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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 G06Q |
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管理番号 | 1335794 |
審判番号 | 無効2016-800015 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2016-02-04 |
確定日 | 2018-01-04 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第5525082号発明「金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法,プログラム」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件の特許第5525082号についての手続の経緯は,概略,以下のとおりである。 出願(特願2013-78806号) 平成25年 4月 4日 (原出願(特願2010-5151号) 平成19年12月19日) 設定登録 平成26年 4月18日 本件無効審判請求 平成28年 2月 4日 上申書(請求人) 平成28年 3月31日 審判事件答弁書提出 平成28年 5月 9日 上申書(被請求人) 平成28年 9月 6日 口頭審理陳述要領書提出(請求人) 平成28年 9月15日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人) 平成28年 9月15日 口頭審理 平成28年 9月29日 第2 本件発明 特許第5525082号の請求項1乃至10に係る発明(以下,請求項1に係る発明を「本件発明1」といい,その他の請求項に係る発明も同様に称する。)は,特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 <本件発明> 「 【請求項1】 相場価格が変動する金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法であって, 売買を希望する前記金融商品の種類を選択するための情報と,前記金融商品の売買注文における,注文価格ごとの注文金額を示す情報と,前記金融商品の販売注文価格又は購入注文価格としての一の注文価格を示す情報と,一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で販売した後に他の価格で購入した場合の利幅又は一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で購入した後に他の注文価格で販売した場合の利幅を示す情報と,前記注文が複数存在する場合における該注文同士の値幅を示す情報と,のそれぞれを,前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報として受信して受け付ける注文入力受付手順と, 該注文入力受付手順によって受け付けられた前記売買注文申込情報に基づいて,選択された前記種類の前記金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手順と, 前記金融商品の前記相場価格の情報を取得する価格情報受信手順と, 前記売買注文申込情報における前記注文価格と前記利幅とに基づいて,前記他の注文価格を算出するための第二注文価格算出手順とを有し, 前記注文情報生成手順においては,前記売買注文申込情報に基づいて,前記注文情報として,同一種類の前記金融商品について,前記一の注文価格を一の最高価格として設定し,該一の最高価格より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について買いもしくは売りの指値注文を行う第一注文情報,前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最高価格として設定し,該他の最高価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記買いの第一注文に対しては売りの,前記売りの第一注文に対しては買いの指値注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し, 生成された前記注文情報群を注文情報記録手段に記録し, 一の前記売買注文申込情報に基づいて生成されたそれぞれの前記注文情報群について,有効な注文である前記第一注文の前記第一注文価格と前記金融商品の相場価格とが一致し,次いで有効な注文である前記第二注文の前記第二注文価格と前記相場価格とが一致することで前記第一注文と前記第二注文とが約定した場合,次の前記注文情報群の前記第一注文情報を有効とし,約定した前記第一注文と同じ前記第一注文価格における前記第一注文の約定と,約定した前記第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定することを特徴とする,金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法。 【請求項2】 相場価格が変動する金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法であって, 売買を希望する前記金融商品の種類を選択するための情報と,前記金融商品の売買注文における,注文価格ごとの注文金額を示す情報と,前記金融商品の購入注文価格又は販売注文価格としての一の注文価格を示す情報と,一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で購入した後に他の注文価格で販売した場合の利幅又は一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で販売した後に他の注文価格で購入した場合の利幅を示す情報と,前記注文が複数存在する場合における該注文同士の値幅を示す情報と,のそれぞれを,前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報として受信して受け付ける注文入力受付手順と, 該注文入力受付手順によって受け付けられた前記売買注文申込情報に基づいて,選択された前記種類の前記金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手順と, 前記金融商品の前記相場価格の情報を取得する価格情報受信手順と, 前記売買注文申込情報における前記注文価格と前記利幅とに基づいて,前記他の注文価格を算出するための第二注文価格算出手順とを有し, 前記注文情報生成手順においては,前記売買注文申込情報に基づいて,前記注文情報として,同一種類の前記金融商品について,一の注文価格を一の最低価格として設定し,該一の最低価格より高値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について売りもしくは買いの指値注文を行う第一注文情報,前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最低価格として設定し,該他の最低価格より高値側に,それぞれの前記第一注文に対し,販売又は購入が行われた前記第一注文に基づいて購入又は販売が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記売りの第一注文に対しては買いの,前記売りの第一注文に対しては売りの指値注文としての第二注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し, 生成された前記注文情報群を注文情報記録手段に記録し, 一の前記売買注文申込情報に基づいて生成されたそれぞれの前記注文情報群について,有効な注文である前記第一注文の前記第一注文価格と前記金融商品の相場価格とが一致し,次いで有効な注文である前記第二注文の前記第二注文価格と前記相場価格とが一致することで前記第一注文と前記第二注文とが約定した場合,次の前記注文情報群の前記第一注文情報を有効とし,約定した前記第一注文と同じ前記第一注文価格における前記第一注文の約定と,約定した前記第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定することを特徴とする,金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法。 【請求項3】 前記利幅は一の前記注文情報群を構成する前記第一注文と前記第二注文とがそれぞれ約定されることで得られる利益金額であり,前記売買注文申込情報における利幅として前記利益金額を設定することを特徴とする,請求項1又は2に記載の金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法。 【請求項4】 前記金融商品の種類毎に定められた,複数の前記注文情報群を形成する個々の前記第一注文同士及び個々の前記第二注文同士の最低値幅を最低値幅情報として記録する最低値幅情報記録手段による最低値幅情報記録手順が設けられ, 前記注文情報生成手順においては,前記売買注文申込情報を受けた場合は前記最低値幅情報記録手順において前記最低値幅情報記録手段に記録された前記最低値幅情報を確認し,前記売買注文申込情報における個々の前記第一注文同士の値幅又は個々の前記第二注文同士の値幅が前記最低値幅よりも狭い場合は前記売買注文申込情報を拒絶することを特徴とする,請求項1乃至3の何れか一つに記載の金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法。 【請求項5】 前記注文情報生成手順において生成された前記注文情報を前記注文情報記録手段に記録する注文情報記録手順と, 前記注文情報に基づいて前記金融商品の約定を行う約定情報生成手順とを有し, 前記注文情報記録手順においては前記注文情報記録手段に前記注文情報群が記録され, 前記約定情報生成手順においては, 前記第一注文情報が買いの指値注文である場合であって,前記価格情報受信手順において取得された前記金融商品の前記相場価格が変動して前記第一注文価格と等しくなった場合,前記注文情報記録手順に記録された前記注文情報群を形成する個々の前記注文情報のうち前記第一注文情報に基づいて前記約定を行うと共に,前記価格情報受信手順において取得された前記金融商品の前記相場価格が更に変動して前記第二注文価格と等しくなった場合,前記第二注文情報に基づいて前記金融商品の前記約定を行うことで,前記第一注文情報に基づく前記金融商品の約定と前記第二注文情報に基づく前記金融商品の約定とを繰り返し, 前記第一注文情報が売りの指値注文である場合であって,前記価格情報受信手順において取得された前記金融商品の前記相場価格が変動して前記第一注文価格と等しくなった場合,前記注文情報記録手順において記録された前記注文情報群を形成する個々の前記注文情報のうち前記第一注文情報に基づいて前記約定を行うと共に,前記価格情報受信手順において取得された前記金融商品の前記相場価格が更に変動して前記第二注文価格と等しくなった場合,前記第二注文情報に基づいて前記金融商品の前記約定を行うことで,前記第一注文情報に基づく前記金融商品の約定と前記第二注文情報に基づく前記金融商品の約定とを繰り返すことを特徴とする,請求項1乃至4の何れか一つに記載の金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法。 【請求項6】 前記金融商品の種類毎に定められた,前記相場価格と前記注文情報の前記注文価格との差額に関する情報としての差額情報が記録された差額情報記録手段による差額情報記録手順が設けられ, 前記約定情報生成手順においては,一旦発注した前記金融商品の注文に対するキャンセル要求があった場合,前記差額情報記録手順において前記差額情報記録手段に記録された前記差額情報を確認し,前記金融商品の前記キャンセル要求があった時点の相場価格と前記注文情報記録手順において記録された前記注文情報の前記注文価格との差が前記差額情報よりも小さい場合には前記キャンセル要求を拒絶することを特徴とする,請求項5に記載の金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法。 【請求項7】 前記約定情報生成手順においては,一旦発注した前記金融商品の注文に対するキャンセル要求があった場合,該キャンセル要求のあった注文に関する前記注文情報が含まれる前記注文情報群を抽出し,該注文情報群に含まれる約定前の前記注文情報を全てキャンセル処理することを特徴とする,請求項5又は6に記載の金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法。 【請求項8】 特定顧客の預金残高情報を記録する顧客口座情報記録手段による顧客口座情報記録手順が設けられ, 前記注文情報生成手順においては,前記預金残高情報と前記注文情報の属性情報としての注文価格情報とを比較し,前記預金残高情報の値が前記注文価格情報の値以上である場合,前記注文情報群を生成することを特徴とする,請求項1乃至7の何れか一つに記載の金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法。 【請求項9】 前記金融商品は外国為替であることを特徴とする,請求項1乃至8の何れか一つに記載の金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法。 【請求項10】 コンピュータに請求項1乃至9の何れか一つに記載の金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法を行わせることを特徴とするプログラム。」 第3 請求人の主張の概要 請求人は,特許第5525082号の特許請求の範囲の欄に記載された請求項1?請求項3,請求項5及び請求項7?請求項10に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求めている。 その無効理由の概要と証拠方法は,次のとおりである。 1.無効理由の概要 (1)特許第5525082号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」といい,その他の請求項に係る発明も同様に称する。)?本件発明3,本件発明5及び本件発明7?本件発明10は,平成14年12月17日に公表された甲第1号証(特表2002-543481号公報)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)に記載された発明に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきである。 (2)特に本件発明1についての主張 ア.「カ 構成1Fに関する対比 本件発明1の構成1Fの内容は,以下のとおりである。 構成1F 前記注文情報生成手順においては,前記売買注文申込情報に基づいて,前記注文情報として,同一種類の前記金融商品について,前記一の注文価格を一の最高価格として設定し,該一の最高価格より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について買いもしくは売りの指値注文を行う第一注文情報,前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最高価格として設定し,該他の最高価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記買いの第一注文に対しては売りの,前記売りの第一注文に対しては買いの指値注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し 甲第1号証には,「・・・。ただし,この例おいては,DEF株式会社の10,000株を持ち合わせており,最初の売買条件としてDEF株式会社の100株を株あて10,000ウォンで売込むものと例示した。」(【0044】),「・・・。買取り値は毎度の売込み値より所定割合の安値で設定するか,所定額の低値で設定することができる。図6おいては売込み値より毎度500ウォンと安値を自動買取り値として設定した。・・・。」(【0045】),「自動売込み条件もまた同一の方式によって欄(614,616,618,620)で設定する。この発明の実施態様においては最初の売込み値より毎度1,000ウォンずつ値上がりあるいは値下がりした値段で100株を自動売込むものと設定することにした。・・・。」(【0046】),「図7の自動売買テーブル(700)は,図6の自動売買の設定条件によって作られることができる。自動売買テーブル(700)売込み値の縦列(714)でそれぞれの横列の売込み値が設定されているとおり,1,000ウォンずつの隔りをもつように作られ,買取り値の縦列(712)のそれぞれの買取り値は同じ横列の売込み値より500ウォンずつ安値で作られる。・・・。」(【0049】),「図5を参照して,最初の売込みが成功すると,早急にあらかじめ設定された自動売買条件による自動売買テーブルに応じて第1回目の自動買取りと自動売込みが発注される(段階512)。実施態様3は”同一の株を安値で買取って高値で売り込むよう”に設計されている。したがって,最初の売込み発注が約定されると,自動売買テーブル(700)において,約定された最初の売込み値(10,000ウォン)より真下の安値の買取り(つまり,9,500ウォンの買取り値で100株の買取り)を発注し(図7の横列(706)),約定された売込み値より真上の高値の売込み(つまり,11,000ウォンの売込み値で100株の売込み)を発注する(図7の横列(704)の売込み欄参照)。・・・。」(【0051】)及び「第1回目の自動売買発注中に買取り発注が発注とおりに約定された場合には,自動売買テーブル(700)で約定された発注価に隣合う買取りおよび売込みが発注される。前述のごとく,実施態様3は寸前の約定価より”安値”で買取り,”高値で売り込む”ように設計されたものであることから,第2回目の自動売買は,図5の段階(514,516,506)および(508)を径て買取り(8,500ウォンで100株の買取り,図7の横列(708)参照)および売込み(10,000ウォンで100株の売込み)が発注される。第2回目の自動売買で売込み発注が約定された場合,第3回目の自動発注は約定された発注価(第2回目の10,000ウォン)に隣り合う買取り(9,500ウォンで100株の買取り)および売込み(11,000ウォンで100株の売込み)が自動的に発注される。つまり,毎度の自動売買では自動売買テーブル(700)での約定価より真下の安値の買取りおよび約定価より真上の高値の売込みが発注される。」(【0052】)という記載並びに【図7】の記載がある。 すなわち,甲第1号証には,自動売買テーブルに基づいて,注文情報として,DEF株式について,10,000ウォンを基準である最初の売込み値として設定し(【0044】及び【図7】),この売込み値より1,000ウォン安値側に,それぞれの値幅が自動売買テーブルに含まれる値幅となるように売込み値を設定し(【0046】及び【0049】),その設定されたそれぞれの売込み値としての注文価格について売りの指値注文を行う(【0051】及び【0052】)注文情報,最初の売込み値と利幅に基づいて基出された買取り値である9,500ウォンを基準として,安値側に,それぞれの売りの指値注文に対して買いの指値注文が行われたときの利幅が自動売買テーブルにおいて設定した500ウォンとなるように買取り値を設定し(【0045】及び【0049】),設定されたそれぞれの買取り値について売込み値の注文に対して買いの指値注文を行う(【0051】及び【0052】)注文情報からなる注文情報群を複数生成する(【0049】)ことが開示されている。ここで,10,000ウォンを基準である最初の売込み値として設定することは,「一の注文価格を一の・・・価格として設定し,」に相当する。この売込み値より1,000ウォン安値側に,それぞれの値幅が自動売買テーブルに含まれる値幅となるように売込み値を設定することは,「該一・・・の価格より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,」に相当する。最初の売込み値と利幅に基づいて算出された買取り値である9,500ウォンを基準とすることは,「前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の所定の価格として設定し,」に相当する。安値側に,それぞれの売りの指値注文に対して買いの指値注文が行われたときの利幅が自動売買テーブルにおいて設定した500ウォンとなるように買取り値を設定することは,「該他の所定の価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,販売が行われた前記第一注文に基づいて販売が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,」に相当する。設定されたそれぞれの買取り値について売込み値の注文に対して買いの指値注文を行う(【0051】及び【0052】)注文情報からなる注文情報群を複数生成することは,「該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記売りの第一注文に対しては買いの指値注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し,」に相当する。 したがって,甲1発明には,「前記注文情報生成手順においては,前記売買注文申込情報に基づいて,前記注文情報として,同一種類の前記金融商品について,前記一の注文価格を一の・・・価格として設定し,該一・・・の価格より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について売りの指値注文を行う第一注文情報,前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の所定の価格として設定し,該他の所定の価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,販売が行われた前記第一注文に基づいて販売が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記売りの第一注文に対しては買いの指値注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し,」が開示されている。 もっとも,本件発明1は,「前記一の注文価格を一の最高価格として設定」しているのに対し,甲1発明は,「前記一の注文価格を一の・・・価格として設定」している点で両発明は相違(以下「相違点1」という。)する。」 (審判請求書第23頁第19行乃至第28頁第24行) イ.「ク 構成1Hに関する対比 本件発明1の構成1Hの内容は,以下のとおりである。 構成1H 一の前記売買注文申込情報に基づいて生成されたそれぞれの前記注文情報群について,有効な注文である前記第一注文の前記第一注文価格と前記金融商品の相場価格とが一致し,次いで有効な注文である前記第二注文の前記第二注文価格と前記相場価格とが一致することで前記第一注文と前記第二注文とが約定した場合,次の前記注文情報群の前記第一注文情報を有効とし,約定した前記第一注文と同じ前記第一注文価格における前記第一注文の約定と,約定した前記第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定することを特徴とする 甲第1号証には,「ユーザーは欄(626)で目標収益率又は収益率を設定することができる。目標収益率が設定されないと,ユーザーが立ち入って自動売買を中止させないかぎり自動売買は継続される。・・・。」(【0047】),「図5を参照して,最初の売込みが成功すると,早急にあらかじめ設定された自動売買条件による自動売買テーブルに応じて第1回目の自動買取りと自動売込みが発注される(段階512)。実施態様3は”同一の株を安値で買取って高値で売り込むよう”に設計されている。したがって,最初の売込み発注が約定されると,自動売買テーブル(700)において,約定された最初の売込み値(10,000ウォン)より真下の安値の買取り(つまり,9,500ウォンの買取り値で100株の買取り)を発注し(図7の横列(706)),約定された売込み値より真上の高値の売込み(つまり,11,000ウォンの売込み値で100株の売込み)を発注する(図7の横列(704)の売込み欄参照)。・・・。」(【0051】)及び「第1回目の自動売買発注中に買取り発注が発注とおりに約定された場合には,自動売買テーブル(700)で約定された発注価に隣合う買取りおよび売込みが発注される。前述のごとく,実施態様3は寸前の約定価より”安値”で買取り,”高値で売り込む”ように設計されたものであることから,第2回目の自動売買は,図5の段階(514,516,506)および(508)を径て買取り(8,500ウォンで100株の買取り,図7の横列(708)参照)および売込み(10,000ウォンで100株の売込み)が発注される。第2回目の自動売買で売込み発注が約定された場合,第3回目の自動発注は約定された発注価(第2回目の10,000ウォン)に隣り合う買取り(9,500ウォンで100株の買取り)および売込み(11,000ウォンで100株の売込み)が自動的に発注される。つまり,毎度の自動売買では自動売買テーブル(700)での約定価より真下の安値の買取りおよび約定価より真上の高値の売込みが発注される。」(【0052】)という記載並びに【図7】の記載がある。 すなわち,甲第1号証には,自動売買の設定条件に基づいて複数の注文情報が生成されるところ,これら複数の注文情報について,たとえば,10,000ウォンといった売込み発注が発注価どおり約定すると,自動売買テーブルでの約定価より真下の9,500ウォンといった安値の買取り発注がなされ(【0051】及び【図7】),当該安値の買取り発注が発注価どおり約定すると,約定された発注価に隣合う10,000ウォンといった売込みが発注され,当該売込み発注が発注価どおり約定すると,約定された発注価に隣り合う9,500ウォンといった買取り発注がなされ(【0052】及び【図7】),以後,10,000ウォンといった売込み発注及び9,500ウォンといった買取り発注が自動的になされる(【0047】)構成が開示されている。ここで,売込み発注又は買取り発注が発注価どおり約定する場合とは,相場価格が発注価と一致した場合を意味することは明らかである。したがって,10,000ウォンの売込み及び9,500ウォンの買取りに係る注文情報は,注文情報群に相当する。 よって,以上並びに前記ウ,オ及びカで主張したとおり,甲1発明には,「一の前記売買注文申込情報に基づいて生成されたそれぞれの前記注文情報群について,有効な注文である前記第一注文の前記第一注文価格と前記金融商品の相場価格とが一致し,次いで有効な注文である前記第二注文の前記第二注文価格と前記相場価格とが一致することで前記第一注文と前記第二注文とが約定した場合,次の前記注文情報群の前記第一注文情報を有効とし,約定した前記第一注文と同じ前記第一注文価格における前記第一注文の約定と,約定した前記第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定すること」が開示されているので,甲1発明は,構成1Hを備える。」 (審判請求書第29頁第20行乃至第32頁第26行) ウ.「コ 相違点の検討(相違点1) 相違点1 本件発明1の注文情報生成手段は,「前記一の注文価格を一の最高価格として設定」しているのに対し,甲1発明は,「前記一の注文価格を一の・・・価格として設定」している点。 甲第1号証には,「自動売買テーブル(700)において,(702)?(710)のごとき横列は最初の売買価を基準に上下にわたって適切な数だけ作られる。」(【0049】)と記載されている。すなわち,顧客の入力に係る最初の売買価を自動売買テーブル(700)売込み値の縦列(714)のどこに位置付けるのかは,当業者が適宜決め得る設計的事項であることが記載されている。したがって,最初の売買価を自動売買テーブル(700)売込み値の縦列(714)の最上列に位置付けることは,当業者が適宜なし得たことであるから,前記相違点1に係る本件発明1の構成は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものである。また,本件発明1が奏する効果は,甲1発明から当業者が予測可能なものであって,格別なものではない。 サ 小括 以上から,本件発明1は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものに過ぎないから,特許法29条2項により特許を受けることができないものであるので,同法123条1項2号に該当し,無効とすべきものである。」 (審判請求書第33頁第3行乃至第22行) 2.証拠方法 請求人は,審判請求書に添付して甲第1号証を提出した。 甲第1号証: 特表2002-543481号公報 第4 被請求人の主張の概要 被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求めている。 被請求人の答弁の理由の概要は,次のとおりである。 1.特に本件発明1について ア.「第2 本件特許発明1(請求項1)に対する無効理由について 1 請求人の主張する相違点 (1)請求人は,本件特許発明1と甲1発明との相違点を 「相違点1 本件発明1の注文情報生成手段は,「前記一の注文価格を一の最高価格として設定」しているのに対し,甲1発明は,「前記一の注文価格を一の・・・価格として設定」している点」 と主張する。 (2)しかしながら,後に詳述するとおり,甲1発明は甲第1号証のFig.7(右図)の売買テーブル中のある売買(実施例では10,000ウォンでの売り注文。右図の赤枠部分の取引。)が成立した場合に,その隣接する買い注文と売り注文(9,500ウォンでの買い注文と11.000ウォンでの売り注文。右図の青枠部分の取引。)とを,順次追加していく発明である。 以下で述べるとおり,甲1発明には, 『1』本件特許発明1における「注文情報群」という概念すらなく, 『2』まして,「注文情報群」が複数存在するという概念もないし, 『3』注文情報群を一の注文手続で複数生成することはできないし, 『4』生成されたそれぞれの注文情報群について,各注文情報群を構成する第一注文と第二注文の約定を交互に繰り返すという構成も備えていない。 このように,甲1発明と本件特許発明1とは,少なくとも「注文情報群」の存在を前提とする各構成要件の有無において異なり,全く異なる技術思想によって立つものである。」(なお,『』は丸付き数字を示す。) (答弁書第6頁第16行乃至第7頁第23行) イ.「3 甲1発明との相違点 以上のとおり,甲1発明は本件特許発明1における「注文情報群」に相当する構成を備えていないことから,本件特許発明1と甲1発明とは少なくとも「注文情報群」の存在を前提とする構成要件1F?1Hにおいて相違することは明らかであり,請求人の相違点の認定は誤りである。 そして,請求人の主張が誤った相違点の認定に基づくものである以上,その主張に理由がないこともまた,明らかである。」 (答弁書第18頁第19行乃至第19頁第1行) 第5 無効理由に対する当審の判断 1.甲第1号証の記載事項 甲第1号証には,次の事項が記載されている。なお,下線は当審において付加したものである。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】 (発明の背景) (発明の分野) この発明は,データ通信ネットワークを通じて株,債券,物件,先物,オプション,指数,外国為替などを自動売買する方法およびシステムに係り,より詳しくは,投資家のあらかじめの特定条件に応じてコンピュータが自動で売買を発注する方法およびシステムに関するものである。」 (2)「【0023】 さらに,この発明に従う自動発注システムで具現できるユーザーのコンピュータ(10)には,株持主とのインターフェースをするためのユーザーインターフェース(12)と,株投資家に対する情報(例えば,持ち株の種目および数量,前記株の買取り値,持ち金資産など)およびユーザーの意向によって設定された株売買条件を記憶させて売買約定状況なり,ユーザーの操作につれて新たな株売買条件に更新するための売買条件制御モジュール(16)と,前記売買条件に応じてその株の売買を発注せしめる売買発注制御モジュール(14)とが含まれる。」 (3)「【0025】 前記証券会社のコンピュータシステム(20)は,前記ネットワーク(40)を通じて前記ユーザーのコンピュータ(10)とデータ通信をやりとりできるように接続され,証券会社の管理人とのインターフェースのための管理者インターフェース(22)と,該ユーザーのコンピュータ(10)から依頼された売買発注を受信して,これを証券取引所のコンピュータシステム(30)へ伝送して株取引を約定するようにするための売買遂行モジュール(24),および特定の株持ち主の証券口座の可用残高および株の残量を記憶させて約定された売買に応じてこれらを更新するための口座制御モジュール(26)を含む。」 (4)「【0035】 最初の売買条件の設定はこの発明の一部ではない。最初の売買条件は現在における通常の証券会社らがサイバー証券取引投資家のために提供する方法およびシステムと同様である。現在の株の価格の照会ボタン(407)は選択的な事柄である。欄(408)は買取りあるいは売込みを選択するためのボタンである。この例では単価25,000ウォンでABC株式会社の100株(410)を買取る(408)ことを最初の取引として設定した。 【0036】 自動売買条件は,最初の売買が成立されたことを前提とするものである。自動売買条件を設定するために,売込みあるいは買取りを選択するための欄(412,422),単価および数量を定量あるいは定率として選択するための欄(414,418,424,428),および単価あるいは数量を定量あるいは定率として書き込むための欄(416,420,426,430)が提供される。」 (5)「【0044】 図5に示すように,実施態様3に沿ってシステムが開始され段階(500),段階(502)で自動売買条件を設定する。自動売買条件の設定は,例えば,図6のごときインターフェースをユーザーに提供することによって行われることができる。図6において,自動売買条件の設定部を除く残余部分は図4の参照番号(401)?(410)で表示された部分と同一である。ただし,この例おいては,DEF株式会社の10,000株を持ち合わせており,最初の売買条件としてDEF株式会社の100株を株あて10,000ウォンで売込むものと例示した。 【0045】 自動売買条件で基準量(602)は,毎度の自動売買時に売込みおよび買取りの基準量を設定する。欄(604)には株売買時に要される証券会社の歩合(および税金)の料率を書き込む。これは必須的なものではないが,株を売買した後の収益率の勘定に足しになれる。自動売買で買取り値および売込み量の欄(606,608,610,612)に設定する。買取り値は毎度の売込み値より所定割合の安値で設定するか,所定額の低値で設定することができる。図6おいては売込み値より毎度500ウォンと安値を自動買取り値として設定した。自動買取り量もまた欄(610)で定量あるいは定率で設定することができる。欄(612)が空欄の場合,毎度の自動買取り発注は基準量の設定値(602)のごとく100株となる。欄(612)には+および-符号が使用されうるし,+記号が使用された場合,定量あるいは定率分だけ自動買取り発注量が増し,-記号が使用された場合は定量あるいは定率分だけ減るようになる。 【0046】 自動売込み条件もまた同一の方式によって欄(614,616,618,620)で設定する。この発明の実施態様においては最初の売込み値より毎度1,000ウォンずつ値上がりあるいは値下がりした値段で100株を自動売込むものと設定することにした。加重売買条件もまた欄(622,624)で定量あるいは定率として設定することができる。加重売買条件の意味については後述することにする。 【0047】 ユーザーは欄(626)で目標収益率又は収益率を設定することができる。目標収益率が設定されないと,ユーザーが立ち入って自動売買を中止させないかぎり自動売買は継続される。ところで,毎度にわたって自動売買時にコンピュータが収益率を計算するということは決して容易なものでないことから,所定の収益率を達成した場合は,自動売買を自動的に中止するようにするのが望ましい。 【0048】 ユーザーは売買テーブル申込みボタン(628)を使用して図7のごとき自動売買テーブルを作ることができる。ところで,自動売買テーブルは仮想的なものでありうるし,視覚的なテーブルの作成は選択的なものである。つまり,この発明に従うシステムが自動売買テーブル(700)を作成するための公式あるいはロジックを記憶させていることだけによっても,この発明に従う実施態様3は実行されることができる。 【0049】 図7の自動売買テーブル(700)は,図6の自動売買の設定条件によって作られることができる。自動売買テーブル(700)売込み値の縦列(714)でそれぞれの横列の売込み値が設定されているとおり,1,000ウォンずつの隔りをもつように作られ,買取り値の縦列(712)のそれぞれの買取り値は同じ横列の売込み値より500ウォンずつ安値で作られる。自動売買テーブル(700)において,(702)?(710)のごとき横列は最初の売買価を基準に上下にわたって適切な数だけ作られる。 【0050】 図6の例とは異なり,売買条件が定率として%で定められている場合,売買テーブルの買取り値と,売込み値あるいは発注量が小数点単位によっても生成されることができる。ところで,我が国における証券取引所においては,株価が10,000ウォン以上50,000ウォン未満の場合は,50ウォン単位で売買するように規定されているなど,売買価の単位と売買量の単位を規定していることから,規定に合わない場合,規定に合うように酷似する値段に変更するか,四捨五入するなどの方法によって売買テ ブルが修正される。すべての場合,それぞれの国の取引規則に則るよう,売買テーブルは近似値に調整することができ,かかる作業はコンピュータによって自動的に行われる。売買テーブルのそれぞれの欄は,ユーザーが望むとおりの発注量,売込み値あるいは買取り値を修正することができるように許されることができる。図7の例は修正,変更されていない例である。売買テーブル(700)はユーザーが売買テーブル確定ボタン(716)を押すことによって確定される。 【0051】 図5を参照して,最初の売込みが成功すると,早急にあらかじめ設定された自動売買条件による自動売買テーブルに応じて第1回目の自動買取りと自動売込みが発注される(段階512)。実施態様3は”同一の株を安値で買取って高値で売り込むよう”に設計されている。したがって,最初の売込み発注が約定されると,自動売買テーブル(700)において,約定された最初の売込み値(10,000ウォン)より真下の安値の買取り(つまり,9,500ウォンの買取り値で100株の買取り)を発注し(図7の横列(706)),約定された売込み値より真上の高値の売込み(つまり,11,000ウォンの売込み値で100株の売込み)を発注する(図7の横列(704)の売込み欄参照)。かかる売込みおよび買取り発注は口座残高および持ち株数の範囲内にあることから,段階(506)および(508)でエラーは発生しない。 【0052】 第1回目の自動売買発注中に買取り発注が発注とおりに約定された場合には,自動売買テーブル(700)で約定された発注価に隣合う買取りおよび売込みが発注される。前述のごとく,実施態様3は寸前の約定価より”安値”で買取り,”高値で売り込む”ように設計されたものであることから,第2回目の自動売買は,図5の段階(514,516,506)および(508)を径て買取り(8,500ウォンで100株の買取り,図7の横列(708)参照)および売込み(10,000ウォンで100株の売込み)が発注される。第2回目の自動売買で売込み発注が約定された場合,第3回目の自動発注は約定された発注価(第2回目の10,000ウォン)に隣り合う買取り(9,500ウォンで100株の買取り)および売込み(11,000ウォンで100株の売込み)が自動的に発注される。つまり,毎度の自動売買では自動売買テーブル(700)での約定価より真下の安値の買取りおよび約定価より真上の高値の売込みが発注される。 【0053】 実施態様3に応じて自動的に売買する場合,株価が最初の売買価の値段の範囲から上下に変動される場合,所定の収益が発生される。例えば,図7において株価が10,000ウォンから14,000ウォンに値上がりしてから,再度10,000ウォンとなった場合,所定の収益が発生する。さらに,株価が10,000ウォンから4,000ウォンに値下がりしてから,再度10,000ウォンに値上がりした場合にも所定の収益が発生する。このように,実施態様3は株価がある値段の範囲で上下へ頻繁に変動される株に対する投資方法として適切であるといえる。 【0054】 図6において,加重売買条件とは,自動売買を開始した以後において同一の値段で自動売買が再度発生する場合,つまり,株価の上下への変動につれて同一値段の売込みおよび買取りが2度目に発生する場合の売込み量および買取り量を増やすために設定することができる。 【0055】 再び図5を参照する。設定された自動売買条件と証券口座の残高および持ち株数を照合して買取り条件および売込み条件が充足されるかを確認する(段階506,508)。株を買取るためには,少なくとも[設定された買取り値×設定された買取り量]より多額が口座に残っていなければならず,株を売込むためには少なくとも希望売込み量より多い株を持っていなければならない。自動売買によって継続して買取りだけが約定された場合には,証券口座の持ち分の残高がなくなることもありうるし,継続して売込みだけが約定された場合には,持ち株がなくなった場合も発生することもある。 【0056】 段階(506,508)が充足される場合,自動売買買取りおよび売込みが同時に発注され(段階512),条件が充足されない場合,エラーが発生し,かかるエラーは適切な方法で株投資家に通知される(段階510)。例えば,エラーはユーザーのインターフェースにエラーメッセージをディスプレーするか,警告音を鳴らすように設定することができる。さらに,エラーの発生時に株投資家へ無線あるいは有線電話あるいはペイザーを通じてエラーが発生されたことを通知するようにシステムを構成することもできる。かかるエラーの通知方法は公知の技術を利用して実現することができる。 【0057】 前述のごとく,(段階506,508)で条件が充足される場合,株買取りと株売込みが発注される(段階512)。ここで,買取りと売込みはともに発注されるということに留意すべきである。この発明の実施態様3は従来の株投資方法とはこの点において皆目相違する。実施態様3においては株の現在価を無視して株の値段への変動を一向に予測しない。実施態様3によれば,従前の株の買取り値より株価が下落すると所定量を買取り,買取り値より株価が上がると,所定量を売込む結果となる。 【0058】 段階(514)では売買が約定されたかどうかを確認する。売買発注は発注当日に売込みと買取りとの発注中のいずれかの一つが約定されるか,さもなければ,2つとも約定されないこともある。2つとも約定されない場合には,あくる日に同一の売込みおよび買取りが発注される。一部の約定,発注価とその他の値段で約定される場合など,例外的な場合も発生することがある。一部の約定の場合には,発注量の全体が約定されたものとみなされるか,あるいは約定されていない数の株に対して同一値段の売込みおよび買取りが発注されることがある。さらに,発注価とその他の値段で約定された場合には,約定価の真下の買取りおよび約定価の真上の売込みが発注される。 【0059】 いずれの発注が約定されても,口座残高および株の残量を更新し,段階(516),段階(506,508)であらかじめ設定された自動売買条件に応じて条件が充足される場合,直ちに新たな売込みと買取りが発注される。」 (6)「【0065】 さらに,この発明は上述においては株を対象に述べてきたが,株と類似する方式によって売買される債券,先物,オプション,外国為替,穀物,あるいは鉱物売買,指数スワップなどにも適用することができる。」 (7)【図6】 (8)【図7】 前記(1)乃至(8)によると,甲第1号証には,次の発明(以下,「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 「データ通信ネットワークを通じて株,債券,物件,先物,オプション,指数,外国為替などを自動売買する方法であって,投資家のあらかじめの特定条件に応じてコンピュータが自動で売買を発注する方法に関するものであり, 証券会社のコンピュータシステム(20)は,前記ネットワーク(40)を通じてユーザーのコンピュータ(10)とデータ通信をやりとりできるように接続され,該ユーザーのコンピュータ(10)から依頼された売買発注を受信して,これを証券取引所のコンピュータシステム(30)へ伝送して株取引を約定するようにするための売買遂行モジュール(24),および特定の株持ち主の証券口座の可用残高および株の残量を記憶させて約定された売買に応じてこれらを更新するための口座制御モジュール(26)を含み, システムが開始され段階(500),段階(502)で自動売買条件を設定するものであり,自動売買条件の設定は,インターフェースをユーザーに提供することによって行われることができ,該インターフェースは現在の株の価格の照会ボタンを備えており,最初の売買条件を設定し(例えば,DEF株式会社の100株を株あて10,000ウォンで売込む),自動売買条件は,最初の売買が成立されたことを前提とするものであり, 自動売買条件で基準量(602)は,毎度の自動売買時に売込みおよび買取りの基準量を株数で設定し,自動売買で買取り値および売込み量の欄(606,608,610,612)に設定し,買取り値は毎度の売込み値より所定額の低値で設定することができ(例えば,売込み値より毎度500ウォンと安値を自動買取り値として設定), 自動売込み条件もまた同一の方式によって欄(614,616,618,620)で設定することができ(例えば,最初の売込み値より毎度1,000ウォンずつ値上がりあるいは値下がりした値段で100株を自動売込むものと設定), ユーザーは売買テーブル申込みボタン(628)を使用して自動売買テーブルを作ることができ, 自動売買テーブル(700)は,自動売買の設定条件によって作られることができ,自動売買テーブル(700)売込み値の縦列(714)でそれぞれの横列の売込み値が設定され(上記例では1,000ウォンずつの隔りをもつように作られ),買取り値の縦列(712)のそれぞれの買取り値は同じ横列の売込み値より(上記例では,500ウォンずつ)安値で作られ,自動売買テーブル(700)において,(702)?(710)のごとき横列は最初の売買価を基準に上下にわたって適切な数だけ作られ, 売買テーブル(700)はユーザーが売買テーブル確定ボタン(716)を押すことによって確定され, 最初の売込みが成功すると,早急にあらかじめ設定された自動売買条件による自動売買テーブルに応じて第1回目の自動買取りと自動売込みが発注され(段階512), ”同一の株を安値で買取って高値で売り込むよう”に設計されており,最初の売込み発注が約定されると,自動売買テーブル(700)において,約定された最初の売込み値(上記例では,10,000ウォン)より真下の安値の買取り(上記例では,9,500ウォンの買取り値で100株の買取り)を発注し,約定された売込み値より真上の高値の売込み(上記例では,11,000ウォンの売込み値で100株の売込み)を発注するものであり, 第1回目の自動売買発注中に買取り発注が発注とおりに約定された場合には,自動売買テーブル(700)で約定された発注価に隣合う買取りおよび売込みが発注され, 寸前の約定価より”安値”で買取り,”高値で売り込む”ように設計されたものであることから,第2回目の自動売買は,買取り(上記例では,8,500ウォンで100株の買取り)および売込み(上記例では,10,000ウォンで100株の売込み)が発注される,第2回目の自動売買で売込み発注が約定された場合,第3回目の自動発注は約定された発注価(上記例では,第2回目の10,000ウォン)に隣り合う買取り(上記例では,9,500ウォンで100株の買取り)および売込み(上記例では,11,000ウォンで100株の売込み)が自動的に発注されるものであり,つまり,毎度の自動売買では自動売買テーブル(700)での約定価より真下の安値の買取りおよび約定価より真上の高値の売込みが発注される,方法。」 2.本件発明1についての判断 (2-1)対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 (ア)本件発明1の「相場価格が変動する金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法であって」について 甲1発明における「データ通信ネットワークを通じて株,債券,物件,先物,オプション,指数,外国為替などを自動売買する方法であって,投資家のあらかじめの特定条件に応じてコンピュータが自動で売買を発注する方法に関するものであり」及び「証券会社のコンピュータシステム(20)は,前記ネットワーク(40)を通じてユーザーのコンピュータ(10)とデータ通信をやりとりできるように接続され,該ユーザーのコンピュータ(10)から依頼された売買発注を受信して,これを証券取引所のコンピュータシステム(30)へ伝送して株取引を約定するようにするための売買遂行モジュール(24),および特定の株持ち主の証券口座の可用残高および株の残量を記憶させて約定された売買に応じてこれらを更新するための口座制御モジュール(26)を含み」との事項によれば,甲1発明も債券,物件,先物,オプション,指数,外国為替などの相場価格が変動する金融商品を売買し,ユーザの売買発注を受信して証券取引所のコンピュータシステムへ伝送して株取引を約定し,また,株持ち主の証券口座の更新などの売買取引を管理するコンピュータシステムを前提として,当該コンピュータシステムにおける前記金融商品の自動売買の方法を開示するものである。 そうすると,本件発明1と甲1発明は, 「相場価格が変動する金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法であって」 の点で共通する。 (イ)本件発明1の「売買を希望する前記金融商品の種類を選択するための情報と,前記金融商品の売買注文における,注文価格ごとの注文金額を示す情報と,前記金融商品の販売注文価格又は購入注文価格としての一の注文価格を示す情報と,一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で販売した後に他の価格で購入した場合の利幅又は一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で購入した後に他の注文価格で販売した場合の利幅を示す情報と,前記注文が複数存在する場合における該注文同士の値幅を示す情報と,のそれぞれを,前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報として受信して受け付ける注文入力受付手順」について 甲1発明の「システムが開始され段階(500),段階(502)で自動売買条件を設定するものであり,自動売買条件の設定は,インターフェースをユーザーに提供することによって行われることができ,該インターフェースは現在の株の価格の照会ボタンを備えており,最初の売買条件を設定し(例えば,DEF株式会社の100株を株あて10,000ウォンで売込む),自動売買条件は,最初の売買が成立されたことを前提とするものであり」,「自動売買条件で基準量(602)は,毎度の自動売買時に売込みおよび買取りの基準量を株数で設定し,自動売買で買取り値および売込み量の欄(606,608,610,612)に設定し,買取り値は毎度の売込み値より所定額の低値で設定することができ(例えば,売込み値より毎度500ウォンと安値を自動買取り値として設定)」,及び,「自動売込み条件もまた同一の方式によって欄(614,616,618,620)で設定することができ(例えば,最初の売込み値より毎度1,000ウォンずつ値上がりあるいは値下がりした値段で100株を自動売込むものと設定)」との事項によれば,これはユーザがコンピュータシステムから提供されるインターフェースを介して,金融商品である株の売買注文を行うための自動売買条件を設定する手順であり,コンピュータシステムから見れば,金融商品である株の売買注文を行うための自動売買条件を受信して受け付ける注文入力受付手順であるといえることから,甲1発明における当該手順は,本件発明1の「前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報として受信して受け付ける注文入力受付手順」に相当するものといえる。 そこで,甲1発明における上記インターフェースを介して設定される金融商品である株の売買注文を行うための自動売買条件について検討する。 甲1発明では,「最初の売買条件を設定し(例えば,DEF株式会社の100株を株あて10,000ウォンで売込む)」との事項及び上記「第5 1.(7)」の図6のインターフェースの画面によれば,最初の売買条件として株の売買の対象となる会社名(ここでは「DEF株式会社」),売込み又は買取り,1株当たりの価格,株数が設定されており,当該売買の対象となる会社名,及び,1株当たりの価格は,本件発明1の「売買を希望する前記金融商品の種類を選択するための情報」,及び,「前記金融商品の販売注文価格又は購入注文価格としての一の注文価格を示す情報」に相当するものである。 なお,本件発明1では「前記金融商品の売買注文における,注文価格ごとの注文金額を示す情報」が受け付けられるのに対し,甲1発明では売買の株数を設定するものである点で相違している。 また,甲1発明における「買取り値は毎度の売込み値より所定額の低値で設定することができ(例えば,売込み値より毎度500ウォンと安値を自動買取り値として設定)」との事項によると,毎度の売り込み値よりも「所定額の低値」で買取ることにより利益を得るためのものであることから,甲1発明の当該「所定額の低値」は,本件発明1の「一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で販売した後に他の価格で購入した場合の利幅」「を示す情報」に相当する。 また,甲1発明における「自動売込み条件もまた同一の方式によって欄(614,616,618,620)で設定することができ(例えば,最初の売込み値より毎度1,000ウォンずつ値上がりあるいは値下がりした値段で100株を自動売込むものと設定)」との事項によれば,最初の売込み値に対して,所定値(この例では1,000ウォン)の幅で上下に売込み値が設定されるものであるから,これは本件発明1の「前記注文が複数存在する場合における該注文同士の値幅を示す情報」に相当する。 そうすると,本件発明1と甲1発明は, 「売買を希望する前記金融商品の種類を選択するための情報と,前記金融商品の販売注文価格又は購入注文価格としての一の注文価格を示す情報と,一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で販売した後に他の価格で購入した場合の利幅又は一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で購入した後に他の注文価格で販売した場合の利幅を示す情報と,前記注文が複数存在する場合における該注文同士の値幅を示す情報と,のそれぞれを,前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報として受信して受け付ける注文入力受付手順」 を備える点で共通している。 また,本件発明1では「前記金融商品の売買注文における,注文価格ごとの注文金額を示す情報」が受け付けられるのに対し,甲1発明では毎度の自動売買時に売込みおよび買取りの基準量を株数で設定するものである点で相違している。 (ウ)本件発明1の「該注文入力受付手順によって受け付けられた前記売買注文申込情報に基づいて,選択された前記種類の前記金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手順」について 甲1発明の「自動売買テーブル(700)は,自動売買の設定条件によって作られることができ,自動売買テーブル(700)売込み値の縦列(714)でそれぞれの横列の売込み値が設定され(上記例では1,000ウォンずつの隔りをもつように作られ),買取り値の縦列(712)のそれぞれの買取り値は同じ横列の売込み値より(上記例では,500ウォンずつ)安値で作られ,自動売買テーブル(700)において,(702)?(710)のごとき横列は最初の売買価を基準に上下にわたって適切な数だけ作られ」,及び,「最初の売込みが成功すると,早急にあらかじめ設定された自動売買条件による自動売買テーブルに応じて第1回目の自動買取りと自動売込みが発注され(段階512)」との事項によれば,上記(イ)で示したインターフェースを介して設定した自動売買条件に基づいて,最初の売買条件で設定した売買の対象となる会社名,1株当たりの価格,及び,株数での売込みが行われ,当該売込みが成功すると,設定された自動売買条件による自動売買テーブルに応じて第1回目の自動買取りと自動売込みが発注されるものであるから,甲1発明もインターフェースを介して設定した自動売買条件に基づいて,売買の対象となる会社の注文情報を生成するものである。 そうすると,本件発明1と甲1発明は, 「該注文入力受付手順によって受け付けられた前記売買注文申込情報に基づいて,選択された前記種類の前記金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手順」 を備える点で共通する。 (エ)本件発明1の「前記金融商品の前記相場価格の情報を取得する価格情報受信手順」について 甲1発明の「インターフェースは現在の株の価格の照会ボタンを備えており」との事項,及び,上記「第5 1.(7)」の図6のインターフェースの画面を参酌すれば,甲1発明も最初の売買条件を設定する際の参考として,売買対象となる会社の現在の価格を照会する機能を備えている。 そうすると,本件発明1と甲1発明は, 「前記金融商品の前記相場価格の情報を取得する価格情報受信手順」 を備える点で共通する。 (オ)本件発明1の「前記売買注文申込情報における前記注文価格と前記利幅とに基づいて,前記他の注文価格を算出するための第二注文価格算出手順」について 甲1発明の「”同一の株を安値で買取って高値で売り込むよう”に設計されており,最初の売込み発注が約定されると,自動売買テーブル(700)において,約定された最初の売込み値(上記例では,10,000ウォン)より真下の安値の買取り(上記例では,9,500ウォンの買取り値で100株の買取り)を発注し,約定された売込み値より真上の高値の売込み(上記例では,11,000ウォンの売込み値で100株の売込み)を発注するものであり」によれば,最初の売込み発注が約定されると,上記(イ)で示したようにインターフェースを介して設定した自動売買条件の「所定額の低値」での買取り(上記例では,9,500ウォンの買取り値で100株の買取り)を発注するものであり,そのために上記「自動売買テーブル(700)」には最初の売込み値(上記例では,10,000ウォン)より「所定額の低値」の価格が算出されて当該テーブルに設定されるものである。 そうすると,本件発明1と甲1発明は, 「前記売買注文申込情報における前記注文価格と前記利幅とに基づいて,前記他の注文価格を算出するための第二注文価格算出手順」 を備える点で共通する。 (カ)本件発明1の「前記注文情報生成手順においては,前記売買注文申込情報に基づいて,前記注文情報として,同一種類の前記金融商品について,前記一の注文価格を一の最高価格として設定し,該一の最高価格より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について買いもしくは売りの指値注文を行う第一注文情報,前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最高価格として設定し,該他の最高価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記買いの第一注文に対しては売りの,前記売りの第一注文に対しては買いの指値注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し,生成された前記注文情報群を注文情報記録手段に記録し,一の前記売買注文申込情報に基づいて生成されたそれぞれの前記注文情報群について,有効な注文である前記第一注文の前記第一注文価格と前記金融商品の相場価格とが一致し,次いで有効な注文である前記第二注文の前記第二注文価格と前記相場価格とが一致することで前記第一注文と前記第二注文とが約定した場合,次の前記注文情報群の前記第一注文情報を有効とし,約定した前記第一注文と同じ前記第一注文価格における前記第一注文の約定と,約定した前記第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定する」について 甲1発明では,「自動売買テーブル(700)は,自動売買の設定条件によって作られることができ,自動売買テーブル(700)売込み値の縦列(714)でそれぞれの横列の売込み値が設定され(上記例では1,000ウォンずつの隔りをもつように作られ),買取り値の縦列(712)のそれぞれの買取り値は同じ横列の売込み値より(上記例では,500ウォンずつ)安値で作られ,自動売買テーブル(700)において,(702)?(710)のごとき横列は最初の売買価を基準に上下にわたって適切な数だけ作られ」との事項により,例えば上記「第5 1.(8)」の図7で示される「自動売買テーブル」が作成されるが,この例では最初の売買条件で設定された売込み価格を基準にして上下に,売込み値を1,000ウォンずつの隔たりとし,また,買取り値は同じ横列の売込み値より500ウォンずつ安値としてテーブル化したものである。 そして,甲1発明では当該「自動売買テーブル」に基づいて,「最初の売込みが成功すると,早急にあらかじめ設定された自動売買条件による自動売買テーブルに応じて第1回目の自動買取りと自動売込みが発注され(段階512),”同一の株を安値で買取って高値で売り込むよう”に設計されており,最初の売込み発注が約定されると,自動売買テーブル(700)において,約定された最初の売込み値(上記例では,10,000ウォン)より真下の安値の買取り(上記例では,9,500ウォンの買取り値で100株の買取り)を発注し,約定された売込み値より真上の高値の売込み(上記例では,11,000ウォンの売込み値で100株の売込み)を発注するものであり,第1回目の自動売買発注中に買取り発注が発注とおりに約定された場合には,自動売買テーブル(700)で約定された発注価に隣合う買取りおよび売込みが発注され,寸前の約定価より”安値”で買取り,”高値で売り込む”ように設計されたものであることから,第2回目の自動売買は,買取り(上記例では,8,500ウォンで100株の買取り)および売込み(上記例では,10,000ウォンで100株の売込み)が発注される,第2回目の自動売買で売込み発注が約定された場合,第3回目の自動発注は約定された発注価(上記例では,第2回目の10,000ウォン)に隣り合う買取り(上記例では,9,500ウォンで100株の買取り)および売込み(上記例では,11,000ウォンで100株の売込み)が自動的に発注されるものであり,つまり,毎度の自動売買では自動売買テーブル(700)での約定価より真下の安値の買取りおよび約定価より真上の高値の売込みが発注される」との自動売買の処理が行われるものである。 つまり,甲1発明の自動売買の発注は,「毎度の自動売買では自動売買テーブル(700)での約定価より真下の安値の買取りおよび約定価より真上の高値の売込みが発注される」ものであり,常に約定価より真下の安値の買取りと,約定価より真上の高値の売込みの2つの注文が発注されるというものであって,自動売買テーブルは,この2つの買取りと売込みの値を約定価に基づいて決定するためのテーブルである。 これに対し,本件発明1では,「第一注文価格について買いもしくは売りの指値注文を行う第一注文情報」と「前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記買いの第一注文に対しては売りの,前記売りの第一注文に対しては買いの指値注文を行う第二注文情報」からなる「注文情報群」を複数生成し,「生成された前記注文情報群を注文情報記録手段に記録」するものであり,そして「一の前記売買注文申込情報に基づいて生成されたそれぞれの前記注文情報群について,有効な注文である前記第一注文の前記第一注文価格と前記金融商品の相場価格とが一致し,次いで有効な注文である前記第二注文の前記第二注文価格と前記相場価格とが一致することで前記第一注文と前記第二注文とが約定した場合,次の前記注文情報群の前記第一注文情報を有効とし,約定した前記第一注文と同じ前記第一注文価格における前記第一注文の約定と,約定した前記第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせる」というものであって,「注文情報記録手段」に記録されたそれぞれの「注文情報群」における第一注文と第二注文の約定をこの順序で繰り返し行わせるものであり,さらにいえば「注文情報記録手段」に記録されたそれぞれの「注文情報群」が,1つの注文単位として独立して第一注文と第二注文の約定を繰り返すものである。 そして,甲1発明における「自動発注テーブル」は,前述したように常に約定価より真下の安値の買取りと,約定価より真上の高値の売込みの2つの注文の値を決定するためのテーブルであり,例えば,10,000ウォンの売込みが約定し,9,500ウォンの買取りと11,000ウォンの売込みが発注され,次に,9,500ウォンの買取りが約定し,10,000ウォンの売込みと8,500ウォンの買取りが発注され,さらに10,000ウォンの売込みが約定し,9,500ウォンの買取りと11,000ウォンの売込みが発注されるような場合もあり,この場合には10,000ウォンの売込みと9,500ウォンの買取りが交互に繰り返されることになるが,あくまでもこの売込み値と買取り値は,上下する約定価により「自動発注テーブル」に基づき決定された偶然の結果であり,この10,000ウォンの売込みと9,500ウォンの買取りがこの順序で繰り返されるように「自動発注テーブル」に設定されたものではない。 よって,甲1発明の「自動発注テーブル」における横列に設定される,例えば10,000ウォンの売込みと9,500ウォンの買取りについて検討しても,本件発明1の第一注文と第二注文の約定を繰り返し行わせるための「注文情報群」に相当するものとはいえない。 そうすると,本件発明1と甲1発明は, 本件発明1が「前記注文情報生成手順においては,前記売買注文申込情報に基づいて,前記注文情報として,同一種類の前記金融商品について,前記一の注文価格を一の最高価格として設定し,該一の最高価格より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について買いもしくは売りの指値注文を行う第一注文情報,前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最高価格として設定し,該他の最高価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記買いの第一注文に対しては売りの,前記売りの第一注文に対しては買いの指値注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し,生成された前記注文情報群を注文情報記録手段に記録し,一の前記売買注文申込情報に基づいて生成されたそれぞれの前記注文情報群について,有効な注文である前記第一注文の前記第一注文価格と前記金融商品の相場価格とが一致し,次いで有効な注文である前記第二注文の前記第二注文価格と前記相場価格とが一致することで前記第一注文と前記第二注文とが約定した場合,次の前記注文情報群の前記第一注文情報を有効とし,約定した前記第一注文と同じ前記第一注文価格における前記第一注文の約定と,約定した前記第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定する」ものであるのに対し, 甲1発明が「毎度の自動売買では自動売買テーブル(700)での約定価より真下の安値の買取りおよび約定価より真上の高値の売込みが発注される」ものである点で相違する。 以上(ア)乃至(カ)によると,本件発明1と甲1発明は,次の点で一致する。 <一致点> 「相場価格が変動する金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法であって, 売買を希望する前記金融商品の種類を選択するための情報と,前記金融商品の販売注文価格又は購入注文価格としての一の注文価格を示す情報と,一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で販売した後に他の価格で購入した場合の利幅又は一の前記注文価格の前記金融商品を前記一の注文価格で購入した後に他の注文価格で販売した場合の利幅を示す情報と,前記注文が複数存在する場合における該注文同士の値幅を示す情報と,のそれぞれを,前記金融商品の売買注文を行うための売買注文申込情報として受信して受け付ける注文入力受付手順と, 該注文入力受付手順によって受け付けられた前記売買注文申込情報に基づいて,選択された前記種類の前記金融商品の注文情報を生成する注文情報生成手順と, 前記金融商品の前記相場価格の情報を取得する価格情報受信手順と, 前記売買注文申込情報における前記注文価格と前記利幅とに基づいて,前記他の注文価格を算出するための第二注文価格算出手順とを有する, 金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法。」 そして,本件発明1と甲1発明は,次の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1では「前記金融商品の売買注文における,注文価格ごとの注文金額を示す情報」が受け付けられるのに対し,甲1発明では毎度の自動売買時に売込みおよび買取りの基準量を株数で設定するものである点。 <相違点2> 本件発明1が「前記注文情報生成手順においては,前記売買注文申込情報に基づいて,前記注文情報として,同一種類の前記金融商品について,前記一の注文価格を一の最高価格として設定し,該一の最高価格より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について買いもしくは売りの指値注文を行う第一注文情報,前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最高価格として設定し,該他の最高価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記買いの第一注文に対しては売りの,前記売りの第一注文に対しては買いの指値注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し,生成された前記注文情報群を注文情報記録手段に記録し,一の前記売買注文申込情報に基づいて生成されたそれぞれの前記注文情報群について,有効な注文である前記第一注文の前記第一注文価格と前記金融商品の相場価格とが一致し,次いで有効な注文である前記第二注文の前記第二注文価格と前記相場価格とが一致することで前記第一注文と前記第二注文とが約定した場合,次の前記注文情報群の前記第一注文情報を有効とし,約定した前記第一注文と同じ前記第一注文価格における前記第一注文の約定と,約定した前記第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定する」ものであるのに対し, 甲1発明が「毎度の自動売買では自動売買テーブル(700)での約定価より真下の安値の買取りおよび約定価より真上の高値の売込みが発注される」ものである点 (2-2)相違点についての判断 (ア)<相違点1>について 本件発明1の「注文価格ごとの注文金額を示す情報」について,明細書の第【0061】段落には,「買い注文テーブル50aは,「第一注文情報」としての第一の買い注文情報51a?第五の買い注文情報51eまでの5個の買い注文情報(即ちトラップ本数選択欄44dにて選択された個数)を有し,第一の買い注文情報51aに示された買い注文価格(第一注文価格)が1ドル109.90円(即ちスタート価格入力欄44aに入力された価格)で,各注文情報の買い注文価格の値幅は0.10円(即ち値幅入力欄44cに入力された価格)である。また,第一の買い注文情報51a?第五の買い注文情報51eはそれぞれ注文金額が1万通貨(即ち金額入力欄44bに入力された金額)である。」(なお,下線は当審において付加したものである。)と記載されているように,ここでは金融商品としての売買対象がドル(通貨)であり,この例では,1ドル109.90円(注文価格)で1万通貨(注文金額)の買い注文として入力されている。 つまり,本件発明1の「注文価格ごとの注文金額を示す情報」とは,注文ごとの売買対象とする金融商品である通貨の注文単位数を意味するものである。 そして,甲1発明の毎度の自動売買時に売込みおよび買取りの基準量として設定される株数も,株を対象としたそれぞれの注文における注文単位数であり,また,甲1発明では,株以外に外国為替も自動売買の対象としている。 そうすると,甲1発明における自動売買の対象を外国為替とし,毎度の自動売買時に売込みおよび買取りの基準量として設定される注文単位数を,売買対象とする金融商品に応じた注文単位,すなわち通貨の注文単位数として,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。 (イ)<相違点2>について 上記「(2-1)(カ)」で検討したとおり,本件発明1の「注文情報群」を生成すること,及び,それぞれの「注文情報群」における第一注文と第二注文の約定を繰り返し行わせるための相違点2に係る構成は,甲1発明には存在しない。 また,甲1発明は,上記「第5 1.(5)」の第【0057】段落に,「前述のごとく,(段階506,508)で条件が充足される場合,株買取りと株売込みが発注される(段階512)。ここで,買取りと売込みはともに発注されるということに留意すべきである。この発明の実施態様3は従来の株投資方法とはこの点において皆目相違する。実施態様3においては株の現在価を無視して株の値段への変動を一向に予測しない。実施態様3によれば,従前の株の買取り値より株価が下落すると所定量を買取り,買取り値より株価が上がると,所定量を売込む結果となる。」と記載されているように,従来の株投資方法とは相違して,注文の約定により買取りと売込みがともに発注されることが発明の特徴である。 このことに照らせば,仮に甲1発明の自動売買テーブルの同一行中に係る買取り注文と売込み注文とを本願発明の第一注文と第二注文からなる,「注文情報群」とすることができても,第二注文の約定によって第一注文と第二注文を繰り返し行わせるためには,当該第二注文と同じ列の買取りまたは売り込み注文を行わないよう甲1発明を変更する必要があり,この変更は,上記した甲1発明の特徴を失わせることとなる。 してみると,甲1発明を第一注文と第二注文の約定を繰り返し行わせるものとする動機づけはなく,むしろ,そのように変更することは,阻害されるものである。 したがって,本件発明1の「注文情報群」を生成すること,及び,それぞれの「注文情報群」における第一注文と第二注文の約定を繰り返し行わせるための相違点2に係る構成は,甲1発明及び当該技術分野における周知技術等を考慮しても,当業者が容易に想到しえたとはいえないし,また,この点について請求人はその他の証拠は提示していない。 よって,本件発明1における相違点2に係る構成は,当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 (2-3)まとめ 以上のとおりであるから,本件発明1は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 3.本件発明2についての判断 本件発明2は,実質的に本件発明1における「前記注文情報生成手順においては,前記売買注文申込情報に基づいて,前記注文情報として,同一種類の前記金融商品について,前記一の注文価格を一の最高価格として設定し,該一の最高価格より安値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について買いもしくは売りの指値注文を行う第一注文情報,前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最高価格として設定し,該他の最高価格より安値側に,それぞれの前記第一注文に対し,購入又は販売が行われた前記第一注文に基づいて販売又は購入が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記買いの第一注文に対しては売りの,前記売りの第一注文に対しては買いの指値注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し」との事項を,「前記注文情報生成手順においては,前記売買注文申込情報に基づいて,前記注文情報として,同一種類の前記金融商品について,一の注文価格を一の最低価格として設定し,該一の最低価格より高値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について売りもしくは買いの指値注文を行う第一注文情報,前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最低価格として設定し,該他の最低価格より高値側に,それぞれの前記第一注文に対し,販売又は購入が行われた前記第一注文に基づいて購入又は販売が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記売りの第一注文に対しては買いの,前記売りの第一注文に対しては売りの指値注文としての第二注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し」(なお,下線は当審において付与したものである。)としたものである。 そして,本件発明2と甲1発明を対比すると,本件発明1と同様に以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1では「前記金融商品の売買注文における,注文価格ごとの注文金額を示す情報」が受け付けられるのに対し,甲1発明では毎度の自動売買時に売込みおよび買取りの基準量を株数で設定するものである点。 <相違点2> 本件発明2が「前記注文情報生成手順においては,前記売買注文申込情報に基づいて,前記注文情報として,同一種類の前記金融商品について,一の注文価格を一の最低価格として設定し,該一の最低価格より高値側に,それぞれの値幅が前記売買注文申込情報に含まれる前記値幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,設定されたそれぞれの前記注文価格としての第一注文価格について売りもしくは買いの指値注文を行う第一注文情報,前記第二注文価格算出手順において算出された前記他の価格を他の最低価格として設定し,該他の最低価格より高値側に,それぞれの前記第一注文に対し,販売又は購入が行われた前記第一注文に基づいて購入又は販売が行われたときの前記利幅が前記売買注文申込情報における前記利幅となるようにそれぞれの前記注文価格を設定し,該設定されたそれぞれの前記注文価格としての第二注文価格について前記売りの第一注文に対しては買いの,前記売りの第一注文に対しては売りの指値注文としての第二注文を行う第二注文情報からなる注文情報群を複数生成し,生成された前記注文情報群を注文情報記録手段に記録し,一の前記売買注文申込情報に基づいて生成されたそれぞれの前記注文情報群について,有効な注文である前記第一注文の前記第一注文価格と前記金融商品の相場価格とが一致し,次いで有効な注文である前記第二注文の前記第二注文価格と前記相場価格とが一致することで前記第一注文と前記第二注文とが約定した場合,次の前記注文情報群の前記第一注文情報を有効とし,約定した前記第一注文と同じ前記第一注文価格における前記第一注文の約定と,約定した前記第二注文と同じ前記第二注文価格における前記第二注文の約定とを繰り返し行わせるように設定する」ものであるのに対し, 甲1発明が「毎度の自動売買では自動売買テーブル(700)での約定価より真下の安値の買取りおよび約定価より真上の高値の売込みが発注される」ものである点 そうすると,本件発明1と同様に,相違点2に係る構成は甲1発明及び当該技術分野における周知技術等を考慮しても当業者が容易に想到しえたとはいえないし,また,この点について請求人はその他の証拠は提示していない。 よって,本件発明2は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 4.本件発明3,5及び7乃至9についての判断 本件発明3,5及び7乃至9は,本件発明1または本件発明2をさらに限定したものであるので,本件発明1及び本件発明2と同様に,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 5.本件発明10についての判断 本件発明10は「コンピュータに請求項1乃至9の何れか一つに記載の金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法を行わせることを特徴とするプログラム。」であって,本件発明1乃至9の「金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法」により特定される情報処理を「プログラム」の発明として請求するものであるから,本件発明1及び本件発明2と同様に,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 6.無効理由についてのまとめ 以上のとおりであるから,本件発明1乃至3,5及び7乃至10は,甲第1号証に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではなく,特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではない。 したがって,請求人が主張する無効理由によっては,同法第123条第1項第2号の規定に違反するものとして,請求項1乃至3,5及び7乃至10に係る発明の特許を無効とすることはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから,請求人の無効の理由及び証拠方法によっては,本件特許の請求項1乃至3,5及び7乃至10に係る発明の特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-11-25 |
結審通知日 | 2016-11-29 |
審決日 | 2016-12-12 |
出願番号 | 特願2013-78806(P2013-78806) |
審決分類 |
P
1
123・
121-
Y
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田付 徳雄 |
特許庁審判長 |
手島 聖治 |
特許庁審判官 |
金子 幸一 野崎 大進 |
登録日 | 2014-04-18 |
登録番号 | 特許第5525082号(P5525082) |
発明の名称 | 金融商品取引管理システムにおける金融商品取引管理方法、プログラム |
代理人 | 溝田 宗司 |
代理人 | 牧野 知彦 |
代理人 | 平井 佑希 |
代理人 | 鮫島 正洋 |
代理人 | 伊藤 真 |
代理人 | 丸田 憲和 |
代理人 | 佐野 弘 |
代理人 | 石井 明夫 |
代理人 | 関 裕治朗 |
代理人 | 伊藤 雅浩 |