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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1335754
審判番号 不服2016-13564  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-09 
確定日 2018-01-16 
事件の表示 特願2013-514243「金属インターコネクトのために絶縁積層体を選択的にエッチングする方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月15日国際公開,WO2011/156253,平成25年 7月22日国内公表,特表2013-529838,請求項の数(18)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2011年6月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年6月11日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,平成26年2月20日に審査請求がなされ,平成27年5月12日付けで拒絶理由通知がされ,同年10月16日に意見書と手続補正書が提出され,平成28年4月28日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年9月9日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正書が提出され,同年10月12日に電話応対がなされ,平成29年4月10日付けで拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)がされ,同年10月11日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年4月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1ないし20に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


<引用文献等一覧>
1.特表2007-537602号公報
2.特開2000-150415号公報
3.特開平09-232281号公報
4.特開平04-096224号公報
5.特開2004-336038号公報
6.特開2004-128050号公報
7.特開2007-258586号公報
8.特開2010-123809号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

第1 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項1,6?9
・引用例1?3,10
・備考
引用例1の段落[0031]?[0046],[0071],[0094]?[0098]及び図1?4,図16を参照。
引用例1の段落[0098]には,被エッチング膜である層間絶縁膜としてMSQを用いることが記載されており,当該MSQが本願における「SiCOH含有層」に相当する。(「MSQ」が,「SiCOH含有層」に相当する点について,要すれば,引例10の【0003】の記載を参照されたい。)また,引用例1の段落[0094]?[0095]には,「Ti(チタン),TiN(窒化チタン),W(タングステン),WSi(タングステンシリサイド),WN(窒化タングステン)等の導電材」をエッチングマスクとして使用することが記載され,段落[0031]には,エッチングストッパとしてシリコン窒化膜を配設することが記載されている。引用例1の上記「エッチングマスク」及び「エッチングストッパ」が,本願における「ハードマスク」及び「キャップ層」に相当する。
また,引用例1の段落[0035],[0037]には,エッチングマスクを100℃以下でエッチングし,被エッチング膜を100℃以上でエッチングすることが記載されている。さらに,段落[0071]には,基板温度が高まるとエッチングストッパであるシリコン窒化膜のエッチレートが低下することが記載されているから,エッチングストッパをエッチングする際には,エッチレートがより高くなるように低い温度でエッチングすることが示唆されているものと理解できる。
以上によれば,引用例1には,本願における「第1基板温度よりも高温である第2基板温度を制御する工程」,「前記第2基板温度よりも低温である第3基板温度を制御する工程」が開示されていると認められる。
そこで,本願の請求項1と引用例1を比較すると,引用例1には,「第1基板温度が20℃よりも低い」ことが特定されていない点で本願の請求項1と相違するが,TiやWを含む膜を20℃よりも低温でエッチングする技術は,引用例2(段落[0014])や引用例3(段落[0047]?[0049])に記載された周知技術であるから,引用例1において上記相違点に係る構成とすることは,周知技術に照らし当業者が適宜なし得たことである。
したがって,本願の請求項1は引用例1?3,10から容易になし得たものである。
本願の請求項6?9についても同様である。

・請求項2
・引用例1?5,10
・備考
シリコン窒化膜を20℃よりも低い温度でエッチングする技術は,引用例4(第3頁左下欄第5行?第13行)や引用例5(段落[0037])に記載された周知の技術であるから,引用例1において「第3基板温度を20℃よりも低い温度に制御する」ことは,周知技術に照らし当業者が適宜なし得たことである。したがって,本願の請求項2は進歩性を有さない。

・請求項4?5
・引用例1?3,6,10
・備考
引用例6の段落[0016]を参照。引用例6の「密着膜23」が本願の「平坦化層」に相当する。引用例1に引用例6の構成を適用することは当業者が容易になし得たことである。

・請求項10
・引用例1?3,7?8,10
SiCOH層を気相成長法で形成する技術は,引用例7(段落[0057]?[0063])や引用例8(段落[0031])にも記載された周知の技術である。

・請求項11
・引用例1?3,6?7,10
・備考
請求項11の事項については,引用例6の段落[0018]及び図1,4?5,引用例7の段落[0072]?[0074]及び図1?2を参照。

・請求項12?15
・引用例1?3,9?11
・備考
請求項12?14の構成については,引用例9の段落[0031]?[0036],図1?2,引用例11を参照。請求項15の工程は当業者が適宜なし得たことである。

・請求項3,16?20
・引用例1?8,10
・備考
ビアファースト工程は引用例6(図1,3?5),引用例7(図1?3),引用例8(図1?2)に,トレンチファースト工程は引用例8(図5)に記載された周知の工程であり,引用例1のビア形成技術をこれら周知の工程のいずれに適用するかは,当業者が適宜選択し得たことである。

<引用文献等一覧>
1.特開2003-133293号公報(新たに引用された文献)
2.特開平9-199484号公報(周知技術を示す文献:新たに引用)
3.特開平7-228985号公報(周知技術を示す文献:新たに引用)
4.特開平1-146328号公報(周知技術を示す文献:新たに引用)
5.特開平9-27479号公報(周知技術を示す文献:新たに引用)
6.特開2007-258586号公報(新たに引用された文献)
7.特開2009-123886号公報(周知技術を示す文献:新たに引用)
8.特開2004-128050号公報(原査定の引用例6)
9.特開2010-123809号公報(原査定の引用例8)
10.特開2007-266099号公報(周知技術を示す文献:新たに引用)
11.特表2010-506381号公報(周知技術を示す文献:新たに引用)

第2 この出願は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第1号,第2号,及び,第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1)特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である(知財高判平成17年11月11日(平成17年(行ケ)10042号)「偏光フィルムの製造法」大合議判決を参照。) 。
以下,上記の観点に立って,本願のサポート要件について検討する。

(2)前提となる事実関係等
ア 本願の特許請求の範囲の記載
本願の請求項1ないし20に記載された発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明20」という。また,これらを併せて「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。
「【請求項1】
絶縁層をパターニングする方法であって:
キャップ層,前記キャップ層を覆うSiCOH含有層,及び,前記SiCOH含有層を覆うハードマスクを有する膜積層体を基板上に準備する工程であって,前記ハードマスクはSi及びOを含む少なくとも1層の層又は金属を含む少なくとも1層の層を有する工程;及び
前記SiCOH含有層とその下の前記キャップ層との間でのエッチング選択性を実現する基板温度制御法に従って,プラズマエッチングシステム内の温度制御された基板ホルダを利用する一連のエッチング処理を前記プラズマエッチングシステム内で実行することによって,前記膜積層体を貫通してパターンを転写する工程;
を有し,
前記基板温度制御法は:
前記パターンを前記ハードマスクを貫通して転写するときに制御されたプロファイルと限界寸法(CD)を実現するために,及び任意で前記パターンを前記SiCOH含有層へ部分的に転写するために,第1エッチングプロセスにおける第1基板温度を制御する工程であって,前記第1基板温度は20℃よりも低い,工程;
前記SiCOH含有層を貫通して前記パターンを転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスクとの間でのエッチング選択性を実現するために第2エッチングプロセスにおける前記第1基板温度よりも高温である第2基板温度を制御する工程;及び,
前記キャップ層を貫通して前記パターンを転写する第3エッチングプロセスにおける前記第2基板温度よりも低温である第3基板温度を制御する工程;
を有する方法。
【請求項2】
前記基板温度制御法が:
前記第2エッチングプロセスにおいて第2基板温度を50℃よりも高い温度に制御する工程;及び,
前記第3エッチングプロセスにおいて第3基板温度を20℃よりも低い温度に制御する工程を有する,請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パターンを転写する工程が,トレンチを最初に形成する金属ハードマスク(TFMHM)集積法又はビアを最初に形成してトレンチを最後に形成する(VFTL)集積法の中に組み込まれる,請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記膜積層体が,前記SiCOH含有層と前記キャップ層との間に設けられる平坦化層を有する,請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記平坦化層が,Siと,O,C,及びNからなる群から選ばれる1種類以上の元素を含む層を有する,請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ハードマスクが複数の層を有する,請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ハードマスクが,金属を含む少なくとも1層の層を有する,請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記キャップ層が複数の層を有する,請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記キャップ層が,シリコン窒化物(Si_(x)N_(y)),シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する,請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記SiCOH含有層が,気相成長法を用いて形成される,請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記膜積層体を基板上に準備する工程が:
前記ハードマスクを覆うようにマスクを形成する工程;及び,
リソグラフィ法を用いることによって前記マスク内にパターンを形成する工程;
をさらに有し,
前記マスクは,反射防止コーティング(ARC)を覆う放射線感受性材料の層を含む,
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記温度制御された基板ホルダが:
温度制御された熱流体を循環させる流体チャネルを内部に有する支持体底部;及び
前記支持体底部の上部と断熱材を介して結合する基板支持体;
を有し,
前記基板支持体は:
前記基板支持体内部に埋め込まれた1つ以上の加熱素子;
前記基板の背面と接触することで前記基板を支持する上面;及び
前記基板支持体の上面に前記基板を保持する静電固定電極;
を有する,
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記温度制御された基板ホルダは,前記基板支持体の上面に設けられた複数のオリフィス又はチャネルのうちの少なくとも1つを通って前記基板の背面へ伝熱ガスを供給するように構成される背面ガス供給システムをさらに有する,請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記背面ガス供給システムの複数のオリフィスは,前記基板の背面の実質的な中心領域と前記基板の背面の実質的な端部領域との間で,半径方向に背圧を変化させるように,前記基板支持体の上面の複数の領域内に配置される,請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記一連のエッチングプロセスが:
前記基板の実質的な中心領域に対応する第1内側設定温度及び前記基板の実質的な端部領域に対応する第1外側設定温度を有する第1設定温度に基板支持体を制御し,かつ,前記支持体底部を第1底部温度に制御することによって,前記第1エッチングプロセス中に第1温度プロファイルに前記基板を維持する工程;
前記第1エッチングプロセス後であって前記第2エッチングプロセス前に,前記基板を前記第1温度プロファイルから第2温度プロファイルへ修正する工程;
前記第1内側設定温度及び前記第1外側設定温度とは異なる第2内側設定温度及び第2外側設定温度を有する第2設定温度に前記基板支持体を制御し,かつ,前記支持体底部を第2底部温度に制御することによって,前記第2エッチングプロセス中に第2温度プロファイルに前記基板を維持する工程;
前記第2エッチングプロセス後であって前記第3エッチングプロセス前に,前記基板を前記第2温度プロファイルから第3温度プロファイルへ修正する工程;並びに,
前記第2内側設定温度及び前記第2外側設定温度とは異なる第3内側設定温度及び第3外側設定温度を有する第3設定温度に前記基板支持体を制御し,かつ,前記支持体底部を第3底部温度に制御することによって,前記第3エッチングプロセス中に第3温度プロファイルに前記基板を維持する工程;
を有する,請求項12に記載の方法。
【請求項16】
基板上にトレンチ-ビア構造を準備する方法であって:
キャップ層,前記キャップ層を覆うSiCOH含有層,及び,前記SiCOH含有層を覆うハードマスクを有する膜積層体を基板上に準備する工程であって,前記ハードマスクはSi及びOを含む少なくとも1層の層又は金属を含む少なくとも1層の層を有する工程;
前記ハードマスク内にトレンチパターンを生成する工程;
前記トレンチパターンと位置合わせされたビアパターンを備えるビアパターニング層を,前記ハードマスクを覆うように準備する工程;
プラズマエッチングシステム内で第1エッチングプロセスを用いることによって,前記ビアパターニング層中のビアパターンを前記SiCOH含有層へ少なくとも部分的に転写する工程;
前記ビアパターニング層を除去する工程;
前記プラズマエッチングシステム内で第2エッチングプロセスを用いることによって,前記キャップ層に影響させないようにしながら,前記ハードマスク中のトレンチパターンを前記SiCOH含有層へ転写する工程;
前記プラズマエッチングシステム内で第3エッチングプロセスを用いることによって,前記SiCOH含有層中のビアパターンを前記キャップ層へ転写する工程;並びに,
前記トレンチパターンの転写中,前記SiCOH含有層と前記キャップ層との間でのエッチング選択性を実現する基板温度制御法に従って前記プラズマエッチングシステム内で温度制御された基板ホルダを利用する工程;
を有し,
前記基板温度制御法は:
前記ビアパターンを前記SiCOH含有層へ転写するときに制御されたプロファイルと限界寸法(CD)を実現するために前記第1エッチングプロセスにおける第1基板温度を制御する工程であって,前記第1基板温度は20℃よりも低い,工程;
前記トレンチパターンを前記SiCOH含有層へ転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスクとの間でのエッチング選択性を実現するために第2エッチングプロセスにおける前記第1基板温度よりも高温である第2基板温度を制御する工程;及び,
前記ビアパターンを前記キャップ層へ転写する第3エッチングプロセスにおける前記第2基板温度よりも低温である第3基板温度を制御する工程;
を有する方法。
【請求項17】
前記基板温度制御法が:
前記第2エッチングプロセスにおいて第2基板温度を50℃よりも高い温度に制御する工程;及び,
前記第3エッチングプロセスにおいて第3基板温度を20℃よりも低い温度に制御する工程を有する,請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記SiCOH含有層と前記キャップ層との間に平坦化層を設ける工程;及び,
前記ビアパターンを前記平坦化層へ転写する工程;
をさらに有する,請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ハードマスクが金属含有層を有し,かつ,
前記キャップ層が,シリコン窒化物(Si_(x)N_(y)),シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭 窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する,
請求項16に記載の方法。
【請求項20】
基板上にトレンチ-ビア構造を準備する方法であって:
キャップ層,前記キャップ層を覆うSiCOH含有層,及び,前記SiCOH含有層を覆うハードマスクを有する膜積層体を基板上に準備する工程であって,前記ハードマスクはSi及びOを含む少なくとも1層の層又は金属を含む少なくとも1層の層を有する工程;
前記ハードマスク内にビアパターンを生成する工程;
プラズマエッチングシステム内で第1エッチングプロセスを用いることによって,前記ビアパターニング層中のビアパターン層を前記SiCOH含有層へ少なくとも部分的に転写する工程;
前記ビアパターンと位置合わせされたトレンチパターンを備えるトレンチパターニング層を,前記ハードマスクを覆うように準備する工程;
前記トレンチパターンを前記ハードマスクへ転写する工程,前記トレンチパターンを除去する工程;
前記プラズマエッチングシステム内で第2エッチングプロセスを用いることによって,前記キャップ層に影響させないようにしながら,前記ハードマスク中のトレンチパターンを前記SiCOH含有層へ転写する工程;
前記プラズマエッチングシステム内で第3エッチングプロセスを用いることによって,前記SiCOH含有層中のビアパターンを前記キャップ層へ転写する工程;並びに,
前記トレンチパターンの転写中,前記SiCOH含有層と前記キャップ層との間でのエッチング選択性を実現する基板温度制御法に従って前記プラズマエッチングシステム内で温度制御された基板ホルダを利用する工程;
を有し,
前記基板温度制御法は:
前記ビアパターンを前記SiCOH含有層へ転写するときに制御されたプロファイルと限界寸法(CD)を実現するために前記第1エッチングプロセスにおける第1基板温度を制御する工程であって,前記第1基板温度は20℃よりも低い,工程;
前記トレンチパターンを前記SiCOH含有層へ転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスクとの間でのエッチング選択性を実現するために第2エッチングプロセスにおける前記第1基板温度よりも高温である第2基板温度を制御する工程;及び,
前記ビアパターンを前記キャップ層へ転写する第3エッチングプロセスにおける前記第2基板温度よりも低温である第3基板温度を制御する工程;
を有する方法。」

イ 本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は,絶縁積層体内でのパターン形成のための選択エッチング方法に関し,より詳細には,後続のメタライゼーションのための低誘電率(low-k)絶縁積層体内でのトレンチ-ビア構造形成のための選択エッチング方法に関する。」

(イ)「【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの当業者に知られているように,インターコネクトの遅延は,駆動中の集積回路(IC)の速度及び性能を改善する上での主要な制限因子である。インターコネクトの遅延を抑制する一の方法は,IC製造のためのバックエンド(BEOL)作業中に,金属インターコネクト中に低誘電率(low-k)材料及び超low-k材料を用いることによって,インターコネクトのキャパシタンスを減少させることである。そのようなlow-k材料は現在,オルガノシリコンガラス又はSiCOH含有材料を含む。
【0003】
よって近年,low-k材料は,相対的に高誘電率の絶縁材料-たとえば二酸化シリコン-に取って代わるものとして開発されてきた。特にlow-k材料は,半導体デバイスの金属層間の層間誘電層及び層内誘電層に利用されている。それに加えて,絶縁材料の誘電率をさらに減少させるため,孔を有する材料膜-つまり有孔性low-k誘電材料-が生成される。そのようなlow-k材料は,フォトレジストの塗布と同様のスピンオン誘電体(SOD)法又は化学気相成長(CVD)法によって堆積されて良い。従ってlow-k材料の使用は,既存の半導体製造プロセスにとって容易に受け入れられ得る。
【0004】
半導体基板上に新たなインターコネクト層を準備するとき,一般的には,先に形成されたインターコネクト層を覆うようにキャップ層が形成される。それに続いてlow-k絶縁層が形成され,そのlow-k絶縁層を覆うように1層以上の層-たとえばハードマスク-が形成される。絶縁積層体を形成する際,リソグラフィ及びエッチング処理が,後続のメタライゼーションプロセスの準備のために絶縁層をパターニングするのに利用される。たとえば一のインターコネクト層と隣接するインターコネクト層との間で電気的に連続となるように金属ラインとコンタクトプラグを準備するとき,絶縁層の積層体は,様々な集積法に従って,トレンチービア構造を備えるようにパターニングされて良い。
【0005】
しかし金属インターコネクトのために絶縁層の積層体にlow-k材料を実際に実装するには,多くの課題が存在する。一の課題には,トレンチ及びビア構造用の特定の限界寸法(CD)を実現しながら下地のインターコネクト層へ損傷を及ぼすことなく絶縁層の積層体を選択的にパターニングすることが含まれる。Low-k絶縁層のパターニング中,エッチングプロセスが,あまりに早く下地のキャップ層に影響しないことが重要である。」

(ウ)「【0098】
表1は,シリコン含有ARC層と有機平坦化層(OPL)の下に存在するキャップ層をパターニングする典型的なプロセス条件を与えている。キャップ層はSiC_(x)N_(y)H_(z)を主成分とする材料を含む。各エッチングプロセスについて,プロセス番号,上部電極(UEL)の出力(W),下部電極(LEL)の出力(W),プラズマエッチングシステム内でのガス圧力(mTorr),プラズマエッチングシステム内での成分について設定された温度(℃)(”UEL”=上部電極の温度,”W”=壁の温度,”LEL”=下部電極の温度,つまり基板温度),C_(4)F_(8)の流速(sccm),Arの流速(sccm),N_(2)の流速(sccm),及びエッチング時間(sec)を含むプロセス条件が記載されている。」

(エ)【0099】の【表1】から,キャップ層のビアパターニングのプロセス条件が,プロセスNo.1及びNo.2のいずれにおいても,UEL(上部電極)RFが,800W,LEL(下部電極)RFが,1200W,圧力が,40mTorr,UEL(上部電極)温度が,60℃,W(壁)温度が,60℃,C_(4)F_(8)の流速が,10sccm,Arの流速が,500sccm,N_(2)の流速が,100sccm,及びエッチング時間が,20secであることで共通しており,一方,プロセスNo.1のLEL(下部電極)温度が,8℃であり,No.2のLEL(下部電極)温度が,60℃であることで異なることが読み取れる。

(オ)「一旦ビアパターンがARC層とOPL層を突き抜けて延びると,表1で特定されたプロセス条件が実行される。プロセス番号1と2の違いは基板温度である。ここでは温度は,8℃から60℃に上昇している。表1に記載されているように,ビアパターンは,比較的低い基板温度で上記の特定されたプロセス条件を用いることによってキャップ層を突き抜けるか又は入り込むように延びる一方で,比較的高い基板温度では上記の特定されたプロセス条件を用いてもキャップ層を突き抜けて延びないし,入り込むようにも延びない。」(【0099】)

ウ 公知文献の記載
(ア)本願の優先権主張の日前の公知文献である周知例1(特開平4-96224号公報)には,次の記載が認められる。
・「低温エッチングによれば,シリコン基板を被エッチング材とし,エッチングガスとして堆積性のガスを含まない例えばSF_(6)のみを用いた場合にも,基板温度の冷却に従ってアンダーカットが小さくなり,-90℃以下でアンダーカットのない良好な異方性形状が得られる。よって,例えば水冷温度では堆積性ガスを添加しないと等方性エッチングしか実現できない条件にあっても,このような低温状態にすることにより異方性エッチングを達成でき,よって堆積性ガスの使用を僅かに抑えることが可能となる。
更に,Siのエッチング速度は低温になるに従って大きくなり,よって高速エッチングが可能となる。
しかも,これに対し,マスクとなるフォトレジストやSiO_(2)のエッチング速度は逆に小さくなるので,マスクとの選択性を高めることができ,SiO_(2)マスクなしにレジストのみでも例えば高選択性のSiトレンチエッチングが可能ならしめられる。」

(イ)本願の優先権主張の日前の公知文献である周知例2(特開2004-336038号公報)には,次の記載が認められる。
・「【0036】
ウエハ表面の温度検知ステッカーが示したところによると,15Torrの圧力及び-15℃の冷却材温度の時でウエハ表面の温度は93?99℃であり,また,2Torrのヘリウム背圧及び-15℃の冷却材温度の時で143?149℃である。」

エ 本願発明の課題
本願明細書の記載(前記イ)によれば,次のとおりである。
(ア)本願発明は,後続のメタライゼーションのための低誘電率(low-k)絶縁積層体内でのトレンチ-ビア構造形成のための選択エッチング方法に関するものである。(【0001】)

(イ)半導体基板上に新たなインターコネクト層を準備するとき,一般的には,先に形成されたインターコネクト層を覆うようにキャップ層が形成され,それに続いてlow-k絶縁層が形成され,そのlow-k絶縁層を覆うように1層以上の層-たとえばハードマスク-が形成される。
そして,一のインターコネクト層と隣接するインターコネクト層との間で電気的に連続となるように金属ラインとコンタクトプラグを準備するとき,絶縁層の積層体は,リソグラフィ及びエッチング処理によって,トレンチービア構造を備えるようにパターニングされる。(【0004】)

(ウ)本願発明の課題は,Low-k絶縁層のパターニング中,エッチングプロセスが,あまりに早く下地のキャップ層に影響しないように,トレンチ及びビア構造用の特定の限界寸法(CD)を実現しながら下地のインターコネクト層へ損傷を及ぼすことなく絶縁層の積層体を選択的にパターニングすることにある。(【0005】)

(3)検討
ア 前記(2)アのとおり,本願発明1は,「第1エッチングプロセスにおける第1基板温度を制御する工程であって,前記第1基板温度は20℃よりも低い,工程」,「第2エッチングプロセスにおける前記第1基板温度よりも高温である第2基板温度を制御する工程」及び「第3エッチングプロセスにおける前記第2基板温度よりも低温である第3基板温度を制御する工程」を含むことによって,「前記SiCOH含有層とその下の前記キャップ層との間でのエッチング選択性」及び「前記SiCOH含有層を貫通して前記パターンを転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスクとの間でのエッチング選択性」を実現することを発明特定事項として含む発明であり,本願発明2は,「前記第2エッチングプロセスにおいて第2基板温度を50℃よりも高い温度に制御する工程」及び「前記第3エッチングプロセスにおいて第3基板温度を20℃よりも低い温度に制御する工程」を発明特定事項とする発明である。

イ そこで,本願発明1,2について,(2)ウに示した本願発明の課題を解決できると当業者が認識できるか否かについて検討する。

ウ 本願明細書には次の記載が認められる。
・表1は,シリコン含有ARC層と有機平坦化層(OPL)の下に存在するキャップ層をパターニングする典型的なプロセス条件を与えている。キャップ層はSiCxNyHzを主成分とする材料を含む。各エッチングプロセスについて,プロセス番号,上部電極(UEL)の出力(W),下部電極(LEL)の出力(W),プラズマエッチングシステム内でのガス圧力(mTorr),プラズマエッチングシステム内での成分について設定された温度(℃)(”UEL”=上部電極の温度,”W”=壁の温度,”LEL”=下部電極の温度,つまり基板温度),C_(4)F_(8)の流速(sccm),Arの流速(sccm),N_(2)の流速(sccm),及びエッチング時間(sec)を含むプロセス条件が記載されている。(【0098】)

・一旦ビアパターンがARC層とOPL層を突き抜けて延びると,表1で特定されたプロセス条件が実行される。プロセス番号1と2の違いは基板温度である。ここでは温度は,8℃から60℃に上昇している。表1に記載されているように,ビアパターンは,比較的低い基板温度で上記の特定されたプロセス条件を用いることによってキャップ層を突き抜けるか又は入り込むように延びる一方で,比較的高い基板温度では上記の特定されたプロセス条件を用いてもキャップ層を突き抜けて延びないし,入り込むようにも延びない。(【0099】)

エ これらの記載からみて,本願明細書の記載から,当業者は,x,y,zの値が不明であり,また,主成分以外にどのような材料が含まれているか不明であるものの,ビアパターンがARC層とOPL層を突き抜けて延びた後に,表1で特定されたプロセス条件が実行されると,特定の組成比を有する,SiC_(x)N_(y)H_(z)を主成分とする材料からなるキャップ層が,”LEL”=下部電極の温度が,60℃である場合には,ビアパターンがキャップ層を突き抜けて延びないし,入り込むようにも延びないが,”LEL”=下部電極の温度が,8℃である場合には,ビアパターンがキャップ層を突き抜けるか又は入り込むように延びることを理解するといえる。

オ 他方,本願明細書には,表1で特定されたプロセス条件であって,”LEL”=下部電極の温度が,60℃である場合に,「前記キャップ層を覆うSiCOH含有層」(及び「ARC層」,「OPL層」)に対して,ビアパターニングを適切に行うことができることは記載されていない。
そして,前記(2)ウの,周知例1の「Siのエッチング速度は低温になるに従って大きくなり,よって高速エッチングが可能となる。しかも,これに対し,マスクとなるフォトレジストやSiO2のエッチング速度は逆に小さくなる」との記載に照らして,被エッチング材の材質の違いによって,温度が高くなると,エッチング速度が大きくなる場合と,逆に,温度が高くなると,エッチング速度が小さくなる場合とがあり得ることが,本願の優先権の主張の日前において,技術常識として知られていたことが認められる。
そうすると,表1で特定されたプロセス条件であって,”LEL”=下部電極の温度が,60℃である場合に,「前記キャップ層を覆うSiCOH含有層」(及び「ARC層」,「OPL層」)に対して,ビアパターニングを適切に行うことができたか明らかとはいえない。

カ すなわち,本願明細書の記載からは,”LEL”=下部電極の温度が,60℃である場合に,「前記SiCOH含有層とその下の前記キャップ層との間でのエッチング選択性」を実現することができると当業者が予測することは困難といえる。
したがって,本願発明1は,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められない。

キ しかも,前記(2)ウの周知例2の記載からも明らかなように,ウエハの温度と,ウエハを載置する台の温度は,一般的には等しくなく,両者の間を介在する伝熱ガスの圧力等によって,ウエハの温度とウエハを載置する台の温度との温度差が変化することは,本願の優先権の主張の日前において周知の事項であったといえる。
そうすると,本願明細書の【0098】における「”LEL”=下部電極の温度,つまり基板温度」との関係を前提とした説明は,直ちには是認することはできない。
さらに,仮に,本願明細書の記載から,「”LEL”=下部電極の温度,つまり基板温度」ということができ,基板温度が60℃と8℃の場合において,エッチング特性に差があることから,これに基づいてエッチング選択性を認めることができたとしても,請求項1に記載された発明は,「第1エッチングプロセスにおける第1基板温度を制御する工程であって,前記第1基板温度は20℃よりも低い,工程」及び「第2エッチングプロセスにおける前記第1基板温度よりも高温である第2基板温度」と特定するにすぎない。
すなわち,本願発明1は,例えば,第1基板温度が,20℃よりも低い0℃であって,第2基板温度が,前記第1基板温度よりも高温である8℃である場合を包含すると解されるが,これらの温度を選択した場合にまで,本願発明の課題を解決することができるとは,本願明細書の記載からは,当業者が認識できるとはいえない。

ク さらに,請求項2では,第2基板温度を50℃よりも高い温度と特定するが,本願明細書には,”LEL”=下部電極の温度が,60℃及び8℃である場合のエッチング特性が記載されているだけであるから,技術常識を参酌しても,第2基板温度が50℃よりも高い温度である場合の全ての範囲において,本願発明の課題を解決できるとまでは,当業者が認識できるとはいえない。

ケ しかも,材料のエッチング特性(例えば,エッチング速度の温度依存性)は,材料の種類(組成),エッチング条件(ガスの組成,圧力,温度)等の組合せによって異なることは当業者にとって自明な事項といえる。
そうすると,材料の種類(組成),エッチング条件(ガスの組成,圧力,温度)等の組合せを特定しない請求項1及び2に記載された範囲の全てにおいてまで,本願発明の課題を解決することができるとまでは,技術常識に照らしても当業者が認識できたとは認められない。請求項1,2以外の,請求項3-20に係る発明についても同様である。

コ すなわち,本願の特許請求の範囲の記載は,いずれも,本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願の優先権主張の日前の技術常識に照らして,当業者が本願明細書に記載された本願発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており,サポート要件に適合しないものというべきである。

2 特許法第36条第6項第2号(発明の明確性)について
(1)請求項1の文頭に「絶縁層をパターニングする方法であって:・・・」とあるが,これに続く請求項1の文中には,「絶縁層」との用語が記載されていない。
したがって,請求項1に記載された発明を明確に把握することができない。(「絶縁層」が,「SiCOH含有層」を指すのであれば,そのことが明確に理解できるような記載とされたい。)

(2)請求項1には,「前記SiCOH含有層とその下の前記キャップ層との間でのエッチング選択性を実現する基板温度制御法・・・前記基板温度制御法は:前記パターンを前記ハードマスクを貫通して転写するときに制御されたプロファイルと限界寸法(CD)を実現するために,及び任意で前記パターンを前記SiCOH含有層へ部分的に転写するために,第1エッチングプロセスにおける第1基板温度を制御する工程であって,前記第1基板温度は20℃よりも低い,工程;前記SiCOH含有層を貫通して前記パターンを転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスクとの間でのエッチング選択性を実現するために第2エッチングプロセスにおける前記第1基板温度よりも高温である第2基板温度を制御する工程・・・」とあり,請求項1の記載は,文の前半で特定する「基板温度制御法」を,文の後半において,「前記基板温度制御法は:」として説明する構造となっている。
しかしながら,前記記載は,文の前半で,「SiCOH含有層とその下の前記キャップ層との間でのエッチング選択性」の実現を特定するのに対して,文の後半では,「前記SiCOH含有層と前記ハードマスクとの間でのエッチング選択性」を実現することが特定されており,選択性を実現する対象が文の前半と後半で整合していない。
したがって,請求項1に係る発明を明確に把握することができない。
請求項16,請求項20も同様である。

(3)請求項20に「前記ビアパターニング層中のビアパターン層を前記SiCOH含有層へ少なくとも部分的に転写する工程」とあるが,当該記載の「前記ビアパターニング層」の「前記」に対応する記載が,請求項20に存在しない。また,「ビアパターン層」を転写は,日本語として理解することができない。(「層」の転写は,日本語として不自然である。)

(4)【0032】の「(ii)パターン160を,絶縁層130を貫通するように転写する第2エッチングプロセスにおいて前記第1基板温度よりも低温となるように第2基板温度を制御する工程」は,「(ii)パターン160を,絶縁層130を貫通するように転写する第2エッチングプロセスにおいて前記第1基板温度よりも高温となるように第2基板温度を制御する工程」の誤記ではないのか。

3 第36条第4項第1号(実施可能要件)について
発明の詳細な説明には,「キャップ層」,「SiCOH含有層」,「ハードマスク」,「平坦化層」の具体的な組成,及び,各層を「エッチング処理」する際の具体的なエッチング条件が記載されていない。
そして,エッチング特性が,材料によって異なることは当業者において周知の事項である。
そうすると,「キャップ層」,「SiCOH含有層」,「ハードマスク」,「平坦化層」の材料,及び,各層を「エッチング処理」する際の具体的なエッチング条件を選定して,「SiCOH含有層とその下の前記キャップ層との間でのエッチング選択性を実現」し,かつ,「SiCOH含有層を貫通して前記パターンを転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスクとの間でのエッチング選択性を実現」するために,当業者は過度の試行錯誤を要すると認められる。
しかも,本願の請求項6,8,9に係る発明においては,「ハードマスク」及び「キャップ層」は,複数の層を有するのであるから,これら複数の層の特性を考慮した上で,前記選択性を実現することは,さらに困難といえる。
すなわち,発明の詳細な説明の記載は,当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分なものとは認められない。

第4 本願発明
本願請求項1ないし18に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明18」という。)は,平成29年10月11日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定される発明であり,独立形式で記載された請求項に係る発明である,本願発明1,本願発明14,及び本願発明18は,以下のとおりである。

「【請求項1】
SiCOH含有層を含む絶縁層をパターニングする方法であって:
キャップ層,前記キャップ層を覆うSiCOH含有層,及び,前記SiCOH含有層を覆うハードマスクを有する膜積層体を基板上に準備する工程であって,前記ハードマスクはSi及びOを含む少なくとも1層の層又は金属を含む少なくとも1層の層を有する工程;及び
基板温度制御法に従って,プラズマエッチングシステム内の温度制御された基板ホルダを利用する一連のエッチング処理を前記プラズマエッチングシステム内で実行することによって,前記膜積層体を貫通してパターンを転写する工程;
を有し,
前記基板温度制御法は:
前記パターンを前記ハードマスクを貫通して転写するときに制御されたプロファイルと限界寸法(CD)を実現するために,及び任意で前記パターンを前記SiCOH含有層へ部分的に転写するために,第1エッチングプロセスにおける第1基板温度を制御する工程であって,前記第1基板温度は20℃よりも低い,工程;
前記SiCOH含有層を貫通して前記パターンを転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスク層との間および前記SiCOH含有層と前記キャップ層との間でのエッチング選択性を実現するために第2エッチングプロセスにおける前記第1基板温度よりも高温である第2基板温度を制御する工程;及び,
前記キャップ層を貫通して前記パターンを転写する第3エッチングプロセスにおける前記第2基板温度よりも低温である第3基板温度を制御する工程;
を有し,
ここで,
前記キャップ層は,シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する,
方法。」

「【請求項14】
基板上にトレンチ-ビア構造を準備する方法であって:
キャップ層,前記キャップ層を覆うSiCOH含有層,及び,前記SiCOH含有層を覆うハードマスクを有する膜積層体を基板上に準備する工程であって,前記ハードマスクはSi及びOを含む少なくとも1層の層又は金属を含む少なくとも1層の層を有する工程;
前記ハードマスク内にトレンチパターンを生成する工程;
前記トレンチパターンと位置合わせされたビアパターンを備えるビアパターニング層を,前記ハードマスクを覆うように準備する工程;
プラズマエッチングシステム内で第1エッチングプロセスを用いることによって,前記ビアパターニング層中のビアパターンを前記SiCOH含有層へ少なくとも部分的に転写する工程;
前記ビアパターニング層を除去する工程;
前記プラズマエッチングシステム内で第2エッチングプロセスを用いることによって,前記キャップ層に影響させないようにしながら,前記ハードマスク中のトレンチパターンを前記SiCOH含有層へ転写する工程;
前記プラズマエッチングシステム内で第3エッチングプロセスを用いることによって,前記SiCOH含有層中のビアパターンを前記キャップ層へ転写する工程;並びに,
基板温度制御法に従って前記プラズマエッチングシステム内で温度制御された基板ホルダを利用する工程;
を有し,
前記基板温度制御法は:
前記ビアパターンを前記SiCOH含有層へ転写するときに制御されたプロファイルと限界寸法(CD)を実現するために前記第1エッチングプロセスにおける第1基板温度を制御する工程であって,前記第1基板温度は20℃よりも低い,工程;
前記トレンチパターンを前記SiCOH含有層を通して転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスク層との間および前記SiCOH含有層と前記キャップ層の間でのエッチング選択性を実現するために第2エッチングプロセスにおける前記第1基板温度よりも高温である第2基板温度を制御する工程;及び,
前記ビアパターンを前記キャップ層へ転写する第3エッチングプロセスにおける前記第2基板温度よりも低温である第3基板温度を制御する工程;
を有し,
ここで,前記キャップ層は,シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する,
方法。」

「【請求項18】
基板上にトレンチ-ビア構造を準備する方法であって:
キャップ層,前記キャップ層を覆うSiCOH含有層,及び,前記SiCOH含有層を覆うハードマスクを有する膜積層体を基板上に準備する工程であって,前記ハードマスクはSi及びOを含む少なくとも1層の層又は金属を含む少なくとも1層の層を有する工程;
前記ハードマスク内にビアパターンを生成する工程;
プラズマエッチングシステム内で第1エッチングプロセスを用いることによって,前記ハードマスク中の前記ビアパターンを前記SiCOH含有層へ少なくとも部分的に転写する工程;
前記ビアパターンと位置合わせされたトレンチパターンを備えるトレンチパターニング層を,前記ハードマスクを覆うように準備する工程;
前記トレンチパターンを前記ハードマスクへ転写する工程;
前記トレンチパターンを除去する工程;
前記プラズマエッチングシステム内で第2エッチングプロセスを用いることによって,前記キャップ層に影響させないようにしながら,前記ハードマスク中のトレンチパターンを前記SiCOH含有層へ転写する工程;
前記プラズマエッチングシステム内で第3エッチングプロセスを用いることによって,前記SiCOH含有層中のビアパターンを前記キャップ層へ転写する工程;並びに,
基板温度制御法に従って前記プラズマエッチングシステム内で温度制御された基板ホルダを利用する工程;
を有し,
前記基板温度制御法は:
前記ビアパターンを前記SiCOH含有層へ転写するときに制御されたプロファイルと限界寸法(CD)を実現するために前記第1エッチングプロセスにおける第1基板温度を制御する工程であって,前記第1基板温度は20℃よりも低い,工程;
前記トレンチパターンを前記SiCOH含有層へ転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスク層との間および前記SiCOH含有層と前記キャップ層との間でのエッチング選択性を実現するために第2エッチングプロセスにおける前記第1基板温度よりも高温である第2基板温度を制御する工程;及び,
前記ビアパターンを前記キャップ層へ転写する第3エッチングプロセスにおける前記第2基板温度よりも低温である第3基板温度を制御する工程;
を有し,
ここで,前記キャップ層は,シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する,
方法。」

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
平成29年4月10日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2003-133293号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。以下同じ。)
「【請求項1】 (a)半導体基板の主面上に配設された絶縁膜上に,所定の開口パターンを有するエッチングマスクを形成する工程と,
(b)前記エッチングマスクの開口パターンに合わせて,フロロカーボンガスを用いて前記絶縁膜を選択的にエッチングする工程と,を備え,
前記工程(a)は,
前記エッチングマスクを,100℃以上の温度条件下でも前記開口パターンが変形しない材質で形成する工程を含み,
前記工程(b)は,
前記半導体基板の温度を,100℃以上にした状態で前記エッチングを行う工程を含む,半導体装置の製造方法。
<途中省略>
【請求項6】 前記工程(a)は,
前記エッチングマスクを,Ti,TiN,W,WSiおよびWNから選択される何れかで形成する工程を含む,請求項1ないし請求項4の何れかに記載の半導体装置の製造方法。」

「【0028】
【発明の実施の形態】<発明の概念>まず,本発明の概念について言及する。発明者は,エッチング時の基板温度を100℃以上にするとホールの形状異常の抑制や,下地膜との選択比の向上に有効であるという認識を得るに至った。しかし,従来からエッチングにおいて使用されるレジスト材は高分子材料であり,耐熱性が低く,エッチング時の基板温度を100℃以上にすると,レジストマスクが変形し,パターンを保てなくなる。また,レジスト材や,下地膜から放出されるガスにより,レジストマスクが破損したり,剥がれたりする場合があった。
【0029】そこで,耐熱性,使い易さ,半導体装置への影響を考慮した結果,従来からのレジスト材の代わりに,ポリシリコンや窒化シリコン等のような,耐熱性に優れた物質をレジストマスクとして用いて,エッチング時の基板温度を100℃以上にするという技術的思想に到達した。」

「【0031】<A-1.製造方法>図1に示すように,シリコン基板である半導体基板200上に,エッチングストッパであるシリコン窒化膜201を配設し,シリコン窒化膜201上に層間絶縁膜としてシリコン酸化膜202を配設する。
<途中省略>
【0033】そして,シリコン酸化膜202を被エッチング膜とし,シリコン窒化膜201を下地膜としてエッチングを行うが,まず,シリコン酸化膜202の主面全面に渡ってポリシリコン膜203を形成する。
【0034】次に,ポリシリコン膜203上に,ホールパターンを有するレジストマスクRM1を写真製版(フォトリソグラフィ)により形成し,レジストマスクRM1のホールパターンに合わせてポリシリコン膜203をパターニングする。図1においては,ポリシリコン膜203が開口部OPを有する構成を示している。
【0035】なお,ポリシリコン膜203のエッチングは,層間絶縁膜に比べてポリシリコン膜203が薄く,アスペクト比が小さいので,基板温度が100℃以下でもホールの形状異常は発生せず,レジストマスクRM1として従来からのレジスト材を用いても不都合は生じない。
<途中省略>
【0037】次に,図2に示す工程において,パターニングされたポリシリコン膜203をエッチングマスクとし,基板温度を100℃以上にしてエッチングを行い,形状異常を抑制したコンタクトホールCH1を形成する。
【0038】
ここで,エッチング条件の一例として,2周波平行平板型エッチング装置を用いた場合について説明する。
【0039】
2周波平行平板型エッチング装置は,平行に配設された上部電極板(Top)と下部電極板(Bottom)とを有し,それぞれの電極板に異なる周波数の高周波(RF)電力を供給する構成となっている。
【0040】
そして,上部電極板には周波数の高い(60MHz程度)RF電力を供給してプラズマ生成を行い,半導体基板が搭載される下部電極板には周波数の低い(2MHz程度)を供給して,半導体基板に入射するイオンのエネルギー制御を行うことができる。
【0041】
RF電力の供給例は,上部電極板/下部電極板=2000/1500(W),
反応室内のガス圧力は2Pa(パスカル),
ガス混合比(供給流量比)は,C_(5)F_(8)/O_(2)/Ar=15/20/350(SCCM)である。
【0042】
ここで,C_(5)F_(8)ガスは近年において使用が広まったガスであり,C_(4)F_(8)等に比べてC/F比が高く(カーボンリッチ),C_(4)F_(8)よりもレジストやシリコンに対する選択性を高めることが可能なガスである。同様な特性を有するガスとしては,C_(4)F_(6)がある。
【0043】なお,図2に示す工程においては,まず,上述した条件でシリコン酸化膜202を貫通してシリコン窒化膜201に達するホールを形成した後,当該ホールの底部に露出するシリコン窒化膜201を,エッチングにより除去して半導体基板200に到達するコンタクトホールCH1を得る。」

「【0070】また,図16に,エッチングマスクの開口部の直径が0.23μmの場合の,基板温度と,ホール底部における下地膜(シリコン窒化膜)のエッチング選択比との関係を示す。図16においては,横軸に基板温度(℃)を,左側縦軸にシリコン窒化膜のエッチレート(nm/min)を,右側縦軸に下地膜のエッチング選択比(Si_(3)N_(4)のエッチレートに対するSiO_(2)のエッチレートの比率:SiO_(2)/Si_(3)N_(4))を示す。
【0071】図16から判るように,基板温度が高まると,シリコン窒化膜のエッチレートは低下し,下地膜のエッチング選択比は向上する。」

「【0094】<A-5.変形例3>以上説明した実施の形態およびその変形例においては,ポリシリコン膜をエッチングマスクとして使用する例を示したが,シリコン酸化膜等で構成される層間絶縁膜との選択比が十分とれ,半導体基板を100℃以上にしても変形しない材質であれば,他の材料を使用しても良い。
【0095】例えば,Ti(チタン),TiN(窒化チタン),W(タングステン),WSi(タングステンシリサイド),WN(窒化タングステン)等の導電材を用いても良い。これらは導電性を有するので,配線層に転用することができる。また,シリコン窒化膜や絶縁性のカーボン膜等の絶縁材を用いても良い。なお,カーボンにシリコンを含めば,導電性を有することになるが,絶縁材でも導電材でも,本発明の作用効果に変わりはない。」

「【0097】<A-6.変形例4>以上説明した実施の形態およびその変形例においては,被エッチング膜としてシリコン酸化膜を例示したが,フロロカーボンガスでエッチング可能であれば,シリコン酸化膜以外であっても本発明の適用が可能である。
【0098】例えば,SiOC,HSQ(hydrogen silsesqunioxane),MSQ(methylsesqunioxane)等の低誘電率(Low-k)の層間絶縁膜に対して本発明は有効である。なお,これらをポーラス化した膜に対しても有効である。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。),及び次の技術的事項が記載されていると認められる。

・引用発明1
「シリコン酸化膜である層間絶縁膜をパターニングする方法であって:
エッチングストッパ,前記エッチングストッパを覆うシリコン酸化膜,及び,前記シリコン酸化膜を覆うエッチングマスクを有する膜積層体を基板上に準備する工程であって,前記エッチングマスクはポリシリコン膜を有する工程;及び
基板の温度を100℃以上,あるいは,100℃以下に制御して,2周波平行平板型エッチング装置内の温度制御された一連のエッチング処理を前記2周波平行平板型エッチング装置内で実行することによって,前記膜積層体を貫通してホールパターンを転写する工程;
を有し,
RF電力の供給例は,上部電極板/下部電極板=2000/1500(W)であり,
反応室内のガス圧力は,2Pa(パスカル)であり,
ガス混合比(供給流量比)は,C_(5)F_(8)/O_(2)/Ar=15/20/350(SCCM)であり,
前記基板の温度の制御は:
前記ホールパターンを前記エッチングマスクを貫通して転写するときに,ホールの形状異常は発生せずに,レジストマスクのホールパターンに合わせてエッチングマスクをパターニングするために,第1エッチングプロセスにおける第1基板温度を制御する工程であって,前記第1基板温度は100℃以下でも不都合は生じない,工程;
前記シリコン酸化膜を貫通して前記ホールパターンを転写するときに,ホールの形状異常の抑制,及び,前記シリコン酸化膜と前記エッチングストッパとの間でのエッチング選択性を実現するために第2エッチングプロセスにおける100℃以上に第2基板温度を制御する工程;及び,
当該ホールの底部に露出するエッチングストッパを,エッチングにより除去して基板に到達するコンタクトホールを得る工程;
を有し,
ここで,
前記エッチングストッパは,シリコン窒化膜である,
方法。」

・引用文献1の記載から理解される技術的事項
(1)引用発明1において,エッチングマスクとして,ポリシリコン膜に替えて,例えば,Ti(チタン),TiN(窒化チタン),W(タングステン),WSi(タングステンシリサイド),WN(窒化タングステン)等の導電材を用いても良いこと。

(2)引用発明1において,被エッチング膜として,シリコン酸化膜に替えて,MSQ(methylsesqunioxane)等の低誘電率(Low-k)の層間絶縁膜を用いても有効であること。

2 引用文献2ないし16について
ア 平成29年4月10日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平9-199484号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0014】しかる後,上記の処理を行った基板4を図2に示した反応室24内に搬送し,試料台11の上に載置して基板4を-30℃に冷却する。この後に行うタングステン膜2及びTiN/TiW膜5のエッチングは,以下の通り合計3ステップで行う。なお,基板4の温度は,3つのステップを通してほぼ-30℃で一定に保つ。」

上記記載から,引用文献2には,タングステン膜,TiN/TiW膜等の,タングステン,Tiという金属を含む膜をエッチングする際の基板温度として,20℃よりも低い温度である,-30℃という温度を用いる場合があるという技術的事項が記載されていると認められる。

イ 平成29年4月10日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平7-228985号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0047】まず,予備室2の試料挿入/試料取出し系12から挿入される試料を図2(a)で説明する。試料は厚み1mm,直径3インチのSiO_(2) 基板を用いた。この基板の裏面は平坦に加工されている。SiO_(2) 基板の代わりにSi,InP,GaAsなどの半導体,石英系および多成分系のガラス,LiNbO_(3) ,LiTaO_(3) などの誘電体,磁性体などを用いても良い。この試料は基板16上に順にバッファ層20とコア層19とWSi膜18が形成されており,WSi膜18の上にフォトレジストパターン17がパターニングされているものである。
【0048】バッファ層20はSiO_(2) からなり,厚さ約10μm である。コア層19には酸化膜が用いられる。例えば,SiO_(2) にTiO_(2) ,GeO_(2) ,P_(2) O_(5) などの屈折率制御用添加物を0.数重量%から10数重量%添加した膜,あるいはSiON,SiO_(x) N_(y) H_(z) などである。この実施例ではSiO_(2) にTiO_(2) を1重量%添加した膜(膜厚約8μm )を用いた。WSi膜18はコア層19をエッチングするためのマスク材となることから,厚さ約1μm に形成されている。フォトレジストパターン17はWSi膜18をドライエッチングによりパターン化するためのマスク材であり,その膜厚は選択比の関係から0.5?1μm に選ばれている。
【0049】さて,この図2(a)の試料10を,図1に示す予備室2内に挿入後,ガス供給系15の矢印方向から予備室2内に,露点が-60℃以下のN_(2) ガス(あるいはAr,He,O_(2) などのガスでもよい。)を流しながら(ガス流量100cc/min),予備室2内を排気系4で真空排気して乾燥させる。これに併せて2つの反応室1-1及び1-2も排気系3-1,3-2で真空排気する。予備室2および反応室1-1,1-2内の真空度を1.33×10^(-1)Pa以下に保った後,一方の反応室1-1につながるゲートバルブ11-1を開いて試料10を予備室2から反応室1-1へ搬送し,下部電極13-2上に載置する。そして,冷媒循環系9とHeガス供給系8とにより,基板を-40℃に冷却する。次にゲートバルブ11-1を閉じ,ガス供給系14の矢印方向からNF_(3) ガスを20cc/min流し,上部電極13-1と下部電極13-2との間に高周波電源6-1(高周波パワ20W)を印加し,両電極間13-1と13-2間にプラズマを発生させた。この時の反応室1-1内の真空度は1.33Paになるように排気系3-1を設定した。その結果,約6分でWSi膜18のエッチングは終了した。この状態の試料を図2(b)に示す。エッチングされたWSiパターンの幅はフォトレジストパターン幅に対してわずかに1%の幅減りしかなかった。これは低温エッチングのため,フォトレジストの損傷やエッチングがほとんどなかったためと考えられる。また,エッチングされたWSi側面も極めて平滑であった。」

上記記載から,引用文献3には,WSi膜等の,Wという金属を含む膜をエッチングする際の基板温度として,20℃よりも低い温度である,-40℃という温度を用いる場合があるという技術的事項が記載されていると認められる。

ウ 平成29年4月10日付けの拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平1-146328号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「第3図(2)において,反応ガスとしてSF_(6)を用いてSi_(3)N_(4)耐酸化膜3をプラズマエッチングして耐酸化マスク3Aを形成する。
Si_(3)N_(4)のプラズマエッチングはSF_(6)を0.15Torrに減圧して,周波数13.56MHzの電力を100W印加して行う。
この時,基板温度が0℃になるようにrf電極冷却水温度を-15℃にし,且つ基板とrf電極間に10TorrのHeを導入した。」(第3ページ左下欄第5-13行)

上記記載から,引用文献4には,Si_(3)N_(4)をプラズマエッチングする際の基板温度として,20℃よりも低い温度である,0℃という温度を用いる場合があるという技術的事項が記載されていると認められる。

エ 平成29年4月10日付けの拒絶の理由に引用された引用文献5(特開平9-27479号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0037】次に,有磁場マイクロ波プラズマ・エッチャーを用い,上記SiN膜3のドライエッチングを行った。エッチング条件は,一例として,
CF_(4) 流量 50 SCCM
O_(2) 流量 20 SCCM
S_(2) F_(2) 流量 10 SCCM
圧力 1.0 Pa
マイクロ波パワー 1000 W(2.45 GHz)
RFバイアス・パワー 70 W(2 MHz)
ウェハ温度 -30 ℃
とした。この結果,図2に示されるような選択酸化マスク3aが形成された。」

上記記載から,引用文献5には,SiN膜をプラズマエッチングする際の基板温度として,20℃よりも低い温度である,-30℃という温度を用いる場合があるという技術的事項が記載されていると認められる。

オ 平成29年4月10日付けの拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2007-258586号公報:原査定の引用文献7)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0016】
前記半導体装置の多孔質SiCOH膜に埋め込められた有機膜をエッチングする例として,複数層レジスト構造を用いてデュアルダマシン法にて配線を形成する場合を例にして説明する。先ず図1に,前記多孔質SiCOH膜に埋め込められた有機膜を備える膜構造を示す。図中21は下層側の金属例えば銅の配線層,22は,銅配線層21がエッチングされることを防ぐためのストッパ膜であり,例えば厚さ35nmに形成されたSiCN膜又はSiC膜等より構成される。23は例えば厚さ30nmに形成された,ストッパ膜22との密着性を高めるための密着膜であり,例えばSiO_(2)膜やTiN膜等より構成され,前記ストッパ膜22の補助的機能も有している。」

カ 平成29年4月10日付けの拒絶の理由に引用された引用文献7(特開2009-123886号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0057】
配線層間絶縁膜44は,3員環又は4員環からなる環状有機シロキサン構造の原料を用い,He,Ar,Ne,Xe,Rnなどからなる不活性キャリアガスを用いて反応室に供給し,高周波電力を引加することで成膜を行うことができる。
【0058】
例えば,ビア層間絶縁膜43及び配線層間絶縁膜44は,少なくともシリコン,酸素,炭素,水素からなる環状有機シロキサン原料を用い,本発明に係る方法にて形成した低誘電率絶縁膜である。そのような原料としては,例えば[化3]又は[化4]で示される環状有機シロキサンであることが好ましい。これらの原料は構造中に不飽和炭化水素基を含むため,成膜プラズマ中での炭素の側鎖炭素の脱離を抑制し,絶縁膜内に多くの炭素を取り込むことができるようになる。
<途中省略>
【0061】
それらの膜厚は50?200nm程度が良い。原料分圧をプラズマ励起中に変化させることで,密着性に優れる層などを挿入しても良い。
【0062】
ビア層間絶縁膜43は,成膜条件や混合ガス原料を追加したり,入れ替えたりすることで,配線層間絶縁膜44よりも炭素成分の少ないSiOCH層としても良い。ハードマスク膜45aは,配線層間絶縁膜44の成膜条件を変更したり,混合ガス原料を追加したり,入れ替えたりすることで,配線層間絶縁膜44よりも炭素成分の少ないSiOCH層としてもよい。
【0063】
例えば,配線層間絶縁膜44としては,[化3]からなる原料を気化し,プラズマ気相成長法を用いて形成した環状シロキサンを含む絶縁膜を用い,ビア層間絶縁膜43及びハードマスク膜45aとしては,[化5]からなる原料を気化し,プラズマ気相成長法を用いて形成したシロキサンを含む絶縁膜を選択し,これらを連続成長させることもできる。」

上記記載から,引用文献7には,3員環又は4員環からなる環状有機シロキサン構造の原料を用い,He,Ar,Ne,Xe,Rnなどからなる不活性キャリアガスを用いて反応室に供給し,高周波電力を引加する成膜において,成膜条件や混合ガス原料を追加したり,入れ替えたりすることで,SiOCH層を成膜する方法,すなわち,SiOCH層を気相成長法で形成する技術的事項が記載されていると認められる。

キ 平成29年4月10日付けの拒絶の理由に引用された引用文献8(特開2004-128050号公報:原査定の引用文献6)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0031】
次に,同図(b)に示すように,SiCH膜6上に,平行平板型プラズマCVD装置を用いて層間絶縁膜(第3の絶縁膜)としてのSiCOH膜7を500nm堆積する。SiCOH膜7は,Si,C,O,Hを主成分とし,それらの成分比は,Si:C:O:H=3:3:6:8である。また,SiCOH膜7の誘電率は,3.0である。」

上記記載から,引用文献8には,SiOCH膜を,平行平板型プラズマCVD装置,すなわち,気相成長法で形成する技術的事項が記載されていると認められる。

ク 平成29年4月10日付けの拒絶の理由に引用された引用文献9(特開2010-123809号公報:原査定の引用文献8)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0031】
本実施形態に係るウエハ載置台4は,略円柱状をなしており,絶縁部材3の上に設けられた金属製,例えばアルミニウム製の載置台本体41を有する。載置台本体41の上には,ウエハWの載置部として機能する,ウエハWの載置面を有する静電チャック42とを有している。静電チャック42は載置台本体41よりも小径であり,載置台本体41の上端周縁部には,静電チャック42を囲むように,環状のフォーカスリング43が配置されている。このフォーカスリング43は例えば絶縁材料からなっており,これによりエッチングの均一性が向上される。なお,載置台本体41は下部電極として機能する。
【0032】
載置台本体41の内部には,冷媒循環路45が設けられており,この冷媒循環路45には,冷媒導入管46および冷媒排出管47が接続されている。この冷媒循環路45には,例えばフッ素不活性液体などの冷媒が冷媒供給機構48から冷媒導入管46を介して供給されて循環され,その冷熱がウエハWに伝達されるようになっている。冷媒温度は低い方が冷却能力が高く好ましいが,低すぎると結露を起こす。
【0033】
静電チャック42は,ウエハWより若干小径に形成され,誘電体からなる本体42aとその中に介在された電極42bとを有している。電極42bには直流電源50が接続されており,この直流電源50から例えば1.5kVの直流電圧が印加されることにより,静電気力,例えばクーロン力,ジョンセン・ラーベック力によってその上に載置されたウエハWを静電吸着する。直流電源50はスイッチ51によりオン・オフされるようになっている。本体42aを構成する誘電体としてはAl_(2)O_(3),Zr_(2)O_(3),Si_(3)N_(4),Y_(2)O_(3)等のセラミックスが例示される。
【0034】
ウエハ載置台4に載置されたウエハWの裏面側には,伝熱ガスであるHeガスを供給するためのガス流路52が接続されている。ガス流路52にはガス供給配管53が接続されており,ガス供給配管53にはHe供給機構55が接続されている。そしてHe供給機構55からガス供給配管53およびガス流路52を介してHeガスがウエハWの裏面に供給され,Heガスを介して冷媒の冷熱をウエハWに伝達するようになっている。すなわち,Heガスは冷媒の冷熱を伝達する伝熱ガスとして供給される。
【0035】
載置台本体41の内部の冷媒循環路45と静電チャック42との間の伝熱経路には,伝熱コントロール部60が水平に設けられている。伝熱コントロール部60は,図2に示すように,載置台本体41内のウエハWに対応する位置に設けられた,ウエハWよりも大径の円板状をなす空間部61と,空間部61内に充填された,多数の連通する空隙が存在する固体部材62とで構成されている。
【0036】
固体部材62は,空隙に伝熱ガスが存在しないときに断熱できるように断熱材で構成することが好ましい。また,安定でかつ容易に変形しないように硬度および機械的強度が比較的高い材料が好ましい。このような観点から固体部材62としては多孔質セラミックスが好適である。また,固体部材62としては,多孔質金属材料,発泡ゴム,グラスファイバー等も使用することができる。」

ケ 平成29年4月10日付けの拒絶の理由に引用された引用文献10(特開2007-266099号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0003】
一方高集積化を図るためにデバイス構造が多層化されているが,動作速度を向上させるためには寄生容量を小さくすることが必要であることから,絶縁膜例えば層間絶縁膜についても低誘電率膜の材料の開発が進められている。この低誘電率膜の一つとして,例えばSi-C結合を有するポーラスMSQ(Methyl-hydrogen-Silses-Quioxane)膜などと呼ばれているSiCOH膜が挙げられる。」

上記記載から,引用文献10には,「MSQ(Methyl-hydrogen-Silses-Quioxane)膜」が,SiCOH膜の一種であるという技術的事項が記載されていると認められる。

コ 平成29年4月10日付けの拒絶の理由に引用された引用文献11(特表2010-506381号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
処理システム内で基板を支持する基板ホルダであって:
第1温度を有する温度制御された支持体底部;
該温度制御された支持体底部に対向して前記基板を支持するように備えられている基板支持体;
前記基板支持体と結合して該基板支持体を前記第1温度よりも高い第2温度に加熱するように備えられている1つ以上の加熱素子;及び
前記温度制御された支持体底部と前記基板支持体との間に設けられた断熱材であって,熱伝導係数(W/m^(2)-K)が空間的に不均一に変化する断熱材;
を有する基板ホルダ。
<途中省略>
【請求項15】
前記基板支持体は,該基板支持体内部に埋め込まれていて基板を前記基板支持体へ電気的に固定するように備えられている固定用電極を有する,請求項1に記載の基板ホルダ。」

サ 引用文献12(特表2007-537602号公報:原査定の引用文献1)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0087】
エッチング中の動作温度は,一部の実施形態において,約-20℃?約40℃であることが考えられ,特定の実施形態では,記載されるように,トレンチのエッチングの場合カソード温度は20℃,バイアのエッチングの場合温度は25℃である。」

「【0168】
エッチングする構造体は実施例7及び8で共通である。これらの構造体は,図12に示されるような積層を有する直径300mmのウェハである。エッチング構造体1200はバリア層1210,バリア層1210上の中間誘電層(ILD)1220,ILD層1220上のキャップ層1230,キャップ層1230上の反射防止層つまりARC1240,ARC層1240上のフォトレジスト層つまりPR1250を含む。各例において,バリア層1210は米国カリフォルニア州サンホセのアプライドマテリアル社から入手可能なエヌブロックであり,エッチストップとして機能する。ILD層1220の誘電性材料はSiCOH,カリフォルニア州サンホセのアプライドマテリアル社から入手可能な,上述のブラックダイヤモンドIである。キャップ層1230はTEOS層であり,ARC層1240は標準的な有機反射防止層である。即ち,ARCはミズーリ州ロラのブリューワ社から入手可能なブリューワARC29Aである。SiO_(2),SiC,Si_(3)N_(4)を含み得るキャップ層は,CMP平坦化に耐え得るように低k構造体に対する機械的強度を増強するために使用される。使用するフォトレジスト1250はTOK7A7O,193nmフォトレジストであり,川崎市の東京応化工業TOK社から入手可能である。」

「【0179】
実施例8
本発明の実施形態の追加例は,多段階エッチング処理によってバイアをエッチングすることを含み,誘電層は低流量水素混合ガスを用いてエッチングされる。本例において,バイアス電力は2MHzバイアス50%と13.56MHzバイアス50%との組み合わせである。低流量水素とは,その他の例で示した高い水素流量と比較してのものである。本例で得られるエッチングしたバイアは,図14の断面図に示される。
【0180】
本例の第1工程は,図12に示される構造体を供給することである。図に示されるように,構造体1200は,詳細に上述したような様々な層及び構造を有する。また,記載したように,エッチングはアプライドDFBイネーブラー・エッチ内で300mmウェハを用いて行う。
【0181】
これらのエッチング工程の第1番目は,ARC及びキャップ層を,後に誘電層をエッチングできるように貫通してエッチングするARC開口及びTEOSキャップ開口エッチングである。ARC開口エッチング中,混合ガスはCF_(4)を150sccm,CHF_(3)を30sccm含み,圧力は30mTorrである。バイアスは13.56MHz,2000ワット,電源は0ワットである。アプライドDFBイネーブラー・エッチのNSTU設定は1.35,CSTU内部/外部(i/o)設定は4/0,ウェハ/チャック冷却ヘリウム(He)内部/外部(内-外)圧力は10T-10Tである。エッチング時間は30秒である。
【0182】
次に,400sccm,20mTorrのArを用い,バイアス13.56MHz,200ワット,電源150ワットで移行工程を行う。DFBイネーブラー・エッチのNSTU設定は3,CSTU内部/外部(i/o)設定は4.7/0,ウェハ/チャック冷却ヘリウム(He)内部/外部(内-外)圧力は20T-10Tである。移行工程の時間は5秒である。
【0183】
ARC及びキャップ層を開口した後,本エッチングを行って誘電層をエッチングする。本例において,本エッチングは2部に分けられる。第1本エッチングME1と第2本エッチングME2である。ME1中に適用する混合ガスは,50sccmのH_(2),15sccmのC_(4)F_(6),30sccmのCH_(2)F_(2),150sccmのN_(2),400sccmのArを含み,圧力は15mTorrである。エッチング用に発生させるプラズマのRFバイアスは2MHz,600ワット,13.56MHz,600ワットであり,電源は150ワットである。アプライドDFBイネーブラー・エッチのNSTU設定は3,CSTU内部/外部(i/o)設定は4.7/0,ウェハ/チャック冷却ヘリウム(He)内部/外部(内-外)圧力は20T-10Tである。一旦プラズマが発生したら,構造体を30秒間エッチングする。
【0184】
ME2中に適用する混合ガスは流量0sccmのH2,15sccmのC_(4)F_(6),20sccmのCH_(2)F_(2),200sccmのN_(2),200sccmのArを含み,圧力は15mTorrである。エッチング用に発生させるプラズマのRFバイアスは2MHz,1500ワット及び13.56MHz,1500ワットであり,電源は150ワットである。アプライドDFBイネーブラー・エッチのNSTU設定は3,CSTU内部/外部(i/o)設定は4.7/0,ウェハ/チャック冷却ヘリウム(He)内部/外部(内-外)圧力は20T-10Tである。一旦プラズマが発生したら,構造体を15秒間エッチングし,バリア層1210に達する直前にエッチングを終了する。
【0185】
次に,バリア層1210をエッチングするために,オーバーエッチングつまりOE工程を用いる。本例のオーバーエッチング工程は,流量13sccmのC_(4)F_(6),200sccmのN_(2),200sccmのArを含み,圧力は20mTorr,RFバイアスは2MHz,1500ワット及び13.56MHz,1500ワット,電源は0ワット,NSTU設定は9,CSTU設定は2.5/0,He内-外は15T-15T,時間は45秒である。」

上記記載から,引用文献12には,バリア層1210(本願発明の「キャップ層」に相当),SiCOHからなるILD層1220,Si_(3)N_(4)等を含み得るキャップ層1230及び反射防止層1240(本願発明の「ハードマスク」に相当)からなる構造体を,エッチング条件が各段階において異なる多段階エッチング処理によって,プラズマエッチングする方法が記載されているものと認められる。

シ 引用文献13(特開2000-150415号公報:原査定の引用文献2)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項5】 半導体基板の表面上に酸化膜を形成する工程と,フォトリソグラフィにより前記酸化膜のコンタクト形成予定領域をエッチングしてコンタクトを途中まで形成する第1エッチング工程と,前記第1エッチング工程よりも低い温度で前記酸化膜を更にエッチングしてコンタクトを途中まで形成する第2エッチング工程と,前記第2エッチング工程よりも低い温度で前記酸化膜を更にエッチングしてコンタクトを形成する第3エッチング工程と,を有することを特徴とする半導体装置のコンタクト形成方法。」

上記記載から,引用文献13には,エッチング中に基板温度を段階的に下げてドライエッチングする技術的事項が記載されていると認められる。

ス 引用文献14(特開平09-232281号公報:原査定の引用文献3)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0024】次に,図4に示したエッチング装置1を用いた本発明のドライエッチング処理方法の第2実施形態例を,図2(a)?(c)を参照して説明する。この処理方法は,本発明の方法を,コンタクトホールをエッチング処理によって加工する方法に適用した例である。すなわち,この例は,図2(a)に示すようにシリコン基板40上のSiO_(2 )層41の上にフォトレジストパターン42を形成した試料Wの,SiO_(2 )層41をエッチング処理してこれをフォトレジストパターン42に対応したパターン形状に加工するもので,第1ステップとして常温でジャストエッチング(メインエッチング)を,続く第2ステップとして低温によるオーバーエッチングを行うものである。
【0025】まず,以下の条件で第1ステップのジャストエッチングを行い,図1(b)に示すようにSiO_(2 )層41を,薄膜となる一部を残した状態にまでエッチング除去する。
・第1ステップ(ジャストエッチング)
エッチングガス;C_(4) F_(8) /O_(2 ) 50/10SCCM
圧 ;5mTorr
ソースパワー1(RFアンテナ4);2500W(13.56Hz)
ソースパワー2(RFアンテナ3,3);2500W(13.56Hz)
パルスON/OFF;10μsec/30μsec
RFバイアス ;500W
試料温度 ;20℃
なお,ここでの試料温度調整についても,第1実施形態例の場合と同様に,ステージ12に備えられた静電チャックのヒータ(図示略)とチラー17による冷却とを併用して行い,特に前述した制御装置23による冷却制御によって試料温度を微調整している。
<途中省略>
【0028】続いて,放電を再度行って以下の条件で低温(-50℃)による第2ステップのオーバーエッチングを行い,図2(c)に示すようにシリコン基板40上に露出した状態で残ったSiO_(2) 層41の一部をエッチング除去し,コンタクトホール43を形成する。
・第2ステップ(オーバーエッチ)
エッチングガス;C_(4) F_(8) /O_(2) 50/10SCCM
圧 ;5mTorr
ソースパワー1(RFアンテナ4);2500W(13.56Hz)
ソースパワー2(RFアンテナ3,3);2500W(13.56Hz)
パルスON/OFF;10μsec/30μsec
RFバイアス ;200W
試料温度 ;-50℃」

上記記載から,引用文献14には,エッチング中に基板温度を段階的に下げてドライエッチングする技術的事項が記載されていると認められる。

セ 引用文献15(特開平04-096224号公報:原査定の引用文献4)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「2 特許請求の範囲
1.被エッチング材の少なくとも被エッチング部を0℃以下にした状態でエッチングを行う低温エッチング方法において,
該被エッチング部はエッチング特性の異なる2以上の層を有する多層膜であり,
該多層膜を構成する各層のエッチングは,各層に適正な堆積性ガスを添加したエッチングガスにより該エッチングを行うものであることを特徴とする低温エッチング方法。
2.被エッチング材の少なくとも被エッチング部を0℃以下にした状態でエッチングを行う低温エッチング方法において,
エッチングは複数のエッチングチェンバーを有するエッチング装置により行い,
上記被エッチング部のエッチングは,温度を互いに異ならしめたエッチングチェンバーにより行うことを特徴とする低温エッチング方法。
3.該被エッチング部はエッチング特性の異なる2以上の層を有する多層膜であり,
上記被エッチング部である該多層膜を構成する各層のエッチングは,各層に適正な温度に制御した各エッチングチェンバー内で行うことを特徴とする請求項2に記載の低温エッチング方法。
4.該被エッチング部は単層膜であり,はじめに高温条件で高速エッチングを行い,次いで低温条件で高選択エッチングを行うことを特徴とする請求項2に記載の低温エッチング方法。」

上記記載から,引用文献15には,エッチング中に基板温度を段階的に下げてドライエッチングする技術的事項が記載されていると認められる。

ソ 引用文献16(特開2004-336038号公報:原査定の引用文献5)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0044】
多孔質のSiCOH型の誘電体を部分的にエッチングして平滑なエッチングフロントを得るための最良の公知なプロセス条件は,したがって,次の通りである。
【0045】
エッチングガス:80sccmCF_(4),40sccmH_(2),400sccmAr,CF_(4)及びH_(2)における5%の変動では,CF_(4):H_(2)比が約2:1に保たれている限り,同様な結果が得られるであろう。
エッチングプロセスの圧力:200mTorr
プラズマの電力:1000W;ウエハプレートに対して13.56MHzが与えられる(RIE)。(「ウエハレンズ効果」を避けるため,圧力が増加した時に電力を増加させる必要がある。)
ウエハ表面の温度:100?170℃(例えば,プラテン温度及び(又は)ヘリウムによるウエハ背圧の熱的結合の制御による)」

上記記載から,引用文献16には,SiCOH型の誘電体を部分的にエッチングして平滑なエッチングフロントを得るための最良の公知なプロセス条件として,ウエハ表面の温度:100?170℃というものがあるという技術的事項が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明1の「シリコン酸化膜である層間絶縁膜」と,本願発明1の「SiCOH含有層を含む絶縁層」は,「絶縁層」である点で一致する。

イ 引用発明1の「エッチングストッパ」,「『エッチングマスク』とされた『ポリシリコン膜』」,「2周波平行平板型エッチング装置」,「ホールパターン」は,本願発明1の「キャップ層」,「ハードマスク」,「プラズマエッチングシステム」,「パターン」に相当する。

ウ 基板の温度制御を,「温度制御された基板ホルダ」で行うことは通常の方法であるから,引用発明1の基板の「温度制御」は,「温度制御された基板ホルダ」で行われているものと理解できる。

エ 引用発明1の「ホールの形状異常は発生せずに,レジストマスクのホールパターンに合わせてエッチングマスクをパターニングする」は,本願発明1の「『制御されたプロファイル』『を実現』」に相当する。

オ 引用発明1と,本願発明1とは,「第2エッチングプロセスにおける第2基板温度」を,絶縁層とキャップ層との間でのエッチング選択性を実現するために制御している点で一致する。

したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「絶縁層をパターニングする方法であって:
キャップ層,前記キャップ層を覆う絶縁層,及び,前記絶縁層を覆うハードマスクを有する膜積層体を基板上に準備する工程;及び
基板温度制御法に従って,プラズマエッチングシステム内の温度制御された基板ホルダを利用する一連のエッチング処理を前記プラズマエッチングシステム内で実行することによって,前記膜積層体を貫通してパターンを転写する工程;
を有し,
前記基板温度制御法は:
前記パターンを前記ハードマスクを貫通して転写するときに制御されたプロファイルを実現するために,第1エッチングプロセスにおける第1基板温度を制御する工程;
前記絶縁層を貫通して前記パターンを転写するときに前記絶縁層と前記キャップ層との間でのエッチング選択性を実現するために第2基板温度を制御する工程;及び,
前記キャップ層を貫通して前記パターンを転写する第3エッチングプロセス工程;
を有する,
方法。」

(相違点)
(相違点1)一致点に係る「キャップ層,前記キャップ層を覆う絶縁層,及び,前記絶縁層を覆うハードマスクを有する膜積層体」が,本願発明1では,「キャップ層」が「シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する」ものであり,「絶縁層」が「SiCOH含有層を含む絶縁層」であり,「ハードマスク」が「Si及びOを含む少なくとも1層の層又は金属を含む少なくとも1層の層」の組合せからなる膜積層体であるのに対して,引用発明1では,「シリコン窒化膜」,「シリコン酸化膜である層間絶縁膜」及び「ポリシリコン膜」の組合せからなる膜積層体である点。

(相違点2)パターンをハードマスクを貫通して転写するときの第1エッチングプロセスにおける「第1基板温度」,絶縁層を貫通してパターンを転写するときの第2エッチングプロセスにおける「第2基板温度」,及びキャップ層を貫通してパターンを転写する第3エッチングプロセスにおける「第3基板温度」の制御が,本願発明1では,「第1基板温度」が「20℃よりも低い」温度であり,「第2基板温度」が「第1基板温度よりも高温である」温度であり,「第3基板温度」が「第2基板温度よりも低温」に制御されるものであるのに対して,引用発明1では,第1基板温度が「100℃以下でも不都合は生じない」ものとされ,第2基板温度が「100℃以上」に制御され,第3基板温度の制御については特定されていない点。

(相違点3)第1エッチングプロセスにおける基板温度の制御が,本願発明1では,パターンをハードマスクを貫通して転写するときに「『限界寸法(CD)を実現するため』,『及び任意で前記パターンを前記SiCOH含有層へ部分的に転写するために』」にも行われるものであるのに対して,引用発明1は,そのような目的が特定されていない点。

(相違点4)第2エッチングプロセスにおける基板温度の制御が,本願発明1では,「『SiCOH含有層とハードマスクとの間』『でのエッチング選択性』」を実現するためにも行われるものであるのに対して,引用発明1は,そのような目的が特定されていない点。

(2)相違点についての判断
ホールの形状異常の程度,エッチング選択性の大小は,エッチング対象の材質と温度の組合せによって変化するから,材質に係る相違点1と温度制御に係る相違点2とを一体として検討する。
上記引用文献1ないし16には,「キャップ層」が「シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する」材料であり,「絶縁層」が「SiCOH含有層を含む絶縁層」である組合せを含む膜積層体において,20℃よりも低い第1基板温度よりも高温である第2基板温度に基板温度を制御して,「絶縁層」を「キャップ層」に対して高いエッチング選択比でエッチング処理を行い,その後,「第2基板温度よりも低温である第3基板温度」で「キャップ層」に対してエッチング処理を行うという技術的事項は記載されておらず,本願優先日前において周知技術であるともいえない。
してみれば,キャップ層が「シリコン窒化膜」であり,「絶縁層」が「シリコン酸化膜」である組合せを含む膜積層体を,100℃以上の基板温度に制御して,C_(5)F_(8)を含むエッチングガスを用いることで,「シリコン窒化膜」に対して「シリコン酸化膜」を高いエッチング選択比でエッチング処理を行うことを特徴とする引用発明1において,「キャップ層」として前記「シリコン窒化膜」に替えて「シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する」材料を用い,「絶縁層」として前記「シリコン酸化膜」に替えて「SiCOH含有層を含む絶縁層」を用いるように変更した上で,基板温度制御を,「20℃よりも低い第1基板温度よりも高温」に制御して絶縁層をエッチング処理した後に,「第2基板温度よりも低温」となるように制御するように変更してキャップ層に対してエッチング処理を行うようにすることは,これら一連の変更を行う動機を見いだすことができないことから,当業者が容易になし得たこととはいえない。
そして,本願発明1は,「キャップ層」が「シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する」材料であり,「絶縁層」が「SiCOH含有層を含む絶縁層」であり,「ハードマスク」が「Si及びOを含む少なくとも1層の層又は金属を含む少なくとも1層の層」であるという組合せからなる積層体材料に対して,「20℃よりも低い」第1基板温度,「第1基板温度よりも高温である第2基板温度」,「第2基板温度よりも低温である第3基板温度」という基板温度制御を伴うエッチング処理を行うことによって,本願の発明の詳細な説明に記載された,金属インターコネクトのために絶縁層の積層体にlow-k材料を実際に実装する際に存在する多くの課題の一であって,トレンチ及びビア構造用の特定の限界寸法(CD)を実現しながら下地のインターコネクト層へ損傷を及ぼすことなく絶縁層の積層体を選択的にパターニングするという課題(本願明細書【0005】)を解決するという顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明1,引用文献1ないし16に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし13について
本願の請求項2ないし13は,請求項1を直接または間接に引用する発明であって,本願発明1の発明特定事項を全て含むから,本願発明2ないし13もまた,本願発明1と同じ理由により,引用発明1,引用文献1ないし16に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明14,18,及び本願発明15ないし17について
本願発明14,18は,本願発明1を,基板上にトレンチ-ビア構造を準備する方法に適用した発明であって,本願発明14,18は,いずれも本願発明1の上記相違点1,2に相当する構成を備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,引用発明1,引用文献1ないし16に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
さらに,本願発明15ないし17は,請求項14を引用する発明であって,本願発明14の発明特定事項を全て含むから,本願発明15ないし17もまた,本願発明14と同じ理由により,引用発明1,引用文献1ないし16に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
当審では,本願明細書の記載からは,”LEL”=下部電極の温度が,60℃である場合に,「前記SiCOH含有層とその下の前記キャップ層との間でのエッチング選択性」を実現することができると当業者が予測することは困難といえる等の拒絶理由を通知しているが,平成29年10月11日付けの補正において,「前記キャップ層は,シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する」とする発明特定事項を付加する補正がされるとともに意見書において説明がなされた結果,これらの拒絶の理由は解消した。

第8 特許法第36条第6項第2号(発明の明確性要件)について
(1)当審では,補正前の請求項1の文頭に「絶縁層をパターニングする方法であって:・・・」とあるが,これに続く請求項1の文中には,「絶縁層」との用語が記載されていないから請求項1に記載された発明を明確に把握することができないとの拒絶理由を通知しているが,平成29年10月11日付けの補正において,補正前の「絶縁層」を,「SiCOH含有層を含む絶縁層」とする補正がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では,「請求項1には,『前記SiCOH含有層とその下の前記キャップ層との間でのエッチング選択性を実現する基板温度制御法・・・前記基板温度制御法は:前記パターンを前記ハードマスクを貫通して転写するときに制御されたプロファイルと限界寸法(CD)を実現するために,及び任意で前記パターンを前記SiCOH含有層へ部分的に転写するために,第1エッチングプロセスにおける第1基板温度を制御する工程であって,前記第1基板温度は20℃よりも低い,工程;前記SiCOH含有層を貫通して前記パターンを転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスクとの間でのエッチング選択性を実現するために第2エッチングプロセスにおける前記第1基板温度よりも高温である第2基板温度を制御する工程・・・』とあり,請求項1の記載は,文の前半で特定する『基板温度制御法』を,文の後半において,『前記基板温度制御法は:』として説明する構造となっている。しかしながら,前記記載は,文の前半で,『SiCOH含有層とその下の前記キャップ層との間でのエッチング選択性』の実現を特定するのに対して,文の後半では,『前記SiCOH含有層と前記ハードマスクとの間でのエッチング選択性』を実現することが特定されており,選択性を実現する対象が文の前半と後半で整合していない。したがって,請求項1に係る発明を明確に把握することができない。請求項16,請求項20も同様である。」との拒絶理由を通知しているが,平成29年10月11日付けの補正において,文の前半の「前記SiCOH含有層とその下の前記キャップ層との間でのエッチング選択性を実現する基板温度制御法」を「基板温度制御法」と補正し,文の後半の「前記SiCOH含有層を貫通して前記パターンを転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスクとの間でのエッチング選択性を実現するため」を,「前記SiCOH含有層を貫通して前記パターンを転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスク層との間および前記SiCOH含有層と前記キャップ層との間でのエッチング選択性を実現するために」とする補正がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

(3)当審では,「請求項20に『前記ビアパターニング層中のビアパターン層を前記SiCOH含有層へ少なくとも部分的に転写する工程』とあるが,当該記載の『前記ビアパターニング層』の『前記』に対応する記載が,請求項20に存在しない。また,『ビアパターン層』を転写は,日本語として理解することができない。(『層』の転写は,日本語として不自然である。)」,及び,「【0032】の『(ii)パターン160を,絶縁層130を貫通するように転写する第2エッチングプロセスにおいて前記第1基板温度よりも低温となるように第2基板温度を制御する工程』は,『(ii)パターン160を,絶縁層130を貫通するように転写する第2エッチングプロセスにおいて前記第1基板温度よりも高温となるように第2基板温度を制御する工程』の誤記ではないのか。」との拒絶理由を通知しているが,平成29年10月11日付けの補正において補正がされた結果,これらの拒絶の理由は解消した。

第9 特許法第36条第4項第1号(発明の実施可能要件)について
当審では,「発明の詳細な説明には,『キャップ層』,『SiCOH含有層』,『ハードマスク』,『平坦化層』の具体的な組成,及び,各層を『エッチング処理』する際の具体的なエッチング条件が記載されていない。そして,エッチング特性が,材料によって異なることは当業者において周知の事項である。そうすると,『キャップ層』,『SiCOH含有層』,『ハードマスク』,『平坦化層』の材料,及び,各層を『エッチング処理』する際の具体的なエッチング条件を選定して,『SiCOH含有層とその下の前記キャップ層との間でのエッチング選択性を実現』し,かつ,『SiCOH含有層を貫通して前記パターンを転写するときに前記SiCOH含有層と前記ハードマスクとの間でのエッチング選択性を実現』するために,当業者は過度の試行錯誤を要すると認められる。しかも,本願の請求項6,8,9に係る発明においては,『ハードマスク』及び『キャップ層』は,複数の層を有するのであるから,これら複数の層の特性を考慮した上で,前記選択性を実現することは,さらに困難といえる。すなわち,発明の詳細な説明の記載は,当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分なものとは認められない。」との拒絶理由を通知しているが,平成29年10月11日付けの補正において,「前記キャップ層は,シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する」ことを特定する補正がなされ,さらに意見書において説明がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

第10 原査定についての判断
平成29年10月11日付けの補正により,補正後の請求項1ないし18は,「キャップ層」が「シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する」材料であり,「絶縁層」が「SiCOH含有層を含む絶縁層」であり,「ハードマスク」が「Si及びOを含む少なくとも1層の層又は金属を含む少なくとも1層の層」である積層体材料,及び,「20℃よりも低い」第1基板温度,「第1基板温度よりも高温である第2基板温度」,「第2基板温度よりも低温である第3基板温度」という制御という技術的事項を有するものとなった。
そして,当該「キャップ層」が「シリコンカーバイド(Si_(x)C_(y)),シリコン炭窒化物(SiC_(x)N_(y)),又はSiC_(x)N_(y)H_(z),又はこれらの2種以上の組み合わせを有する」材料であり,「絶縁層」が「SiCOH含有層を含む絶縁層」であり,「ハードマスク」が「Si及びOを含む少なくとも1層の層又は金属を含む少なくとも1層の層」である積層体材料,及び,「20℃よりも低い」第1基板温度,「第1基板温度よりも高温である第2基板温度」,「第2基板温度よりも低温である第3基板温度」という制御という技術的事項は,原査定における引用文献1ないし8には記載されておらず,本願優先権主張の日前における周知技術でもないので,本願発明1ないし18は当業者であっても,原査定における引用文献1ないし8に基づいて容易に発明をすることはできない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第11 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-18 
出願番号 特願2013-514243(P2013-514243)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 将之杢 哲次  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 加藤 浩一
須藤 竜也
発明の名称 金属インターコネクトのために絶縁積層体を選択的にエッチングする方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  

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