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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1335777 |
審判番号 | 不服2016-16994 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-14 |
確定日 | 2018-01-16 |
事件の表示 | 特願2014-509280「他のオペレーティング・システムへのブート動作の動的なリダイレクト」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月 8日国際公開、WO2012/150956、平成26年 5月29日国内公表、特表2014-513365、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2011年10月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年5月5日(以下,「優先日」という。),米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成25年11月 1日 :国内書面の提出 平成26年 9月29日 :出願審査請求書の提出 平成27年11月25日付け :拒絶理由の通知 平成28年 2月26日 :意見書,手続補正書の提出 平成28年 7月 6日付け :拒絶査定(原査定) 平成28年11月14日 :審判請求書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成28年7月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 <理由2(特許法第29条第2項)について> 本願請求項1-10に係る発明は,以下の引用文献1-3に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2009- 86955号公報 2.特開2009- 37467号公報 3.特開2008-192126号公報 第3 本願発明 本願請求項1-10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は,平成28年2月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 コンピュータにより実装される方法であって: コンピュータ装置のブート動作の動的なリダイレクト制御を有効化するステップ; 前記コンピュータ装置の上に可搬型記憶装置が存在するか否かを判定するステップ; 前記可搬型記憶装置が存在すると判定されたことに応じて,前記可搬型記憶装置が,前記コンピュータ装置をブートする起点として許可可能な記憶装置であるか否かを判定するステップ;及び 前記可搬型記憶装置が前記許可可能な記憶装置であると判定されたことに応じて,事前にプログラムされた直列的なブート実行順序を含むブート実行モジュールを手動で修正することなく,前記コンピュータ装置のブート動作を,前記可搬型記憶装置の上に記憶されているオペレーティング・システムへと動的にリダイレクトするステップであって,該動的にリダイレクトするステップは,前記コンピュータ装置のプラットフォーム・ファームウェアに対してプログラムされたロジックによりコマンドを発行し,前記可搬型記憶装置に関連するブート・エントリを追加することを実行可能にする動作を具備する,動的にリダイレクトするステップ; を具備する方法。」 なお,本願発明2-10の概要は以下のとおりである。 本願発明2-7は,本願発明1を減縮した発明である。 本願発明8は,本願発明1-7のいずれかに対応する「コンピュータ・プログラム」の発明であり,本願発明1-7のいずれかとカテゴリの表現が異なるだけの発明である。 本願発明9は,本願発明1-7のいずれかに対応する「コンピュータ・プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能記憶媒体」の発明であり,本願発明1-7のいずれかとカテゴリの表現が異なるだけの発明である。 本願発明10は,本願発明1に対応する「コンピュータ装置」の発明であり,本願発明1とカテゴリの表現が異なるだけの発明である。 第4 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開2009- 86955号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 A 「【0028】 次に,図2を参照して,カメラ装置10および外部機器20それぞれの具体的なシステム構成の例を説明する。 …(中略)… 【0032】 外部機器20は,図示のように,上述のCPU21およびメモリ(メインメモリ)22に加え,ブリッジデバイス23,グラフィクスプロセッシングユニット(GPU)24,表示部25,I/Oコントローラ26,ハードディスクドライブ(HDD)27,ブートROM28,およびブリッジデバイス29等を備えている。図2に示す外部機器20のシステム構成は,外部機器20がパーソナルコンピュータのような情報処理装置である場合を想定している。 【0033】 CPU21は,HDD27に格納されたオペレーティングシステムおよび各種アプリケーションプログラムを実行する。また,カメラ装置10内のHDD114からオペレーティングシステムをブートする場合は,CPU21は,HDD114に格納された上述の第2のオペレーティングシステム(OS#B)および第2の画像編集プログラム(編集アプリケーション#B)を実行する。 【0034】 ブリッジデバイス23は,CPU21のローカルバスとI/Oコントローラ26との間を接続する。このブリッジデバイス23には,GPU24との通信を制御する機能も設けられている。GPU24は各種描画処理機能および各種画像処理機能を有する表示コントローラであり,表示部25に表示すべき画面イメージを形成する映像信号を生成する。表示部25は例えば液晶表示装置(LCD)から構成されており,外部機器20のディスプレイモニタとして使用される。表示部25の表示画面サイズおよび表示解像度は,カメラ装置10の表示部116の表示画面サイズおよび表示解像度よりもそれぞれ大きい。 【0035】 ブートROM28には,基本入出力プログラム(BIOS)のようなモニタプログラムが格納されている。このモニタプログラムは,外部機器20内のHDD27またはカメラ装置10内のHDD114からオペレーティングシステムをブートする処理を実行する。ブリッジデバイス29は,外部機器20に設けられたI/Oコネクタ30に接続されたケーブル1を介して,カメラ装置10Sとの通信を実行する。ブリッジデバイス29は,例えば,USBコントローラから実現されている。 【0036】 通常,外部機器20においては,モニタプログラムは,HDD27にインストールされているオペレーティングシステムをブートする。外部機器20にケーブル1を介してカメラ装置10が接続されている状態においては,モニタプログラムは,カメラ装置10のHDD114から第2のオペレーティングシステム(OS#B)をブートすることができる(外部OSブート機能)。カメラ装置10のHDD114から第2のオペレーティングシステム(OS#B)をブートするためには,外部OSブート機能を予め有効にしておくことが必要である。 【0037】 外部OSブート機能がユーザによって予め有効に設定されている場合においては,外部機器20の電源オンに応答して,モニタプログラムは,HDD27,および外部ブートデバイス(カメラ装置10のHDD114)のどちらからオペレーティングシステムを起動するかをユーザに指定させるためのメニューを,表示部25の表示画面上に表示する。ユーザが外部ブートデバイス(カメラ装置10のHDD114)を選択したならば,モニタプログラムは,ブリッジデバイス29が管理する外部I/O空間内の所定のアドレスを指定するリード要求を発生する。このリード要求は第2のオペレーティングシステム(OS#B)を外部ブートデバイスからリードするためのリード要求であり,ブリッジデバイス29を介してカメラ装置10に送信される。」 B 「【0065】 次に,図8のフローチャートを参照して,外部機器20によって実行されるブート処理の手順を説明する。 【0066】 外部機器20が電源オンされた時,外部機器20のCPU21は,ブートデバイス(またはブート可能デバイスと称されることもある)を検出し,外部機器20に接続された外部ブートデバイスが存在するか否かを判定する(ステップS201)。外部機器20にカメラ装置10が接続されている場合には,カメラ装置10のHDD114が外部ブートデバイスとして検出される。 【0067】 外部ブートデバイスが検出されなかったならば(ステップS201のNO),CPU21は,内部ブートデバイス(例えば,外部機器20内のHDD27)からオペレーティングシステムをブートする処理(内部ブート処理)を実行する(ステップS202)。 【0068】 外部ブートデバイスが検出されたならば(ステップS201のYES),CPU21は,検出された外部ブートデバイスからオペレーティングシステムをブートするための外部ブート処理を実行するか否かをユーザに指定させるメニューを表示装置25の表示画面上に表示する。ユーザが外部ブート処理の実行を指定したならば(ステップS203のYES),CPU21は,HDD114のOS#B領域からオペレーティングシステム(OS#B)をブートするための外部ブート処理を実行する(ステップS204)。 【0069】 このステップS204では,CPU21は,HDD114のOS#B領域をリード対象領域として指定するリード要求をブリッジデバイス29を介してカメラ装置10に送信する。そして,CPU21は,カメラ装置10から転送されるオペレーティングシステム(OS#B)をメモリ22にロードして,オペレーティングシステム(OS#B)をブートする。」 したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「外部機器によって実行されるブート処理の方法であって, 外部機器が電源オンされた時,外部機器のCPUは,ブートデバイスを検出し,外部機器にケーブルを介して接続された外部ブートデバイスが存在するか否かを判定し, 外部ブートデバイスが検出されなかったならば,CPUは,内部ブートデバイスからオペレーティングシステムをブートする処理を実行し, 外部ブートデバイスが検出されたならば,CPUは,検出された外部ブートデバイスからオペレーティングシステムをブートするための外部ブート処理を実行するか否かをユーザに指定させるメニューを表示装置の表示画面上に表示し, ユーザが外部ブート処理の実行を指定したならば,CPUは,外部ブートデバイスのHDDの領域からオペレーティングシステムをブートするための外部ブート処理を実行し, 外部ブート処理を実行するステップでは,CPUは,外部ブートデバイスのHDDの領域をリード対象領域として指定するリード要求をブリッジデバイスを介して外部ブートデバイスに送信し,次に,CPUは,外部ブートデバイスから転送されるオペレーティングシステムをメモリにロードして,オペレーティングシステムをブートすることを特徴とする,方法。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2009- 37467号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 C 「 【0032】 [通常起動時] 通常起動時の動作は従来と同様であるが,予めBIOSの起動デバイス設定情報の検知許可デバイスはHDDのみ,起動順はHDDのみに設定されているものとし,起動デバイス設定情報は不揮発性記憶領域(ROM12)に記憶されているものとする。」 D 「 【0042】 一方,ステップS206で,制御ソフトウェア(デバイス判定部18)による照合によりパスワードが一致した場合は,装填されたUSBメモリ20は正規のアップデート用記憶デバイスであると判定し,起動順変更部19は,起動デバイス設定情報の書き換えを行うが,その際,ROM12の起動デバイス設定情報を書き換えてしまうと,電源をオフにした後もUSBメモリ20で起動可能になってしまうため好ましくない。そこで,本実施例では,ステップS207で,起動順変更部19は,ROM12に記憶された起動デバイス設定情報は書き換えず,RAM13上に読み込まれている起動デバイス設定情報のみを書き換える。具体的には,検知許可情報の検知許可デバイスをHDD14からUSBメモリ20に変更すると共に,起動順情報をHDD14からUSBメモリ20に変更する。」 したがって,上記引用文献2には, 「通常動作時における起動順情報に含まれないデバイスを接続した際に,該デバイスを起動デバイスとして認識する」 という技術的事項が記載されていると認められる。 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2008-192126号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。 E 「【0068】 周辺機器の初期化が完了すると,第2の記録メディア25の特定解除キーファイルが格納された固定セクタをリードして特定解除キー(たとえば「xyz20060925」など)を取得し(ステップS104),第2の記録メディア25(USBメモリ)が起動を許可されたものであるか否かを判断する(ステップS105)。 【0069】 特定解除キーが認証され,第2の記録メディア25からの起動が許可された場合は(ステップS105;許可),第2の記録メディア25のマスターブートレコード(MBR)をシステムメモリ12上にロードし,そこに書かれた起動プログラムに制御を移す(ステップS106)。」 したがって,上記引用文献3には, 「起動プログラムを記録し,起動デバイスとして接続されたUSBメモリが起動許可されたものか否かを判断する」 という技術的事項が記載されていると認められる。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明は,「外部機器によって実行されるブート処理の方法」であるところ,「外部機器」は「CPU」や「メモリ」を備え,ブート処理を実行することから,本願発明1の「コンピュータ装置」に相当するといえ,また,「外部機器」に「ブート処理」が実装されることは明らかである。 そうすると,引用発明と本願発明1とは,“コンピュータ装置により実装される方法”である点で共通するといえる。 イ 引用発明では,「外部機器が電源オンされた時,外部機器のCPUは,ブートデバイスを検出し,外部機器にケーブルを介して接続された外部ブートデバイスが存在するか否かを判定」するところ,「外部ブートデバイス」は「ケーブル」を介して「外部機器」の上に接続され,「外部機器」をブートする起点となることから,“コンピュータ装置”の上に,ブートする起点としての“外部ブートデバイス”が存在するか否かを判定するといえる。 一方,本願発明1では,「コンピュータ装置のブート動作の動的なリダイレクト制御を有効化するステップ」,「前記コンピュータ装置の上に可搬型記憶装置が存在するか否かを判定するステップ」,「前記可搬型記憶装置が存在すると判定されたことに応じて,前記可搬型記憶装置が,前記コンピュータ装置をブートする起点として許可可能な記憶装置であるか否かを判定するステップ」を具備するところ,「可搬型記憶装置」は「コンピュータ装置」に外部接続され,「コンピュータ装置」をブートする起点となることから,上位概念では“外部ブートデバイス”とみることができ,引用発明の「外部ブートデバイス」と一致し,すると,本願発明1では,「コンピュータ装置の上に」,「前記コンピュータ装置をブートする起点として」の“外部ブートデバイス”が存在するか否かを判定するといえる。 してみると,引用発明の「外部機器が電源オンされた時,外部機器のCPUは,ブートデバイスを検出し,外部機器にケーブルを介して接続された外部ブートデバイスが存在するか否かを判定」することと, 本願発明1の「コンピュータ装置のブート動作の動的なリダイレクト制御を有効化するステップ; 前記コンピュータ装置の上に可搬型記憶装置が存在するか否かを判定するステップ; 前記可搬型記憶装置が存在すると判定されたことに応じて,前記可搬型記憶装置が,前記コンピュータ装置をブートする起点として許可可能な記憶装置であるか否かを判定するステップ」とは,後記する点で相違するものの, “前記コンピュータ装置の上に,前記コンピュータ装置をブートする起点としての外部ブートデバイスが存在するか否かを判定するステップ”である点で共通しているといえる。 ウ 引用発明では,「外部ブートデバイスが検出されたならば,CPUは,検出された外部ブートデバイスからオペレーティングシステムをブートするための外部ブート処理を実行するか否かをユーザに指定させるメニューを表示装置の表示画面上に表示し,ユーザが外部ブート処理の実行を指定したならば,CPUは,外部ブートデバイスのHDDの領域からオペレーティングシステムをブートするための外部ブート処理を実行」するところ,「外部ブートデバイスが検出されなかったならば,CPUは,内部ブートデバイスからオペレーティングシステムをブートする処理を実行」することから,「外部ブートデバイス」であると判定されたことに応じて,ユーザによる「外部ブート処理」の実行の指定を経るものの,結局,「外部機器」のブート動作を,「内部ブートデバイス」から「外部ブートデバイス」の上に記憶されている“オペレーティング・システム”へと“リダイレクト”するといえる。 一方,本願発明1では,「前記可搬型記憶装置が前記許可可能な記憶装置であると判定されたことに応じて,事前にプログラムされた直列的なブート実行順序を含むブート実行モジュールを手動で修正することなく,前記コンピュータ装置のブート動作を,前記可搬型記憶装置の上に記憶されているオペレーティング・システムへと動的にリダイレクトする」ところ,上記イでの検討より,「可搬型記憶装置」は“外部ブートデバイス”とみることができ,“外部ブートデバイス”であると判定されたことに応じて,結局,ブート動作を「リダイレクト」するのであるから,“外部ブートデバイス”であると判定されたことに応じて,「コンピュータ装置」のブート動作を,“外部ブートデバイス”の上に記憶されている「オペレーティング・システム」へと「リダイレクト」するといえる。 そうすると,引用発明の「外部ブートデバイスが検出されなかったならば,CPUは,内部ブートデバイスからオペレーティングシステムをブートする処理を実行し, 外部ブートデバイスが検出されたならば,CPUは,検出された外部ブートデバイスからオペレーティングシステムをブートするための外部ブート処理を実行するか否かをユーザに指定させるメニューを表示装置の表示画面上に表示し, ユーザが外部ブート処理の実行を指定したならば,CPUは,外部ブートデバイスのHDDの領域からオペレーティングシステムをブートするための外部ブート処理を実行し, 外部ブート処理を実行するステップでは,CPUは,外部ブートデバイスのHDDの領域をリード対象領域として指定するリード要求をブリッジデバイスを介して外部ブートデバイスに送信し,次に,CPUは,外部ブートデバイスから転送されるオペレーティングシステムをメモリにロードして,オペレーティングシステムをブートすること」と, 本願発明1の「前記可搬型記憶装置が前記許可可能な記憶装置であると判定されたことに応じて,事前にプログラムされた直列的なブート実行順序を含むブート実行モジュールを手動で修正することなく,前記コンピュータ装置のブート動作を,前記可搬型記憶装置の上に記憶されているオペレーティング・システムへと動的にリダイレクトするステップであって,該動的にリダイレクトするステップは,前記コンピュータ装置のプラットフォーム・ファームウェアに対してプログラムされたロジックによりコマンドを発行し,前記可搬型記憶装置に関連するブート・エントリを追加することを実行可能にする動作を具備する,動的にリダイレクトするステップ」とは,後記する点で相違するものの, “前記コンピュータ装置をブートする起点としての外部ブートデバイスであると判定されたことに応じて,前記コンピュータ装置のブート動作を,前記外部ブートデバイスの上に記憶されているオペレーティング・システムへとリダイレクトするステップ”である点で共通しているといえる。 したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「コンピュータ装置により実装される方法であって, 前記コンピュータ装置の上に,前記コンピュータ装置をブートする起点としての外部ブートデバイスが存在するか否かを判定するステップと, 前記コンピュータ装置をブートする起点としての外部ブートデバイスであると判定されたことに応じて,前記コンピュータ装置のブート動作を,前記外部ブートデバイスの上に記憶されているオペレーティング・システムへとリダイレクトするステップと, を具備する方法。」 (相違点) (相違点1) 本願発明1は,「コンピュータ装置のブート動作の動的なリダイレクト制御を有効化するステップ」を具備するのに対して,引用発明は,そのような構成を備えるか不明である点。 (相違点2) 外部ブートデバイスに関し,本願発明1では,「可搬型記憶装置」を用いるのに対して,引用発明では,「外部機器」と「ケーブル」を介して接続された「外部ブートデバイス」を用いる点。 (相違点3) 外部ブートデバイスが存在するか否かの判定に関し,本願発明1では,「コンピュータ装置の上に可搬型記憶装置が存在するか否かを判定」し,「前記可搬型記憶装置が存在すると判定されたことに応じて,前記可搬型記憶装置が,」「許可可能な記憶装置であるか否かを判定する」のに対して, 引用発明では,「外部機器にケーブルを介して接続された外部ブートデバイスが存在するか否かを判定」するものの,「外部ブートデバイス」が許可可能な記憶装置であるか否かを判定していない点。 (相違点4) コンピュータ装置におけるブート動作のリダイレクトに関し,本願発明1では,「事前にプログラムされた直列的なブート実行順序を含むブート実行モジュールを手動で修正することなく,前記コンピュータ装置のブート動作を,前記可搬型記憶装置の上に記憶されているオペレーティング・システムへと動的にリダイレクト」し,「リダイレクト」は「コンピュータ装置のプラットフォーム・ファームウェアに対してプログラムされたロジックによりコマンドを発行し,前記可搬型記憶装置に関連するブート・エントリを追加することを実行可能にする動作」を含むのに対して, 引用発明では,「CPUは,検出された外部ブートデバイスからオペレーティングシステムをブートするための外部ブート処理を実行するか否かをユーザに指定させるメニューを表示装置の表示画面上に表示し,ユーザが外部ブート処理の実行を指定したならば,CPUは,外部ブートデバイスのHDDの領域からオペレーティングシステムをブートするための外部ブート処理を実行」する点。 (2)相違点についての判断 ア 相違点4について 引用発明では,「外部ブートデバイスが検出されたならば,CPUは,検出された外部ブートデバイスからオペレーティングシステムをブートするための外部ブート処理を実行するか否かをユーザに指定させるメニューを表示装置の表示画面上に表示」するところ,「外部ブートデバイス」が検出された後に,ユーザの指定に応じて,「ユーザが外部ブート処理の実行を指定したならば,CPUは,外部ブートデバイスのHDDの領域からオペレーティングシステムをブートするための外部ブート処理を実行」するものであり,ブートデバイスの選択はユーザの判断に基づいている。そうすると,引用発明において,外部ブートデバイスにリダイレクトするための「ブート実行モジュール」をユーザが手動で修正することなく,ブート動作を自動的にリダイレクトするように構成することへの動機付けは直ちには認められない。 また,「外部ブートデバイス」に記憶されたオペレーティング・システムへのリダイレクトを実行するに当たり,本願発明1の如く,「コンピュータ装置のプラットフォーム・ファームウェアに対してプログラムされたロジックによりコマンドを発行し,前記可搬型記憶装置に関連するブート・エントリを追加すること」により,ユーザの介入を要することなく実現することは,引用文献2,3に記載の技術的事項と相違するものであり,当該技術分野における周知技術であるともいえない。 したがって,引用発明において,検出された外部ブートデバイスから外部ブート処理を実行するか否かをユーザに指定させることに代えて,適宜,許可可能な可搬型記憶装置であると判定されたことに応じて,事前にプログラムされた直列的なブート実行順序を含むブート実行モジュールを手動で修正することなく,コンピュータ装置のプラットフォーム・ファームウェアに対してプログラムされたロジックによりコマンドを発行し,前記可搬型記憶装置に関連するブート・エントリを追加すること,すなわち,上記相違点4に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たものであるとはいえない。 イ まとめ 上記相違点1-3について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2-7について 本願発明2-7は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明1の「可搬型記憶装置が前記許可可能な記憶装置であると判定されたことに応じて,事前にプログラムされた直列的なブート実行順序を含むブート実行モジュールを手動で修正することなく,前記コンピュータ装置のブート動作を,前記可搬型記憶装置の上に記憶されているオペレーティング・システムへと動的にリダイレクト」し,「リダイレクト」は「コンピュータ装置のプラットフォーム・ファームウェアに対してプログラムされたロジックによりコマンドを発行し,前記可搬型記憶装置に関連するブート・エントリを追加することを実行可能にする動作」を含むこと,と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明8について 本願発明8は,本願発明1-7のいずれかに対応する「コンピュータ・プログラム」の発明であり,本願発明1の「可搬型記憶装置が前記許可可能な記憶装置であると判定されたことに応じて,事前にプログラムされた直列的なブート実行順序を含むブート実行モジュールを手動で修正することなく,前記コンピュータ装置のブート動作を,前記可搬型記憶装置の上に記憶されているオペレーティング・システムへと動的にリダイレクト」し,「リダイレクト」は「コンピュータ装置のプラットフォーム・ファームウェアに対してプログラムされたロジックによりコマンドを発行し,前記可搬型記憶装置に関連するブート・エントリを追加することを実行可能にする動作」を含むこと,と対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4 本願発明9について 本願発明9は,本願発明1-7のいずれかに対応する「コンピュータ・プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能記憶媒体」の発明であり,本願発明1の「可搬型記憶装置が前記許可可能な記憶装置であると判定されたことに応じて,事前にプログラムされた直列的なブート実行順序を含むブート実行モジュールを手動で修正することなく,前記コンピュータ装置のブート動作を,前記可搬型記憶装置の上に記憶されているオペレーティング・システムへと動的にリダイレクト」し,「リダイレクト」は「コンピュータ装置のプラットフォーム・ファームウェアに対してプログラムされたロジックによりコマンドを発行し,前記可搬型記憶装置に関連するブート・エントリを追加することを実行可能にする動作」を含むこと,と対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 5 本願発明10について 本願発明10は,本願発明1に対応する「コンピュータ装置」の発明であり,本願発明1の「可搬型記憶装置が前記許可可能な記憶装置であると判定されたことに応じて,事前にプログラムされた直列的なブート実行順序を含むブート実行モジュールを手動で修正することなく,前記コンピュータ装置のブート動作を,前記可搬型記憶装置の上に記憶されているオペレーティング・システムへと動的にリダイレクト」し,「リダイレクト」は「コンピュータ装置のプラットフォーム・ファームウェアに対してプログラムされたロジックによりコマンドを発行し,前記可搬型記憶装置に関連するブート・エントリを追加することを実行可能にする動作」を含むこと,と対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり,本願発明1-10は,当業者が引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-12-18 |
出願番号 | 特願2014-509280(P2014-509280) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 長谷川 篤男、篠塚 隆、杉浦 孝光 |
特許庁審判長 |
仲間 晃 |
特許庁審判官 |
山崎 慎一 辻本 泰隆 |
発明の名称 | 他のオペレーティング・システムへのブート動作の動的なリダイレクト |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |