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審決分類 |
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A63F 審判 一部申し立て 2項進歩性 A63F 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 A63F 審判 一部申し立て 特174条1項 A63F |
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管理番号 | 1336160 |
異議申立番号 | 異議2017-700325 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-04-03 |
確定日 | 2017-12-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6002863号発明「ゲーム制御方法、コンピュータ及び制御プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6002863号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕、8、9について訂正することを認める。 特許第6002863号の請求項3、4及び6ないし9に係る特許を維持する。 特許第6002863号の請求項1及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許6002863号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成27年3月30日を出願日とする特願2015-70326号(以下「原出願」という。)の一部を、平成27年11月12日に新たな特許出願とした特願2015-222431号の一部を、さらに平成28年6月9日に新たな特許出願としたもので、平成28年9月9日に特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人山田宏基(以下「異議申立人」という。)により請求項1及び3ないし9に対して特許異議の申立てがされ、平成29年6月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月4日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、同年10月3日付けで特許異議申立人に対して本件訂正請求があった旨の通知がされたところ、指定期間内に特許異議申立人から意見書が提出されなかったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記変更するゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更することを更に含む、請求項1に記載のゲーム制御方法。」とあるのを、「記憶部を備えるコンピュータのゲーム制御方法であって、それぞれがパラメータを有する複数のゲーム媒体からなる選択対象を前記記憶部に記憶し、プレイヤからの要求に従って、前記選択対象に含まれる複数のゲーム媒体のうちのいずれかのゲーム媒体を選択し、前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更し、前記ゲーム媒体の数が変更された選択対象を前記記憶部に記憶する、ことを含むことを特徴とするゲーム制御方法。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2」とあるのを、「請求項2」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?3のいずれか一項」とあるのを、「請求項2」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれか一項」とあるのを、「請求項2、3又は4」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれか一項」とあるのを、「請求項2、3、4又は6」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に「前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を変更し」とあるのを、「前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更し」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に「前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を変更し」とあるのを、「前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更し」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 上記訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記訂正事項1に係る訂正が、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかである。 (2)訂正事項2について 上記訂正事項2は、請求項1を引用する訂正前の請求項2について、請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項へ改めるものである。 また、上記訂正事項2に係る訂正が、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかである。 (3)訂正事項3について 上記訂正事項3は、請求項1の削除に伴って、請求項3が引用する請求項から請求項1を除外するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記訂正事項3に係る訂正が、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかである。 (4)訂正事項4について 上記訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載が請求項1ないし3のいずれかの記載を引用するものであったものを、請求項1及び3の記載を引用しないものとし、請求項2の記載のみを引用するようにするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記訂正事項4に係る訂正が、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかである。 (5)訂正事項5について 上記訂正事項5は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記訂正事項5に係る訂正が、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかである。 (6)訂正事項6及び7について 上記訂正事項6及び7は、請求項1及び5の削除に伴って、請求項6及び7が引用する請求項からそれぞれ請求項1及び5を除外するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記訂正事項6及び7に係る訂正が、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかである。 (7)訂正事項8について 上記訂正事項8は、訂正前の請求項8に係る発明の「変更部」が「ゲーム媒体の数を変更」する際に、「ゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更」することを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、上記訂正事項8は、特許明細書の「また、決定部337は、プレイヤテーブルに記憶されたプレイヤレベル又は関連プレイヤIDの数に応じて、プレイヤテーブルの抽選対象グループから削除又は追加するグループ又はキャラクタカードの数を変更してもよい。」(段落【0136】)という記載から導き出される事項であるから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。 そして、上記訂正事項8に係る訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。 (8)訂正事項9について 上記訂正事項9は、訂正前の請求項9に係る発明が「ゲーム媒体の数を変更」する際に、「ゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更」することを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、上記訂正事項9は、特許明細書の「また、決定部337は、プレイヤテーブルに記憶されたプレイヤレベル又は関連プレイヤIDの数に応じて、プレイヤテーブルの抽選対象グループから削除又は追加するグループ又はキャラクタカードの数を変更してもよい。」(段落【0136】)という記載から導き出される事項であるから、特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。 そして、上記訂正事項9に係る訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないことは明らかである。 (9)一群の請求項について 訂正事項1ないし9に係る訂正前の請求項1ないし7は、請求項2ないし7がそれぞれ請求項1を引用するものであるから、一群の請求項である。 また、訂正後の請求項1ないし7は、一群の請求項である。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?7〕、8、9について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし9に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明9」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 記憶部を備えるコンピュータのゲーム制御方法であって、 それぞれがパラメータを有する複数のゲーム媒体からなる選択対象を前記記憶部に記憶し、 プレイヤからの要求に従って、前記選択対象に含まれる複数のゲーム媒体のうちのいずれかのゲーム媒体を選択し、 前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更し、 前記ゲーム媒体の数が変更された選択対象を前記記憶部に記憶する、 ことを含むことを特徴とするゲーム制御方法。 【請求項3】 前記ゲーム媒体の数の変更において、前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を減少させる、請求項2に記載のゲーム制御方法。 【請求項4】 前記ゲーム媒体の数の変更において、前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を増加させる、請求項2に記載のゲーム制御方法。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 前記コンピュータは、出力部をさらに備え、 パラメータごとに、各パラメータを有するゲーム媒体が選択される確率を表示するための表示データを前記出力部に出力する、請求項2、3又は4のいずれか一項に記載のゲーム制御方法。 【請求項7】 前記パラメータは、レア度又は属性である、請求項2、3、4又は6のいずれか一項に記載のゲーム制御方法。 【請求項8】 それぞれがパラメータを有する複数のゲーム媒体からなる選択対象を記憶する記憶部と、 プレイヤからの要求に従って、前記選択対象に含まれる複数のゲーム媒体のうちのいずれかのゲーム媒体を選択する選択部と、 前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更し、前記ゲーム媒体の数が変更された選択対象を前記記憶部に記憶する変更部と、 を備えることを特徴とするコンピュータ。 【請求項9】 記憶部を備えるコンピュータの制御プログラムであって、 それぞれがパラメータを有する複数のゲーム媒体からなる選択対象を前記記憶部に記憶し、 プレイヤからの要求に従って、前記選択対象に含まれる複数のゲーム媒体のうちのいずれかのゲーム媒体を選択し、 前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更し、前記ゲーム媒体の数が変更された選択対象を前記記憶部に記憶する、 ことを前記コンピュータに実行させることを特徴とする制御プログラム。」 2 取消理由通知に記載した取消理由の概要 訂正前の請求項1及び3ないし9に係る特許に対して平成29年3月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)平成28年6月9日付けの訂正前の請求項5についての手続補正は、本件特許の原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、請求項5並びに同項を引用する請求項6及び7に係る特許は、特許法第17条の2第3項の規定に違反する特許出願に対してされたものである。 (2)訂正前の請求項5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項5並びに同項を引用する請求項6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)訂正前の請求項3を引用する請求項4の「前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を増加させる」という記載は不明確であるから、請求項4並びに同項を引用する請求項6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (4)訂正前の請求項1、3及び7ないし9に係る発明はそれぞれ、甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明と同一であるか、甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、訂正前の請求項4及び5に係る発明はそれぞれ、甲第2号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、訂正前の請求項6に係る発明は、は甲第2号証に記載された発明と同一であるか、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、訂正前の請求項1、3及び6ないし9に係る発明は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、訂正前の請求項1及び3ないし9に係る発明は同条第2項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証:特開2013-247977号公報(以下「甲1文献」という。) 甲第2号証:特開2014-195530号公報(以下「甲2文献」という。) 甲第6号証:特開2014-198246号公報(以下「甲6文献」という。) 3 取消理由通知に記載した取消理由についての判断 (1)特許法第17条の2第3項及び第36条第6項第1号について 本件訂正により、請求項5は削除された。 また、本件訂正により、請求項6及び7は請求項5を引用しないものとなった。よって、本件発明6及び7に係る特許を、上記2(1)及び(2)の理由により取り消すことはできない。 (2)特許法第36条第6項第2号について 本件訂正により、請求項4は請求項3を引用しないものとなり、訂正前請求項3の記載と訂正前請求項4の記載との矛盾が解消されたから、請求項4並びに同項を引用する請求項6及び7の記載は明確となった。よって、本件発明4、6及び7に係る特許を、上記2(3)の理由により取り消すことはできない。 (3)特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について 本件訂正により、請求項1及び5は削除された。 以下、本件発明3、4及び6ないし9について検討する。 ア.甲各号証に記載された発明 (ア)甲1文献 取消理由で通知した本件特許の原出願の出願日前に頒布された刊行物である甲1文献(特開2013-247977号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a.「【0027】 次に、図1に示した各構成要素によって実現されるサーバ装置10の機能について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るサーバ装置10の機能を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態に係るサーバ装置10は、ゲーム進行制御部51と、デッキ識別情報記憶部52と、収容ゲーム媒体情報記憶部53と、当選ゲーム媒体選択部54と、更新部55と、保有ゲーム媒体情報記憶部56と、初期化処理部57と、収容ゲーム媒体情報提供部58と、を備える。詳細な説明は省略するが、サーバ装置10は、ゲームの開始時のプレイヤの認証処理やゲームの進行に応じて発生する課金処理を行う課金処理部を備えてもよい。これらの機能は、CPU11の制御によりメインメモリ12に所定のプログラムをロードし、CPU11が当該プログラムの指令に基づく演算を実行することにより実現される。」 b.「【0031】 端末装置30においては、様々なゲームが実行される。端末装置30において実行されるゲームにおいては、電子的なカード、アイテム、ゲーム内で利用可能な仮想通貨等の様々なゲーム媒体が用いられる。ゲーム媒体は、ゲームの進行のためにプレイヤによって用いられる電子データの総称であり、例えば、カード、アイテム、キャラクタ、及びアバタを含む。本発明の一態様において、ゲーム媒体は、ゲームの進行に応じ、プレイヤによって、ゲーム内で、取得、保有、使用、管理、交換、合成、強化、売却、廃棄、及び/又は贈与等され得るが、ゲーム媒体の利用態様は本明細書で明示されるものには限られない。ゲーム内でカードを売却する場合には、現実の通貨ではなく、ゲーム内で使用される仮想通貨がカードを売却する対価としてプレイヤに支払われてもよい。ゲーム媒体には、例えば、ゲームの進行において適宜参照される属性情報(例えば,「レアリティ(rarity)」「レベル」,「攻撃力」,「防御力」,「ゲーム媒体の名称」等)が設定される。これらの属性情報の少なくとも一部はゲームの進行に伴って更新され得る。プレイヤは,更新された属性情報を有するゲーム媒体を用いてゲームを進行させることができる。例えば,カードゲームにおいては,プレイヤは,ゲーム内で一又は複数のカードを保有し,その保有するカードを用いてミッションを攻略したり,当該カードを用いて他のプレイヤやノンプレイヤキャラクタと対戦することによりゲームを進行させることができる。本出願人は,Mobage(登録商標)プラットフォーム上において,様々な種類のカードゲームを提供している。」 c.「【0035】 各デッキに収容されているゲーム媒体に関する情報(以下,「収容ゲーム媒体情報」と呼ぶことがある。)は,収容ゲーム媒体情報記憶部53によって記憶される。収容ゲーム媒体情報記憶部53は,例えば,外部メモリ15や外部のデータベースサーバ等に設けられる収容ゲーム媒体情報管理テーブルにより実現される。図5は,収容ゲーム媒体情報管理テーブルの一例を示す。図示のとおり,収容ゲーム媒体情報管理テーブルには,デッキ識別情報に対応付けて,当該デッキ識別情報で識別されるデッキに収容される一又は複数のゲーム媒体に関する収容ゲーム媒体情報が記憶されている。収容ゲーム媒体情報には,当該デッキに収容されているゲーム媒体(又はその種別)を識別するゲーム媒体識別情報と,当該ゲーム媒体の「レアリティ値」,「総収容個数」,及び「収容個数」が含まれ得る。」 d.「【0043】 当選ゲーム媒体選択部54は,プレイヤからのゲーム媒体取得要求に応じて,当該プレイヤに割り当てられているデッキに収容されているゲーム媒体の中から,所定の抽選アルゴリズムに従って,一又は複数の当選ゲーム媒体を選択する。例えば,プレイヤ1が端末装置30に操作入力を行うことにより,サーバ装置10においてプレイヤ1の端末装置30からのゲーム媒体取得要求が取得された場合には,図4のデッキ識別情報管理テーブルにおいてプレイヤ1のプレイヤ識別番号「000001」と対応付けられているデッキ識別番号「D000001」を特定し,このデッキ識別番号「D000001」で識別されるデッキ1に収容されているゲーム媒体の中から当選ゲーム媒体が選択される。図4の例のように,デッキ1がプレイヤ1にのみ割り当てられている場合には,プレイヤ1以外からゲーム媒体取得要求を受信しても,デッキ1に収容されているゲーム媒体の中から当選ゲーム媒体が選択されることはない。」 e.「【0047】 更新部55は,当選ゲーム媒体選択部54によって,デッキ中のゲーム媒体から選択された当選ゲーム媒体を当該デッキから削除する。例えば,図5に示した例において1個のゲーム媒体1が当選ゲーム媒体選択部54によって選択された場合には,「M000001」に対応付けて記憶されている「収容個数」を「32」から「31」へ減少させる。これにより,ゲーム媒体1が,1個,デッキ1から削除される。このように,本明細書において,当選ゲーム媒体をデッキから削除するというときには,当該当選ゲーム媒体の収容個数を減少させることが含まれる。当選ゲーム媒体が複数個選択される場合には,その選択された個数だけデッキにおいて当該当選ゲーム媒体に対応付けられている収容個数を減少させる。例えば,当選ゲーム媒体選択部54によって3個のゲーム媒体1が当選ゲーム媒体として選択された場合には,「M000001」に対応付けて記憶されている「収容個数」を「32」から「29」へ減少させる。このように,更新部55は,当選ゲーム媒体選択部54によって選択された当選ゲーム媒体をデッキから削除することにより,当該デッキに対応付けら得ている収容ゲーム媒体情報の少なくとも一部を更新することができる。」 上記の記載事項を総合すると、甲1文献には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「サーバ装置は、収容ゲーム媒体情報記憶部と、当選ゲーム媒体選択部と、更新部とを備え、 ゲーム媒体には、ゲームの進行において適宜参照される属性情報(例えば、「レアリティ(rarity)」「レベル」、「攻撃力」、「防御力」、「ゲーム媒体の名称」等)が設定され、 各デッキに収容されているゲーム媒体に関する情報は、収容ゲーム媒体情報記憶部によって記憶され、 当選ゲーム媒体選択部は、プレイヤからのゲーム媒体取得要求に応じて、当該プレイヤに割り当てられているデッキに収容されているゲーム媒体の中から、所定の抽選アルゴリズムに従って、一又は複数の当選ゲーム媒体を選択し、 更新部は、当選ゲーム媒体選択部によって、デッキ中のゲーム媒体から選択された当選ゲーム媒体を当該デッキから削除する サーバ装置。」 (イ)甲2文献 取消理由で通知した本件特許の原出願の出願日前に頒布された刊行物である甲2文献(特開2014-195530号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a.「【0007】 そこで、本発明は、ユーザが継続して抽選機能を実行することを動機付けられるようにしたゲーム制御装置、抽選装置、ゲーム制御方法、プログラム、ゲームシステムを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の第1の観点は、ゲーム制御装置である。 このゲーム制御装置は、 複数のオブジェクトからなる抽選対象の情報をユーザに対応付ける対応付け手段(52)、 前記ユーザの入力情報に基づいて、前記抽選対象の中から前記ユーザに付与されるオブジェクトを抽選により選択する選択手段(53)、 前記選択手段(53)によって選択された第1オブジェクトを前記ユーザに付与する付与手段(54)、 前記第1オブジェクトの情報、及び、前記第1オブジェクトと所定の関係を満たす第2オブジェクトの情報に基づき、前記抽選対象の情報の内容を変更する変更手段(55)、 の各手段を備える。」 b.「【0010】 本発明において「オブジェクト」とは、例えば、仮想的なキャラクタ、カードやアイテム等を含む。キャラクタは、例えばゲーム上の仮想的な人物や生物、若しくはモンスター等であり、それらがカードに表示されているものをも含む。 本発明において、「抽選対象の情報」は、抽選対象を構成する複数のオブジェクトの構成に関する情報、各オブジェクトの名称、オブジェクトに対応付けられた識別情報、指標(パラメータを含む)、属性情報等を含む。オブジェクトの構成に関する情報には、対応付けられた指標毎のオブジェクトの数や組み合わせ、指標毎のオブジェクトの抽選確率に関する情報を含む。 本発明において、「所定の関係」とは、オブジェクト同士の間にゲーム上の関連性の有る場合を含む。例えば、オブジェクト同士に同一又は関連するオブジェクト情報が対応付けられている場合を含む。例えば、オブジェクト同士に同一の属性情報が対応付けられている場合に、オブジェクト同士が所定の関係にあると規定してもよい。 本発明において、抽選対象の情報の内容を変更することには、第1のオブジェクトと所定の関係を満たす第2オブジェクトの一部又は全てを抽選対象から除外することを含む。なお、各オブジェクトに関連付けられる他のオブジェクトの数は、オブジェクト情報に応じて異なってもよい。各オブジェクトに関連付けられる他のオブジェクトの数が異なるようにオブジェクト情報を規定すると、選択される第1オブジェクトのオブジェクト情報に応じて所定の関係にある第2オブジェクトの数が変化し、抽選対象の情報の内容が変化に富み、その後の抽選に対するユーザの興味を維持させることができる。 このように、このゲーム制御装置によれば、ユーザに付与された第1オブジェクトの情報に基づいて、抽選対象の情報の内容を変更することで、単調さをなくし、ユーザが継続して抽選機能を実行することを動機付けることができる。」 c.「【0058】 対応付け手段52は、ユーザ毎に複数のカードからなる抽選対象をユーザに対応付けてデータベースサーバ30に記憶させる機能を備える。カードはゲーム上のオブジェクトの一例であり、カード以外の所定のアイテムを抽選対象としてユーザに対応付けてもよい。また、データベースサーバ30は記憶装置の一例であり、他の記憶装置に記憶させてもよい。対応付け手段52の機能は、例えば以下のようにして実現される。 CPU21は、ユーザ:Aに抽選対象となる複数のカードを対応付けることを決定すると、抽選IDを決定することで、ユーザ:Aの抽選対象となる複数のカードを決定する。具体的には、CPU21は、ユーザデータベースにアクセスし、ユーザ:AのユーザIDに対応する「抽選ID」の欄に決定した抽選IDを書き込む。なお、CPU21は、あらかじめ抽選ID毎に抽選対象を規定して抽選対象データベースに記録しておき、抽選IDをユーザIDに対応付けるだけでもよいし、ユーザ:Aに抽選対象となる複数のカードを対応付ける段階で、抽選IDに対応する抽選対象を決定して抽選対象データベースに記録してもよい。 抽選対象は、所定の規則に従って決定することができる。例えば、抽選対象のレア度毎の初期枚数が所定枚数(例えば、図9のP2に例示する初期枚数)あるいは所定比率となるように、抽選対象となる複数のカードの指標を決定することで、抽選ID毎に抽選対象を規定してもよい。ここで、カード情報として対応付けられる指標が複数存在する場合、それらの一部のみを規定しても良い。つまり、複数の指標のそれぞれに異なるデータ列が存在する場合に、これらの指標ごとのデータ列のデータの全てを決定していてもよいし、一部のみを決定してもよい。例えば、レア度を示す指標(文字又は指数)のデータのみを決定し、他の指標に関するデータ列を任意データとして決定してもよい。なお、カード情報の一部のデータを規定する場合に、複数の指標(例えば、レア度及びパラメータ)のみを規定してもよいし、1又は複数の指標とともに指標以外のデータ(たとえば、属性情報等)を規定してもよい。」 d.上記c.の「カードはゲーム上のオブジェクトの一例であり」(【0058】)との記載から、「カード」が「オブジェクト」であることは明らかである。 上記の記載事項を総合すると、甲2文献には、次の発明が記載されているものと認められる。 「ゲーム制御装置は、 複数のオブジェクトからなる抽選対象の情報をユーザに対応付ける対応付け手段、 前記ユーザの入力情報に基づいて、前記抽選対象の中から前記ユーザに付与されるオブジェクトを抽選により選択する選択手段、 前記選択手段によって選択された第1オブジェクトを前記ユーザに付与する付与手段、 前記第1オブジェクトの情報、及び、前記第1オブジェクトと所定の関係を満たす第2オブジェクトの情報に基づき、前記抽選対象の情報の内容を変更する変更手段、 の各手段を備え、 「抽選対象の情報」は、抽選対象を構成する複数のオブジェクトの構成に関する情報、各オブジェクトの名称、オブジェクトに対応付けられた識別情報、指標(パラメータを含む)、属性情報等を含み、 オブジェクト同士に同一の属性情報が対応付けられている場合に、オブジェクト同士が所定の関係にあると規定し、 抽選対象の情報の内容を変更することは、第1のオブジェクトと所定の関係を満たす第2オブジェクトの一部又は全てを抽選対象から除外することを含み、 対応付け手段は、ユーザ毎に複数のオブジェクトからなる抽選対象をユーザに対応付けてデータベースサーバに記憶させる ゲーム制御装置。」(以下「甲2発明A」という。) 「ゲーム制御装置は、 複数のオブジェクトからなる抽選対象の情報をユーザに対応付ける対応付け手段、 前記ユーザの入力情報に基づいて、前記抽選対象の中から前記ユーザに付与されるオブジェクトを抽選により選択する選択手段、 前記選択手段によって選択された第1オブジェクトを前記ユーザに付与する付与手段、 前記第1オブジェクトの情報、及び、前記第1オブジェクトと所定の関係を満たす第2オブジェクトの情報に基づき、前記抽選対象の情報の内容を変更する変更手段、 の各手段を備え、 「抽選対象の情報」は、抽選対象を構成する複数のオブジェクトの構成に関する情報、各オブジェクトの名称、オブジェクトに対応付けられた識別情報、指標(パラメータを含む)、属性情報等を含み、 オブジェクト同士に同一の属性情報が対応付けられている場合に、オブジェクト同士が所定の関係にあると規定し、 抽選対象の情報の内容を変更することは、第1のオブジェクトと所定の関係を満たす第2オブジェクトの一部又は全てを抽選対象から除外することを含み、 対応付け手段は、ユーザ毎に複数のオブジェクトからなる抽選対象をユーザに対応付けてデータベースサーバに記憶させる ゲーム制御方法。」(以下「甲2発明B」という。) (ウ)甲6文献 取消理由で通知した本件特許の原出願の出願日前に頒布された刊行物である甲6文献(特開2014-198246号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a.「【請求項1】 希少価値の異なる複数種類のアイテムを含むアイテムグループを抽選対象とする抽選手段と、 前記抽選手段で抽選されたアイテムを、ユーザに提供するアイテム提供手段と、 前記アイテム提供手段によるアイテムの提供回数を記憶部に記憶し、該記憶部に記憶された前記提供回数に応じて、前記アイテムグループに含まれるアイテムよりもアイテム種類の高い追加アイテムを前記ユーザに提供可能な追加アイテム提供手段と、 を備え、 前記追加アイテム提供手段は、前記記憶部に記憶された前記提供回数が所定回数以上である場合、前記アイテムグループに前記追加アイテムを追加することを特徴とするサーバ。」 上記の記載事項を総合すると、甲6文献には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものと認められる。 「希少価値の異なる複数種類のアイテムを含むアイテムグループを抽選対象とする抽選手段と、 前記抽選手段で抽選されたアイテムを、ユーザに提供するアイテム提供手段と、 前記アイテム提供手段によるアイテムの提供回数を記憶部に記憶し、該記憶部に記憶された前記提供回数に応じて、前記アイテムグループに含まれるアイテムよりもアイテム種類の高い追加アイテムを前記ユーザに提供可能な追加アイテム提供手段と、 を備え、 前記追加アイテム提供手段は、前記記憶部に記憶された前記提供回数が所定回数以上である場合、前記アイテムグループに前記追加アイテムを追加するサーバ。」 イ.本件発明8について まず、本件発明8について検討する。 本件発明8について通知した取消理由は、本件発明8は甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明と同一であるか、甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである。 a.甲1文献を主引例とした場合 (a)対比 本件発明8と甲1発明とを対比する。 後者の「属性情報」は、その機能、作用等からみて、前者の「パラメータ」に対応し、同様に、「ゲーム媒体」は「ゲーム媒体」に、「プレイヤ」は「プレイヤ」に、「サーバ装置」は「コンピュータ」にそれぞれ相当する。 後者においては「ゲーム媒体には、ゲームの進行において適宜参照される属性情報(例えば、「レアリティ(rarity)」「レベル」、「攻撃力」、「防御力」、「ゲーム媒体の名称」等)が設定され」るから、ゲーム媒体は属性情報を有している。また、「当選ゲーム媒体」は「デッキに収容されているゲーム媒体の中から」選択されるから、「各デッキに収容されているゲーム媒体」が選択の対象であり、複数あることは明らかである。そうすると、後者の「各デッキに収容されているゲーム媒体に関する情報」を記憶する「収容ゲーム媒体情報記憶部」は、前者の「それぞれがパラメータを有する複数のゲーム媒体からなる選択対象を記憶する記憶部」に相当する。 後者の「当選ゲーム媒体選択部」は、「プレイヤからのゲーム媒体取得要求に応じて、当該プレイヤに割り当てられているデッキに収容されているゲーム媒体の中から、所定の抽選アルゴリズムに従って、一又は複数の当選ゲーム媒体を選択」するから、前者の「プレイヤからの要求に従って、前記選択対象に含まれる複数のゲーム媒体のうちのいずれかのゲーム媒体を選択する選択部」に相当する。 後者の「更新部」は「当選ゲーム媒体選択部によって選択されたゲーム媒体が、更新部によってデッキから削除される」ものであって、後者においては「各デッキに収容されているゲーム媒体に関する情報は、収容ゲーム媒体情報記憶部によって記憶され」るのだから、デッキから削除されたゲーム媒体に関する情報が収容ゲーム媒体情報記憶部から削除されることは明らかである。そうすると、後者の当該「更新部」と、前者の「前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更し、前記ゲーム媒体の数が変更された選択対象を前記記憶部に記憶する変更部」とは、「選択対象のうちの選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を変更し、ゲーム媒体の数が変更された選択対象を記憶部に記憶する変更部」との概念で共通する。 したがって、本件発明8と甲1発明とは、 「それぞれがパラメータを有する複数のゲーム媒体からなる選択対象を記憶する記憶部と、 プレイヤからの要求に従って、前記選択対象に含まれる複数のゲーム媒体のうちのいずれかのゲーム媒体を選択する選択部と、 前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を変更し、前記ゲーム媒体の数が変更された選択対象を前記記憶部に記憶する変更部と、 を備えるコンピュータ。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 前者の「変更部」が、選択対象のうちの選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を「要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて」変更するのに対して、後者はそのようなものでない点。 (b)判断 上記(a)のとおり、本件発明8と甲1発明とは上記相違点1において相違するから、本件発明8は甲1発明ではない。 また、上記相違点1に係る本件発明8の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。 そして、本件発明8は、上記相違点1に係る本件発明8の発明特定事項を備えることによって、本願明細書に記載の「各プレイヤは、抽選ゲームにおいて抽選対象が劇的に変化するように、プレイヤレベル又は関連プレイヤの数を増大させるため、メインゲーム及び各プレイヤ間のコミュニケーションの活性化を図ることができる。」(段落【0136】)という作用効果を奏するものである。 したがって、本件発明8は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 a.甲2文献を主引例とした場合 (a)対比 本件発明8と甲2発明Aとを対比する。 後者の「識別情報、指標(パラメータを含む)、属性情報」は、その機能、作用等からみて、前者の「パラメータ」に相当し、同様に、「オブジェクト」は「ゲーム媒体」に、「ユーザ」は「プレイヤ」に、「ゲーム制御装置」は「コンピュータ」に、それぞれ相当する。 後者においては「抽選対象の情報」は「オブジェクトに対応付けられた識別情報、指標(パラメータを含む)、属性情報」を含むから、後者の、「ユーザ毎に複数のオブジェクトからなる抽選対象をユーザに対応付けて」記憶する「データベースサーバ」は、前者の「それぞれがパラメータを有する複数のゲーム媒体からなる選択対象を記憶する記憶部」に相当する。 後者の「前記ユーザの入力情報に基づいて、前記抽選対象の中から前記ユーザに付与されるオブジェクトを抽選により選択する選択手段」は、前者の「プレイヤからの要求に従って、前記選択対象に含まれる複数のゲーム媒体のうちのいずれかのゲーム媒体を選択する選択部」に相当する。 後者の「変更手段」は、「前記第1オブジェクトの情報、及び、前記第1オブジェクトと所定の関係を満たす第2オブジェクトの情報に基づき、前記抽選対象の情報の内容を変更する」ものである。そして、「所定の関係」は、「オブジェクト同士に同一の属性情報が対応付けられている場合に、オブジェクト同士が所定の関係にあると規定」するものであり、「抽選対象の情報の内容を変更する」ことは、「第1のオブジェクトと所定の関係を満たす第2オブジェクトの一部又は全てを抽選対象から除外することを含」むものである。そうすると、後者の当該「変更手段」と、前者の「前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更し、前記ゲーム媒体の数が変更された選択対象を前記記憶部に記憶する変更部」とは、「選択対象のうちの選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を変更し、ゲーム媒体の数が変更された選択対象を記憶部に記憶する変更部」との概念で共通する。 したがって、本件発明8と甲2発明Aとは、 「それぞれがパラメータを有する複数のゲーム媒体からなる選択対象を記憶する記憶部と、 プレイヤからの要求に従って、前記選択対象に含まれる複数のゲーム媒体のうちのいずれかのゲーム媒体を選択する選択部と、 前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を変更し、前記ゲーム媒体の数が変更された選択対象を前記記憶部に記憶する変更部と、 を備えるコンピュータ。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点2] 前者の「変更部」が、選択対象のうちの選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を「要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて」変更するのに対して、後者はそのようなものでない点。 (b)判断 上記(a)のとおり、本件発明8と甲2発明Aとは上記相違点2において相違するから、本件発明8は甲2発明Aではない。 また、上記相違点2に係る本件発明8の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。 そして、本件発明8は、上記相違点2に係る本件発明8の発明特定事項を備えることによって、本願明細書に記載の「各プレイヤは、抽選ゲームにおいて抽選対象が劇的に変化するように、プレイヤレベル又は関連プレイヤの数を増大させるため、メインゲーム及び各プレイヤ間のコミュニケーションの活性化を図ることができる。」(段落【0136】)という作用効果を奏するものである。 したがって、本件発明8は、当業者が甲2発明Aに基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 ウ.本件発明3及び7について 本件発明3及び7について通知した取消理由は、本件発明3及び7は甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明と同一であるか、甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである。 本件発明2は本件発明8の「コンピュータ」に対応する「ゲーム制御方法」の発明であって、本件発明8と実質的に同一の発明特定事項を備えるものであり、本件発明3及び7は本件発明2をさらに限定したものである。 そうすると、本件発明3及び7は、本件発明8と同様に、甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明ではない。 また、本件発明3及び7は、本件発明8と同様に、当業者が甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 エ.本件発明4について 本件発明4について通知した取消理由は、本件発明4は甲第2号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである。 本件発明2は本件発明8の「コンピュータ」に対応する「ゲーム制御方法」の発明であって、本件発明と実質的に同一の発明特定事項を備えるものであり、本件発明4は本件発明2をさらに限定したものである。 そこで、上記イ.における本件発明8についての検討を踏まえて本件発明4と甲2発明Bとを対比すると、両者は、 「記憶部を備えるコンピュータのゲーム制御方法であって、 それぞれがパラメータを有する複数のゲーム媒体からなる選択対象を前記記憶部に記憶し、 プレイヤからの要求に従って、前記選択対象に含まれる複数のゲーム媒体のうちのいずれかのゲーム媒体を選択し、 前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を変更し、前記ゲーム媒体の数が変更された選択対象を前記記憶部に記憶する、 ことを含むゲーム制御方法。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点3] 前者が、ゲーム媒体の数の変更において、選択対象のうちの選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を「要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて」変更するのに対して、後者はそのようなものでない点。 [相違点4] 前者が、ゲーム媒体の数の変更において、選択対象のうちの選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を「増加させる」のに対して、後者はそのようなものでない点。 上記相違点3について検討する。 甲6発明の「アイテム」は本件発明4の「ゲーム媒体」に相当する。 しかしながら、甲6発明はゲーム媒体の数をアイテム提供手段によるアイテムの提供回数に応じて変更するものの、要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更するものではない。 そうすると、甲2発明Bに甲6発明を適用しても、上記相違点3に係る本件発明4の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 また、上記相違点3に係る本件発明4の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。 そして、本件発明4は、上記相違点3に係る本件発明4の発明特定事項を備えることによって、本願明細書に記載の「各プレイヤは、抽選ゲームにおいて抽選対象が劇的に変化するように、プレイヤレベル又は関連プレイヤの数を増大させるため、メインゲーム及び各プレイヤ間のコミュニケーションの活性化を図ることができる。」(段落【0136】)という作用効果を奏するものである。 したがって、本件発明4は、当業者が甲2発明B及び甲6発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 オ.本件発明6について 本件発明6について通知した取消理由は、本件発明6は甲第2号証に記載された発明と同一であるか、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである。 本件発明2は本件発明8の「コンピュータ」に対応する「ゲーム制御方法」の発明であって、本件発明8と実質的に同一の発明特定事項を備えるものであり、本件発明6は本件発明2をさらに限定したものである。 そうすると、本件発明6は、本件発明8と同様に、甲第2号証に記載された発明ではない。 また、本件発明6は、本件発明8と同様に、当業者が甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 カ.本件発明9について 本件発明9について通知した取消理由は、本件発明9は甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明と同一であるか、甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである。 本件発明9は本件発明8の「コンピュータ」に対応する「制御プログラム」の発明であって、本件発明8と実質的に同一の発明特定事項を備えるものである。 そうすると、本件発明9は、本件発明8と同様に、甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明ではない。 また、本件発明9は、本件発明8と同様に、当業者が甲第1号証に記載された発明または甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)特許法第17条の2第3項及び第36条第6項第1号について 異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許の原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)には「ゲーム媒体の数をグループ単位で増加させる態様」のみであって、請求項4の「前記ゲーム媒体の数の変更において、前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を増加させる」ことは、当初明細書等に記載されていない。したがって、請求項4に当該事項を追加する手続補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、また、請求項4に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでないと主張している(特許異議申立書第38ページ第13?24行及び第39ページ第23行?第40ページ第12行)。 しかしながら、当初明細書等の段落【0029】には「なお、サーバは、次の抽選では、抽選対象のキャラクタカードに、選択されたキャラクタカードが属するグループと同じグループに属するキャラクタカードをさらに追加(補充)してもよい。」と記載されており、当該記載によれば、増加させるゲーム媒体の数はグループ単位に限られるものではない。 また、当初明細書等の段落【0099】には「なお、決定部337は、選択されたキャラクタカードが属するグループIDに対応する全てのキャラクタカードを次の抽選対象から削除するのではなく、一部のキャラクタカードは残してもよい。」と記載されており、ゲーム媒体の数を増加させる場合にも、当該記載におけるゲーム媒体を削除する場合と同様に、グループの一部のゲーム媒体の数を増加させることは、当業者にとって自明な事項であるといえる。 したがって、異議申立人のかかる主張は理由がない。 (3)特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について 異議申立人は、特許異議申立書において、以下の甲第3号証ないし甲第5号証及び甲第7号証ないし甲第13号証を挙げて、概ね以下の通り主張している。 甲第3号証:特開2014-213137号公報 甲第4号証:特開2015-47469号公報 甲第5号証:特開2014-68731号公報 甲第7号証:ukdate,“課金ガチャが9月から確率表示するようになったけど”,[online],2012年9月9日,ブログ運営のためのブログ運営,[平成29年3月23日印刷],インターネット<URL:https://web.archhive,org/web/20121020044700/http://ukdata.blog38.fc2.com/blog-entry-2136.html> 甲第8号証:しほね,“まどおん パッケージガチャ到来”,[online],2013年2月5日,何の変哲も無いブログだったぁ!!,[平成29年1月17日印刷],インターネット<URL:http://ameblo.jp/shihone/entry-11464610012.html> 甲第9号証:特開2015-51297号公報 甲第10号証:特開2014-180334号公報 甲第11号証:特開2013-75163号公報 甲第12号証:特開2014-113220号公報 甲第13号証:特開2014-217485号公報 ア.本件発明1は、甲第3号証ないし甲第5号証に示されるように、本件特許の原出願の出願日前に周知の技術事項である(特許異議申立書第22ページ第6?16行)。 イ.本件発明6は、当業者が甲第2号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書第34ページ第11行?最下行)。 ウ.本件発明6は、当業者が甲第2号証に記載された発明並びに甲第9号証ないし甲第11号証に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書第35ページ第13行?最下行)。 エ.本件発明7は、当業者が甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明並び甲第12号証及び甲第13号証に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである(特許異議申立書第37ページ第8?18行)。 しかしながら、本件訂正により、請求項1は削除された。また、甲第3号証ないし甲第5号証には、上記3(3)イ.における相違点1に係る発明特定事項は記載されていない。 また、甲第7号証ないし甲第11号証には、上記3(3)イ.における相違点2に係る発明特定事項は記載されていない。 また、甲第12号証及び甲第13号証には、上記3(3)イ.における相違点1又は2に係る発明特定事項は記載されていない。 したがって、異議申立人のかかる主張は理由がない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明3、4及び6ないし9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明3、4及び6ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項1及び5に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1及び5に対して特許異議申立人がした特許異議の申立については、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 記憶部を備えるコンピュータのゲーム制御方法であって、 それぞれがパラメータを有する複数のゲーム媒体からなる選択対象を前記記憶部に記憶し、 プレイヤからの要求に従って、前記選択対象に含まれる複数のゲーム媒体のうちのいずれかのゲーム媒体を選択し、 前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更し、前記ゲーム媒体の数が変更された選択対象を前記記憶部に記憶する、 ことを含むことを特徴とするゲーム制御方法。 【請求項3】 前記ゲーム媒体の数の変更において、前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を減少させる、請求項2に記載のゲーム制御方法。 【請求項4】 前記ゲーム媒体の数の変更において、前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を増加させる、請求項2に記載のゲーム制御方法。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 前記コンピュータは、出力部をさらに備え、 パラメータごとに、各パラメータを有するゲーム媒体が選択される確率を表示するための表示データを前記出力部に出力する、請求項2、3又は4に記載のゲーム制御方法。 【請求項7】 前記パラメータは、レア度又は属性である、請求項2、3、4又は6に記載のゲーム制御方法。 【請求項8】 それぞれがパラメータを有する複数のゲーム媒体からなる選択対象を記憶する記憶部と、 プレイヤからの要求に従って、前記選択対象に含まれる複数のゲーム媒体のうちのいずれかのゲーム媒体を選択する選択部と、 前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更し、前記ゲーム媒体の数が変更された選択対象を前記記憶部に記憶する変更部と、 を備えることを特徴とするコンピュータ。 【請求項9】 記憶部を備えるコンピュータの制御プログラムであって、 それぞれがパラメータを有する複数のゲーム媒体からなる選択対象を前記記憶部に記憶し、 プレイヤからの要求に従って、前記選択対象に含まれる複数のゲーム媒体のうちのいずれかのゲーム媒体を選択し、 前記選択対象のうちの前記選択されたゲーム媒体と同一のパラメータを有するゲーム媒体の数を、前記要求を行ったプレイヤのプレイヤレベル又は関連プレイヤの数に応じて変更し、前記ゲーム媒体の数が変更された選択対象を前記記憶部に記憶する、 ことを前記コンピュータに実行させることを特徴とする制御プログラム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-11-30 |
出願番号 | 特願2016-115668(P2016-115668) |
審決分類 |
P
1
652・
113-
YAA
(A63F)
P 1 652・ 121- YAA (A63F) P 1 652・ 55- YAA (A63F) P 1 652・ 537- YAA (A63F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 彦田 克文 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
森次 顕 藤本 義仁 |
登録日 | 2016-09-09 |
登録番号 | 特許第6002863号(P6002863) |
権利者 | グリー株式会社 |
発明の名称 | ゲーム制御方法、コンピュータ及び制御プログラム |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 南山 知広 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 中澤 言一 |
代理人 | 三浦 剛 |
代理人 | 南山 知広 |
代理人 | 中澤 言一 |
代理人 | 三浦 剛 |
代理人 | 青木 篤 |