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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1335747
審判番号 不服2017-4897  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-06 
確定日 2017-12-28 
事件の表示 特願2012-178661号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月24日出願公開、特開2014- 33951号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成24年8月10日の出願であって、平成28年3月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年12月26日付け(発送日:平成29年1月10日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年4月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年6月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A?Oについては、発明特定事項を分説するため当審で付した。)。

「A 周囲に複数の図柄が付された複数の回転リールと、

B 回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、

C 各回転リールに対応して設けられかつ回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、

D 所定の図柄組合せが対応付けられた役について当選か否かの役抽選を行うものであって、少なくとも特別役と複数の小役とを対象に役抽選を行う役抽選手段と、

E 役抽選により当選した役に対応する当選フラグを非内部当選状態から内部当選状態に設定する当選フラグ制御手段と、

F 少なくとも通常状態と通常状態よりも遊技者にとって有利な特別状態とを含む複数の遊技状態の間で遊技状態を移行させる制御を行う遊技状態移行制御手段と、

G 遊技状態ごとに予め定められた規定数の遊技媒体がベットされている状態でスタートスイッチが操作された場合に、回転リールの回転を開始させる回転制御手段と、

H 少なくとも当選フラグの設定状態及びストップスイッチが操作された時点における対応する回転リールの回転位置に基づいて、回転リールの回転を適位置で停止させる停止制御手段と、

I 払い出し装置による遊技媒体の払い出しを制御し、複数の回転リールの回転が停止した状態で小役に対応した図柄組合せが有効ライン上に停止表示された場合に払い出し装置に遊技媒体を払い出させる制御を行う払出制御手段と、

J 予め定められた複数のストップスイッチの操作態様のうちからストップスイッチの操作態様を選択して設定するものであって、特別状態においてストップスイッチの操作態様を選択して設定する操作態様設定手段と、

K 遊技の進行を不能な状態にすることで遊技の進行を一時停止させるフリーズを制御するフリーズ制御手段と、を備え、

L 遊技状態移行制御手段は、
特別役に対応した図柄組合せが有効ライン上に停止表示されたことを条件として遊技状態を特別状態へ移行させ、

M 当選フラグ制御手段は、
特別役に対応する当選フラグについては、特別役に対応した図柄組合せが有効ライン上に停止表示されるまで内部当選状態が持ち越されるように設定状態を制御し、

N 特別状態においては、役抽選の結果又は役抽選の実行の有無に関わらず当該遊技の規定数において有効な全ての小役の当選フラグを内部当選状態に設定し、

O 特別状態において、
操作態様設定手段により設定された操作態様でストップスイッチが操作された場合に、フリーズ制御手段はフリーズを実行するように形成されていると共に、所定の特典を遊技者に付与し得るように形成されていることを特徴とする遊技機。」

2 刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-51274号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【0008】
手段1.複数種の絵柄が周方向に付された複数の無端状ベルト(リール42L,42M,42R)と、
前記各無端状ベルトについて各絵柄のうち一部の絵柄を視認可能とする表示窓(表示窓31L,31M,31R)と、
前記各無端状ベルトの回転を開始させるべく操作される始動操作手段(スタートレバー71)と、
前記始動操作手段の操作を条件の1つとして役の抽選を行う抽選手段(主制御装置131の抽選処理機能)と、
前記各無端状ベルト毎に設けられ、該各無端状ベルトを回転させる駆動手段(ステッピングモータ61)と、
前記各無端状ベルトの回転を個別に停止させるべく操作される複数の停止操作手段(ストップスイッチ72?74)と、
前記始動操作手段の操作に基づいて前記各無端状ベルトの回転を開始させ、前記各停止操作手段の操作に基づいて対応する前記無端状ベルトの回転を停止させるように、且つ前記役の抽選に当選した際には、役と対応する絵柄又は絵柄の組合せが前記表示窓から視認できる有効位置(有効ライン)に停止し得るよう前記各駆動手段を駆動制御する駆動制御手段(主制御装置131のリール制御処理機能)と、
前記各無端状ベルトが停止した際、所定絵柄(小役図柄)又は所定絵柄の組合せが前記有効位置に停止したことを条件として遊技媒体を払い出す払出手段(ホッパ装置91)と、
前記有効位置に第1特定絵柄(BB図柄)の組合せが停止したことを条件として、所定の終了条件が成立するまで、遊技状態を遊技者に有利な第1特別遊技状態(BBゲーム)に移行させる第1特別遊技状態移行手段(主制御装置131)と、
所定の開始条件が成立したことを条件として、所定の終了条件が成立するまで、遊技状態を遊技者に有利な第2特別遊技状態(CTゲーム)に移行させる第2特別遊技状態移行手段(主制御装置131)とを備え、
前記駆動制御手段は、遊技状態が前記第2特別遊技状態である場合に、前記抽選手段の抽選結果が非当選であっても前記所定絵柄又は所定絵柄の組合せが前記有効位置に停止し得るよう前記各駆動手段を駆動制御する遊技機において、
遊技状態が前記第2特別遊技状態である場合、前記抽選手段の抽選結果が少なくとも前記第1特定絵柄の組合せと対応する役の当選とならないように抽選結果を限定する抽選結果限定手段(主制御装置131のCTゲーム時抽選処理機能)と、
遊技状態が前記第2特別遊技状態である場合に、前記複数の停止操作手段の操作順序を設定する操作順序設定手段(主制御装置131の押し順設定処理機能)と、
前記第2特別遊技状態に移行してから前記払出手段により払い出された遊技媒体数が予め定めた数(253枚)に達したか否かを判断し、予め定めた数に達した場合には当該第2特別遊技状態の前記終了条件成立と判定する終了判定手段(主制御装置131のCTゲーム時メダル払出処理機能)とを備え、
前記駆動制御手段を、前記操作順序設定手段の設定した操作順序と実際に操作された操作順序とが一致した場合、前記所定絵柄又は所定絵柄の組合せが前記有効位置に停止するように、且つ前記操作順序設定手段の設定した操作順序と実際に操作された操作順序とが一致しなかった場合、前記所定絵柄又は所定絵柄の組合せが前記有効位置に停止しないように前記各駆動手段を駆動制御するよう構成したことを特徴とする遊技機。」

(イ)「【0010】
手段2.上記手段1において、前記有効位置に第2特定絵柄(CT図柄)の組合せが停止したか否かを判断し、当該第2特定絵柄の組合せが前記有効位置に停止した場合には前記第2特別遊技状態の前記開始条件成立と判定する開始判定手段(主制御装置131のCT状態移行処理機能)を備えることを特徴とする遊技機。」

(ウ)「【0034】
手段14.上記手段1乃至手段13のいずれかにおいて、前記第1特別遊技状態開始からの前記払出手段により払い出された遊技媒体数が予め定めた数(450枚)に達したか否かを判断し、予め定めた数に達した場合には当該第1特別遊技状態の前記終了条件成立と判定する第1特別遊技状態終了判定手段(主制御装置131)を備えるとともに、
前記第1特別遊技状態中においては第4特定絵柄(JAC図柄)の組合せが前記有効位置に停止したことを必要条件として、前記有効位置に第5特定絵柄(JAC図柄)が停止する入賞が発生し得るボーナス状態(JACゲーム)が発生するものとし、そのボーナス状態が所定ゲーム数実行されるか又はその間に第5特定絵柄が停止する入賞が所定数行われるまで継続するものとして構成され、当該所定数を1回としたことを特徴とする遊技機。」

(エ)「【0054】
図柄としては、ビッグボーナス(以下「BB」ともいう)ゲームに移行するための第1特別図柄としての「7」図柄(例えば、左ベルト第19番目)がある。また、チャレンジタイム(以下「CT」ともいう)ゲームに移行するための第2特別図柄としての「青年」図柄(例えば、左ベルト15番目)がある。さらに、レギュラーボーナス(以下「RB」ともいう)ゲームに移行するための第3特別図柄としての「BAR」図柄(例えば、左ベルト第11番目)がある。また、メダルの払出が行われる小役図柄としての「ベル」図柄(例えば、左ベルト第21番目)、「スイカ」図柄(例えば、左ベルト第18番目)、「チェリー」図柄(例えば、左ベルト第10番目)と、再遊技を可能とする再遊技図柄としての「リプレイ」図柄(例えば、左ベルト第8番目)がある。そして、図7に示すように、各リール42L,42M,42Rに巻かれるベルトにおいて、各種図柄の数や配置順序は全く異なっている。」

(オ)「【0096】
続いて、主制御装置131内のCPU151により実行される各制御処理を図9?図18,図21のフローチャートを参照しながら説明する。かかるCPU151の処理としては大別して、電源投入に伴い起動されるメイン処理と、定期的に(本実施の形態では1.49msec周期で)起動されるタイマ割込み処理と、NMI端子(ノンマスカブル端子)への停電信号の入力により起動されるNMI割込み処理とがあり、説明の便宜上、はじめにNMI割込み処理とタイマ割込み処理とを説明し、その後メイン処理を説明する。」

(カ)「【0118】
先ずステップS501では、メダルがベットされているか否かを判定する。メダルがベットされているときには、続いてステップS502にてスタートレバー71が操作されたか否かを判定する。ステップS501,ステップS502が共にYESの場合には、ステップS503の抽選処理、ステップS504のリール制御処理、ステップS505のメダル払出処理、ステップS506のボーナスゲーム処理を順に実行し、ステップS501に戻る。一方、ステップS501にてメダルがベットされていない、またはステップS502にてスタートレバー71が操作されていない場合には、ステップS501に戻る。」

(キ)「【0119】
次に、ステップS503の抽選処理について、図14のフローチャートに基づき説明する。
【0120】
ステップS601では、CT設定フラグが1か否か、すなわちスロットマシン10の現在の遊技状態が後述するCT状態であるか否かを判定する。CT設定フラグはCTゲームに移行する際にセットされるフラグであり、上述したように「青年」図柄が有効ライン上に揃って停止するとCTゲームに移行する。従って、遊技の開始段階等におけるCT設定フラグは0であり、かかる場合にはステップS602に進む。ステップS602では、スロットマシン10の現在の設定状態や遊技状態、ベットされたメダルの枚数等に基づき、当否決定用の乱数テーブルを選択する。ここで、スロットマシン10の設定状態は図示しない設定キーを用いてセットされた「設定1」?「設定6」のいずれかであり、「設定1」のときに役の当選確率が最も低い乱数テーブルが選択され、「設定6」のときに役の当選確率が最も高い乱数テーブルが選択される。また、ベットされたメダルの枚数は1?3枚のいずれかであり、ベット枚数が多いほど役の当選確率が高くなるような乱数テーブルが選択される。例えば3枚ベットされたときの役の当選確率は、1枚ベットされたときの役の当選確率と比して3倍よりも高い確率となっている。さらに、遊技状態が後述するBB状態であればBBゲーム専用の乱数テーブルが選択され、後述するRB状態であればRBゲーム専用の乱数テーブルが選択される。
【0121】
ステップS603では、このようにして選択された乱数テーブルに、スタートレバー71が操作されたときに乱数カウンタよりラッチした乱数を照らして役の抽選を行う。そしてステップS604にていずれかの役に当選したか否かを判定し、いずれの役にも当選していない場合にはそのまま本処理を終了する。いずれかの役に当選した場合にはステップS605に進み、その役に応じた当選フラグをセットすると共に図柄を揃えるべき有効ラインを決定する。続いてステップS606ではリール停止制御用のスベリテーブルを決定すると共にこれをRAM153のスベリテーブル格納エリアに格納し、本処理を終了する。ここで、スベリテーブルとは、ストップスイッチ72?74が押されたタイミングにおける所定の有効ライン上の図柄と、その有効ライン上に停止させるべき図柄とが異なる場合に、その停止させるべき図柄を所定の有効ライン上で止まるようにリールをどれだけ滑らせるかを定めたテーブルである。」

(ク)「【0130】
次に、ステップS505のメダル払出処理について、図16のフローチャートに基づき説明する。
【0131】
メダル払出処理では、先ずステップS801にて払出数カウンタがカウントした払出数と、払出予定数格納エリアに格納された払出予定数とが一致しているか否かを判定する。払出数と払出予定数とが一致していないときには、ステップS802にて遊技がクレジットモードにて行われているか否かを判定する。クレジットモードであるときには、ステップS803においてクレジットカウンタのカウント値が上限(貯留されているメダル数が50枚)に達しているか否かを判定する。上限に達していないときには、ステップS804にてクレジットカウンタのカウント値及び払出数をそれぞれ1インクリメントする。これにより残数表示部35及び獲得枚数表示部37の枚数がそれぞれ1インクリメントされる。
【0132】
一方、遊技がダイレクトモードにて行われているとき、またはクレジットカウンタのカウント値が上限に達しているときには、ステップS805にてメダル払出用回転板を駆動してメダルをホッパ装置91からメダル排出口17を介してメダル受け皿18へ払い出す。このとき、ステップS806ではホッパ装置91に取り付けられた払出検出センサ91aのメダル検出信号に応じて払出数を1インクリメントする。これにより獲得枚数表示部37の枚数が1インクリメントされる。そして、ステップS804またはステップS806で払出数を1インクリメントしたあと、再びステップS801に戻る。ステップS801で払出数と払出予定数とが一致したときには、ステップS807にてホッパ装置91のメダル払出用回転板を停止させる。続くステップS808では、CT設定フラグが1か否か、すなわちスロットマシン10の現在の遊技状態が後述するCT状態であるか否かを判定する。CT設定フラグが1でない場合にはステップS809にて払出終了処理を行い、本処理を終了する。払出終了処理では、払出予定数格納エリアや払出数カウンタの値を0にリセットする。なお、獲得枚数表示部37の値は、次ゲームを開始すべくメダルがベットされたときにリセットされる。」

(ケ)「【0135】
ボーナスゲーム処理の説明に先立ち、ボーナスゲームについて説明する。RBゲームは、12回のJACゲームで構成されている。JACゲームは、1枚ベットのみ許されるゲームであり、JAC図柄(ここではリプレイ図柄で代用)が有効ライン上に揃う確率つまりJAC図柄成立の確率が非常に高いゲームである。JACゲームでJAC図柄が成立すると最大枚数(ここでは15枚)のメダルが払い出される。そして、JAC図柄が8回成立すると、JACゲームが12回に達する前であってもRBゲームが終了する。一方、BBゲームは、30回の小役ゲームと3回のJACインとから構成されている。小役ゲームとは高確率で小役が当選する(有効ライン上に「ベル」図柄などが揃う)ゲームであり、JACインとは12回のJACゲームに移行することを意味し、小役ゲーム中にJAC図柄が有効ライン上に揃うとJACインが成立する。JACゲームはRBゲームの場合と同様である。すなわち、JAC図柄が8回成立すると、JACゲームが12回に達する前であってもJACゲームが終了し、小役ゲームに復帰する。また、3回目のJACインによるJACゲームが終了すると小役ゲームが30回に達する前であってもBBゲームは終了し、30回の小役ゲームが終了するとJACインが3回に達する前であってもBBゲームは終了する。」

(コ)「【0140】
ちなみに、役の抽選で小役またはリプレイに当選して小役当選フラグまたはリプレイ当選フラグがセットされたときであって、そのゲームで小役図柄またはリプレイ図柄を有効ライン上に揃えられなかった場合、これらの当選フラグはリセットされる。一方、役の抽選でRB、BB又はCTのいずれかに当選してRB当選フラグ、BB当選フラグ又はCT当選フラグのいずれかがセットされたときには、そのゲームでRB図柄、BB図柄又はCT図柄を有効ライン上に揃えられなかったとしてもこの当選フラグは次回に持ち越される。すなわち、役の抽選でRB、BB又はCTのいずれかの役に当選した場合、これらの当選フラグは対応する図柄が有効ライン上に揃えられるまで有効とされる。なお、RB、BB又はCTのいずれかの当選フラグを持ち越した次ゲームにおける抽選処理では、小役又はリプレイの当選可否に関する抽選は行われるが、RB、BB及びCTの当選可否に関する抽選は行われない。また、RB、BB又はCTのいずれかの当選フラグを持ち越した状態で小役又はリプレイに当選した場合には、小役又はリプレイが優先して揃えられるようにスベリテーブルが格納される。」

(サ)「【0144】
次に、有効ライン上にCT図柄(例えば「青年」図柄)が揃い、遊技状態がCT状態に移行した際に行われる一連の処理について、図14?図16,図18,図21,図22のフローチャートに基づいて説明する。これに先立ち、先ずCTゲームについて説明する。
【0145】
CTゲームとは、有効ライン上に所定の役(例えば「ベル」図柄)が成立していれば、抽選処理の抽選結果に関わらずメダル払出が行われるゲームである。従って、例えば「ベル」図柄と対応する当選フラグがセットされていなくとも、有効ライン上に「ベル」図柄が揃って停止すれば15枚のメダル払出が行われる。そして、メダルの総払出枚数が所定枚数(本実施形態では253枚)を超えるか、抽選処理にて所定図柄(本実施形態では「RB」図柄)と対応する役に当選するとCTゲームが終了する。また、CTゲーム中には、通常ゲームやBBゲーム等の非CTゲーム中と異なるリール制御が行われる。具体的には、非CTゲーム中であれば、ストップスイッチ72?74が押下操作されたタイミングから最大で約4図柄分滑らせるリール制御が各リール42L,42M,42Rについて行われる。一方、CTゲーム中には、左リール42Lと中リール42Mについては上記リール制御が行われるが、右リール42Rにかかるリール制御が行われることはなく、ストップスイッチ74が押下操作されたタイミングから最大で約2図柄分だけ滑らせるリール制御が行われる。」

(シ)「【0147】
さて、遊技状態が非CT状態(より詳しくは通常状態)であり、且つ抽選処理にてCT図柄(例えば「青年」図柄)と対応する役に当選すると、CT当選フラグがセットされ、図18に示す状態移行図柄判定処理のステップS1007にて肯定判定されることとなる。この場合、ステップS1008?S1012に示すCT状態移行処理を行う。ステップS1008では、今回有効ライン上にCT図柄(例えば「青年」図柄)が揃ったか否かを判定し、CT図柄が揃っていないときにはそのまま本処理を終了する。一方、今回有効ライン上にCT図柄が揃ったときには、ステップS1009においてCT当選フラグをリセットすると共にCT設定フラグをセットし、CTゲーム中に払出されたメダルの総払出枚数をカウントする総払出枚数カウンタの値に0をセットする。続くステップS1010では、CTゲームとしてノーマルCTゲームを行うかスーパーCTゲームを行うかのCTゲーム抽選を行う。ちなみに、各CTゲームが行われる確率すなわち各CTゲームの当選確率は2分の1である。ステップS1011ではスーパーCTゲームに当選したか否かを確認し、当選した際にはステップS1012にてCTゲームフラグをセットし、本処理を終了する。以上のCT状態移行処理が行われることにより、次ゲーム以降の遊技状態がCT状態に移行する。」

(ス)「【0149】
先ず、ステップS607では、スロットマシン10の現在の設定状態やベットされたメダルの枚数等に基づき、当否決定用の乱数テーブルを選択する。ステップS608では、このようにして選択された乱数テーブルに、スタートレバー71が操作されたときに乱数カウンタよりラッチした乱数を照らして役の抽選を行う。但し、CTゲーム中にあっては、通常ゲーム中と異なり、小役やBBの抽選は行わず、再遊技及びRBについてのみ抽選を行う。また、再遊技及びRBに当選する当選確率は、通常ゲーム中に行われる抽選時の当選確率と同一のものとなっている。そしてステップS609にていずれかの役に当選したか否かを判定し、いずれの役にも当選していない場合にはステップS610に進む。ステップS610では、「ベル」図柄を有効ライン上に揃えるために操作されるべきストップスイッチ72?74の押し順を設定する押し順設定処理を行う。押し順設定処理では、3つあるストップスイッチ72?74のうち、最初に押下操作すべきストップスイッチを選択する。続くステップS611ではこの選択結果を押し順フラグ格納エリアにセットする。例えば、中リール42Mを停止させるべく操作されるストップスイッチ73が押し順設定処理にて選択された場合、このストップスイッチ73の押し順フラグ格納エリアに1がセットされ、他のストップスイッチ72,74の押し順フラグ格納エリアには0がセットされる。ステップS612ではリール停止制御用のスベリテーブルを決定すると共にこれをRAM153のスベリテーブル格納エリアに格納し、本処理を終了する。」

上記(ア)?(ス)の記載事項から、以下の事項が導かれる。

(a)上記(ア)【0008】には、「複数種の絵柄が周方向に付された複数の無端状ベルト(リール42L,42M,42R)」と記載されている。

(b)上記(ア)【0008】には、「各無端状ベルトの回転を開始させるべく操作される始動操作手段(スタートレバー71)」と記載されている。

(c)上記(ア)【0008】には、「各無端状ベルトの回転を個別に停止させるべく操作される複数の停止操作手段(ストップスイッチ72?74)」と記載されている。

(d)上記(ア)【0008】には、「役の抽選を行う抽選手段(主制御装置131の抽選処理機能)」、「役の抽選に当選した際には、役と対応する絵柄又は絵柄の組合せが・・・有効位置(有効ライン)に停止し得る」ことが記載されている。
また、同(ア)【0008】には、「有効位置」に「所定絵柄(小役図柄)又は所定絵柄の組合せ」や「第1特定絵柄(BB図柄)の組合せ」が「停止」し得ることが、上記(イ)【0010】には、「有効位置」に「第2特定図柄(CT図柄)の組合せが停止」し得ることが、上記(ウ)【0034】には、「有効位置に第5特定絵柄(JAC図柄)が停止する入賞が発生し得るボーナス状態(JACゲーム)が発生する」ことが、上記(ケ)【0135】には、「JACゲームは、・・・JAC図柄(ここではリプレイ図柄で代用)が有効ライン上に揃う確率つまりJAC図柄成立の確率が非常に高いゲームである」ことが、それぞれ、記載されている。
さらに、上記(エ)【0054】には、「図柄としては、・・・小役図柄としての「ベル」図柄・・・、「スイカ」図柄・・・、「チェリー」図柄・・・と、・・・がある」と記載されている。
そうすると、刊行物1には、当選した際には、第1特定絵柄の組合せ、第2特定図柄の組合せ、第5特定絵柄(JAC図柄)、と、「ベル」図柄、「スイカ」図柄、「チェリー」図柄の小役図柄の組合せが有効位置に停止し得る、役の抽選を行う抽選処理機能を有する主制御装置131が記載されているといえる。

(e)上記(オ)【0096】には、「上記主制御装置131内のCPU151により実行される各制御処理を図9?図18,図21のフローチャートを参照しながら説明する」と、(キ)【0119】、【0121】には、「抽選処理について、図14のフローチャートに基づき説明する。・・・役の抽選を行」い、「いずれかの役に当選したか否かを判定し、」「いずれかの役に当選した場合には・・・、その役に応じた当選フラグをセットする」と記載されている。
そうすると、刊行物1には、役の抽選を行い、いずれかの役に当選した場合には、その役に応じた当選フラグをセットする主制御装置131が記載されているといえる。

(f)上記(ア)【0008】には、「前記有効位置に第1特定絵柄(BB図柄)の組合せが停止したことを条件として、所定の終了条件が成立するまで、遊技状態を遊技者に有利な第1特別遊技状態(BBゲーム)に移行させる第1特別遊技状態移行手段(主制御装置131)と、所定の開始条件が成立したことを条件として、所定の終了条件が成立するまで、遊技状態を遊技者に有利な第2特別遊技状態(CTゲーム)に移行させる第2特別遊技状態移行手段(主制御装置131)とを備え」ることが記載されている。
そうすると、刊行物1には、所定の開始条件が成立したことを条件として、所定の終了条件が成立するまで、遊技状態を遊技者に有利な第1特別遊技状態や、第2特別遊技状態に移行させる主制御装置131が記載されているといえる。

(g)上記(キ)【0120】には、「CT設定フラグが1か否か、すなわちスロットマシン10の現在の遊技状態が後述するCT状態であるか否かを判定する。CT設定フラグはCTゲームに移行する際にセットされるフラグであり、・・・遊技の開始段階等におけるCT設定フラグは0であ」る場合には、「ベットされたメダルの枚数は1?3枚のいずれかであ」ることが、さらに同(キ)【0120】には、「遊技状態が後述するBB状態であればBBゲーム専用の乱数テーブルが選択され、後述するRB状態であればRBゲーム専用の乱数テーブルが選択される」ことが、上記(ケ)【0135】には、「RBゲームは、12回のJACゲームで構成されている。JACゲームは、1枚ベットのみ許されるゲームであ」ること、「BBゲームは、30回の小役ゲームと3回のJACインとから構成されている。・・・JACインとは12回のJACゲームに移行することを意味」することが、それぞれ、記載されている。
また、上記(ア)【0008】には、「第1特別遊技状態(BBゲーム)」、「第2特別遊技状態(CTゲーム)」と記載されている。
そして、同(ア)【0008】には、「前記各無端状ベルト毎に設けられ、該各無端状ベルトを回転させる駆動手段(ステッピングモータ61)」、「前記始動操作手段の操作に基づいて前記各無端状ベルトの回転を開始させ・・・るように、・・・各駆動手段を駆動制御する駆動制御手段(主制御装置131のリール制御処理機能)」と、上記(カ)【0118】には、「先ずステップS501では、メダルがベットされているか否かを判定する。メダルがベットされているときには、続いてステップS502にてスタートレバー71が操作されたか否かを判定する。ステップS501,ステップS502が共にYESの場合には、ステップS503の抽選処理、ステップS504のリール制御処理、ステップS505のメダル払出処理、ステップS506のボーナスゲーム処理を順に実行し、ステップS501に戻る」と、それぞれ、記載されている。
上記(b)より、「スタートレバー71」は「始動操作手段」であることを踏まえると、刊行物1には、遊技の開始段階等においては、ベットされるメダルの枚数は1?3枚のいずれかであり、第1特別遊技状態を構成するJACゲームでは、1枚ベットのみ許されるものであり、メダルがベットされると、始動操作手段(スタートレバー71)の操作に基づいて前記各無端状ベルトの回転を開始させるように各駆動手段を駆動制御する主制御装置131が記載されているといえる。

(h)上記(ア)【0008】には、「前記各無端状ベルト毎に設けられ、該各無端状ベルトを回転させる駆動手段(ステッピングモータ61)」、「前記各停止操作手段の操作に基づいて対応する前記無端状ベルトの回転を停止させるように、且つ前記役の抽選に当選した際には、役と対応する絵柄又は絵柄の組合せが・・・有効位置(有効ライン)に停止し得るよう前記各駆動手段を駆動制御する駆動制御手段(主制御装置131のリール制御処理機能)」と記載されている。
そうすると、刊行物1には、役の抽選に当選した際には、各停止操作手段の操作に基づいて、役と対応する絵柄又は絵柄の組合せが有効位置に停止し得るように各無端状ベルトの回転を停止させるように各駆動手段を駆動制御する主制御装置131が記載されているといえる。

(i)上記(ア)【0008】には、「前記各無端状ベルトが停止した際、所定絵柄(小役図柄)又は所定絵柄の組合せが前記有効位置に停止したことを条件として遊技媒体を払い出す払出手段(ホッパ装置91)」と記載されている。
また、上記(オ)【0096】には、「主制御装置131内のCPU151により実行される各制御処理を図9?図18,図21のフローチャートを参照しながら説明する」と、上記(ク)【0130】?【0132】には、「次に、ステップS505のメダル払出処理について、図16のフローチャートに基づき説明する。メダル払出処理では、・・・払出数カウンタがカウントした払出数と、払出予定数格納エリアに格納された払出予定数とが一致しているか否かを判定する。払出数と払出予定数とが一致していないときには、・・・メダルをホッパ装置91からメダル排出口17を介してメダル受け皿18へ払い出す。・・・払出数と払出予定数とが一致したときには、・・・ホッパ装置91のメダル払出用回転板を停止させる」と、それぞれ、記載されている。
そして、同(ア)【0008】の「前記第2特別遊技状態に移行してから前記払出手段により払い出された遊技媒体数が予め定めた数(253枚)に達したか否かを判断し、予め定めた数に達した場合には当該第2特別遊技状態の前記終了条件成立と判定する終了判定手段(主制御装置131のCTゲーム時メダル払出処理機能)」の記載から、「遊技媒体」は「メダル」であるといえる。
そうすると、刊行物1には、各無端状ベルトが停止した際、所定絵柄(小役図柄)又は所定絵柄の組合せが有効位置に停止したことを条件として、払出数カウンタがカウントした払出数と、払出予定数格納エリアに格納された払出予定数とが一致しているか否かを判定し、一致してないときには、一致するまでホッパ装置91からメダルを払い出す、メダル払出処理を実行する主制御装置131が記載されているといえる。

(j)上記(ア)【0008】には、「遊技状態が前記第2特別遊技状態である場合に、前記複数の停止操作手段の操作順序を設定する操作順序設定手段(主制御装置131の押し順設定処理機能)」と、上記(ス)【0149】には、「押し順設定処理では、3つあるストップスイッチ72?74のうち、最初に押下操作すべきストップスイッチを選択する」と、それぞれ、記載されている。
そうすると、刊行物1には、遊技状態が第2特別遊技状態である場合に、3つあるストップスイッチ72?74のうち、最初に押下操作すべきストップスイッチを選択する押し順設定処理を実行する主制御装置131が記載されているといえる。

(l)上記(ア)【0008】には、「所定の開始条件が成立したことを条件として、所定の終了条件が成立するまで、遊技状態を遊技者に有利な第2特別遊技状態(CTゲーム)に移行させる第2特別遊技状態移行手段(主制御装置131)」と、上記(イ)【0010】には、「前記有効位置に第2特定絵柄(CT図柄)の組合せが停止したか否かを判断し、当該第2特定絵柄の組合せが前記有効位置に停止した場合には前記第2特別遊技状態の前記開始条件成立と判定する開始判定手段(主制御装置131のCT状態移行処理機能)を備える」と、上記(サ)【0144】には、「有効ライン上にCT図柄(例えば「青年」図柄)が揃い、遊技状態がCT状態に移行した」と、それぞれ、記載されている。
ここで、「第2特別遊技状態の」「開始条件成立と判定する開始判定手段」が「主制御装置131のCT状態移行処理機能」であることから、「CT状態」は「第2特別遊技状態」といえる。
また、同(ア)【0008】には、「有効位置(有効ライン)」と記載されている。
そうすると、刊行物1には、主制御装置131は、有効位置上に第2特定絵柄の組合せが停止した場合は、第2特別遊技状態の開始条件成立と判定し、遊技状態を第2特別遊技状態に移行させることが記載されているといえる。

(m)上記(コ)【0140】には、「役の抽選で・・・CT・・・に当選して・・・CT当選フラグ・・・がセットされたときには、そのゲームで・・・CT図柄を有効ライン上に揃えられなかったとしてもこの当選フラグは次回に持ち越される。すなわち、役の抽選で・・・CT・・・の役に当選した場合、・・・当選フラグは対応する図柄が有効ライン上に揃えられるまで有効とされる」と記載されている。
そして、上記(オ)【0096】には、「上記主制御装置131内のCPU151により実行される各制御処理を図9?図18,図21のフローチャートを参照しながら説明する」と、上記(シ)【0147】には、「抽選処理にてCT図柄・・・と対応する役に当選すると、CT当選フラグがセットされ、図18に示す状態移行図柄判定処理の・・・ステップS1008では、今回有効ライン上にCT図柄・・・が揃ったか否かを判定し、CT図柄が揃っていないときにはそのまま本処理を終了する。一方、今回有効ライン上にCT図柄が揃ったときには、ステップS1009においてCT当選フラグをリセットする」と、それぞれ、記載されている。
また、上記(ア)【0008】には、「有効位置(有効ライン)」と、上記(イ)【0010】には、「第2特定絵柄(CT図柄)」と、それぞれ、記載されている。
そうすると、刊行物1には、主制御装置131は、抽選処理にて第2特定絵柄と対応する役に当選してCT当選フラグがセットされたときには、そのゲームで第2特定絵柄を有効位置上に揃えられなかったとしてもこの当選フラグは次回に持ち越し、有効位置上に第2特定絵柄が揃ったときには、CT当選フラグをリセットすることが記載されているといえる。

(n)上記(ア)【0008】には、「前記駆動制御手段は、遊技状態が前記第2特別遊技状態である場合に、前記抽選手段の抽選結果が非当選であっても前記所定絵柄又は所定絵柄の組合せが前記有効位置に停止し得るよう前記各駆動手段を駆動制御する」と記載されている。
上記(h)での検討を踏まえると、刊行物1には、主制御装置131は、第2特別遊技状態である場合は、抽選手段の抽選結果が非当選であっても所定絵柄又は所定絵柄の組合せが有効位置に停止し得るよう各駆動手段を駆動制御することが記載されているといえる。

(o)上記(ア)【0008】には、「遊技状態が前記第2特別遊技状態である場合に、前記複数の停止操作手段の操作順序を設定する操作順序設定手段(主制御装置131の押し順設定処理機能)」、「前記駆動制御手段を、前記操作順序設定手段の設定した操作順序と実際に操作された操作順序とが一致した場合、前記所定絵柄又は所定絵柄の組合せが前記有効位置に停止するように、・・・前記各駆動手段を駆動制御するように構成した・・・遊技機」が、上記(サ)【0145】には、「CTゲームとは、有効ライン上に所定の役(例えば「ベル」図柄)が成立していれば、・・・メダル払出が行われるゲームである」ことが、それぞれ、記載されている。
また、同(ア)【0008】には、「有効位置(有効ライン)」、「第2特別遊技状態(CTゲーム)」と記載されている。
そうすると、刊行物1には、第2特別遊技状態において、操作順序設定手段の設定した操作順序と実際に操作された操作順序とが一致した場合、所定絵柄又は所定絵柄の組合せが有効位置に停止するように各駆動手段を駆動制御するように構成し、有効位置上に所定の役(例えば「ベル」図柄)が成立していれば、メダル払出を行う遊技機が記載されているといえる。

以上(ア)?(ス)の記載事項及び上記(a)?(o)の認定事項を総合すれば、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(a?oは発明の構成を分説するため当審で付した。)。

「a 複数種の絵柄が周方向に付された複数の無端状ベルト(リール42L,42M,42R)と、

b 各無端状ベルトの回転を開始させるべく操作される始動操作手段(スタートレバー71)と、

c 各無端状ベルトの回転を個別に停止させるべく操作される複数の停止操作手段(ストップスイッチ72?74)と、

d 当選した際には、第1特定絵柄の組合せ、第2特定図柄の組合せ、第5特定絵柄(JAC図柄)、と、「ベル」図柄、「スイカ」図柄、「チェリー」図柄の小役図柄の組合せが有効位置に停止し得る、役の抽選を行う抽選処理機能を有する主制御装置131と、

e 役の抽選を行い、いずれかの役に当選した場合には、その役に応じた当選フラグをセットする主制御装置131と、

f 所定の開始条件が成立したことを条件として、所定の終了条件が成立するまで、遊技状態を遊技者に有利な第1特別遊技状態や、第2特別遊技状態に移行させる主制御装置131と、

g 遊技の開始段階等においては、ベットされるメダルの枚数は1?3枚のいずれかであり、第1特別遊技状態を構成するJACゲームでは、1枚ベットのみ許されるものであり、メダルがベットされると、始動操作手段(スタートレバー71)の操作に基づいて前記各無端状ベルトの回転を開始させるように各駆動手段を駆動制御する主制御装置131と、

h 役の抽選に当選した際には、各停止操作手段の操作に基づいて、役と対応する絵柄又は絵柄の組合せが有効位置に停止し得るように各無端状ベルトの回転を停止させるように各駆動手段を駆動制御する主制御装置131と、

i 各無端状ベルトが停止した際、所定絵柄(小役図柄)又は所定絵柄の組合せが有効位置に停止したことを条件として、払出数カウンタがカウントした払出数と、払出予定数格納エリアに格納された払出予定数とが一致しているか否かを判定し、一致してないときには、一致するまでホッパ装置91からメダルを払い出す、メダル払出処理を実行する主制御装置131と、

j 遊技状態が第2特別遊技状態である場合に、3つあるストップスイッチ72?74のうち、最初に押下操作すべきストップスイッチを選択する押し順設定処理を実行する主制御装置131と、を備え、

l 主制御装置131は、有効位置上に第2特定絵柄の組合せが停止した場合は、第2特別遊技状態の開始条件成立と判定し、遊技状態を第2特別遊技状態に移行させ、

m 主制御装置131は、抽選処理にて第2特定絵柄と対応する役に当選してCT当選フラグがセットされたときには、そのゲームで第2特定絵柄を有効位置上に揃えられなかったとしてもこの当選フラグは次回に持ち越し、有効位置上に第2特定絵柄が揃ったときには、CT当選フラグをリセットし、

n 第2特別遊技状態である場合は、抽選手段の抽選結果が非当選であっても所定絵柄又は所定絵柄の組合せが有効位置に停止し得るよう各駆動手段を駆動制御し、

o 第2特別遊技状態において、操作順序設定手段の設定した操作順序と実際に操作された操作順序とが一致した場合、所定絵柄又は所定絵柄の組合せが有効位置に停止するように各駆動手段を駆動制御するように構成し、有効位置上に所定の役(例えば「ベル」図柄)が成立していれば、メダル払出を行う遊技機。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-233813号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(セ)「【請求項1】
メダルをベットするとスタートレバーの操作が有効化され、有効化されたスタートレバーを押下すると複数のリールが回転し、ストップボタンが押下されたときに入力されるストップ信号に応答して前記リールを停止させるとともに、前記リールを複数のストップボタンによって個別に停止させ、特定順序に従って前記ストップボタンを押下すると特定の図柄組み合わせが表示されて遊技上の特典が付与されるスロットマシンにおいて、
前記特定順序に従って前記ストップボタンが押下されたか否かを前記ストップ信号の入力に基づいて識別し、前記特定順序に従って前記ストップボタンが押下されたことを識別した場合に、当該ストップボタンの操作以降の前記ストップボタンの操作又は次遊技の開始に先立って行われるメダルのベット又はその次遊技の前記スタートレバーの操作の少なくともいずれか1つを一定時間無効化するフリーズ演出実行手段を備えたことを特徴とするスロットマシン。」

(ソ)「【0006】
しかしながら上記のARTモードの遊技のように、特定順序に従ってストップボタンを押下するとメダルが払い出されるなど遊技上の特典が得られるパチスロ機の中には、ARTモードのように特定順序が報知されず、遊技者が勘に頼ってストップボタンを押下した結果、その順序が特定順序に従っていれば特典が付与されるものもある。このようなパチスロ機では、ストップボタンの押下順序が特定順序であればそのときに表示された図柄組み合わせによって押下順序が特定順序と一致しているか否かを識別できるが、そのような図柄組み合わせの知識に乏しい遊技者には、特典が付与されるまでは一致しているか否かを識別できない。このため、ストップボタンの押下順序を特典付与に結びつけることによって遊技への興趣を高める独特の遊技の態様にしながらも、図柄組み合わせの知識に乏しい遊技者にとっては、その操作が特典付与に結びつくか否かを識別できないため、遊技の興趣が低下していた。この問題を解決するために、特定順序に従ってストップボタンが押下された場合にランプの点灯や液晶ディスプレイでの表示などを用いてストップボタンの押下順序が特定順序と一致していることを報知することが考えられる。しかし、このような報知を行うと、遊技を行った結果で表示される図柄、いわゆる出目に楽しみを見出す遊技者の遊技への興趣を低下させていまい、また、出目を覚える意欲が低下するため、遊技が単調になってしまう。
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明は、ストップボタンの押下順序を特典付与に結びつけた場合でも、出目に対する楽しみを確保しつつ、図柄組み合わせへの知識の乏しい遊技者の遊技への興趣を高めることができるスロットマシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】」

(タ)「【0034】
図3に示すように、通常モードの遊技において、3枚のメダルをベットした後にスタートレバー18を押下すると第1?第3リール15a?15cが回転する。また、スタートレバー18が押下されると当選役抽選が行われる。当選役抽選で重複当選役A?Cのいずれかに当選した場合は、ストップ信号センサ66から入力されたストップ信号に基づいて、ストップボタンの押下順序が特定順序と一致した否かが判定される。そして、当選役抽選で重複当選役Aに当選した場合は、ストップボタン19b,19cの押下に先立ってストップボタン19aを最初に押下するとベル図柄が優先的に引き込まれ、ベルが入賞可能な状態となる。また、当選役抽選で重複当選役Bに当選した場合は、ストップボタン19a,19cの押下に先立ってストップボタン19bを最初に押下するとベル図柄が優先的に引き込まれ、ベルが入賞可能な状態となる。また、当選役抽選で重複当選役Cに当選した場合は、ストップボタン19a,19bの押下に先立ってストップボタン19cを最初に押下するとベル図柄が優先的に引き込まれ、ベルが入賞可能な状態となる。そして、入賞有効ライン16上にベル図柄が停止した場合はフリーズ演出が実行される。フリーズ演出が実行されると、残りのストップボタンの操作が無効化される。フリーズ演出の開始から一定時間が経過するとフリーズ演出が終了し、ストップボタンの操作が有効化されて回転中のリールを停止させることが可能になる。いずれの重複当選役が当選した場合でも、ストップボタンの最初の押下でベル図柄が入賞有効ライン16上に停止した場合は、残りのストップボタンを押下したときにベル図柄が入賞有効ライン16上に引き込まれる。ベルが入賞するとRTモードに移行する。他方、ストップボタンの最初の押下でプラムA?C図柄が入賞有効ライン16上に停止した場合は、フリーズ演出は行われず、残りのストップボタンを押下したときに同一のプラムA?C図柄が入賞有効ライン16上に引き込まれる。」

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。なお、見出しは(a)?(o)とし、本願発明、引用発明の分説に対応させている。

(a)引用発明の「複数種の絵柄が周方向に付された複数の無端状ベルト(リール42L,42M,42R)」は、本願発明の「周囲に複数の図柄が付された複数の回転リール」に相当する。

(b)引用発明の「各無端状ベルトの回転を開始させるべく操作される始動操作手段(スタートレバー71)」は、本願発明の「回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチ」に相当する。

(c)引用発明の「各無端状ベルトの回転を個別に停止させるべく操作される複数の停止操作手段(ストップスイッチ72?74)」は、各無端状ベルトに対応して設けられているといえるから、本願発明の「各回転リールに対応して設けられかつ回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチ」に相当する。

(d)引用発明の「当選した際には、第1特定絵柄の組合せ、第2特定図柄の組合せ、第5特定絵柄(JAC図柄)、と、「ベル」図柄、「スイカ」図柄、「チェリー」図柄の小役図柄の組合せが有効位置に停止し得る、役」は、本願発明の「所定の図柄組合せが対応付けられた役」に相当する。
また、引用発明の「第1特定絵柄の組合せ、第2特定図柄の組合せ、第5特定絵柄(JAC図柄)」、「「ベル」図柄、「スイカ」図柄、「チェリー」図柄の小役図柄の組合せ」は、それぞれ、本願発明の「特別役」、「複数の小役」に相当する。
よって、引用発明の「当選した際には、第1特定絵柄の組合せ、第2特定図柄の組合せ、第5特定絵柄(JAC図柄)、と、「ベル」図柄、「スイカ」図柄、「チェリー」図柄の小役図柄の組合せが有効位置に停止し得る、役の抽選を行う抽選処理機能を有する主制御装置131」は、本願発明の「所定の図柄組合せが対応付けられた役について当選か否かの役抽選を行うものであって、少なくとも特別役と複数の小役とを対象に役抽選を行う役抽選手段」の機能を有する。

(e)引用発明の「当選フラグをセットする」ことは、本願発明の「当選フラグを非内部当選状態から内部当選状態に設定する」ことに相当する。
よって、引用発明の「役の抽選を行い、いずれかの役に当選した場合には、その役に応じた当選フラグをセットする主制御装置131」は、本願発明の「役抽選により当選した役に対応する当選フラグを非内部当選状態から内部当選状態に設定する当選フラグ制御手段」の機能を有する。

(f)引用発明の「遊技者に有利な第1特別遊技状態や、第2特別遊技状態」は、本願発明の「遊技者にとって有利な特別状態」に相当する。
引用発明は、「所定の開始条件が成立したことを条件として、所定の終了条件が成立するまで、遊技状態を遊技者に有利な第1特別遊技状態や、第2特別遊技状態に移行」するものであるから、「遊技状態」が「有利な」状態に「移行」していない遊技状態を有することは明らかであり、そうすると、引用発明の「遊技状態」が「有利な」状態に「移行」していない遊技状態は、本願発明の「通常状態」に相当するといえる。
よって、引用発明の「所定の開始条件が成立したことを条件として、所定の終了条件が成立するまで、遊技状態を遊技者に有利な第1特別遊技状態や、第2特別遊技状態に移行させる主制御装置131」は、本願発明の「少なくとも通常状態と通常状態よりも遊技者にとって有利な特別状態とを含む複数の遊技状態の間で遊技状態を移行させる制御を行う遊技状態移行制御手段」の機能を有する。

(g)引用発明の「遊技の開始段階等」、「第1特別遊技状態」は、いずれも、本願発明の「遊技状態」に相当する。
また、引用発明の「メダル」は、本願発明の「遊技媒体」に相当することから、引用発明の「遊技の開始段階等においては、ベットされるメダルの枚数は1?3枚のいずれかであり、第1特別遊技状態を構成するJACゲームでは、1枚ベットのみ許されるものであ」ることは、本願発明の「遊技状態ごとに」「ベットされ」る「遊技媒体」の「規定数」が「予め定められ」ていることに相当するといえる。
また、上記(a)、(b)より、引用発明の「始動操作手段」、「無端状ベルト」は、本願発明の「スタートスイッチ」、「回転リール」に、それぞれ、相当する。
そして、引用発明の「回転リールの回転を開始させる」ことは、本願発明の「各無端状ベルトの回転を開始させるように各駆動手段を駆動制御する」ことに相当する。
よって、引用発明の「遊技の開始段階等においては、ベットされるメダルの枚数は1?3枚のいずれかであり、第1特別遊技状態を構成するJACゲームでは、1枚ベットのみ許されるものであり、メダルがベットされると、始動操作手段(スタートレバー71)の操作に基づいて前記各無端状ベルトの回転を開始させるように各駆動手段を駆動制御する主制御装置131」は、本願発明の「遊技状態ごとに予め定められた規定数の遊技媒体がベットされている状態でスタートスイッチが操作された場合に、回転リールの回転を開始させる回転制御手段」の機能を有する。

(h)引用発明の「役の抽選に当選した際」は、本願発明の「当選フラグの設定状態」が設定されているときであるといえる。
また、上記(a)、(c)より、引用発明の「停止操作手段」、「無端状ベルト」は、本願発明の「ストップスイッチ」、「回転リール」に、それぞれ、相当する。
そして、引用発明の「役と対応する絵柄又は絵柄の組合せが有効位置に停止し得る」ことは、本願発明の「回転リールの回転を適位置で停止させる」ことに相当する。
よって、引用発明の「役の抽選に当選した際には、各停止操作手段の操作に基づいて、役と対応する絵柄又は絵柄の組合せが有効位置に停止し得るように各無端状ベルトの回転を停止させるように各駆動手段を駆動制御する主制御装置131」は、本願発明の「少なくとも当選フラグの設定状態及びストップスイッチが操作された時点における対応する回転リールの回転位置に基づいて、回転リールの回転を適位置で停止させる停止制御手段」の機能を有する。

(i)引用発明の「各無端状ベルトが停止した際」は、本願発明の「複数の回転リールの回転が停止した状態」に相当する。
また、引用発明の「所定絵柄(小役図柄)又は所定絵柄の組合せが有効位置に停止したこと」は、本願発明の「小役に対応した図柄組合せが有効ライン上に停止表示された場合」に相当する。
そして、引用発明の「払出数カウンタがカウントした払出数と、払出予定数格納エリアに格納された払出予定数とが一致しているか否かを判定し、一致してないときには、一致するまでホッパ装置91からメダルを払い出す、メダル払出処理を実行する」ことは、本願発明の「払い出し装置による遊技媒体の払い出しを制御し、」「払い出し装置に遊技媒体を払い出させる制御を行う」ことに相当する。
よって、引用発明の「各無端状ベルトが停止した際、所定絵柄(小役図柄)又は所定絵柄の組合せが有効位置に停止したことを条件として、払出数カウンタがカウントした払出数と、払出予定数格納エリアに格納された払出予定数とが一致しているか否かを判定し、一致してないときには、一致するまでホッパ装置91からメダルを払い出す、メダル払出処理を実行する主制御装置131」は、本願発明の「払い出し装置による遊技媒体の払い出しを制御し、複数の回転リールの回転が停止した状態で小役に対応した図柄組合せが有効ライン上に停止表示された場合に払い出し装置に遊技媒体を払い出させる制御を行う払出制御手段」の機能を有する。

(j)引用発明の「3つあるストップスイッチ72?74のうち、最初に押下操作すべきストップスイッチを選択する押し順設定処理を実行する」ことは、本願発明の「予め定められた複数のストップスイッチの操作態様のうちからストップスイッチの操作態様を選択して設定する」ことに相当する。
引用発明では、「3つあるストップスイッチ72?74のうち、最初に押下操作すべきストップスイッチを選択する押し順設定処理を実行する」のは、「遊技状態が第2特別遊技状態である場合」であり、本願発明では、「ストップスイッチの操作態様を選択して設定する」のは、「特別状態」の場合であることから、引用発明の「第2特別遊技状態」は、本願発明の「特別状態」に相当する。
よって、引用発明の「遊技状態が第2特別遊技状態である場合に、3つあるストップスイッチ72?74のうち、最初に押下操作すべきストップスイッチを選択する押し順設定処理を実行する主制御装置131」は、本願発明の「予め定められた複数のストップスイッチの操作態様のうちからストップスイッチの操作態様を選択して設定するものであって、特別状態においてストップスイッチの操作態様を選択して設定する操作態様設定手段」の機能を有する。

(l)上記(i)、(j)より、引用発明の「有効位置」、「第2特別遊技状態」は、それぞれ、本願発明の「有効ライン」、「特別状態」に相当する。
引用発明の「主制御装置131」は、「有効位置上に第2特定絵柄の組合せが停止した場合は、第2特別遊技状態の開始条件成立と判定し、遊技状態を第2特別遊技状態に移行させ」るものであり、本願発明の「遊技状態移行制御手段」は、「特別役に対応した図柄組合せが有効ライン上に停止表示されたことを条件として遊技状態を特別状態へ移行させ」るものであることから、引用発明の「第2特定絵柄の組合せ」は、本願発明の「特別役に対応した図柄組合せ」に相当するといえる。
よって、引用発明の「有効位置上に第2特定絵柄の組合せが停止した場合は、第2特別遊技状態の開始条件成立と判定し、遊技状態を第2特別遊技状態に移行させ」る「主制御装置131」は、本願発明の「特別役に対応した図柄組合せが有効ライン上に停止表示されたことを条件として遊技状態を特別状態へ移行させ」る「遊技状態移行制御手段」の機能を有する。

(m)上記(l)より、引用発明の「第2特定絵柄と対応する役」は、本願発明の「特別役」に相当するから、引用発明の「CT当選フラグ」、「第2特定絵柄」は、それぞれ、本願発明の「特別役に対応する当選フラグ」、「特別役に対応した図柄組合せ」に相当するといえる。
また、上記(i)より、引用発明の「有効位置」は、本願発明の「有効ライン」に相当する。
そうすると、引用発明の「そのゲームで第2特定絵柄を有効位置上に揃えられなかったとしてもこの当選フラグは次回に持ち越し、有効位置上に第2特定絵柄が揃ったときには、CT当選フラグをリセット」することは、本願発明の「特別役に対応した図柄組合せが有効ライン上に停止表示されるまで内部当選状態が持ち越されるように」することに相当する。
よって、引用発明の「抽選処理にて第2特定絵柄と対応する役に当選してCT当選フラグがセットされたときには、そのゲームで第2特定絵柄を有効位置上に揃えられなかったとしてもこの当選フラグは次回に持ち越し、有効位置上に第2特定絵柄が揃ったときには、CT当選フラグをリセット」とする「主制御装置131」は、本願発明の「特別役に対応する当選フラグについては、特別役に対応した図柄組合せが有効ライン上に停止表示されるまで内部当選状態が持ち越されるように設定状態を制御」する「当選フラグ制御手段」の機能を有する。

(n)上記(j)より、引用発明の「第2特別遊技状態」は、本願発明の「特別状態」に相当する。
また、引用発明の「所定絵柄又は所定絵柄の組合せ」は、引用発明の構成iより、「小役図柄又は小役図柄の組合せ」といえるから、本願発明の「全ての小役」に相当するといえる。
そして、引用発明において「所定絵柄又は所定絵柄の組合せが有効位置に停止し得るよう各駆動手段を駆動制御」できるということは、すなわち、「全ての小役の当選フラグ」が「内部当選状態に設定」されているという前提があることは明らかであるから、引用発明の「第2特別遊技状態である場合は、抽選手段の抽選結果が非当選であっても所定絵柄又は所定絵柄の組合せが有効位置に停止し得るよう各駆動手段を駆動制御」することは、本願発明の「特別状態においては、役抽選の結果」「に関わらず」「全ての小役の当選フラグを内部当選状態に設定」することに相当する。
また、本願発明の「役抽選の実行の有無に関わらず・・・全ての小役の内部当選フラグを内部当選状態に設定」するということは、「役抽選」を「実行」するときは、その結果に関わらずということであるから上述のとおりであり、「役抽選」を「実行」しないときは、通常は当選フラグの設定を行わない「抽選手段の抽選結果が非当選」であるときと同じ状態であることから、引用発明の「抽選手段の抽選結果が非当選」であるときと実質的に同じである。
よって、引用発明の「第2特別遊技状態である場合は、抽選手段の抽選結果が非当選であっても所定絵柄又は所定絵柄の組合せが有効位置に停止し得るよう各駆動手段を駆動制御」することは、本願発明の「特別状態においては、役抽選の結果又は役抽選の実行の有無に関わらず当該遊技の規定数において有効な全ての小役の当選フラグを内部当選状態に設定」することに相当する。

(o)上記(j)より、引用発明の「第2特別遊技状態」は、本願発明の「特別状態」に相当する。
引用発明の「操作順序設定手段の設定した操作順序と実際に操作された操作順序とが一致した場合」は、本願発明の「操作態様設定手段により設定された操作態様でストップスイッチが操作された場合」に相当する。
よって、引用発明の「第2特別遊技状態において、操作順序設定手段の設定した操作順序と実際に操作された操作順序とが一致した場合、所定絵柄又は所定絵柄の組合せが有効位置に停止するように各駆動手段を駆動制御するように構成し、有効ライン上に所定の役(例えば「ベル」図柄)が成立していれば、メダル払出を行う遊技機」は、本願発明と「特別状態において、操作態様設定手段により設定された操作態様でストップスイッチが操作された場合に」、操作態様設定手段により設定された操作態様でストップスイッチが操作されたことを遊技者に報知する遊技機の点で共通する。

上記(a)?(o)の対比により、本願発明と引用発明とは、

「A 周囲に複数の図柄が付された複数の回転リールと、

B 回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチと、

C 各回転リールに対応して設けられかつ回転リールの回転を停止させるためのストップスイッチと、

D 所定の図柄組合せが対応付けられた役について当選か否かの役抽選を行うものであって、少なくとも特別役と複数の小役とを対象に役抽選を行う役抽選手段と、

E 役抽選により当選した役に対応する当選フラグを非内部当選状態から内部当選状態に設定する当選フラグ制御手段と、

F 少なくとも通常状態と通常状態よりも遊技者にとって有利な特別状態とを含む複数の遊技状態の間で遊技状態を移行させる制御を行う遊技状態移行制御手段と、

G 遊技状態ごとに予め定められた規定数の遊技媒体がベットされている状態でスタートスイッチが操作された場合に、回転リールの回転を開始させる回転制御手段と、

H 少なくとも当選フラグの設定状態及びストップスイッチが操作された時点における対応する回転リールの回転位置に基づいて、回転リールの回転を適位置で停止させる停止制御手段と、

I 払い出し装置による遊技媒体の払い出しを制御し、複数の回転リールの回転が停止した状態で小役に対応した図柄組合せが有効ライン上に停止表示された場合に払い出し装置に遊技媒体を払い出させる制御を行う払出制御手段と、

J 予め定められた複数のストップスイッチの操作態様のうちからストップスイッチの操作態様を選択して設定するものであって、特別状態においてストップスイッチの操作態様を選択して設定する操作態様設定手段と、を備え、

L 遊技状態移行制御手段は、
特別役に対応した図柄組合せが有効ライン上に停止表示されたことを条件として遊技状態を特別状態へ移行させ、

M 当選フラグ制御手段は、
特別役に対応する当選フラグについては、特別役に対応した図柄組合せが有効ライン上に停止表示されるまで内部当選状態が持ち越されるように設定状態を制御し、

N 特別状態においては、役抽選の結果又は役抽選の実行の有無に関わらず当該遊技の規定数において有効な全ての小役の当選フラグを内部当選状態に設定し、

O’ 特別状態において、操作態様設定手段により設定された操作態様でストップスイッチが操作された場合に、操作態様設定手段により設定された操作態様でストップスイッチが操作されたことを遊技者に報知する遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、遊技の進行を不能な状態にすることで遊技の進行を一時停止させるフリーズを制御するフリーズ制御手段を備え、特別状態において、操作態様設定手段により設定された操作態様でストップスイッチが操作された場合に、フリーズ制御手段はフリーズを実行するように形成されていると共に、所定の特典を遊技者に付与し得るように形成されているのに対し、引用発明では、特別状態において、操作態様設定手段により設定された操作態様でストップスイッチが操作された場合に、所定絵柄又は所定の絵柄の組合せが有効位置に停止するようにし、有効位置上に所定の役(例えば「ベル」図柄)が成立していれば、メダル払出を行う点。

4 判断
上記相違点について検討する。
上記2(2)(セ)の「特定順序に従って前記ストップボタンが押下されたか否かを前記ストップ信号の入力に基づいて識別し、前記特定順序に従って前記ストップボタンが押下されたことを識別した場合に、当該ストップボタンの操作以降の前記ストップボタンの操作又は次遊技の開始に先立って行われるメダルのベット又はその次遊技の前記スタートレバーの操作の少なくともいずれか1つを一定時間無効化するフリーズ演出実行手段を備えたことを特徴とするスロットマシン」の記載、および、上記2(2)(タ)の「当選役抽選で重複当選役A?Cのいずれかに当選した場合は、・・・ストップボタンの押下順序が特定順序と一致した否かが判定される。そして、当選役抽選で重複当選役Aに当選した場合は、ストップボタン19b,19cの押下に先立ってストップボタン19aを最初に押下するとベル図柄が優先的に引き込まれ、ベルが入賞可能な状態となる。・・・そして、入賞有効ライン16上にベル図柄が停止した場合はフリーズ演出が実行される。・・・いずれの重複当選役が当選した場合でも、ストップボタンの最初の押下でベル図柄が入賞有効ライン16上に停止した場合は、残りのストップボタンを押下したときにベル図柄が入賞有効ライン16上に引き込まれる。ベルが入賞するとRTモードに移行する。」の記載から、刊行物2には、特定順序に従ってストップボタンが押下されたか否かをストップ信号の入力に基づいて識別し、特定順序に従ってストップボタンが押下されたことを識別した場合に、入賞ライン有効ライン上にベル図柄が優先的に引き込まれ、ベル図柄が停止した場合はフリーズ演出が実行され、ベルが入賞するとRTモードに移行するスロットマシンが記載されているといえる。
ここで、刊行物2に記載の「RTモード」は、本願発明の「所定の特典」に相当するといえるから、引用発明も、刊行物2に記載のスロットマシンも、いずれも、操作態様設定手段により設定された操作態様でストップスイッチが操作された場合に、設定された操作態様でストップスイッチが操作されたことを所定絵柄又は所定の絵柄の組合せが有効位置に停止することにより遊技者に報知し、所定の特典を遊技者に付与するものである。
そして、設定された操作態様でストップスイッチが操作された場合に所定の特典を付与するにあたり、引用発明や刊行物2に記載のように、必ず所定の特典を付与することも、抽選等により、所定の特典を付与し得るようにすることも、いずれも本願出願前において周知技術であるから(後者については、必要があれば、特開2004-188098号公報(【0066】「特典遊技抽選手段111は、・・・特別遊技用操作順番選択手段154により選択された操作順番と、遊技者がストップスイッチ40を操作した操作順番とが一致して正解する度に、特典遊技抽選を実行するようにしている。」、「特典遊技(例えばAT)への移行は抽選により決定され、所定の確率にてATに移行する。」等。)、特開2012-20039号公報(【0223】「押し順ブドウの入賞によりAT抽選条件が成立する。」等。)等参照のこと。)、設定された操作態様でストップスイッチが操作された場合に、必ず所定の特典を付与するか、所定の特典を付与し得るようにするかは、当業者が適宜選択し得る事項である。
よって、引用発明の、所定絵柄又は所定の絵柄の組合せが有効位置に停止するようにし、有効位置上に所定の役(例えば「ベル」図柄)が成立していれば、メダル払出を行うことにおいて、刊行物2に記載の事項を適用する際に、所定絵柄又は所定の絵柄の組合せが有効位置に停止した場合はフリーズ演出が実行されるようにすると共に、周知技術を考慮して、所定の特典を遊技者に付与し得るように構成することにより、当該相違点に係る本願発明の構成の如くすることは、当業者が容易になし得たことである。

5 審判請求人の主張について
審判請求書において、請求人は、「 「フリーズ」=「有利状態への移行」であるので、有利状態への移行を、通常の遊技進行である「有効ライン上での入賞」等とは異なる演出で知らせることができ、演出が楽しいものとなっている。
一方、引用文献1は、「ベルの当選(特定の出目)」によって有利状態への移行(メダル払出)を知らせているために、特別なフリーズ等の演出が無く、通常の「入賞後のメダル払出」と同様な遊技進行となっている。
すると、本願発明に係る遊技機と、引用文献1記載の遊技機とは、通常の遊技機が有する「入賞(特定の出目)に伴ったメダル払出」とは異なった演出で有利状態への移行」を知らせるか否かで遊技機の設計段階から全く異なったものとなっており、
「有利状態への移行を通常遊技進行と全く同様な方法で知らせる」
「有利状態への移行を通常遊技進行と全く異なる演出で知らせる」
とのように、解決課題が異なった遊技機となっている。」と主張している(11頁11?23行)。
この主張について検討すると、上記「2(2)(ソ)」の記載および上記「4 判断」で検討したとおりであり、上記請求人が主張する効果は、引用発明及び刊行物2に記載の事項から予測し得る範囲のものであり格別なものとはいえない。
よって、請求人の主張は採用できない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、刊行物2に記載の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-10-26 
結審通知日 2017-10-31 
審決日 2017-11-13 
出願番号 特願2012-178661(P2012-178661)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 聖司池谷 香次郎  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 蔵野 いづみ
川崎 優
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  

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