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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1336096
審判番号 不服2016-18246  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-05 
確定日 2018-01-23 
事件の表示 特願2012-203549「油性スタイリング化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月 3日出願公開、特開2014- 58462、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年9月14日の出願であって、平成28年5月17日付けで拒絶理由が通知され、同年7月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月31日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して、同年12月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成28年8月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 本願の請求項1及び3ないし6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2 本願の請求項1ないし6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:国際公開第2010/087004号


第3 本願発明

本願の請求項1ないし4に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成28年12月5日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1は以下のとおりである(なお、本願発明2ないし4については、記載を省略する。)。

「 【請求項1】
(A)ネオペンチルグリコールエステル、(B)ジメチルポリシロキサンおよび(C)環状シリコーンを夫々含有し、実質的に水を含有しないものであり、且つ、
前記(B)ジメチルポリシロキサンと(C)環状シリコーンの質量比[(B):(C)]が、1:7?1:18であることを特徴とする油性スタイリング化粧料
(但し、(A)下記一般式(1)
【化1】

式中、R_(1)は炭素原子数2?4の置換基を有していてもよいアルキレン基であり、R_(2)およびR_(3)はそれぞれ独立して炭素原子数1?4の置換基を有していてもよいアルキル基であり、R_(4)およびR_(5)はそれぞれ独立して水素または置換基を有していてもよいメチル基もしくはエチル基であり、mおよびnはそれぞれ独立して0?4の整数であり、かつm+n≧1である(ただし、R_(2)およびR_(3)が共にエチル基であり、かつmおよびnが共に1である場合を除く)、で表される二塩基酸のエステル化合物と、(B)揮発性油、エステル油、炭化水素油、動植物油およびシリコーン油からなる群より選ばれる1種または2種以上の油剤とを含み、
前記二塩基酸のエステル化合物を、油性毛髪化粧料の全質量に対し、1.0?50質量%含有する油性毛髪化粧料を除く)。」


第4 引用文献の記載事項

1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。)。

(引1-ア)「技術分野
[0001] 本発明は、ダメージを受けた毛髪のケアと使用感に優れた、油性毛髪化粧料に関する。さらに詳しくは、特定の二塩基酸のエステル化合物と特定の油剤とを含む、ダメージを受けた毛髪の表面および内部の状態を改善し、さらには毛髪にハリ・コシ感を与えてベタつきがなく軽く仕上がるなどの使用感にも優れる、油性毛髪化粧料およびその製法に関する。」

(引1-イ)「発明が解決しようとする課題
[0011] したがって、本発明の目的は、ダメージを受けた毛髪の表面および内部の状態を改善し、さらには、毛髪にハリ・コシ感や自然な光沢感を与えてベタつきがなく軽く仕上がり、帯電を防止できるなどの使用感にも優れる油性毛髪化粧料およびその製法を提供することにある。」

(引1-ウ)「課題を解決するための手段
[0012] 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の二塩基酸のエステル化合物が、毛髪への浸透性が高く、安全性が良好で、臭いがほとんど気にならないなどの毛髪化粧料の浸透促進剤として非常に優れた特性を有していることを見出した。また、かかる二塩基酸のエステル化合物と特定の油剤とを組み合わせる油性毛髪化粧料とすることにより、従来の毛髪化粧料に比べ、ダメージを受けた毛髪の表面および内部への高い改善効果を有し、さらには、毛髪にハリ・コシ感や自然な光沢感を与えてベタつきがなく軽く仕上がり、帯電を防止できるなどの使用感により優れることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
[0013] すなわち本発明は、(A)下記一般式(1)
[化1]

式中、R_(1)は炭素原子数2?4の置換基を有していてもよいアルキレン基であり、R_(2)およびR_(3)はそれぞれ独立して炭素原子数1?4の置換基を有していてもよいアルキル基であり、R_(4)およびR_(5)はそれぞれ独立して水素または置換基を有していてもよいメチル基もしくはエチル基であり、mおよびnはそれぞれ独立して0?4の整数であり、かつm+n≧1である(ただし、R_(2)およびR_(3)が共にエチル基であり、かつmおよびnが共に1である場合を除く)、で表される二塩基酸のエステル化合物と、(B)揮発性油、エステル油、炭化水素油、動植物油およびシリコーン油からなる群より選ばれる1種または2種以上の油剤とを含む、油性毛髪化粧料に関する。」

(引1-エ)「発明を実施するための形態
[0021] 本明細書において「毛髪化粧品」とは、とくに限定されず、人の頭髪の整髪、洗浄、ケアなどのために用いられるあらゆる製品を意味する。なお、本発明の毛髪化粧品は、人や動物の、頭髪、頭皮、毛根、体毛、体皮等を、洗浄、ケア、治療等する製品も包含する。好ましい具体例としては、人の頭髪の整髪、ケアなどのために用いられる油性毛髪化粧品が例示される。
また、本明細書において「毛髪化粧料」とは、とくに限定されず、上記毛髪化粧品の製造に用いられるあらゆる組成物を意味する。
さらに、本明細書において「油性毛髪化粧料」および「油性毛髪化粧品」とは、とくに限定されず、油溶性の性質を有する物質を主成分とする、あらゆる毛髪化粧料および毛髪化粧品を意味する。好ましい具体例としては、実質的に水が配合されていない非水系の油性毛髪化粧料および油性毛髪化粧品が例示される。」

(引1-オ)「[0032] 前記一般式(1)で表されるエステル化合物の含有量は、油性毛髪化粧料の全質量に対し、好ましくは1?50質量%であり、より好ましくは2?45質量%であり、さらに好ましくは3?40質量%であり、とくに好ましくは5?35質量%である。エステル化合物の含有量が低すぎると十分な浸透促進効果が得られずダメージを受けた毛髪の改善効果に劣る傾向があり、エステル化合物の含有量が高すぎると毛髪への適用時および適用後の使用感に劣る(べとつき感が強くなる)傾向があり、また含有量に見合った効果が得られず不経済であるところ、含有量が上記の範囲であればダメージを受けた毛髪の十分な改善効果と優れた使用感や好適な経済性が得られるため好ましい。」

(引1-カ)「実施例
[0054] 以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらによって何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、とくに断らない限り、以下に記載する「%」は「質量%」を意味する。
[0055][実施例1?8]
(ヘアオイルの調製と評価)
表1の各組成からなる実施例1?8および比較例1のヘアオイルの調製を、下記の調製方法により行った。また、実施例1?8および比較例1のヘアオイルの各特性の評価を、下記の評価方法により行った。結果を表1に示す。
[0056](調製方法)
表1に示す各組成の成分を所定量で混合し、次いで室温で攪拌しながら溶解して均一な混合物として、実施例1?8および比較例1のヘアオイルを得た。」

(引1-キ)「[0064][表1-1]

[表1-2]

[0065] 表1に示されるとおり、実施例1?8の本発明の油性毛髪化粧料を含むヘアオイルは、塗りやすさ、べたつきのなさ、仕上がりの軽さ・指どおり、毛髪のまとまり、ハリ・コシ感、自然な光沢感といった優れた使用感とともに、高いキューティクルの改善効果を有することは勿論のこと、優れた保存安定性および高い帯電防止効果をも有することが分かる。
これに対し、本発明の二塩基酸のエステル化合物の代わりにベンジルアルコールを含む比較例1は、実施例1?8と比べて、塗りやすさ、仕上がりの軽さ・指どおり、毛髪のまとまりなどの使用感、キューティクルの改善効果において劣り、とくに、キューティクルの改善効果、仕上がりの軽さ・指どおり、毛髪のまとまりに劣ることが分かる。」

2 引用文献1に記載された発明の認定

(引1-ア)ないし(引1-キ)の記載、特に、比較例1及び実施例4の記載から、引用文献1には、

「 油剤としての、揮発性油であるイソドデカン45.00質量%、エステル油である(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー0.50質量%、パルミチン酸イソプロピル3.00質量%及びジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール1.00質量%、炭化水素油であるミネラルオイル10.00質量%、動植物油であるツバキ油1.00質量%及びホホバ油2.00質量%、並びに、シリコーン油であるジメチコン(10mPa・s)2.50質量%及びシクロメチコン10.00質量%、
並びに、その他の成分としての、エタノール20.00質量%、ベンジルアルコール5.00質量%、適量の香料、適量の酸化防止剤、及び適量の防腐剤、からなるヘアオイル。」

の発明(以下「引用発明1」という。)、及び

「 (A)下記一般式(1)
[化1]

式中、R_(1)は炭素原子数2?4の置換基を有していてもよいアルキレン基であり、R_(2)およびR_(3)はそれぞれ独立して炭素原子数1?4の置換基を有していてもよいアルキル基であり、R_(4)およびR_(5)はそれぞれ独立して水素または置換基を有していてもよいメチル基もしくはエチル基であり、mおよびnはそれぞれ独立して0?4の整数であり、かつm+n≧1である(ただし、R_(2)およびR_(3)が共にエチル基であり、かつmおよびnが共に1である場合を除く)、で表される二塩基酸のエステル化合物と、
(B)揮発性油、エステル油、炭化水素油、動植物油およびシリコーン油からなる群より選ばれる1種または2種以上の油剤とを含む、油性毛髪化粧料であって、
前記(A)の一般式(1)で表される二塩基酸のエステル化合物としての、コハク酸ビスジエチレングリコールエチルエーテル20.00質量%、
前記(B)の油剤としての、前記揮発性油であるイソドデカン20.00質量%及びイソヘキサデカン30.00質量%、前記エステル油であるジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール10.00質量%、前記動植物油であるコメヌカ油1.50質量%及びホホバ油1.00質量%、並びに、前記シリコーン油であるジメチコン(10mPa・s)1.00質量%、シクロメチコン5.00質量%及びフェニルポリシロキサン1.00質量%、
並びに、その他の成分としての、ジメチルPABAアミドプロピルラウルジモニウムトシル酸0.50質量%、プロピレングリコール10.00質量%、適量の香料、適量の酸化防止剤、及び適量の防腐剤、からなるヘアオイル。」

の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。


第5 原査定の理由1(特許法第29条第1項第3号)について

1 本願発明1について

(1)本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明1の「ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール」、「ジメチコン(10mPa・s)」及び「シクロメチコン」は、それぞれ本願発明1の「ネオペンチルグリコールエステル」、「ジメチルポリシロキサン」及び「環状シリコーン」に相当する。

イ 引用発明1において、水を構成成分として含むことは特定されておらず、特定されている構成成分の総量が100.00質量%であるから、引用発明1は、本願発明1と同様に実質的に水を含有しないものである。

ウ 引用発明1は、ジメチルポリシロキサンに相当する成分としてジメチコン(10mPa・s)2.50質量%のみを含み、環状シリコーンに相当する成分としてシクロメチコン10.00質量%のみを含むことから、引用発明1におけるジメチルポリシロキサンと環状シリコーンとの質量比は、1:4である。

エ (引1-エ)の「本明細書において「毛髪化粧品」とは、とくに限定されず、人の頭髪の整髪、洗浄、ケアなどのために用いられるあらゆる製品を意味する。・・・好ましい具体例としては、人の頭髪の整髪、ケアなどのために用いられる油性毛髪化粧品が例示される。」との記載によれば、引用発明1の「ヘアオイル」は、整髪のために用いられるものを包含しているといえる。
よって、引用発明1の「ヘアオイル」は、本願発明1の「油性スタイリング化粧料」に相当する。

オ 引用発明1は、本願発明1の一般式(1)で表される二塩基酸のエステル化合物を含んでいない。

(2)よって、本願発明1と引用発明1とは、

「 (A)ネオペンチルグリコールエステル、(B)ジメチルポリシロキサンおよび(C)環状シリコーンを夫々含有し、実質的に水を含有しないものである、油性スタイリング化粧料
(但し、(A)下記一般式(1)
【化1】

式中、R_(1)は炭素原子数2?4の置換基を有していてもよいアルキレン基であり、R_(2)およびR_(3)はそれぞれ独立して炭素原子数1?4の置換基を有していてもよいアルキル基であり、R_(4)およびR_(5)はそれぞれ独立して水素または置換基を有していてもよいメチル基もしくはエチル基であり、mおよびnはそれぞれ独立して0?4の整数であり、かつm+n≧1である(ただし、R_(2)およびR_(3)が共にエチル基であり、かつmおよびnが共に1である場合を除く)、で表される二塩基酸のエステル化合物と、(B)揮発性油、エステル油、炭化水素油、動植物油およびシリコーン油からなる群より選ばれる1種または2種以上の油剤とを含み、
前記二塩基酸のエステル化合物を、油性毛髪化粧料の全質量に対し、1.0?50質量%含有する油性毛髪化粧料を除く)。」

の発明である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
(B)ジメチルポリシロキサンと(C)環状シリコーンの質量比[(B):(C)]が、本願発明1においては、「1:7?1:18」に特定されているのに対し、引用発明1においては、「1:4」である点。

(3)以上のとおり、本願発明1と引用発明1とは、(B)ジメチルポリシロキサンと(C)環状シリコーンの質量比において実質的に相違するから、本願発明1は引用発明1と同一ではない。
また、引用文献1には、比較例2として、ジメチルポリシロキサンに相当する成分としてジメチコン(10mPa・s)2.00質量%のみを含み、環状シリコーンに相当する成分としてシクロメチコン40.00質量%のみを含むヘアジェルも記載されているが、この場合のジメチルポリシロキサンと環状シリコーンとの質量比は1:20であり、本願発明1とは、やはり(B)ジメチルポリシロキサンと(C)環状シリコーンの質量比において実質的に相違し、両者は同一ではない。
したがって、本願発明1は引用文献1に記載された発明ではない。

2 本願発明2ないし4について

本願発明2ないし4も、本願発明1の「(B)ジメチルポリシロキサンと(C)環状シリコーンの質量比[(B):(C)]が、1:7?1:18であること」との構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用文献1に記載された発明ではない。


第6 原査定の理由2(特許法第29条第2項)について

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明2の「ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール」、「ジメチコン(10mPa・s)」及び「シクロメチコン」は、それぞれ本願発明1の「ネオペンチルグリコールエステル」、「ジメチルポリシロキサン」及び「環状シリコーン」に相当する。

イ 引用発明2において、水を構成成分として含むことは特定されておらず、特定されている構成成分の総量が100.00質量%であるから、引用発明2は、本願発明1と同様に実質的に水を含有しないものである。

ウ 引用発明2は、ジメチルポリシロキサンに相当する成分としてジメチコン(10mPa・s)1.00質量%のみを含み、環状シリコーンに相当する成分としてシクロメチコン5.00質量%のみを含むことから、引用発明2におけるジメチルポリシロキサンと環状シリコーンとの質量比は、1:5である。

エ (引1-エ)の「本明細書において「毛髪化粧品」とは、とくに限定されず、人の頭髪の整髪、洗浄、ケアなどのために用いられるあらゆる製品を意味する。・・・好ましい具体例としては、人の頭髪の整髪、ケアなどのために用いられる油性毛髪化粧品が例示される。」との記載によれば、引用発明2の「ヘアオイル」は、整髪のために用いられるものを包含しているといえる。
よって、引用発明2の「ヘアオイル」は、本願発明1の「油性スタイリング化粧料」に相当する。

オ 引用発明2は、本願発明1の一般式(1)で表される二塩基酸のエステル化合物に相当する「コハク酸ビスジエチレングリコールエチルエーテル」を、「20.00質量%」含有している。

(2)一致点及び相違点

よって、本願発明1と引用発明2とは、

「 (A)ネオペンチルグリコールエステル、(B)ジメチルポリシロキサンおよび(C)環状シリコーンを夫々含有し、実質的に水を含有しないものである、油性スタイリング化粧料。」

の発明である点で一致し、次の2点で相違する。

(相違点2)
(B)ジメチルポリシロキサンと(C)環状シリコーンの質量比[(B):(C)]が、本願発明1においては、「1:7?1:18」に特定されているのに対し、引用発明2においては、「1:5」である点。

(相違点3)
本願発明1は、「(A)下記一般式(1)
【化1】

式中、R_(1)は炭素原子数2?4の置換基を有していてもよいアルキレン基であり、R_(2)およびR_(3)はそれぞれ独立して炭素原子数1?4の置換基を有していてもよいアルキル基であり、R_(4)およびR_(5)はそれぞれ独立して水素または置換基を有していてもよいメチル基もしくはエチル基であり、mおよびnはそれぞれ独立して0?4の整数であり、かつm+n≧1である(ただし、R_(2)およびR_(3)が共にエチル基であり、かつmおよびnが共に1である場合を除く)、で表される二塩基酸のエステル化合物と、(B)揮発性油、エステル油、炭化水素油、動植物油およびシリコーン油からなる群より選ばれる1種または2種以上の油剤とを含み、前記二塩基酸のエステル化合物を、油性毛髪化粧料の全質量に対し、1.0?50質量%含有する油性毛髪化粧料を除く」と特定するのに対し、引用発明2は、「(A)下記一般式(1)
[化1]

式中、R_(1)は炭素原子数2?4の置換基を有していてもよいアルキレン基であり、R_(2)およびR_(3)はそれぞれ独立して炭素原子数1?4の置換基を有していてもよいアルキル基であり、R_(4)およびR_(5)はそれぞれ独立して水素または置換基を有していてもよいメチル基もしくはエチル基であり、mおよびnはそれぞれ独立して0?4の整数であり、かつm+n≧1である(ただし、R_(2)およびR_(3)が共にエチル基であり、かつmおよびnが共に1である場合を除く)、で表される二塩基酸のエステル化合物と、(B)揮発性油、エステル油、炭化水素油、動植物油およびシリコーン油からなる群より選ばれる1種または2種以上の油剤とを含み、前記二塩基酸のエステル化合物としてコハク酸ビスジエチレングリコールエチルエーテルを、油性毛髪化粧料の全質量に対し、20.00質量%含有する油性毛髪化粧料」である点。

(3)当審の判断

ア 上記相違点2について

(ア)引用発明2は、シリコーン油としてジメチコン(10mPa・s)1.00質量%及びシクロメチコン5.00質量%を含有しているが、引用文献1には、ジメチコン及びシクロメチコンを必須の成分とすることは記載されておらず、ジメチコン及びシクロメチコンの上位概念であるシリコーン油でさえ、必須成分である油剤における選択肢の1つとして記載されているにすぎない。
そして、(引1-キ)の[表1-1]及び[表1-2]に示されるように、実施例4に係る引用発明2に加え、ジメチコン(10mPa・s)及びシクロメチコンの一方のみを含有する実施例2及び6や、ジメチコン(10mPa・s)及びシクロメチコンの双方を含有しない実施例3、5及び7のものは、各評価項目に関して良い評価結果が得られていることからすれば、引用発明2について、ジメチコン(10mPa・s)及びシクロメチコンの質量比を変更しようとする動機付けがそもそも存在しない。

(イ)また、本願の発明の詳細な説明の「【0018】 上記(B)ジメチルポリシロキサンと(C)環状シリコーンは、その配合割合を適切な範囲に調整することが有効であり、これらの質量比[(B):(C)]は、1:5?1:20であることが好ましい。(B)ジメチルポリシロキサン1に対して(C)環状シリコーンが5(質量比)より少なくなると、毛髪の乾きが遅くなり、べたつきの原因となる。(B)ジメチルポリシロキサン1に対して(C)環状シリコーンが20(質量比)よりも多くなると、満足する手触り感が得られない。より好ましくは、1:7?1:18(更に、好ましくは1:10?1:15)である。」との記載によれば、ジメチルポリシロキサンと環状シリコーンとの質量比は、毛髪のべたつきや手触り感に影響を与えるものであり、当該質量比が単なる設計的事項であるということもできない。

(ウ)したがって、当業者といえども、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想起することはできない。

イ 上記相違点3について

(ア)(引1-ウ)によれば、引用発明2は、一般式(1)で表される二塩基酸のエステル化合物を浸透促進剤とし、これを特定の油剤とともに用いることにより、ダメージを受けた毛髪の表面及び内部への高い改善効果を有し、さらには、毛髪にハリ・コシ感や自然な光沢感を与えてベタつきがなく軽く仕上がり、帯電を防止できるなどの使用感により優れた油性毛髪化粧料を提供することを解決課題とするものであるところ、一般式(1)で表される二塩基酸のエステル化合物なくして、引用発明2が解決しようとする課題はそもそも達成できない。
そして、このことは、(引1-キ)の[表1-1]及び[表1-2]に示された評価結果において、一般式(1)で表される二塩基酸のエステル化合物であるコハク酸ビスジエチレングリコールエチルエーテル及びコハク酸ビストリプロピレングリコールイソプロピルエーテルを含まない比較例1のものが、複数項目において低い評価しか得られていないことからも、実証されている。

(イ)また、(引1-オ)に「[0032] 前記一般式(1)で表されるエステル化合物の含有量は、油性毛髪化粧料の全質量に対し、好ましくは1?50質量%であり、より好ましくは2?45質量%であり、さらに好ましくは3?40質量%であり、とくに好ましくは5?35質量%である。」と記載された、一般式(1)で表される二塩基酸のエステル化合物の油性毛髪化粧料の全質量に対する含有量の範囲からすれば、一般式(1)で表される二塩基酸のエステル化合物としてコハク酸ビスジエチレングリコールエチルエーテルを、とくに好ましい範囲である5?35質量%に該当する20.00質量%含有する引用発明2について、コハク酸ビスジエチレングリコールエチルエーテルなどの一般式(1)で表される二塩基酸のエステル化合物を、好ましい範囲である1?50質量%を逸脱した範囲で含有させようとする動機付けがない。

(ウ)したがって、当業者といえども、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想起することはできない。

ウ よって、本願発明1は、引用発明2及び引用文献1に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2ないし4について

本願発明2ないし4も、本願発明1の「(B)ジメチルポリシロキサンと(C)環状シリコーンの質量比[(B):(C)]が、1:7?1:18であること」、及び「(A)下記一般式(1)
【化1】

式中、R_(1)は炭素原子数2?4の置換基を有していてもよいアルキレン基であり、R_(2)およびR_(3)はそれぞれ独立して炭素原子数1?4の置換基を有していてもよいアルキル基であり、R_(4)およびR_(5)はそれぞれ独立して水素または置換基を有していてもよいメチル基もしくはエチル基であり、mおよびnはそれぞれ独立して0?4の整数であり、かつm+n≧1である(ただし、R_(2)およびR_(3)が共にエチル基であり、かつmおよびnが共に1である場合を除く)、で表される二塩基酸のエステル化合物と、(B)揮発性油、エステル油、炭化水素油、動植物油およびシリコーン油からなる群より選ばれる1種または2種以上の油剤とを含み、前記二塩基酸のエステル化合物を、油性毛髪化粧料の全質量に対し、1.0?50質量%含有する油性毛髪化粧料を除く」との構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明2及び引用文献1に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。


第7 むすび

以上のとおり、本願発明1ないし4は、引用文献1に記載された発明ではなく、また、引用発明2及び引用文献1に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-05 
出願番号 特願2012-203549(P2012-203549)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (A61K)
P 1 8・ 121- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 進士 千尋  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 渡戸 正義
関 美祝
発明の名称 油性スタイリング化粧料  
代理人 菅河 忠志  
代理人 竹岡 明美  
代理人 植木 久彦  
代理人 植木 久一  
代理人 伊藤 浩彰  

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