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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1335790 |
審判番号 | 不服2016-19669 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-12-28 |
確定日 | 2018-01-16 |
事件の表示 | 特願2014-226825「コンタクトが凹凸面上に形成された半導体発光デバイス、及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月26日出願公開、特開2015- 57845、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2010年5月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年6月18日、米国)を国際出願日として出願した特願2012-515585号の一部を平成26年11月7日に新たな特許出願としたものであって、平成27年9月25日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月24日付け(8月30日送達)で拒絶査定がされ、これに対して、同年12月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出された。 その後、当審において、平成29年7月28日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成29年10月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの本願発明1及び本願発明3は、それぞれその請求項1、3に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 半導体発光デバイスであって: 半導体構造であり: n型領域とp型領域との間に配置された発光層と、 nコンタクト領域及びpコンタクト領域であり、該nコンタクト領域は、前記発光層及び前記p型領域の部分が除去されて前記n型領域が露出された第1の領域と、前記発光層及び前記p型領域が残存する複数の第2の領域とを有し、該第1の領域は連続的な領域であり、該複数の第2の領域は、前記連続的な領域内に配置された、半導体材料の複数のポストを有する、nコンタクト領域及びpコンタクト領域と、 前記nコンタクト領域と前記pコンタクト領域との間に配置された溝と、 を有する半導体構造; 前記pコンタクト領域内の前記半導体構造上のpコンタクトであり、複数の第1のバンプを形成するpコンタクト;及び 前記nコンタクト領域内の前記半導体構造上のnコンタクトであり、前記nコンタクト領域の前記複数のポストに対応する複数の第2のバンプを有するnコンタクト; を有し、 前記nコンタクトは、前記nコンタクト領域の前記残存するp型領域及び前記露出されたn型領域の双方と電気的に接触しており、 前記複数の第1のバンプは、前記複数の第2のバンプと同じピッチを有する、 半導体発光デバイス。」 「【請求項3】 n型領域とp型領域との間に配置された発光層を有する半導体構造をエッチングする工程であり: nコンタクト領域であり、該nコンタクト領域は、前記発光層及び前記p型領域の部分が除去されて前記n型領域が露出された第1の領域と、前記発光層及び前記p型領域が残存する複数の第2の領域とを有し、該第1の領域は連続的な領域であり、該複数の第2の領域は、前記連続的な領域内に配置された、半導体材料の複数のポストを有する、nコンタクト領域と、 前記nコンタクト領域とpコンタクト領域との間に配置されたトレンチと を形成する、エッチングする工程; 前記pコンタクト領域上のpコンタクトと前記nコンタクト領域上のnコンタクトとを形成する工程であり、前記pコンタクトは複数の第1のバンプを形成し、前記nコンタクトは、前記nコンタクト領域の前記複数のポストに対応する複数の第2のバンプを形成する、工程; を有し、 前記nコンタクトは、前記nコンタクト領域の前記残存するp型領域及び前記露出されたn型領域の双方と電気的に接触され、 前記複数の第1のバンプは、前記複数の第2のバンプと同じピッチを有する、 半導体発光デバイスの製造方法。」 なお、本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。 第3 引用文献の記載と引用発明 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2005-158788号公報))には、図面とともに次の事項が記載されている。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は、発光ダイオードとして好適に実施される半導体発光素子に関し、詳しくは透光性基板の上にIII族窒化物をエピタキシャル成長させた構造を有し、前記透光性基板の同一面に電極を形成し、この間に電流を流す構造を有するものに関する。」 イ「【発明が解決しようとする課題】 【0010】 上述の各従来技術において、先ず特開2002-280611号公報の従来技術では、一部サファイア基板52側に回折された光については、該サファイア基板52内に閉じ込められるか、もしくはダイボンド材などに吸収されてロスになるという問題がある。 【0011】 また、サファイア基板52の凹凸形状は、元々半導体層の結晶品質向上を目的として形成されたものであり、結晶品質の最適化と光取出しの最適化とを同時に満足することは、一般的に難しい。…(略)… 【0016】 本発明の目的は、フリップチップタイプの半導体発光素子において、光の取出し効率を向上することができる半導体発光素子を提供することである。」) ウ 「【課題を解決するための手段】 【0017】 本発明の半導体発光素子は、発光する光に対して透明性を有する基板の一方の面に、少なくともn型とp型との半導体層を相互に積層し、前記n型およびp型の半導体層とそれぞれ電気的に導通するn層およびp層電極を、前記基板の面方向に相互に離間して形成して成る半導体発光素子において、下層側となる半導体層の電極領域において、該半導体層と電極との当接面に凹凸を有することを特徴とする。 【0018】 …(略)…前記他方の極性の電極が下層側の半導体層、この場合はn型の半導体層と導通されるようになっており、この領域は、発光に寄与せず、本発明では、この下層側となる半導体層の電極領域において、該半導体層と電極との当接面に凹凸を形成する。 【0019】 したがって、n型とp型との半導体層の界面で発生し、従来では下層側の半導体層と基板との屈折率差のために全反射され、該下層側の半導体層に閉込められていた光は、該下層側の半導体層内を伝播し、前記他方の極性の電極領域に達すると、該領域の凹凸によって回折され、基板への入射角度が変化されることになり、該他方の極性の電極領域で基板側へ取出され、基板の他方の面から放射されるようになる。こうして、n層電極およびp層電極が反射電極であると、これらの電極領域で取出すことができる光の殆どを取出すことができ、高輝度が得られるフリップチップタイプの半導体発光素子において、光の取出し効率を向上することができる。また、前記凹凸の形成は、半導体層のエキタピシャル成長後であり、エキタピシャル層の品質を気にすることなく(エキタピシャル層を良好に成長させた後)、光取出しに効果がある傾斜面を有する任意の形状を形成することができる。」 エ 「【0036】 [実施の形態1] 図1は、本発明の実施の第1の形態の半導体発光素子1を示す断面図である。図1において、サファイア基板2上には、n型窒化ガリウム層3、発光層4およびp型窒化ガリウム層5が、この順で積層されて形成されている。そして、この半導体発光素子1では、p型窒化ガリウム層5および発光層4を除去し、n型窒化ガリウム層3を露出させて、p型窒化ガリウム層5の上にp電極6、露出したn型窒化ガリウム層3の上にn電極7を形成している。そして、注目すべきは、この半導体発光素子1では、露出されたn型窒化ガリウム層3のn電極7の領域に、凹凸部8が形成されていることである。また、本発明では、フリップチップ(フェイスダウン)タイプの半導体発光素子であるので、前記n電極7およびp電極6は、反射電極である。 …(略)… 【0038】 前記凹凸部8を形成することで、n型窒化ガリウム層3とn電極7との界面で、サファイア基板2の面方向に導波する光が散乱され、かつ前記n電極7およびp電極6で全反射され、該サファイア基板2へ回折する光が増加し、結果として光取出し効率を向上させることができる。 【0039】 以上のように、発光する光に対して透明性を有するサファイア基板2を使用し、そのサファイア基板22の一方の面に、n型窒化ガリウム層3、発光層4およびp型窒化ガリウム層5の半導体層を順次積層するとともに、それらの半導体層と電気的に導通するn電極7およびp電極8を形成して成り、発光層4で発生した光を前記サファイア基板2の他方の面から取出すことで、高輝度発光に好適なフリップチップ(フェイスダウン)タイプの発光ダイオードなどとして実現される半導体発光素子1において、発光に寄与せず、下層側の半導体層であるn型窒化ガリウム層3と導通されるn電極7の領域で、該n型窒化ガリウム層3とn電極7との当接面に凹凸部8を形成することで、光の取出し効率を向上することができる。」 オ 「【0042】 [実施の形態2] 図2は、本発明の実施の第2の形態の半導体発光素子11を示す断面図である。この半導体発光素子11において、前述の半導体発光素子1に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、この半導体発光素子11では、n型窒化ガリウム層3、発光層14およびp型窒化ガリウム層15の半導体層をエキタピシャル成長させた後に、n電極17に対応する領域で、p型窒化ガリウム層15および発光層14を通して、n型窒化ガリウム層3が露出するまで穿設することで、複数の凹凸部18を形成したことである。したがって、n型窒化ガリウム層3が凹部となり、p型窒化ガリウム層15が凸部となるが、この凹凸部18全体の上部全面に電極17を形成することで、この電極はn電極となる。 【0043】 このように構成してもまた、n型窒化ガリウム層3とp型窒化ガリウム層15とによって形成される凹凸部18と、この上に形成されたn電極17との界面で、サファイア基板2の面方向に導波する光が散乱され、かつ前記n電極17およびp電極6で全反射され、サファイア基板2へ回折する光が増加し、結果として光取出し効率を向上させることができる。さらにこのような構成では、p型窒化ガリウム層15を、たとえば通常のフォトリソグラフィと反応性イオンエッチングとによって1回エッチングするだけで、凹凸を持ったn電極17を形成できるようになり、光の取出し効率を向上することができる構造を、より簡便なプロセスで実現することができる。」 カ 上記エから、図1は、本発明の実施の第1の形態の半導体発光素子1を示す断面図であり、上記オから、図2は、本発明の実施の第2の形態の半導体発光素子11を示す断面図であり、それぞれ以下のとおりものである。 図2から、p電極6に対応する領域とn電極17に対応する領域との間に配置された凹部が見てとれる。 また、図2から、n電極17は、凹凸部18の凸部となるp型窒化ガリウム層15及び凹部となるn型窒化ガリウム層3の双方と接触していることが見てとれる。 (2)引用発明 したがって、上記引用文献1には、第2の実施の形態として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「半導体発光素子11であって、 n型窒化ガリウム層3、発光層14およびp型窒化ガリウム層15の半導体層をエキタピシャル成長させた後に、 n電極17に対応する領域で、p型窒化ガリウム層15および発光層14を通して、n型窒化ガリウム層3が露出するまで穿設することで、複数の凹凸部18を形成したもので、n型窒化ガリウム層3が凹部となり、p型窒化ガリウム層15が凸部となり、この凹凸部18全体の上部全面に電極17を形成することで、この電極は凹凸を持ったn電極17となるものであり、 p電極6に対応する領域で、p型窒化ガリウム層15の上にp電極6を形成しており、 p電極6に対応する領域とn電極17に対応する領域との間に凹部が配置され、 n電極17は、凹凸部18の凸部となるp型窒化ガリウム層15及び凹部となるn型窒化ガリウム層3の双方と接触している、 半導体発光素子11。」 2 引用文献2について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2005-322722号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は一種の発光ダイオードに係り、特に四元エピタキシャル層の平面型発光ダイオードに応用され、後続工程の進行に便利であるのみならず、pn接合の発光作用領域が増され発光輝度と使用寿命が増された発光ダイオードに関する。」 (2)図5、図9、図13、図16、図17は、それぞれ以下のとおりのものである。 3 引用文献3について また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(米国特許出願公開第2008/0054290号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている(審決注:日本語の部分訳は合議体による。)。 (1)「In FIG. 2, a light-emitting element comprises an LED 30 and a submount unit 40. …(略)…The first electrode 35 is formed on the first contact layer 33 and the second electrode 36 is formed on the second contact layer 34. In one embodiment, the LED 30 further comprises an electrode pad layer 37 formed on the intermediate between the second contact layer 34 and the second electrode 36. Thus, the upper surfaces of the second electrode 36 and the first electrode 35 are substantially located on the same level. …略…There is a plurality of micro-bumps formed on the surfaces of the first electrode 35 and the second electrode 36. When the plurality of micro-bumps is directly bonded to a submount unit 40, taking the printed circuit board (PCB) as example, current conducts to the submount via the plurality of micro-bumps functioning as a plurality of current channels. …(略)… After bonding, the plurality of micro-bumps can offer short bonding distance to reduce the thermal resistance between the LED 30 and the submount element 40, and can own acceptable shear strength to maintain great bonding. In another embodiment, FIG. 3 shows that electrodes 55 and 56 are the plurality of micro-bumps separate among each other. They also can be formed by known lithography and etching, or alternatively by electroplate or film growth.」 (「図2において、発光ダイオード要素はLED30及びサブマウントユニット40を含む。…(略)…第1の電極35は第1コンタクト層33の上に形成され、第2電極36は第2コンタクト層34の上に形成される。ある実施の形態では、LED30は、第2コンタクト層34と第2電極36の間の中間に形成された電極パッド層37を更に含む。このようにして、第2電極36及び第1電極35の上部表面は、本質的に同じレベルに位置する。…(略)…第1の電極35及び第2の電極36の表面の上に形成された複数のマイクロバンプがある。複数のマイクロバンプがサブマウントユニット40、例えば、印刷回路基板(PCB)、に直接ボンディングされたとき、電流は、複数の電流チャネルとして機能する複数のマイクロバンプを経由してサブマウントへ伝導される。…(略)…ボンディング後に、複数のマイクロバンプは、短いボンディング距離を提供することができ、LED30及びサブマウント要素40との間の熱抵抗を低減させ、そして、とてもよいボンディングを維持するのに好ましいせん断強度を持ちうる。別の実施の形態では、図3は、電極55及び56は互いの間で分離された複数のマイクロバンプであることを示す。それらも、公知のリソグラフィー及びエッチングによって、あるいは代わりにエレクトロプレートまたは薄膜成長によって、形成されうる。」) (2)「In FIG. 4, another embodiment is that a light-emitting element comprises an LED 60 and a submount unit 40. The LED 60 comprises a transparent substrate 31, a light-emitting stack 62, a first contact layer 63, a second contact layer 64, a first electrode 65, and a second electrode 66. The transparent substrate 31 comprises a first region a, a second region b, and a trench c. The light-emitting stack 62 formed on the first region a and second region b of the transparent substrate 31 comprises a first electricity semiconductor layer 621, an active layer 622, and a second electricity semiconductor layer 623 in order. The light-emitting stack 62 located on the first region a and the second region b is connected to the transparent substrate 31 by the first electricity semiconductor layer 621. The first contact layer 63 is formed on the second electricity semiconductor layer 623 of the first region a, and the second contact layer is formed on the second semiconductor layer 623 of the second region b. The first electrode 65 is formed on the first contact layer 63, and the second electrode 66 is formed on the second contact layer 64. Because the light-emitting stack 62 under the first electrode 65 is not removed, the first electrode 65 and the second electrode 66 can maintain on the same level. The first electrode 65 and the second electrode 66 comprise a plurality of micro-bumps for providing a plurality of current channels to conduct the current from the plurality of micro-bumps to the submount when directly bonded to the submount unit 40. The direct bonding method can utilize thermosonic bonding to directly bond the plurality of micro-bumps to the submount unit 40. Through known lithography and etching, the plurality of micro-bumps can be patterned and a portion of depth of the electrode layer can be etched to form the plurality of micro-bumps. Thickness of the plurality of micro-bumps is between 0.3 um and 20 um, and the shape thereof can be a polygon, a circle, or a rectangle. Dimension of the plurality of micro-bumps, for example, length of the shortest side of the polygon, diameter of the circle, or length of short sides of the rectangle is between 1 um and 250 um. In a preferred embodiment, thickness of the smallest micro-bump is 0.3 um. After bonding, the plurality of micro-bumps can offer short bonding distance to reduce the thermal resistance between the LED 30 and the submount element 40, and can own acceptable shear strength to maintain great bonding. In another embodiment, the first electrodes 65 and the second electrode 56 are the plurality of micro-bumps separate among each other. They also can be formed by known lithography or etching, or alternatively by electroplate or film growth.」 (「図4において、別の実施の形態は、発光要素はLED60及びサブマウントユニット40を含む。LED60は、透明基板31、発光積層体62、第1コンタクト層63、第2コンタクト層64、第1電極65、及び第2電極66を含む。透明基板31は、第1領域a、第2領域b、及びトレンチcを含む。透明基板31の第1領域a及び第2領域bの上に形成された発光積層体62は、第1電気半導体層621、活性層622、及び第2電気半導体層623を順に含む。第1領域a及び第2領域bの上に位置する発光積層体62は、第1電気半導体層621によって透明基板31に接続される。第1コンタクト層63は、第1領域aの第2電気半導体層623の上に形成され、そして、第2コンタクト層は、第2領域bの第2半導体層623の上に形成される。第1電極65は第1コンタクト層63の上に形成され、そして、第2電極66は第2コンタクト層64の上に形成される。第1電極65の下の発光積層体62は除去されないので、第1電極65及び第2電極66は同じレベルに維持されうる。第1電極65及び第2電極66は、サブマウントユニット40に直接ボンディングされたとき、複数のマイクロバンプからサブマウントへの電流を伝導する複数の電流チャネルを提供するために、複数のマイクロバンプから構成される。直接ボンディング法は、複数のマイクロバンプをサブマウントユニット40に直接ボンディングするために、熱音波ボンディングを利用しうる。公知のリソグラフィー及びエッチングを通して、その複数のマイクロバンプは、パターン化されうる、そして、電極層の深さの一部が、複数のマイクロバンプを形成するためにエッチングされうる。複数のマイクロバンプの深さは0.3μmと20μmの間であり、そしてその形状は、多角形、円、あるいは長方形でありうる。複数のマイクロバンプの寸法は、例えば、多角形の最短の辺の長さ、円の直径、あるいは長方形の短辺の長さは、1μmと250μmの間である。好ましい実施の形態では、最小のマイクロバンプの厚さは、0.3μmである。ボンディングの後、複数のマイクロバンプは、短いボンディング距離を提供できるので、LED30とサブマウント要素40との間の熱抵抗を低減し、そして、とても良いボンディングを維持するのに好ましいせん断強度を持ちうる。別の実施の形態では、第1電極65及び第2電極56は互いの間で分離された複数のマイクロバンプである。それらも、公知のリソグラフィーまたははエッチングによって、あるいは代わりにエレクトロプレートまたは薄膜成長によって、形成されうる。」) (3)引用文献3のFIG.2、FIG.3、FIG.4は、それぞれ以下のとおりのものである。 第4 当審の判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「半導体発光素子11」は、本願発明1の「半導体発光デバイス」に相当する。 イ 引用発明における「n型窒化ガリウム層3」、「発光層14」、「p型窒化ガリウム層15」、「n電極17」、「p電極6」、「n電極17に対応する領域」、「p電極6に対応する領域」は、それぞれ本願発明1の「n型領域」、「発光層」、「p型領域」、「nコンタクト」、「pコンタクト」、「nコンタクト領域」、「pコンタクト領域」に相当する。 ウ(ア)引用発明は、「n型窒化ガリウム層3、発光層14およびp型窒化ガリウム層15の半導体層をエキタピシャル成長させた後に、n電極17に対応する領域で、p型窒化ガリウム層15および発光層14を通して、n型窒化ガリウム層3が露出するまで穿設することで、複数の凹凸部18を形成したもので、n型窒化ガリウム層3が凹部となり、p型窒化ガリウム層15が凸部となり」、「p電極6に対応する領域とn電極17に対応する領域との間に凹部が配置され」たものである。 (イ)上記(ア)より、引用発明において、発光層14は、n型窒化ガリウム層3とp型窒化ガリウム層15との間に配置されたものであるといえる。 よって、本願発明1と引用発明とは、「n型領域とp型領域との間に配置された発光層」を有する点で一致する。 (ウ)上記(ア)より、引用発明において、「p型窒化ガリウム層15が凸部とな」った領域は、「『p型窒化ガリウム層15および発光層14を通して、n型窒化ガリウム層3が露出するまで穿設することで、複数の凹凸部18を形成したもので』、『p型窒化ガリウム層15が凸部とな』った領域」であるから、「発光層14」及び「p型窒化ガリウム層15」が「残存する」領域であるといえる。 したがって、引用発明において、「n電極17に対応する領域」(nコンタクト領域)は、「『p型窒化ガリウム層15』(p型領域))および『発光層14』(発光層)」の部分が除去されて「n型窒化ガリウム層3」(n型領域)が露出された領域と、「発光層14」(発光層)及び「p型窒化ガリウム層15」(p型領域)が残存する複数の領域とを有するといえる。 よって、本願発明1と引用発明とは、「該nコンタクト領域は、前記発光層及び前記p型領域の部分が除去されて前記n型領域が露出された第1の領域と、前記発光層及び前記p型領域が残存する複数の第2の領域とを有」する点で一致する。 (エ)本願発明1の「溝」と、引用発明の「電極6に対応する領域とn電極17に対応する領域との間」に「配置され」た「凹部」とは、「凹部」である点で共通する。 よって、本願発明1と引用発明とは、「前記nコンタクト領域と前記pコンタクト領域との間に配置された凹部」を有する点で一致する。 (オ)上記(ア)に記載した、引用発明の「n型窒化ガリウム層3、発光層14およびp型窒化ガリウム層15の半導体層をエピタキシャル成長した後に、n電極17に対応する領域で、…複数の凹凸部18を形成したもので、n型窒化ガリウム層3が凹部となり、p型窒化ガリウム層15が凸部となり」、「p電極6に対応する領域とn電極17に対応する領域との間に凹部が配置され」た構造は、「半導体」の構造であるから、本願発明1の「半導体構造」に相当する。 また、引用発明の当該構造は、「n電極17に対応する領域で、…複数の凹凸部18を形成したもの」であり、更に、引用発明は、「p電極6に対応する領域で、p型窒化ガリウム層15の上にp電極6を形成して」いる。したがって、引用発明の当該構造は、「n電極17に対応する領域」(nコンタクト領域)及び「p電極6に対応する領域」(pコンタクト領域)を有するものであることは明らかである。 したがって、上記(ア)を踏まえると、本願発明1と引用発明は、「半導体構造であり:発光層と、nコンタクト領域及びpコンタクト領域と、凹部と、を有する半導体構造」を有する点で共通する。 (カ)上記(イ)?(オ)をまとめると、本願発明1と引用発明とは、 「半導体構造であり: n型領域とp型領域との間に配置された発光層と、 nコンタクト領域及びpコンタクト領域であり、該nコンタクト領域は、前記発光層及び前記p型領域の部分が除去されて前記n型領域が露出された第1の領域と、前記発光層及び前記p型領域が残存する複数の第2の領域とを有する、nコンタクト領域及びpコンタクト領域と、 前記nコンタクト領域と前記pコンタクト領域との間に配置された凹部と、 を有する半導体構造」を有する点で一致する。 エ 引用発明において、「p電極6」(pコンタクト)は、「p電極6に対応する領域」(pコンタクト領域)内のものであるといえるとともに、引用発明では、「p型窒化ガリウム層5の上にp電極6を形成し」たものであるから、上記ウを踏まえると、本願発明1と引用発明とは、「前記pコンタクト領域内の前記半導体構造上のpコンタクト」を有する点で一致する。 オ 引用発明において、「n電極17」(nコンタクト)は、「n電極17に対応する領域」(pコンタクト領域)内のものであるといえるとともに、引用発明では、「この凹凸部18全体の上部全面に電極17を形成することで、この電極は凹凸を持ったn電極17とな」るから、上記ウを踏まえると、本願発明1と引用発明とは、「前記nコンタクト領域内の前記半導体構造上のnコンタクト」を有する点で一致する。 カ 引用発明では、「n電極17(nコンタクト)は、凹凸部18の凸部となるp型窒化ガリウム層15(p型領域)及び凹部となるn型窒化ガリウム層3(n型領域)の双方と接触している」から、上記ウを踏まえると、本願発明1と引用発明とは、「前記nコンタクトは、前記nコンタクト領域の前記残存するp型領域及び前記露出されたn型領域の双方と電気的に接触して」いる点で一致する。 キ 以上をまとめると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「半導体発光デバイスであって: 半導体構造であり: n型領域とp型領域との間に配置された発光層と、 nコンタクト領域及びpコンタクト領域であり、該nコンタクト領域は、前記発光層及び前記p型領域の部分が除去されて前記n型領域が露出された第1の領域と、前記発光層及び前記p型領域が残存する複数の第2の領域とを有する、nコンタクト領域及びpコンタクト領域と、 前記nコンタクト領域と前記pコンタクト領域との間に配置された凹部と、 を有する半導体構造; 前記pコンタクト領域内の前記半導体構造上のpコンタクト;及び 前記nコンタクト領域内の前記半導体構造上のnコンタクト; を有し、 前記nコンタクトは、前記nコンタクト領域の前記残存するp型領域及び前記露出されたn型領域の双方と電気的に接触している、 半導体発光デバイス。」 <相違点> <相違点1> 第1の領域、第2の領域について、本願発明1では、「該第1の領域は連続的な領域であり、該複数の第2の領域は、前記連続的な領域内に配置された、半導体材料の複数のポストを有する」ものであるのに対し、引用発明では、「p型窒化ガリウム層15および発光層14を通して、n型窒化ガリウム層3が露出するまで穿設することで、複数の凹凸部18を形成したもので、n型窒化ガリウム層3が凹部となり、p型窒化ガリウム層15が凸部とな」るものの、n型窒化ガリウム層3が露出した領域(本願発明1の「第1の領域」に相当する。上記ウ(ウ)を参照。)である、該「凹部」が「連続的な領域」であり、該「p型窒化ガリウム層15が凸部とな」った領域(本願発明1の「第2の領域」に相当する。上記ウ(ウ)を参照。)は「複数のポストを有する」ものであるか否か不明である点。 <相違点2> 半導体構造について、本願発明1では、「前記nコンタクト領域と前記pコンタクト領域との間に配置された溝」を有するのに対し、引用発明では、「p電極6に対応する領域とn電極17に対応する領域との間に凹部が配置され」ているものの、該「凹部」が、「溝」であるか否か不明である点。 <相違点3> pコンタクトについて、本願発明1では、「複数の第1のバンプを形成する」ものであるのに対し、引用発明1では、p電極6は、このような構成について特定されていない点(以下、「相違点3-1」という。)。 また、nコンタクトについて、本願発明1では、「前記nコンタクト領域の前記複数のポストに対応する複数の第2のバンプを有する」ものであるのに対し、引用発明1では、n電極17は、「この凹凸部18全体の上部全面に電極17を形成することで、この電極は凹凸を持ったn電極17」であるものの、本願発明1のこのような構成について特定されていない点(以下、「相違点3-2」という。)。 そのため、本願発明1では、「前記複数の第1のバンプは、前記複数の第2のバンプと同じピッチを有する」ものであるのに対し、引用発明では、このような特定はされていない点(以下、「相違点3-3」という。)。 (2)相違点についての判断 ア まず、相違点3-1について、検討する。 (ア)上記第3の1(1)に摘記したように、引用文献1には、p電極6が、複数の「バンプ」を形成するものであることは記載も示唆もされていない。 上記第3の2(2)に摘記したように、引用文献2には、第1電極37、67、87、第2電極95、35(いずれも本願発明1の「pコンタクト」に相当する。)が、複数の「バンプ」を形成するものであることは記載も示唆もされていない。 上記第3の3(1)、(2)に摘記したように、引用文献3には、(a)図2に示される実施の形態のLED30について、第1の電極35及び第2の電極36の表面の上に形成された複数のマイクロバンプがあること、(b)図3は、電極55及び56は互いの間で分離された複数のマイクロバンプであることを示すこと、(c)図4に示される別の実施の形態のLED60について、第1電極65は第1コンタクト層63の上に形成され、第2電極66は第2コンタクト層64の上に形成され、第1コンタクト層63は、第1領域aの第2電気半導体層623の上に形成され、第2コンタクト層は、第2領域bの第2半導体層623の上に形成され、第1電極65及び第2電極66は複数のマイクロバンプから構成されること、(d)別の実施の形態では、第1電極65及び第2電極56は互いの間で分離された複数のマイクロバンプであることが、記載されている。 (イ)上記第3の1(1)ウに摘記したように、引用文献1の段落【0018】、【0019】には、閉じ込められていた光が、下側層となる半導体層と電極との当接面に形成された凹凸によって回折され、基板への入射角度が変化されることになり、基板側へ取出され、基板の他方の面から放射されるようになり、n層電極およびp層電極が反射電極であると、光の取出し効率を向上することができる旨が記載されている。 そして、引用発明の「n電極17に対応する領域」の「凹凸部18」は、「n型窒化ガリウム層3が露出するまで穿設することで」形成したものであるところ、「n型窒化ガリウム層3」は、上記摘記の「下側層となる半導体層」に対応するから、引用発明では、「凹凸部18」によって光が回折され、光の取出し効率が向上するものであるといえる。 他方、引用発明の「凹凸を持ったn電極17」の「凹凸」は、「凹凸部18全体の上部全面に電極17を形成することで」、「凹凸を持ったn電極17とな」るものであるから、下側層となるn型窒化ガリウム層18に形成された「凹凸部18」の凹凸形状が反映されて「凹凸を持った」ものとされたものである。また、引用文献1には、n電極17の当該「凹凸」の有する機能について記載も示唆もされていない。 ところで、上記第3の3(1)に摘記したように、引用文献3には、図2について、複数のマイクロバンプは、短いボンディング距離を提供することができ、LED30及びサブマウント要素40との間の熱抵抗を低減させ、そして、とてもよいボンディングを維持するのに好ましいせん断強度を持ちうること、並びに、上記第3の3(2)に摘記したように、引用文献3には、図3について、第1電極65及び第2電極66は、複数のマイクロバンプからサブマウントへの電流を伝導する複数の電流チャネルを提供するために、複数のマイクロバンプから構成されることが、記載されている。 (ウ)したがって、引用発明のn電極17が持つ「凹凸」と、引用文献3に記載の技術における、第1電極65を構成するマイクロバンプあるいは第1電極65が互いの間で分離されたマイクロバンプであるところのマイクロバンプとは、断面形状が凹凸形状である点では共通するものの、その技術的意味あるいは機能までが共通するとはいえない。 よって、引用発明に引用文献3に記載の技術を適用することについて、上記イで検討したように、引用発明における「凹凸」と引用文献3に記載の「マイクロバンプ」の技術的意味あるいは機能の関連性または共通性の観点を併せて考慮してみると、当業者に、引用発明において、p電極6を、引用文献3の複数のバンプを形成するものに替える動機付けがあるということはできない。 以上のとおりであるから、引用発明において、引用文献2、3を参照したとしても、相違点3-1に係る本願発明1の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。 イ よって、相違点3-2、3-3並びに相違点1及び相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2、3に記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本願発明1についてのまとめ 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2、3に記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2について 本願発明2は、本願発明1を減縮した発明であり、「前記複数の第1のバンプは、前記複数の第2のバンプと同じピッチを有する」という、本願発明1と同じ構成を備えるものであるから、上記「1 本願発明1について」の判断と同様の理由により、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本願発明3について 本願発明3は、半導体発光デバイスの製造方法に係る発明であり、「前記複数の第1のバンプは、前記複数の第2のバンプと同じピッチを有する」という、本願発明1と同じ構成を備えるものであるから、上記「1 本願発明1について」の判断と同様の理由により、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は、請求項1?11に係る発明について、上記引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 しかしながら、上記のとおり、本願発明1?本願発明3は、引用発明(上記引用文献1に記載された発明)及び上記引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1 特許法第36条第6項第2号について (1)当審では、平成28年12月28日付けで補正された、 請求項1の「該nコンタクト領域の断面は、前記発光層及び前記p型領域の部分が除去されて前記n型領域が露出された複数の第1の領域を有し、該複数の第1の領域は、前記発光層及び前記p型領域が当該デバイス内に残存する複数の第2の領域によって離隔されており、該複数の第2の領域は半導体材料のポストを有する」という記載、 請求項1の「前記第2の金属コンタクトは、前記nコンタクト領域の前記複数の第2の領域のうちの少なくとも1つと電気的に接触しており」という記載、 請求項1の「デバイスであって:半導体構造であり:…発光層と、…を有する半導体構造;…;を有し、…、デバイス。」という記載、 請求項3の「…エッチングする工程;…、第2のバンプを形成する、工程;を有し、…同じピッチを有する、方法。」という記載、 請求項3の「nコンタクト領域であり、該nコンタクト領域の断面は、前記発光層及び前記p型領域の部分が除去されて前記n型領域が露出された複数の第1の領域を有し、該複数の第1の領域は、前記発光層及び前記p型領域がデバイス内に残存する複数の第2の領域によって離隔され、該複数の第2の領域は半導体材料のポストを有する、nコンタクト領域」という記載、 請求項3の「前記第2の金属コンタクトは、前記nコンタクト領域の前記複数の第2の領域のうちの少なくとも1つと電気的に接触され」という記載、及び 請求項2の「ポストの幅」という記載について、明確でないとの拒絶の理由(明確性)を通知した。 しかしながら、平成29年10月26日付けの補正において、請求項1及び請求項3は、上記「第2 本願発明」に記載のとおりに補正され、請求項2に記載の「ポストの幅」は「ポストの直径」に補正された結果、この拒絶の理由は解消している。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1?本願発明3は、当業者が引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由ま由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-12-20 |
出願番号 | 特願2014-226825(P2014-226825) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 恩田 春香 |
発明の名称 | コンタクトが凹凸面上に形成された半導体発光デバイス、及びその製造方法 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |