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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1335745 |
審判番号 | 不服2017-1884 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-08 |
確定日 | 2017-12-28 |
事件の表示 | 特願2012-136375号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成26年1月9日出願公開、特開2014-173号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年6月15日の特許出願であって、平成28年3月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月31日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年11月8日)、それに対し、平成29年2月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成29年2月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成29年2月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正により、平成28年5月25日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1における 「【請求項1】 各々が識別可能な複数種類の識別情報が所定の順番で配置された表示帯を移動させることで変動表示可能な可変表示部を複数備え、 可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、 可変表示部の変動速度が規定速度となったときに前記導出操作手段の操作を有効化する導出操作有効化手段と、 前記導出操作手段が操作されたときに表示結果を導出する制御を行う導出制御手段と、 複数の可変表示部を構成する表示帯同士の相対的な位置関係が特定位置関係となるように複数の可変表示部の変動制御を行う特殊変動制御を行うことが可能な特殊変動制御手段と、 可変表示部の変動速度を変更するまでの特定時間を可変表示部毎に該可変表示部が一周するまでの時間範囲内からランダムに決定する特定時間決定手段と、 前記特殊変動制御が行われた後、可変表示部毎に決定された特定時間が経過してから該特定時間に対応する可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する変動速度変更手段と、 を備え、 前記特定時間決定手段は、前記変動速度変更手段が複数の可変表示部のうち一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更するより前に全ての可変表示部についての特定時間を決定する ことを特徴とするスロットマシン。」を、 審判請求時に提出された手続補正書(平成29年2月8日付け)における 「【請求項1】 A 各々が識別可能な複数種類の識別情報が所定の順番で配置された表示帯を移動させることで変動表示可能な可変表示部を複数備え、 B 可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 C 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、 D 可変表示部の変動速度が規定速度となったときに前記導出操作手段の操作を有効化する導出操作有効化手段と、 E 前記導出操作手段が操作されたときに表示結果を導出する制御を行う導出制御手段と、 F 複数の可変表示部を構成する表示帯同士の相対的な位置関係が特定位置関係となるように複数の可変表示部の変動制御を行う特殊変動制御を行うことが可能な特殊変動制御手段と、 G 可変表示部の変動速度を変更するまでの特定時間を可変表示部毎に該可変表示部が一周するまでの時間範囲内からランダムに決定する特定時間決定手段と、 H 前記特殊変動制御が行われた後、可変表示部毎に決定された特定時間が経過してから該特定時間に対応する可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する変動速度変更手段と、 I 一定時間間隔毎に定期処理を実行する定期処理実行手段と、 を備え、 J 前記特定時間決定手段は、前記特定時間として前記定期処理の時間間隔と特定値から算出される時間が前記可変表示部が一周するまでの時間範囲内となるように特定値をランダムに決定するとともに、前記変動速度変更手段が複数の可変表示部のうち一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更するより前に全ての可変表示部についての特定値を決定し、 K 前記特定時間決定手段により決定された特定値は前記定期処理において更新され、 L 前記変動速度変更手段は、前記定期処理により更新された特定値が所定値となったことに基づいて該特定値に対応する可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する ことを特徴とするスロットマシン。」に補正するものである(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。また、A?Lは、当審にて分説して付した。)。 2 補正の目的 上記補正は、 補正前の請求項1に「一定時間間隔毎に定期処理を実行する定期処理実行手段」(構成I)を加え、 補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「特定時間決定手段」に関して、「前記特定時間決定手段は、前記変動速度変更手段が複数の可変表示部のうち一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更するより前に全ての可変表示部についての特定時間を決定する」とあったものを、「前記特定時間決定手段は、前記特定時間として前記定期処理の時間間隔と特定値から算出される時間が前記可変表示部が一周するまでの時間範囲内となるように特定値をランダムに決定するとともに、前記変動速度変更手段が複数の可変表示部のうち一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更するより前に全ての可変表示部についての特定値を決定し、前記特定時間決定手段により決定された特定値は前記定期処理において更新され」(構成J)ると限定し、 補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「特定時間決定手段」に関して、「前記特定時間決定手段により決定された特定値は前記定期処理において更新され」(構成K)ると限定し、 補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「変動速度変更手段」に関して、「前記変動速度変更手段は、前記定期処理により更新された特定値が所定値となったことに基づいて該特定値に対応する可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する」(構成L)ことを限定するものであり、 かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。 3 独立特許要件について そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するかについて、以下に検討する。 (1)刊行物 原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-72332号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下同じ。)。 ア 「【請求項1】 複数種類の図柄が複数の表示位置に各々表示された複数のリールを回転させ、該複数のリールが全て停止したときに入賞ラインに沿って停止表示された図柄組合せが、予め定められた複数の役のうちいずれかに対応していた場合、該対応する役が成立するスロットマシンであって、 外部からの操作に応じて、前記複数のリールの回転停止を指示する回転停止指示手段と、 前記複数のリールが回転を開始してから所定の定常回転速度に達するまでの間、前記回転停止指示手段からの指示を無効化する回転指示無効化手段と、 前記複数のリールの各々に表示された複数の図柄のうち、予め定められた所定図柄によって構成される所定の図柄組合せが前記入賞ラインに沿って停止表示されると、前記複数の役のうち特定の役が成立する確率が、前記所定の図柄組合せの停止表示前と異なる特定遊技状態へ移行させる遊技状態移行手段と、 前記遊技状態移行手段によって、前記特定遊技状態へ移行したか否かを判断する特定遊技状態判断手段と、 前記特定遊技状態判断手段が前記特定遊技状態へ移行したと判断すると、前記複数のリールが回転を開始してから前記定常回転速度に達するまでの間に、各リールにおいて、前記所定図柄から所定数の図柄を隔てて表示されている特定の図柄が、前記入賞ラインに沿うこととなる相対位置を保った状態で回転するように、前記入賞ラインに沿って停止表示された前記所定図柄を起点として、前記複数のリールの回転を制御するリール回転制御手段と、を備え、 前記リール回転制御手段は、 前記複数のリールの各々における前記特定の図柄が、前記入賞ラインに沿うこととなる相対位置を保った状態で、前記複数のリールを所定時間回転させた後、前記複数のリールの回転速度を前記定常回転速度まで加速することを特徴とするスロットマシン。」 イ 「【0001】 本発明は、遊技者が遊技媒体を投入し、リールを回転させた後に停止させ、そのときに表示されているリールに描かれた図柄の組合せによって遊技結果が定まるスロットマシンに関する。」 ウ 「【0025】 以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。 [第1実施形態] 本実施形態に係るスロットマシン10の外観を図1に示す。図1は、スロットマシン10の正面図であり、同図において、スロットマシン10の筐体の前面部には、フロントパネル20が設けられている。このフロントパネル20の略中央には、スロットマシン10の内部に回転自在に設けられている3個のリール40L,40C及び40Rの外周面に印刷された図柄を表示する、図柄表示領域である表示窓22が形成されている。リール40L,40C及び40Rは、各回転軸が、水平方向の同一直線上に並ぶように設けられ、各々リング状の形状を有し、その外周面には21個の図柄が等間隔で印刷された帯状のリールテープが貼り付けられている。そして、表示窓22からは、リール40L,40C及び40Rが停止しているときに、各リールに印刷された21個の図柄のうち、各リールの回転方向に沿って連続する3つの図柄が視認可能となっている。すなわち、表示窓22には、3[図柄]×3[リール]=合計9つの図柄が停止表示される。ここで、リール40L,40C及び40Rが停止しているときに連続して表示される3つの図柄のうち、最も上側の停止表示位置を上段U、中央の停止表示位置を中段M、最も下側の停止表示位置を下段Lとする。」 エ 「【0039】 ≪主制御回路の説明≫ 中央処理装置(以下、CPUと称する)106は、入出力バス104を介して入力される各種情報に応じて、ROM108に記憶されている各種制御プログラムを実行することで、スロットマシン10における遊技の制御を行う。CPU106は、各種制御プログラムの処理を、クロック発生回路112から供給されるクロック信号CLKおよび割込信号IRに従って行っている。ROM108は、スロットマシンの全体の流れを制御する制御プログラムや、制御プログラムを実行するための各種データを記憶する。ROM108に記憶されているデータとしては、前述した図柄識別情報の他、例えば、後述する各種の役に対応する図柄組合せ(図8参照)、各種役抽選テーブル(図9?図11参照)、各リールの加速パターン(図12参照)、ストップスイッチ37L,37C,37Rの操作順序に応じたリール停止制御情報(図13参照)などがある。また、ROM108に記憶される制御プログラムとしては、図14に示すメインルーチン、図15?図19に示す各種サブルーチンの処理を実行するためのプログラムなどがある。 ・・・ 【0046】 このように、モータ駆動回路116L、116C及び116Rが、CPU106から駆動パルスが出力されるごとに、電流を供給する相を切り替えることで、対応するステッピングモータを回転させている。このため、CPU106から出力される駆動パルスの周期が短くなれば回転速度が増加し、周期が長くなれば回転速度が低下することになる。ここで、クロック発生回路112から出力される割込信号IRは、1.49ミリ秒(以下、msecという)周期で定期的に出力されるものとする。よって、割込信号IRが出力されるごとに各ステッピングモータに供給する電流の相を切り替えたときに、各リールの回転速度が最大となり、具体的には、回転速度を1分間当たりの回転数(単位をrpmとする)で表した場合、1/(504[ステップ]×1.49[msec])×60≒79.90[rpm]となる。」 オ 「【0071】 図12に示す加速パターンでは、各駆動パルスの出力タイミングを指定する情報が、クロック発生回路112から割込信号IRが出力された数によって表されている。例えば、(a)の通常加速パターンにおいて、各リールの回転を開始するときに、最初の駆動パルスは、回転開始から割込信号IRが90回出力されたとき(時間にして1.49[msec]×90=134.10[msec]が経過した時)に出力される。また、2発目の駆動パルスは、最初の駆動パルスが出力されてから割込信号IRが15回出力されたとき(時間にして1.49[msec]×15=22.35[msec]が経過した時)に出力される。また、3発目から8発目までの駆動パルスは、各々、直前の駆動パルスが出力されてから割込信号IRが7回出力されたとき(時間にして1.49[msec]×7=10.43[msec]が経過した時)に出力される。 ・・・ 【0075】 リール停止制御手段424は、ストップスイッチ37L、37C、37Rから発信されたリール停止信号に応じて、リール40L、40C、40Rを停止させる。このとき、リール停止制御手段424は、予め定められた制約の範囲内で、役抽選の結果に則した図柄組合せが有効ラインに沿って停止表示される制御を行う。たとえば、役抽選によって何らかの役が当選した状態で、あるストップスイッチが操作された場合、リール停止制御手段424は、その時点から対応するリールが所定の図柄数(5図柄)だけ移動(回転)する間に、上記当選した役に対応した図柄組合せを構成している図柄が、有効ラインが横切っている図柄停止位置(以下、有効ラインの位置という)に到達し得るときは、その図柄が有効ラインの位置に達したときにリールを停止させる。」 カ 「【0110】 RT移行フラグがオンになっていた(YES)場合は、RT遊技へ移行したことを示す演出を実行すべく、CPU106は、図12(b)に示したRT移行時加速パターンに従って、モータ駆動回路116L、116C、116Rへ駆動パルスを出力する(ステップS96)。この駆動パルスの出力に関する処理は、図3に示したクロック発生回路112から割込信号IRが出力されるごとに実行する割込処理(図示省略)によって行われる。」 キ 「【0149】 本実施形態におけるリール演出回転処理に関する処理では、モータ駆動回路116R,116C,116Lに対して駆動パルスを出力する割込処理で使用する各種変数の初期値をセットするとともに、当該割込処理の開始を指示している。以下、図23および図24を参照して、RT遊技へ移行後の最初の遊技において実行される、第2実施形態でのリール40L,40C,40Rを用いた演出を行うための割込処理(以下、リール加速処理という)について説明する。 【0150】 なお、この加速処理は、図3に示したクロック発生回路112から割込信号IRが出力されるごとに、モータ駆動回路116R,116C,116Lの各々について個別に実行されるものである。この加速処理を行うことによって、モータ駆動回路116R,116C,116Lに対し、図12(b)に示したRT移行時加速パターンに従った駆動パルスが出力される。また、この加速処理で参照する変数には、リール駆動状態、遅延カウンタ、割込カウンタ、ステップカウンタ、および、再加速カウンタなどがあり、これらの変数は、RAM110に記憶されている。ここで、リール駆動状態は、RT遊技に移行したときの各リールの加速段階において、「加速中」、「仮定速中」、「再加速中」のいずれの状態にあるのかを示す情報を記憶するための変数である。また、「加速中」は、リールが停止している状態から仮定速(回転速度が約39.95[rpm])に達する間の状態、「仮定速中」は、仮定速で回転している状態、および、「再加速中」は、仮定速から定常回転速度(約79.90[rpm])に達する間の状態を示している。 ・・・ 【0153】 すなわち、前述したように、図21の図柄配列においては、小役4に対応する図柄組合せが有効ラインに沿って停止表示されると、各リールのボーナス図柄は、左リール40Lを基準とすると、中リール40Cについては2図柄分、右リール40Rについては3図柄分ずれている。また、各リールに対応するモータ駆動回路に対して、いずれも図12(b)に示した加速パターンに従って駆動パルス出力する。よって、各モータ駆動回路に対する駆動パルスの出力処理の開始タイミングに時間差をつけることで、各リールにおけるボーナス図柄の位置を一致させるものである。」 ・・・ 【0160】 ここで、再加速カウンタの値は、割込信号IRが出力されるごと(すなわち、リール加速処理が行われるごと)に、初期値から「1」ずつ減算され、「0」になったときに、仮定速中の回転速度から定常回転速度へ再加速を行う。また、再加速カウンタの初期値は、各リール対応するモータ駆動回路ごとに異なっており、リール駆動回路116Lについては「72」、リール駆動回路116Cについては「24」、リール駆動回路116Rについては「0」になっている。 ・・・ 【0162】 ステップS350で、再加速カウンタに各々初期値がセットされると、CPU106は、ステップS346で割込カウンタの値に「2」をセットしてリール加速処理を終了し、次の割り込みから再加速中の処理を行う。 ・・・ 【0166】 以上に説明したリール加速処理を、RT遊技へ移行した最初の遊技におけるリール40L,40C,40Rの回転開始時に行うことにより、図21に示した図柄配列において、ボーナス図柄が横一列に並んだ状態で各リールが仮定速(39.95[rpm])で回転し、その状態で所定時間が経過すると、定常回転速度に再加速することになる。ここで、仮定速中に横一列に並ぶボーナス図柄は、小役4に対応する図柄組合せが、有効ラインL1に沿って停止表示されたときは「青7」図柄、有効ラインL5に沿って停止表示されたときは「BAR」図柄、有効ラインL2、L3、または、L4のいずれかに沿って停止表示されたときは「赤7」図柄となる。また、再加速時には各リール間の相対的な図柄位置が、前回の遊技で小役4が入賞したときの位置関係に戻される。」 ク 「【0190】 また、第2実施形態において、図24のステップS344で、「仮定速中」に移行してから、所定時間が経過した(YES)と判断されると、CPU106は、同図のステップS350で、各リールについて再加速を開始するタイミングを調整するため、各リール駆動回路116に対応する再加速カウンタの値に、各々、予め適宜定めておいた初期値をセットしていた。ここで、各再加速カウンタの値にセットする初期値を、予め定めた値ではなく、例えば、各々乱数に基づく抽選を行って、当該抽選によって決定された任意の値をセットするようにしてもよい。このよう構成した場合、すべてのリールが定常回転速度に達したときの、各リール間の相対位置がランダムな位置関係となるので、遊技者が特定の図柄を狙ってストップスイッチを操作するという技術介入性に影響を与えにくくすることができる。」 ケ 認定事項f、h 【0039】の「CPU106は、各種制御プログラムの処理を、クロック発生回路112から供給されるクロック信号CLKおよび割込信号IRに従って行っている。」との記載、【0110】の「CPU106は、・・・モータ駆動回路116L、116C、116Rへ駆動パルスを出力する・・・。この駆動パルスの出力に関する処理は、・・・クロック発生回路112から割込信号IRが出力されるごとに実行する割込処理(図示省略)によって行われる。」との記載から、刊行物1には、CPU106が、モータ駆動回路への駆動パルスの出力処理を割込処理により行うことが記載されているといえる。 そして、刊行物1には、【0153】に「各モータ駆動回路に対する駆動パルスの出力処理の開始タイミングに時間差をつけることで、各リールにおけるボーナス図柄の位置を一致させるものである。」ことが記載され、【0166】に「リール加速処理を、RT遊技へ移行した最初の遊技におけるリール40L,40C,40Rの回転開始時に行う・・・ボーナス図柄が横一列に並んだ状態で各リールが仮定速・・・で回転し、その状態で所定時間が経過すると、定常回転速度に再加速することになる。」ことが記載されている。 したがって、刊行物1には、RT遊技へ移行した最初の遊技におけるリールの回転開始時に、各モータ駆動回路に対する駆動パルスの出力処理の開始タイミングに時間差をつけることで、各リールにおけるボーナス図柄の位置を一致させ、ボーナス図柄が横一列に並んだ状態で各リールを仮定速で回転させるCPU106について記載されていると認められる(認定事項f)。 同様に、刊行物1には、ボーナス図柄が横一列に並んだ状態で所定時間が経過すると、定常回転速度に再加速するCPU106について記載されていると認められる(認定事項h)。 コ 認定事項g 上記認定事項fにおける認定事項に加え、刊行物1には、次の事項が記載されている。 【0046】の「割込信号IRは、1.49ミリ秒(以下、msecという)周期で定期的に出力される」との記載、【0071】の「(a)の通常加速パターンにおいて、各リールの回転を開始するときに、最初の駆動パルスは、回転開始から割込信号IRが90回出力されたとき(時間にして1.49[msec]×90=134.10[msec]が経過した時)に出力される。また、2発目の駆動パルスは、最初の駆動パルスが出力されてから割込信号IRが15回出力されたとき(時間にして1.49[msec]×15=22.35[msec]が経過した時)に出力される。また、3発目から8発目までの駆動パルスは、各々、直前の駆動パルスが出力されてから割込信号IRが7回出力されたとき(時間にして1.49[msec]×7=10.43[msec]が経過した時)に出力される。」との記載から、刊行物1には、割込信号IRの出力回数に、割込信号IRの出力される周期である1.49ミリ秒の周期と乗算することにより、時間を算出することが記載されているといえる。 そして、上記【0160】の「再加速カウンタの値は、割込信号IRが出力されるごと(すなわち、リール加速処理が行われるごと)に、初期値から「1」ずつ減算され、「0」になったときに、仮定速中の回転速度から定常回転速度へ再加速を行う。」との記載によると、「再加速カウンタの値」は、クロック発生回路112から供給される「割込信号IR」が出力されるごとに、「1」ずつ減算されて更新されるものであるといえ、時間に関連する値であるといえる。 また、【0162】に「ステップS350で、再加速カウンタに各々初期値がセットされる」との記載があり、【0190】に「各リールについて再加速を開始するタイミングを調整するため、・・・各再加速カウンタの値にセットする初期値を、・・・各々乱数に基づく抽選を行って、当該抽選によって決定された任意の値をセットする」との記載がある。 したがって、刊行物1には、各リールについて再加速を開始するタイミングを調整するために、各々乱数に基づく抽選によって決定され、1.49ミリ秒の周期と乗算することにより時間を算出することができる、任意の値を各再加速カウンタにセットするCPU106について記載されていると認められる。 サ 認定事項i 【0046】の「割込信号IRは、1.49ミリ秒(以下、msecという)周期で定期的に出力される」との記載、【0149】の「割込処理(以下、リール加速処理という)」との記載、【0150】の「なお、この加速処理は、・・・クロック発生回路112から割込信号IRが出力されるごとに、モータ駆動回路116R,116C,116Lの各々について個別に実行されるものである。」との記載から、刊行物1には、割込処理は、クロック発生回路112から、1.49ミリ秒周期で定期的に出力される割込信号IRが出力されるごとに、モータ駆動回路の各々について個別に実行されることについて記載されていると認められる。 シ 上記ア?クの記載事項、上記ケ?サの認定事項から、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる(a?mは、本件補正発明のA?Lに対応させて付与した。)。 「a 外周面に21個の図柄が等間隔で印刷された帯状のリールテープが貼り付けられ、回転自在に設けられている3個のリール40L,40C及び40Rを備え(【0025】)、 b 複数のリールが全て停止したときに入賞ラインに沿って停止表示された図柄組合せが、予め定められた複数の役のうちいずれかに対応していた場合、該対応する役が成立するスロットマシンであって(【請求項1】)、 c 外部からの操作に応じて、複数のリールの回転停止を指示する回転停止指示手段と(【請求項1】)、 d 複数のリールが回転を開始してから所定の定常回転速度に達するまでの間、回転停止指示手段からの指示を無効化する回転指示無効化手段と(【請求項1】)、 e 予め定められた制約の範囲内で、役抽選の結果に則した図柄組合せが有効ラインに沿って停止表示される制御を行うリール停止制御手段424【0075】と、 f RT遊技へ移行した最初の遊技におけるリールの回転開始時に、各モータ駆動回路に対する駆動パルスの出力処理の開始タイミングに時間差をつけることで各リールにおけるボーナス図柄の位置を一致させ、ボーナス図柄が横一列に並んだ状態で各リールを仮定速で回転させるCPU106(認定事項f)を備え、 g CPU106は、 各リールについて再加速を開始するタイミングを調整するために、各々乱数に基づく抽選によって決定され、1.49ミリ秒の周期と乗算することにより時間を算出することができる、任意の値を各再加速カウンタにセットし(認定事項g)、 h ボーナス図柄が横一列に並んだ状態で所定時間が経過すると、定常回転速度に再加速し(認定事項h)、 i 割込処理は、クロック発生回路112から、1.49ミリ秒周期で定期的に出力される割込信号IRが出力されるごとに、モータ駆動回路の各々について個別に実行され(認定事項i)、 j 各再加速カウンタの値にセットされる初期値には、各々乱数に基づく抽選によって決定された任意の値がセットされ、再加速カウンタに各々初期値がセットされると、次の割り込みから再加速のための処理を行い(【0190】、【0162】、【図24】)、 k、l 再加速カウンタの値は、割込処理が行われて、割込信号IRが出力されるごとに、初期値から「1」ずつ減算され、「0」になったときに、仮定速中の回転速度から定常回転速度へ再加速を行う(【0149】、【0160】)、 スロットマシン。」 (2)対比 本件補正発明と刊行物発明とを、分説に従い対比する。 (a)刊行物発明における構成aの 「外周面に」「貼り付けられ」た「21個の図柄」、 「等間隔で印刷された帯状のリールテープ」、 「回転自在に設けられている」ことは、それぞれ、 本件補正発明における構成Aの 「各々が識別可能な複数種類の識別情報」、 「所定の順番で配置された表示帯」、 「移動させることで変動表示可能な」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成aの「3個のリール40L,40C及び40R」は、本件補正発明における構成Aの「複数」の「可変表示部」に相当する。 (b)刊行物発明における構成bの 「複数のリールが全て停止したときに入賞ラインに沿って」「図柄組合せ」を「停止表示」させること、 「図柄組合せが、予め定められた複数の役のうちいずれかに対応していた場合、該対応する役が成立する」ことは、それぞれ、 本件補正発明における構成Bの 「可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出」すること、 「複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能な」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成bは、本件補正発明における構成Bに相当する。 (c)刊行物発明における構成cの「複数のリールの回転停止を指示する」ことは、構成bにより、「図柄組合せ」が「停止表示され」ることになるから、本件補正発明における構成Cの「表示結果を導出させる」ことに相当する。 そして、刊行物発明における構成cの「外部からの操作」は、本件補正発明における構成Cの「遊技者」による「操作」に相当する。 したがって、刊行物発明における構成cの「外部からの操作に応じて、複数のリールの回転停止を指示する回転停止指示手段」は、本件補正発明における構成Cの「遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段」に相当する。 (d)刊行物発明における構成dの「複数のリールが回転を開始してから所定の定常回転速度に達する」ときは、本件補正発明における構成Dの「可変表示部の変動速度が規定速度となったとき」に相当する。 そして、刊行物発明における構成dの「複数のリールが回転を開始してから所定の定常回転速度に達するまでの間、回転停止指示手段からの指示を無効化する」ことは、「複数のリールが回転を開始してから所定の定常回転速度に達」した後は、回転停止指示手段からの指示を有効化することであるから、本件補正発明における構成Dの「可変表示部の変動速度が規定速度となったときに前記導出操作手段の操作を有効化する」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成dは、本件補正発明における構成Dに相当する。 (e)刊行物発明における構成eにおいて、「図柄組合せ」が「停止表示」されるのは、構成cによると、回転停止指示手段による「外部からの操作」によるものであるから、刊行物発明における構成eの「予め定められた制約の範囲内で、役抽選の結果に則した図柄組合せを有効ラインに沿って停止表示させる制御を行う」ことは、本件補正発明における構成Eの「導出操作手段が操作されたときに表示結果を導出する制御を行う」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成eの「リール停止制御手段424」は、本件補正発明における構成Eの「導出制御手段」に相当する。 (f)刊行物発明における構成fの「各リールにおけるボーナス図柄の位置を一致させ、ボーナス図柄が横一列に並んだ状態」は、本件補正発明における構成Fの「複数の可変表示部を構成する表示帯同士の相対的な位置関係が特定位置関係となる」ことに相当する。 そして、刊行物発明における構成fの「各モータ駆動回路に対する駆動パルスの出力処理の開始タイミングに時間差をつけることで」「回転させる」ことは、本件補正発明における「複数の可変表示部の変動制御を行う特殊変動制御を行う」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成fの「CPU106」は、本件補正発明における構成Fの「特殊変動制御手段」としての機能を有する。 (g)刊行物発明における構成gの 「再加速を開始するタイミング」、 「各々」、 「乱数に基づく抽選によって決定」することは、それぞれ、 本件補正発明における構成Gの 「可変表示部の変動速度を変更するまでの特定時間」、 「可変表示部毎に」、 「ランダムに決定する」ことに相当する。 そして、刊行物発明において、「再加速を開始するタイミング」は、「乱数に基づく抽選によって決定され」るものであり、抽選された乱数に対応する時間を予め定めておくことは、当業者にとって自明であるから、再加速を開始するタイミング(時間)は、有限の範囲内から決定されるものであるといえる。 そうすると、刊行物発明における構成gの「各リールについて再加速を開始するタイミングを調整するために、各々乱数に基づく抽選によって決定され、1.49ミリ秒の周期と乗算することにより時間を算出することができる、任意の値を各再加速カウンタにセット」する「CPU106」と、本件補正発明における「可変表示部の変動速度を変更するまでの特定時間を可変表示部毎に該可変表示部が一周するまでの時間範囲内からランダムに決定する特定時間決定手段」とは、「可変表示部の変動速度を変更するまでの特定時間を所定の時間範囲内から可変表示部毎にランダムに決定する特定時間決定手段」である点で共通する。 (h)刊行物発明における構成hの「所定時間」は、構成gによると、「各リールについて」「乱数に基づく抽選によって決定」されるものであることから、刊行物発明における構成hの「ボーナス図柄が横一列に並んだ状態で所定時間が経過する」ことは、本件補正発明における構成Hの「特殊変動制御が行われた後、可変表示部毎に決定された特定時間が経過」することに相当する。 そして、刊行物発明における構成hの「定常回転速度に再加速」するのは、「各リールについて」であるから、本件補正発明における構成Hの「特定時間に対応する可変表示部の変動速度を規定速度に向けて変更する」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成hの「ボーナス図柄が横一列に並んだ状態で所定時間が経過すると、定常回転速度に再加速」する「CPU106」は、本件補正発明における構成Hの「特殊変動制御が行われた後、可変表示部毎に決定された特定時間が経過してから該特定時間に対応する可変表示部の変動速度を規定速度に向けて変更する変動速度変更手段」としての機能を有する。 (i)刊行物発明における構成iの「割込処理」は、構成fによると、「CPU106」により行われるものである。 そして、刊行物発明における構成iの「クロック発生回路112から、1.49ミリ秒周期で定期的に出力される割込信号IRが出力されるごと」は、本件補正発明における構成Iの「一定時間間隔毎」に相当する。 また、刊行物発明における構成iの「割込処理」は、「1.49ミリ秒周期で定期的」に実行されるものであるから、本件補正発明における「定期処理」に相当する。 したがって、刊行物発明における構成iの「CPU106」は、本件補正発明における構成Iの「定期処理実行手段」としての機能を有する。 (j)刊行物発明における構成jの「各再加速カウンタの値にセットされる初期値には、各々乱数に基づく抽選によって決定された任意の値がセットされ、再加速カウンタに各々初期値がセットされると、次の割り込みから再加速のための処理を行」うことと、本件補正発明における構成Jの「特定時間決定手段は、特定時間として定期処理の時間間隔と特定値から算出される時間が可変表示部が一周するまでの時間範囲内となるように特定値をランダムに決定するとともに、変動速度変更手段が複数の可変表示部のうち一の可変表示部の変動速度を規定速度に向けて変更するより前に全ての可変表示部についての特定値を決定」することとを対比する。 刊行物発明において、「再加速カウンタ」には、構成gによると、「各リールについて再加速を開始するタイミングを調整するために、乱数に基づく抽選によって決定され、1.49ミリ秒の周期と乗算することにより時間を算出することができる、任意の値」が「セット」されるものである。そして、刊行物発明における構成jの「各々乱数に基づく抽選によって決定された任意の値」は、本件補正発明における「ランダムに決定」された「特定値」に相当する。 したがって、上記(g)における対比と同様に、刊行物発明における構成jの「各再加速カウンタの値にセットされる初期値には、各々乱数に基づく抽選によって決定された任意の値がセットされ」ることと、本件補正発明における「特定時間決定手段は、特定時間として定期処理の時間間隔と特定値から算出される時間が可変表示部が一周するまでの時間範囲内となるように特定値をランダムに決定する」こととは、「特定時間決定手段は、特定時間として定期処理の時間間隔と特定値から算出される時間が所定の時間範囲内となるように特定値をランダムに決定する」ことで共通する。 同様に、刊行物発明における構成jの「再加速カウンタに各々初期値がセットされる」ことは、本件補正発明における構成Jの「可変表示部についての特定値を決定」することに相当する。 そうすると、刊行物発明における構成jの「再加速カウンタに各々初期値がセットされると、次の割り込みから再加速のための処理を行」うことは、各リールの回転を定常回転速度に向けて再加速する「再加速のための処理」を行う前に、各再加速カウンタに初期値(「任意の値」)がセットされることから、本件補正発明における構成Jの「複数の可変表示部のうち一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更するより前に全ての可変表示部についての特定値を決定」することに相当する。 そして、上記(h)における対比によると、刊行物発明における「再加速」する「CPU106」は、本件補正発明における「可変表示部の変動速度を規定速度に向けて変更する変動速度変更手段」としての機能を有するものである。 また、上記(i)における対比によると、刊行物発明における「再加速を行う」「リール加速処理」は、本件補正発明における「定期処理」に相当する。 したがって、刊行物発明における構成jの「再加速カウンタに各々初期値がセットされると、次の割り込みから再加速中の処理を行」うことは、本件補正発明における「変動速度変更手段が複数の可変表示部のうち一の可変表示部の変動速度を規定速度に向けて変更するより前に全ての可変表示部についての特定値を決定」することに相当する。 よって、刊行物発明における構成jと本件補正発明における構成Jとは、「特定時間決定手段は、特定時間として定期処理の時間間隔と特定値から算出される時間が所定の時間範囲内となるように特定値をランダムに決定するとともに、変動速度変更手段が複数の可変表示部のうち一の可変表示部の変動速度を規定速度に向けて変更するより前に全ての可変表示部についての特定値を決定」することで共通する。 (k、l)刊行物発明における構成k、lの「再加速カウンタの値は、割込処理が行われて、割込信号IRが出力されるごとに、初期値から「1」ずつ減算され」ることは、構成jによると、再加速カウンタにセットされた「初期値」である「任意の値」が、「1」ずつ減算されて更新されることであるから、本件補正発明における構成Kの「特定時間決定手段により決定された特定値は定期処理において更新され」ることに相当する。 そして、上記(i)における対比によると、刊行物発明における「再加速を行う」「割込処理」は、本件補正発明における「定期処理」に相当する。 そうすると、刊行物発明における構成k、lの「割込処理が行われて、割込信号IRが出力されるごとに、初期値から「1」ずつ減算され、「0」にな」ることは、本件補正発明における構成Lの「定期処理により更新された特定値が所定値となった」ことに相当する。 また、刊行物発明における構成k、lの「仮定速中の回転速度から定常回転速度へ再加速を行う」ことは、本件補正発明における構成Lの「特定値に対応する可変表示部の変動速度を規定速度に向けて変更する」ことに相当する。 したがって、刊行物発明における構成k、lは、本件補正発明における構成K、Lに相当する。 上記(a)?(l)によれば、本件補正発明と刊行物発明は、 「【請求項1】 A 各々が識別可能な複数種類の識別情報が所定の順番で配置された表示帯を移動させることで変動表示可能な可変表示部を複数備え、 B 可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 C 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、 D 可変表示部の変動速度が規定速度となったときに前記導出操作手段の操作を有効化する導出操作有効化手段と、 E 前記導出操作手段が操作されたときに表示結果を導出する制御を行う導出制御手段と、 F 複数の可変表示部を構成する表示帯同士の相対的な位置関係が特定位置関係となるように複数の可変表示部の変動制御を行う特殊変動制御を行うことが可能な特殊変動制御手段と、 G’可変表示部の変動速度を変更するまでの特定時間を可変表示部毎に所定の時間範囲内からランダムに決定する特定時間決定手段と、 H 前記特殊変動制御が行われた後、可変表示部毎に決定された特定時間が経過してから該特定時間に対応する可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する変動速度変更手段と、 I 一定時間間隔毎に定期処理を実行する定期処理実行手段と、 を備え、 J’前記特定時間決定手段は、前記特定時間として前記定期処理の時間間隔と特定値から算出される時間が所定の時間範囲内となるように特定値をランダムに決定するとともに、前記変動速度変更手段が複数の可変表示部のうち一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更するより前に全ての可変表示部についての特定値を決定し、 K 前記特定時間決定手段により決定された特定値は前記定期処理において更新され、 L 前記変動速度変更手段は、前記定期処理により更新された特定値が所定値となったことに基づいて該特定値に対応する可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する ことを特徴とするスロットマシン。」 の点で一致し、次の点で相違する。 [相違点](構成G、Jに関する) 特定時間として決定可能な時間範囲が、 本件補正発明は、可変表示部が一周するまでの時間範囲内であるのに対して、 刊行物発明は、そのような構成を備えるか不明である点で一応相違する。 (3)当審の判断 ア 相違点について 上記相違点について検討する。 上記(2)対比(g)において検討したように、刊行物発明において、「再加速を開始するタイミング」は、「乱数に基づく抽選によって決定され」るものであり、所定の時間範囲内からランダムに決定されるものであるといえる。 なお、電子機器の技術分野においては、ランダムな値を得るため抽選を行うのであれば、何らかの上限、下限を有する所定の範囲内から値を決定することは当業者にとって自明である。 ところで、刊行物発明における「再加速を開始するタイミング」が決定される「所定の時間範囲」が、例えば極端に大きな範囲であれば、一部のリールのみ延々と回り続けることになって遊技が開始されなくなってしまうので、ある程度の大きさになっていることも当業者にとって自明である。 その程度について、刊行物1に記載された第2実施形態における「初期値」には、0?3図柄のズレに対しての値として「72」、「24」、「0」がセットされることが例示されており(【0160】を参照。)、これは、一のリールに対する他のリールの位置関係が、リールが1周するまでの時間範囲内で変化しているというものに含まれている。 つまり、ランダムに決定する時間範囲の上限値は、結局、何らかの大きさにしなくてはならないこと、そして、リールの構造上、リールが1周すると図柄のズレがなくなり元の状態に戻ることを考慮すれば、その大きさの程度として、「リールが一周するまでの時間範囲内」とすることに技術的困難性があるものではない。 加えて、刊行物発明は、刊行物1の【0190】に記載された第2実施形態における変形例に基づいて認定したものであるが、その変形例に係る構成を備えることにより、「すべてのリールが定常回転速度に達したときの、各リール間の相対位置がランダムな位置関係となるので、遊技者が特定の図柄を狙ってストップスイッチを操作するという技術介入性に影響を与えにくくすることができる。」(【0190】)という効果を奏することが記載されている。 さらに、「各リール間の相対位置」を特定するのにリール一周分が必要十分であることも当業者にとって明らかである。 これらのことからみて、刊行物発明において、刊行物1の【0190】に記載された「遊技者が特定の図柄を狙ってストップスイッチを操作するという技術介入性に影響を与えにくくすることができる。」という機能を最大限に発揮するために、「一のリールと他のリールの相対的位置関係を一周分まで(最大限)ずらすこと」により、リール間における相対的位置のずれ量のランダム性を向上させることは、当業者が適宜なし得たものであるといえる。 したがって、刊行物発明、及び、刊行物1に記載された事項に基づいて、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。 そして、本件補正発明が上記相違点に係る構成を備えることによって奏する効果は、「一の可変表示部と他の可変表示部の相対的位置関係を一周分まで(最大限)ずらすことが可能」、「最大限にずらすために要する時間を最小なもの(一周分)にすることができる」という程度の、至極当然の効果であって、刊行物発明、及び、刊行物1に記載された事項により奏される効果の範囲内のものであるといえる。 イ 請求人の主張について 請求人は、平成29年2月8日付けの審判請求書において、「本発明では各可変表示部の変動速度を規定速度に向けて変更するまでの特定時間を、各可変表示部が一周するまでの時間範囲内からランダムに決定しています。これにより、各可変表示部の相対的位置関係を最大限ずらすことが可能であり、かつ最大限にずらすために要する時間を最小なものにすることができます。」(7頁第15?17行)と主張する。 しかしながら、上記「ア 相違点について」において検討したように、刊行物1に記載された事項(【0190】)を勘案すれば、刊行物発明において、「各リールについて再加速を開始するタイミング」を決定する範囲を「各可変表示部が一周するまでの時間範囲内」とすることは当業者が容易になし得たものであり、これに伴い、刊行物発明は、請求人が主張する「各可変表示部の相対的位置関係を最大限ずらすことが可能であり、かつ最大限にずらすために要する時間を最小なものにする」という本件補正発明と同様の効果を奏するものである。 したがって、上記請求人の主張を採用することはできない。 ウ 小括 上記ア?イにおいて検討したことからみて、本件補正発明は、刊行物発明、及び、刊行物1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 むすび 上記3より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年5月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 A 各々が識別可能な複数種類の識別情報が所定の順番で配置された表示帯を移動させることで変動表示可能な可変表示部を複数備え、 B 可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、複数の可変表示部の表示結果の組合せに応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、 C 遊技者が表示結果を導出させるために操作する導出操作手段と、 D 可変表示部の変動速度が規定速度となったときに前記導出操作手段の操作を有効化する導出操作有効化手段と、 E 前記導出操作手段が操作されたときに表示結果を導出する制御を行う導出制御手段と、 F 複数の可変表示部を構成する表示帯同士の相対的な位置関係が特定位置関係となるように複数の可変表示部の変動制御を行う特殊変動制御を行うことが可能な特殊変動制御手段と、 G 可変表示部の変動速度を変更するまでの特定時間を可変表示部毎に該可変表示部が一周するまでの時間範囲内からランダムに決定する特定時間決定手段と、 H 前記特殊変動制御が行われた後、可変表示部毎に決定された特定時間が経過してから該特定時間に対応する可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する変動速度変更手段と、 を備え、 J 前記特定時間決定手段は、前記変動速度変更手段が複数の可変表示部のうち一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更するより前に全ての可変表示部についての特定時間を決定する ことを特徴とするスロットマシン。」 2 刊行物 刊行物1の記載事項、刊行物発明は、前記「第2[理由] 3(1)刊行物」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、前記「第2 2 補正の目的」において検討したとおり、本件補正発明において、 「一定時間間隔毎に定期処理を実行する定期処理実行手段」(構成I)を備えるとの限定を省き、 「特定時間決定手段」に関して、「前記特定時間決定手段は、前記特定時間として前記定期処理の時間間隔と特定値から算出される時間が前記可変表示部が一周するまでの時間範囲内となるように特定値をランダムに決定するとともに、前記変動速度変更手段が複数の可変表示部のうち一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更するより前に全ての可変表示部についての特定値を決定し、前記特定時間決定手段により決定された特定値は前記定期処理において更新され」(構成J)るとあったものを、「前記特定時間決定手段は、前記変動速度変更手段が複数の可変表示部のうち一の可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更するより前に全ての可変表示部についての特定時間を決定する」とその限定を省き、 「特定時間決定手段」に関して、「前記特定時間決定手段により決定された特定値は前記定期処理において更新され」(構成K)るとの限定を省き、 「変動速度変更手段」に関して、「前記変動速度変更手段は、前記定期処理により更新された特定値が所定値となったことに基づいて該特定値に対応する可変表示部の変動速度を前記規定速度に向けて変更する」(構成L)との限定を省くものである。 そうすると、本願発明と刊行物発明とは、前記「第2[理由] 3(2)対比」において検討したように、[相違点](構成Gに関する)の点で異なるものである。 そして、相違点については、前記「第2[理由] 3(3)ア 相違点について」において検討したように、当業者が刊行物発明、及び、刊行物1に記載された事項に基づいて容易になし得たものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物発明、及び、刊行物1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-10-24 |
結審通知日 | 2017-10-31 |
審決日 | 2017-11-13 |
出願番号 | 特願2012-136375(P2012-136375) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井海田 隆 |
特許庁審判長 |
平城 俊雅 |
特許庁審判官 |
服部 和男 長崎 洋一 |
発明の名称 | スロットマシン |
代理人 | 石川 好文 |
代理人 | 堅田 多恵子 |
代理人 | 林 修身 |
代理人 | 重信 和男 |
代理人 | 溝渕 良一 |
代理人 | 大久保 岳彦 |