f)、(j)における検討内容を踏まえると、「第2の変動速度変更手段は、時間を算出するための処理により算出された時間が所定時間となったことに基づいて他の可変表示部の変動速度を規定速度に向けて変更する」点で共通する。 (n)上記(a)?(m)によれば、本件補正発明と刊行物1発明は、 「A 各々が識別可能な複数種類の識別情報が所定の順番で配置された表示帯を移動させることで変動表示可能な可変表示部を複数備え、 B 可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 C 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、 D 可変表示部の変動速度が規定速度となったときに前記導出操作手段の操作を有効化する導出操作有効化手段と、 E 前記導出操作手段が操作されたときに表示結果を導出する制御を行う導出制御手段と、 F 複数の可変表示部を構成する表示帯同士の相対的な位置関係が特定位置関係となるように複数の可変表示部の変動制御を行う特殊変動制御を行うことが可能な特殊変動制御手段と、 G 前記特殊変動制御が行われた後、一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する第1の変動速度変更手段と、 H 前記一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更させる制御が開始されてから特定時間が経過したことに基づいて他の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する第2の変動速度変更手段と、 I’前記特定時間を前記一の可変表示部が略一周するまでの時間範囲内からランダムに決定する特定時間決定手段と、 J’時間を算出するための処理を実行する時間算出手段と、 を備え、 K’前記特定時間決定手段は、前記特定時間として算出される時間が前記一の可変表示部が略一周するまでの時間範囲内となるようにランダムに決定し、 M’前記第2の変動速度変更手段は、前記時間を算出するための処理により算出された時間が所定時間となったことに基づいて他の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する スロットマシン。」 の点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1](構成I、Kに関する) 特定時間として決定可能な時間範囲が、 本件補正発明は、一の可変表示部が一周するまでの時間範囲内であるのに対して、 刊行物1発明は、1コマから20コマに対応する時間範囲内であるが、0コマを時間範囲に含むか否か不明である点で一応相違する。 [相違点2](構成J?Mに関する) 他の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する所定時間となったか否かの判断に関し、 本件補正発明は、一定時間間隔毎に定期処理を実行する定期処理実行手段を備え、特定時間を定期処理の時間間隔とから算出するために用いられる、特定値をランダムに決定し、定期処理において更新された特定値が所定値となったことに基づいて行うのに対して、 刊行物1発明は、所定時間を計時するためのタイマー機構を有する計時手段150を備えるが、本件補正発明の上記構成を備えるか否か明らかでない点。 (4)当審の判断 ア 相違点1について 上記相違点1について検討する。 本件補正発明は、特定時間として決定可能な時間範囲の終点が、「一周するまで」(「一周するまで」とは、本願明細書の【0109】、【0441】、【0451】の記載によれば20コマ分に相当する。)の時間であることを特定するものであるが、当該始点について特定するものではない。 一方、刊行物1発明は、特定時間として決定可能な時間範囲の終点が、本件補正発明と同様に、20コマに対応する時間であることを特定するものである。 そうすると、上記相違点1に係る構成に関して、本件補正発明と刊行物1発明とは、特定時間として決定可能な時間範囲の終点が同じであるという限りにおいて、実質同一であるといえる。 ここでは、仮に、本件補正発明における特定時間として決定可能な時間範囲の始点に、隣接する可動表示部の間で全く移動しない状態に対応する時間を含むものとして、以下検討する。 刊行物1には、ランダム再配置を1つの回転リールだけで実施し、残りの2つの回転リールの図柄は揃った状態のままとしてもよい(段落【0122】)ことが記載されており、この記載は、ランダム再配置において、回転リールの相対位置が変化しない状態を許容することを示唆している。 そして、刊行物1発明において、「1コマ」は、隣接するリールの間で図柄の相対的な位置関係が変化する値である。しかしながら、刊行物1記載の上記示唆事項を勘案すれば、刊行物1発明において、相対的な位置関係が変化しない位置も含めて抽選を行うようにし、相対的な位置関係が変化しない値(0コマ)から、相対的な位置関係が1周分変化する値から1を減算した値(20コマ)までの全周に相当する範囲内から、ランダムに所定値を決定するように構成することは、当業者が適宜なし得たことである。 よって、刊行物1記載の示唆事項を勘案すれば、刊行物1発明において、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 イ 相違点2について 上記相違点2について検討する。 (ア)理由1 刊行物2発明における「任意の値」、「1.49ミリ秒周期」、「割込処理」は、それぞれ、本件補正発明における「特定値」、「一定時間間隔毎」、「定期処理」に相当する。 そうすると、刊行物2発明における構成jの「割込処理」を「実行」する「CPU106」は、本件補正発明における構成Jの「定期処理を実行する定期処理実行手段」としての機能を有する。 そして、刊行物2発明における構成kの「各々乱数に基づく抽選によって」「任意の値を」「決定」する「CPU106」は、本件補正発明における構成Kの「特定値をランダムに決定」する「特定時間決定手段」としての機能を有する。 また、刊行物2発明における構成gの「任意の値」と「1.49ミリ秒の周期と乗算することにより」「算出」される「時間」は、本件補正発明における構成Kの「特定時間として前記定期処理の時間間隔と特定値から算出される時間」に相当する。 さらに、刊行物2発明における「割込信号IRが出力されるごとに、初期値から「1」ずつ減算」する「CPU106」は、初期値としてセットされた任意の値が割込処理において更新されることであるから、本件補正発明における「特定値」を「定期処理において更新」する「特定時間決定手段」としての機能を有する。また、刊行物2発明における「任意の値」が、「「0」になったときに、仮定速中の回転速度から定常回転速度へ再加速を行う」ことは、「再加速」が「各リールについて再加速を開始するタイミングを調整する」ために行われるものであって、リール間でタイミングをずらして再加速を開始することであるから、本件補正発明における「定期処理により更新された特定値が所定値となったことに基づいて他の可変表示部の変動速度を規定速度に向けて変更する」ことに相当する。 したがって、刊行物2発明の構成l、mの「CPU106」は、本件補正発明における構成L、Mの「特定時間決定手段」、「第2の変動速度変更手段」としての機能を有する。 よって、刊行物2発明は、本件補正発明の構成J?Mを少なくとも備えるものである。 ここで、刊行物1発明は、回転リールによる回胴演出が可能な遊技機に関するもの(【0001】)であって、「回胴演出後、目押しの補助とならないようにして、遊技の興趣を向上させ」る(【0005】)という課題を解決するものである。 一方、刊行物2発明は、ボーナス図柄が横一列に並んだ状態で各リールが仮定速で回転させた後、定常回転速度まで再加速するスロットマシンに関するものであって、「遊技者が特定の図柄を狙ってストップスイッチを操作するという技術介入性に影響を与えにくくすることができる。」(【0190】)という作用効果を奏するものである。 そうすると、刊行物1発明と刊行物2発明とは、回胴演出後にリールの回転を再加速させるスロットマシンという同一の技術分野に属する発明であって、再加速させるに際し、目押しの補助とならないようにするという共通の課題を解決する発明である。 したがって、刊行物1発明に刊行物2発明を適用する動機付けは十分にあるといえる。 そして、刊行物1発明のタイマー機構により所定時間を計時する構成に、刊行物2発明を適用して、特定値と定期処理の時間間隔とを用いて計時を行い、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 さらに言えば、刊行物1発明において、特定時間として決定可能な時間範囲を一の可変表示部が一周するまでの時間範囲内とすることは、上記アで検討したとおり、当業者が容易になし得たものであるから、その範囲内で特定値をランダムに決定することも当業者が容易になし得たものである。 (イ)理由2 相違点2について、異なる観点からさらに検討する。 本件補正発明において、特定時間は、特定値と特定値定期処理の時間間隔(一定値)とを用いて導かれるものである。 ところで、スロットマシンの技術分野において、特定値を抽選によりランダムに決定し、特定値と定期処理の時間間隔とから時間を算出し、リールの回転開始制御に用いることは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、前記刊行物2(特開2011-72332号公報)には、各再加速カウンタの値にセットされる初期値には、各々乱数に基づく抽選によって決定された任意の値をセットし、再加速カウンタの値は、割込信号IRが出力されるごとに、初期値から「1」ずつ減算され、「0」になったときに、仮定速中の回転速度から定常回転速度へ再加速を行うことにより、各リールについて再加速を開始するタイミングを調整するスロットマシンについて記載され、 特開2006-102115号公報の【0001】、【0072】?【0074】、【0088】?【0097】、【図15】には、 抽選処理により選択された遅延タイマ値と、割込基準時間(定期処理の時間間隔)とを用いて遅延時間(特定時間)を算出可能とし、遅延タイマ値を待機タイマ値(特定値)として設定し、待機タイマ値がタイムアウトしたときに、対応するメインリールの回転を開始させるスロットマシンについて記載されている。)。 そして、刊行物1発明と上記周知の技術事項とは、ランダムに決定された特定値を用いて、リールの回転開始制御を行うスロットマシンという共通の技術分野に属するものである。 したがって、刊行物1発明のタイマー機構により所定時間を計時する構成に、上記周知の技術事項を適用して、特定値と定期処理の時間間隔とを用いて計時を行い、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 ウ 請求人の主張について 請求人は、平成29年2月8日付けの審判請求書において、「このように、引例からは一の可変表示部と他の可変表示部の相対的位置関係を最大限ずらすこと及びそのための具体的構成を導き出すことは容易に想到されるものではないと思量します。」(9頁第9?12行)と主張する。 しかしながら、上記「ア 相違点1について」において検討したように、刊行物1に記載された示唆事項を勘案すれば、刊行物1発明において、「1コマから20コマまでの20個のうちから1つの数値nを用い」ることに換えて、「0コマから20コマまでの21個のうちから1つの数値nを用い」るようにすることは、当業者が容易になし得たものである。 したがって、上記請求人の主張を採用することはできない。 エ 小括 本件補正発明により奏される効果は、当業者が、刊行物1発明、及び、刊行物2発明、若しくは、周知の技術事項から予測し得た範囲内のものであって、格別のものではない。 上記ア?ウにおいて検討したことからみて、本件補正発明は、刊行物1発明、及び、刊行物2発明、若しくは、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび 上記3より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年5月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項2】 各々が識別可能な複数種類の識別情報が所定の順番で配置された表示帯を移動させることで変動表示可能な可変表示部を複数備え、 可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、 可変表示部の変動速度が規定速度となったときに前記導出操作手段の操作を有効化する導出操作有効化手段と、 前記導出操作手段が操作されたときに表示結果を導出する制御を行う導出制御手段と、 複数の可変表示部を構成する表示帯同士の相対的な位置関係が特定位置関係となるように複数の可変表示部の変動制御を行う特殊変動制御を行うことが可能な特殊変動制御手段と、 前記特殊変動制御が行われた後、一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する第1の変動速度変更手段と、 前記一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更させる制御が開始されてから特定時間が経過したことに基づいて他の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する第2の変動速度変更手段と、 前記特定時間を前記一の可変表示部が一周するまでの時間範囲内からランダムに決定する特定時間決定手段と、 を備える ことを特徴とするスロットマシン。」 2 刊行物 刊行物1の記載事項、刊行物1発明は、前記「第2[理由] 3(1)刊行物」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、前記「第2 2 補正の目的」において検討したとおり、本件補正発明において、「特定時間決定手段」に関して、「一定時間間隔毎に定期処理を実行する定期処理実行手段と、を備え、前記特定時間決定手段は、前記特定時間として前記定期処理の時間間隔と特定値から算出される時間が前記一の可変表示部が一周するまでの時間範囲内となるように特定値をランダムに決定し、前記特定時間決定手段により決定された特定値は前記定期処理において更新され、前記第2の変動速度変更手段は、前記定期処理により更新された特定値が所定値となったことに基づいて他の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する」との限定を省くものである。 そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、前記「第2[理由] 3(2)対比」において検討したように、[相違点1]の点で異なるものである。 そして、相違点1については、前記「第2[理由] 3(3)ア相違点1について」において検討したように、当業者が刊行物1発明に基づいて容易になし得たものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-10-24 |
結審通知日 | 2017-10-31 |
審決日 | 2017-11-13 |
出願番号 | 特願2012-136374(P2012-136374) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井海田 隆 |
特許庁審判長 |
平城 俊雅 |
特許庁審判官 |
長崎 洋一 服部 和男 |
発明の名称 | スロットマシン |
代理人 | 溝渕 良一 |
代理人 | 林 修身 |
代理人 | 大久保 岳彦 |
代理人 | 石川 好文 |
代理人 | 堅田 多恵子 |
代理人 | 重信 和男 |