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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H05K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1336165
異議申立番号 異議2017-700110  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-07 
確定日 2017-12-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5968291号発明「プリント配線板用白色硬化型組成物、これを用いた硬化塗膜及びプリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5968291号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第5968291号の請求項1-5、7-10に係る特許を維持する。 特許第5968291号の請求項6、11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第5968291号の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成25年9月30日に特許出願され、平成28年7月15日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人笠井素子(以下、「異議申立人1」という。)、及び特許異議申立人中井宏行(以下、「異議申立人2」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年4月20日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年6月23日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して異議申立人2から平成29年8月8日付けで意見書が提出され、平成29年9月21日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成29年10月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正請求書の補正、及びその適否
平成29年10月26日の手続補正書の補正の内容のうち、訂正の要旨に関する補正は、平成29年6月23日付け訂正請求書に記載の訂正事項1の一部である、「熱硬化成分としてのイソシアネート化合物またはブロックイソシアネート化合物と、」との訂正について、「イソシアネート化合物または」との事項を削除するものである。
上記補正は、熱硬化成分について、「イソシアネート化合物」を含むとの訂正事項を削除するものであって、訂正請求書の要旨を変更しないものであるから、当該補正を認める。

2 訂正請求の内容、及びその適否
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「(A)酸化チタンと、
(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)酸価を有する湿潤分散剤とを含むことを特徴とするプリント配線板用白色硬化型組成物。」
とあるのを、
「(A)酸化チタンと、
(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)酸価を有する湿潤分散剤と、
熱硬化成分としてのブロックイソシアネート化合物と、を含み、インクジェット印刷用途に用いられることを特徴とするプリント配線板用白色硬化型組成物。」に訂正する(下線は、特許権者が付与。以下同様。)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に「50℃における粘度が5?50mPa・sであることを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。」とあるのを、
「50℃における粘度が5?50mPa・sであることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。」に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8に「膜厚30μmにおけるY値が70以上であることを特徴とする請求項1?7のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。」とあるのを、
「膜厚30μmにおけるY値が70以上であることを特徴とする請求項1?5,7のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。」に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?8のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物に対して光照射することにより得られることを特徴とする硬化塗膜。」とあるのを、
「請求項1?5,7,8のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物に対して光照射することにより得られることを特徴とする硬化塗膜。」に訂正する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1?8のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物が基板上に印刷され、これを光照射することにより得られるパターン硬化塗膜を有することを特徴とするプリント配線板。」とあるのを、
「請求項1?5,7,8のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物が基板上に印刷され、これを光照射することにより得られるパターン硬化塗膜を有することを特徴とするプリント配線板。」に訂正する。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項11を削除する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1に関連する記載として、特許第5968291号の明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本件特許明細書等」という。)には、「さらに、熱硬化成分を含むことを特徴とする」(【請求項6】)、「本発明の硬化型組成物には、熱硬化成分を加えることができる。」(【0046】)、「イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物は、1分子内に複数のイソシアネート基またはブロック化イソシアネート基を有する化合物である。 ・・・(中略)・・・ またはブロックイソシアネート化合物を加えることにより硬化性および得られる硬化物の強靭性を向上することが確認された。」(【0053】)と記載され、また、実施例における熱硬化成分として「BI7982、ジメチルピラゾールでブロックされた3官能イソシアネート、Baxenden社製」(【0091】)が使用されたことが記載されており、更に、本件特許明細書等の【0001】、【0020】、【0086】及び【0095】等には、本発明のプリント配線板用白色硬化型組成物がインクジェット印刷用途に用いられることが記載されている。
これらの記載から、本発明のプリント配線板用白色硬化型組成物が、「熱硬化成分としてのブロックイソシアネート化合物と、を含み、インクジェット印刷用途に用いられること」は、本件特許明細書等に記載されているものと認められる。
また、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内において「熱硬化成分としてのブロックイソシアネート化合物と、を含み、インクジェット印刷用途に用いられること」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2及び7について
訂正事項2及び7は、訂正前の請求項2及び7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項3?6について
訂正事項3は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1?6を引用する記載であったものを、このうち請求項6を引用しないものとする訂正である。
訂正事項4は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項1?7を引用する記載であったものを、このうち請求項6を引用しないものとする訂正である。
訂正事項5は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項1?8を引用する記載であったものを、このうち請求項6を引用しないものとする訂正である。
訂正事項6は、訂正前の請求項10が訂正前の請求項1?8を引用する記載であったものを、このうち請求項6を引用しないものとする訂正である。
したがって、訂正事項3?6は、多数項を引用している請求項の引用請求項数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

そして、これらの訂正事項1?7は、一群の請求項に対して請求されたものである。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?11〕について訂正を認める。

第3 特許異議申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?5、7?10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明5」、「本件発明7」?「本件発明10」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?5、7?10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(A)酸化チタンと、
(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)酸価を有する湿潤分散剤と、
熱硬化成分としてのブロックイソシアネート化合物と、を含み、インクジェット印刷用途に用いられることを特徴とするプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項2】
前記酸化チタンがルチル型酸化チタンであることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項3】
前記酸化チタンの最大粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項4】
さらに、2官能(メタ)アクリレート化合物(水酸基を有するものを除く)を含むことを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項5】
前記2官能(メタ)アクリレート化合物(水酸基を有するものを除く)の25℃における粘度が5?50mPa・sであることを特徴とする請求項4に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項7】
50℃における粘度が5?50mPa・sであることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項8】
膜厚30μmにおけるY値が70以上であることを特徴とする請求項1?5,7のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項9】
請求項1?5,7,8のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物に対して光照射することにより得られることを特徴とする硬化塗膜。
【請求項10】
請求項1?5,7,8のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物が基板上に印刷され、これを光照射することにより得られるパターン硬化塗膜を有することを特徴とするプリント配線板。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1?11に係る特許について、平成29年4月20日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりのものである。

理由1
本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

理由2
本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

理由3
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由4
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


異議申立人1が提出した特許異議申立書を、以下、「異議申立書1」といい、異議申立人2が提出した特許異議申立書を、以下、「異議申立書2」という。
刊行物1:特開2011-75679号公報
(異議申立書1の甲第1号証)
刊行物2:特開2004-124077号公報
(異議申立書1の甲第2号証)
刊行物3:特開2000-336295号公報
(異議申立書1の甲第3号証)
刊行物4:特開2013-91788号公報
(異議申立書1の甲第4号証、異議申立書2の甲第1号証)
刊行物5:特開2007-332166号公報
(異議申立書1の甲第5号証)
刊行物6:国際公開第2013/008691号
(異議申立書1の甲第6号証)
刊行物7:国際公開第2006/068010号
(異議申立書1の甲第7号証)
刊行物8:特開2005-133050号公報
(異議申立書1の甲第8号証)
刊行物9:国際公開第2007/015423号
(異議申立書1の甲第9号証)
刊行物10:特開2005-45116号公報
(異議申立書2の甲第2号証)
刊行物11:特開2012-98344号公報
(異議申立書2の甲第3号証)
刊行物12:特開2009-149878号公報
(異議申立書2の甲第4号証)
刊行物13:特開2009-194222号公報
(異議申立書2の甲第5号証)
刊行物14:特開2010-117702号公報
(異議申立書2の甲第6号証)
刊行物15:特開2010-224171号公報
(異議申立書2の甲第7号証)
刊行物16:特開2011-213828号公報
(異議申立書2の甲第8号証)
刊行物17:「Radiation Curable Products
第3版」、2016年12月、日本化薬
(異議申立書2の甲第9号証)
刊行物18:久司美登、「分散基礎講座(第IX講)分散剤」、
J.Jpn.Soc.Colour Mater.,78〔
3〕,141-148(2005)
(異議申立書2の甲第10号証)

●理由1(特許法第29条第1項第3号)について
請求項1に係る発明は刊行物1、4、10、12、13にそれぞれ記載された発明であり、
請求項2に係る発明は刊行物12、13にそれぞれ記載された発明であり、
請求項4に係る発明は刊行物4に記載された発明であり、
請求項6に係る発明は刊行物4、10、13にそれぞれ記載された発明であり、
請求項7に係る発明は刊行物10に記載された発明であり、
請求項9に係る発明は刊行物4、10、12、13にそれぞれ記載された発明であり、
請求項10に係る発明は刊行物4、10、12、13にそれぞれ記載された発明であり、
請求項11に係る発明は刊行物4、10にそれぞれ記載された発明である。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

●理由2(特許法第29条第2項)について
請求項1?11に係る発明は、刊行物2に記載された発明及び周知技術(刊行物3?8)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
請求項2?8に係る発明は、刊行物4に記載された発明及び刊行物10?12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
請求項2?6、8に係る発明は、刊行物10に記載された発明及び刊行物11、12に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
請求項1?6、8?10に係る発明は、刊行物12に記載された発明及び刊行物13?18に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
請求項1?6、8?10に係る発明は、刊行物13に記載された発明及び刊行物13?18に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1?11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

●理由3(特許法第36条第6項第1号)について
特許法第36条第6項第1号の理由の概略は、下記「ア」?「ウ」のとおりである。
ア 理由ア
請求項1?11に係る発明の「(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」は、広い範囲の化合物群を包含する上位概念で、本件特許明細書等の実施例において具体的に効果が確認できるのは、4-ヒドロキシブルアクリレートに限られる。
したがって、請求項1?11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
よって、請求項1?11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

イ 理由イ
請求項1?11に係る発明の組成物は、インクジェット法以外の方法に適用した場合には、本件発明の課題を解決することができない。
したがって、請求項1?11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
よって、請求項1?11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

ウ 理由ウ
請求項1に記載の「酸価を有する湿潤分散剤」は、広範な化合物を含むものであるが、本件特許明細書等の実施例で効果が裏付けられているのは、「disperbyk-111、酸基を含む共重合物、ビックケミー社製」だけであり、これを「酸価を有する湿潤分散剤」全般まで拡張ないし一般化できるとはいえない。
したがって、請求項1?11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。
よって、請求項1?11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

●理由4(特許法第36条第6項第2号)について
特許法第36条第6項第2号の理由の概略は、次のとおりである。
請求項1に係る発明の「湿潤分散剤」は、分散剤の種類を示す名称として使用される例はあるものの、「湿潤分散剤」として販売されている以外の化合物が「湿潤分散剤」に該当するか否かを如何なる基準で判断すべきであるか明確でないこと、及び請求項4に係る発明の「2官能(メタ)アクリレート化合物(水酸基を有するものを除く)」は、(メタ)アクリロイル基を二つ有する化合物を意味するのか、(メタ)アクリロイル基に限らず反応性の官能基を二つ有する化合物を意味するのか明確でない。
したがって、請求項1?11に係る発明は、明確であるとはいえない。
よって、請求項1?11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3 各刊行物の記載
(1)刊行物1について
刊行物1(特に、【請求項1】、【請求項2】、【0003】、【0006】、【0041】?【0047】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「絶縁性光硬化性熱硬化性樹脂組成物およびプリント配線板」に関して、実施例1?6として、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「酸化チタンと、
樹脂溶液1と、
Irg-907またはIrg819からなる光重合開始剤と、
Disperbyk-111からなる湿潤剤と、
を含み、プリント配線板用のハンター白色度が61.1?88.2である絶縁性光硬化性熱硬化性樹脂組成物。」

ここで、上記樹脂溶液1の合成については、【0042】に具体的に記載されている。

(2)刊行物2について
刊行物2(特に、【請求項1】、【0001】?【0008】、【0022】、【0023】、【0031】、【0045】?【0049】、【0055】、【0067】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「紫外線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物」に関して、実施例として、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「酸化チタンと、
アロニックスM5700と、
光重合開始剤としてイルガキュア819と、
分散剤としてのソルスパーズ24000GRと、
を含む紫外線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物。」

(3)刊行物3について
刊行物3(特に、【0001】、【0003】、【0010】を参照。)には、「光硬化型インクジェット記録用インク組成物およびそれを用いたインクジェット記録方法」に関して、インク組成物でプリント配線基盤に印刷を行うことが記載されている。

(4)刊行物4について
刊行物4(特に、【請求項1】?【請求項6】、【0001】、【0071】、【0109】、【0113】、【0117】、【0121】、【0122】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「インクジェット用硬化性組成物」に関して、実施例2として、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されている。
「酸化チタンと、
4-ヒドロキシブチルアクリレートと、
イルガキュア907(BASF社製)と、
Disperbyk-111と
を含むプリント配線板に用いられるインクジェット用硬化性組成物。」

(5)刊行物5について
刊行物5(特に、【0001】?【0003】、【0006】を参照。)には、「光硬化性白色インク組成物」に関して、インクジェットを利用した場合には、白色顔料である酸化チタンの沈降や凝縮が問題となることが記載されている。

(6)刊行物6について
刊行物6(特に、[0128]を参照。)には、「水性インクジェット記録用白色インク、白色顔料ペースト、インクジェット記録用水性インクセット」に関して、次の事項が記載されている。
「JR-806(商品名、テイカ(株)製):ルチル型酸化チタン(処理剤Al・Si) 」

(7)刊行物7について
刊行物7には、「活性光線硬化型インクジェットインク、及びそれを用いた画像形成方法」に関して、次の事項が記載されている。
「[0155] (分散液 D? 5の調製)
以下の化合物をステンレスビーカーに入れ、50°Cホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
ソルスパーズ 24000GR (アビシア社製分散剤)(酸価35mgKOH/g、アミン価36mgKOH/g)」

(8)刊行物8について
刊行物8には、「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」に関して、次の事項が記載されている。
「【0055】
実施例4 ・・・(中略)・・・ MIRAMER-M202[美源社製、エチレンオキサイド変性1,6-ヘキサンジオールジアクリレート1次皮膚刺激指数:0.3、粘度:18mPa・s/25℃] ・・・(後略) 」

(9)刊行物9について
刊行物9には、「感光性樹脂組成物、ソルダーレジスト用組成物及び感光性ドライフィルム」に関して、次の事項が記載されている
「[0028] 上記水酸基含有(メタ)アクリレートは、1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートであれば、特に限定されない。
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエレングリコールモノ(メタ)アクリレート ・・・(中略)・・・ ジトリメチロールプロパンへキサ(メタ)アタリレート等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 ・・・(後略)」

(10)刊行物10について
刊行物10(特に、【請求項1】?【請求項3】、【0009】、【0014】、【0015】、【0032】、【0036】、【0041】、【0042】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「インクジェット用一液型レジスト組成物及びそれを用いたレジストパターンの形成方法」に関して、実施例6として、次の発明(以下、「引用発明10」という。)が記載されている。
「酸化チタンと、
4-ヒドロキシブチルアクリレートと、
Irg907と、
byk-111(ビックケミー製、分散剤)と、
を含み、プリント配線板用のインクジェット用一液型レジスト組成物。」

(11)刊行物11について
刊行物11には、「新規な白色感光性樹脂組成物及びその利用」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
少なくとも、
(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しない少なくとも水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させることにより得られる水酸基含有樹脂、
(B)分子内にラジカル重合性基を含有するカルボキシル基含有樹脂、
(C)ラジカル重合性化合物、
(D)分子内に芳香環を実質的に含有しない水酸基と反応性を有する反応性基含有化合物、
(E)光重合開始剤、
(F)ルチル型酸化チタン、
(G)ホスフィン酸塩を含有し、
ケイ素含有有機化合物を実質的に含有しないことを特徴とする白色感光性樹脂組成物。」

イ 「【0001】
この発明は、感光性を有するため微細加工が可能であり、得られる硬化膜が反射率に優れ、柔軟性に富み、難燃性に優れ、硬化後の基板の反りが小さく、高温熱履歴又は光照射後の反射率・色相変化の少ない白色感光性樹脂組成物、樹脂フィルム、絶縁膜、絶縁膜付きプリント配線板に関するものである。」

ウ 「【0032】
また、(D)成分である分子内に芳香環を実質的に含有しない水酸基と反応性を有する反応性基含有化合物は、(A)成分に含有される水酸基と反応して架橋構造をとるため得られる硬化膜の耐熱性、耐薬品性に優れ、また分子内に芳香環を実質的に含有しないため熱や紫外線などのエネルギーに対して安定であり、着色し難い。」

エ 「【0081】
かかる(D)成分としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物及びこれらイソシアネート化合物のブロック体等が挙げられ、例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製のデュラネート24A-100、TPA-100、THA-100、P-301-75E、21S-75E、18H-70B、MFA-75X、E-402-90T、E-405-80T、TSE-100、17B-60PX、TPA-B80E、MF-B60X、E402-B80T等が挙げられるが、これらに限定されない。特に、分子内に芳香環を実質的に含有しない分子内にイソシアネート基を少なくとも1つ有する樹脂であることが、白色感光性樹脂組成物の硬化膜の柔軟性を向上させる点で好ましい。」

オ 「【0112】
(II)白色感光性樹脂組成物の使用方法
本願発明の白色感光性樹脂組成物を直接に用いて、又は、白色感光性樹脂組成物溶液を調製した後に、以下のようにして硬化膜又はレリーフパターンを形成することができる。先ず、上記白色感光性樹脂組成物、又は、白色感光性樹脂組成物溶液を基板に塗布し、乾燥して有機溶媒を除去する。基板への塗布はスクリ-ン印刷、カ-テンロ-ル、リバ-スロ-ル、スプレーコーティング、スピンナーを利用した回転塗布等により行うことができる。塗布膜(好ましくは厚み:5?100μm、特に10?100μm)の乾燥は120℃以下、好ましくは40?100℃で行う。
【0113】
次いで、乾燥後、乾燥塗布膜にネガ型のフォトマスクを置き、紫外線、可視光線、電子線などの活性光線を照射する。次いで、未露光部分をシャワー、パドル、浸漬または超音波等の各種方式を用い、現像液で洗い出すことによりレリ-フパタ-ンを得ることができる。なお、現像装置の噴霧圧力や流速、エッチング液の温度によりパターンが露出するまでの時間が異なる為、適宜最適な装置条件を見出すことが望ましい。」

カ 「【0115】
上記現像工程によって形成したレリ-フパタ-ンは、リンスして不用な残分を除去する。リンス液としては、水、酸性水溶液などが挙げられる。
【0116】
次いで、上記得られたレリ-フパタ-ンの加熱処理を行う。加熱処理を行って、分子構造中に残存する反応性基を反応させることにより、耐熱性に富む硬化膜を得ることができる。硬化膜の厚みは、配線厚み等を考慮して決定されるが、2?50μm程度であることが好ましい。このときの最終硬化温度は配線等の酸化を防ぎ、配線と基材との密着性を低下させないことを目的として低温で加熱して硬化できることが望まれている。」

(12)刊行物12について
刊行物12(特に、【請求項1】?【請求項11】、【0005】、【0007】、【0014】、【0026】、【0040】、【0049】、【0050】、【0053】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「白色硬化性樹脂組成物、その硬化物を有するプリント配線板、及びその硬化物からなる発光素子用反射板」に関して、実施例の例7として、次の発明(以下、「引用発明12」という。)が記載されている。
「塩素法ルチル型酸化チタンと、
アクリレートモノマー(ライトエステルHO;共栄社化学社製)と、
2-エチルアントラキノンと、
リン含有メタクリレート(カヤマーPM2;日本化薬社製)と、
を含み、プリント配線板に用いられる白色硬化性樹脂組成物。」

(13)刊行物13について
刊行物13(特に、【請求項1】、【請求項2】、【請求項7】、【請求項8】、【0008】、【0021】、【0071】?【0074】、【0079】を参照。)には、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、「白色のアルカリ現像型光硬化性・熱硬化性ソルダーレジスト組成物、及びそれを用いた金属ベース回路基板」に関して、実施例1?3として、次の発明(以下、「引用発明13」という。)が記載されている。
「CR-90(ルチル型酸化チタン)と、
ライトエステルHO(2-ヒドキシエチルメタクリレート)と、
ダロキュアTPO(光重合開始剤)と、
CYCLOMER ACAZ251(芳香環を有さないカルボキシル基含有(メタ)アクリレートと、
を含み、白色のアルカリ現像型光硬化性・熱硬化性ソルダーレジスト組成物。」

(14)刊行物14について
刊行物14(特に、【0039】を参照。)には、「ソルダーレジスト組成物及びこれを用いて形成するプリント配線板」に関して、酸化チタンの分散性、沈降性の改善を目的としてDISPERBYK-111などの分散剤を配合することが記載されている。

(15)刊行物15について
刊行物15(特に、【0124】の【表1】を参照。)には、「硬化性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム及びプリント配線板」に関して、実施例1?11として、CR97(石原産業(株)製二酸化チタン)及びBYK-110(ビックケミー・ジャパン(株)製湿潤分散剤)を配合した組成が記載されている。

(16)刊行物16について
刊行物16(特に、【0142】の【表1】を参照。)には、「硬化性樹脂組成物、それを用いたドライフィルム及びプリント配線板」に関して、実施例1?6として、CR97(石原産業(株)製ルチン型二酸化チタン)及びBYK-111(ビックケミー・ジャパン(株)製湿潤分散剤)を配合した組成が記載されている。

(17)刊行物17について
刊行物17の11ページには、「KAYAMER PM-2」の分子式が記載されている。

(18)刊行物18について
刊行物18(特に、41ページ左欄2行?7行、41ページ右欄7行?14行、41ページ右欄下から4行?42ページ右欄下から9行を参照。)には、「分散剤」に関して、顔料分散技術は、色材関連分野において共通の基盤技術であり、カルボキシル基などの酸基を有するもの、高分子からなるものが知られており、湿潤ぬれが重要な役割を果たしていることが記載されている。

(19)参考資料1について
異議申立人2が、平成29年8月8日付け意見書とともに提出した参考資料1(国際公開第2004/099272号)(特に、[0048]、[0049]を参照。)には、「インクジェット用光硬化性・熱硬化性組成物とそれを用いたプリント配線板」に関して、実施例No.1及び実施例No.7として、ペンタエリスリトールトリアクリレートまたは4-ヒドロキシブチルアクリレートに、2-メタクリロイオキシエチルイソシアネートを組合せることが記載されている(以下、「参考資料1に記載された事項」という。)。

(20)参考資料2について
異議申立人2が、平成29年8月8日付け意見書とともに提出した参考資料2(特開2010-111802号公報)には、「インクジェットインキ、及びカラーフィルタ基板」に関して、次の記載がある。
ア 「【請求項1】
顔料(A)、分散樹脂(B)、光重合開始剤(C)、エチレン性不飽和化合物(D)、及び有機溶剤(E)を含んでなるインクジェットインキであり、
分散樹脂(B)が、下記一般式(1)?(5)で示される構造を少なくとも一つを有する樹脂型分散剤(B‘)を含み、
・・・(中略)・・・
〔一般式(1)中、
A^(11)?A^(14)のうちの2つが、-COOHであり、
・・・(中略)・・・
〔一般式(2)中、
A^(21)?A^(24)のうちの2つが、-COOHであり、 ・・・(後略) 」

イ 「【請求項7】
更に、メラミン化合物、ベンゾグアナミン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール化合物、ベンゾオキサジン化合物、ブロック化カルボン酸化合物、ブロック化イソシアネート化合物、及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる熱反応性化合物(H)を、1種若しくは2種以上含んでなる請求項1?6いずれか記載のインクジェットインキ。」

ウ 「【0001】
本発明は、インクジェットインキ、及びカラーフィルタ基板に関する。本発明のインクジェットインキは、例えば、液晶ディスプレイパネルのカラーフィルタ基板の製造に好適に用いることができる。」

エ 「【0036】
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、
・・・(中略)・・・
及びコバルトバイオレット等が挙げられる。」

オ 「【0070】
《樹脂型分散剤(B‘a)》
本発明で用いることのできる樹脂型分散剤(B‘a)は、ビニル重合主鎖(B‘a-1)内に、一般式(11)で表されるカルボキシル基含有単位(G_(11))を、ビニル重合体の1分子あたり平均0.3個以上3.0個以下の量で含む構造を有する限り、その化学構造及び製造方法は特に限定されるものではない。」

カ 「【0121】
本発明のインクジェットインキでは、樹脂型分散剤(B‘)と併用する分散樹脂としては特に限定されず、公知の樹脂型分散剤を用いることも出来る。市販の樹脂型分散剤としては具体的に以下のものが挙げられる。
【0122】
BYK Chemie社製樹脂型分散剤としては、Anti-Terra-U、U100、203、204、205、Disperbyk-101、102、103、106、107、108、109、110、111、112、116、130、140、142、145、161、162、163、164、166、167、168、170、171、174、180、182、183、184、185、2000、2001、2020、2050、2070、2096、2150、BYK-P104、104S、P105、9076、9077、又は220S等が挙げられる。」

キ 「【0148】
[エチレン性不飽和化合物(D)について]
本発明のインクジェットインキに含有されるエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和二重結合を1個または2個以上有する化合物であり、モノマー、オリゴマー、感光性樹脂を用いることができる。
【0149】
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、又はポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロプレングリコールポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロプレングリコールポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、又はネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の三官能以上の多官能(メタ)アクリレート類;あるいは、
1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、グリセロールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールF型エポキシの(メタ)アクリル酸付加物、又はノボラック型エポキシの(メタ)アクリル酸付加物等のエポキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。」

以上のことから、参考資料2には、
「液晶ディスプレイパネルのカラーフィルタ基板の製造に好適に用いることができる、インクジェットインキであって、
分散樹脂(B)、光重合開始剤(C)、エチレン性不飽和化合物(D)、を含んでおり、
エチレン性不飽和化合物(D)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、又はポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類・・・等であり、
更に、メラミン化合物、ベンゾグアナミン化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール化合物、ベンゾオキサジン化合物、ブロック化カルボン酸化合物、ブロック化イソシアネート化合物、及びシランカップリング剤からなる群から選ばれる熱反応性化合物(H)を、1種若しくは2種以上含むこと。」が記載されている(以下、「参考資料2に記載された事項」という。)。

4 判断
4-1 取消理由に記載した取消理由について
(1)理由1(特許法第29条第1項第3号)、及び理由2(特許法第29条第2項)について
(1-1)本件発明1について
ア 刊行物1について
本件発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「Irg-907またはIrg819からなる光重合開始剤」は、本件発明の「光重合開始剤」に相当する。
以下同様に、「Disperbyk-111からなる湿潤剤」は、「酸価を有する湿潤分散剤」に、
「プリント配線板用のハンター白色度が61.1?88.2である絶縁性光硬化性熱硬化性樹脂組成物」は、「プリント配線板用白色硬化型組成物」に、それぞれ相当する。

以上のことから、本件発明1と引用発明1とは次の点で一致する。
「(A)酸化チタンと、
(C)光重合開始剤と、
(D)酸価を有する湿潤分散剤と、
を含む、プリント配線板用白色硬化型組成物。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点1A]
本件発明1では、「熱硬化成分としてのブロックイソシアネート化合物」を含んでいるのに対して、
引用発明1では、かかる構成を備えていない点。

[相違点1B]
本件発明1では、「(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」を含んでいるのに対して、
引用発明1では、「樹脂溶液1」の具体的な合成について、刊行物1の【0042】に記載されてはいるものの、この樹脂溶液1が、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物であるか否かは、明らかでない点。

[相違点1C]
本件発明1では、「インクジェット印刷用途に用いられる」ものであるのに対して、
引用発明1では、かかる構成を備えていない点。

上記相違点について検討する。
本件発明1と、引用発明1とは、少なくとも上記相違点1Aにおいて相違する。
そして、上記相違点1Aに係る本件発明1の構成については、刊行物1に記載ないし記載されているに等しいとはいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明ということはできない。

イ 刊行物2について
本件発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2の「アロニックスM5700」は、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートであるから(刊行物2の【0031】を参照。)、本件発明1の「水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」に相当する。
以下同様に、「光重合開始剤としてイルガキュア819」は、「光重合開始剤」に、
「分散剤としてのソルスパーズ24000GR」は、溶剤と共に使用され(刊行物2の【0023】を参照。)、酸化を有することは明らかであるから(刊行物7の[0155]を参照。)、「酸価を有する湿潤分散剤」に、それぞれ相当する。
また、引用発明2の「紫外線硬化型インクジェット記録用白色インク組成物」と、本件発明1の「インクジェット印刷用途に用いられる」「プリント配線板用白色硬化型組成物」とは、「インクジェット印刷用途に用いられる白色硬化型組成物」である点で共通する。

以上のことから、本件発明1と引用発明2とは次の点で一致する。
「(A)酸化チタンと、
(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)酸価を有する湿潤分散剤と、
を含み、インクジェット印刷用途に用いられる白色硬化型組成物。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点2A]
本件発明1では、「熱硬化性分としてのブロックイソシアネート化合物」を含んでいるのに対して、
引用発明2では、かかる構成を備えていない点。

[相違点2B]
インクジェット印刷用途に用いられる白色硬化型組成物に関して、本件発明1では、「プリント配線板用」であるのに対して、
引用発明2では、「記録用」である点。

上記相違点2Aについて検討する。
「インクジェット印刷用途に用いられる」「プリント配線板用白色硬化型組成物」において、「(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」と、「熱硬化成分としてのブロックイソシアネート化合物」との組合わせについては、刊行物1?8、10?18の、いずれにも記載も示唆もされていない。

参考資料1に記載された事項には、実施例のNo.1及びNo.7として、ペンタエリスリトールトリアクリレートまたは4-ヒドロキシブチルアクリレート(本件発明1の「水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」に相当。)に、2-メタクリロイオキシエチルイソシアネート(本件発明1の「イソシアネート化合物」に相当。)を組合せることが記載されてはいるものの、ブロックイソシアネート化合物を組合せることについては、記載も示唆もされていない。
そうすると、参考資料1に記載された事項は、「インクジェット印刷用途に用いられる」「プリント配線板用白色硬化型組成物」において、「(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」と、「熱硬化成分としてのブロックイソシアネート化合物」との組合わせについて示唆するものではない。

次に、参考資料2について検討する。
技術分野に関して、本件発明1では、「インクジェット印刷用途に用いられる」「プリント配線板用白色硬化型組成物」であるのに対して、参考資料2に記載された事項では、「液晶ディスプレイパネルのカラーフィルタ基板の製造」に用いる「インクジェットインキ」であるから、両者は、インクジェット印刷用途に用いられる点で共通するものの、インクジェット印刷される対象が異なるので、技術分野が同一とはいえない。
また、参考資料2に記載された事項では、熱反応性化合物(H)としては、「ブロック化イソシアネート化合物」(本件発明1の「熱硬化成分としてのブロックイソシアネート化合物」に相当。)以外にも多種の化合物が挙げられており、更に、エチレン性不飽和化合物(D)についても、「2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート」(本件発明1の「(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」に相当。)以外にも多種のアクリレートが挙げられていることから、参考資料2に記載された事項には、「ブロック化イソシアネート化合物」と、「2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート」とを組合せることについて示唆されているとはいえない。
そうすると、参考資料2に記載された事項は、「インクジェット印刷用途に用いられる」「プリント配線板用白色硬化型組成物」において、「(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」と、「熱硬化性分としてのブロックイソシアネート化合物」との組合わせについて示唆するものではない。

以上のように、「インクジェット印刷用途に用いられる」「プリント配線板用白色硬化型組成物」において、「(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」と、「熱硬化性分としてのブロックイソシアネート化合物」との組合わせについては、刊行物1?8、10?18、並びに参考資料1及び2に記載された事項の、いずれにも記載も示唆もされていない。
そうすると、上記相違点2Aに係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、相違点2Bについて検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1、刊行物1?8、10?18に記載された事項、並びに参考資料1及び2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 刊行物4について
本件発明1と引用発明4とを対比する。
引用発明4の「4-ヒドロキシブチルアクリレート」は、本件発明1の「水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」に相当する。
以下同様に、「イルガキュア907(BASF社製)」は、「光重合開始剤」に、
「Disperbyk-111」は、「酸価を有する湿潤分散剤」に、
「プリント配線板に用いられるインクジェット用硬化性組成物」は、「インクジェット印刷用途に用いられるプリント配線板用白色硬化型組成物」に、それぞれ相当する。

以上のことから、本件発明1と引用発明4とは次の点で一致する。
「(A)酸化チタンと、
(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)酸価を有する湿潤分散剤と、
を含み、インクジェット印刷用途に用いられるプリント配線板用白色硬化型組成物。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点4]
本件発明1では、「熱硬化性分としてのブロックイソシアネート化合物」を含んでいるのに対して、
引用発明4では、かかる構成を備えていない点。

上記相違点4について検討する。
ウ-1 新規性について
本件発明1と、引用発明4とは、上記相違点4において相違する。
そして、上記相違点4に係る本件発明1の構成については、刊行物4に記載ないし記載されているに等しいとはいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物4に記載された発明ということはできない。

ウ-2 進歩性について
上記相違点4について検討する。
上記相違点4は、前記「イ」において挙げた「相違点2A」と同じである。
そうすると、前記「イ」で述べた判断と同様の理由により、上記相違点4に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、引用発明4、刊行物1?8、10?18に記載された事項、並びに参考資料1及び2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

なお、異議申立人2は、刊行物11との組み合わせに関して、刊行物11における(A)成分と(D)成分との反応と、本件発明1における水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とブロックイソシアネート化合物との反応との間には差違はない旨主張している(異議申立人2提出の意見書の9ページ4行?17行を参照。)。しかし、刊行物11では、その(A)成分は、「(A)分子内にラジカル重合性基を実質的に含有しない少なくとも水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸アルキルエステルを共重合させることにより得られる水酸基含有樹脂」であるから、「(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」であるとはいえず、(D)成分としては、イソシアネート化合物のブロック体以外にも多種の化合物が挙げられており(【0081】を参照。)、更に低粘度で吐出性に優れることが要求される「インクジェット印刷用途」でもない。そうすると、刊行物11は、「インクジェット印刷用途に用いられる」「プリント配線板用白色硬化型組成物」において、「(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」と、「熱硬化成分としてのブロックイソシアネート化合物」との組合わせについて、示唆するものではない。

エ 刊行物10について
本件発明1と引用発明10とを対比する。
引用発明10の「4-ヒドロキシブチルアクリレート」は、本件発明1の「水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」に相当する。
以下同様に、「Irg907」は、「光重合開始剤」に、
「byk-111(ビックケミー製、分散剤)」は、「酸価を有する湿潤分散剤」に、
「プリント配線板用のインクジェット用一液型レジスト組成物」は、「インクジェット印刷用途に用いられるプリント配線板用白色硬化型組成物」に、それぞれ相当する。

以上のことから、本件発明1と引用発明10とは次の点で一致する。
「(A)酸化チタンと、
(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)酸価を有する湿潤分散剤と、
を含み、インクジェット印刷用途に用いられるプリント配線板用白色硬化型組成物。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点10]
本件発明1では、「熱硬化性分としてのブロックイソシアネート化合物」を含んでいるのに対して、
引用発明10では、かかる構成を備えていない点。

エ-1 新規性について
本件発明1と、引用発明10とは、上記相違点10において相違する。
そして、上記相違点10に係る本件発明1の構成については、刊行物10に記載ないし記載されているに等しいとはいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物10に記載された発明ということはできない。

エ-2 進歩性について
上記相違点10について検討する。
上記相違点10は、前記「イ」において挙げた「相違点2A」と同じである。
そうすると、前記「イ」で述べた判断と同様の理由により、上記相違点10に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、引用発明10、刊行物1?8、10?18に記載された事項、並びに参考資料1及び2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

オ 刊行物12について
本件発明1と引用発明12とを対比する。
引用発明12の「塩素法ルチル型酸化チタン」は、本件発明1の「酸化チタン」に相当する。
以下同様に、「アクリレートモノマー(ライトエステルHO;共栄社化学社製)」は、2-ヒドキシエチルメタクリレートであるから(刊行物13の【0072】を参照。)、「水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」に、
「2-エチルアントラキノン」は、「光重合開始剤」に、
「リン含有メタクリレート(カヤマーPM2;日本化薬社製)」は、酸化を有するリン酸エステルであるから(刊行物17の11ページの「KAYAMER PM-2」の化学構造を参照。)、「酸価を有する湿潤分散剤」に、
「プリント配線板に用いられる白色硬化性樹脂組成物」は、「プリント配線板用白色硬化型組成物」に、それぞれ相当する。

以上のことから、本件発明1と引用発明12とは次の点で一致する。
「(A)酸化チタンと、
(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)酸価を有する湿潤分散剤と、
を含み、プリント配線板用白色硬化型組成物。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点12A]
本件発明1では、「熱硬化性分としてのブロックイソシアネート化合物」を含んでいるのに対して、
引用発明12では、かかる構成を備えていない点。

[相違点12B]
本件発明1では、「インクジェット印刷用途に用いられる」ものであるのに対して、
引用発明12では、かかる構成を備えていない点。

オ-1 新規性について
本件発明1と、引用発明12とは、少なくとも上記相違点12Aにおいて相違する。
そして、上記相違点12Aに係る本件発明1の構成については、刊行物12に記載ないし記載されているに等しいとはいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物12に記載された発明ということはできない。

オ-2 進歩性について
上記相違点12Aについて検討する。
上記相違点12Aは、前記「イ」において挙げた「相違点2A」と同じである。
そうすると、前記「イ」で述べた判断と同様の理由により、上記相違点12Aに係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、相違点12Bについて検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明12、刊行物1?8、10?18に記載された事項、並びに参考資料1及び2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

カ 刊行物13について
本件発明1と引用発明13とを対比する。
引用発明13の「CR-90(ルチル型酸化チタン)」は、本件発明1の「酸化チタン」に相当する。
以下同様に、「ライトエステルHO(2-ヒドキシエチルメタクリレート)」は、「水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」に、
「ダロキュアTPO(光重合開始剤)」は、「光重合開始剤」に、
「CYCLOMER ACAZ251(芳香環を有さないカルボキシル基含有(メタ)アクリレート」は、本件特許明細書等の【0039】に記載されているようなカルボキシル基を有する高分子化合物であるから、「酸価を有する湿潤分散剤」に、
「白色のアルカリ現像型光硬化性・熱硬化性ソルダーレジスト組成物」は、「プリント配線板用白色硬化型組成物」に、それぞれ相当する。

以上のことから、本件発明1と引用発明13とは次の点で一致する。
「(A)酸化チタンと、
(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)酸価を有する湿潤分散剤と、
を含み、プリント配線板用白色硬化型組成物。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点13A]
本件発明1では、「熱硬化性分としてのブロックイソシアネート化合物」を含んでいるのに対して、
引用発明13では、かかる構成を備えていない点。

[相違点13B]
本件発明1では、「インクジェット印刷用途に用いられる」ものであるのに対して、
引用発明13では、かかる構成を備えていない点。

カ-1 新規性について
本件発明1と、引用発明13とは、少なくとも上記相違点13Aにおいて相違する。
そして、上記相違点13Aに係る本件発明1の構成については、刊行物13に記載ないし記載されているに等しいとはいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物13に記載された発明ということはできない。

カ-2 進歩性について
上記相違点13Aについて検討する。
上記相違点13Aは、前記「イ」において挙げた「相違点2A」と同じである。
そうすると、前記「イ」で述べた判断と同様の理由により、上記相違点13Aに係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、相違点13Bについて検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明13、刊行物1?8、10?18に記載された事項、並びに参考資料1及び2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

キ 小括
以上のことから、本件発明1は、刊行物1、4、10、12、13に記載された発明ということはできず、また、刊行物1?8、10?18に記載された発明、並びに参考資料1及び2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

(1-2)本件発明2?5、7?10について
本件発明2?5、7?10は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、刊行物1、4、10、12、13に記載された発明ということはできず、また、刊行物1?8、10?18に記載された発明、並びに参考資料1及び2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

(2)理由3(特許法第36条第6項第1号)について
ア 理由アについて
本件発明1では、「水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」を含んでいればよく、この成分が酸化チタンの分散に作用するとともに、ブロックイソシアネート化合物と反応して密着性等が向上させる効果に寄与するもので、このことは、特許権者の平成29年6月23日付け意見書(12ページ5行?16ページ1行を参照。)の追加実験データにより確認できる。
そうすると、本件発明1?5、7?10は、サポート要件を充足し、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

なお、異議申立人2は、追加実験データを補充することはできない旨を主張している(異議申立人2提出の意見書の15ページ17行?22行を参照。)。
しかし、特許権者が提出の上記追加実験データは、「水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物」が酸化チタンの分散に作用するとともに、ブロックイソシアネート化合物と反応して密着性等が向上させる効果に寄与することを裏付けるために提出したものにすぎないから、異議申立人2の上記主張は理由がない。

イ 理由イについて
本件訂正により、本件発明1に「インクジェット印刷用途に用いられること」との事項が追加された。
これにより、本件発明1?5、7?10は、サポート要件を充足し、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

ウ 理由ウについて
本件特許明細書等の段落【0039】の記載から明らかなとおり、本件発明1では、「酸価を有する湿潤分散剤」を含んでいれば、酸化チタンの分散に有効となるもので、このことは、特許権者の平成29年6月23日付け意見書(12ページ5行?16ページ1行を参照。)の追加実験データにより確認できる。
そうすると、本件発明1?5、7?10は、サポート要件を充足し、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

なお、異議申立人2は、追加実験データを補充することはできない旨を主張している(異議申立人2提出の意見書の15ページ17行?22行を参照。)。
しかし、特許権者が提出の上記追加実験データは、「酸価を有する湿潤分散剤」を含んでいれば、酸化チタンの分散に有効となることを裏付けるために提出したものにすぎないから、異議申立人2の上記主張は理由がない。

(3)理由4(特許法第36条第6項第2号)について
本件特許明細書等の【0039】には、湿潤分散剤の定義として、「顔料の分散を補助する効果のあるもの」と記載されており、湿潤分散剤の構造として「カルボキシル基、水酸基、酸エステルなどの極性基を有する化合物や高分子化合物、例えばリン酸エステル類などの酸含有化合物や、酸基を含む共重合物、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドと酸エステルの塩」等の具体例が記載されているから、本件発明1に係る「湿潤分散剤」は、具体的に理解することができ、不明確とはいえない。
また、請求項4に係る発明の「2官能(メタ)アクリレート化合物(水酸基を有するものを除く)」は、2官能(メタ)アクリレート化合物であって、水酸基を二つ有するものを除くものを意味することは明らかであるから、それ自体の定義は明確である。
以上のことから、本件発明1?5、7?10は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。

4-2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立理由は、全て取消理由において採用したので、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、並びに異議申立書1及び2に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?5、7?10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?5、7?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項6及び11に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項6及び11に対して、異議申立人1及び異議申立人2がした特許異議申立については、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸化チタンと、
(B)水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)酸価を有する湿潤分散剤と、
熱硬化成分としてのブロックイソシアネート化合物と、を含み、インクジェット印刷用途に用いられることを特徴とするプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項2】
前記酸化チタンがルチル型酸化チタンであることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項3】
前記酸化チタンの最大粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項4】
さらに、2官能(メタ)アクリレート化合物(水酸基を有するものを除く)を含むことを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項5】
前記2官能(メタ)アクリレート化合物(水酸基を有するものを除く)の25℃における粘度が5?50mPa・sであることを特徴とする請求項4に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
50℃における粘度が5?50mPa・sであることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項8】
膜厚30μmにおけるY値が70以上であることを特徴とする請求項1?5,7のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物。
【請求項9】
請求項1?5,7,8のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物に対して光照射することにより得られることを特徴とする硬化塗膜。
【請求項10】
請求項1?5,7,8のいずれか一項に記載のプリント配線板用白色硬化型組成物が基板上に印刷され、これを光照射することにより得られるパターン硬化塗膜を有することを特徴とするプリント配線板。
【請求項11】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-11-22 
出願番号 特願2013-205345(P2013-205345)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (H05K)
P 1 651・ 121- YAA (H05K)
P 1 651・ 537- YAA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 昭浩  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 小関 峰夫
中川 隆司
登録日 2016-07-15 
登録番号 特許第5968291号(P5968291)
権利者 太陽インキ製造株式会社
発明の名称 プリント配線板用白色硬化型組成物、これを用いた硬化塗膜及びプリント配線板  
代理人 本多 一郎  
代理人 本多 一郎  

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