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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
管理番号 1336164
異議申立番号 異議2017-700588  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-13 
確定日 2017-12-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6044071号発明「液状硬化性樹脂組成物、これを用いた画像表示用装置の製造方法、及び画像表示用装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6044071号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。 特許第6044071号の請求項2ないし5に係る特許を維持する。 特許第6044071号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6044071号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成23年12月26日の出願であって、平成28年11月25日にその特許権の設定登録(設定登録時の請求項数7)がされ、その後、その特許に対し、平成29年6月13日に特許異議申立人 森岡 道朗(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされ、当審において同年8月7日付けで取消理由が通知され、同年10月5日に特許権者 日立化成株式会社より意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ、同年10月11日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年11月2日に特許異議申立人より意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
平成29年10月5日にされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記液状硬化性樹脂組成物において、(A)成分の含有量が8?40質量%、(B)成分の含有量が30?88質量%、(C)成分の含有量が3?25質量%、及び(D)成分の含有量が0.01?5質量%である、請求項1に記載の液状硬化性樹脂組成物。」と記載されているのを、
「(A)平均粒径が1nm?1μmであるシリカ粒子、
(B)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体、
(C)分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する低分子量単量体、及び
(D)重合開始剤、
を含み、
(A)成分の含有量が8?40質量%、(B)成分の含有量が30?88質量%、(C)成分の含有量が3?25質量%、及び(D)成分の含有量が0.01?5質量%であり、
(C)成分が、下記一般式(3)で表されるアルキル(メタ)アクリレート、分子内に(メタ)アクリル基及び水酸基を有する化合物、及びモルホリン基含有(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上を含有し、
【化1】

(上記一般式(3)中、R^(1)は水素原子又はメチル基を示し、R^(2)は炭素数6?18のアルキル基を示す。)
(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である、液状硬化性樹脂組成物。」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項2の記載を引用する請求項4ないし7についても、請求項2を訂正したことに伴う訂正をする。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である、請求項1又は2に記載の液状硬化性樹脂組成物。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「(A)平均粒径が1nm?1μmであるシリカ粒子、
(B)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体、
(C)分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する低分子量単量体、及び
(D)重合開始剤、
を含み、(A)成分の含有量が8?40質量%であり、(C)成分が、下記一般式(3)で表されるアルキル(メタ)アクリレート、分子内に(メタ)アクリル基及び水酸基を有する化合物、及びモルホリン基含有(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上を含有し、
【化2】

(上記一般式(3)中、R^(1)は水素原子又はメチル基を示し、R^(2)は炭素数6?18のアルキル基を示す。)
(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である、液状硬化性樹脂組成物。」に訂正する。
併せて、特許請求の範囲の請求項3の記載を引用する請求項4ないし7についても、請求項3を訂正したことに伴う訂正をする。

(4)訂正事項4
上記訂正事項1によって削除する請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項4ないし7を、上記訂正事項1に連動して、引用関係を整理する訂正をする。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件

(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるとともに、「(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である」という記載を追加するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、訂正前の請求項1及び3並びに願書に添付した明細書の【0043】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は2の記載を引用する記載であったものを、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項3は、訂正前の請求項1の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
さらに、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項1によって削除する請求項1を直接的に又は間接的に引用する請求項4ないし7における引用関係を整理する訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)一群の請求項
訂正前の請求項2ないし7は訂正前の請求項1を引用するものであるので、訂正前の請求項1ないし7は、一群の請求項である。したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとに請求されたものである。

(6)独立特許要件
特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし5に対してされているので、訂正後の請求項1ないし5に係る発明については、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
他方、訂正後の請求項6及び7は、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正がされた訂正後の請求項2を引用するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正がされたものである。そして、訂正前の請求項6及び7は特許異議の申立てがされていない請求項であるから、訂正後の請求項6及び7に係る発明については、訂正を認める要件として上記独立特許要件が課せられる。
そこで、訂正後の請求項6及び7に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

ア 訂正後の請求項6及び7に係る発明
訂正後の請求項6及び7は、訂正後の請求項2を引用するものであるから、まず、訂正後の請求項2に係る発明について検討する。
訂正後の請求項2に係る発明は、下記第3 1の【請求項2】に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、下記第3 2及び3のとおりであるから、訂正後の請求項2に係る発明は、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によって特許を受けることができないものではない。
そうすると、訂正後の請求項6及び7に係る発明は、下記第3 1の【請求項6】及び【請求項7】に記載された事項により特定されるとおりのものであり、訂正後の請求項2を引用するものであって、訂正後の請求項2に係る発明をさらに限定するものであるから、訂正後の請求項2に係る発明と同様に、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によって特許を受けることができないものではない。
また、他に訂正後の請求項6及び7に係る発明が特許を受けることができないとする理由も発見しない。

イ まとめ
したがって、訂正後の請求項6及び7に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(7)むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし4は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書き第1、3又は4号に掲げる事項を目的とするものである。
また、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとに請求された訂正であるから、同法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、訂正事項1ないし4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、訂正後の特許請求の範囲の請求項6及び7に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるので、同法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項並びに同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

したがって、本件訂正の請求は適法なものであり、訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、平成29年10月5日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(A)平均粒径が1nm?1μmであるシリカ粒子、
(B)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体、
(C)分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する低分子量単量体、及び
(D)重合開始剤、
を含み、
(A)成分の含有量が8?40質量%、(B)成分の含有量が30?88質量%、(C)成分の含有量が3?25質量%、及び(D)成分の含有量が0.01?5質量%であり、
(C)成分が、下記一般式(3)で表されるアルキル(メタ)アクリレート、分子内に(メタ)アクリル基及び水酸基を有する化合物、及びモルホリン基含有(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上を含有し、
【化1】

(上記一般式(3)中、R^(1)は水素原子又はメチル基を示し、R^(2)は炭素数6?18のアルキル基を示す。)
(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である、液状硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)平均粒径が1nm?1μmであるシリカ粒子、
(B)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体、
(C)分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する低分子量単量体、及び
(D)重合開始剤、
を含み、(A)成分の含有量が8?40質量%であり、(C)成分が、下記一般式(3)で表されるアルキル(メタ)アクリレート、分子内に(メタ)アクリル基及び水酸基を有する化合物、及びモルホリン基含有(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上を含有し、
【化2】

(上記一般式(3)中、R^(1)は水素原子又はメチル基を示し、R^(2)は炭素数6?18のアルキル基を示す。)
(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である、液状硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
実質的に有機溶媒を含有せず、25℃における粘度が500?25000mPa・sである、請求項2又は3のいずれかに記載の液状硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項2?4のいずれか一項に記載の液状硬化性樹脂組成物の硬化物を透明樹脂層として備える画像表示用装置。
【請求項6】
画像表示ユニットと、保護パネルと、を備える画像表示用装置の製造方法であって、
前記画像表示ユニットと前記保護パネルとの間に、請求項2?4のいずれか一項に記載の液状硬化性樹脂組成物を介在させる工程と、
前記保護パネル側から光照射して前記液状硬化性樹脂組成物を硬化させる工程と、を備える、画像表示用装置の製造方法。
【請求項7】
画像表示ユニットと、タッチパネルと、保護パネルと、を備える画像表示用装置の製造方法であって、
前記画像表示ユニットと前記タッチパネルとの間、及び/又は、前記タッチパネルと前記保護パネルとの間に、請求項2?4のいずれか一項に記載の液状硬化性樹脂組成物を介在させる工程と、
前記保護パネル側から光照射して前記液状硬化性樹脂組成物を硬化させる工程と、を備える、画像表示用装置の製造方法。」

2 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由
特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要は次のとおりである。
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

特開2011-219660号公報(特許異議申立書に添付された甲第1号証である。以下、「甲1」という。)
特開平5-104679号公報(特許異議申立書に添付された甲第2号証である。以下、「甲2」という。)

なお、当審で通知した取消理由は、本件特許の訂正前の請求項1、2、4及び5に係る発明についての、甲1又は甲2に基づく新規性違反であり、上記特許異議申立ての理由の一部である。

3 特許異議申立ての理由についての判断
(1)甲1発明
甲1の【請求項1】、【請求項2】、【請求項4】、【請求項5】、【0024】ないし【0030】、【0042】、【0043】、【0045】、【0047】、【0048】、【0069】、【0075】及び【0152】の記載を整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「トリ-?ヘキサ-イソシアネート(A)1モルと、水酸基を有するジ(メタ)アクリレート及び/又は水酸基を有するトリ(メタ)アクリレート(B)1?6.5モルとの反応によって得られる(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(C)、
分子中に(メタ)アクリロイル基を2?3個含有する(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(D)、
フィラー(F)、
モノ(メタ)アクリレート(G)、及び、
光ラジカル重合開始剤(P)、
を含有する紫外線硬化性組成物であって、
前記フィラー(F)は、体積平均粒子径が5nm?500nmのシリカであり、その含有量は紫外線硬化性組成物の重量に基づいて5?25重量%、
前記モノ(メタ)アクリレート(G)は、(メタ)アクリロイルモルホリンであり、その含有量は紫外線硬化性組成物の重量に基づいて5?25重量%、
前記光ラジカル重合開始剤(P)の含有量は、前記(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(C)、前記(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(D)及び前記モノ(メタ)アクリレート(G)の合計重量に基づいて3?10重量%である、紫外線硬化性組成物。」

(2)甲2発明
甲2の【請求項1】、【0007】、【0022】、【0026】及び【0031】の記載を整理すると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「以下の組成からなる電離放射線硬化性組成物。
(1)ウレタンアクリレートプレポリマー(重量平均分子量:4500) 53.0重量部
(2)単官能アクリル系モノマー(2-エチルヘキシルアクリレート及び2-ヒドロキシエチルアクリレート) 37.0重量部
(3)光重合開始剤(2,2-ジエトキシアセトフェノン) 1.0重量部
(4)艶消し剤(シリカ) 9.0重量部 」

(3)対比・判断
ア 本件特許発明2について
(甲1発明との対比・判断)
本件特許発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「フィラー(F)は、体積平均粒子径が5nm?500nmのシリカ」及び「光ラジカル重合開始剤(P)」は、それぞれ本件特許発明2における「(A)平均粒径が1nm?1μmであるシリカ粒子」及び「(D)重合開始剤」に相当する。
甲1発明における「モノ(メタ)アクリレート(G)は、(メタ)アクリロイルモルホリン」は、本件特許発明2における「(C)成分(分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する低分子量単量体)が、」「モルホリン基含有(メタ)アクリレート」「を含有する」に相当する。
甲1発明における「トリ-?ヘキサ-イソシアネート(A)1モルと、水酸基を有するジ(メタ)アクリレート及び/又は水酸基を有するトリ(メタ)アクリレート(B)1?6.5モルとの反応によって得られる(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(C)」及び「1分子中に(メタ)アクリロイル基を2?3個含有する(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(D)」は、甲1において、それぞれ数平均分子量1500?8000及び重量平均分子量1500?10000であることが特に好ましいと記載されていることから(【0024】、【0027】)、両成分はいずれも、本件特許発明2における「(B)(メタ)アクリロリル基を有するウレタン重合体」に相当する。
甲1発明におけるシリカの含有量である「5?25重量%」と、本件特許発明2におけるシリカ粒子の含有量である「8?40質量%」とは、重複一致する。
甲1発明における(メタ)アクリロイルモルホリンの含有量である「5?25重量%」は、本件特許発明2における(C)成分の含有量である「3?25質量%」と、「5?25質量(重量)%」の範囲において重複一致する。
甲1発明における光ラジカル重合開始剤(P)の紫外線硬化性組成物における含有量は特定されていないものの、シリカであるフィラー(F)5?25重量%を紫外線硬化性組成物から除いた「95?75重量%」が、(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(C)、(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(D)及びモノ(メタ)アクリレート(G)の3成分に、光ラジカル重合開始剤(P)が加えられた合計量であると解して、当該3成分(C、D及びG成分)の合計量を100重量%とした場合の3?10重量%が光ラジカル重合開始剤(P)であるとして計算すると、光ラジカル重合開始剤(P)の紫外線硬化性組成物における含有量は、最小で約2.2重量%、最大で約8.6重量%となり、本件特許発明2における(D)成分の含有量である「0.01?5質量%」と、重複一致する。
甲1発明において、(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(C)及び(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(D)以外の成分の含有量が、本件特許発明2における対応する成分の含有量と重複一致することから、甲1発明における(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(C)及び(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(D)を合わせた含有量も、本件特許発明2における(B)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体の含有量と重複一致すると認められる。

そうすると、両者は次の点で相違し、それ以外には相違点はない。
<相違点1>
本件特許発明2においては、「(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である」であるのに対し、甲1発明においては、そうでない点。

なお、特許異議申立人は、平成29年11月2日に提出された意見書において、「(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である」ことは、甲1に記載されている旨主張するが、甲1には、「トリ-?ヘキサ-イソシアネート(A)1モルと、水酸基を有するジ(メタ)アクリレート及び/又は水酸基を有するトリ(メタ)アクリレート(B)1?6.5モルとの反応によって得られる(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(C)」の平均官能基数についての記載はなく、甲1の実施例6からも平均官能基数がいくつかは明らかではないので、結局、甲1発明における「トリ-?ヘキサ-イソシアネート(A)1モルと、水酸基を有するジ(メタ)アクリレート及び/又は水酸基を有するトリ(メタ)アクリレート(B)1?6.5モルとの反応によって得られる(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(C)」及び「1分子中に(メタ)アクリロイル基を2?3個含有する(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(D)」の平均官能基数が0.3?2.0であるかは明確でなく、相違点1は実質的な相違点である。

そこで、検討するに、本件特許発明2は、「(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である」という発明特定事項を有することによって、「透明性及び耐湿熱信頼性に優れると共に硬化収縮率が低く、密着性に優れ、伸び率が高い硬化物となり得る」(本件特許明細書の【0012】参照。)という格別顕著な効果を奏するものであり、該効果は、甲第1号証には記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明2は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件特許発明3について
(ア)甲1発明との対比・判断
本件特許発明3と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「フィラー(F)は、体積平均粒子径が5nm?500nmのシリカ」及び「光ラジカル重合開始剤(P)」は、それぞれ本件特許発明3における「(A)平均粒径が1nm?1μmであるシリカ粒子」及び「(D)重合開始剤」に相当する。
甲1発明における「モノ(メタ)アクリレート(G)は、(メタ)アクリロイルモルホリン」は、本件特許発明3における「(C)成分(分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する低分子量単量体)が、」「モルホリン基含有(メタ)アクリレート」「を含有する」に相当する。
甲1発明における「トリ-?ヘキサ-イソシアネート(A)1モルと、水酸基を有するジ(メタ)アクリレート及び/又は水酸基を有するトリ(メタ)アクリレート(B)1?6.5モルとの反応によって得られる(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(C)」及び「1分子中に(メタ)アクリロイル基を2?3個含有する(メタ)アクリロイル基含有ウレタンオリゴマー(D)」は、甲1において、それぞれ数平均分子量1500?8000及び重量平均分子量1500?10000であることが特に好ましいと記載されていることから(【0024】、【0027】)、両成分はいずれも、本件特許発明3における「(B)(メタ)アクリロリル基を有するウレタン重合体」に相当する。
甲1発明におけるシリカの含有量である「5?25重量%」と、本件特許発明3におけるシリカ粒子の含有量である「8?40質量%」とは、重複一致する。

そうすると、両者は次の点で相違し、それ以外には相違点はない。
<相違点2>
本件特許発明3においては、「(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である」であるのに対し、甲1発明においては、そうでない点。

そこで、検討するに、本件特許発明3は、「(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である」という発明特定事項を有することによって、「透明性及び耐湿熱信頼性に優れると共に硬化収縮率が低く、密着性に優れ、伸び率が高い硬化物となり得る」(本件特許明細書の【0012】参照。)という格別顕著な効果を奏するものであり、該効果は、甲第1号証には記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明3は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(イ)甲2発明との対比・判断
本件特許発明3と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「艶消し剤(シリカ)」、「ウレタンアクリレートプレポリマー(重量平均分子量:4500)」、「単官能アクリル系モノマー(2-エチルヘキシルアクリレート及び2-ヒドロキシエチルアクリレート)」及び「光重合開始剤(2,2-ジエトキシアセトフェノン)」は、それぞれ本件特許発明3における「シリカ粒子」、「(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体」、「一般式(3)で表されるアルキル(メタ)アクリレート、分子内に(メタ)アクリル基及び水酸基を有する化合物」及び「重合開始剤」に相当する。
甲2発明における「艶消し剤(シリカ)」の含有量「9.0重量部」に関し、組成物全体が100重量部であるから9.0重量部は9.0重量%であり、また、甲2には「粒径0.1?10μm程度」(【0022】)と記載されていることから、甲2発明における「艶消し剤(シリカ)」と本件特許発明3における「シリカ粒子」とは、その含有量と平均粒径の数値において重複一致していると認められる。
そうすると、両者は次の点で相違し、それ以外には相違点はない。
<相違点3>
本件特許発明3においては、「(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である」であるのに対し、甲2発明においては、そうでない点。

そこで、検討するに、本件特許発明3は、「(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である」という発明特定事項を有することによって、「透明性及び耐湿熱信頼性に優れると共に硬化収縮率が低く、密着性に優れ、伸び率が高い硬化物となり得る」(本件特許明細書の【0012】参照。)という格別顕著な効果を奏するものであり、該効果は、甲第2号証には記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明3は、甲2発明ではないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 本件特許発明4
本件特許発明4は、訂正後の請求項2又は3を引用するものであり、本件特許発明2又は3をさらに限定した発明であるから、本件特許発明2又は3と同様に、甲1発明又は甲2発明のいずれでもないし、甲1発明又は甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

エ 本件特許発明5
本件特許発明5は、訂正後の請求項2又は3を引用するものであり、本件特許発明2又は3をさらに限定した発明であるから、本件特許発明2又は3と同様に、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

3 むすび
したがって、本件特許発明2ないし5は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明ではないし、本件特許発明3及び4は、甲2発明、すなわち甲第2号証に記載された発明ではないので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではない。
また、本件特許発明2ないし5は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないし、本件特許発明3及び4は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

第4 結語
上記第3のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、請求項2ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項2ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項1は、訂正により削除されたため、請求項1に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(A)平均粒径が1nm?1μmであるシリカ粒子、
(B)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体、
(C)分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する低分子量単量体、及び
(D)重合開始剤、
を含み、
(A)成分の含有量が8?40質量%、(B)成分の含有量が30?88質量%、(C)成分の含有量が3?25質量%、及び(D)成分の含有量が0.01?5質量%であり、
(C)成分が、下記一般式(3)で表されるアルキル(メタ)アクリレート、分子内に(メタ)アクリル基及び水酸基を有する化合物、及びモルホリン基含有(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上を含有し、
【化1】

(上記一般式(3)中、R^(1)は水素原子又はメチル基を示し、R^(2)は炭素数6?18のアルキル基を示す。)
(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である、液状硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)平均粒径が1nm?1μmであるシリカ粒子、
(B)(メタ)アクリロイル基を有するウレタン重合体、
(C)分子内に1個のエチレン性不飽和基を有する低分子量単量体、及び
(D)重合開始剤、
を含み、(A)成分の含有量が8?40質量%であり、(C)成分が、下記一般式(3)で表されるアルキル(メタ)アクリレート、分子内に(メタ)アクリル基及び水酸基を有する化合物、及びモルホリン基含有(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上を含有し、
【化2】

(上記一般式(3)中、R^(1)は水素原子又はメチル基を示し、R^(2)は炭素数6?18のアルキル基を示す。)
(B)成分における平均官能基数が0.3?2.0である、液状硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
実質的に有機溶媒を含有せず、25℃における粘度が500?25000mPa・sである、請求項2又は3に記載の液状硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項2?4のいずれか一項に記載の液状硬化性樹脂組成物の硬化物を透明樹脂層として備える画像表示用装置。
【請求項6】
画像表示ユニットと、保護パネルと、を備える画像表示用装置の製造方法であって、
前記画像表示ユニットと前記保護パネルとの間に、請求項2?4のいずれか一項に記載の液状硬化性樹脂組成物を介在させる工程と、
前記保護パネル側から光照射して前記液状硬化性樹脂組成物を硬化させる工程と、を備える、画像表示用装置の製造方法。
【請求項7】
画像表示ユニットと、タッチパネルと、保護パネルと、を備える画像表示用装置の製造方法であって、
前記画像表示ユニットと前記タッチパネルとの間、及び/又は、前記タッチパネルと前記保護パネルとの間に、請求項2?4のいずれか一項に記載の液状硬化性樹脂組成物を介在させる工程と、
前記保護パネル側から光照射して前記液状硬化性樹脂組成物を硬化させる工程と、を備える、画像表示用装置の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-11-27 
出願番号 特願2011-284143(P2011-284143)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (C08F)
P 1 652・ 113- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 内田 靖恵  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 上坊寺 宏枝
加藤 友也
登録日 2016-11-25 
登録番号 特許第6044071号(P6044071)
権利者 日立化成株式会社
発明の名称 液状硬化性樹脂組成物、これを用いた画像表示用装置の製造方法、及び画像表示用装置  
代理人 石原 俊秀  
代理人 石原 俊秀  
代理人 平澤 賢一  
代理人 平澤 賢一  
代理人 大谷 保  
代理人 大谷 保  
代理人 松井 伸一  

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