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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F23G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F23G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F23G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F23G
管理番号 1336138
異議申立番号 異議2016-700272  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-04 
確定日 2017-11-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5811501号発明「廃棄物溶融処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5811501号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 特許第5811501号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5811501号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成23年11月17日に特許出願され、平成27年10月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成28年4月4日に特許異議申立人土田裕介(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年8月18日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年10月24日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して平成28年12月8日に異議申立人から意見書が提出され、その後、平成29年1月25日付けで訂正拒絶理由が通知されたところ、その指定期間内に特許権者から何ら応答がなく、平成29年4月3日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、その指定期間内である平成29年6月6日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して平成29年8月25日に異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成29年6月6日に請求された訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、次のアないしクの訂正をする。
ア 「石炭コークス同士間に生じる空隙により燃焼ガスの上昇通気と溶融物の降下通液とを確保する高温火格子を形成することに必要な最小限の供給量で、石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入し、溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成する高温火格子形成工程と、」との記載から、「石炭コークス同士間に生じる空隙により燃焼ガスの上昇通気と溶融物の降下通液とを確保する高温火格子を形成することに必要な最小限の供給量で、」を削除するとともに、「高温火格子形成工程と、」の後に、「バイオマス成形物を廃棄物溶融炉に投入し、廃棄物溶融炉下部まで降下到達させるバイオマス成形物投入降下工程と、熱分解燃焼残渣を溶融する熱分解燃焼残渣溶融工程とを有し、」を追加する訂正をする。
イ 高温火格子形成工程について、「高温火格子形成工程は 石炭コークスにより形成された高温火格子が、石炭コークス同士間に生じる空隙により燃焼ガスの上昇通気と溶融物の降下通液とを確保することに必要な最小限の石炭コークス供給量で、石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入することとし、」を追加する訂正をする。
ウ バイオマス成形物投入降下工程について、「バイオマス成形物投入降下工程は、次の第一ないし第四の行程を有し、」を追加する訂正をする。
エ バイオマス成形物投入降下工程について、「その灰分中にSiO_(2)を80重量%以上、K_(2)Oを0.3重量%以上含むバイオマス原料を常温で、又は炭化温度より低い温度に加熱しながら加圧成形したバイオマス成形物を廃棄物溶融炉に投入し、」と記載されているのを、「第一の工程が、その灰分中にSiO_(2)を80重量%以上、K_(2)Oを0.3重量%以上含む組成であり、灰分の融点が800℃より低いバイオマス原料を、常温で、又はバイオマス原料の揮発し始める温度より低い温度に加熱し、バイオマス原料の揮発分の揮発を抑制しながら加圧成形することにより、揮発分を含有しているバイオマス成形物を、廃棄物溶融炉に投入する工程であり、」に訂正する。
オ バイオマス成形物投入降下工程について、「バイオマス成形物のバイオマス粒子が熱分解されて生じる灰分粒子の表面を溶融して融液を生じせしめ、」と記載されているのを、「第二の工程が、第一の工程で廃棄物溶融炉に投入されたバイオマス成形物を加熱してバイオマス原料粒子を熱分解して灰分粒子を発生させ、さらに灰分粒子の表面を灰分の融点温度以上にして灰分を溶融して、灰分粒子の表面に融液を発生させる工程であり、」に訂正する。
カ バイオマス成形物投入降下工程について、「融液により、バイオマス粒子が熱分解されて生じる炭化物粒子、熱分解途中のバイオマス粒子及び灰分粒子を融着してそれぞれの粒子を結合させ、」と記載されているのを、「第三の工程が、廃棄物溶融炉内でバイオマス成形物のバイオマス原料粒子が熱分解されて生じる炭化物粒子、熱分解途中のバイオマス原料粒子及び灰分粒子とを、第二の工程で灰分粒子の表面の溶融により生じた融液により融着して、バイオマス成形物を構成するそれぞれの粒子を結合させ、バイオマス成形物の崩壊を抑制し成形物形状を維持するように処理する工程であり、」に訂正する。
キ バイオマス成形物投入降下工程について、「成形物形状を維持したままバイオマス成形物を溶融炉下部まで降下到達させるバイオマス成形物投入降下工程と、」と記載されているのを、「第四の工程が、第三の工程により崩壊を抑制され成形物形状を維持するように処理されたバイオマス成形物を、廃棄物溶融炉内を下降する間の崩壊を抑制されることによりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制しながら、廃棄物溶融炉下部まで降下到達させる工程であり、」に訂正する。
ク 熱分解燃焼残渣溶融工程について、「高温火格子で、石炭コークスと、バイオマス成形物とを燃焼して発生する燃焼熱により熱分解燃焼残渣を溶融する熱分解燃焼残渣溶融工程とを有する」と記載されているのを、「熱分解燃焼残渣溶融工程は、高温火格子形成工程で形成した高温火格子で、石炭コークスと、バイオマス成形物投入降下工程によりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制して廃棄物溶融炉下部まで降下したバイオマス成形物の揮発分および固定炭素とを燃焼して発生する燃焼熱により熱分解燃焼残渣を溶融することとする」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2について、訂正事項1における請求項1の訂正に伴い、訂正事項1のアないしクの訂正と同様の訂正をする。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3について、訂正事項1における請求項1の訂正に伴い、訂正事項1のアないしクの訂正と同様の訂正をするとともに、次のケの訂正をする。
ケ 「バイオマス成形物を構成する粒子が緻密に圧接されており、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉内を下降する間に、粒子が融着結合され崩壊することなく、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉下部まで成形物形状を維持して到達するようにする性状を有する」を追加する訂正をする。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4について、訂正事項1における請求項1の訂正に伴い、訂正事項1のアないしクの訂正と同様の訂正をするとともに、次のコの訂正をする。
コ 「バイオマス成形物が廃棄物溶融炉内を下降し下部まで到達するまでの時間を、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉下部まで到達するまでの間に放出される揮発分の割合を抑制する長さにする重量である」を追加する訂正をする。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的
ア 訂正事項1
アの訂正は、(ア-1)「石炭コークス同士間に生じる空隙により燃焼ガスの上昇通気と溶融物の降下通液とを確保する高温火格子を形成することに必要な最小限の供給量で、」を削除するとともに、(ア-2)請求項1に係る廃棄物の溶融処理方法について、高温火格子形成工程に加え、バイオマス成形物を廃棄物溶融炉に投入し、廃棄物溶融炉下部まで降下到達させるバイオマス成形物投入降下工程と、熱分解燃焼残渣を溶融する熱分解燃焼残渣溶融工程とを有していることを限定するものである。
イの訂正は、高温火格子形成工程について、石炭コークスにより形成された高温火格子が、石炭コークス同士間に生じる空隙により燃焼ガスの上昇通気と溶融物の降下通液とを確保することに必要な最小限の石炭コークス供給量で、石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入することを限定するものである。
ウの訂正は、バイオマス成形物投入降下工程について、バイオマス成形物投入降下工程は、第一ないし第四の工程を有していることを限定するものである。
エの訂正は、バイオマス成形物投入降下工程の第一の工程について、(エ-1)バイオマス原料の灰分の融点が800℃より低いこと、(エ-2)上記バイオマス原料を、常温で、又は該バイオマス原料の揮発分が揮発し始める温度より低い温度に加熱し、バイオマス原料の揮発分の揮発を抑制しながら加圧成形することによりバイオマス成形物が得られること、(エ-3)バイオマス成形物が揮発分を含有していることを限定するものである。
オの訂正は、バイオマス成形物投入降下工程の第二の工程について、(オ-1)第一の工程で廃棄物溶融炉に投入されたバイオマス成形物を加熱してバイオマス原料粒子を熱分解して灰分粒子を発生させること、(オ-2)灰分粒子の表面を灰分の融点温度以上にして灰分を溶融して、灰分粒子の表面に融液を発生させることを限定するものである。
カの訂正は、バイオマス成形物投入降下工程の第三の工程について、(カ-1)廃棄物溶融炉内でバイオマス成形物の炭化物粒子、熱分解途中のバイオマス原料粒子及び灰分粒子とを、第二の工程で灰分粒子の表面の溶融により生じた融液により融着して、バイオマス成形物を構成するそれぞれの粒子を結合させること、(カ-2)バイオマス成形物の崩壊を抑制し成形物形状を維持するように処理することを限定するものである。
キの訂正は、バイオマス成形物投入降下工程の第四の工程について、(キ-1)バイオマス成形物が、第三の工程により崩壊を抑制され成形物形状を維持するように処理されていること、(キ-2)バイオマス成形物が、廃棄物溶融炉内を下降する間の崩壊を抑制されることにより該バイオマス成形物の揮発分の放出を抑制されていることを限定するものである。
クの訂正は、熱分解燃焼残渣溶融工程について、(ク-1)高温火格子が高温火格子形成工程で形成されていること、(ク-2)高温火格子で、石炭コークスとともに、バイオマス成形物投入降下工程によりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制して廃棄物溶融炉下部まで降下したバイオマス成形物の揮発分および固定炭素が燃焼することを限定するものである。
以上から、(ア-1)の訂正により文言の削除が行われているが、削除された内容は、イの訂正により追加されており、それ以外の訂正は請求項に記載した発明を限定するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 訂正事項2
訂正事項2は、訂正事項1による請求項1の訂正に伴い、該請求項1を引用する請求項2について、訂正事項1のアないしクの訂正をするものである。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

ウ 訂正事項3
訂正事項3は、訂正事項1による請求項1の訂正に伴い、該請求項1と該請求項1を引用する請求項2とを引用する請求項3について、訂正事項1のアないしクの訂正をするとともに、ケの訂正をするものである。このケの訂正は、みかけ密度が1.2g/cm^(3)以上であるバイオマス成形物について、該バイオマス成形物を構成する粒子が緻密に圧接されており、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉内を下降する間に、粒子が融着結合され崩壊することなく、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉下部まで成形物形状を維持して到達するようにする性状を有することを限定するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

異議申立人は、平成29年8月25日付けの意見書において、ケの訂正について、「バイオマス成形物のみかけ密度が1.2g/cm^(3)以上」であることは、ケの訂正に係る「バイオマス成形物を構成する粒子が緻密に圧接されており、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉内を下降する間に、粒子が融着結合され崩壊することなく、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉下部まで成形物形状を維持して到達するようにする性状を有する」という事項の十分条件であるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたしたものではなく、訂正の目的違反に該当すると主張している。
しかしながら、ケの訂正は、バイオマス成形物の性状を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
してみると、上記主張は理由がない。

エ 訂正事項4
訂正事項4は、訂正事項1による請求項1の訂正に伴い、該請求項1又は請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4について、訂正事項1のアないしク及び訂正事項3のケの訂正をするとともに、コの訂正をするものである。このコの訂正は、1個当たりの重量が100g以上であるバイオマス成形物について、該バイオマス成形物が廃棄物溶融炉内を下降し下部まで到達するまでの時間を、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉下部まで到達するまでの間に放出される揮発分の割合を抑制する長さにする重量であることを限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

異議申立人は、平成29年8月25日付けの意見書において、コの訂正について、「バイオマス成形物は、・・・到達するまでの時間を、・・・放出される揮発分の割合を抑制する長さにする重量である」という特定は、「バイオマス成形物は、みかけ密度が1.2g/cm^(3)以上であり、1個あたりの重量が100g以上であること」を言い換えたものに過ぎず、特許請求の範囲の減縮を目的としたものではなく、訂正の目的違反に該当すると主張している。
しかしながら、コの訂正は、バイオマス成形物の重量を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものである。
してみると、上記主張は理由がない。

(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
ア 訂正事項1
アの訂正のうち(ア-1)の訂正は、単なる文言の削除である。この(ア-1)の訂正で削除された内容はイの訂正で追加される内容に含まれている。また、(ア-2)の訂正は、訂正前の請求項1の記載に基づいている。つまり、(ア-2)の訂正は、訂正前の請求項1にもともと含まれている内容について、該請求項1での記載の位置を移動したものである。
イの訂正は、訂正前の請求項1の記載に基づいている。このイで追加された訂正は、上記(ア-1)の訂正で削除された内容を含んでいる。
ウの訂正は、バイオマス成形物投入降下工程が、第一ないし第四の工程を有していることを明確にするためだけに追加された記載であり、実質的に新たな記載内容の追加を伴っていない。
エの訂正のうち、(エ-1)の訂正は、例えば明細書の段落【0025】の記載に基づいている。この段落【0025】第1及び2行には、バイオマス原料の灰分の融点が800℃より低いことが記載されている。(エ-2)の訂正は、例えば明細書の段落【0026】の記載に基づいている。この段落【0026】には、バイオマス成形物は、バイオマス原料を常温で、又は炭化温度より低い温度に加熱しながら加圧成形した成形物とすることができること、そして、炭化温度とはバイオマス原料の揮発分が揮発し始める温度であることが記載されている。(エ-3)の訂正は、例えば明細書の段落【0027】の記載に基づいている。この段落【0027】第1及び2行には、バイオマス成形物が揮発分を含有していることが記載されている。
オの訂正のうち、(オ-1)の訂正は、例えば明細書の段落【0015】の記載に基づいている。この段落【0015】第8ないし10行には、バイオマス成形物を溶融炉に投入すると、該バイオマス成形物のバイオマス粒子が熱分解されて灰分粒子が生じることが記載されている。(オ-2)の訂正も、例えば明細書の段落【0015】の記載に基づいている。この段落【0015】第9ないし11行には、灰分粒子の表面が融点温度以上になると、溶融して該灰分粒子の表面に融液が生じることが記載されている。
カの訂正のうち、(カ-1)の訂正は、例えば明細書の段落【0015】の記載に基づいている。この段落【0015】第11ないし13行には、融液が、バイオマス成形物のバイオマス粒子が熱分解されて生じる炭化物粒子、熱分解途中のバイオマス粒子及び灰分粒子とを融着させ、バイオマス成形物を構成するそれぞれの粒子を結合させることが記載されている。(カ-2)の訂正も、例えば明細書の段落【0015】の記載に基づいている。この段落【0015】第13及び14行には、バイオマス成形物が崩壊することを抑制されることにより、該バイオマス成形物が溶融炉下部まで成形物形状を維持して到達することが記載されている。
キの訂正のうち、(キ-1)の訂正は、例えば明細書の段落【0015】の記載に基づいている。この段落【0015】第13及び14行には、バイオマス成形物が崩壊することを抑制されることにより、該バイオマス成形物が成形物形状を維持していることが記載されている。(キ-2)の訂正も、例えば明細書の段落【0015】の記載に基づいている。この段落【0015】第13ないし15行には、バイオマス成形物が崩壊することが抑制されて、該バイオマス成形物が溶融炉下部まで成形物形状を維持することにより、溶融炉内を下降する間の揮発分の放出が抑制されていることが記載されている。
クの訂正のうち、(ク-1)の訂正は、訂正前の請求項1の記載に基づいている。つまり、(ク-1)の訂正は、訂正前の請求項1にもともと含まれている内容について、該請求項1での記載の位置を移動したものである。(ク-2)の訂正は、例えば明細書の段落【0015】および段落【0045】の記載に基づいている。段落【0015】第18行には、バイオマス成形物が溶融炉内を下降する間の該バイオマス成形物の揮発分の放出が抑制されていることが記載されている。また、段落【0045】第14及び15行には、炉内の下部シャフト部で、バイオマス成形物中の揮発分と、石炭コークスおよびバイオマス成形物中の固定炭素が燃焼することが記載されている。
したがって、訂正事項1のアないしクのそれぞれの訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

異議申立人は、平成29年8月25日付けの意見書において、カ及びキの訂正は、「第三の工程」において、特定の「処理」を実施することを新たに規定するものであるが、当該訂正は新たな技術的事項を導入するものであると主張している。
しかしながら、明細書等の記載を参酌すると、カ及びキの訂正により追加された「処理」とは、特定の人為的な「処理」を実施することを意味するのではなく、廃棄物溶融炉内で所定の現象、すなわち、「バイオマス成形物のバイオマス原料粒子が熱分解されて生じる炭化物粒子、熱分解途中のバイオマス原料粒子及び灰分粒子とを、第二の工程で灰分粒子の表面の溶融により生じた融液により融着して、バイオマス成形物を構成するそれぞれの粒子を結合させ、バイオマス成形物の崩壊を抑制し成形物形状を維持する」ことが発生することを意味するに過ぎないと認める。
してみると、上記主張は理由がない。

イ 訂正事項2
訂正事項2は、訂正事項1による請求項1の訂正に伴い、該請求項1を引用する請求項2について、訂正事項1のアないしクの訂正と同様の訂正をするものである。したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 訂正事項3
訂正事項3は、訂正事項1による請求項1の訂正に伴い、該請求項1と該請求項1を引用する請求項2とを引用する請求項3について、訂正事項1のアないしクの訂正と同様の訂正をするとともに、ケの訂正をするものである。このケの訂正は、例えば明細書の段落【0029】の記載に基づいている。この段落【0029】第2ないし6行には、バイオマス成形物のみかけ密度が1.2g/cm^(3)以上であれば、バイオマス成形物を構成する粒子が緻密に圧接されているので、バイオマス成形物が溶融炉内を下降する間に、高温雰囲気下で粒子が融着結合され崩壊することなくバイオマス成形物が溶融炉下部まで成形物形状を維持して到達することができることが記載されている。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

エ 訂正事項4
訂正事項4は、訂正事項1による請求項1の訂正に伴い、該請求項1又は請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4について、訂正事項1のアないしク及び訂正事項3のケの訂正と同様の訂正をするとともに、コの訂正をするものである。このコの訂正は、例えば明細書の段落【0030】の記載に基づいている。この段落【0030】第2ないし5行には、バイオマス成形物の1個当たりの重量が100g以上であることが好ましく、バイオマス成形物の1個当たりの重量が100gより小さいと、バイオマス成形物が溶融炉内を下降し溶融炉下部まで到達するまでの時間が長くなったり、バイオマス成形物が溶融炉下部まで到達するまでの間に放出される揮発分の割合が多くなったりすることが記載されている。
したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

異議申立人は、平成29年8月25日付けの意見書において、コの訂正について、明細書等には、バイオマス成形物が溶融炉下部に下部に到達するまでの時間の長さを、バイオマス成形物の1個あたりの重量で調整するという技術的思想は記載されていないし、この時間の長さを「揮発分の割合を抑制する長さ」とすることについて記載されていなから、新規事項の追加に該当すると主張している。
しかしながら、コの訂正により追加された事項は、明細書の段落【0030】等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
してみると、上記主張は理由がない。

(3)実質上特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
ア 訂正事項1
訂正事項1の(ア-1)の訂正で削除された内容は、イの訂正で追加される内容に含まれており、また、(ア-2)ないしクのそれぞれの訂正は、発明特定事項をより具体的に特定するものである。したがって、訂正事項1のアないしクのそれぞれの訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

イ 訂正事項2
訂正事項2は、訂正事項1による請求項1の訂正に伴い、該請求項1を引用する請求項2について、訂正事項1のアないしクの訂正と同様の訂正をするものである。したがって、訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

ウ 訂正事項3
訂正事項3は、訂正事項1による請求項1の訂正に伴い、該請求項1と該請求項1を引用する請求項2とを引用する請求項3について、訂正事項1のアないしクの訂正と同様の訂正をするとともに、ケの訂正をするものである。したがって、訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

エ 訂正事項4
訂正事項4は、訂正事項1による請求項1の訂正に伴い、該請求項1又は請求項2を引用する請求項3を引用する請求項4について、訂正事項1のアないしク及び訂正事項3のケの訂正と同様の訂正をするとともに、コの訂正をするものである。したがって、訂正事項4は、訂正前の請求項4に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(4)一群の請求項
訂正事項1ないし4は、一群の請求項〔1?4〕に対して請求されたものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正により訂正請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、下線は訂正箇所を示す。
「【請求項1】
廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼し、熱分解燃焼残渣を溶融する廃棄物溶融処理方法において、
石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入し、廃棄物溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成する高温火格子形成工程と、バイオマス成形物を廃棄物溶融炉に投入し、廃棄物溶融炉下部まで降下到達させるバイオマス成形物投入降下工程と、熱分解燃焼残渣を溶融する熱分解燃焼残渣溶融工程とを有し、
高温火格子形成工程は、石炭コークスにより形成された高温火格子が、石炭コークス同士間に生じる空隙により燃焼ガスの上昇通気と溶融物の降下通液とを確保することに必要な最小限の石炭コークス供給量で、石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入することとし、
バイオマス成形物投入降下工程は、次の第一ないし第四の工程を有し、
第一の工程が、その灰分中にSiO_(2)を80重量%以上、K_(2)Oを0.3重量%以上含む組成であり、灰分の融点が800℃より低いバイオマス原料を、常温で、又はバイオマス原料の揮発分が揮発し始める温度より低い温度に加熱し、バイオマス原料の揮発分の揮発を抑制しながら加圧成形することにより、揮発分を含有しているバイオマス成形物を、廃棄物溶融炉に投入する工程であり、
第二の工程が、第一の工程で廃棄物溶融炉に投入されたバイオマス成形物を加熱してバイオマス原料粒子を熱分解して灰分粒子を発生させ、さらに灰分粒子の表面を灰分の融点温度以上にして灰分を溶融して、灰分粒子の表面に融液を発生させる工程であり、
第三の工程が、廃棄物溶融炉内でバイオマス成形物のバイオマス原料粒子が熱分解されて生じる炭化物粒子、熱分解途中のバイオマス原料粒子及び灰分粒子とを、第二の工程で灰分粒子の表面の溶融により生じた融液により融着して、バイオマス成形物を構成するそれぞれの粒子を結合させ、バイオマス成形物の崩壊を抑制し成形物形状を維持するように処理する工程であり、
第四の工程が、第三の工程により崩壊を抑制され成形物形状を維持するように処理されたバイオマス成形物を、廃棄物溶融炉内を下降する間の崩壊を抑制されることによりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制しながら、廃棄物溶融炉下部まで降下到達させる工程であり、
熱分解燃焼残渣溶融工程は、高温火格子形成工程で形成した高温火格子で、石炭コークスと、バイオマス成形物投入降下工程によりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制して廃棄物溶融炉下部まで降下したバイオマス成形物の揮発分および固定炭素とを燃焼して発生する燃焼熱により熱分解燃焼残渣を溶融することとすることを特徴とする廃棄物の溶融処理方法。
【請求項2】
バイオマス原料は、米籾殻、麦籾殻、稲藁及び麦藁のうち少なくとも一つを含むこととする請求項1に記載の廃棄物の溶融処理方法。
【請求項3】
バイオマス成形物は、みかけ密度が1.2g/cm3以上であり、バイオマス成形物を構成する粒子が緻密に圧接されており、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉内を下降する間に、粒子が融着結合され崩壊することなく、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉下部まで成形物形状を維持して到達するようにする性状を有することとする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物の溶融処理方法。
【請求項4】
バイオマス成形物は、1個当たりの重量が100g以上であり、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉内を下降し下部まで到達するまでの時間を、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉下部まで到達するまでの間に放出される揮発分の割合を抑制する長さにする重量であることとする請求項3に記載の廃棄物の溶融処理方法。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して平成29年4月3日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1)訂正の適否について
平成28年10月24日の訂正請求に係る訂正は特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合していないから、この訂正請求に係る訂正を認めない。

(2)特許法第29条第2項について
下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



・請求項 1及び2
・引用文献 甲第1号証及び甲第2号証、又は甲第8号証及び甲第2号証に記載された発明あるいは事項により、当業者が容易になし得たものである。

・請求項 3及び4
・引用文献 甲第1号証及び甲第2号証、又は甲第8号証、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明あるいは事項により、当業者が容易になし得たものである。

3 甲号証の記載
異議申立人が提出した証拠は以下のとおりである。
甲第1号証:“平成22年度 ふるさと雇用再生特別基金事業 バイオコークス事業化可能性調査報告書”,2011年 5月30日,日本,青森県庁,p.56ないし151,(日付はホームページ更新日)
<URL:http://www.pref.aomori.lg.jp/sangyo/shoko/H22_furusato_bic.html>
甲第2号証:中田善徳・鈴木正昭・奥谷猛・菊池昌伸・秋山健夫,“籾殻からのSiO_(2)の製造及びその性状”,日本セラミックス協会学術論文誌,97[8],1989年,p.842ないし849
甲第3号証:内山武・中山剛・秋山肇・井田民男・村田博敏・小田昭浩・星靖,“高温ガス化直接溶融炉におけるバイオコークス使用によるCO_(2)排出量削減”,第20回日本エネルギー学会大会講演要旨集,平成23年8月9日,p.322及び323
甲第4号証:特開2010-24393号公報
甲第5号証:国際公開第2006/078023号
甲第6号証:特開昭58-145397号公報
甲第7号証:特開2008-274108号公報
甲第8号証:特開2005-274122号公報

(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載
甲第1号証には、次の記載がある。なお、甲第1号証中で用いられている丸囲みの数字は、「○1」「○2」のように記載する。

(ア)「(2)ごみ溶融炉での実証試験
コークスを活用して廃棄物を高温でガス化・溶融し、一気に有効利用が可能なスラグとメタルに変えるごみ処理方法である。幅広いごみに適応できることが特長で、埋め立てごみや焼却灰等も溶融してスラグに変えられるため、逼迫する最終処分場の再生にも貢献できる。
高温ガス化直接溶融炉の炉内断面図を示した。(図5-2-3)炉頂から廃棄物、コークス、石灰石が投入される。投入された廃棄物は廃棄物層の上段で水分が蒸発し、可燃分が熱分解する。廃棄物中の固定炭素と灰分は、投入されたコークス、石灰石とともに溶融炉内を予熱されながら下降し、炉下部に到達する。炉下部では主羽口から供給された酸素富化された空気でコークスと固定炭素を燃焼し、その燃焼熱で灰分を溶融し、溶融スラグとして出滓口から連続出滓される。炉下部と廃棄物層で発生した可燃性ガスは、溶融炉後段の二次燃焼室で完全燃焼する。」(143ページ)

(イ)「ウ.実証評価結果
○1目的
実証試験は、高温ガス化直接溶融炉においてバイオコークス使用により削減できる石炭コークス量の把握ならびにその際のバイオコークス必要量の把握を目的とした。
○2試験方法
高温ガス化直接溶融炉にて、通常運転時の石炭コークス使用量に対してバイオコークス量10%、20%、30%を添加した時で石炭コークス使用量をどの程度減少させることができるかを確認する試験を実施した。・・・(中略)・・・
バイオコークス投入後、出滓口部のスラグ温度が一定となるよう石炭コークス使用量を減少させ調整を行った。・・・(中略)・・・
以上の結果から、今回の実証試験において、下記の知見を得た。
●バイオコークスをごみ溶融炉に供給率25.3%まで段階的に供給し、問題なく操業できることを示した。
●石炭コークス削減量として、最大で18.9%を実証した。
●スラグ溶解温度1,400℃を確保できることがわかった。
●石炭コークス削減量に対する置換率68.8%を実証した。」(146ないし148ページ)

(ウ)「○3 熱分解温度と小型バイオコークスの成型条件
バイオコークスは半炭化前反応のため、熱分解温度より低い温度で成型する必要がある。そのため、熱分解温度を確認し、熱分解温度より十分に低い温度で成型するように成型温度を設定した。・・・(中略)・・・」(69ページ)

(エ)また、69ページの甲第1号証の表4-2-3において、熱分解温度が200ないし220℃付近であるもみ殻をバイオマス原料として用いる場合、バイオコークスの成型温度を130℃又は150℃としたうえで保温時間を20分として成型し、熱分解温度が210ないし230℃付近である稲わらをバイオマス原料として用いる場合、バイオコークスの成型温度を130℃又は150℃としたうえで保温時間を15分として成型することが分かる。

(オ)「そのほか、本年度はりんご搾りかすを原料としたバイオコークスのみでの実証評価であったため、その他のバイオマス原料で製造したバイオコークスについても実証評価を行い、その適性についても評価を行っていく必要がある。」(151ページ)

イ 甲第1号証記載の事項
上記ア(ア)ないし(オ)の記載から、次のことが分かる。

(カ)上記ア(ア)から、甲第1号証には、廃棄物を溶融するごみ処理方法が記載されていることが分かる。

(キ)上記ア(ア)から、甲第1号証に記載された廃棄物を溶融するごみ処理方法は、高温ガス化直接溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼し廃棄物中の灰分を溶融することが分かる。

(ク)上記ア(イ)の記載から、甲第1号証に記載された廃棄物を溶融するごみ処理方法は、石炭コークスを高温ガス化直接溶融炉に投入していることが分かる。

(ケ)上記ア(エ)及び(オ)の記載から、甲第1号証に記載された廃棄物を溶融するごみ処理方法は、りんご搾りかすに替えて、もみ殻を、もみ殻の熱分解温度より低い温度に加熱しながら加圧成形したバイオコークスを、高温ガス化直接溶融炉に投入してもよいことが分かる。また、もみ殻を、もみ殻の熱分解温度より低い温度に加熱しながら加圧成形する場合、もみ殻の揮発分の揮発を抑制しながら加圧成形を行うこととなり、それにより、当該バイオコークスは揮発分を含有していると認める。

(コ)上記ア(イ)の記載から、バイオコークスを投入して、石炭コークスを削減しても、スラグ溶解温度1400度を確保している旨が記載されていることから、石炭コークスと、バイオコークスとを燃焼して発生する燃焼熱により廃棄物中の灰分を溶融することが分かる。

ウ 甲1発明
上記ア(ア)ないし(オ)及びイ(カ)ないし(コ)から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「高温ガス化直接溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼し、廃棄物中の灰分を溶融する廃棄物を溶融するごみ処理方法において、
石炭コークスを高温ガス化直接溶融炉に投入する工程と、もみ殻からなるバイオコークスを高温ガス化直接溶融炉に投入する工程と、廃棄物中の灰分を溶融する工程とを有し、
前記バイオコークスを高温ガス化直接溶融炉に投入する工程は、もみ殻を、もみ殻の熱分解温度より低い温度に加熱し、もみ殻の揮発分の揮発を抑制しながら加圧成形することにより、揮発分を含有している前記バイオコークスを、高温ガス化直接溶融炉に投入する工程であり、
廃棄物中の灰分を溶融する工程は、石炭コークスと、前記バイオコークスとを燃焼して発生する燃焼熱により廃棄物中の灰分を溶融する廃棄物を溶融するごみ処理方法。」

(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載
(ア)表1には、籾殻の灰の組成が示され、籾殻の灰の組成は、SiO_(2)が96.5wt%であり、CaO、MgO及びFe_(2)O_(3)の合計含有率が0.40wt%であり、K_(2)Oが0.90wt%である。(844ページ)

(イ)「表1に示した灰の成分には酸化カリウムとして0.90wt%も含まれている.このカリウムが高温でSiO_(2)と反応し,溶融状態になり,そのときに未燃焼の炭素を溶融物中に取り込み,酸素と接触を妨げるために残留するものと考えられる.図6には,籾殻を流動旋回燃焼炉(北糖エンジニアリング製,炉型式WHB-450-M,籾殻供給量450kg/h,900±100℃,滞留時間4時間)で調製された灰の形態を示した.灰粒子表面が溶融し,固化した様子をうかがうことができる.」(846ページ)

(ウ)「800℃以下で燃焼した籾殻は,2?5μmの小さな一次粒子が凝集し,二次粒子を形成していた.900℃以上では,一次粒子間の融着が観察され,高温になるほど溶融の程度は進んでいた.」(849ページ)

イ 甲第2号証記載の事項
甲第2号証には、第844ページ左欄6ないし右欄7行及び表1の記載からみて、次の事項(以下、「甲2事項」という。)が記載されていると認める。
甲2事項:「籾殻の灰の組成は、SiO_(2)が96.5wt%であり、CaO、MgO及びFe_(2)O_(3)の合計含有率が0.40wt%であり、K_(2)Oが0.90wt%である事項。」

(3)甲第8号証
ア 甲第8号証の記載
甲第8号証には、図面とともに次の記載がある。

(ア)「【0001】
本発明は、一般廃棄物・産業廃棄物等の廃棄物の溶融処理方法に関し、特にバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法に関する。」(段落【0001】)

(イ)「【0011】
本発明のバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法は、シャフト炉式廃棄物溶融炉に廃棄物を装入し、炉底部送風口から酸素もしくは酸素富化空気を吹き込んで、廃棄物を乾燥、熱分解、燃焼、溶融する廃棄物溶融処理方法において、加圧成形されたバイオマス固形物を炉上部から廃棄物と共に投入し、炉底部送風羽口から送風する酸素もしくは酸素富化空気で廃棄物と共に還元燃焼することによって発生した無酸素の燃焼ガスで、バイオマス固形物をシャフト炉内で乾燥、乾留することによって炭化物化させ、シャフト炉下部で炭火物層を形成し、該炭火物層内で前記還元燃焼を行い、廃棄物中灰分の溶融用熱源とすることを特徴とする。
【0012】
廃棄物溶融処理方法では、廃棄物をシャフト炉式溶融炉で廃棄物中灰分を溶融する際に、炉底部から上昇する高温燃焼ガスにより廃棄物は、乾燥、乾留(熱分解)されて揮発分は炉上部から可燃性ガスとして排出され、揮発せずに残って乾留された固定炭素分を主体とする熱分解後の残渣は炉底に降下し、炉底部において下段送風羽口前で下段送風羽口から供給される酸素と反応し高温で燃焼し、廃棄物中の灰分を溶融する溶融熱源となる。しかしながら、廃棄物中の可燃分はその大部分が紙やプラスチック等であって、乾留により細粒化するため、乾留後の固定炭素分を含む残渣は、ガス流によって炉頂より多くの割合で飛散するので、炉底で溶融熱源として燃焼する比率は多くない。
【0013】
ところが、本発明のバイオマスを利用する廃棄物溶融処理方法では、炉内に装入されたバイオマス固形物は、廃棄物と同様に乾燥、乾留を経て乾留により炭化(コークス化)により生成した固定炭素分は炉底に降下し、例えば、木の場合、細粒化する割合が小さく、大部分が炉底に降下して溶融熱源として利用できる。そのため、通常、補助溶融熱源として化石燃料に由来するコークスを廃棄物と共に用いる場合においては、バイオマス固化物の乾留後の固定炭素分は溶融熱源の代替として機能する。
【0014】
バイオマス固化物は、粉状のバイオマスを加圧成形してブリケットにすることにより炉内で乾燥、乾留を経ても細粒化が抑制され、炉底での溶融熱源として利用できる。バイオマスを加圧成形すると、摩擦熱もしくは外熱によりバイオマス中のリグニン、セルロース、ヘミセルロースが油化し油分がバインダーとなって、さらに加圧することで、油分が成形品の全般に行き渡り緻密になるために成形物の強度を強めることができる。」(段落【0011】ないし【0014】)

(ウ)「【0018】
バイオマスを加圧成形してブリケットを製造する際には、バイオマスの固体温度が50℃?350℃となるように加熱し、約0.5t?5t/cm^(2)の圧力で加圧する。成形機には、例えばダブルロール成形機を使用する。加熱による固体温度には、バイオマス中のリグニン、セルロース、ヘミセルロース成分が油化し、バインダーとなるためには50℃以上の温度が必要であり、一方、350℃を超えると成形時に熱分解が始まり、ガスの生成により膨張するため成形が困難となり、固化物の強度が低下する。
【0019】
また、加圧成形により得られたブリケットをロータリーキルンあるいはコークス炉などで約500℃以上、乾留温度が低いと乾留時間が長くなるため、好ましくは生産性の向上から800℃以上の乾留温度で乾留することにより炭化(コークス化)して炭化物として利用することもできる。バイオマス固形物を廃棄物溶融炉で利用するためには、バイオマス固形物の粒径を20mm以上(容積で4cc以上)とすることが必要であり、これによりコークスベットが形成されて火格子の機能により炉底部での溶融物の通液性、燃焼ガスの通気性を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、コークスを火格子とするコークスベッド式の溶融炉においては、コークス消費量が抑制できるため、化石燃料起源のCO_(2)発生が抑制できるだけでなく、溶融炉での廃棄物処理量を低下させることなく、バイオマス起源の燃料の利用を行うことができる。また、溶融炉後段でボイラーによる蒸気回収発電を行えば、電気エネルギーへの変換も可能であり、その結果、化石燃料起源のCO_(2)発生を抑制できる。また、コークスベッド式以外の溶融炉においては、廃棄物の性状に関わらず、炉底部に安定して溶融用熱源を供給できるため、安定した溶融処理が可能となる。・・・(後略)・・・」(段落【0018】ないし【0020】)

(エ)「【0022】
バイオマスはFAO(国際食料農業機関)によって分類されており、本発明では、林地残材、間伐材、未利用樹、製材残材、建設廃材、稲わら、籾殻等の木質系バイオマス、さらに、製紙系バイオマス、農業残渣、家畜糞尿、食品廃棄物等の未利用バイオマス資源、または、それらの乾留処理後の炭化物を利用する。」(段落【0022】)

(オ)「【0024】
図1に示すシャフト炉式廃棄物溶融炉1に廃棄物、コークス、石灰石、バイオマス固形物を装入し、上段送風羽口2から空気を、下段送風口3から酸素富化空気を吹き込んで廃棄物を溶融処理した。
【0025】
バイオマス固形物は、木材加工時に発生するおがくずを、固体温度が約200℃となるように加熱し、約1t/cm^(2)で加圧成形により約40mm径のブリケットとしたものを使用した。また、比較のため、石炭コークスを熱源とした試験も行った。バイオマス固化物及び石炭コークス使用時の操業条件及び結果を表1に示す。
【0026】
いずれも上段送風量(空気)350Nm^(3)/h、下段送風量(空気)250Nm^(3)/h、酸素を富化するために、下段送酸量(純酸素)60Nm^(3)/hとし、下段羽口での送風は酸素濃度36.3%の一定条件、また、バイオマス固化物を使用する場合、その揮発分を見越して、燃料使用量を石炭コークスで40kg/廃棄物tに対し、180kg/廃棄物tで操業した。
【0027】
廃棄物の処理量は、石炭コークス使用時に比べ、800kg/hに若干低下したが、試験の結果、バイオマス固化物は、従来熱源として使用していた石炭コークスに比べ溶融能力としては何ら変わりなく操業可能であることが確認できた。・・・(後略)・・・」(段落【0024】ないし【0027】)

イ 甲第8号証記載の事項
上記ア(ア)ないし(オ)から、次のことが分かる。

(サ)上記ア(ア)から、甲第8号証には廃棄物溶融処理方法が記載されていることが分かる。

(シ)上記ア(イ)及び(オ)から、甲第8号証に記載された廃棄物溶融処理方法は、シャフト炉式廃棄物溶融炉1に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼し、廃棄物中灰分を溶融することが分かる。

(ス)上記ア(ウ)及び(オ)から、甲第8号証に記載された廃棄物溶融処理方法は、石炭コークス(コークス)をシャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入していることが分かる。

(セ)上記ア(ウ)から、甲第8号証に記載された廃棄物溶融処理方法のシャフト炉式廃棄物溶融炉1は、石炭コークス(コークス)を火格子とするコークスベッド式の溶融炉であって、炉底部で廃棄物を溶融する以上、火格子は高温火格子であるといえる。そうすると、甲第8号証に記載された廃棄物溶融処理方法は、石炭コークスにより形成された高温火格子が、石炭コークス同士間に生じる空隙により燃焼ガスの通気性及び溶融物の通液性とを確保することに必要な石炭コークス供給量で、石炭コークスをシャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入し、炉底部に石炭コークスで高温火格子を形成し、形成した高温火格子で、石炭コークスとバイオマス固化物とを燃焼して発生する燃焼熱により廃棄物中灰分を溶融することが分かる。

(ソ)上記ア(ウ)ないし(オ)の記載から、甲第8号証に記載された廃棄物溶融処理方法は、籾殻を熱分解が始まる温度より低い温度で加熱し、加圧成形したバイオマス固化物を、シャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入してもよいことが分かる。また、籾殻を熱分解が始まる温度より低い温度で加熱し、加圧成形する場合、籾殻の揮発分の揮発を抑制し、加圧成形を行うこととなり、それにより、バイオマス固化物は揮発分を含有していると認める。

(タ)上記ア(オ)の、シャフト炉式廃棄物溶融炉1に石炭コークス(コークス)及びバイオマス固形物を装入すること及びバイオマス固化物は石炭コークスに比べ溶融能力としては何ら変わりなく操業可能である旨の記載から、甲第8号証に記載された廃棄物溶融処理方法は、石炭コークスと、バイオマス固化物とを燃焼して発生する燃焼熱により廃棄物中灰分を溶融することが分かる。

ウ 甲8発明
上記ア(ア)ないし(オ)及びイ(サ)ないし(タ)から、甲第8号証には次の発明(以下、「甲8発明」という。)が記載されていると認める。
「シャフト炉式廃棄物溶融炉1に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼し、廃棄物中灰分を溶融する廃棄物溶融処理方法において、
石炭コークスをシャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入し、炉底部に石炭コークスで高温火格子を形成する工程と、バイオマス固化物をシャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入し、シャフト炉下部まで降下到達させる工程と、廃棄物中灰分を溶融する工程とを有し、
石炭コークスをシャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入し、炉底部に石炭コークスで高温火格子を形成する工程は、石炭コークスにより形成された高温火格子が、石炭コークス同士間に生じる空隙により燃焼ガスの通気性及び溶融物の通液性とを確保することに必要な石炭コークス供給量で、石炭コークスをシャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入することとし、
バイオマス固化物をシャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入する工程は、籾殻を熱分解が始まる温度より低い温度で加熱し、籾殻の揮発分の揮発を抑制し、加圧成形することにより、揮発分を含有しているバイオマス固化物を、シャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入する工程であり、
廃棄物中灰分を溶融する工程は、石炭コークスをシャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入し、炉底部に石炭コークスで高温火格子を形成する工程で形成した高温火格子で、石炭コークスと、バイオマス固化物とを燃焼して発生する燃焼熱により廃棄物中灰分を溶融することとする廃棄物溶融処理方法。」

4 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 甲1発明を主引用発明とした場合の対比・判断
(ア)対比
甲1発明における「高温ガス化直接溶融炉」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件発明1における「廃棄物溶融炉」に相当し、以下同様に、「廃棄物」は「廃棄物」に、「投入」は「投入」に、「熱分解」は「熱分解」に、「燃焼」は「燃焼」に、「廃棄物中の灰分」は「熱分解燃焼残渣」に、「溶融」は「溶融」に、「廃棄物を溶融するごみ処理方法」は「廃棄物溶融処理方法」に、「石炭コークス」は「石炭コークス」に、「もみ殻からなるバイオコークス」は「バイオマス成形物」に、「バイオコークスを高温ガス化直接溶融炉に投入する工程」は「バイオマス成形物投入降下工程」に、「廃棄物中の灰分を溶融する工程」は「熱分解燃焼残渣溶融工程」に、「もみ殻」は「バイオマス原料」に、「加熱」は「加熱」に、「加圧成形」は「加圧成形」に、「もみ殻を、もみ殻の熱分解温度より低い温度に加熱し、もみ殻の揮発分の揮発を抑制しながら加圧成形することにより、揮発分を含有している前記バイオコークスを、高温ガス化直接溶融炉に投入する工程」は、「第一の工程」にそれぞれ相当する。

甲第1号証の第69ページには、もみ殻の熱分解温度は200ないし220度付近であり、成形温度として(明らかにもみ殻の揮発分が揮発し始める温度より低い)130度及び150度を選択する旨が記載されていることから、甲1発明における「もみ殻の熱分解温度より低い温度」は本件発明1における「もみ殻の揮発分が揮発し始める温度より低い温度」に相当する。

よって、本件発明1と甲1発明とは、
「廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼し、熱分解燃焼残渣を溶融する廃棄物溶融処理方法において、
石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入する工程と、バイオマス成形物を廃棄物溶融炉に投入するバイオマス成形物投入降下工程と、熱分解燃焼残渣を溶融する熱分解燃焼残渣溶融工程とを有し、
バイオマス成形物投入降下工程は、次の第一の工程を有し、
第一の工程が、バイオマス原料を、バイオマス原料の揮発分が揮発し始める温度より低い温度に加熱し、バイオマス原料の揮発分の揮発を抑制しながら加圧成形することにより、揮発分を含有しているバイオマス成形物を、廃棄物溶融炉に投入する工程であり、
熱分解燃焼残渣溶融工程は、石炭コークスと、バイオマス成形物とを燃焼して発生する燃焼熱により熱分解燃焼残渣を溶融することとする廃棄物の溶融処理方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1-1>
本件発明1においては、石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入し、「廃棄物溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成する高温火格子形成工程」を有し、「高温火格子形成工程は、石炭コークスにより形成された高温火格子が、石炭コークス同士間に生じる空隙により燃焼ガスの上昇通気と溶融物の降下通液とを確保することに必要な」「石炭コークス供給量で、石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入することとし」、熱分解燃焼残渣溶融工程は、「高温火格子形成工程で形成した高温火格子で」、熱分解燃焼残渣を溶融するのに対し、甲1発明においては、石炭コークスを高温ガス化直接溶融炉に投入する工程を有するが、高温ガス化直接溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成する高温火格子形成工程を有するか否か不明である点(以下、「相違点1-1」という。)。

<相違点1-2>
本件発明1においては、バイオマス原料が、「その灰分中にSiO_(2)を80重量%以上、K_(2)Oを0.3重量%以上含む組成であり、灰分の融点が800℃より低い」ものであるのに対し、甲1発明においては、もみ殻が、「その灰分中にSiO_(2)を80重量%以上、K_(2)Oを0.3重量%以上含む組成であり、灰分の融点が800℃より低い」ものであるか否か不明な点(以下、「相違点1-2」という。)。

<相違点1-3>
本件発明1においては、石炭コークス投入量を「最小限」とし、バイオマス成形物投入降下工程は、バイオマス成形物を「廃棄物溶融炉下部まで降下到達させる」ものであって、「第二ないし第四の工程を有し」、「第二の工程が、第一の工程で廃棄物溶融炉に投入されたバイオマス成形物を加熱してバイオマス原料粒子を熱分解して灰分粒子を発生させ、さらに灰分粒子の表面を灰分の融点温度以上にして灰分を溶融して、灰分粒子の表面に融液を発生させる工程であり、第三の工程が、廃棄物溶融炉内でバイオマス成形物のバイオマス原料粒子が熱分解されて生じる炭化物粒子、熱分解途中のバイオマス原料粒子及び灰分粒子とを、第二の工程で灰分粒子の表面の溶融により生じた融液により融着して、バイオマス成形物を構成するそれぞれの粒子を結合させ、バイオマス成形物の崩壊を抑制し成形物形状を維持するように処理する工程であり、第四の工程が、第三の工程により崩壊を抑制され成形物形状を維持するように処理されたバイオマス成形物を、廃棄物溶融炉内を下降する間の崩壊を抑制されることによりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制しながら、廃棄物溶融炉下部まで降下到達させる工程であり」、熱分解燃焼残渣溶融工程において、石炭コークスと、「バイオマス成形物投入降下工程によりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制して廃棄物溶融炉下部まで降下した」バイオマス成形物の「揮発分および固定炭素と」を燃焼して発生する燃焼熱により熱分解燃焼残渣を溶融するのに対し、甲1発明においては、そのような事項を有するか否か不明である点(以下、「相違点1-3」という。)。

(イ)判断
上記相違点1-1ないし1-3について検討する。

<相違点1-1についての判断>
石炭コークスを用いる溶融炉において、溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成することは技術常識(必要ならば、甲第8号証の段落【0020】等を参照。)である。してみると、甲1発明において、高温ガス化直接溶融炉に投入した石炭コークスにより高温ガス化直接溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成する工程を有し、高温火格子形成工程で形成した高温火格子で、廃棄物中の灰分を溶融するようにすることは、当業者が容易に想到できたことである。そして、石炭コークスにより形成された高温火格子が、石炭コークス同士間に生じる空隙により燃焼ガスの上昇通気と溶融物の降下通液とを確保するものであることは当業者にとって明らかなことであるから、石炭コークスの供給量を、そのために必要な供給量となるようにすることは、当業者が当然なし得ることである。
してみると、甲1発明において、相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

<相違点1-2についての判断>
本件発明1のバイオマス原料の「灰分の融点が800℃より低い」とは、本件特許公報の明細書段落【0024】及び【0025】の記載からみて、灰分中にSiO_(2)を80重量%以上含み、CaO、MgO、Fe_(2)O_(3)の合計含有率が20重量%以下であり、灰分中にK_(2)Oが0.3重量%以上含まれる場合と認める。してみると、甲2事項のもみ殻は、本件発明1の「灰分の融点が800℃より低い」との事項を備えるものといえる。
そうすると、甲1発明において、甲2事項のもみ殻を採用したものは、「灰分中にSiO_(2)を80重量%以上、K_(2)Oを0.3重量%以上含む組成であり、灰分の融点が800℃より低い」ものとなり、相違点1-2に係る本件発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到できたことである。

<相違点1-3についての判断>
甲第1号証の高温ガス化直接溶融炉において、溶融炉内の温度が800℃以上であることは明らかであるから、甲1発明において、甲2事項のもみ殻を採用した場合、甲第2号証の記載を参酌して、バイオコークスを高温ガス化直接溶融炉に投入する工程において、高温ガス化直接溶融炉に投入されたバイオコークスを加熱してもみ殻粒子を熱分解して灰分粒子を発生させ、さらに灰分粒子の表面を灰分の融点温度以上にして灰分を溶融して、灰分粒子の表面に融液を発生させること、すなわち、バイオマス成形物投入降下工程が、相違点1-3に係る本件発明1の「第二の工程」を有することは、当業者が理解できることである。
しかしながら、灰分粒子の表面に融液を発生させたとしても、高温ガス化直接溶融炉内でバイオコークスのもみ殻粒子が熱分解されて生じる炭化物粒子、熱分解途中のもみ殻粒子及び灰分粒子とを、第二の工程で灰分粒子の表面の溶融により生じた融液により融着して、バイオコークスを構成するそれぞれの粒子を結合させ、バイオコークスの崩壊を抑制し成形物形状を維持するように処理する、すなわち、相違点1-3に係る本件発明1の「第三の工程」を有することは、当業者が容易に想到し得たということができない。更には、第三の工程により崩壊を抑制され成形物形状を維持するように処理されたバイオコークスを、高温ガス化直接溶融炉内を下降する間の崩壊を抑制されることによりバイオコークスの揮発分の放出を抑制しながら、高温ガス化直接溶融炉下部まで降下到達させる、すなわち、相違点1-3に係る本件発明1の「第四の工程」を有することも、当業者が容易に想到し得たということができず、また、石炭コークスと、バイオコークスを高温ガス化直接溶融炉に投入する工程によりバイオコークスの揮発分の放出を抑制して高温ガス化直接溶融炉下部まで降下したバイオコークスの揮発分および固定炭素とを燃焼して発生する燃焼熱により廃棄物中の灰分を溶融することも、当業者が容易に想到し得たということができない。
このように、本件発明1は、石炭コークス投入量を「最小限」とするための具体的な発明特定事項として、バイオマス成形物投入降下工程は、「第二ないし第四の工程を有し」、「第二の工程が、第一の工程で廃棄物溶融炉に投入されたバイオマス成形物を加熱してバイオマス原料粒子を熱分解して灰分粒子を発生させ、さらに灰分粒子の表面を灰分の融点温度以上にして灰分を溶融して、灰分粒子の表面に融液を発生させる工程であり、第三の工程が、廃棄物溶融炉内でバイオマス成形物のバイオマス原料粒子が熱分解されて生じる炭化物粒子、熱分解途中のバイオマス原料粒子及び灰分粒子とを、第二の工程で灰分粒子の表面の溶融により生じた融液により融着して、バイオマス成形物を構成するそれぞれの粒子を結合させ、バイオマス成形物の崩壊を抑制し成形物形状を維持するように処理する工程であり、第四の工程が、第三の工程により崩壊を抑制され成形物形状を維持するように処理されたバイオマス成形物を、廃棄物溶融炉内を下降する間の崩壊を抑制されることによりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制しながら、廃棄物溶融炉下部まで降下到達させる工程であり」、熱分解燃焼残渣溶融工程において、石炭コークスと、「バイオマス成形物投入降下工程によりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制して廃棄物溶融炉下部まで降下した」バイオマス成形物の「揮発分および固定炭素と」を燃焼して発生する燃焼熱により熱分解燃焼残渣を溶融するという事項を有するものであるが、甲第1号証及び第2号証において、かかる事項は記載も示唆もされていない。

したがって、甲1発明において、甲2事項を採用し、相違点1-3に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。

また、甲第3号証ないし甲第7号証にも、相違点1-3に係る本件発明1の発明特定事項は記載も示唆もされていない。

以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲2事項、又は甲1発明、甲2事項及び甲第3号証ないし甲第7号証に記載された発明から、容易に発明できたということができない。

イ 甲8発明を主引用発明とした場合の対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲8発明とを対比すると、甲8発明における「シャフト炉式廃棄物溶融炉1」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本件発明1における「廃棄物溶融炉」に相当し、以下同様に、「廃棄物」は「廃棄物」に、「投入」は「投入」に、「熱分解」は「熱分解」に、「燃焼」は「燃焼」に、「廃棄物中灰分」は「熱分解燃焼残渣」に、「溶融」は「溶融」に、「廃棄物溶融処理方法」は「廃棄物溶融処理方法」に、「石炭コークス」は「石炭コークス」に、「装入」は「投入」に、「炉底部」は「廃棄物溶融炉の下部」に、「高温火格子」は「高温火格子」に、「石炭コークスをシャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入し、炉底部に石炭コークスで高温火格子を形成する工程」は「高温火格子形成工程」に、「バイオマス固化物」は「バイオマス成形物」に、「シャフト炉下部」は「廃棄物溶融炉下部」に、「バイオマス固化物をシャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入し、シャフト炉下部まで降下到達させる工程」は「バイオマス成形物投入降下工程」に、「燃焼ガス」は「燃焼ガス」に、「燃焼ガスの通気性及び溶融物の通液性とを確保する」は「燃焼ガスの上昇通気と溶融物の降下通液とを確保する」に、「籾殻」は「バイオマス原料」に、「加熱」は「加熱」に、「加圧成形」は「加圧成形」に、「籾殻を熱分解が始まる温度より低い温度で加熱し、籾殻の揮発分の揮発を抑制し、加圧成形することにより、揮発分を含有しているバイオマス固化物を、シャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入する工程」は「第一の工程」にそれぞれ相当する。

甲第8号証の段落【0018】には、バイオマスを加圧成型してブリケットを製造する温度の下限として明らかに籾殻の揮発分が揮発し始める温度より低い温度である50度が記載されていることから、甲8発明における「籾殻の熱分解が始まる温度より低い温度」は本件発明1における「バイオマス原料の揮発分が揮発し始める温度より低い温度」に相当する。

よって、本件発明1と甲8発明とは、
「廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼し、熱分解燃焼残渣を溶融する廃棄物溶融処理方法において、
石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入し、廃棄物溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成する高温火格子形成工程と、バイオマス成形物を廃棄物溶融炉に投入し、廃棄物溶融炉下部まで降下到達させるバイオマス成形物投入降下工程と、熱分解燃焼残渣を溶融する熱分解残渣溶融工程とを有し、
高温火格子形成工程は、石炭コークスにより形成された高温火格子が、石炭コークス同士間に生じる空隙により燃焼ガスの上昇通気と溶融物の降下通液とを確保することに必要な供給量で、石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入することとし、
バイオマス成形物投入降下工程は、次の第一の工程を有し、
第一の工程が、バイオマス原料を、バイオマス原料の揮発分が揮発し始める温度より低い温度に加熱し、バイオマス原料の揮発分の揮発を抑制しながら加圧成形することにより、揮発分を含有しているバイオマス成形物を、廃棄物溶融炉に投入する工程であり、
熱分解燃焼残渣溶融工程は、高温火格子形成工程で形成した高温火格子で、石炭コークスと、バイオマス成形物とを燃焼して発生する燃焼熱により熱分解燃焼残渣を溶融することとする廃棄物の溶融処理方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点2-1>
本件発明1においては、バイオマス原料が、「その灰分中にSiO_(2)を80重量%以上、K_(2)Oを0.3重量%以上含む組成であり、灰分の融点が800℃より低い」ものであるのに対し、甲8発明においては、籾殻が、「その灰分中にSiO_(2)を80重量%以上、K_(2)Oを0.3重量%以上含む組成であり、灰分の融点が800℃より低い」ものであるか否か不明である点(以下、「相違点2-1」という。)。

<相違点2-2>
本件発明1においては、石炭コークス投入量を「最小限」とし、バイオマス成形物投入降下工程は、「第二ないし第四の工程を有し」、「第二の工程が、第一の工程で廃棄物溶融炉に投入されたバイオマス成形物を加熱してバイオマス原料粒子を熱分解して灰分粒子を発生させ、さらに灰分粒子の表面を灰分の融点温度以上にして灰分を溶融して、灰分粒子の表面に融液を発生させる工程であり、第三の工程が、廃棄物溶融炉内でバイオマス成形物のバイオマス原料粒子が熱分解されて生じる炭化物粒子、熱分解途中のバイオマス原料粒子及び灰分粒子とを、第二の工程で灰分粒子の表面の溶融により生じた融液により融着して、バイオマス成形物を構成するそれぞれの粒子を結合させ、バイオマス成形物の崩壊を抑制し成形物形状を維持するように処理する工程であり、第四の工程が、第三の工程により崩壊を抑制され成形物形状を維持するように処理されたバイオマス成形物を、廃棄物溶融炉内を下降する間の崩壊を抑制されることによりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制しながら、廃棄物溶融炉下部まで降下到達させる工程であり」、熱分解燃焼残渣溶融工程において、石炭コークスと、「バイオマス成形物投入降下工程によりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制して廃棄物溶融炉下部まで降下した」バイオマス成形物の「揮発分および固定炭素と」を燃焼して発生する燃焼熱により熱分解燃焼残渣を溶融するのに対し、甲8発明においては、そのような事項を有するか否か不明である点(以下、「相違点2-2」という。)。

(イ)判断
上記相違点2-1及び2-2について検討する。

<相違点2-1についての判断>
本件発明1のバイオマス原料の「灰分の融点が800℃より低い」とは、本件特許公報の明細書段落【0024】及び【0025】の記載からみて、灰分中にSiO_(2)を80重量%以上含み、CaO、MgO、Fe_(2)O_(3)の合計含有率が20重量%以下であり、灰分中にK_(2)Oが0.3重量%以上含まれる場合と認める。してみると、甲2事項のもみ殻は、本件発明1の「灰分の融点が800℃より低い」との事項を備えるものといえる。
そうすると、甲8発明において、甲2事項のもみ殻を採用したものは、「灰分中にSiO_(2)を80重量%以上、K_(2)Oを0.3重量%以上含む組成であり、灰分の融点が800℃より低い」ものとなり、相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項は、当業者が容易に想到できたことである。

<相違点2-2についての判断>
甲第8号証のシャフト炉式廃棄物溶融炉1において、溶融炉内の温度が800℃以上であることは明らかであるから、甲8発明において、甲2事項のもみ殻を採用した場合、甲第2号証の記載を参酌して、バイオマス固化物をシャフト炉式廃棄物溶融炉1に装入し、シャフト炉下部まで降下到達させる工程において、シャフト炉式廃棄物溶融炉1に投入されたバイオマス固化物を加熱してもみ殻粒子を熱分解して灰分粒子を発生させ、さらに灰分粒子の表面を灰分の融点温度以上にして灰分を溶融して、灰分粒子の表面に融液を発生させること、すなわち、バイオマス成形物投入降下工程が、相違点2-2に係る本件発明の「第二の工程」を有することは、当業者が理解できることである。
しかしながら、灰分粒子の表面に融液を発生させたとしても、シャフト炉式廃棄物溶融炉1内でバイオマス固化物のもみ殻粒子が熱分解されて生じる炭化物粒子、熱分解途中のもみ殻粒子及び灰分粒子とを、第二の工程で灰分粒子の表面の溶融により生じた融液により融着して、バイオマス固化物を構成するそれぞれの粒子を結合させ、バイオマス固化物の崩壊を抑制し成形物形状を維持するように処理する、すなわち、相違点2-2に係る本件発明1の「第三の工程」を有することは、当業者が容易に想到し得たということができない。更には、第三の工程により崩壊を抑制され成形物形状を維持するように処理されたバイオマス固化物を、シャフト炉式廃棄物溶融炉1内を下降する間の崩壊を抑制されることによりバイオマス固化物の揮発分の放出を抑制しながら、シャフト炉下部まで降下到達させる、すなわち、相違点2-2に係る本件発明1の「第四の工程」を有することも、当業者が容易に想到し得たということができず、また、石炭コークスと、バイオマス固化物をシャフト炉式廃棄物溶融炉1に投入する工程によりバイオマス固化物の揮発分の放出を抑制してシャフト炉下部まで降下したバイオマス固化物の揮発分および固定炭素とを燃焼して発生する燃焼熱により廃棄物中灰分を溶融することも、当業者が容易に想到し得たということができない。
このように、本件発明1は、石炭コークス投入量を「最小限」とするための具体的な発明特定事項として、バイオマス成形物投入降下工程は、「第二ないし第四の工程を有し」、「第二の工程が、第一の工程で廃棄物溶融炉に投入されたバイオマス成形物を加熱してバイオマス原料粒子を熱分解して灰分粒子を発生させ、さらに灰分粒子の表面を灰分の融点温度以上にして灰分を溶融して、灰分粒子の表面に融液を発生させる工程であり、第三の工程が、廃棄物溶融炉内でバイオマス成形物のバイオマス原料粒子が熱分解されて生じる炭化物粒子、熱分解途中のバイオマス原料粒子及び灰分粒子とを、第二の工程で灰分粒子の表面の溶融により生じた融液により融着して、バイオマス成形物を構成するそれぞれの粒子を結合させ、バイオマス成形物の崩壊を抑制し成形物形状を維持するように処理する工程であり、第四の工程が、第三の工程により崩壊を抑制され成形物形状を維持するように処理されたバイオマス成形物を、廃棄物溶融炉内を下降する間の崩壊を抑制されることによりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制しながら、廃棄物溶融炉下部まで降下到達させる工程であり」、熱分解燃焼残渣溶融工程において、石炭コークスと、「バイオマス成形物投入降下工程によりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制して廃棄物溶融炉下部まで降下した」バイオマス成形物の「揮発分および固定炭素と」を燃焼して発生する燃焼熱により熱分解燃焼残渣を溶融するという事項を有するものであるが、甲第8号証及び甲第2号証において、かかる事項は記載も示唆もされていない。

したがって、甲8発明において、甲2事項を採用し、相違点2-2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。

また、甲第3号証ないし甲第7号証にも、相違点2-2に係る本件発明1の発明特定事項は記載も示唆もされていない。

以上のとおりであるから、本件発明1は、甲8発明及び甲2事項、又は甲8発明、甲2事項及び甲第3号証ないし甲第7号証に記載された発明から、容易に発明できたということができない。

(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の全ての発明特定事項を含むものであるところ、本件発明1は、上記(1)に記載したとおり、甲1発明及び甲2事項、又は甲1発明、甲2事項及び甲第3号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでなく、また、甲8発明及び甲2事項、又は甲8発明、甲2事項及び甲第3号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明2ないし4も、同様に、甲1発明及び甲2事項、又は甲1発明、甲2事項及び甲第3号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでなく、また、甲8発明及び甲2事項、又は甲8発明、甲2事項及び甲第3号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条第1項第3号
異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、また、請求項1及び2に係る発明は、甲第8号証に記載された発明と同一であるため、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであると主張している。
しかしながら、上記4(1)に記載したとおり、本件発明1は、甲1発明又は甲8発明と同一ではない。また、本件発明2ないし4は、本件発明1の全ての発明特定事項を含むものであるから、甲1発明又は甲8発明と同一ではない。
してみると、上記主張は理由がない。

(2)特許法第36条第4項第1号
異議申立人は、発明の詳細な説明に関し、特許異議申立書において、請求項1の「高温火格子を形成することに必要な最小限の供給量で、石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入し」の記載について、発明の詳細な説明には「最小限の供給量」の決定方法について一切記載されておらず、「最小限の供給量」をどのように決定すればよいか当業者であっても理解することができないため、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1ないし4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものであると主張している。
しかしながら、発明の詳細な説明の段落【0052】ないし【0057】には、必要なスラグ温度を確保できるように、石炭コークス使用率を削減し、最大の石炭コークス削減率を求めることが明確に記載されており、当該記載に基づいて、当業者が「最小限の供給量」を決定することができると認める。
してみると、上記主張は理由がない。

(3)特許法第36条第6項第1号
異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、訂正前の請求項1ないし4には、バイオ成形物の揮発分の有効利用という課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなるため、発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであると主張している。
しかしながら、本件訂正により、請求項1に、バイオマス成形物の揮発分の放出を抑制して廃棄物溶融炉下部まで降下したバイオマス成形物の揮発分を燃焼するとの記載が追加されたから、請求項1ないし4には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていると認める。
してみると、上記主張は理由がない。

6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物溶融炉に廃棄物を投入し廃棄物を熱分解、燃焼し、熱分解燃焼残渣を溶融する廃棄物溶融処理方法において、
石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入し、廃棄物溶融炉の下部に石炭コークスで高温火格子を形成する高温火格子形成工程と、バイオマス成形物を廃棄物溶融炉に投入し、廃棄物溶融炉下部まで降下到達させるバイオマス成形物投入降下工程と、熱分解燃焼残渣を溶融する熱分解燃焼残渣溶融工程とを有し、
高温火格子形成工程は、石炭コークスにより形成された高温火格子が、石炭コークス同士間に生じる空隙により燃焼ガスの上昇通気と溶融物の降下通液とを確保することに必要な最小限の石炭コークス供給量で、石炭コークスを廃棄物溶融炉に投入することとし、
バイオマス成形物投入降下工程は、次の第一ないし第四の工程を有し、
第一の工程が、その灰分中にSiO_(2)を80重量%以上、K_(2)Oを0.3重量%以上含む組成であり、灰分の融点が800℃より低いバイオマス原料を、常温で、又はバイオマス原料の揮発分が揮発し始める温度より低い温度に加熱し、バイオマス原料の揮発分の揮発を抑制しながら加圧成形することにより、揮発分を含有しているバイオマス成形物を、廃棄物溶融炉に投入する工程であり、
第二の工程が、第一の工程で廃棄物溶融炉に投入されたバイオマス成形物を加熱してバイオマス原料粒子を熱分解して灰分粒子を発生させ、さらに灰分粒子の表面を灰分の融点温度以上にして灰分を溶融して、灰分粒子の表面に融液を発生させる工程であり、
第三の工程が、廃棄物溶融炉内でバイオマス成形物のバイオマス原料粒子が熱分解されて生じる炭化物粒子、熱分解途中のバイオマス原料粒子及び灰分粒子とを、第二の工程で灰分粒子の表面の溶融により生じた融液により融着して、バイオマス成形物を構成するそれぞれの粒子を結合させ、バイオマス成形物の崩壊を抑制し成形物形状を維持するように処理する工程であり、
第四の工程が、第三の工程により崩壊を抑制され成形物形状を維持するように処理されたバイオマス成形物を、廃棄物溶融炉内を下降する間の崩壊を抑制されることによりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制しながら、廃棄物溶融炉下部まで降下到達させる工程であり、
熱分解燃焼残渣溶融工程は、高温火格子形成工程で形成した高温火格子で、石炭コークスと、バイオマス成形物投入降下工程によりバイオマス成形物の揮発分の放出を抑制して廃棄物溶融炉下部まで降下したバイオマス成形物の揮発分および固定炭素とを燃焼して発生する燃焼熱により熱分解燃焼残渣を溶融することとすることを特徴とする廃棄物の溶融処理方法。
【請求項2】
バイオマス原料は、米籾殻、麦籾殻、稲藁及び麦藁のうち少なくとも一つを含むこととする請求項1に記載の廃棄物の溶融処理方法。
【請求項3】
バイオマス成形物は、みかけ密度が1.2g/cm3以上であり、バイオマス成形物を構成する粒子が緻密に圧接されており、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉内を下降する間に、粒子が融着結合され崩壊することなく、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉下部まで成形物形状を維持して到達するようにする性状を有することとする請求項1又は請求項2に記載の廃棄物の溶融処理方法。
【請求項4】
バイオマス成形物は、1個当たりの重量が100g以上であり、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉内を下降し下部まで到達するまでの時間を、バイオマス成形物が廃棄物溶融炉下部まで到達するまでの間に放出される揮発分の割合を抑制する長さにする重量であることとする請求項3に記載の廃棄物の溶融処理方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-11-08 
出願番号 特願2011-251362(P2011-251362)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (F23G)
P 1 651・ 113- YAA (F23G)
P 1 651・ 121- YAA (F23G)
P 1 651・ 536- YAA (F23G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 西山 智宏
松下 聡
登録日 2015-10-02 
登録番号 特許第5811501号(P5811501)
権利者 JFEエンジニアリング株式会社
発明の名称 廃棄物溶融処理方法  
代理人 藤岡 努  
代理人 藤岡 徹  
代理人 藤岡 徹  
代理人 阿部 寛  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 黒木 義樹  
代理人 藤岡 努  
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