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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R |
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管理番号 | 1336070 |
審判番号 | 不服2016-19044 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-12-20 |
確定日 | 2018-01-04 |
事件の表示 | 特願2013-113727号「車載電源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月11日出願公開、特開2014-231327号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年5月30日の出願であって、平成28年5月26日付けで拒絶理由が通知され、同年6月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月27日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して、同年12月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 平成28年12月20日の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年12月20日の手続補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 平成28年12月20日の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。 なお、下線部は補正箇所を示す。 「 【請求項1】 第1のバッテリー(1)と、 前記第1のバッテリー(1)に並列接続されるとともに、前記第1のバッテリー(1)からの電源電圧を降圧して出力する第1及び第2のDC/DCコンバータ(3,4)と、 前記第1のDC/DCコンバータ(3)の出力側に接続される一定の電圧が必要な第1の電気負荷(6)と、 前記第2のDC/DCコンバータ(4)の出力側に並列接続される第2のバッテリー(2)及び瞬間的に大電流が必要な第2の電気負荷(5)と、 前記第1のDC/DCコンバータ(3)の出力側と前記第2のDC/DCコンバータ(4)の出力側との間に、前記第2のDC/DCコンバータ(4)の出力側から前記第1のDC/DCコンバータ(3)の出力側へ電流を流す向きが順方向となるように接続される整流素子(7)とを有し、 前記第2のDC/DCコンバータ(4)と前記第2のバッテリー(2)は、前記第1のDC/DCコンバータ(3)から前記第1の電気負荷(6)への電力供給に不具合が生じた場合に、前記整流素子(7)を介して前記第1の電気負荷(6)へ電力を供給するように構成されることを特徴とする車載電源装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の、平成28年6月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 第1のバッテリー(1)と、 前記第1のバッテリー(1)に並列接続されるとともに、前記第1のバッテリー(1)からの電源電圧を降圧して出力する第1及び第2のDC/DCコンバータ(3,4)と、 前記第1のDC/DCコンバータ(3)の出力側に接続される一定の電圧が必要な第1の電気負荷(6)と、 前記第2のDC/DCコンバータ(4)の出力側に並列接続される第2のバッテリー(2)及び瞬間的に大電流が必要な第2の電気負荷(5)と、 前記第1のDC/DCコンバータ(3)の出力側と前記第2のDC/DCコンバータ(4)の出力側との間に、前記第2のDC/DCコンバータ(4)の出力側から前記第1のDC/DCコンバータ(3)の出力側へ電流を流す向きが順方向となるように接続される整流素子(7)とを有し、 前記第2のDC/DCコンバータ(4)と前記第2のバッテリー(2)より出力される電力は、前記整流素子(7)を介して前記第1の電気負荷(6)へ入力可能に構成されることを特徴とする車載電源装置。」 2 補正の目的の適否 上記本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記第2のDC/DCコンバータ(4)と前記第2のバッテリー(2)より出力される電力は、前記整流素子(7)を介して前記第1の電気負荷(6)へ入力可能に構成されること」を、「入力」する場合の条件を特定することで、「前記第2のDC/DCコンバータ(4)と前記第2のバッテリー(2)は、前記第1のDC/DCコンバータ(3)から前記第1の電気負荷(6)への電力供給に不具合が生じた場合に、前記整流素子(7)を介して前記第1の電気負荷(6)へ電力を供給するように構成されること」に限定するものであり、かつ、その補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 3 独立特許要件 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)刊行物に記載された事項及び発明 ア 刊行物1に記載された事項 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である、特開2003-244937号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 なお、下線は当審で加筆した。以下、同様である。 (1a) 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等を含む種々の車両に搭載可能な負荷駆動装置に関し、より詳細には、近年開発が進められている高電圧電源部を搭載した車両において種々の電気負荷をそれぞれ適宜駆動するための負荷駆動装置に関する。」 (1b) 「【0010】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、低電圧電力線3には第1ランプL1および第2ランプL2の他、ECU1?ECU6が電気的に接続されている。ECU1?ECU6等の電子制御ユニットの定格入力電圧値は一般的に8V?16Vであるため、DC/DCコンバータ2の出力電圧(即ち、低電圧電力線3から供給される電圧)が電圧降下して各ECU1?ECU6に印加される電圧が下限値である8Vを下回った場合は、ECU1?ECU6が不必要に停止または誤動作する可能性があり、前述の負荷駆動装置1には解決せねばならない課題がある。 【0011】一方、低温環境における第1ランプL1および第2ランプL2の消費電力を賄え且つECU1?ECU6に定格入力電圧の下限値を満足する電圧を印加できる電力供給能力を持つDC/DCコンバータをDC/DCコンバータ2として選定することは物理的に可能と言える。しかしながら、これらの電気負荷を適切に駆動するために求められる電力量は一時的にでも膨大であり、そのような膨大な電力供給能力を持つDC/DCコンバータは非常に高価で、サイズ、重量、発熱、等にも課題があるため、有利とは言えない。 【0012】本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高電圧電源部を搭載した車両において種々の電気負荷をそれぞれ適宜駆動することができる負荷駆動装置を提供することにある。」 (1c) 「【0026】図1に示されるように、本発明の負荷駆動装置20は、高電圧電力線16により電源部10と電気的に接続されており、該高電圧電力線16を介して電源部10から36V?42Vといった高直流電圧の電力供給を受けている。尚、電源部10は既に図3を参照して説明したものと同じであるため説明を省略する。また、重複説明回避のため、既に図3を参照して説明した電気負荷にも同一符号を付して図1の明確化を図る。 【0027】負荷駆動装置20は、第1直流電圧変換器として第1DC/DCコンバータ22と、第2直流電圧変換器として第2DC/DCコンバータ24と、を備えている。 【0028】第1DC/DCコンバータ22は、大きな消費電力変動を持つ第1電気負荷である第1ランプL1および第2ランプL2に第1低電圧電力線21によって電気的に接続され、これらの第1ランプL1および第2ランプL2に低直流電圧を印加する。具体的に、第1DC/DCコンバータ22は、電源部10から出力された高直流電圧をその電圧値よりも低い12.4Vといった第1低直流電圧に変換し、当該第1低直流電圧の電力を第1低電圧電力線21を介して第1ランプL1および第2ランプL2に供給する。 【0029】第2DC/DCコンバータ24は、消費電力が略一定の第2電気負荷であるECU1?ECU6に第2低電圧電力線23によって電気的に接続され、これらのECU1?ECU6に低直流電圧を印加する。具体的に、第2DC/DCコンバータ24は、高直流電圧を第1低直流電圧の電圧値(即ち、12.4V)よりも僅かながら低い12Vといった第2低直流電圧に変換し、当該第2低直流電圧の電力を第2低電圧電力線23を介してECU1?ECU6に供給する。」 (1d) 「【0038】さて、本発明の負荷駆動装置20を理解し易くするために基本構成要素である第1DC/DCコンバータ22、第2DC/DCコンバータ24および整流器25についてのみ説明してきたが、図1において符号E1により指し示される回路を更に負荷駆動装置20に加えてもよい。図1において符号E1により指し示される回路は、大きな消費電力変動を持つ他の電気負荷を適宜駆動するためのものである。具体的に、第3DC/DCコンバータ26が第1DC/DCコンバータ22および第2DC/DCコンバータ24と並列に設けられている。 【0039】第3DC/DCコンバータ26は、第1DC/DCコンバータ22と同一のDC/DCコンバータで構成されていてもよく、電源部10から出力された高直流電圧をその電圧値よりも低い12.4Vといった第3低直流電圧に変換し、当該第3低直流電圧の電力を第3低電圧電力線28を介して第3電気負荷である大容量コンデンサC1およびモータM1に供給する。大容量コンデンサC1およびモータM1は第1ランプL1および第2ランプL2と同様に大きな消費電力変動を持つ電気負荷である。また、第2低電圧電力線23および第3低電圧電力線28を電気的に接続するように整流器27が第2低電圧電力線23と第3低電圧電力線28との間に設けられている。整流器27は、第3DC/DCコンバータ26からECU1?ECU6への電力供給を許容する。尚、第3DC/DCコンバータ26および整流器27の動作、作用、等に関する説明は、第1DC/DCコンバータ22、第2DC/DCコンバータ24および整流器25について既に説明した内容から容易に推察可能であるため省略する。」 (1e) 「【0042】尚、図1には複数のランプL1,L2と複数のECU1?6が示されているが、第1電気負荷として一つのランプを設け、第2電気負荷として一つのECUを設けてもよいことは言うまでもない。また、第1ランプL1および第2ランプL2の代わりに第1DC/DCコンバータ22の電気負荷として大容量コンデンサC1およびモータM1を設けてもよい。」 イ 刊行物1に記載された発明 (ア) 図1には、電源部10、負荷駆動装置20、ECU1?ECU6、大容量コンデンサC1およびモータM1を含む電気回路が図示されていることが明らかである。 (イ) 「図1において符号E1により指し示される回路を更に負荷駆動装置20に加えてもよい。」(摘記(1d))こと及び図1から、負荷駆動装置20は、符号E1により指し示される回路の第3DC/DCコンバータ26と整流器27とを備えるものであると認められる。 (ウ) 上記(ア)、(イ)、摘記(1a)?(1e)及び図1を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「電源部10、負荷駆動装置20、ECU1?ECU6、大容量コンデンサC1およびモータM1を含む電気回路であって、 負荷駆動装置20は、 電源部10と電気的に接続され、 第2DC/DCコンバータ24と第3DC/DCコンバータ26と整流器27とを備え、 第3DC/DCコンバータ26が第2DC/DCコンバータ24と並列に設けられ、 第2DC/DCコンバータ24は、消費電力が略一定の第2電気負荷であるECU1?ECU6に第2低電圧電力線23によって電気的に接続され、高直流電圧を第1低直流電圧の電圧値(即ち、12.4V)よりも僅かながら低い12Vといった第2低直流電圧に変換し、当該第2低直流電圧の電力を第2低電圧電力線23を介してECU1?ECU6に供給する、 第3DC/DCコンバータ26は、電源部10から出力された高直流電圧をその電圧値よりも低い12.4Vといった第3低直流電圧に変換し、当該第3低直流電圧の電力を第3低電圧電力線28を介して第3電気負荷である大容量コンデンサC1およびモータM1に供給する、 整流器27は、第2低電圧電力線23および第3低電圧電力線28を電気的に接続するように第2低電圧電力線23と第3低電圧電力線28との間に設けられ、第3DC/DCコンバータ26からECU1?ECU6への電力供給を許容する、 電気回路。」 ウ 刊行物2に記載された事項 本願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である、特開平10-224987号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (2a) 「【0003】電装負荷には、ヘッドランプ等のように冷態時に動作させた場合に抵抗値が小さくなるものがあり、このような電装負荷に電力を供給すると、瞬時であるが定格の数倍以上の電流が流れることがある。このような電装負荷の変動に対処するために、低圧電装負荷用の電源装置に設ける降圧用コンバータは、電装負荷の定格電力よりも大きい電力を供給できるよう大容量のものが必要となる。そこで、従来は、前記降圧用コンバータに並列に鉛蓄電池を接続し、この鉛蓄電池より電力を補給することにより、電装負荷の変動に応じて必要な電力を補うようにしている。」 (2b) 「【0023】本実施形態では、重量及び容量当たりの出力パワー密度が高く、電気化学的な反応を伴わない電気二重層コンデンサを鉛蓄電池の代わりに用いることにより、半永久的な寿命を確保できると共に、電池の重量を軽減し小型化することが可能であり、ユーザの負担を軽減できる。さらに、DC-DCコンバータのリップル電圧を低減するための平滑回路のコンデンサを、蓄電池機能とコンデンサ機能の両方を有する電気二重層コンデンサで共用させることにより、DC-DCコンバータの軽量小型化とコスト低減が可能になる。」 (3)対比・判断 ア 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア) 引用発明の「電源部10」は、本願補正発明の「第1のバッテリー(1)」に相当する。 (イ) 引用発明では、「負荷駆動装置20は、電源部10と電気的に接続され、第2DC/DCコンバータ24と第3DC/DCコンバータ26」「とを備え」ているから、「第2DC/DCコンバータ24と第3DC/DCコンバータ26」は、「電源部10と電気的に接続され」ているといえること(図1等も参照)、及び、引用発明においては、「第3DC/DCコンバータ26が第2DC/DCコンバータ24と並列に設けられ」、「第2DC/DCコンバータ24は」、「高直流電圧を第1低直流電圧の電圧値(即ち、12.4V)よりも僅かながら低い12Vといった第2低直流電圧に変換し」、「当該第2低直流電圧の電力を」「供給」し、「第3DC/DCコンバータ26は、電源部10から出力された高直流電圧をその電圧値よりも低い12.4Vといった第3低直流電圧に変換し」、「当該第3低直流電圧の電力を」「供給する」ものであり、「第2DC/DCコンバータ24」により「変換」される「高直流電圧」は、「第3DC/DCコンバータ26」により「変換」される「電源部10から出力された高直流電圧」と同じであることが明らかであること(図1等も参照)から、「第2DC/DCコンバータ24」及び「第3DC/DCコンバータ26」は、電源部10に並列に接続されるものであり、いずれも、「電源部10から出力された高直流電圧」を「低直流電圧に変換し」、すなわち、電源電圧を降圧し、その「電力」を「供給する」もの、すなわち、出力するものであるといえる。 このことと、上記(ア)をも踏まえると、引用発明の「第2DC/DCコンバータ24と第3DC/DCコンバータ26」は、本願補正発明の「前記第1のバッテリー(1)に並列接続されるとともに、前記第1のバッテリー(1)からの電源電圧を降圧して出力する」「第1及び第2のDC/DCコンバータ(3,4)」に相当し、引用発明の「第2DC/DCコンバータ24」及び「第3DC/DCコンバータ26」は、それぞれ、本願補正発明の「第1のDC/DCコンバータ(3)」及び「第2のDC/DCコンバータ(4)」に相当する。 (ウ) 引用発明の「ECU1?ECU6」は、「消費電力が略一定の第2電気負荷である」から、一定の電圧が必要な電気負荷であるといえること、及び、引用発明の「ECU1?ECU6」は、「第2DC/DCコンバータ24」と「第2低電圧電力線23によって電気的に接続され」、「第2DC/DCコンバータ24」は、「電力を第2低電圧電力線23を介してECU1?ECU6に供給する」から、引用発明の「ECU1?ECU6」は、第2DC/DCコンバータ24の出力側に接続されている(図1も参照)といえること、並びに、上記(イ)での対比をも踏まえると、引用発明の「ECU1?ECU6」は、本願補正発明の「前記第1のDC/DCコンバータ(3)の出力側に接続される」「一定の電圧が必要な」「第1の電気負荷(6)」に相当する。 (エ) a 引用発明においては、「第3DC/DCコンバータ26は」、「電力を第3低電圧電力線28を介して第3電気負荷である大容量コンデンサC1およびモータM1に供給する」ものであること、及び 図1において、大容量コンデンサとC1モータM1との配置が電気的に並列であることが明らかであることから、引用発明の「大容量コンデンサおよびC1モータM1」は、「第3DC/DCコンバータ26」の出力側に並列接続されているといえる。 b 引用発明の「第3電気負荷である」「モータM1」は、大きな消費電力変動を持つ電気負荷である(摘記(1d))といえる。 c コンデンサとバッテリーは、いずれも、電気を蓄える蓄電装置といえる。 d 上記a?cを踏まえると、引用発明の「大容量コンデンサおよびC1モータM1」と、本願補正発明の「前記第2のDC/DCコンバータ(4)の出力側に並列接続される」「第2のバッテリー(2)及び」「瞬間的に大電流が必要な第2の電気負荷(5)」とは、「前記第2のDC/DCコンバータ(4)の出力側に並列接続される」「蓄電装置及び」「瞬間的に大電流が必要な」「第2の電気負荷」の限りで共通する。 (オ) a 引用発明において、「第2DC/DCコンバータ24は」、「電力を第2低電圧電力線23を介してECU1?ECU6に供給する」ものであり、「第3DC/DCコンバータ26は」、「電力を第3低電圧電力線28を介して第3電気負荷である大容量コンデンサC1およびモータM1に供給する」ものであるから、「第2低電圧電力線23」および「第3低電圧電力線28」は、それぞれ、「第2DC/DCコンバータ24」の出力側、及び、「 第3DC/DCコンバータ26」の出力側に設けられていることが明らか(図1も参照)である。 そして、引用発明の「整流器27」は、「第2低電圧電力線23および第3低電圧電力線28を電気的に接続するように」「第2低電圧電力線23と第3低電圧電力線28との間に設けられ」るものであるから、「第2DC/DCコンバータ24」の出力側と、「 第3DC/DCコンバータ26」の出力側との間に設けられているといえる。 b 引用発明の「整流器27」が、電流を一方向(順方向)にだけ流す機能を有する素子であることは、技術常識であり、引用発明の「整流器27」は、「第3DC/DCコンバータ26からECU1?ECU6への電力供給を許容する」ものであって、「ECU1?ECU6」が「第2低電圧電力線23」に電気的に接続されていることが明らかであること(図1も参照)から、上記aをも踏まえると、引用発明の「整流器27」は、「 第3DC/DCコンバータ26」の出力側から「第2DC/DCコンバータ24」の出力側へ電流を流す向きが順方向となるように接続されているといえる。 c そして、上記a,bと、上記(イ)をも踏まえると、引用発明の「整流器27」は、本願補正発明の「前記第1のDC/DCコンバータ(3)の出力側と前記第2のDC/DCコンバータ(4)の出力側との間に」、「前記第2のDC/DCコンバータ(4)の出力側から前記第1のDC/DCコンバータ(3)の出力側へ電流を流す向きが順方向となるように接続される」「整流素子(7)」に相当するといえる。 (カ) 引用発明の「電源部10、負荷駆動装置20、ECU1?ECU6、大容量コンデンサC1およびモータM1を含む電気回路」は、車両に搭載されているといえるから(摘記(1a))、本願補正発明の「車載電源装置」に相当する。 以上より、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「第1のバッテリーと、 前記第1のバッテリーに並列接続されるとともに、前記第1のバッテリーからの電源電圧を降圧して出力する第1及び第2のDC/DCコンバータと、 前記第1のDC/DCコンバータの出力側に接続される一定の電圧が必要な第1の電気負荷と、 前記第2のDC/DCコンバータの出力側に並列接続される蓄電装置及び瞬間的に大電流が必要な第2の電気負荷と、 前記第1のDC/DCコンバータの出力側と前記第2のDC/DCコンバータの出力側との間に、前記第2のDC/DCコンバータの出力側から前記第1のDC/DCコンバータの出力側へ電流を流す向きが順方向となるように接続される整流素子とを有している車載電源装置。」 <相違点1> 「蓄電装置」について、本願補正発明は、「第2のバッテリー(2)」であるのに対して、引用発明は、「大容量コンデンサC1」である点。 <相違点2> 本願補正発明は、「前記第2のDC/DCコンバータ(4)と前記第2のバッテリー(2)は、前記第1のDC/DCコンバータ(3)から前記第1の電気負荷(6)への電力供給に不具合が生じた場合に、前記整流素子(7)を介して前記第1の電気負荷(6)へ電力を供給するように構成される」のに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。 イ 判断 以下、各相違点について検討する。 <相違点1について> 蓄電装置として、バッテリーもコンデンサも、いずれも慣用されているものであり、これらが互いに置換可能であることは、技術常識である(摘記(2b)も参照。)。 したがって、引用発明の「大容量コンデンサC1」を「バッテリー」に替えることで「第2のバッテリー」とし、上記相違点1に係る本願補正発明の構成に至ることは、当業者が適宜になし得た事項にすぎない。 <相違点2について> (ア) 引用発明の「整流器27は」、「第2低電圧電力線23および第3低電圧電力線28を電気的に接続するように」「第2低電圧電力線23と第3低電圧電力線28との間に設けられ」、「第3DC/DCコンバータ26からECU1?ECU6への電力供給を許容する」ものである。 (イ) 引用発明では、「12Vといった第2低直流電圧に変換し、当該第2低直流電圧の電力を第2低電圧電力線23を介してECU1?ECU6に供給する」こと、及び、「12.4Vといった第3低直流電圧に変換し、当該第3低直流電圧の電力を第3低電圧電力線28を介して第3電気負荷である大容量コンデンサC1およびモータM1に供給する」ことから、引用発明では、 第2低電圧電力線23には12Vの直流電圧が、第3低電圧電力線28には12.4Vの直流電圧が、それぞれ加えられているといえる。 (ウ) ここで、何らかの事情により、第2低電圧電力線23(12V)側で、電圧低下等、電力供給に不具合が生じた場合、すなわち、第2DC/DCコンバータ24から第2低電圧電力線23を介してECU1?ECU6への電力の供給に不具合が生じた場合、第3低電圧電力線28(12.4V)側の方が、第2低電圧電力線23(12V)側より、高電圧となっている状態が維持されていれば、第3DC/DCコンバータ26からECU1?ECU6へ電力は供給されるといえる。 (エ) そして、引用発明の「大容量コンデンサC1」は、蓄電機能を備えるものであり、第3低電圧電力線28(12.4V)に供給される電圧と同程度の電圧(12.4V)となっているといえること、及び、大容量でもあることから、上記(ウ)の場合に、第3DC/DCコンバータ26と同様に、ECU1?ECU6へ電力を供給するものといえる。 (オ) 以上から、第2DC/DCコンバータ24から第2低電圧電力線23を介してECU1?ECU6への電力の供給に不具合が生じた場合、第3DC/DCコンバータ26と大容量コンデンサC1は、整流器27を介してECU1?ECU6へ電力を供給するものといえるから、上記相違点2は、実質的には相違点とはいえない。 (カ) また、仮に、上記相違点2が実質的な相違点であったとしても、引用発明の「電圧降下して各ECU1?ECU6に印加される電圧が下限値である8Vを下回った場合は、ECU1?ECU6が不必要に停止または誤動作する可能性があ」るという課題(摘記(1b))を考慮すれば、上記相違点2に係る本願補正発明の構成に至ることは、当業者にとって格別に困難なことではない。 (4)小括 したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明(引用発明)及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるとはいえない。 4 むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成28年12月20日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成28年6月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 刊行物に記載された事項及び発明 原査定の拒絶の理由で引用された、刊行物1及び刊行物2に記載された事項は、それぞれ、上記第2[理由]3(2)ア及びウに示したとおりである。 また、上記刊行物1に記載された発明は、上記第2[理由]3(2)イに示した[引用発明]のとおりである。 3 対比 本願発明は、本願補正発明から、上記第2[理由]2で述べたとおりの限定事項を省いたものであるところ、本願補正発明と引用発明との対比(第2[理由]3(3)ア)を踏まえると、本願発明と引用発明とは、上記一致点で一致し、上記相違点1で相違し、さらに、次の相違点3で相違する。 <相違点3> 本願発明は、「前記第2のDC/DCコンバータ(4)と前記第2のバッテリー(2)より出力される電力は、前記整流素子(7)を介して前記第1の電気負荷(6)へ入力可能に構成される」のに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。 4 判断 ア 上記相違点1についての判断は、上記第2[理由]3(3)イ<相違点1について>で述べたとおりであるから、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の構成に至ることは、当業者が適宜になし得た事項にすぎない。 イ 上記第2[理由]3(3)イ<相違点2について>(オ)を踏まえると、引用発明の第3DC/DCコンバータ26と大容量コンデンサC1は、整流器27を介してECU1?ECU6へ電力を供給するものといえるから、電力が「入力可能に構成されていること」は明らかであり、引用発明は、上記相違点3に係る本願発明の構成を備えているといえる。 5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、刊行物1に記載された発明(引用発明)及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-10-19 |
結審通知日 | 2017-10-30 |
審決日 | 2017-11-22 |
出願番号 | 特願2013-113727(P2013-113727) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 倉田 和博 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
出口 昌哉 島田 信一 |
発明の名称 | 車載電源装置 |