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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01N
管理番号 1336133
異議申立番号 異議2016-701052  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-11 
確定日 2017-11-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5937933号発明「薬剤揮散体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5937933号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕ついて訂正することを認める。 特許第5937933号の請求項4?6に係る特許を維持する。 特許第5937933号の請求項1?3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5937933号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成24年9月14日に特許出願され、平成28年5月20日に特許権の設定登録がされ、同年6月22日に特許公報が発行され、その後、その特許に対し、平成28年11月11日に特許異議申立人 土田 裕介(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年2月8日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年4月14日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件第1訂正請求」という。)があり、その訂正請求に対して特許異議申立人から平成29年5月25日付けで意見書が提出され、平成29年6月19日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成29年8月21日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件第2訂正請求」という。)があり、その訂正請求に対して特許異議申立人から平成29年10月12日付けで意見書が提出されたものである。
なお、本件第1訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件第2訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1?6のとおりである。

(1)訂正事項1
請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
訂正前の請求項4のうち、請求項1を引用するものについて独立形式にあらため、かつ、訂正前の請求項4の常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を「メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、及びエムペントリンの少なくとも1種」から「メトフルトリン、プロフルトリン、及びトランスフルトリンの少なくとも1種」に減縮し、樹脂担体を「前記樹脂担体は、エチレン-ビニルアセテート共重合体とポリエチレンとを混合したポリオレフィン系樹脂からなり、」と限定し、「前記エチレン-ビニルアセテート共重合体を構成するカルボン酸エステル単量体の、前記ポリオレフィン系樹脂に対する量は、1質量%以上30質量%以下である」と限定する。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項4のうち、請求項2を引用するものについて、訂正後の請求項4を引用して新たに請求項5とする。

(6)訂正事項6
訂正前の請求項4のうち、請求項3を引用するものについて、訂正後の請求項4を引用して新たに請求項6とする。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)上記訂正事項1,2,3は、請求項1,2,3をそれぞれ削除したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)上記訂正事項4は、訂正前の請求項4のうち、請求項1を引用するものについて独立形式にあらため、かつ、訂正前の請求項4の常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を「メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、及びエムペントリンの少なくとも1種」から「メトフルトリン、プロフルトリン、及びトランスフルトリンの少なくとも1種」に選択肢を削除し、樹脂担体を限定したものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を引用しないものとすること及び、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
また、樹脂担体を「前記樹脂担体は、エチレン-ビニルアセテート共重合体とポリエチレンとを混合したポリオレフィン系樹脂からなり、」と限定した点は、樹脂担体の種類を明細書において好適であるとしていたものに限定したもので、「前記エチレン-ビニルアセテート共重合体を構成するカルボン酸エステル単量体の、前記オレフィン系樹脂に対する量は、1質量%以上30質量%以下である」と限定する点も共重合体の好ましいとしていた組成範囲としたもので、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)上記訂正事項5は、訂正前の請求項4のうち、請求項2を引用するものについて、訂正後の請求項4を引用して新たに請求項5としたものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)上記訂正事項6は、訂正前の請求項4のうち、請求項3を引用するものについて、訂正後の請求項4を引用して新たに請求項6としたものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 一群の請求項について
訂正事項1?6に係る訂正前の請求項1?4について、請求項2?4はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正後の請求項1?6は、訂正事項1によって削除される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?4に対応する訂正後の請求項1?6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?6]についての訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次のとおりのものである。

【請求項1】
(削除)

【請求項2】
(削除)

【請求項3】
(削除)

【請求項4】
常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を樹脂担体に練り込んだ樹脂組成物を成形して得られる、複数のフィラメントが交差した平面状又は立体状のメッシュ構造を有する薬剤揮散体において、
前記フィラメントを断面に切断し、その重心を通る径のうち、最も長い径を最長径、最も短い径を最短径とするとき、
最短径が0.2?3.0mmであり、かつ、最長径/最短径の比率が1.2?5.0であり、
前記常温揮散性ピレスロイド系防虫成分が、メトフルトリン、プロフルトリン、及びトランスフルトリンの少なくとも1種であり、
前記樹脂担体は、エチレン-ビニルアセテート共重合体とポリエチレンとを混合したポリオレフィン系樹脂からなり、
前記エチレン-ビニルアセテート共重合体を構成するカルボン酸エステル単量体の、前記ポリオレフィン系樹脂に対する量は、1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする薬剤揮散体。
【請求項5】
前記最長径/最短径の比率が1.3?3.5であることを特徴とする請求項4に記載の薬剤揮散体。
【請求項6】
前記フィラメントの断面が、楕円状、もしくは多角形状であることを特徴とする請求項4又は5に記載の薬剤揮散体。 」

第4 取消理由
1 特許異議申立人が申し立てた取消理由
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は以下のとおりである。
理由:訂正前の請求項1?4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開平4-95001号公報

2 当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要
本件の第1訂正後の請求項4?6に係る特許に対して平成29年6月19日付けで当審が特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

理由:第1訂正後の請求項4?6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第1号証に記載の事項、及び本願出願日時点の技術常識(甲第2号証、乙第3号証)から、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項4?6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

第5 当審の判断
当審は、本件発明4?6は、当審の通知した取消理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
また、特許異議申立人が申し立てた取消理由によっても、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。
さらに、訂正前の請求項1?3は、訂正により削除されているので、申立てを却下する。

1 引用刊行物及び刊行物の記載
(1)引用刊行物
刊行物1:特開平4-95001号公報 (甲第1号証)
刊行物2:松尾 外6名「新規ピレスロイド系殺虫剤 メトフルトリン(SumiOne、エミネンス)の開発」「住友化学2005-II」,住友化学,平成17年11月30日,4?16頁(甲第2号証)
刊行物3:日本家庭用殺虫剤工業会「家庭用殺虫剤概論III」,2006年11月改訂,10?17頁(乙第3号証)
刊行物2?3は、本願出願時の技術常識を示すための文献である。

(2)刊行物の記載
(ア)刊行物1
本件出願前に頒布された刊行物であることが明らかな刊行物1には、以下の記載がある。
(1a)「通路を有する網目状プレート型樹脂本体に揮散性ピレスロイド系化合物を保持したことを特徴とするプレート型樹脂蒸散剤。」(特許請求の範囲)

(1b)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、揮散性薬剤を揮散させるプレート型樹脂蒸散剤に関する。
〔従来の技術〕
揮散性薬剤は、それを継続的に拡散するために、種々の手段が採られ、その一つとして揮散性薬剤を担体に保持させる方法がある。その担体の構造としていろいろなものが考えられ、揮散性を大きくするために表面積との関係で多孔質のものや、板状のものが提案されている。その中で、樹脂に有 効成分としてジクロルボスを練り込み、板状(プレート状)に成型したものが、VPプレートと名付けられ、一般に知られている。このように樹脂に揮散性薬剤を練り込んだものは、効力に持続性があり、取り扱いも簡便であるためその用途も広く、このものは「樹脂蒸散剤」と呼ばれている。この中、このものからプレート状に成型したものが「プレート型樹脂蒸散剤」と呼ばれている。
〔発明が解決しようとする課題〕
従来知られていたVPプレートのようなプレート型樹脂蒸散剤は単なる板状であったため、プレートの表裏だけが蒸散面となっており、それにより蒸散面積に制約を受け、大きな蒸散量を得られないという欠点があった。
本発明は、蒸散量が大きく、このため所要使用枚数を少なくすることができるプレート型樹脂蒸散剤を得ることを目的とするものである。」(1頁左下欄9行?右下欄15行)

(1c)「本発明の蒸散剤を形成する樹脂製のプレート型の本体は多数の網目を有し、網目状となっており、各網目は開口部を有し、内部が通路となっているので、表面積が大きく、かつ空気が流通しうるため蒸散量を大きく維持することができる。
網目の大きさは蒸散量を大きく維持しうる範囲で任意に選択することができ、例えば1?10mmとする。また網目を形成するリブは、強度上、また薬剤の保持上からある程度の幅を有することが必要であるが、例えば1?5mmとし、1?3mm程度が好ましい。網目の形状は、四角、丸でも三角でもよい。
プレート型の本体の形状は丸、四角形、五角形、それ以上の多角形状など;実用上あるいは意匠上から任意の形状とすることができる。その厚みは、一般には薄い方が薬剤揮散の面から有利であるが、成型性、強度などより、例えば0.5?5mm程度でよく、1?3mmとするのが好ましい。網目状の部分は弱いので、強度の点から外周部を少し厚みを増したリブとして構成するのが好ましい。」(2頁左上欄1?20行)

(1d)「本発明のプレート型樹脂本体に揮散性ピレスロイド系化合物(以下、単に「ピレスロイド系化合物」という)を保持させる手段としては、本体を構成する樹脂中に前記化合物を含有させておく手段を採るのが、一定量の薬剤を長期間継続して放出させる上から最も好ましい。そして、その樹脂中に前記化合物を含有させるためには、樹脂に前記化合物を練り込むと容易に製造することができ、かつ均一に含有させることができる。この前記化合物を樹脂に練り込んだものを成型して所定の形状を有するプレート型樹脂蒸散剤を製造するのが好ましい。」(2頁右上欄11行?2頁左下欄2行)

(1e)「実施例1
第1図に五角形の形状とした本発明のプレート型樹脂蒸散剤の正面図を示す。プレート型樹脂本体lは、多数の網目2を有し、各網目は裏へ連通する通路を形成しており、補強のため外周に外周部リブ3を有している。本体1の中央には、洋服ダンスのハンガー掛け用の棒を通すことができる係止部5が開いており、かつそれに連通する切欠部6が設けられ、この切欠部6を拡げてここからハンガー掛は用の棒を通すことにより、この本体lをハンガー掛け用棒に取り付けて使用することができる。この係止部5及び切欠部6の内周には内周部リブ4を設けて、同様に補強する。
本体1は、エチレンメチルメタクリレート(メチルメタクリレート20%)35部、高密度ポリエチレン55部にエムペントリンを練り込んだものを型に入れて成型加工して製造した。本体1の直径は100mm、係止部5の内径は33mmとした。網目部の厚さは1mmで、外周部リブ及び内周部リブの厚みは3mとした。また、網目の間隔は4mm、網目の周囲リブの幅は1mmとした。
本体lの下端に係止孔7を設け、ここに第2図に示すインジケーター9の引掛具11を通して、本体1にインジケーター9に取付けるようにすることができる。インジケーター9は中央に前記の化合物を用いた表示部10を有している。
前記したように、洋服ダンスの棒に取付けた本発明の樹脂蒸散剤では、網目の通路からもピレスロイド系化合物が蒸散し、通路を通して蒸散成分が移動するので、洋服ダンスの扉の開閉や衣類の出し入れのたびに、有効成分が洋服ダンス内に拡散して衣類のすみずみまで有効成分がゆきわたり、きわめて効率よく防虫効果を得ることができる。」(6頁右下欄3行?7頁左上欄15行)

(1f)「

」(7頁右下欄第1図)

(1g)「前記ピレスロイド系化合物を練り合わせるのに用いる樹脂としては、通常の合成樹脂が用いられるが、混和性とか混和に必要な加熱温度の点からポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンメチルメタクリレート、エチレンビニルアセテート、ポリメチルメタクリレート、アクリル系親油性重合体(協和ガス化学(株)製)、高吸油性樹脂KX-OA100?600(日本触媒(株)製)、特殊線状ポリマー(登録商標ウォセップ,東レ(株)製)等を1種若しくは2種以上組合せたものを用いるのが好ましい。」(3頁左上欄15行?右上欄5行)

(イ)刊行物2
本件出願前に頒布された刊行物であることが明らかな刊行物2には、以下の記載がある。
(2a)「メトフルトリンは、加熱蒸散分野で用いられているd-アレスリンやプラレトリンと比較すると太陽光下においてはるかに安定性であり、屋外分野での使用にも適していることが示唆された。」(8頁左欄10?13行)

(2b)「3.常温蒸散製剤
メトフルトリンの最大の特徴の一つは、・・・常温蒸散活性を有することである。メトフルトリンの常温蒸散製剤への適用例として、・・・樹脂等の担体に保持させた有効成分を非加熱、無動力で蒸散させて使用する自然蒸散製剤について説明する。
・・・
(2)自然蒸散製剤
有効成分を紙や樹脂に保持させ、非加熱、無動力で有効成分を蒸散させる自然蒸散製剤は、簡便に使用できることから、特に蚊取り分野において今後新たな展開が期待されている。本形態の製剤に適用可能な殺虫剤は、常温蒸散性、高活性、優れた安全性などの要素を兼ね備えていることが必要であり、それらの条件をメトフルトリンは全て備えている。」(10頁右欄2行?11頁右欄Fig7下8行)

(2c)「次に樹脂製剤について説明する。
樹脂は紙と比較して、耐久性、加工性に優れており、家屋内はもとより、厳しい使用環境が予想される屋外で用いる自然蒸散製剤の有効成分担体として最適である。メトフルトリン約4.4%を含有する格子状ポリオレフィン系樹脂製剤(8cm×11cm×0.5cm、12.3g)2個を使用してその残効試験をおこなった・・・その結果、メトフルトリン含有樹脂製剤は少なくとも8週間にわたって安定した効力を発揮することが判明した」(12頁右欄3?12行)

(ウ)刊行物3
本件出願前に頒布された刊行物であることが明らかな刊行物3には、以下の記載がある。

(3a)「○1 (審決注:原文は丸数字)有効性
家庭用殺虫剤の有効性を決定する最も重要な因子は,配合する有効成分の種類,分量並びに補助剤の選定である。表1に,各種ピレスロイドの効力比較を示す。」と記載され、表1には、エムペントリンとメトフルトリン含む各種ピレスロイドの効力比較表が、イエバエ成虫、アカイエカ成虫、チャバネゴキブリ成虫に対して示されている。

2 刊行物1に記載された発明
上記摘記(1a)には、通路を有する網目状プレート型樹脂本体に揮散性ピレスロイド系化合物を保持したプレート型樹脂蒸散剤が記載され、上記摘記(1e)には、その具体例として、エチレンメチルメタクリレート(メチルメタクリレート20%)35部と高密度ポリエチレン55部にエムペントリンを練り込んで成型加工して本体を製造し、網目部の厚さが1mmで、外周部リブ及び内周部リブの厚みは3mmで、網目の周囲リブ、つまり外周部リブ及び内周部リブの幅が1mmであることが記載されている。

したがって、刊行物1には、「エチレンメチルメタクリレート(メチルメタクリレート20%)35部と高密度ポリエチレン55部にエムペントリンを練り込んで成型加工して本体を製造し、網目部の厚さが1mmで、外周部リブ及び内周部リブの厚みは3mmで、幅が1mmである、通路を有する網目状プレート型樹脂蒸散剤」(以下、「刊行物1発明」という。)が開示されているといえる。

3 対比・判断
(3-1)本件発明4について
ア 本件発明4と刊行物1発明の対比
(ア)本件発明4と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「エムペントリン」は、本件明細書の【0012】の「[常温揮散性ピレスロイド系防虫成分]
前記の常温揮散性ピレスロイド系防虫成分としては、常温において空気中に揮散する性質を有し、25℃における蒸気圧が0.001Pa以上0.1Pa以下程度であるものが好ましい。具体的には、揮散性能と安全性等の点から、メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルトリン、及びエムペントリンの少なくとも1種があげられる。」(下線は当審にて追加、以下同様。)との記載から、本件明細書において、エムペントリンは常温揮散性ピレスロイド系防虫成分の具体例とされていること、摘記(1e)の「洋服ダンスの棒に取付けた本発明の樹脂蒸散剤では、網目の通路からもピレスロイド系化合物が蒸散し、通路を通して蒸散成分が移動するので、洋服ダンスの扉の開閉や衣類の出し入れのたびに、有効成分が洋服ダンス内に拡散して衣類のすみずみまで有効成分がゆきわたり、きわめて効率よく防虫効果を得ることができる。」との刊行物1の使用用途の記載からみて、エムペントリンが常温揮散性であることは明らかであるので、本件発明4の「常温揮散性ピレスロイド系防虫成分」に相当する。
また、摘記(1b)の「揮散性薬剤は、それを継続的に拡散するために、種々の手段が採られ、その一つとして揮散性薬剤を担体に保持させる方法がある。その担体の構造としていろいろなものが考えられ、揮散性を大きくするために表面積との関係で多孔質のものや、板状のものが提案されている。その中で、樹脂に有 効成分としてジクロルボスを練り込み、板状(プレート状)に成型したものが、VPプレートと名付けられ、一般に知られている。このように樹脂に揮散性薬剤を練り込んだものは、効力に持続性があり、取り扱いも簡便であるためその用途も広く、このものは「樹脂蒸散剤」と呼ばれている。この中、このものからプレート状に成型したものが「プレート型樹脂蒸散剤」と呼ばれている」との記載、摘記(1d)の本発明のプレート型樹脂本体に揮散性ピレスロイド系化合物を保持させる手段に関する記載を参酌すると、刊行物1発明の「エチレンメチルメタクリレート」と「高密度ポリエチレン」、「エチレンメチルメタクリレート」と「高密度ポリエチレン」「にエムペントリンを練り込んだもの」は、それぞれ、本件発明4の「樹脂担体」「常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を樹脂担体に練り込んだ樹脂組成物」に相当し、刊行物1発明の「プレート型樹脂蒸散剤」とは、本件発明4の「薬剤揮散体」に相当する。
さらに、摘記(1a)と摘記(1f)の図面からみて、刊行物1には、通路を有する網目状プレート型樹脂本体に揮散性ピレスロイド系化合物を保持したプレート型樹脂蒸散剤が記載されているといえ、刊行物1発明の「網目部」又は「外周部リブ及び内周部リブ」は、本件発明4の「複数のフィラメントが交差した平面状又は立体状のメッシュ構造」に相当し、刊行物1発明の「通路を有する網目状プレート型樹脂本体に揮散性ピレスロイド系化合物を保持したプレート型樹脂蒸散剤」は、本件発明4の「常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を樹脂担体に練り込んだ樹脂組成物を成形して得られる、複数のフィラメントが交差した平面状又は立体状のメッシュ構造を有する薬剤揮散体」に相当するといえる。
したがって、本件発明4と刊行物1発明とは、「常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を樹脂担体に練り込んだ樹脂組成物を成形して得られる、複数のフィラメントが交差した平面状又は立体状のメッシュ構造を有する薬剤揮散体」である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点4-1:フィラメントの断面の最長径と最短径に関して、本件発明4においては、最短径が0.2?3.0mmであり、最長径/最短径の比率が1.2?5.0であると特定しているのに対して、刊行物1発明においては、網目部の厚さが1mmで、外周部リブ及び内周部リブの厚みは3mmで、幅が1mmであると特定されている点

相違点4-2:常温揮散性ピレスロイド系防虫成分が、本件発明4ではメトフルトリン、プロフルトリン、及びトランスフルトリンの少なくとも1種であるのに対して、刊行物1発明においては、エムペントリンである点

相違点4-3:樹脂担体の種類及び組成に関して、本件発明4では、「エチレン-ビニルアセテート共重合体とポリエチレンとを混合したポリオレフィン系樹脂からなり、前記エチレン-ビニルアセテート共重合体を構成するカルボン酸エステル単量体の、前記オレフィン系樹脂に対する量は、1質量%以上30質量%以下であること」と特定されているのに対して、刊行物1発明においては、エチレンメチルメタクリレート(メチルメタクリレート20%)35部と高密度ポリエチレン55部からなるものである点

相違点の判断
以下、相違点について検討する。

(ア)相違点4-1について
a 外周部リブ及び内周部リブを本件発明1のフィラメントに対応させた場合
相違点4-1は、フィラメントの断面の最長径と最短径に関するものであるが、フィラメントとして刊行物1発明の外周部リブ及び内周部リブが対応するものとして検討すると、外周部リブ及び内周部リブの厚みは3mmで、幅が1mmであるのだから、刊行物1発明が、型による成形であることを考慮すると、その断面形状は、略長方形(厚みが3mm、幅が1mm)であると考えられ、最短径が1mm程度、最長径/最短径の比率は、(√10)/1=3.16程度になるといえる。
刊行物1発明の外周部リブ及び内周部リブの断面の正確な形状は不明ではあるが、本件発明1の最短径が0.2?3.0mmであり、最長径/最短径の比率が1.2?5.0であるとの特定には、断面形状のひずみを考慮してもなお、該当している蓋然性が高いといえる。
したがって、本件発明4のフィラメントとして、刊行物1発明の外周部リブ及び内周部リブを対応するものとして検討すると、相違点4-1は、実質的相違点とはいえない。

b 網目部を本件発明1のフィラメントに対応させた場合
また、フィラメントとして刊行物1発明の網目部を検討すると、厚さが1mmであるものの、網目部の幅に関して明らかでない。
しかしながら、摘記(1c)には、摘記(1e)の具体例に対応した一般的記載として、「本発明の蒸散剤を形成する樹脂製のプレート型の本体は多数の網目を有し、網目状となっており、各網目は開口部を有し、内部が通路となっているので、表面積が大きく、かつ空気が流通しうるため蒸散量を大きく維持することができる。
・・・また網目を形成するリブは、強度上、また薬剤の保持上からある程度の幅を有することが必要であるが、例えば1?5mmとし、1?3mm程度が好ましい。網目の形状は、四角、丸でも三角でもよい。
プレート型の本体の形状は丸、四角形、五角形、それ以上の多角形状など;実用上あるいは意匠上から任意の形状とすることができる。その厚みは、一般には薄い方が薬剤揮散の面から有利であるが、成型性、強度などより、例えば0.5?5mm程度でよく、1?3mmとするのが好ましい。網目状の部分は弱いので、強度の点から外周部を少し厚みを増したリブとして構成するのが好ましい。」と記載されているので、網目を形成するリブの幅を好ましいとされる1?3mm程度とすることは当業者であれば容易である。
したがって、その場合、刊行物1発明の編目部の厚さが1mmであるので、型による成形であることを考慮すると、断面形状は、略正方形(厚みが1mm、幅が1mm)又は略長方形(厚みが1mm、幅が3mm)であると考えられ、最短径が1mm程度、最長径/最短径の比率は、(√2)/1=1.41程度?(√10)/1=3.16程度になるといえる。
網目部の断面の正確な形状は不明であるが、編目部の厚さが1mmであり、網目を形成するリブの幅として好ましいとされる1?3mm程度を採用したものにおいては、本件発明4の最短径が0.2?3.0mmであり、最長径/最短径の比率が1.2?5.0であるとの特定には、断面形状のひずみを考慮してもなお、該当している蓋然性が高いといえる。
したがって、相違点4-1は、刊行物1発明及び刊行物1に記載された事項から、当業者が容易になし得る技術的事項である。

(イ)相違点4-2について
刊行物1発明は、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分がエムペントリンを用いており、その他のピレスロイド系防虫成分の記載を参酌しても、メトフルトリン、トランスフルトリン、プロフルトリンは示されておらず、記載されているに等しい事項でもないので、相違点4-2は、実質的な相違点である。

次に、相違点4-2が、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易になし得るものであるかどうかを検討する。

刊行物1発明は、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分として、エムペントリンが使用されているが、刊行物1には、「本発明で用いるピレスロイド系化合物としては次のようなものが挙げられる。・・・」(2頁左下欄12行?3頁左上欄14行)として、実施例で用いたエムペントリン以外のものも使用することが想定されるものである。

そして、刊行物2の摘記(2a)、刊行物3の摘記(3a)に記載されるとおり、メトフルトリンは、殺虫剤成分として周知慣用の化合物であると同時に、刊行物2の摘記(2b)摘記(2c)に記載されるように、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分であって、樹脂を有効成分として樹脂製剤を形成する有効成分としても、本願出願時周知の化合物となっていたといえ、刊行物3の摘記(3a)に記載されるように、少なくともエムペントリンと同等以上の有効性を有していたことも技術常識となっていたといえる。

したがって、刊行物1発明の常温揮散性ピレスロイド系防虫成分として、常温揮散性ピレスロイド系防虫成分であることも、樹脂を担体として樹脂製剤を形成する有効成分としても、メトフルトリンが知られているのであるから、エムペントリンに換えてメトフルトリンを使用する程度のことは、当業者が容易に想起できるといえる。

したがって、相違点4-2は、刊行物1発明及び刊行物1に記載された事項から、当業者が容易になし得る技術的事項である。

(ウ)相違点4-3について

刊行物1発明は、エチレンメチルメタクリレートと高密度ポリエチレンとを樹脂担体としている点で、本件発明4とは、樹脂担体の種類が違うため、実質的な相違点である。

次に、相違点4-3が刊行物1に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得るものであるかどうかを検討する。

刊行物1発明は、エチレンメチルメタクリレートと高密度ポリエチレンを樹脂担体としたもので、薬剤揮散体の樹脂担体の材質が本件発明4と異なるものであり、刊行物1には、本件発明4の「エチレン-ビニルアセテート共重合体とポリエチレンとを混合したポリオレフィン系樹脂」が記載されていないし、その「エチレン-ビニルアセテート共重合体を構成するカルボン酸エステル単量体の、前記オレフィン系樹脂に対する量は、1質量%以上30質量%以下であること」を特定する記載もない。
実施例として記載されている刊行物1発明において、樹脂担体の種類を変更し、構成する単量体の割合を特定する動機付けはないし、「カルボン酸エステル単量体」の割合を1質量%以上30質量%以下とすることが適宜設定可能なものともいえない。

刊行物1の摘記(1g)には、混和性とか混和に必要な加熱温度の点から挙げた練り合わせるのに用いる樹脂の例示として、ポリエチレンやエチレンビニルアセテートが多くの例とともに記載され、2種以上組み合わせても良いとの記載はあるが、上述のとおり、刊行物1発明を認定した実施例1は、担体材料と常温揮散性ピレスロイド系防虫成分の組み合わせ、それらの割合、成型体の形状を一体として記載したものであると理解すべきであり、本件発明4の「エチレン-ビニルアセテート共重合体とポリエチレンとを混合したポリオレフィン系樹脂からなり、前記エチレン-ビニルアセテート共重合体を構成するカルボン酸エステル単量体の、前記オレフィン系樹脂に対する量は、1質量%以上30質量%以下であること」と特定することは当業者が容易になし得る技術的事項とはいえない。

(ウ)効果について
そして、本件発明4は、本件明細書の【0094】の表1、【0095】の表2に示されるとおり、本件発明4の防虫成分、樹脂担体、フィラメント断面形状を有することにより、ブリード性、光安定性、防虫成分起算量、防虫効力に関する効果が確認できる。

ウ 小括
本件発明4は、刊行物1に記載された発明及び本願の出願日時点の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

(3-2)本件発明5について
ア 本件発明5について
本件発明5は、本件発明4において、「最長径/最短径の比率が1.3?3.5であること」を特定した発明である。

イ 対比
したがって、本件発明5と刊行物1発明を対比すると、相違点は以下のとおりである。

相違点5-1:フィラメントの断面の最長径と最短径に関して、本件発明5においては、最短径が0.2?3.0mmであり、かつ、最長径/最短径の比率が1.3?3.5であると特定しているのに対して、刊行物1発明においては、網目部の厚さが1mmで、外周部リブ及び内周部リブの厚みは3mmで、幅が1mmである点

相違点5-2:常温揮散性ピレスロイド系防虫成分が、本件発明5ではメトフルトリン、プロフルトリン、及びトランスフルトリンの少なくとも1種であるのに対して、刊行物1発明においては、エムペントリンである点

相違点5-3:樹脂担体の種類及び組成に関して、本件発明4では、「エチレン-ビニルアセテート共重合体とポリエチレンとを混合したポリオレフィン系樹脂からなり、前記エチレン-ビニルアセテート共重合体を構成するカルボン酸エステル単量体の、前記オレフィン系樹脂に対する量は、1質量%以上30質量%以下であること」と特定されているのに対して、刊行物1発明においては、エチレンメチルメタクリレートと高密度ポリエチレンからなるものである点

相違点の判断
(ア)相違点5-1について
前記(3-1)イ(ア)aで検討したのと同様に、外周部リブ及び内周部リブを本件発明5のフィラメントに対応させた場合、相違点5-1は、実質的相違点とはいえない。
また、(3-1)イ(ア)bで検討したのと同様に、網目部を本件発明5のフィラメントに対応させた場合、相違点5-1は、刊行物1発明及び刊行物第1に記載された事項から、当業者が容易になし得る技術的事項である。

(イ)相違点5-2について
本件発明4で検討したとおり、相違点4-2は実質的な相違点であり、同様に、相違点5-2は実質的な相違点であり、本件発明5は、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。
そして、本件発明4の相違点4-2で検討したのと同様に、相違点5-2は、刊行物1発明及び刊行物2,3に記載された本願の出願日時点の技術常識から当業者が容易に想起できる技術的事項である。

(ウ)相違点5-3について
本件発明4で検討したとおり、相違点4-3は実質的な相違点であり、同様に、相違点5-3は実質的な相違点であり、本件発明5は、刊行物1に記載された発明であるとはいえない。
そして、本件発明4の相違点4-3で検討したのと同様に、相違点5-3は、刊行物1発明及び刊行物2,3に記載された本願の出願日時点の技術常識から当業者が容易に想起できる技術的事項であるともいえない。

エ 小括
本件発明5は、刊行物1に記載された発明及び本願の出願日時点の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

(3-3)本件発明6について
ア 本件発明6について
本件発明6は、本件発明4又は5において、フィラメントの断面を「楕円状、もしくは多角形状であること」と特定した発明である。

イ 対比判断
したがって、本件発明6と刊行物1発明を対比すると、相違点としては、前記相違点4-1から4-3又は相違点5-1から5-3に加えて以下の相違点6-4が存在する。

相違点6-4:フィラメントの断面形状に関して、本件発明6においては、楕円状、もしくは多角形状であると特定しているのに対して、刊行物1発明においては、断面形状があきらかでない点

そして、(3-1)及び(3-2)で検討したとおり、相違点4-3又は相違点5-3は、刊行物1に記載されている発明及び刊行物1に記載された技術的事項及び出願時の技術常識から当業者が容易になし得る技術的事項ではないのであるから、その他の相違点の判断にかかわらず、本件発明6は、刊行物1号証に記載された発明及び本願の出願日時点の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 小括
本件発明6は、刊行物1に記載された発明及び本願の出願日時点の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

4 特許異議申立人の主張について
(1)特許異議申立人は、特許異議の申立てにより、訂正前の請求項1?4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である旨主張しているが、上述のとおり、本件第2訂正請求に基づく訂正後の請求項4?6は、甲第1号証に記載された発明とは、実質的相違点を有しており、特許異議申立人の主張には理由がない。

(2)また、特許異議申立人は、平成29年10月12日付け意見書により、甲第1号証のピレスロイド系化合物と練り合わせるのに用いる樹脂に関する記載を引用して、最適材料の検討過程で容易に試みることができるものであるとか、操作の結果として単量体の分子量や混合比にもよるが本件発明4の数値範囲となる蓋然性が高い旨の主張をしている。
しかしながら、最適材料の検討過程で、どのような動機付けで、本件発明4の樹脂担体の材料に変更し、数値範囲を設定できるのかの説明もないし、操作の結果として数値範囲となる蓋然性を示す証拠も何ら示されていないので特許異議申立人の主張を採用することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明4ないし6は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、特許法第29条第2項に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2項の規定により、取り消されるべきものではない。
したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項4ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項4ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、訂正前の請求項1ないし3は、削除されているので、請求項1ないし3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
常温揮散性ピレスロイド系防虫成分を樹脂担体に練り込んだ樹脂組成物を成形して得られる、複数のフィラメントが交差した平面状又は立体状のメッシュ構造を有する薬剤揮散体において、
前記フィラメントを断面に切断し、その重心を通る径のうち、最も長い径を最長径、最も短い径を最短径とするとき、
最短径が0.2?3.0mmであり、かつ、最長径/最短径の比率が1.2?5.0であり、
前記常温揮散性ピレスロイド系防虫成分が、メトフルトリン、プロフルトリン、及びトランスフルトリンの少なくとも1種であり、
前記樹脂担体は、エチレン-ビニルアセテート共重合体とポリエチレンとを混合したポリオレフィン系樹脂からなり、
前記エチレン-ビニルアセテート共重合体を構成するカルボン酸エステル単量体の、前記ポリオレフィン系樹脂に対する量は、1質量%以上30質量%以下であることを特徴とする薬剤揮散体。
【請求項5】
前記最長径/最短径の比率が1.3?3.5であることを特徴とする請求項4に記載の薬剤揮散体。
【請求項6】
前記フィラメントの断面が、楕円状、もしくは多角形状であることを特徴とする請求項4又は5に記載の薬剤揮散体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-10-30 
出願番号 特願2012-202787(P2012-202787)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A01N)
P 1 651・ 113- YAA (A01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 瀬下 浩一  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 瀬良 聡機
木村 敏康
登録日 2016-05-20 
登録番号 特許第5937933号(P5937933)
権利者 大日本除蟲菊株式会社
発明の名称 薬剤揮散体  
代理人 田川 孝由  
代理人 福山 尚志  
代理人 北川 政徳  
代理人 鎌田 文二  
代理人 田川 孝由  
代理人 鎌田 文二  
代理人 北川 政徳  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 三上 敬史  
代理人 鎌田 直也  
代理人 城戸 博兒  
代理人 鎌田 直也  

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