ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1336079 |
審判番号 | 不服2017-5536 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-18 |
確定日 | 2018-01-04 |
事件の表示 | 特願2013-246433「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月 8日出願公開、特開2015-106174〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成25年11月28日の出願であって、平成28年9月13日付けで拒絶理由通知がなされ、平成28年11月18日付けで意見書が提出され、平成29年1月17日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年1月24日)、平成29年4月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1ないし2に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 表面および背面にタッチセンサを有する電子機器であって、 背面のタッチセンサがスライド操作されたことを検出すると、そのスライド操作のベクトルの縦横成分のうち、大きいベクトル成分の方向のみに表示中の画面をスライドさせる制御部を備えることを特徴とする電子機器。」 3.引用文献1、引用発明について 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に公開された、特開2013-54467号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。 (1) 【特許請求の範囲】の【請求項1】-【請求項2】 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ディスプレイを本体前面に備えた情報処理装置であって、 本体背面に備えられユーザが接触した位置を接触点として検知する背面タッチパッドと、 あらかじめ設定した変換規則に従い、前記背面タッチパッドが検知した接触点の情報を、実施すべき処理内容の情報に変換する操作情報変換部と、 前記実施すべき処理内容を実施して前記ディスプレイの表示画面を更新する情報処理部と、 を備え、 前記操作情報変換部は、接触を維持したまま接触点が移動したとき、所定の軸方向の移動量成分を算出し、当該移動量成分に対応する移動量で、前記所定の軸方向に限定した画面スクロールを行う処理に変換することを特徴とする情報処理装置。 【請求項2】 前記操作情報変換部は、接触点の移動が開始されたときの移動方向の角度が、あらかじめ設定した角度範囲のいずれに属するかを判定することにより、前記所定の軸方向を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。」 (2) 段落【0029】 「【0029】 次に、上記のような構成を有する情報処理装置10において、背面10cに設けた第2タッチパッド16を操作入力の手段として有効に用いる手法を説明する。情報処理装置の前面10aに設けた第1タッチパッド12は、その下に設けたディスプレイ14とそれを操作する親指および人差し指がユーザの視野内にあることを想定している。そのためディスプレイ14に表示された画面の内容を見ながら、画像として表示されたボタンや書類をあたかも直接操作する感覚で操作入力を行うのに効果を発揮する。」 (3) 段落【0036】 「【0036】 図4は接触点の移動をスクロール操作に変換する処理について説明するための図である。同図は第2タッチパッド16で覆われた情報処理装置の背面10cを示しており、ユーザの右手中指の接触点の移動を模式的に示している。また図示するように、第2タッチパッド16の横方向をx軸、縦方向をy軸とする。」 (4) 段落【0043】-【0047】 「【0043】 なお上記の説明は縦軸方向に限定した場合であるが、横軸方向に限定する場合も同様に、接触点の横軸方向成分の移動、すなわちx0からx1、x1からx2の移動のみを表示領域の動きに反映させる。第2タッチパッド16を用いたスクロールの方向を縦軸方向、横軸方向のどちらに限定するかは、画像の内容や機能などに応じて個別に設定し、変換規則として変換規則記憶部22に格納しておく。操作情報変換部20は当該変換規則に従い、接触点の縦軸方向成分または横軸方向成分のみを抽出して表示領域の移動量を算出し、情報処理部24に通知する。 【0044】 限定する方向はユーザによって可変としてもよい。例えば情報処理装置の前面10aに縦軸方向/横軸方向の切り替えスイッチを設けてもよいし、ディスプレイ14に表示する画像に切り替えのためのGUIを含めてもよい。この場合、切り替え操作は当然、情報処理装置の前面10a上にある親指または人差し指で行うことになる。一方、第2タッチパッド16への中指によるスクロール操作の初動の方向によってスクロールさせる軸を切り替えるようにしてもよい。 【0045】 図5は、スクロール操作の初動の方向によってスクロールの軸を決定する処理を説明するための図である。同図は図4と同様、第2タッチパッド16で覆われた情報処理装置の背面10cを示している。ここで中指が、第2タッチパッド16に接触していない状態から、接触点66に新規に触れ、それを始点としてスクロール操作が行われた場合、当該始点からの移動直後の移動方向に応じてスクロールの軸を縦または横に決定する。ここで「移動直後の移動方向」とは、始点から、所定の微少時間後の接触点までの移動ベクトルの方向であってよい。 【0046】 具体的には同図に示すように、新規に触れたときの接触点66を中心とした時計回りに、-45°以上45°未満を第I象限、45°以上135°未満を第II象限、135°以上225°未満を第III象限、225°以上315°未満を第IV象限とする。そして、接触点66からの移動直後の移動方向が、第I象限または第III象限内にあれば縦軸方向に限定し、第II象限または第IV象限内にあれば横軸方向に限定する。中指による背面操作であったとしても初動のわずかな動きであれば上記4象限のいずれかを狙って動かすことは容易である。 【0047】 ユーザは、このように初動によってスクロールの方向を限定した後は、接触を維持したまま上述のような大きな動きによりスクロール操作を行うことにより、初動を反映した軸方向に限定された画面スクロールを実現できる。なお画像の内容や実現する機能によっては、縦軸方向、横軸方向に限らず、所定の角度の斜めの軸方向にスクロールを限定するようにしてもよい。この場合、移動中の接触点の座標を、同じ座標系においてその移動の始点となった接触点を通る当該軸への正射影を求めることによって座標変換し、さらに画像の座標系へ変換することにより表示領域の移動量を求めればよい。この場合、図5に示した象限の数を増やすことにより、スクロールさせる軸の方向を初動の方向で切り替えることもできる。」 よって、上記各記載事項を関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「情報処理装置10は、 前面10aに設けた第1タッチパッド12、背面10cに設けた第2タッチパッド16を有し、 接触点の移動をスクロール操作に変換するために、 第2タッチパッド16の横方向をx軸、縦方向をy軸とするとき、 操作情報変換部20は、接触点の縦軸方向成分または横軸方向成分のみを抽出して表示領域の移動量を算出し、情報処理部24に通知するものであって、 中指が、第2タッチパッド16に接触していない状態から、接触点66に新規に触れ、それを始点としてスクロール操作が行われた場合、当該始点からの移動直後の移動方向に応じてスクロールの軸を縦または横に決定し、 ここで「移動直後の移動方向」とは、始点から、所定の微少時間後の接触点までの移動ベクトルの方向であって、 具体的には、新規に触れたときの接触点66を中心とした時計回りに、-45°以上45°未満を第I象限、45°以上135°未満を第II象限、135°以上225°未満を第III象限、225°以上315°未満を第IV象限として、接触点66からの移動直後の移動方向が、第I象限または第III象限内にあれば縦軸方向に限定し、第II象限または第IV象限内にあれば横軸方向に限定する、 情報処理装置10。」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1) 引用発明の「タッチパッド」は、本願発明の「タッチセンサ」に対応する。 引用発明の「情報処理装置10」は、後述する相違点を除き、本願発明の「電子機器」に対応する。 よって、引用発明の「前面10aに設けた第1タッチパッド12、背面10cに設けた第2タッチパッド16を有」する「情報処理装置10」は、本願発明の「表面および背面にタッチセンサを有する電子機器」に相当するといえる。 (2) 引用発明の「操作情報変換部20」は、本願発明の「制御部」に対応する。 引用発明の「接触点の移動」は、本願発明の「スライド操作」に対応する。よって、引用発明の「中指が、第2タッチパッド16に接触していない状態から、接触点66に新規に触れ、それを始点としてスクロール操作が行われた場合」は、本願発明の「背面のタッチセンサがスライド操作されたこと」に対応する。 引用発明の「始点から、所定の微少時間後の接触点までの移動ベクトル」は、本願発明の「スライド操作のベクトル」に対応する。 引用発明において、スクロール操作が行われた場合、「表示領域の移動量を算出し、情報処理部24に通知する」ことは、本願発明の「表示中の画面をスライドさせる」ことに対応する。 よって、引用発明において、「接触点の移動をスクロール操作に変換するために」、「操作情報変換部20は、接触点の縦軸方向成分または横軸方向成分のみを抽出して表示領域の移動量を算出し、情報処理部24に通知するものであって、 中指が、第2タッチパッド16に接触していない状態から、接触点66に新規に触れ、それを始点としてスクロール操作が行われた場合、当該始点からの移動直後の移動方向に応じてスクロールの軸を縦または横に決定し、 ここで「移動直後の移動方向」とは、始点から、所定の微少時間後の接触点までの移動ベクトルの方向であって、 具体的には、新規に触れたときの接触点66を中心とした時計回りに、-45°以上45°未満を第I象限、45°以上135°未満を第II象限、135°以上225°未満を第III象限、225°以上315°未満を第IV象限として、接触点66からの移動直後の移動方向が、第I象限または第III象限内にあれば縦軸方向に限定し、第II象限または第IV象限内にあれば横軸方向に限定する」ことは、本願発明の「背面のタッチセンサがスライド操作されたことを検出すると、そのスライド操作のベクトルの縦横成分のうち、大きいベクトル成分の方向のみに表示中の画面をスライドさせる制御部」と、少なくとも、「背面のタッチセンサがスライド操作されたことを検出すると、そのスライド操作のベクトルに基づいて、縦横方向のうちどちらかの方向のみに表示中の画面をスライドさせる制御部」である点で共通するといえる。 したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点・相違点があるといえる。 [一致点] 「表面および背面にタッチセンサを有する電子機器であって、 背面のタッチセンサがスライド操作されたことを検出すると、そのスライド操作のベクトルに基づいて、縦横方向のうちどちらかの方向のみに表示中の画面をスライドさせる制御部を備えることを特徴とする電子機器。」 [相違点] 本願発明では、「そのスライド操作のベクトルの縦横成分のうち、大きいベクトル成分の方向のみに」表示中の画面をスライドさせるのに対して、引用発明では、「始点からの移動直後の移動方向に応じてスクロールの軸を縦または横に決定し、ここで「移動直後の移動方向」とは、始点から、所定の微少時間後の接触点までの移動ベクトルの方向であって、具体的には、……(中略)……、接触点66からの移動直後の移動方向が、第I象限または第III象限内にあれば縦軸方向に限定し、第II象限または第IV象限内にあれば横軸方向に限定する」ものであって、「そのスライド操作のベクトルの縦横成分のうち、大きいベクトル成分の方向のみに」表示中の画面をスライドさせることは、特定がなされていない点。 5.当審の判断 [相違点]について 引用発明の「第I象限または第III象限」(図5参照。)とは、数学的には、移動ベクトルのy軸方向成分の絶対値が、x軸方向成分の絶対値よりも大きい領域であるといえる。 また、引用発明の「第II象限または第IV象限内」(図5参照。)とは、数学的には、移動ベクトルのx軸方向成分の絶対値が、y軸方向成分の絶対値よりも大きい領域であるといえる。 よって、引用発明の「操作情報変換部20は、接触点の縦軸方向成分または横軸方向成分のみを抽出して表示領域の移動量を算出し、情報処理部24に通知するものであって、……(中略)……、接触点66からの移動直後の移動方向が、第I象限または第III象限内にあれば縦軸方向に限定し、第II象限または第IV象限内にあれば横軸方向に限定する」ことは、本願発明の「そのスライド操作のベクトルの縦横成分のうち、大きいベクトル成分の方向のみに」表示中の画面をスライドさせることと、数学的に同じ処理であるといえる。 したがって、引用発明において、移動ベクトルの方向が第I?IV象限のいずれの領域であるかを判定するという、領域の判定処理を、これと数学的に同じ処理である、移動ベクトルのx、y軸方向成分の大小関係の比較処理で実現することで、上記[相違点]に係る本願発明の構成とすることは、引用発明の具体化において、当業者であれば容易に推考し得ることである。 さらに、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。 6.むすび したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-11-02 |
結審通知日 | 2017-11-07 |
審決日 | 2017-11-20 |
出願番号 | 特願2013-246433(P2013-246433) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩橋 龍太郎 |
特許庁審判長 |
和田 志郎 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 山田 正文 |
発明の名称 | 電子機器 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 片岡 憲一郎 |
代理人 | 太田 昌宏 |