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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  B25F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B25F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B25F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B25F
審判 全部申し立て 2項進歩性  B25F
管理番号 1336130
異議申立番号 異議2016-700552  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-20 
確定日 2017-11-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5850279号発明「電動工具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5850279号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-2〕、〔3-4〕について訂正することを認める。 特許第5850279号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5850279号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成22年4月27日に特許出願された特願2010-102469号の一部を、平成26年7月17日に新たな出願(特願2014-146615号)としたものであって、平成27年12月11日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成28年6月20日に特許異議申立人 株式会社マキタ(以下、単に「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年10月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年12月27日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して申立人から平成29年2月10日付けで意見書が提出された。
その後この訂正請求に対して平成29年3月7日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年4月6日に当該訂正請求書を補正する手続補正書の提出とともに意見書が提出されたものの、同年6月9日付けで取消理由(決定の予告)が通知された。
これを受けて特許権者は、同年8月14日に2回目の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)をするとともに意見書を提出し、当該2回目の訂正の請求に対して申立人から同年9月28日付けで意見書が提出されたものである。
なお、平成28年12月27日に請求され、平成29年4月6日にその訂正請求書が補正された訂正は、上記2回目の本件訂正請求により取り下げられたものとみなす。


2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の趣旨及び内容
本件訂正請求は、「訂正後の一群の請求項[1-2]、[3-4]ごとについて訂正することを求める」ことを趣旨とし、以下の事項の訂正を求める内容である。

ア 請求項[1-2]への訂正事項
a.請求項1に、「出力軸を有するブラシレスモータと、」の記載を追加する。(訂正事項1)
b.請求項1に、「該出力軸に取り付けられるファンと、」の記載を追加する。(訂正事項2)
c.請求項1の「モータ」を「該ブラシレスモータ」に訂正する。(訂正事項3)
d.請求項1に、「左右方向に分断される2つ割ハウジングであって、左側の左ハンドルハウジングと、右側の右ハンドルハウジングとを組み合わせることにより構成され、」の記載を追加する。(訂正事項4)
e.請求項1の「該第1ハウジングの外周面を覆う第2ハウジング」を、「該左ハンドルハウジングが該第1ハウジングの外周面の一部と重なる第2ハウジング」に訂正する。(訂正事項5)
f.請求項1及び2の「スイッチング素子」を「複数のスイッチング素子」に訂正する。(訂正事項6)
g.請求項1に、「該ファンの回転によって冷却風が発生し、」の記載を追加する。(訂正事項7)
h.請求項1の「該外周面に沿って風路が形成され」を「該外周面に沿って冷却風が流れる第1風路が形成され、」に訂正する。(訂正事項8)
i.請求項1に、「該ブラシレスモータを冷却するように該第1ハウジング内に該ブラシレスモータの該出力軸が延びる方向に沿って冷却風が流れる第2風路が形成され、」の記載を追加する。(訂正事項9)
j.請求項1に、「該第2ハウジングの該左ハンドルハウジングの内周面と該第1ハウジングの該外周面との間に該回路基板が位置するよう、該左ハンドルハウジングは該ブラシレスモータの径方向外側に位置する該第1ハウジングの該外周面の一部と重なる部分を有し、」の記載を追加する。(訂正事項10)
k.請求項1に、「該回路基板は、該第2ハウジングに設けられたトリガと該第1ハウジングの該外周面との間の空間を避けた位置で該ブラシレスモータの該出力軸に沿う方向に延びて配置され、」の記載を追加する。(訂正事項11)
l.請求項1に、「該第1ハウジングの内部に形成される該第2風路において、冷却風は、該ブラシレスモータの該出力軸が延びる方向である第1の方向に流れて該ブラシレスモータを冷却するとともに、該第1ハウジングの該外周面の一部と該左ハンドルハウジングの該内周面との間に形成される該第1風路において、冷却風は、該第1の方向とは反対の方向であって、該回路基板に沿った第2の方向に流れて該複数のスイッチング素子を冷却するよう構成される」の記載を追加する。(訂正事項12)
m.請求項2の「該モータの出力軸に取付けられたファン」を「該ファン」に訂正する。(訂正事項13)
n.請求項2の「該モータ」を「該ブラシレスモータ」に訂正する。(訂正事項14)
o.請求項2の「該風路」を「該第1風路及び該第2風路」に訂正する。(訂正事項15)

イ 請求項[3-4]への訂正事項
a.請求項3に、「出力軸を有するブラシレスモータと、」の記載を追加する。(訂正事項1)
b.請求項3に、「該出力軸に取り付けられるファンと、」の記載を追加する。(訂正事項2)
c.請求項3の「モータ」を「該ブラシレスモータ」に訂正する。(訂正事項3)
d.請求項3に、「左右方向に分断される2つ割ハウジングであって、左側の左ハンドルハウジングと、右側の右ハンドルハウジングとを組み合わせることにより構成され、」の記載を追加する。(訂正事項4)
e.請求項3の「該第1ハウジングの外周面を覆う第2ハウジング」を、「該左ハンドルハウジングが該第1ハウジングの外周面の一部と重なる第2ハウジング」に訂正する。(訂正事項5)
f.請求項3の「該第1ハウジングの該外周面と該第2ハウジングの内側との間に該外周面に沿って延びるように配置された回路基板と、」を「該第1ハウジングの該外周面と該第2ハウジングの内側との間に該外周面に沿って延びるように配置され、1つの面に複数のスイッチング素子を備えた回路基板と、」に訂正する。(訂正事項6)
g.請求項3に、「該ファンの回転によって冷却風が発生し、」の記載を追加する。(訂正事項7)
h.請求項3の「該外周面に沿って風路が形成され」を「該外周面に沿って第1風路が形成されるとともに、該第1ハウジングに形成された通路を介して該第1風路と繋がるように該第1ハウジングの内部に第2風路が形成され、」に訂正する。(訂正事項8)
i.請求項3に、「該第2ハウジングは、該左ハンドルハウジング及び該右ハンドルハウジングの後方に形成されてトリガが設けられるハンドル部と、該左ハンドルハウジングの前側部分に形成されて該第1ハウジングの該外周面の一部と重なるように前後方向に延びる回路基板収容部と、を有しており、」の記載を追加する。(訂正事項9)
j.請求項3に、「該回路基板は、該第1ハウジングの該外周面の一部と該左ハンドルハウジングの該回路基板収容部の内周面との間に位置するとともに、該複数のスイッチング素子を備えた面が該第1ハウジングの前後方向の幅の内側において前後方向に延び、」の記載を追加する。(訂正事項10)
k.請求項3に、「該第1ハウジングの内部に形成される該第2風路において、冷却風は、該ブラシレスモータの該出力軸が延びる方向である第1の方向に流れて該ブラシレスモータを冷却するとともに、該第1ハウジングの該外周面の一部と該左ハンドルハウジングの該回路基板収容部の該内周面との間に形成される該第1風路において、冷却風は、該第1の方向とは反対の方向であって、該回路基板の該複数のスイッチング素子を備えた面に沿った第2の方向に流れて該複数のスイッチング素子を冷却するよう構成される」の記載を追加する。(訂正事項11)
l.請求項4の「該モータの出力軸に取付けられたファン」を「該ファン」に訂正する。(訂正事項12)
m.請求項4の「該モータ」を「該ブラシレスモータ」に訂正する。(訂正事項13)
n.請求項4の「該風路」を「該第1風路及び第2風路」に訂正する。(訂正事項14)

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記ア及びイに分けられた各々の訂正は、一群の請求項に対して請求されたものである。そこで、以下一群ごとにその適否等について検討する。
ア 請求項〔1-2〕への訂正事項a.?o.について
訂正事項a、b、d、g、i、j、k、lは、いずれも対象となる請求項への追加を内容としたものであるから、訂正の目的は特許請求の範囲の減縮である。
また、訂正事項c及びnは、訂正前の「モータ」を、「ブラシレスモータ」であると限定する訂正に、訂正事項fは、訂正前の「スイッチング素子」を、「複数のスイッチング素子」であると限定する訂正であるから、同じく特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
続いて、訂正事項eは、訂正前の「該第1ハウジングの外周面を覆う第2ハウジング」を、「該左ハンドルハウジングが該第1ハウジングの外周面の一部と重なる第2ハウジング」へと訂正するもの、要するに、訂正前に「覆う」とされていた事項を「重なる」と変更しつつ、当該覆う、ないしは重なる部材を、「該左ハンドルハウジング」が「重なる」ものと限定し、「外周面」のどの範囲であるかが訂正前は任意であったものを、訂正により「外周面の一部と」と変更する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明、及び、限定による特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項hは、訂正前の「該外周面に沿って風路が形成され」を「該外周面に沿って冷却風が流れる第1風路が形成され、」とするものであるが、これは訂正事項iにより「第2風路」なる似通った名称のものが追加されたことに伴い、「第2風路」とは別の対象である訂正前の「風路」に対して区別すべく「第1の」を付加し、「冷却風が流れる」との語を差し挟むことにより明瞭化を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
同じく、訂正事項mは、訂正前の「該モータの出力軸に取付けられたファン」を「該ファン」に変更するものであるが、これは訂正事項bの追加に伴い、冗長な記載を簡略化したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項oは、訂正前の請求項2の「該風路」を「該第1風路及び該第2風路」に変更するものであるが、これは引用元の請求項1の風路が訂正事項h及びiにより第1風路及び第2風路へ訂正されたことに伴って同様に変更したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
以上訂正事項a.?o.により導入された事項は、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲ないし図面に記載した事項の範囲内であることが明らかであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正にあたらないことが明らかである。

イ 請求項[3-4]への訂正事項a.?n.について
訂正事項a、b、d、g、i、j、kは、いずれも対象となる請求項への追加を内容としたものであるから、訂正の目的は特許請求の範囲の減縮である。
また、訂正事項c及びmは、訂正前の「モータ」を、「ブラシレスモータ」であると限定する訂正に、訂正事項fは、訂正前の「回路基板」を、「1つの面に複数のスイッチング素子を備えた回路基板」と限定する訂正であるから、同じく特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
続いて、訂正事項eは、訂正前の「該第1ハウジングの外周面を覆う第2ハウジング」を、「該左ハンドルハウジングが該第1ハウジングの外周面の一部と重なる第2ハウジング」へと訂正するもの、要するに、訂正前に「覆う」とされていた事項を「重なる」と変更しつつ、当該覆う、ないしは重なる部材を、「該左ハンドルハウジング」が「重なる」ものと限定し、
「外周面」のどの範囲であるかが訂正前は任意であったものを、訂正により「外周面の一部と」と変更する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明、及び、限定による特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項hは、訂正前の「該外周面に沿って風路が形成され」を「該外周面に沿って第1風路が形成されるとともに、該第1ハウジングに形成された通路を介して該第1風路と繋がるように該第1ハウジングの内部に第2風路が形成され、」とするものであるが、これは訂正前の「風路」について外周面に沿う風路を「第1風路」と特定し、さらに別の「第2風路」も形成されること、及び、第1、第2の両風路が「繋がる」関係にあるとの事項をさらに特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項lは、訂正前の「該モータの出力軸に取付けられたファン」を「該ファン」に変更するものであるが、これは訂正事項bの追加に伴い、冗長な記載を簡略化したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
同じく、訂正事項nは、「該風路」を、「該第1風路及び第2風路」に変更するものであるが、これは訂正事項hに伴い、引用の表現を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

以上訂正事項a.?n.により導入された事項は、いずれも願書に添付した明細書、特許請求の範囲ないし図面に記載した事項の範囲内であることが明らかであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正にあたらないことが明らかである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-2〕、〔3-4〕について訂正を認める。


3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし4に係る発明(以下、各々「本件発明1」、「本件発明2」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定しようとするものである。
本件発明1
「出力軸を有するブラシレスモータと、
該出力軸に取り付けられるファンと、
内側に該ブラシレスモータを収容する第1ハウジングと、
左右方向に分断される2つ割ハウジングであって、左側の左ハンドルハウジングと、右側の右ハンドルハウジングとを組み合わせることにより構成され、該左ハンドルハウジングが該第1ハウジングの外周面の一部と重なる第2ハウジングと、
該第1ハウジングの該外周面と該第2ハウジングの内側との間に該外周面に沿って延びるように配置され、複数のスイッチング素子を備えた回路基板と、を備え、
該ファンの回転によって冷却風が発生し、
該複数のスイッチング素子を冷却するように該第1ハウジングの該外周面と該第2ハウジングの該内側との間に、該外周面に沿って冷却風が流れる第1風路が形成され、
該ブラシレスモータを冷却するように、該第1ハウジング内に該ブラシレスモータの該出力軸が延びる方向に沿って冷却風が流れる第2風路が形成され、
該第2ハウジングの該左ハンドルハウジングの内周面と該第1ハウジングの該外周面との間に該回路基板が位置するよう、該左ハンドルハウジングは該ブラシレスモータの径方向外側に位置する該第1ハウジングの該外周面の一部と重なる部分を有し、
該回路基板は、該第2ハウジングに設けられたトリガと該第1ハウジングの該外周面との間の空間を避けた位置で該ブラシレスモータの該出力軸に沿う方向に延びて配置され、
該第1ハウジングの内部に形成される該第2風路において、冷却風は、該ブラシレスモータの該出力軸が延びる方向である第1の方向に流れて該ブラシレスモータを冷却するとともに、該第1ハウジングの該外周面の一部と該左ハンドルハウジングの該内周面との間に形成される該第1風路において、冷却風は、該第1の方向とは反対の方向であって、該回路基板に沿った第2の方向に流れて該複数のスイッチング素子を冷却するよう構成されることを特徴とする電動工具。」
本件発明2
「該第1ハウジング及び該第2ハウジングの一方は吸気口を有するとともに、他方は排気口を有し、
該ファンの回転によって該吸気口から取込まれた冷却風は、該複数のスイッチング素子と該ブラシレスモータとを冷却するように該吸気口から該排気口に至る該第1風路及び該第2風路を流れて該排気口から排出されることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。」
本件発明3
「出力軸を有するブラシレスモータと、
該出力軸に取り付けられるファンと、
内側に該ブラシレスモータを収容する第1ハウジングと、
左右方向に分断される2つ割ハウジングであって、左側の左ハンドルハウジングと、右側の右ハンドルハウジングとを組み合わせることにより構成され、該左ハンドルハウジングが該第1ハウジングの外周面の一部と重なる第2ハウジングと、
該第1ハウジングの外周面と該第2ハウジングの内側との間に該外周面に沿って延びるように配置され、1つの面に複数のスイッチング素子を備えた回路基板と、を備え、
該ファンの回転によって冷却風が発生し、
該第1ハウジングの外周面と該第2ハウジングの該内側との間に、該外周面に沿って第1風路が形成されるとともに、該第1ハウジングに形成された通路を介して該第1風路と繋がるように該第1ハウジングの内部に第2風路が形成され、
該第2ハウジングは、該左ハンドルハウジング及び該右ハンドルハウジングの後方に形成されてトリガが設けられるハンドル部と、該左ハンドルハウジングの前側部分に形成されて該第1ハウジングの該外周面の一部と重なるように前後方向に延びる回路基板収容部と、を有しており、
該回路基板は、該第1ハウジングの該外周面の一部と該左ハンドルハウジングの該回路基板収容部の内周面との間に位置するとともに、該複数のスイッチング素子を備えた面が該第1ハウジングの前後方向の幅の内側において前後方向に延び、
該第1ハウジングの内部に形成される該第2風路において、冷却風は、該ブラシレスモータの該出力軸が延びる方向である第1の方向に流れて該ブラシレスモータを冷却するとともに、該第1ハウジングの該外周面の一部と該左ハンドルハウジングの該回路基板収容部の該内周面との間に形成される該第1風路において、冷却風は、該第1の方向とは反対の方向であって、該回路基板の該複数のスイッチング素子を備えた面に沿った第2の方向に流れて該複数のスイッチング素子を冷却するよう構成されることを特徴とする電動工具。」
本件発明4
「該第1ハウジング及び該第2ハウジングの一方は吸気口を有するとともに、他方は排気口を有し、
該ファンの回転によって該吸気口から取込まれた冷却風は、該回路基板と該ブラシレスモータとを冷却するように該吸気口から該排気口に至る該第1風路及び第2風路を流れて該排気口から排出されるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の電動工具。」

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して平成28年10月26日付けで特許権者に通知した取消理由、及び、平成29年6月9日付け取消理由(決定の予告)の要旨は、各々次のとおりであり、当該通知で採用しなかった異議申立の理由はない。

(平成28年10月26日付け取消理由)
ア 本件特許の請求項3?4に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
イ 本件特許の請求項1?4に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
ウ 本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点(取消理由通知書3-1?3-3参照)で不備のため、特許法第36条第4項第1号(取消理由通知書の3-1)、第6項第1号(同3-2)、及び第6項第2号(同3-3)に規定する要件を満たしていない。
エ 平成26年7月17日付け手続補正書、及び平成27年5月13日付け手続補正書でした補正は、各々「ブラシレスモータ」を「モータ」へ変更した事項、及び、「回路基板」に対し「該外周面に沿って延びるように配置され」と付した事項で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(平成29年6月9日付け取消理由(決定の予告))
平成26年7月17日付け手続補正による「ブラシレスモータ」を「モータ」へ変更する補正は、特許法該17条の2第3項の規定に適合しない補正であるから、特許法第113条第1号により取り消されるべきものである。
更に、他の取消理由アないしウについては、本件発明1ないし4のいずれもが上記新規事項を含む以上、審理することができない。

(3)甲号証の記載
ア 特許異議申立書で主たる証拠として引用された甲第1号証(特開2000-52279号公報)には、
・ 電動工具、実施例としては電気ハンマに関する発明であって、電動工具は、電動工具の駆動用モータと、該モータの回転子11に取り付けたファン11aと、該駆動用モータの回転数を制御する制御回路1と、工具の外郭となり該モータ及びファンを収納するアルミ製ハウジング3と、スイッチ8が設けられて該アルミ製ハウジング3の後方に位置する樹脂製ハンドル7とを有し、制御回路1を収納する樹脂製ケース(A)2は、樹脂製ケース(B)5に収納されつつ、樹脂製テールカバー10とアルミ製ハウジング3とにサンドイッチされることにより該ハウジング3内に収納されること、
・ 制御回路1の冷却は、ファン11aにより作られる冷却風が使用され、その冷却風の経路は、テールカバーの風穴10aから外気を吸い込み、吸い込まれた外気である冷却風は風穴10aの直上に作られた放熱板1a上の空間を下から上へ流れるようにされていること、
が記載されている。
以上の記載によれば、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「電動工具であって、
電動工具を駆動する駆動用モータと、該モータの回転子に取り付けたファン11aと、該駆動用モータの回転数を制御する制御回路1と、外郭となり該モータ及びファン並びに制御回路1を収納するアルミ製ハウジング3と、
スイッチ8が設けられて該アルミ製ハウジング3の後方に位置する樹脂製ハンドル7とを有し、
制御回路1を収納する樹脂製ケース(A)2は、樹脂製ケース(B)5に収納されつつ、樹脂製テールカバー10とアルミ製ハウジング3とにサンドイッチされることにより該ハウジング3内に収納され、
前記制御回路1の冷却は、ファン11aにより作られる冷却風が使用され、その冷却風の経路は、テールカバーの風穴10aから外気を吸い込み、吸い込まれた外気である冷却風は風穴10aの直上に作られた放熱板1a上の空間を下から上へ流れるようにされている、電動工具。」

イ 特許異議申立書で主たる証拠として引用された甲第3号証(特開平5-245770号公報)には、手持式電動工具の回転速度制御装置と題して図面と共に以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。
(甲3発明)
「横長の本体駆動部分ハウジングと、駆動モータ1の出力軸が上下方向を向くように内蔵するモータハウジング3の双方に、スイッチが設けられた握り4が後方から取り付けられた手持式電動工具であって、
前記電動工具の回転速度制御に供する電子部品群よりなるアセンブリとされる回転速度制御装置5は、プラスチック製ブロックである主バケット13に収納され、
該主バケット13は、ウェブ15を介して副バケット14と一体結合しつつ回転速度計6がその一部が突出するように装着され、主バケット13及び副バケット14内には収納された電子部品群を封止するため樹脂が注入されることで、制御装置5と回転速度計6とが一体結合されており、
前記一体結合された主バケット13及び副バケット14の回転速度計6の突出部分は、駆動モータ6の回転軸に結合された回転磁気リング2に対向する該モータハウジング3の内部スペースへ、握り4のハウジングに空けられた開口を介して取り付けられると共に、
前記主バケット13及び副バケット14の前記突出部分以外の部分は、握り4のハウジング内に収納される、手持式電動工具。」

ウ 特許異議申立書で主たる証拠として引用され、平成29年9月28日付け意見書においても主たる証拠として引用された甲第5号証(特開平11-129169号公報)には、電動工具と題して【従来の技術】欄に、図1及び4と共に以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されている。
(甲5発明)
「工具上部にハンドル部7を備え、該ハンドル部7の下部に横向きに配されたモータ2を収納するハウジング6を備えた電動工具であって、
該ハンドル部7の開放端部と、該ハウジング6とは互いに接続固定されており、
該ハンドル部7の開放端部と該ハウジング6との接続箇所には、風穴10が該ハウジング6側に設けられ、
該ハウジング6に収納されたモータ2の回転軸2aにはファン3が設けられ、
該ハンドル部7の接続箇所から離れた箇所であるハンドル部7に、風穴9が設けられるとともに、前記風穴9と前記風穴10との間に、速度制御用SCR等である電力素子1が位置するように構成され、
該ファン3の回転に伴い、該風窓9及び10を介して冷却風が流れ、これにより電力素子1が冷却される、電動工具。」

(4)判断
上記(2)に示した取消理由通知に記載した取消理由について、事案に鑑み、平成28年10月26日付け取消理由及び平成29年6月9日付け取消理由(決定の予告)取消理由の双方に挙げた取消理由エ(特許法第17条の2第3項)をまず検討する。

ア 特許法第17条の2第3項について
上記2.(1)アの訂正事項1、3、14及びイの訂正事項1、3、13により、訂正前の「モータ」の記載は、すべて「ブラシレスモータ」へと訂正されたので、訂正後の特許発明1?4はいずれも願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものとなり、取消理由エは解消された。

引き続き、他の取消理由について順に検討する。

イ 特許法第36条第4項第1号(平成28年10月26日付け取消理由通知書の3-1)、第6項第1号(同3-2)、及び第6項第2号(同3-3)について
上記(2)で取消理由ウとされる、特許法第36条第4項第1号、同法同条第6項第1号、及び、同法同条同項第2号の理由は各々以下の点を記載不備と指摘するものである。

a.発明の詳細な説明において、第1ハウジングであるモータハウジングを第2ハウジングであるハンドルハウジングが覆う図7?10が開示する構造(取消理由15)、及び、モータハウジング202Aに対する固定の構造(取消理由16)が十分に開示されておらず、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分にに記載されていない。
b.請求項1、3に記載された「覆う」という文言から把握される構造と発明の詳細な説明に開示している内容との不整合の点(取消理由17)、回路基板に対する特定の不足による課題解決手段の反映がない点(取消理由18)がある。
c.請求項1?4に係る発明の「第1ハウジングの外周面を覆う第2ハウジング」とされた記載における「覆う」とは、外周面の全体を覆うのか、外周面の一部を覆うことでも事足りるのかが不明確であり(取消理由19)、また、請求項1?4の「モータ」をその字義どおり解釈した場合解決課題と矛盾が発生するため、発明が不明確であり(取消理由20)、更に第1ハウジング、第2ハウジング、回路基板の三者の関係も不明確であり(取消理由21)、回路基板が「外周面に沿って延びるように配置され」るとの事項の技術的意味が理解不能(取消理由22)である。

そこで、前記a?cについて順次検討する。

a.(実施可能要件)について
申立人は、図7?10の図示は、左ハンドルハウジング202Dとモータハウジング202Aの結合が不明である点をまず採り上げているが、図8及び図9で左ハンドルハウジング202D(202C)の輪郭線とモータハウジング202Aの輪郭線とは明瞭に図示され、サイズ的にもモータハウジング202Aの左半分は右半分に比べて厚く形成されると解するほかなく、かつ、図8断面図には202D(202C)と202Aとが接している様が見てとれ、図9にはネジ(ビス)203も図示され、【0061】には左ハンドルハウジング202Dとモータハウジング202Aの結合が、当該ネジ(ビス)203により行われているとの記載もある。
そうすると、左ハンドルハウジング202Dとモータハウジング202Aの結合について当業者が実施できないとする事情は見当たらない。
また、申立人は、ネジ(ビス)203の固定に関し、回路基板222の固定を不明としているが、【0060】によるリブの支持が明らかとされている以上、支持が不可能とすべき事情はない。
以上総合すると、実施可能要件に関する発明の詳細な説明になんら不備は認められない。
b.(サポート要件)について
申立人の主張は、以下の2点の不備を主張するものである。
-訂正前の請求項1及び3の「覆う」という特定の対象が「第1ハウジングの外周面」とされていたため、全体を覆う場合と、部分的に覆う場合の双方が考えられるのに対して、発明の詳細な説明の開示は左側面にのみ部分的に重なって回路基板収容部202Fが規定される開示とされており、一致していないとするもの。
-「回路基板」について特定不足がある。
そこで、両主張について検討する。
前者は、請求項1に係る訂正事項3及び5の訂正、及び、請求項3に係る訂正事項4及び5の訂正により、各々「覆う」という記載が「重なる」とされ、また「重なる」の対象が「第1ハウジングの外周面の一部」であり、「左ハンドルハウジング」が「第1ハウジング」の「一部」に修正されたことにより、発明の詳細な説明の開示と一致したものとなったため、当該不備は解消された。
後者は、そもそも申立人の主張によると、発明の詳細な説明の開示に従えば、回路基板222はモータハウジング202Aの側面視内に収まるように配置されている以上、回路基板の延出は第1ハウジングを越えないものと解されるところ、請求項1及び3には延出方向長さに関する特定が欠けていることから、「モータハウジングの延出方向のサイズを小型化」する課題解決に関する事項の特定を欠いていることを要旨とするものである。
しかしながら、回路基板に関する特定として、訂正前後にわたって請求項1及び3には各々、「(回路基板が)該第1ハウジングの外周面と該第2ハウジングの内側との間に該外周面に沿って延びるように配置され」とされる事項が特定されていることから見て、回路基板の長さが第1ハウジングの延出方向長さを超えるものは予定されていないというべきであり、請求項1及び3の記載は、発明の詳細な説明で開示された範囲を越える、あるいは拡張されたものではないと認められる。
c.(明確性)について
申立人の主張によれば、請求項1?4に係る発明で「覆う」とされた範囲が不明である点、単に「モータ」とされた記載と、「スイッチング素子」が指す意味が不明である点、第1ハウジングに対する「第2ハウジング」の長さや、「回路基板」の長さが不明である点が挙げられている。
しかしながら、これらの点は訂正により「モータ」が「ブラシレスモータ」に訂正されたため、「スイッチング素子」が指す内容は自ずと明確になり、また、「覆う」が「一部と重なる」へと訂正されかつ「第2ハウジング」も「左ハンドルハウジング」の部分が「重なる」と訂正されたことにより、訂正前に「覆う」に起因して不明とされた「第2ハウジング」の長さも明確となった。
加えて、不明として挙げられた「回路基板」の長さについては、前記b.で説示したとおり、「(回路基板が)該第1ハウジングの外周面と該第2ハウジングの内側との間に該外周面に沿って延びるように配置され」とされる事項が特定されていることから見て、回路基板の長さが第1ハウジングの延出方向長さを超えるものは予定されていないというべきであり、不明瞭な記載ではないと認められる。

以上のとおりであるから、本件発明1?4に係る取消理由ウについてはいずれも解消したものと認められる。

上記(ア)及び(イ)の検討により、上記3.(1)に本件発明1?4として示した各発明は、その記載どおりのものと認められるので、引き続き取消理由ア及びイとして通知した、特許法第29条第1項第3号の理由と、同法同条第2項の理由について検討する。

ウ 特許法第29条第1項第3号について
本件発明3と甲1発明とを対比すると、甲1発明は、「電動工具」の「モータ」が「ブラシレスモータ」であるとした前提事項を有さないことに始まり、「左右方向に分断される2つ割ハウジングであって、左側の左ハンドルハウジングと、右側の右ハンドルハウジングとを組み合わせることにより構成され、該左ハンドルハウジングが該第1ハウジングの外周面の一部と重なる第2ハウジング」に相当する事項を有さず、その結果「左ハンドルハウジングの前側部分に形成されて該第1ハウジングの該外周面の一部と重なるように前後方向に延びる回路基板収容部」に相当する事項を有していない。そして、当該各事項により、本件発明3は、従来技術で整流子モータを用いていた電動工具におけるモータハウジングの延出方向のサイズを小型化するにあたり、単にモータをブラシレスモータにすることに伴うスイッチング素子の冷却スペースの確保をも両立し、小型化を図りつつ冷却も達成することができるという顕著な効果を奏するものであり、本件発明3は、甲1発明と同一とすることができない。
また、本件発明3を引用する本件発明4についても、本件発明4が本件発明3の発明特定事項を全て含むとされる関係から上述の事情と同様、甲1発明と同一とすることができない。
以上により、本件発明3及び4に係る取消理由アは解消されたと認める。

エ 特許法第29条第2項について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「電動工具を駆動する駆動用モータ」は、モータの種別を除き、本件発明1の「出力軸を有するブラシレスモータ」に相当し、
以下、同様に、
「該モータの回転子に取り付けたファン11a」は、回転子が駆動軸を有することが常識である点に鑑み、「該出力軸に取り付けられるファン」に、
「電動工具の外郭となり該モータ及びファン並びに制御回路1を収納するアルミ製ハウジング3」は、「制御回路1」が収納されている部分を除き、「内側に該ブラシレスモータを収容する第1ハウジング」に、
「スイッチ8が設けられて該アルミ製ハウジング3の後方に位置する樹脂製ハンドル7」は、「トリガ」が「設けられた」とする「第2ハウジング」に、
「ファン11aにより作られる冷却風」は、「該ファンの回転によって冷却風が発生」に、
「冷却風は風穴10aの直上に作られた放熱板1a上の空間を下から上へに流れるようにされている」ことは、「放熱板1a」が「制御回路1」の冷却のために設けられていることに鑑み、「冷却風」が「該回路基板に沿った第2の方向に流れて」「冷却する」ことに各々相当する。
そうすると両者は、以下の点で一致し、かつ相違する。
(一致点)
「出力軸を有するモータと、
該出力軸に取り付けられるファンと、
内側にモータを収容する第1ハウジングと、
トリガが設けられた第2ハウジングと、
回路基板と、を備え、
該ファンの回転によって冷却風が発生し、
冷却風は、回路基板に沿った方向に流れて冷却する、電動工具。」

(相違点)
1.電動工具が備えるモータ及び回路に関し、本件発明1は「ブラシレスモータ」であるとし、かつ、「複数のスイッチング素子を備えた」回路「基板」であるとしているのに対して、甲1発明は「ブラシレス」であるとの特定を有しない単なる「モータ」とし、かつ、「駆動用モータの回転数を制御する制御回路1」とされ、「複数のスイッチング素子」の存在及び基板の態様を直接有していない点。
2.本件発明1では、「ブラシレスモータ」を収容するハウジングを「第1ハウジング」とし、当該「第1ハウジング」の外周面の一部と「重なる」関係にある別の「2つ割ハウジング」とされる「トリガ」が設けられた「第2ハウジング」を備えるとしているのに対して、甲1発明は「トリガ」に相当する「樹脂製ハンドル7」とされた別のハウジング様の部材を有するものの、当該「樹脂製ハンドル7」は、2つ割ハウジングとする特定事項を備えておらず、また、本件発明1が有する「第2ハウジング」に関する「左側の左ハンドルハウジングと、右側の右ハンドルハウジングとを組み合わせることにより構成され、該左ハンドルハウジングが該第1ハウジングの外周面の一部と重なる」との事項を有するものではなく、「第1風路」に相当する空間を形成するものでもない点。
3.回路基板の収容に関して、本件発明1は「該第1ハウジングの外周面と該第2ハウジングの内側との間」でありかつ「該第2ハウジングに設けられたトリガと該第1ハウジングの該外周面との間の空間を避けた位置で該ブラシレスモータの該出力軸に沿う方向に延びて配置され」る空間にて回路基板が「該外周面に沿って延びるように配置され」るとされ、さらに、当該「該第1ハウジングの外周面と該第2ハウジングの内側との間」の空間は「第1風路」を形成するのに対して、甲1発明の対応する「制御回路1」は、基板の態様を備えるとはされておらず、また、当該「制御回路1」はまず「樹脂製ケース(A)2」に収納された後に「樹脂製ケース(B)5」に収納されて、直接的には「電動工具の外郭」である「アルミ製ハウジング3」内に「該モータ及びファン」と共に収納されるとしている点。
4.モータ及び回路(基板)の冷却に関し、本件発明1は「該ファンの回転によって冷却風が発生」すると共に、「該第1ハウジングの内部に形成される該第2風路において、冷却風は、該ブラシレスモータの該出力軸が延びる方向である第1の方向に流れて該ブラシレスモータを冷却するとともに、該第1ハウジングの該外周面の一部と該左ハンドルハウジングの該内周面との間に形成される該第1風路において、冷却風は、該第1の方向とは反対の方向であって、該回路基板に沿った第2の方向に流れて該複数のスイッチング素子を冷却するよう構成される」としているのに対して、甲1発明でも同様に「ファン11aにより作られる冷却風が使用され」るものの、当該冷却風は「その冷却風の経路は、テールカバーの風穴10aから外気を吸い込み、吸い込まれた外気である冷却風は風穴10aの直上に作られた放熱板1a上の空間を下から上へに流れるようにされている」に留まる点。

そこで、上記相違点について検討する。
そもそも甲1発明の電動工具は駆動源としてブラシレスモータを採用していないとする、上述の相違点1において本件発明1に係る相違が発生している。この相違は、本件発明1が有する技術的な課題、すなわち、ブラシレスモータでない通常のモータを駆動源として用いた場合には発生しない、電子整流機構を司るスイッチング素子の発熱対策をも解決しようとする技術的課題を甲1発明は有しないこととなるという、決定的な相違となる。
そして係る決定的な相違は、上記した相違点2ないし4の全ての相違点が「回路基板」の収納位置に関すること、及び、冷却の「風路」に関することとされている点から見て、多くの相違点を生じさせる結果を生んでいることでも十分に理解できる。
そうすると、本件発明1に対して当業者が容易想到となるためには、ブラシレスモータを駆動源とした事項を備えた公知発明を共通点とした形でないと他の公知発明との置換や付加等の適用を図る合理的な論理付けが困難となるとするのが相当である。そして、甲1発明は構成としてブラシレスモータを用いたものとされていないことが明らかであり、申立人が挙げた他の周知技術の証拠である甲第2号証ないし第5号証、並びに参考資料2にも、ブラシレスモータの使用を前提とした内容が記載されていない。また、申立人が後に追加した参考資料1はブラシレスモータを用いるものではあるが、容易想到とする理由の主たる証拠、すなわち、本件発明1と対比する主引用発明を認定する根拠となる証拠とはされていない。
よって、本件発明1は、甲1発明を主引用発明とした場合に、これを当業者が容易想到であると扱うにたる事情に欠けるので、その特許を取り消すことはできない。

また、申立人は、上記「(3)甲号証の記載」に記載した、甲3発明、或いは、甲5発明に基づいての容易想到を主張しているが、上記「(3)甲号証の記載」に記したとおり、甲3発明も甲5発明も、いずれの公知発明もブラシレスモータを用いるとした公知発明では無いことが明らかである以上、上述の理由と同様、これら甲3発明、或いは、甲5発明のいずれを主引用発明とした場合にも、当業者が容易想到であると扱うにたる事情に欠けるので、本件発明1に係る特許は取り消すことはできない。

さらに、本件発明1を引用する本件発明2、並びに、本件発明1と同じくブラシレスモータを用いることを発明特定事項として掲げた本件発明3及び4についても同様に、取り消すことはできない。

オ 申立人の意見について
申立人は本件訂正請求に対してした意見書の主旨からみて、大略[1]訂正要件違反、[2]本件発明に対する明確性要件違反、サポート要件違反、進歩性を主張していると解される。
しかしながら、以下に示すとおり[1]、[2]いずれの意見についても申立人の主張は認められない。

[1]の主張について
意見書の2、4、6ページの「イ」と、7、8ページの「ア」に訂正を違反とすべき理由が述べられているが、いずれもその趣旨は、発明の詳細な説明の開示内容以上の内容を、請求項〔1-2〕に係る訂正事項4及び5、10、12、並びに、請求項〔3-4〕に係る訂正事項9及び10、11が内容とすることをもって、新たな技術事項を導入する訂正であるという主張である。
しかしながら、上記の訂正事項は、いずれも特許請求の範囲の訂正であって、その訂正の適否は、訂正の前後で特許請求の範囲により定めた発明特定事項が特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項で規定する要件に適合するか否かにより判断されると解されるから、発明の詳細な説明による開示に起因するものではないことが明らかであって、申立人の主張は採用することができない。

[2]の主張について
[2]に関する申立人の主張を、各々の要件ごとに検討する。
(あ)明確性要件違反
意見書の4.(1)アについて、申立人の主張の趣旨は、請求項〔1-2〕と〔3-4〕の双方に共通する発明特定事項について、「結局右ハンドルハウジングと第1ハウジングとの関係について特定できない。」こと、すなわち特定事項が不足することを理由に訂正後の請求項1-4の記載が不明確であると主張している。
しかしながら、特許請求の範囲の記載は、特許権者が必要とする事項を特定することとされており、そうすると特定をしない事項は任意であると解されるため、別の事情、例えば、特許法第36条第6項第1号(サポート要件)で定められている要件に抵触することによらないかぎり、特定をしない事項があることをもって直ちに発明が不明確とされるには当たらないというべきである。
よって、申立人の上記の明確性違反の主張は、不明確と扱うに足る事由を形成するものではないため、採用できない。
また、申立人は、本件発明1及び3の「左右方向に分断される2つ割ハウジングであって、左側の左ハンドルハウジングと、右側の右ハンドルハウジングとを組み合わせることにより構成され、」との記載が、製造方法を示すものであるとも主張しているが、前記記載は「ハウジング」が「2つ割」であると最初に特定し、続けて当該「2つ割」は「左側の左ハンドルハウジングと、右側の右ハンドルハウジングとを組み合わせることにより構成され」ることを特定する記載であると認められる。そうすると、当該記載の中には、請求対象である電動工具という物の発明の一部を構成するハウジングに対して、組み立て等の製造工程を用いた記載が全く無く、2つ割と称するハウジングの構造に関する呼称により特定しようとする記載であると認識されるため、当該記載を製造方法による物を特定する記載であるとする申立人の主張は明らかな失当というべきである。
意見書の4.(2)アについての主張は、「左ハンドルハウジング」の形状、及び「第1ハウジング」の形状について、申立人が両者を「筒状或いは半筒状のハウジング」であると推量した上で、別にされた訂正事項12に係る発明特定事項との関係からみて理解できない(双方のハウジングの軸線が揃わず交差する場合を申立人は採り上げている)ことを理由に不明確であるとしたと解される。
しかしながら、請求項の記載事項同士を併せて見た場合に一部整合しない状況が生じる事態は自然に発生するものである。係る事情に対する発明の構成の理解としては、そのような不整合の事態は、当然のこととして除くとし、整合するものだけを発明の構成相当と見るのが合理的な解釈である。そうすると、発明の構成として整合する場合も十分に想定できるにも関わらず一部の不整合の発生の可能性のみをもって特許請求の範囲の記載を不明確とするのは、明らかに過ぎた主張であって、申立人の主張は妥当とすべき合理性を欠いている。
意見書の4.(3)アについての主張は、請求項1に係る発明特定事項である「該第2ハウジングに設けられたトリガと該第1ハウジングの該外周面との間の空間」が不明確であるという主張であるが、その記載から見て「トリガ」と「第1ハウジングの(該)外周面」との「間」を指すことは明らかであり、また当該申立人の不明確とすべき理由は上記発明特定事項を前提にした主張を形成してもいない点で著しく妥当性を欠いているので、失当である。
意見書の4.(4)アについての主張は、請求項1に係る訂正事項12に係る発明特定事項に対して、第2風路と第1風路とがそもそも繋がっているのかいないのかが不明であり、さらに、冷却風が第2風路を先として流れるのか、第1風路を先として流れるのかが不明であるとする、2つの不備を内容とするものである。
確かに、本件発明1及び2に係る請求項の記載はいずれも第1、第2風路の各々が繋がるとした直接的な記載は存在しない。とはいうものの、本件発明1及び2に係る請求項の記載には、「冷却風」の「発生」が「ブラシレスモータ」の「出力軸に取り付けられる」「ファン」の「回転」によることが特定されるとともに、当該冷却風の流れは、「第1風路」及び「第2風路」の双方を「形成」する点、及び、これら第1風路と第2風路の形成箇所は各々、前者が「第1ハウジング」の「外周面」と「第2ハウジング」の「内側」との「間」であり、後者は「第1ハウジング内」であって、第1風路と第2風路との形成箇所は第1ハウジングの外郭を境にした外スペースと内スペースになる点について、請求項1には特定がなされており、その他に冷却風を発生しえる事項は見当たらない。そうすると、第2風路と第1風路とが何らかの形で互いに発生した冷却風が連通する構造とされる、すなわち、第2風路と第1風路とは繋がっていると結論できるところまで、請求項の記載は十分であると考えられる。加えて、第2風路と第1風路とが互いに繋がっていることさえ果たされれば、発生する冷却風の方向として、第1風路を先とするか、第2風路を先とするかは、果たすべき冷却の達成から見て特段特定する必要は無いともいえる。また、どちらを先に冷却風が流れるかに関しては、本件特許明細書の【0010】及び【0019】(当初明細書では【0011】)の両方に、冷却風の方向を定め得る「吸気口」及び「排気口」の設置箇所に関して、第1ハウジング及び第2ハウジングのどちらかに定めるのではなく、いずれでもよいとする趣旨の記載がなされていることから見ても、2つの風路のどちらを先にするかの特定を強いて求めるべき状況にもない。
以上のことから、申立人の上記主張は、いずれも発明の構成を理解する上で明確性を失するとまではいえない。

(い)サポート要件違反
意見書の4.(1)ウについての主張は、本件の明細書の発明の詳細な説明には、右ハンドルハウジングが第1ハウジングとどのように重なるかが一切開示されていないことをもって、請求項1?4の記載が拡張ないし一般化されたとする不備と、発明の課題を解決するための手段の反映が特許請求の範囲には見られないとする不備との2点を挙げている。
しかし、前者の不備の主張は特許請求の範囲に前記ハウジング同士の右側の重なりについて記載されていないことから始まった主張であって、記載されていない発明特定事項について発明の詳細な説明に記載がないのは至極当然とみられ、サポート要件違反が問われるべきものではない。
後者の不備の主張は、そもそも意見書の4.(1)ウにて課題解決手段の不存在が具体的に説明されていない点から見て、明らかに主張の体裁を欠いたものと言え、失当である。
意見書の4.(2)ウについての主張は、発明の詳細な説明に、第1ハウジングと左ハンドルハウジングとが“互いの軸線が交差する状態で重なり合う構造”が開示されていないことをもって、特許請求の範囲の記載に拡張ないし一般化がなされた不備と、発明の課題を解決するための手段の反映が特許請求の範囲には見られないとする不備との2点を挙げている。
しかし、当該主張のうち前者は、そもそも特許請求の範囲に“互いの軸線が交差する状態で重なり合う構造”とされた記載はなく、主張の前提を著しく欠いており失当というべきである。また、後者の主張は、そもそも意見書の4.(2)ウにて課題解決手段の不存在が具体的に説明されていない点から見て、明らかに主張の体裁を欠いたものと言え、失当である。
意見書の4.(3)イについての主張は、訂正事項11に係る発明特定事項である「空間」に対して、“空間が第1ハウジングにある場合や凹部によって形成される場合等を含む”と解釈するなら、発明の詳細な説明に対応する記載がないため、課題を解決するための手段が特許請求の範囲には反映されていないし、発明の詳細な説明に記載した範囲を越えて特許を請求した不備があるというものである。
しかしながら上記「空間」は、“空間が第1ハウジングにある場合や凹部によって形成される場合等を含む”と特定されている事実は無く、係る事実に対応した開示が発明の詳細な説明にないことの方が尤もであるというべきであり、申立人の主張はサポート要件違反を問われる内容には至らないことが明らかであるので、失当である。
意見書の4.(4)ウについての主張は、訂正事項12に係る発明特定事項が、課題を解決するための手段の反映がなされていない不備、及び、発明の詳細な説明に記載した範囲を越えた請求をなしたとする不備を内容とするものであるとみられるが、上記「(あ)明確性要件違反」の、意見書の4.(4)アについての主張に関する説示で述べたとおり、発明の詳細な説明に記載された開示内容も、2つのスペースが互いに繋がりかつ一方から他方へ冷却風が流れるとした内容を開示していることが明らかな以上、サポート要件違反を問う謂われはなく、しかも申立人の主張をすべて見ても、課題を解決するための手段の反映を失しているとする論理を形成していないといえる事情もあるので、当該主張は明らかに失当である。
意見書の4.(5)イについての主張は、本件発明3について、課題を解決するための手段の反映がないことを要旨とした主張である。
しかしながら、本件特許における課題は、モータハウジングの延出方向のサイズを小型化することであり、その解決手段は、冷却を要する回路基板の収納位置を、モータハウジングの延出方向の小型化を妨げない箇所に選ぶこと、すなわち、本件発明3の特定事項とされた「回路基板収容部」が、「第1ハウジングの外周面」と「左ハンドルハウジングの前側部分に形成」された「第1ハウジングの外周面の一部と重なるように前後方向に延びる」ところの「内側」との間とされた事項により反映されていることが明らかであり、課題を解決するための手段が記載されている。よって、当該主張は失当である。
意見書の4.(6)イについての主張は、本件発明3について、特許請求の範囲の記載が、「冷却風」の流れとして、「第1風路」と「第2風路」のどちらが先に流れるとするのか特定されていないため、「第1風路」に先ず流れた後に「第2風路」に流れる開示のみがなされた、発明の詳細な説明の記載と一致しないことを挙げつつ、課題を解決するための手段が反映されていない不備を主張の要旨とするものである。
しかしながら、発明の詳細な説明の記載による開示は、実施例の一方向のみの開示に留まらず、本件特許明細書の【0010】及び【0019】(当初明細書では【0011】)の両方に、冷却風の方向を定め得る「吸気口」及び「排気口」の設置箇所に関して、第1ハウジング及び第2ハウジングのどちらかに定めるのではなく、いずれでもよいとする趣旨の記載がなされているので、冷却風の流れに関し第1、第2の風路のいずれが先となるかを定めなければならないとする特段の事情があるとも解せない。
そうすると、申立人の主張によって当該取消理由により特許を取り消すべき重大な不備があるとは認められない。

(う)進歩性違反
意見書の4.(7)ア?エについての主張は、本件特許が訂正されてもなお、甲第5号証に記載の発明を主たる発明として対比した場合、相違点はすべて甲第1,2,4号証や参考資料1,2に例示される周知技術の適用により、当業者が容易に想到し得たものとするものである。
この点については上記「エ 特許法第29条第2項について」で説示されたとおりである。


4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸を有するブラシレスモータと、
該出力軸に取り付けられるファンと、
内側に該ブラシレスモータを収容する第1ハウジングと、
左右方向に分断される2つ割ハウジングであって、左側の左ハンドルハウジングと、右側の右ハンドルハウジングとを組み合わせることにより構成され、該左ハンドルハウジングが該第1ハウジングの外周面の一部と重なる第2ハウジングと、
該第1ハウジングの該外周面と該第2ハウジングの内側との間に該外周面に沿って延びるように配置され、複数のスイッチング素子を備えた回路基板と、を備え、
該ファンの回転によって冷却風が発生し、
該複数のスイッチング素子を冷却するように該第1ハウジングの該外周面と該第2ハウジングの該内側との間に、該外周面に沿って冷却風が流れる第1風路が形成され、
該ブラシレスモータを冷却するように、該第1ハウジング内に該ブラシレスモータの該出力軸が延びる方向に沿って冷却風が流れる第2風路が形成され、
該第2ハウジングの該左ハンドルハウジングの内周面と該第1ハウジングの該外周面との間に該回路基板が位置するよう、該左ハンドルハウジングは該ブラシレスモータの径方向外側に位置する該第1ハウジングの該外周面の一部と重なる部分を有し、
該回路基板は、該第2ハウジングに設けられたトリガと該第1ハウジングの該外周面との間の空間を避けた位置で該ブラシレスモータの該出力軸に沿う方向に延びて配置され、
該第1ハウジングの内部に形成される該第2風路において、冷却風は、該ブラシレスモータの該出力軸が延びる方向である第1の方向に流れて該ブラシレスモータを冷却するとともに、該第1ハウジングの該外周面の一部と該左ハンドルハウジングの該内周面との間に形成される該第1風路において、冷却風は、該第1の方向とは反対の方向であって、該回路基板に沿った第2の方向に流れて該複数のスイッチング素子を冷却するよう構成されることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
該第1ハウジング及び該第2ハウジングの一方は吸気口を有するとともに、他方は排気口を有し、
該ファンの回転によって該吸気口から取込まれた冷却風は、該複数のスイッチング素子と該ブラシレスモータとを冷却するように該吸気口から該排気口に至る該第1風路及び該第2風路を流れて該排気口から排出されることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
出力軸を有するブラシレスモータと、
該出力軸に取り付けられるファンと、
内側に該ブラシレスモータを収容する第1ハウジングと、
左右方向に分断される2つ割ハウジングであって、左側の左ハンドルハウジングと、右側の右ハンドルハウジングとを組み合わせることにより構成され、該左ハンドルハウジングが該第1ハウジングの外周面の一部と重なる第2ハウジングと、
該第1ハウジングの該外周面と該第2ハウジングの内側との間に該外周面に沿って延びるように配置され、1つの面に複数のスイッチング素子を備えた回路基板と、を備え、
該ファンの回転によって冷却風が発生し、
該第1ハウジングの該外周面と該第2ハウジングの該内側との間に、該外周面に沿って第1風路が形成されるとともに、該第1ハウジングに形成された通路を介して該第1風路と繋がるように該第1ハウジングの内部に第2風路が形成され、
該第2ハウジングは、該左ハンドルハウジング及び該右ハンドルハウジングの後方に形成されてトリガが設けられるハンドル部と、該左ハンドルハウジングの前側部分に形成されて該第1ハウジングの該外周面の一部と重なるように前後方向に延びる回路基板収容部と、を有しており、
該回路基板は、該第1ハウジングの該外周面の一部と該左ハンドルハウジングの該回路基板収容部の内周面との間に位置するとともに、該複数のスイッチング素子を備えた面が該第1ハウジングの前後方向の幅の内側において前後方向に延び、
該第1ハウジングの内部に形成される該第2風路において、冷却風は、該ブラシレスモータの該出力軸が延びる方向である第1の方向に流れて該ブラシレスモータを冷却するとともに、該第1ハウジングの該外周面の一部と該左ハンドルハウジングの該回路基板収容部の該内周面との間に形成される該第1風路において、冷却風は、該第1の方向とは反対の方向であって、該回路基板の該複数のスイッチング素子を備えた面に沿った第2の方向に流れて該複数のスイッチング素子を冷却するよう構成されることを特徴とする電動工具。
【請求項4】
該第1ハウジング及び該第2ハウジングの一方は吸気口を有するとともに、他方は排気口を有し、
該ファンの回転によって該吸気口から取込まれた冷却風は、該回路基板と該ブラシレスモータとを冷却するように該吸気口から該排気口に至る該1風路及び第2風路を流れて該排気口から排出されるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-11-09 
出願番号 特願2014-146615(P2014-146615)
審決分類 P 1 651・ 55- YAA (B25F)
P 1 651・ 537- YAA (B25F)
P 1 651・ 536- YAA (B25F)
P 1 651・ 121- YAA (B25F)
P 1 651・ 113- YAA (B25F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 足立 俊彦大山 健  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 刈間 宏信
西村 泰英
登録日 2015-12-11 
登録番号 特許第5850279号(P5850279)
権利者 日立工機株式会社
発明の名称 電動工具  
代理人 金 佳恵  
代理人 金 佳恵  
代理人 城臺 顕  
代理人 小泉 伸  
代理人 市川 朗子  
代理人 城臺 顕  
代理人 福本 鉄平  
代理人 上田 恭一  
代理人 福本 鉄平  
代理人 石田 喜樹  
代理人 小泉 伸  
代理人 北澤 一浩  
代理人 北澤 一浩  
代理人 市川 朗子  

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