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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1336102 |
審判番号 | 不服2017-653 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-01-17 |
確定日 | 2018-01-05 |
事件の表示 | 特願2015-31355号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年8月25日出願公開、特開2016-152835号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯の概要 本願は、平成27年2月20日の出願であって、平成28年6月21日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月16日に意見書が提出されところ、同年10月24日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年10月26日)、それに対し、平成29年1月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。 そして、当審にて同年8月21日付けで拒絶理由を通知したところ、同年10月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1?2に係る発明は、平成29年10月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「A 光源と前記光源の前方に配置されて前記光源から照明される照明対象体とを有する電飾装置を備えた遊技機において、 B 前記照明対象体は、前記照明対象体を支持するために前記照明対象体の背面に立設された支持部を備え、 C 前記照明対象体の背面には、前記支持部の立設された支持部領域と、前記支持部が立設されておらず前記光源側へ露呈された露呈領域とが形成されており、 D 前記露呈領域と前記支持部の背面には、複数の光屈折面を有するレンズカットが設けられており、 E 前記支持部は、前記照明対象体の背面に設けられた前記支持部領域からさらに背面側へ向けて延びるように形成されており、 F 前記支持部の背面は、前記支持部の側面を挟んで前記露呈領域から離間されており、 G 前記レンズカットは、前記支持部の背面と前記支持部の背面から離間された前記露呈領域とのそれぞれに設けられており、 H 前記露呈領域に設けられたレンズカットと前記支持部の背面に設けられたレンズカットは、前記照明対象体を背面側から観察した場合に、前記露呈領域と前記支持部の背面との境界部分において前記光屈折面が連続するように形成されていることを特徴とする遊技機。」(A?Nは、当審にて分説して付与した。) 3 刊行物に記載された発明 (1)当審による拒絶理由において刊行物1として提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2015-27338号公報には、図面と共に次の事項が記載されていると認められる(a?gは、本件補正発明のA?Gに対応させて付与した。)。 ・記載事項 ア 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかし、従来の遊技台の遊技装置では、凹凸部を形成したことによってカバー部材の発光態様にムラがでてしまうことがあった。 【0005】 本発明の目的は、発光態様にムラのない透光性部品を備えた遊技台を提供することにある。」 イ 「【0009】 以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る遊技台(例えば、ぱちんこ機100等の弾球遊技機やスロット機等の回胴遊技機や封入式遊技機)について詳細に説明する。」 ウ 「【0148】 <アタッカユニットの構成> ここで、本発明に係るアタッカユニットの構成の一例について説明する。 ・・・ 【0153】 図11は、図10に示したアタッカユニット700を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は背面図である。 【0154】 アタッカユニット700は、板状の装飾カバー702を有し、可変入賞口234および第2特図始動口232は、この装飾カバー702の前方に設けられている。 【0155】 装飾カバー702の後方には透光性部品701を設けている。装飾カバー702は、例えば金メッキ等による装飾を施した部品であり、不透光性の部品である。装飾カバー702には、詳しくは後述するように貫通孔(開口)705を設けており、この貫通孔から後方の透光性部品701を見ることができる。 【0156】 透光性部品701には前方に突出する段差部706を設けており、透光性部品701の段差部706を装飾カバー702の貫通孔705に嵌合させることで、透光性部品701と装飾カバー702とを組付ける際の位置決めとなる。段差部706と貫通孔705は、全体が嵌合するものに限られず、少なくとも一部が係合するものであってもよい。 【0157】 透光性部品701は、その全体が透光性を有するであってもよく、少なくとも一部が透光性を有するものであってもよい。本実施例では、少なくとも段差部706が透光性を有するものである。また、透光性部品は着色されたものでもよい。 【0158】 透光性部品701の後方には、不図示の発光手段(例えば、LED基板に搭載した複数のLED)を配置し、前方からは、この発光手段からの光が、貫通孔705に嵌合した段差部706を介して視認可能である。 【0159】 図12は、図10に示したアタッカユニット700の分解斜視図である。 ・・・ 【0162】 図13は、図10に示したアタッカユニット700を示す図であって、(a)は背面図であり、(b)は(a)のA-A断面図である。 【0163】 図14は、図10に示したアタッカユニット700を示す図であって、(a)は背面図であり、(b)は(a)のB-B断面図である。 【0164】 図13(b)、図14(b)を参照してもわかるように、貫通孔705に嵌合している段差部706は、その厚みが一定ではない場合がある。例えば、透光性部品701は、透光性のある樹脂製部材であり、その成形時にヒケが発生する虞があるため、段差部706の裏側に意図的に凹部を形成し、ヒケの発生を防ぐことがある。このことから図13(b)、図14(b)に示す段差部706では裏側に凹部を形成しているため、段差部706の厚みは一定ではなく、中心部分は薄肉であり、縁部分は厚肉である。」 エ 「【0167】 上述のように、段差部706の厚みは、中心部分は薄肉であり、縁部分は厚肉である。透光性部品701は透光性を有するが、厚みの違いにより透過する光量に違いが生じる場合がある。例えば透光性部品701が有色で透光性のある部材の場合は、厚肉である場合の透過する光量の減少が顕著になる。こうなると、段差部706の後方の発光手段からの光を、段差部706を介して遊技者が見たとき、段差部706の中心部分では明るく、段差部706の縁部分では暗くなり、段差部706の発色に不自然さが現れてしまう場合がある。」 オ 「【0171】 ここで、図18の概念図を参照しながら本実施例におけるレンズカットの構成についてさらに説明する。 【0172】 図18は、本発明に係るレンズカットの構成を説明する概念図である。 【0173】 LED基板1708には、発光手段であるLED1708aを複数設けている。 【0174】 透光性部品1701は段差部1706を有し、段差部1706の裏面は凹んでいる。段差部1706の表面の長さは(L11+L12+L13)である。 【0175】 段差部1706の右側の縁部分の長さはL11であり、左側の縁部分の長さはL12であり、中心部分の長さはL13である。 【0176】 段差部1706の右側の縁部分の長さL11の箇所および左側の縁部分の長さL12の箇所の厚みはd12である。段差部1706の中心部分の長さL13の箇所の厚みはd11である。 【0177】 d11<d12であることから、本実施例では、段差部1706の右側の縁部分の長さL11の箇所および左側の縁部分の長さL12の箇所の裏面(発光手段1708aに対向する面、入射面)にレンズカット1707を設け、この箇所において集光を行い、段差部1706の中心部分の長さL13の箇所の裏面(発光手段1708aに対向する面)にはレンズカットは設けない領域1707aを配置して、特に集光せず、段差部の表面(出射面)において段差部1706の縁部が暗く、中心部が明るい状態の発生を防止するようにしている。 【0178】 なお、本実施例では、領域1707aにはレンズカットを設けないとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、領域1707aにもレンズカットを設けるが、この領域1707aのレンズカットは、レンズカット1707とは異なるものとし、例えば、レンズカット1707よりも集光する光量が小さいものとする場合がある。」 ・認定事項 カ 【図15】(a)、(b)、【図16】(a)、【図17】(a)、【図18】には、段差部706の凹部が、周壁状の縁部分により形成されていることが図示されている。 キ 【0177】の「・・・段差部1706の右側の縁部分の長さL11の箇所および左側の縁部分の長さL12の箇所の裏面(発光手段1708aに対向する面、入射面)にレンズカット1707を設け、この箇所において集光を行い、・・・」との記載、及び、【図18】の左右の縁部分の裏面に複数のレンズカット1707が形成されたことが図示されている。 また、上記認定カによると、縁部分は、周壁状に形成されているものである。 したがって、刊行物1には、段差部1706の周壁状の縁部分の裏面に集光を行う複数のレンズカット1707を設けたことが示されていると認められる。 さらに、【0178】の「・・・領域1707aにもレンズカットを設けるが・・・レンズカット1707よりも集光する光量が小さいものとする場合がある。」の記載からみて、刊行物1には、「領域1707aにもレンズカット1707よりも集光する光量が小さい複数のレンズカットを設け」ることが示されていると認められる。 よって、刊行物1には、段差部1706の周壁状の縁部分の裏面に集光を行う複数のレンズカット1707を設け、領域1707aにもレンズカット1707よりも集光する光量が小さい複数のレンズカットを設けたことが示されていると認められる。 上記ア?オの記載事項、及び、上記カ?キの認定事項を踏まえると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。 「a 発光手段(LED基板1708に搭載した複数のLED1708a)(【0158】、【0173】)と、前方に突出する段差部1706を設け、後方に発光手段を配置し、前方からは発光手段からの光が段差部706を介して視認可能である透光性部品701(【0156】、【0174】)とを有するアタッカユニット700(【0154】、【0155】、【0158】) を備えたぱちんこ機100において(【0009】)、 b、e、f 段差部706は、 裏面が凹んでおり(【0174】)、 凹部は、薄肉の中心部分と厚肉の周壁状の縁部分とから形成され(【0164】、認定カ)、 c 段差部1706の中心部分の裏面には、領域1707aが配置され(【0177】)、 d、g 段差部1706の周壁状の縁部分の裏面に集光を行う複数のレンズカット1707を設け、領域1707aにもレンズカット1707よりも集光する光量が小さい複数のレンズカットを設けた(認定キ) ぱちんこ機100。」 (2)当審による拒絶理由において刊行物2として提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願平3-41387号(実開平5-87719号)のCD-ROMには、図面と共に次の事項が記載されていると認められる。 ・記載事項 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、例えばハイマウントストップランプなど比較的に小面積のレンズ面を有する車両用灯具に適する構成を提供するものである。 ・・・ 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、前記したハイマウントストップランプ90を点灯したときには前記リブ93aが設けられた位置とレンズカット93bが設けられた位置とのレンズ93の表面の発光状態に明らかな差を生じて観者に違和感を与えると言う問題点を生ずると共に、前記リブ93aが設けられた位置に対応するレンズ93の表面は配光特性に関与しないとの理由で法規上の発光面積として認められない事態も生じ、この場合にはレンズ93、即ち、ハイマウントストップランプ90全体が大型化して運転者の後方視界も損ずるものと成る問題点も生じ、これらの点の解決が課題とされるものとなっていた。 【0004】 【課題を解決するための手段】 本考案は前記した従来の課題を解決するための具体的手段として、ハウジングと、該ハウジングに嵌合するためのリブが設けられたレンズとで成り、前記レンズには背面側からレンズカットが施されている車両用灯具において、前記リブの背面側には前記レンズの背面側に施されたレンズカットとデザイン的に連続するリブ部レンズカットが施されていることを特徴とする車両用灯具を提供することで、レンズ面の発光状態を均一なものとして、前記した従来の課題を解決するものである。」 イ 「【0005】 【実施例】 つぎに、本考案を図に示す一実施例に基づいて詳細に説明する。 図1に符号1で示すものは本考案に係る車両用灯具であり、この車両用灯具1は例えばハイマウントストップランプとしてリアウインドの車室内側に取付けられ、光源2が収納されたハウジング3には背面側にリブ4aとレンズカット4bとが設けられたレンズ4が取付けられる構成とされている点は従来例のものと同様である。 【0006】 しかしながら、本考案により前記リブ4aの背面側、即ち、頂面には例えば魚眼レンズ状とされた前記レンズカット4bとデザイン的に連続するように、同様な魚眼レンズ状として形成されたリブ部レンズカット4cが施されるものとされ、これにより前記光源2の点灯時には前記レンズカット4bを透過する光により形成されるパターンと、前記リブ部レンズカット4cを透過する光により形成されるパターンとがデザイン的に連続するものとされている。 【0007】 ここで、前記リブ部レンズカット4cについて更に詳細に説明を行えば、このリブ部レンズカット4cはレンズカット4bに比較してリブ4aの設けられた高さだけ光源2からの光の透過路が長くなるものであるので、前記レンズ4の前面で同一の光のパターンが得られるように、例えば魚眼レンズの球面半径を適宜に調整するなど行うことが好ましく、また、必要に応じては前記リブ4aの高さも同じ目的で適宜に調整が行われることが好ましい。」 ウ 「【0010】 【考案の効果】 以上に説明したように本考案により、リブの背面側にはレンズの背面側に施されたレンズカットとデザイン的に連続するリブ部レンズカットが施されている車両用灯具としたことで、第一にはレンズカットを透過する光とリブを透過する光とにレンズの前面での均一性を与えるものとして観者に違和感を与えないものとして、この種の車両用灯具の品質向上に優れた効果を奏するものである。 【0011】 また、第二にはリブを透過する光にもリブ部レンズカットにより適宜の配光特性を与えることで、このリブに対応するレンズの前面も有効発光面積として認定を受けられるものとして、発光面積の拡大を可能とし車両用灯具全体の小型化を可能として、運転者の後方視認性を損ずることの無いものとして実用性の向上にも優れた効果を奏するものである。」 ・認定事項 エ 【0005】には、「光源2が収納されたハウジング3には背面側にリブ4aとレンズカット4bとが設けられたレンズ4が取付けられる構成とされている点は従来例のものと同様である。」ことが記載され、【図1】には、リブ4aがレンズ4の周囲近傍に設けられたことが図示されている。 したがって、刊行物2には、ハウジング3に嵌合するためのリブ4aが背面側の周囲近傍に設けられたことが示されている。 上記ア?ウの記載事項、及び、上記エの認定事項から、刊行物2には、次の技術事項(以下「刊行物2に記載された技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「光源2が収納されたハウジング3と、ハウジング3に嵌合するためのリブ4aが背面側の周囲近傍に設けられたレンズ4とで成り、レンズ4には背面側からレンズカット4bが施されている灯具1において、リブ4aの背面側にはレンズ4の背面側に施されたレンズカット4bとデザイン的に連続するリブ部レンズカット4bが施され、 リブ部レンズカット4cはレンズカット4bに比較してリブ4aの設けられた高さだけ光源2からの光の透過路が長くなるものであるので、レンズ4の前面で同一の光のパターンが得られるように、魚眼レンズの球面半径や、リブ4aの高さを適宜に調整し、レンズ4の前面で同一の光のパターンが得られるようにした灯具(【0004】、【0005】、【0007】、認定事項エ)。」について記載されている。 4 対比 (1)刊行物発明における「段差部1706」の構成について まず、刊行物発明における「段差部1706」の構成について検討を加える。 刊行物発明において、「段差部1706」は、 構成aによると、 「透光性部品701」に「前方に突出」して設けられるものであり、 構成bによると、 「裏面が凹んで」おり、 「凹部は、薄肉の中心部分と厚肉の周壁状の縁部分とから形成され」るものである。 そうすると、刊行物発明における「段差部1706」は、中心部分と縁部分とから構成され、裏面が凹むように薄肉の中心部分と厚肉の周壁状の縁部分とから凹部を形成するものである。 そして、刊行物発明において、「周壁状の縁部分」は、「段差部1706」の「中心部分」の周囲に「裏面が凹」むように形成されることから、「周壁状の縁部分」を、「中心部分」を周囲に延在した領域に含まれる部分(縁部分イ)と、部分イから後方に延在する部分(縁部分ロ)とに分けて捉えることが可能である。 また、刊行物発明において、「前方に突出する段差部1706」は、「透光性部品701」に設けられていることから、「段差部1706」を構成する「縁部分ロ」は、「中心部分」と「縁部分イ」とを併せた部分を「縁部分イ」の裏面を介して「透光性部品701」に接続し、支持する機能を有するものである。 (2)対比 次に、本願発明と刊行物発明とを、分説に従い対比する。 (a)刊行物発明における「発光手段(LED基板1708に搭載した複数のLED1708a)」、「後方に発光手段を配置」することは、それぞれ、本願発明における「光源」、「光源の前方に配置され」ることに相当する。 そして、本願発明における「照明対象体」は、構成Bによると、「背面に」「支持部」が立設されたものである。 一方、上記(1)によると、刊行物発明における「段差部1706」の「縁部分ロ」は、「中心部分」と「縁部分イ」とを併せた部分を「縁部分イ」の裏面から「透光性部品701」に接続し、支持するものである。 したがって、刊行物発明における「段差部1706」の「中心部分」と「縁部分イ」とを併せた部分、「段差部1706」の「縁部分ロ」は、それぞれ、本願発明における「照明対象体」、「支持部」に相当する。 また、刊行物発明における「アタッカユニット700」、「ぱちんこ機100」は、それぞれ、本願発明における「電飾装置」、「遊技機」に相当する。 よって、刊行物発明における構成aの「発光手段と、前方に突出する段差部1706を設け、後方に発光手段を配置し、前方からは発光手段からの光が段差部706を介して視認可能である透光性部品701とを有するアタッカユニット700を備えたぱちんこ機100」は、本願発明における構成Aの「光源と前記光源の前方に配置されて前記光源から照明される照明対象体とを有する電飾装置を備えた遊技機」に相当する。 (b)上記(1)によると、刊行物発明における「段差部1706」は、「中心部分」と「縁部分イ」とを併せた部分を「縁部分イ」の裏面を介して「透光性部品701」に接続し、支持する機能を有する「縁部分ロ」を備えるものである。 したがって、刊行物発明における「段差部1706」は、本願発明における構成Bの「照明対象体を支持するために照明対象体の背面に立設された支持部を備え」るものである。 (c)刊行物発明における「段差部1706の中心部分の裏面に」「配置され」た「領域1707a」は、「中心部分」が「縁部分」と別に形成されたものであり、「段差部1706」の「後方に発光手段」が「配置」されていることからみて、本願発明における「照明対象体の背面に」「形成され」た「光源側へ露呈された露呈領域」に相当する。 そして、上記(1)によると、刊行物発明における「段差部1706」の「縁部分イ」は、「裏面」に「縁部分ロ」を延在させるものである。 そうすると、刊行物発明における「段差部1706」の「縁部分イ」の「裏面」は、「縁部分イ」が、本願発明の「照明対象体」に含まれるものであるから、本願発明における「照明対象体の背面に」「形成され」た「支持部の立設された支持部領域」に相当する。 したがって、刊行物における「段差部1706」の「中心部分」と「縁部分イ」とを併せた部分は、本願発明における構成Cの「背面には、支持部の立設された支持部領域と、支持部が立設されておらず光源側へ露呈された露呈領域とが形成され」た構成を備えるものである。 (d)上記(c)によると、刊行物発明における「領域1707a」は、本願発明における「露呈領域」に相当する。 そして、刊行物発明における構成dの「周壁状の縁部分の裏面」は、本願発明における構成Dの「支持部の背面」に相当する。 また、刊行物発明における「レンズカット1707」及び「レンズカット」は、「複数」設けられるものであり、それぞれのレンズカットが光屈折面を有することは、当業者にとって自明である。 したがって、刊行物発明における構成dの「段差部1706の周壁状の縁部分の裏面に集光を行う複数のレンズカット1707を設け、領域1707aにもレンズカット1707よりも集光する光量が小さい複数のレンズカットを設け」ることは、本願発明における構成Dの「露呈領域と支持部の背面には、複数の光屈折面を有するレンズカットが設けられ」ることに相当する。 (e)上記(1)によると、刊行物発明における「段差部1706」の「縁部分ロ」は、「中心部分」と「縁部分イ」とを併せた部分を「縁部分イ」の裏面を介して「透光性部品701」に接続し、支持する機能を有するものである。 したがって、刊行物発明における構成eの「段差部1706」の「縁部分ロ」は、本願発明における構成Eの「照明対象体の背面に設けられた支持部領域からさらに背面側へ向けて延びるように形成されて」いる構成を備えるものである。 (f)上記(1)によると、刊行物発明における「段差部1706」の凹部は、裏面が凹むように薄肉の中心部分と厚肉の周壁状の縁部分とから形成されているものである。 そうすると、刊行物発明における「段差部1706」に関して、凹部を構成する「縁部分イ」の「裏面」から延在する「縁部分ロ」が、凹部を形成する内側面と外側面を有することは明らかである。 したがって、刊行物発明における「段差部1706の周壁状の縁部分の裏面」と「領域1707a」とは、「縁部分ロ」を介して、「縁部分ロ」の内周面(外周面)の距離だけ離間しているといえる。 よって、刊行物発明における構成fの「段差部706」の「周壁状の縁部分」は、本願発明における構成Fの「支持部の背面は、前記支持部の側面を挟んで前記露呈領域から離間されて」いる構成を備えるものである。 (g)上記(f)によると、刊行物発明は、本願発明における「支持部の背面」と「露呈領域」とが「離間され」た構成を備えるものである。 したがって、刊行物発明における構成gの「レンズカット1707」、「レンズカット」を設ける構成は、本願発明における構成Gの「レンズカットは、支持部の背面と支持部の背面から離間された露呈領域とのそれぞれに設けられ」る構成に相当する。 上記(a)?(g)の対比から、本願発明と刊行物発明とは、 「A 光源と前記光源の前方に配置されて前記光源から照明される照明対象体とを有する電飾装置を備えた遊技機において、 B 前記照明対象体は、前記照明対象体を支持するために前記照明対象体の背面に立設された支持部を備え、 C 前記照明対象体の背面には、前記支持部の立設された支持部領域と、前記支持部が立設されておらず前記光源側へ露呈された露呈領域とが形成されており、 D 前記露呈領域と前記支持部の背面には、複数の光屈折面を有するレンズカットが設けられており、 E 前記支持部は、前記照明対象体の背面に設けられた前記支持部領域からさらに背面側へ向けて延びるように形成されており、 F 前記支持部の背面は、前記支持部の側面を挟んで前記露呈領域から離間されており、 G 前記レンズカットは、前記支持部の背面と前記支持部の背面から離間された前記露呈領域とのそれぞれに設けられている 遊技機。」 の点で一致し、構成Hに関し、次の点で相違する。 [相違点] 本願発明は、露呈領域に設けられたレンズカットと支持部の背面に設けられたレンズカットは、照明対象体を背面側から観察した場合に、露呈領域と支持部の背面との境界部分において光屈折面が連続するように形成されている(構成H)のに対して、 刊行物発明は、領域1707aに設けられた複数のレンズカットは、段差部1706の周壁状の縁部分の裏面に設けられた複数のレンズカット1707よりも集光する光量が小さいが、本願発明の構成Hを備えるか否か明らかでない点。 5 当審の判断 上記相違点について検討する。 本願発明と刊行物2に記載された技術事項とを対比する。 刊行物2に記載された技術事項における「レンズ4の背面側」、「リブ4aの背面側」は、それぞれ、本願発明における「露呈領域」、「支持部の背面」に相当する。 そして、刊行物2に記載された技術事項における「リブ4aの背面側にはレンズ4の背面側に施されたレンズカット4bとデザイン的に連続するリブ部レンズカット4bが施され」ることは、本願発明における「照明対象体を背面側から観察した場合に、露呈領域と支持部の背面との境界部分において光屈折面が連続するように形成されている」ことに相当する。 したがって、刊行物2に記載された技術事項は、上記相違点に係る本願発明の構成Hに相当するものであると認められる。 そして、刊行物発明と刊行物2に記載された技術事項とは、適用分野が異なるものの、背面からの光を透過させるよう作用し、周囲に支持部(リブ)を有しているレンズである点で共通するものである。 また、刊行物発明は、「凹凸部を形成したことによって」「発光態様にムラのない透光性部品を備えた遊技台を提供する」ことを目的とするものである。一方、刊行物2に記載された技術事項は、「リブ93aが設けられた位置とレンズカット93bが設けられた位置とのレンズ93の表面の発光状態に明らかな差を生じて観者に違和感を与えると言う問題点を生ずる」(【0003】)という課題を解決するものである。このように、刊行物発明と刊行物2に記載された技術事項とは、レンズ表面部とレンズ表面部の周囲のリブ表面部とにより形成された突状レンズにおいて、レンズ表面部とリブ表面部を含めた表面で、レンズ表面部とリブ表面部との発光状態に差が生じることを防止することを目的とするものである。 さらに、刊行物発明において、露呈領域に設けられたレンズカットと支持部の背面に設けられたレンズカットに関して、露呈領域に設けられたレンズカットにより集光される光量を、支持部の背面に設けられたレンズカットにより集光される光量よりも小さくするものである。この構成は、刊行物1の【0167】の「段差部706の厚みは、中心部分は薄肉であり、縁部分は厚肉である。透光性部品701は透光性を有するが、厚みの違いにより透過する光量に違いが生じる場合がある。」なる記載を勘案すると、照明対象体と支持部の厚みの違いによって生ずる露呈領域と支持部の背面に集光される光量の差をなくし、均一にするための構成であるといえる。これに対して、刊行物2に記載された技術事項は、光の透過路の長さを考慮して、魚眼レンズの球面半径や、リブ4aの高さを適宜に調整し、レンズ4の前面で同一の光のパターンが得られるようにするものであって、これも、リブ4bと、リブ4bの形成されていないレンズ4の光の透過路の長さの違いによて生じるリブ4b表面とレンズ4表面に集光される光量の差をなくし、均一にするための構成であるといえる。そうすると、刊行物発明と刊行物2に記載された技術事項とは、透過路の長さの違いを吸収して、レンズ表面における発光状態を、表面部とリブ表面部とで差をなくし均一なものとするという共通の機能を果たすものである。 これらのことからみて、刊行物発明に刊行物2に記載された技術事項を適用する動機付けは十分にある。 したがって、刊行物発明における「露呈領域に設けられたレンズカットと支持部の背面に設けられたレンズカット」に対して、刊行物2に記載された技術事項を適用し、両レンズカットをデザイン的に連続するものとし、かつ、両レンズカットにより集光される光量を均一にすべく、レンズの背面側から観察した場合に、両レンズカットの境界部分において光屈折面が連続するように形成し、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ところで、請求人は、平成29年10月10日付け意見書において、「本願発明は、支持部の背面と露呈領域とで光屈折面が連続するようにレンズカットを設けていますが、刊行物1には、このような構成については記載されていません。そして、刊行物1には、段差部の縁を強調するという目的があるため、刊行物1からは、本願発明のように、支持部の背面と露呈領域とで光屈折面が連続するようにレンズカットを設けるといった構成には容易には想到し得ないと思料します。 また、刊行物2は、本願発明や刊行物1とは技術分野が全く異なるものであり、さらに、縁を強調したい刊行物1とデザイン的な連続を求めた刊行物2では課題が異なり、これらを組み合わせる動機が存在しません。よって、刊行物2からは、容易には本願発明の構成に想到し得ないと思料します。」(第1頁下第4行?第2頁第5行)と主張する。 そこで、上記請求人の主張について検討する。 まず、請求人の「刊行物1には、段差部の縁を強調するという目的があるため、刊行物1からは、本願発明のように、支持部の背面と露呈領域とで光屈折面が連続するようにレンズカットを設けるといった構成には容易には想到し得ないと思料します。」なる主張について検討する。 上記において検討したように、刊行物発明は、「レンズ表面部とレンズ表面部の周囲のリブ表面部とにより形成された突状レンズにおいて、レンズ表面部とリブ表面部を含めた表面で、レンズ表面部とリブ表面部との発光状態に差が生じることを防止する」ことを目的とするものであって、請求人が主張するような「段差部の縁を強調する」ような課題は、刊行物1に記載も示唆もされていない。 次に、請求人の「刊行物2は、本願発明や刊行物1とは技術分野が全く異なるものであり、さらに、縁を強調したい刊行物1とデザイン的な連続を求めた刊行物2では課題が異なり、これらを組み合わせる動機が存在しません。」なる主張について検討する。 上記において検討したように、刊行物発明と刊行物2に記載された技術事項とは、背面からの光を透過させるよう作用し、周囲に支持部(リブ)を有しているレンズである点で共通することに加え、「レンズ表面部とリブ表面部との発光状態に差が生じることを防止する」という共通の目的を有し、さらに、透過路の長さの違いを吸収して、レンズ表面における発光状態を、表面部とリブ表面部とで差をなくし均一なものとするという共通の機能を果たすものである。 したがって、刊行物発明に刊行物2に記載された技術事項を適用する動機付けは十分にあるから、請求人の「これらを組み合わせる動機が存在しません」という主張は妥当でない。 ゆえに、上記請求人の主張を採用することはできない。 また、本願発明により奏される効果は、当業者が、刊行物発明及び刊行物2に記載された技術事項から予測し得る効果の範囲内のものであって、格別のものではない。 よって、本願発明は、刊行物発明及び刊行物2に記載のされた技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-11-02 |
結審通知日 | 2017-11-08 |
審決日 | 2017-11-21 |
出願番号 | 特願2015-31355(P2015-31355) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森田 真彦 |
特許庁審判長 |
服部 和男 |
特許庁審判官 |
蔵野 いづみ 長崎 洋一 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 特許業務法人小林国際特許事務所 |