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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B41J
管理番号 1335987
審判番号 不服2017-2737  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-24 
確定日 2018-01-23 
事件の表示 特願2012-167768「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 6日出願公開、特開2014- 24282、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月27日付けの特許出願であって、原審において平成28年4月22日付けで拒絶理由が通知され、同年6月22日付けで手続補正がされ、同年11月24日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。原査定の謄本の送達(発送)日 同月29日。)がされ、これに対して、平成29年2月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲、及び明細書を補正する手続補正がなされ、その後、当審において同年11月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対して指定期間内の同月28日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願の発明
本願の請求項1ないし7に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、平成29年11月28日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ロール状に巻き回された粘着層の形成された印刷媒体を保持する手段と、
前記印刷媒体に液滴を吐出して画像を形成する記録手段と、
前記粘着面を有する印刷媒体を搬送する搬送手段と、を備えた画像形成装置において、
前記搬送手段は、
前記印刷媒体の粘着面に押し当てられ、前記粘着面を保護する保護部材と、
前記印刷媒体と前記保護部材とを挟み込んで加圧する少なくとも一組の回転体対と、
前記回転体対の下流側かつ前記記録手段の上流側で前記印刷媒体を前記保護部材に向けて加圧する加圧手段と、を有し、
前記印刷媒体を保持する手段から引き出された印刷媒体の粘着面は前記保護部材に直接押し当てられて回転体対によって加圧され、
前記搬送手段は、前記回転体対を回転して、
前記印刷媒体と前記保護部材とを一緒に前記記録手段による画像形成位置に向けて搬送し、画像形成位置の直前で前記印刷媒体を前記保護部材に前記加圧手段によって再度加圧し、前記印刷媒体を装置外に排出する前に、前記保護部材を前記印刷媒体の粘着面から剥離する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記回転体対の一方の回転体は、前記回転体対の他方の回転体に対して進退可能に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記加圧手段は前記印刷媒体の搬送方向に移動可能に配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記保護部材は、ベルト状部材であり、
少なくとも前記回転体対の一方と従動ローラとの間に掛け回されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記保護部材には吸引孔が形成され、
前記保護部材の前記吸引孔を介して空気を吸引する吸引手段を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記印刷媒体が芯部材に巻き付けられたロール体を有し、
前記ロール体から前記印刷媒体を引き出して前記保護部材上にセットするときの印刷媒体のセット位置を示す指標を形成する手段を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記印刷媒体が巻き回されたロール体を有し、
前記ロール体から前記回転体対までの間の前記印刷媒体に対してテンションを付与するテンション付与手段を有し、
前記印刷媒体の搬送時や巻き戻し時においても常に前記印刷媒体が弛みのない状態で保持される
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置。」

以上のとおり、本願発明2ないし本願発明7は、本願発明1を引用し、これを更に減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成7年4月4日に頒布された刊行物である引用文献1(特開平7-89154号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。(以下の下線は、いずれも審決で付した。なお、引用文献2以下の下線も同様である。)
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ラベルの印字装置であって、剥離紙のないロール状のラベル面に正確に印字し、簡単に適宜な被着物に貼着できるようにラベルを順次くり出すようにしたラベル印字装置に関する。」
「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のラベル印字装置は、上記の目的を達成するために、印字面の裏面に接着剤が塗布され、回転して引き出し可能なように剥離紙なしのロール状ラベルを取付ける回転軸と、この回転軸に取り付けられたロール状ラベルを一端から引き出し接着剤が塗布された接着面を一時的に接着して移送させる、複数のロールに掛け渡された無端ベルトからなるベルト状プラテンと、このベルト状プラテンの所定位置に一時接着して移動させる所定位置に対向して設けられた印字ヘッドとを設けてなるものである。」
「【0007】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づき詳細に説明する。ここにおいて、図1は本発明のラベル印字装置の側面断面説明図、図2は図1のラベル印字装置の部分側面断面図の拡大図説明図。
【0008】本願発明を示すラベル印字装置Pを図1に示すように、1は、ロール状ラベルで空洞のラベル芯14に巻き付けられてなり、裏面(内面側)に感圧性接着剤が塗布されているとともに、印字面側は前記感圧性接着剤で接着されないよう剥離剤が塗布されている。このロール状ラベル1は、ラベル印字装置のフレーム内に取り付けられた回転軸15に差し込んで取り付けられるようになっている。ロール状ラベル1のラベルLは、用紙くり出しローラ2によって引き出される。用紙くり出しローラ2の後段には、複数のローラ4、6、7に掛け渡されたシリコン樹脂よりなる無短ベルト5からなるベルト状プラテンが配置されている。複数のローラ群のうちローラ6が駆動ロールである。送りロールとして位置するローラ4の上部には、移送されてきたラベルの接着剤塗布面を無短ベルト5に接着させて移送するよう貼付ローラ3が設けられている。前記ローラ6の上部には、無短ベルト5がローラ6に巻き付いて、無短ベルト5上に一時的に接着しているラベル剥がすための剥がしローラ8が設けられている。また、ローラ4と6の間のかつ無短ベルト5の内側には、この無短ベルトの凹みを防止するプラテンプレート13を設けるとともに、無短ベルト5を隔ててプラテンプレート13に対向してサーマルヘッドからなる印字ヘッド9が設けられている。・・・
【0009】このようにして印字されたラベルLは、順次10、11より繰り出されてその後段に適宜設けられるカッターK(具体的には図示せず)等で切断されて、被貼着物に貼付することができるものである。」
図1及び図2から、貼付ローラ3とローラ4、剥がしローラ8とローラ6とが、それぞれラベルと無端ベルトとを挟み込んで加圧する回転体対を形成していることが看取できる。

上記の記載事項中の「無短ベルト」という記載は「無端ベルト」の誤記であることは明らかであり、上記の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認定できる。
「印字面の裏面に接着剤が塗布された剥離紙なしのロール状ラベルを、回転して引き出し可能なように取付ける回転軸と、この回転軸に取り付けられたロール状ラベルを一端から引き出し接着剤が塗布された接着面を一時的に接着して移送させる、複数のロールに掛け渡された無端ベルトからなるベルト状プラテンと、このベルト状プラテンの所定位置に一時接着して移動させる所定位置に対向して設けられたサーマルヘッドからなる印字ヘッド9とを設けてなるラベル印字装置であって、
無端ベルト5は複数のローラ4、6、7に掛け渡されたシリコン樹脂よりなり、
送りロールとして位置するローラ4の上部には、移送されてきたラベルの接着剤塗布面を無端ベルト5に接着させて移送するよう貼付ローラ3が設けられて、貼付ローラ3とローラ4とはラベルと無端ベルトとを挟み込んで加圧する回転体対を形成しており、
ローラ6の上部には、無端ベルト5がローラ6に巻き付いて、無端ベルト5上に一時的に接着しているラベルを剥がすための剥がしローラ8が設けられていて、剥がしローラ8とローラ6も、ラベルと無端ベルトとを挟み込んで加圧する回転体対を形成しているラベル印字装置。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前の1995(平成7)年8月1日に頒布された刊行物である引用文献2(米国特許第5437228号明細書)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、原文の後の括弧{}内に記載したものは、当審での訳文である。)
「 FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to printing devices and, more particularly, to devices for printing adhesive backed media. 」(第1欄第3?6行)
{「発明の分野
本発明は印刷装置に係り、より詳細には、背面が粘着性の媒体に印刷する装置に係る。」}
「The printing apparatus 10 may also include a backup roller 34 which contacts the endless belt 14 and is aligned from the drive roller 30 on the opposite side of the endless belt 14. The backup roller 34 is preferably biased against the endless belt 14 and the underlying drive roller 30 to improve the contact of the drive roller 30 with the belt such that substantially all rotation of the drive roller 30 imparted by the circulating drive belt 24 is imparted to advance the endless belt 14.」(第5欄第44?52行)
{「印刷装置10は、無端帯14に接触すると共に無端帯14の反対側に位置する駆動ローラー30と対向するバックアップローラー34も含みうる。バックアップロ-ラー34は好ましくは、無端帯14および下側の駆動ローラー30に対して偏ったものとされるが、これは駆動ローラー30とベルトとの接触を十分なものにして、循環する駆動ベルト24によって与えられる駆動ローラー30の実質的に全ての回転が無端帯14の前進に与えられるようにするためである。」}
「To feed the label strip 12 between the endless belt 14 and both the backup roller 34 and print head 44, the backup roller 34 and print head 44 must be raised from the surface of the endless belt 14 as shown in FIG. 4. To facilitate the raising of both the print head 44 and the backup roller 34, the rotatable rod 40 which carries the backup roller 34 and the rod 56 which carries the print head 44 are connected, such as via connecting rod 74, such that both the backup roller 34 and the print head 44 are raised and lowered simultaneously. Accordingly, the operator may raise both the backup roller 34 and the print head 44 by rotating rod 56 with handle 76 so as to permit loading of the label strip 12 in the printing apparatus 10. 」(第8欄第51?64行)
{「ラベル条体(label strip)12を無端帯14とバックアップローラー34及びプリントヘッド44との間に供給するために、図4に示されるように、バックアップローラー34とプリントヘッド44とは、無端帯14の表面から上昇させられる必要がある。プリントヘッド44とバックアップロ-ラー34との上昇を容易にするために、バックアップローラー34を支える回転ロッド40とプリントヘッド44を支えるロッド56とを連結ロッド74を介して連結させると、バックアップローラー34とプリントヘッド44とは同時に上昇・下降する。したがって、操作者はハンドル76でロッド56を回転させて、バックアップローラー34とプリントヘッド44とを上昇させることにより、印刷装置10の中にラベル条体12の装填(loading)をすることが可能となる。」}
引用文献2の図2、及び図4から、バックアップロ-ラー34と駆動ローラー30とは、ラベル条体12(長尺の印刷媒体)と無端帯14とを挟んで対向する「回転体対」を形成していて、バックアップローラー34が昇降することにより、バックアップローラー34は駆動ローラー30に対して進退することが看取できる。

以上のとおり、上記引用文献2には、「背面が粘着性で長尺の印刷媒体に印刷する印刷装置において、回転体対のうちの一方のバックアップローラーを、他方の駆動ローラーに対して進退可能にする」という技術的事項が記載されていると認められる(以下「引用文献2記載の事項」という。)。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成6年6月3日に頒布された刊行物である引用文献3(特開平6-155837号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクジェットプリンタ等の印字装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図4?図6に従来のインクジェットプリンタの概略構成を示す。これらの図において、1は本体フレームで、印字ヘッド(インクジェットヘッド2),キャリア3,ヘッド位置調整手段5,フィードローラ8,用紙押え部材11等を収容している。
【0003】フィードローラ8は、本体フレーム1の両側部1L,1R間に軸8aを介して回転支持されており、図示しない駆動機構によって図5中時計回り方向に回転されて用紙をインクジェットヘッド2ヘ向けて用紙搬送ガイド9上を送り付勢可能に設けられている。また、インクジェットヘッド2は、キャリア3に搭載されており、キャリアシャフト4(軸心C3)を介して本体フレーム1の両側部1L,1R間を移動可能に構成されている。」
「【0005】また、用紙押え部材11は、インクジェットヘッド2より用紙搬送方向上流に支軸12を介して本体フレーム1に回転支持され用紙押えスプリング13の弾性力によって用紙をフィードローラ8に押圧するものである。
【0006】したがって、フィードローラ8と用紙押え部材11との間に送り込まれた用紙・・・は、用紙押え部材11によってフィードローラ8に押圧され当該押圧位置X1におけるフィードローラ7周面の接線方向(用紙搬送方向)に送り付勢されるこれにより、用紙(P1)は、用紙搬送ガイド9の搬送面9a上をヘッド2に向けて搬送される。」
「【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。本印字装置は、インクジェット方式とされており、基本的構成(本体フレーム1,インクジェットヘッド2,キャリア3,ヘッド位置調整手段5,フィードローラ8,用紙押え部材11等)が従来例(図4?図6)と同様とされ、用紙押え部材11の用紙押圧位置(X1,X2)が基準押圧位置Xsと合致するように当該用紙押え部材11の支軸12を用紙搬送方向に移動可能な用紙押圧位置調整手段20を設けた構成とされており、用紙を厚さに関係なく一定の用紙搬送方向に搬送可能とされている。・・・なお、従来例(図4?図6)と同一または共通する構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略または省略する。」

以上のとおり、上記引用文献3には、「インクジェットヘッド2と、駆動機構によって回転されて用紙をインクジェットヘッド2ヘ向けて送り付勢可能に設けられているフィードローラ8とを備えたインクジェットプリンタ等の印字装置であって、
インクジェットヘッドの上流側に用紙をフィードローラに向けて押圧する用紙押え部材11を配置すると共に、用紙押え部材11の用紙押圧位置(X1,X2)が基準押圧位置Xsと合致するように当該用紙押え部材11の支軸12を用紙搬送方向に移動可能な用紙押圧位置調整手段20を設け、フィードローラ8と用紙押え部材11との間に送り込まれた用紙は、用紙押え部材11によってフィードローラ8に押圧されフィードローラ7周面の接線方向(用紙搬送方向)に送り付勢されて、ヘッド2に向けて搬送される印字装置。」という技術的事項が記載されていると認められる(以下「引用文献3記載の事項」という。)。

4.引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成16年12月16日に頒布された刊行物である引用文献4(特開2004-352309号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係るラベル貼付装置の第1の実施の形態の概略構成を示す概略構成図であり、図2は、本発明に係るラベル貼付装置の第1の実施の形態の制御部の構成を示すブロック図である。
【0011】
第1の実施の形態のラベル貼付装置は、図1を参照すると、台紙に仮着されていない台紙なしラベル1(以下、ラベル1と称す)を使用するものであり、ロール状に巻回されたラベル1の連続体を回転自在に支持する供給軸2と、ラベル1に印字を行う印字ヘッド3と、印字ヘッド3との間にラベル1を挟持し、ラベル1を繰り出すプラテンローラ4と、プラテンローラ4によって1枚分繰り出されたラベル1を切断するカッター5と、プラテンローラ4によって1枚分繰り出されたラベル1を保持して搬送し、コンベア30によって搬送されてくる被貼付物20にラベル1を繰り出す搬送部6と、プラテンローラ4によって繰り出されたラベル1を搬送部6との間で挟持するラベル押さえ用ローラ7と、吸引によって搬送部6にラベル1を保持させるためのファン8と、搬送部6によって繰り出されたラベル1を被貼付物20に押圧する押圧ローラ9と、搬送部6によって搬送されるラベル1の搬送経路に配置され、搬送されるラベル1の先端を検知してラベル到達信号を出力するラベル確認センサ10とを有する。なお、図1中に示す符号40は、コンベア30によって搬送される被貼付物20を検知する被貼付物確認センサ40である。
【0012】
搬送部6は、一対のローラと、当該一対のローラ間に掛け渡された複数の丸ベルトとからなり、ファン8による吸引によって丸ベルト下面にラベル1を保持して搬送する。丸ベルトの代わりに穴開き板状ベルトを一対のローラ間に掛け渡すようにしてもよい。」

以上のとおり、上記引用文献4には、「ラベル貼付装置において、一対のローラと、当該一対のローラ間に掛け渡された穴開き板状ベルトからなり、被貼付物にラベルを繰り出す搬送部と、吸引によって搬送部にラベルを保持させるためのファンを配置して、ファンによる吸引によって前記ベルト下面にラベルを保持して搬送する」という技術的事項が記載されていると認められる(以下「引用文献4記載の事項」という。)。

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成11年9月7日に頒布された刊行物である引用文献5(特開平11-240223号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0109】次に、上記のように構成された情報端末装置において、ラベルプリンタ装置部Rでのラベルプリント動作を、図30に示すフローチャートを参照して説明する。
・・・
【0111】そして、ラベル用紙Fは、図21に示すように・・・多数枚につづら折りに折り畳まれていてブロック状のファンフォールドにしてある。
【0112】そして、このブロック状のラベル用紙Fを所定の位置、すなわち、ラベル用紙収納部K内に収納は位置する(ステップS1)。・・・
【0113】次に、プリンタカバー64を外し(ステップS2)、・・・印字ヘッド20を持ち上げる(ステップS3)。次に、ラベル用紙Fを手で繰出して、ラベル用紙導入口71より搬送路18内に挿入して、ラベル用紙Fの先端F´をラベル用紙導出口72の手前に設けられた位置決めラインLに一致させるようにしてセットする(ステップS4)。
【0114】次に、プラテンリリースレバー21を倒し(ステップS5)、用紙セットスイッチSWを押す(ステップS6)。この用紙セットスイッチSWがオン作動することにより、ラベル用紙Fの先端F´が、印字ヘッド20のスタート位置間で自動的に、図4に示す距離Aだけ戻り、印字スタンバイ状態になる(ステップS7)。・・・」
「【0123】また、ファンフォールドタイプのラベル用紙Fに代えてロール紙ホルダー73とロール状に巻かれたラベル用紙F-1を使用する場合には、図27乃至図29に示すようにラベル用紙Fを載せる用紙受け台45を後方向に移動させて、・・・ラベル用紙F-1をラベル用紙収納部Kにセットする。そして、ラベルプリンタ6でのラベルプリント動作は、上記したファンフォールドタイプのラベル用紙Fの場合と同様な手順で行われる。」
上記段落【0113】の「ラベル用紙Fの先端F´をラベル用紙導出口72の手前に設けられた位置決めラインLに一致させるようにしてセットする】との記載から、「ラベル用紙をセットするための位置決めラインを表示している」といえる。

以上のとおり、上記引用文献5には、「ラベルプリンタ装置において、ラベル用紙をセットするための位置決めラインをラベル用紙導出口の手前に表示する」という技術的事項が記載されていると認められる(以下「引用文献5記載の事項」という。)。

6.引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成17年1月27日に頒布された刊行物である引用文献6(特開2005-22178号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続した印刷媒体、特にロール状に巻き回された連続した印刷媒体を使用する画像形成装置に関する。」
「【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施の形態を説明する。図1は、本実施の形態に係る画像形成装置の全体的な構成を示す側面図である。
【0023】
図1に示す画像形成装置であるインクジェットプリンタ10・・・の筐体であるプリンタ本体11内部には、・・・給紙部14・・・排紙部18・・・搬送ユニット30(搬送装置)がそれぞれ設けられており、ロール紙カセット20(収容部)内にロール状に巻き回されて収容されている長尺状の印刷媒体であるロール紙Pをインクジェットヘッド12の下方を通過するように搬送して画像形成を行うように構成されている。・・・」
「【0026】
(ロール紙カセットの構成) 次に、インクジェットプリンタ10に用いられる印刷媒体であるロール紙Pが収容されているロール紙カセット20の構成について説明する。
【0027】
図1に示すように、ロール紙カセット20は、インクジェットプリンタ10内部の媒体供給方向上流側において、給紙部14と対向する位置に配設される着脱可能な筐体を有する。ロール紙カセット20の筐体は、上下に分離可能な下部箱体21と上部箱体22とによって構成されている。・・・
・・・
【0029】
上部箱体22には、前述の供給口23と、付勢ローラ27と、当該付勢ローラ27を回動可能且つ弾性的に支持するバネ28と、ロール紙Pを供給口23に案内しつつ回動する案内ローラ29とが設けられている。・・・
【0030】
付勢ローラ27と、当該ローラ27をその両端において回動可能に支持し、一端が上部箱体22の上部フレームに係止されている2本のバネ28とにより衝撃吸収機構の一形態である媒体付勢機構が構成される。この媒体付勢機構により、・・・ロール紙Pの搬送開始時の当該ロール紙Pに生じる衝撃を吸収する。」
上記段落【0113】に記載のの「媒体付勢機構」は、衝撃吸収機構の一形態であって、ロール紙Pの搬送開始時の当該ロール紙Pに生じる衝撃を吸収するから、「印刷媒体に対してテンションを付与するテンション付与手段」といえるものである。

以上のとおり、上記引用文献6には、「ロール状に巻き回された連続した印刷媒体を使用する画像形成装置において、印刷媒体に対してテンションを付与するテンション付与手段を設けて、ロール紙の搬送開始時の当該ロール紙に生じる衝撃を吸収する」という技術的事項が記載されていると認められる(以下「引用文献6記載の事項」という。)。

7.引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成23年11月24日に頒布された刊行物である引用文献7(特開2011-235595号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、粘着ラベルの作成方法および粘着ラベルを作成するための装置に関し、特に、記録紙に粘着部分を形成するための粘着剤付加ユニットおよびこれを備えるプリンター、ならびに、印刷後の記録紙に粘着部分を形成する粘着ラベルの作成方法に関する。」
「【0028】
図1はプリンターの主要部分の断面構成を示す説明図、図2はプリンターの主要部分の平面構成を示す説明図である。図1、図2に示すように、プリンター1は、ロール紙装填部2、印刷機構3、オートカッター4などが配置されているプリンター本体部1Aと、プリンター本体部1Aの装置前面側に配置されている粘着剤転写部1Bを備えている。」
「【0054】
以上のように、本実施形態では、予め粘着剤が塗布された・・・高価な記録媒体を用いずに、廉価な普通紙を用いて粘着ラベルを作成できる。」
「【0058】
(3)上記実施形態では、サーマルヘッドとプラテンローラーからなる印刷機構3を用いているが、インクジェット方式の印刷機構を用いることもできる。・・・」

以上のとおり、上記引用文献7には、「粘着ラベルを作成するための装置において、インクジェット方式の印刷機構を用いる」という技術的事項が記載されていると認められる(以下「引用文献7記載の事項」という。)。

8.引用文献8について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成12年9月19日に頒布された刊行物である引用文献8(特開2000-255534号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0020】
【発明の実施の形態】本発明のラベルプリンタの第一の実施の形態について、図1?図3に基づいて説明する。まず、図1は、本実施の形態のラベルプリンタ11の外観を示す斜視図である。ラベルプリンタ11は、本体ケース12内に、図示しないロードセルを内蔵しており、本体ケース12の上面に、被測定物が載置される台13を備えている。
・・・
【0022】本体ケース12内にはまた、・・・プリンタ部15が内蔵されており、プリンタ部15で印字されたラベルの発行口16が、キーボード14と並べて本体ケース12の前面に形成されている。・・・」
「【0024】図2は、プリンタ部15の構造を示す右側面図である。プリンタ部15は、・・・本体ケース12内部の後方に、ロール状の用紙Sを保持するロール紙保持部であるロール紙保持軸20を備えている。
【0025】本体ケース12内部の前方には、印字ヘッドであるサーマルヘッド21とプラテンローラ22とからなる印字部23が設けられている。サーマルヘッド21は、引き出された用紙Sの印字面側に対向し、プラテンローラ22に圧接されている。プラテンローラ22は、駆動モータ24の回転がベルト25で伝達されることにより回転駆動される。
・・・
【0028】プラテンローラ22とロール紙保持軸20との間には、補助回転軸30が設けられている。補助回転軸30は、プラテンローラ22に平行である。
【0029】そして、プラテンローラ22と、ガイド軸27と、補助回転軸30とを囲んで平ベルト31が掛け回されている。
【0030】平ベルト31は、例えば表面が弗素樹脂でコートされた材料など、ラベル用紙の糊面が剥がれやすい材料で形成されている。・・・」
引用文献8の図2には、「印字部23が平ベルト31の上部に位置し、用紙Sは平ベルト31よりも下方から、すなわち平ベルト31に対して、印字部23とは反対の側から供給される」ことが看取できる。

以上のとおり、上記引用文献8には、「ラベルプリンタにおいて、ラベル用紙をラベル用紙の糊面が剥がれやすい材料で形成されている平ベルトに対して、印字部とは反対の側から供給する」という技術的事項が記載されていると認められる(以下「引用文献8記載の事項」という。)。

9.引用文献9について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前の平成12年2月22日に頒布された刊行物である引用文献9(特開2000-52613号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0020】
【発明の実施の形態】本発明の一実施の形態を図1及び図2に基づいて説明する。・・・
【0021】本実施の形態のライナーレスラベルに印字できるラベルプリンタは、本体ケース11に対してカバー12が・・・開閉自在に設けられている。
【0022】本体ケース1内には、ロール状に巻回されたライナーレスラベル4が回転自在に収納されている。ライナーレスラベル4は、巻回方向の内側面が糊面4aとされ、巻回方向の外側面が印字面4bとされている。さらに本体ケース1内には、ロール状のライナーレスラベル4を引き出して搬送する搬送手段であるプラテン5、ラベル剥離体14、バッテリ6などが取り付けられている。
【0023】カバー2の内周側には、印字手段であるサーマルヘッド7、剥離ローラ15、屈曲用突起であるローラ16などが取り付けられている。ローラ16は、カバー2を閉止位置へ回動させてライナーレスラベル4の搬送経路10を覆ったとき、本体ケース11側に突出するとともにライナーレスラベル4の印字面4bに当接してライナーレスラベル4を本体ケース13側へ屈曲させる。」
引用文献9の図1には、「印字手段がプラテン5の上部に位置し、ライナーレスラベル4はプラテン5よりも下方から、すなわちライナーレスラベルをプラテンに対して、印字手段とは反対の側から供給される」ことが看取できる。

以上のとおり、上記引用文献9には、「ラベルプリンタにおいて、ライナーレスラベルをプラテンに対して、印字手段とは反対の側から供給する」という技術的事項が記載されていると認められる(以下「引用文献9記載の事項」という。)。

第4 対比・判断
1.対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
後者の「ラベル印字装置」は、その機能等からみて、前者の「画像形成装置」に相当しており、以下同様に、「印字面の裏面に接着剤が塗布され剥離紙なしのロール状ラベル」は「ロール状に巻き回された粘着層の形成された印刷媒体」に、「ロール状ラベルを取付ける回転軸」は「印刷媒体を保持する手段」に、「印字ヘッド9」は「画像を形成する記録手段」に、それぞれ相当する。また、後者において「接着剤塗布面を無端ベルト5に接着させて移送する」ところから、「(シリコン樹脂よりなる)無端ベルト5(ベルト状プラテン)」は前者の「保護部材」に相当する。
また、後者においては、無端ベルト5は複数のローラ4、6、7に掛け渡され、送りロールとして位置するローラ4の上部には、移送されてきたラベルの接着剤塗布面を無端ベルト5に接着させて移送するよう貼付ローラ3が設けられて、貼付ローラ3とローラ4とはラベルと無端ベルトとを挟み込んで加圧する回転体対を形成しており、ローラ6の上部には、無端ベルト5がローラ6に巻き付いて、無端ベルト5上に一時的に接着しているラベル剥がすための剥がしローラ8が設けられていて、剥がしローラ8とローラ6も、ラベルと無端ベルトとを挟み込んで加圧する回転体対を形成しているから、「ローラ4、6、7、貼付ローラ3、及び剥がしローラ8によって、ラベル(印刷媒体)の搬送手段を形成している」といえ、また、前者と同様に「ラベル(印刷媒体)と無端ベルト5(保護部材)とを一緒に印字ヘッド9(記録手段)による画像形成位置に向けて搬送し、」「ラベル(印刷媒体)を装置外に排出する前に、前記無端ベルト5(保護部材)を前記ラベル(印刷媒体)の接着剤塗布面(粘着面)から剥離している」といえる。

したがって、両者は、
「ロール状に巻き回された粘着層の形成された印刷媒体を保持する手段と、
前記印刷媒体に画像を形成する記録手段と、
前記粘着面を有する印刷媒体を搬送する搬送手段と、を備えた画像形成装置において、
前記搬送手段は、
前記印刷媒体の粘着面に押し当てられ、前記粘着面を保護する保護部材と、
前記印刷媒体と前記保護部材とを挟み込んで加圧する少なくとも一組の回転体対と、を有し、
前記印刷媒体を保持する手段から引き出された印刷媒体の粘着面は前記保護部材に直接押し当てられて回転体対によって加圧され、
前記搬送手段は、前記回転体対を回転して、
前記印刷媒体と前記保護部材とを一緒に前記記録手段による画像形成位置に向けて搬送し、前記印刷媒体を装置外に排出する前に、前記保護部材を前記印刷媒体の粘着面から剥離する画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1] 記録手段が、本願発明1では「印刷媒体に液滴を吐出して」画像を形成するものであるのに対し、引用発明1は「サーマルヘッドからなる印字ヘッド9」である点。
[相違点2] 本願発明1は「回転体対の下流側かつ記録手段の上流側で印刷媒体を保護部材に向けて加圧する加圧手段」を有しており、「画像形成位置の直前で前記印刷媒体を前記保護部材に前記加圧手段によって再度加圧」するのに対し、引用発明はそのような再度加圧する手段を有していない点。

2.相違点についての判断
先ず上記の相違点2について検討すると、引用文献2ないし9記載の事項のいずれをみても、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を開示、あるいは示唆されていない。
また、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠はない。
そして、本願発明1は上記相違点2に係る発明特定事項を備えることによって、「印刷媒体2の粘着面保護部材41からの浮きを防止することができる。これにより、印刷媒体2と記録ヘッド11との距離が一定にでき、記録ヘッド11と印刷媒体2の擦れを防止することができる。」(段落【0035】参照。)という、独自の作用効果を奏しうるものである。
したがって、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、引用発明1、及び、引用文献2ないし9に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明2ないし本願発明7について
本願発明2ないし本願発明7も、本願発明1の上記相違点2に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1についてと同様の理由で、引用発明1、及び、引用文献2ないし9に記載された発明あるいは技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定に係る拒絶理由の概要は、原査定時における請求項1に係る発明は引用文献1、7ないし9に記載された発明に基いて、同じく請求項2に係る発明は引用文献1、2、7ないし9に記載された発明に基いて、同じく請求項3ないし5に係る発明は引用文献1ないし3、7ないし9に記載された発明に基いて、同じく請求項6ないし8係る発明は引用文献1ないし9に記載された発明に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記各請求項にかかる発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかし、平成29年11月28日付けの手続補正に係る本願発明は、上記のとおり、引用発明1、及び、引用文献2ないし9に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.当審で通知した拒絶理由の概要
当審では、平成29年11月27日付けで、本願は特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないとして拒絶理由を通知したが、その概要は次のとおりである。
(1)特許請求の範囲の請求項1には、「前記印刷媒体を保持する手段は、前記回転体対に対して前記印刷媒体を前記保護部材側から供給するように配置され、」という記載がある。
しかし、発明の詳細な説明や図面には、上記の記載の明確な裏付けとなるものがない。また、「印刷媒体を保護部材側から供給する」という記載がどのようなことを意味するのかが明確ではない。
(2)同じく請求項1には、「画像形成位置の手前で前記印刷媒体を前記保護部材に前記加圧手段によって再度加圧し、」という記載がある。
しかし、「画像形成位置の手前」という記載では、漠然とした位置しか表現しておらず、不明瞭である。また、明細書の段落【0036】では、「第2加圧ローラ25の配置位置は記録ヘッド11による画像形成位置の直前位置であることが好ましく、」としているが、第1加圧ローラ(回転体対)に近接した位置で印刷媒体を再度加圧しても、効果を奏するものではないと思慮する。」

2.当審拒絶理由についての検討
(1)平成29年11月28日付けの手続補正書によって、「前記印刷媒体を保持する手段は、前記回転体対に対して前記印刷媒体を前記保護部材側から供給するように配置され、」という記載は削除された。
(2)同じく上記の手続補正書によって、「画像形成位置の手前で前記印刷媒体を前記保護部材に前記加圧手段によって再度加圧し、」という記載は、「画像形成位置の直前で前記印刷媒体を前記保護部材に前記加圧手段によって再度加圧し、」という記載に補正された。
(3)上記の手続補正がなされたことにより、当審において指摘した拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-09 
出願番号 特願2012-167768(P2012-167768)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B41J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 笹木 俊男  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 黒瀬 雅一
畑井 順一
発明の名称 画像形成装置  
代理人 稲元 富保  

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