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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1335860
審判番号 不服2017-5172  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-11 
確定日 2018-01-19 
事件の表示 特願2014-502040「携帯端末装置、誤操作防止方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 6日国際公開、WO2013/128911、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年2月27日(優先権主張平成24年3月2日)を国際出願日とする出願であって、平成28年9月2日付けで拒絶理由が通知され、平成28年10月13日付けで手続補正がされたが、平成29年2月9日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成29年4月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がされ、平成29年6月5日に前置報告がされたものである。


第2 原査定の理由の概要
原査定(平成29年2月9日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1-4に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引 用 文 献 等 一 覧>
1.国際公開第2011/101940号
2.国際公開第2009/147870号
3.特開2009-217814号公報
4.特開2012-8923号公報


第3 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成29年4月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
表示手段と、
前記表示手段の少なくとも表示エリア上へのタッチ操作を検出するタッチパネルと、
前記タッチパネルの外周部である外側領域へのタッチ操作が検出された場合、そのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であるか判別する判別手段と、
前記判別手段により前記外側領域へのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であると判別された場合に、前記外側領域へのタッチ操作を無効にし、前記タッチ操作の移動を追跡し、前記タッチ操作が前記外側領域より内側に移動したことが検知されても、前記タッチ操作がリリースされるまで、前記タッチ操作を無効のままとする制御手段と
を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
当該装置の姿勢を検出する姿勢検出手段を更に備え、
前記制御手段は、
前記姿勢検出手段により当該装置が縦長方向で使用されていると推定できる場合には、前記外側領域のうち、タッチ操作を検出する範囲を、下端を含む所定の領域に限定する
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記姿勢検出手段により当該装置が横長方向で使用されていると推定できる場合には、前記外側領域のうち、タッチ操作を検出する範囲を、右下の隅、左下の隅を含む領域に限定する
ことを特徴とする請求項2に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
表示手段の少なくとも表示エリア上へのタッチ操作を検出するタッチパネルにより、当該タッチパネルの外周部である外側領域へのタッチ操作を検出するステップと、
前記外側領域へのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であるか判別するステップと、
前記外側領域へのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であると判別された場合に、前記外側領域へのタッチ操作を無効にするステップと、
前記タッチ操作の移動を追跡し、前記タッチ操作が前記外側領域より内側に移動したことが検知されても、前記タッチ操作がリリースされるまで、前記タッチ操作を無効のままとするステップと
を含むことを特徴とする誤操作防止方法。
【請求項5】
表示手段と該表示手段の少なくとも表示エリア上へのタッチ操作を検出するタッチパネルとを備える携帯端末装置のコンピュータに、
前記タッチパネルの外周部である外側領域へのタッチ操作を検出するタッチ操作検出機能、
前記外側領域へのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であるか判別する判別機能、
前記外側領域へのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であると判別された場合に、前記外側領域へのタッチ操作を無効にし、前記タッチ操作の移動を追跡し、前記タッチ操作が前記外側領域より内側に移動したことが検知されても、前記タッチ操作がリリースされるまで、前記タッチ操作を無効のままとするタッチ操作制御機能
を実行することを特徴とするプログラム。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。)

ア.「[0002] 近年、携帯端末のUI(User Interface)として、指先やペンの接触を感知して入力操作を行うタッチパネルが利用されている。接触を感知する方式として、抵抗膜方式、超音波方式、静電容量方式等が提案されている。
[0003] 特許文献1には、タッチパネルにおけるペンの接触面積を検出し、検出された接触面積に従って入力モードと消去モードとを切り替える技術が開示されている。具体的には、細いペン先でタッチパネルに触れた場合は入力モードとして機能して、太いペン先でタッチパネルに触れた場合は消去モードとして機能する。
[0004] また、特許文献2には、タッチパネルにおける接触面積が所定値未満である場合はペンによる入力と判定し、接触面積が所定値以上である場合は指による入力であると判定する技術が開示されている。」
イ.「[0008] しかしながら、特許文献1及び2に記載された技術においては、ユーザがタッチパネルを備える携帯端末を把持した場合に、意図しない部位(例えば、ユーザの指の腹や掌等)がタッチパネルに触れることによって、消去モードあるいは指入力としての誤入力が発生してしまう可能性がある。」
ウ.「[0016] 実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態にかかる携帯端末1の構成例を図1に示す。携帯端末1は、制御部10、LCD(Liquid Crystal Display)20、タッチパネル30、汎用アプリケーション部40を備える。
[0017] 制御部10は、表示部101、入力判定部102を備える。表示部101は、汎用アプリケーション部40から送られてきた画面情報をLCD20に表示する。ここで、汎用アプリケーション部40は、タッチパネル30に物体が接触した場合に、制御部10から通知されるタッチパネル30上の座標情報を取得する。そして、汎用アプリケーション部40は、取得した座標情報に基づいてイベント処理を実行し、イベント処理の実行結果を表示部101に送り画面情報を更新する。アプリケーションの内容は、例えばブラウザやメーラ等であり、今日よく知られている一般的なアプリケーションである。
[0018] 入力判定部102は、物体がタッチパネル30に接触した場合に、タッチパネル30への接触による入力が有効であるか否か判定する。具体的には、タッチパネル30に接触した物体の面積が、指入力時にタッチパネル30に接する指先の接触面積の上限に対応する値(以下、第1の閾値と称す。)以上である場合に、当該物体の接触による入力は無効であると判定する。なお、第1の閾値は、ユーザが任意に設定可能であり、指先よりも大きく、指の腹よりは小さい面積であることが好ましい。
[0019] タッチパネル30は、接触座標取得部301、接触面積検出部302を備える。接触座標取得部301は、タッチパネル30において物体が接触した座標を取得する。具体的には、タッチパネル30にユーザがペンや指等を接触させた場合、接触座標取得部301は、接触した点の座標情報を取得し、制御部10に座標情報を送る。接触面積検出部302は、物体がタッチパネル30に接触した場合、当該物体のタッチパネル30への接触面積を検出する。
[0020] ここで、携帯端末1の使用例について図2を用いて説明する。図2に示すように、携帯端末1のユーザは、片手で携帯端末1を把持し、もう一方の手でペン91(または指先)を用いてタッチパネル30に触れて入力動作を行う。このとき、タッチパネル30は、携帯端末1をユーザが片手で把持した場合に、把持した手の指の一部がタッチパネル30に触れる大きさである。より詳細には、携帯端末1のタッチパネル30が設けられている面50において、タッチパネル30の領域が面50の面積の80?90%を占めているような携帯端末1においては、把持した際にタッチパネル30に指が触れやすいので、本発明を適用することによる効果が大きい。図2においては、携帯端末1を把持する手の親指92がタッチパネル30に触れている使用状態を示している。
[0021] ・・・中略・・・
[0022] ・・・中略・・・
[0023] ・・・中略・・・
[0024] 以上のタッチパネル30の動作について図2に示した使用例を用いてより具体的に説明する。図4は、図2に示した使用例において、タッチパネル30から制御部10へ通知される情報を示す図である。図4において、ペン91でタッチパネル30に触れた部分93については、接触座標取得部301は、当該部分93の座標(x1、y1)を取得し、制御部10に座標情報を送る。このとき、接触座標取得部301は、接触部分の中心座標を取得する。また、接触面積検出部302は、接触面積W1を検出し、接触面積W1の情報を制御部10に送る。同様に、タッチパネル30は、親指92による接触部分94の座標(x2、y2)及び接触面積W2を制御部10に送る。
[0025] 入力判定部102は、接触面積検出部302から送られてきた接触面積W1、W2が第1の閾値Wa以上であるか否かを判定する。本例においては、W1<Wa<W2であるとする。接触面積W1は第1の閾値Waよりも小さいため、入力判定部102は、接触面積W1により接触した物体、つまりペン91の入力は有効であると判定する。そして、制御部10がペン91による入力座標(x1、y1)を汎用アプリケーション部40に送る。
[0026] 一方、接触面積W2は第1の閾値Waよりも大きいため、入力判定部102は、接触面積W2により接触した物体、つまり親指92の入力は無効であると判定する。そのため、制御部10は親指92による入力座標(x2、y2)を汎用アプリケーション部40に送らない。なお、入力判定部102は、タッチパネル30に同時に複数の物体が接触した場合(例えば、ペンと指が同時にタッチパネルに接触した場合)、それぞれの物体に対して判定動作を行う。
[0027] このように、本実施の形態にかかる携帯端末1の構成によれば、接触面積検出部302がタッチパネル30上の物体の接触面積を検出し、入力判定部102が当該接触面積と第1の閾値とに基づいて、物体の接触による入力は有効であるか否かを判定する。そのため、例えば、携帯端末1を把持する指の一部がタッチパネル30に触れてしまうような場合であっても、接触面積が第1の閾値以上であれば当該接触は無効とされる。その一方で、ペンや指先などによる接触面積が第1の閾値よりも小さい接触は有効とされる。その結果、タッチパネル30への意図しない接触により発生する誤入力を防止することができる。」
エ.【図4】



したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明〉

「制御部10、LCD(Liquid Crystal Display)20、タッチパネル30、汎用アプリケーション部40を備える携帯端末1において、
前記制御部10は、表示部101、入力判定部102を備え、
前記表示部101は、前記汎用アプリケーション部40から送られてきた画面情報を前記LCD20に表示するものであり、
前記入力判定部102は、物体がタッチパネル30に接触した場合に、タッチパネル30への接触による入力が有効であるか否か判定するものであり、具体的には、タッチパネル30に接触した物体の面積が、指入力時にタッチパネル30に接する指先の接触面積の上限に対応する値(以下、第1の閾値と称す。)以上である場合に、当該物体の接触による入力は無効であると判定するものであり、
該第1の閾値は、ユーザが任意に設定可能であり、指先よりも大きく、指の腹よりは小さい面積であることが好ましいものであり、
前記タッチパネル30は、接触座標取得部301、接触面積検出部302を備え、
前記接触座標取得部301は、タッチパネル30において物体が接触した座標を取得するものであり、具体的には、タッチパネル30にユーザがペンや指等を接触させた場合、接触座標取得部301は、接触した点の座標情報を取得し、制御部10に座標情報を送るものであり、
前記接触面積検出部302は、物体がタッチパネル30に接触した場合、当該物体のタッチパネル30への接触面積を検出するものであり、
前記汎用アプリケーション部40は、タッチパネル30に物体が接触した場合に、制御部10から通知されるタッチパネル30上の座標情報を取得し、取得した座標情報に基づいてイベント処理を実行し、イベント処理の実行結果を表示部101に送り画面情報を更新するものであって、
ユーザが、片手で携帯端末1を把持し、もう一方の手でペン91(または指先)を用いてタッチパネル30に触れて入力動作を行い、携帯端末1を把持する手の親指92がタッチパネル30に触れている使用状態では、ペン91でタッチパネル30に触れた部分93については、接触座標取得部301は、当該部分93の座標(x1、y1)を取得し、制御部10に座標情報を送り、また、接触面積検出部302は、接触面積W1を検出し、接触面積W1の情報を制御部10に送り、同様に、タッチパネル30は、親指92による接触部分94の座標(x2、y2)及び接触面積W2を制御部10に送り、入力判定部102は、接触面積検出部302から送られてきた接触面積W1、W2が第1の閾値Wa以上であるか否かを判定し、W1<Wa<W2であるとすると、接触面積W1は第1の閾値Waよりも小さいため、入力判定部102は、接触面積W1により接触した物体、つまりペン91の入力は有効であると判定し、制御部10がペン91による入力座標(x1、y1)を汎用アプリケーション部40に送り、一方、接触面積W2は第1の閾値Waよりも大きいため、入力判定部102は、接触面積W2により接触した物体、つまり親指92の入力は無効であると判定し、制御部10は親指92による入力座標(x2、y2)を汎用アプリケーション部40に送らない、
携帯端末1。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「[0004] しかしながら、特許文献1の技術では、ユーザが意図していない入力まで認識してしまう場合がある。たとえば、機器を持つユーザの手の指まで認識してしまう場合である。このため、ユーザが意図しない誤作動を招く可能性がある。持ち手の指からの入力であることを認識し、それ以外の入力であれば、正規の入力として処理できる入力検出装置は、まだ知られていない。」
イ.「[0072] (マッチング対象領域)
このような誤認識を回避するため、本発明の実施形態に係る入力検出装置1は、入力画像と規定画像との照合を行う、当該画像が抽出される座標の範囲を設けている。この範囲について、図10を参照して以下に説明する。本実施形態では、この照合の処理について、以下マッチングと記載する。図10は、入力画像と規定画像とのマッチングを行う領域と行わない領域とを示した図である。
[0073] 図10に示すように、タッチパネル3は、斜線で示した領域105と、その内部に位置する領域106とを含む。領域105は、入力画像と規定画像とのマッチングを行うマッチング対象領域である。一方、領域106は、マッチングを行わない、マッチング対象外領域である。対象領域105は、各規定画像101から104のそれぞれの座標情報を基に作成される。」
ウ.「[0093] (規定画像登録後のタッチパネル3の使用)
次に、上述したように規定画像が予め登録されている状態で、ユーザがタッチパネル3を使用するときの入力検出装置1内部の処理について、図1および図14を参照して以下に説明する。図14は、タッチパネル3使用時の本発明の実施形態に係る入力検出装置1の処理の流れを示したフローチャートである。
[0094] 図14に示すように、入力検出装置1は、UI画面を表示する(ステップS50)。次に、入力画像から対象画像を抽出(ステップS51)する。対象画像を抽出するステップの詳細については、既に上述したとおりである。
[0095] (有効画像)
つづいて入力画像認識部6は、対象画像を有効画像選択部10に出力する(ステップS52)。有効画像選択部10は、最初の対象画像を選択する(ステップS53)。
[0096] 有効画像選択部10は、メモリ8からマッチング対象領域を取得し、当該対象画像が、マッチング対象領域内にあるか否かを判定する(ステップS54)。
[0097] S54において、マッチング対象領域内にあると判定された場合、有効画像選択部10は、メモリ8から規定画像を取得し、当該対象画像が取得した規定画像のいずれかとマッチするか否かを判定する(ステップS55)。
[0098] S55において、取得した規定画像のいずれともマッチしない場合は、当該対象画像を有効画像として設定する(ステップS56)。
[0099] S54において、マッチング対象領域内にないと判定された場合、S55の処理はしないで、S56の処理に続く。
[0100] S56のあと、有効画像選択部10は、有効画像を入力座標検出部11に出力するステップS57)。入力座標検出部11は、入力された有効画像の中心座標を入力座標として検出する(ステップS58)し、当該入力座標をアプリケーション制御部12に出力する(ステップS59)。
[0101] S59のあと、入力検出装置1は、当該対象画像が、最後の対象画像かを判定する(ステップS60)。
[0102] S55において、取得した規定画像のいずれかとマッチした場合は、当該対象画像を規定画像であると認識し、S56からS59までの処理はしないで、S60の処理に続く。
[0103] S60において、最後の対象画像であると判定された場合は、入力検出装置1は、アプリケーション制御部12に出力された入力座標が、1点以上か否かを判定する(ステップS62)。
[0104] S60において、最後の対象画像ではないと判定された場合は、入力画像認識部6は、次の対象画像を有効画像選択部10に出力し(ステップS61)、S54に戻る。
[0105] (アプリケーション制御)
S62において、Yesの場合、入力座標点数に応じた必要な処理を実行し(ステップS63)、処理を終了する。一方、S62において、Noの場合、何も処理は実行しないで終了する。
[0106] 以上のように、入力検出装置1は、ユーザが意図した入力座標を正確に取得することが可能である。したがって、タッチパネル3に対する誤操作を回避する効果を奏する。」
ウ.【図10】


3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0005】
しかしながら、指及び手のひらが偶発的にタッチセンサパネルと密接に近接することで、意図しないジェスチャーが認識され処理される可能性がある。これらの偶発的なタッチは、多くの場合、タッチセンサパネルが従来のキーボード又は機械ボタン又はバーのような、使用される他の入力デバイスから分離されているが隣接している場合に起こる可能性がある。更に、タッチセンサパネル自体が使用されている場合、手の固定(ジェスチャーの一部ではない)又はデバイスを保持するために使用されるなど、誤って指がパネルの端部に触れて検出される可能性がある。」
イ.「【0014】
図1aは、本発明の実施形態による端部拒否を実装する例示的なタッチセンサパネル100を示す。端部帯域102(接触拒否領域)は、中心エリア104を囲むタッチセンサパネル100の外側境界に作成することができる。全ての接触(例えば指又は手のひら)が端部帯域102内で検出される場合には、接触を無視することができる。図1aの実施例では、タッチ画像106及び108が端部帯域102内に位置付けられた重心110及び112をそれぞれ有するので、接触を無視することができる。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0004】
しかしながら、かかるタッチパネル装置を備えた情報処理装置では、装置の操作中にタッチパネル上に装置を保持している側の指が当たったり、また、電源が入ったまま装置を手で保持して移動する場合に、保持している側の指が当たったり、ユーザの意図しない誤入力(誤操作)を起こしやすい。特に、タッチパネルと筐体の額縁との境界付近は装置を保持する指が当たりやすく、意図しない誤入力を起こしやすい部分となっている。
イ.「【0021】
また、タッチパネル2は、表示部3の有効表示領域に対応する第1の検出領域(通常検出領域)DA1と、当該第1の検出領域DA1の周囲を囲う第2の検出領域(拡張検出領域)DA2とを備えている。第1の検出領域DA1は、操作入力を行うための領域である。第2の検出領域DA2は、意図しない指のタッチ(お手つき)を検出するための領域であり、操作入力の対象とはならない。なお、同図に示す例では、表示部3の全面を有効表示領域としている。
【0022】
座標検出部4は、タッチパネル2上で指によってタッチされた座標位置を検出して、入力無効領域判定・設定部5に出力する。
【0023】
入力無効領域判定・設定部5は、座標検出部4から入力される座標位置のうち、タッチパネル2の第1の検出領域DA1で検出された座標位置を表示制御部6に出力する。また、入力無効領域判定・設定部5は、タッチパネル2に対する操作者の意図しないタッチを判定して、タッチパネル2の第1の検出領域DA1の一部または全部を入力無効領域IAに設定する。具体的には、入力無効領域判定・設定部5は、座標検出部4から入力される座標位置が、第2の検出領域DA2内であるか否かを判断し、座標位置が第2の検出領域A2内である場合には、第1の検出領域DA1の一部または全部を入力無効領域IAに設定する。入力無効領域判定・設定部5は、入力無効領域IAを設定した場合は、入力無効領域IAの座標入力を無効とし、入力無効領域IA内で検出され座標位置を表示制御部6に出力しない。なお、入力無効領域判定・設定部5は、入力無効領域IAを設定した後に、第2の検出領域DA2の座標入力がない場合には、指が離れたと判断して、入力無効領域IAを解除してもよい。」

5.引用文献5
前置報告書で新たに引用された特開2011-237945号公報(以下,「引用文献5」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0013】
操作パネル22は、図1に示すように、表示パネル21よりも広い面積を有し、表示パネル21を完全に覆っている。つまり、操作パネル22は、表示パネル21外の領域についても、ユーザ操作を検出する機能を備える。言い換えれば、操作パネル22は、表示パネル21に重なる重畳部分についての検出領域(以下、表示領域と称する)と、それ以外の表示パネル21に重ならない外縁部分についての検出領域(以下、非表示領域と称する)とを備える。」
イ.「【0048】
その一例として例えば、上記実施の形態では、ステップ3aおよびステップ3bにより、非表示領域とこれに連結する表示領域とに対する操作を検出し、不感帯エリアNSを設定するようにしたが、これに代わり、もしくはこれに加えて例えば、操作パネル22の検出結果に基づき、主制御部100が、操作された座標が非表示領域からこれに連結する表示領域に移動した場合や、操作された座標が非表示領域内に限られる場合には、これらの操作をユーザが意図しない操作とみなし、その座標にソフトウェアキーなどが表示されていたり、あるいはジェスチャー操作であっても、これらの操作を無視する。すなわち、操作された座標が、表示領域内に限られる場合や、表示領域から非表示領域に移動した場合のみをユーザ操作として、主制御部100が検出するようにしてもよい。」


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明の「LCD(Liquid Crystal Display)20」は、本願発明1の「表示手段」に相当する。
イ.引用発明の「タッチパネル30」は、「接触座標取得部301」を備え、該「接触座標取得部301」は、「タッチパネル30において物体が接触した座標を取得するものであ」り、タッチ操作の座標を検出しているといえ、さらに、携帯端末において、タッチパネルを表示手段であるLCDの表示エリア上に配置することは普通のことであるから、引用発明の「タッチパネル30」は、本願発明1の「表示手段の少なくとも表示エリア上へのタッチ操作を検出するタッチパネル」に相当する。
ウ.引用発明の「第1の閾値Wa」は、本願発明1の「所定の閾値」に相当する。
そして、引用発明の「入力判定部102」は、「タッチパネル30」の全面ではあるが、「タッチパネル30」に「ペン91」及び「手の親指92」がタッチされた場合に、「ペン91」の「接触面積W1」、「手の親指92」の「接触面積W2」「が第1の閾値Wa以上であるか否かを判定」するものであるから、引用発明の「入力判定部102」は、本願発明1の「タッチパネルの外周部である外側領域へのタッチ操作が検出された場合、そのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であるか判別する判別手段」とは、「タッチパネルへのタッチ操作が検出された場合、そのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であるか判別する判別手段」の点では共通する。
エ.さらに、引用発明の「入力判定部102」は、「W1<Wa<W2であるとすると」「接触面積W2により接触した物体、つまり親指92の入力は無効であると判定」するものであるから、引用発明の「入力判定部102」と、本願発明1の「判別手段により前記外側領域へのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であると判別された場合に、前記外側領域へのタッチ操作を無効にし、前記タッチ操作の移動を追跡し、前記タッチ操作が前記外側領域より内側に移動したことが検知されても、前記タッチ操作がリリースされるまで、前記タッチ操作を無効のままとする制御手段」とは、「判別手段により前記タッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であると判別された場合に、前記タッチ操作を無効にする制御手段」の点では共通する。
オ.引用発明の「携帯端末1」は、本願発明1の「携帯端末装置」に相当する。

よって、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致、ないし相違している。

(一致点)

「表示手段と、
前記表示手段の少なくとも表示エリア上へのタッチ操作を検出するタッチパネルと、
前記タッチパネルへのタッチ操作が検出された場合、そのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であるか判別する判別手段と、
前記判別手段により前記タッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であると判別された場合に、前記タッチ操作を無効にする制御手段と
を備える携帯端末装置。」

(相違点)
一致点である「判別手段」により判別される「タッチ操作」が、本願発明1では、「タッチパネルの外周部である外側領域へのタッチ操作」であって、さらに、「制御手段」は、「外側領域への」タッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であると判別された場合に、「外側領域のタッチ操作を無効にし、前記タッチ操作の移動を追跡し、前記タッチ操作が前記外側領域より内側に移動したことが検知されても、前記タッチ操作がリリースされるまで、前記タッチ操作を無効のままとする」のに対して、
引用発明では、「タッチパネル30」の外側領域に特定されないタッチ操作であって、さらに、「入力判定部102」は、この外側領域に特定されないタッチ操作を無効として、そのようなタッチ操作の移動の追跡は行わない(「親指92の入力は無効であると判定し、制御部10は親指92による入力座標(x2、y2)を汎用アプリケーション部40に送らない」)点。


(2)相違点についての判断
相違点について検討する。
引用文献2-4にも記載されるように、タッチパネル外周部である外側領域へのタッチ操作を誤動作として無効とすることは周知の技術事項である。
しかしながら、引用発明は、タッチによる接触面積の大きさによって操作の有効・無効を判別することで、タッチパネル全面での意図しない接触による誤入力を防止するものであるから、判別手段により判別されるタッチ操作を外側領域のみとすると内側の領域での意図しない接触を防止できなくなることから、判別の対象を外側領域のみとするには阻害要因があるものと認められる。
したがって、上記相違点は、引用文献2-4に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。
また、引用文献5には、タッチパネルの外周部である非表示領域からこれに連続する内側の表示領域へタッチ操作が移動した場合は、タッチ操作を無効とすることで、タッチ操作された座標が、内側の表示領域に限られる場合や、表示領域から非表示領域に移動をした場合にのみタッチ操作を有効とする技術事項が記載されている。
しかしながら、引用発明は、接触位置にかかわらず、接触面積によってタッチ操作の有効・無効を判別するものであり、さらに、該判別のために移動を追跡する必要性がないものである。
これに対して、引用文献5のものは、タッチ操作された座標が、内側の表示領域に限られる場合や、表示領域から非表示領域に移動した場合にのみユーザ操作を有効とし、非表示領域でのタッチ操作は全て無効とされるものであることから、非表示領域でのタッチ操作の有効・無効を判別する必要性はないものである。
したがって、上記相違点は、引用文献5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。
以上のとおりであるから、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-3について
本願発明2-3は、本願発明1をさらに限定するものであって、本願発明1の「判別手段により前記外側領域へのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であると判別された場合に、前記外側領域へのタッチ操作を無効にし、前記タッチ操作の移動を追跡し、前記タッチ操作が前記外側領域より内側に移動したことが検知されても、前記タッチ操作がリリースされるまで、前記タッチ操作を無効のままとする制御手段」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明4-5について
本願発明4は、本願発明1に対応する方法の発明であり、また、本願発明5は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1の「判別手段により前記外側領域へのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であると判別された場合に、前記外側領域へのタッチ操作を無効にし、前記タッチ操作の移動を追跡し、前記タッチ操作が前記外側領域より内側に移動したことが検知されても、前記タッチ操作がリリースされるまで、前記タッチ操作を無効のままとする制御手段」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-5は「判別手段により前記外側領域へのタッチ操作の接触面積が所定の閾値以上であると判別された場合に、前記外側領域へのタッチ操作を無効にし、前記タッチ操作の移動を追跡し、前記タッチ操作が前記外側領域より内側に移動したことが検知されても、前記タッチ操作がリリースされるまで、前記タッチ操作を無効のままとする制御手段」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-09 
出願番号 特願2014-502040(P2014-502040)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 575- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 若林 治男  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 山澤 宏
稲葉 和生
発明の名称 携帯端末装置、誤操作防止方法、及びプログラム  
代理人 鹿嶋 英實  

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