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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G21F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G21F |
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管理番号 | 1336430 |
審判番号 | 不服2017-2164 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-15 |
確定日 | 2018-02-01 |
事件の表示 | 特願2012-220358「放射性汚染物質保管施設とその構築方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月21日出願公開、特開2014- 71107、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年10月2日の出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。 平成28年 6月 9日:拒絶理由の通知 平成28年 8月20日:意見書、手続補正書の提出 平成28年11月21日:拒絶査定(同年11月28日送達) 平成29年 2月15日:審判請求書の提出 平成29年 9月21日:拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。) の通知 平成29年11月15日:意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願請求項1ないし13に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は、平成29年11月15日付け手続補正で補正された請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は以下のとおりである。 「【請求項1】 波形鋼板を連結して形成したドーム状構造物と、該ドーム状構造物を支える基礎と、該ドーム状構造物の内部に設けられた放射性汚染物質保管用の仕切り壁構造体とを備えてなり、該仕切り壁構造体が該ドーム状構造物の内部の所定領域を囲っている壁状体からなり、該ドーム状構造物が該仕切り壁構造体の上方及び周囲を空間を介して取り囲んでいることを特徴とする放射性汚染物質保管施設。」 なお、本願発明2ないし13の概要は以下のとおりである。 本願発明2ないし11は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明12は、本願発明1に対応する構築方法の発明であり、「波形鋼板を連結して形成したドーム状構造物と、該ドーム状構造物を支える基礎」の構成を除いた発明である。 本願発明13は、本願発明12を減縮した発明である。 第3 引用文献の記載事項 1 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-154457号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様である。) (1)「【0004】ここで図8は、本発明に係る遮断型コンクリートピットを用いるいわゆる遮断型の処分場であり、コンクリートで成形した遮断ピット5に内部仕切6を設け、廃棄物を満たした遮断ピット5にはコンクリート製の蓋体7をかぶせて密封し、一方、投棄中のピット5にはルーフ8を設けて雨水を防止する。」 (2)「【0011】また技術的な側面からいうと、ピット内部にモルタルを詰める放射性廃棄物の処理では、ピット内壁面にクッション材や防水シートを張設することも可能であるが、排液汚泥や焼却灰を投棄する遮断型ピットの場合には、振動を吸収させるべき固形体が存在しないため、ピット内壁にクッション材を配設しても意味がない。」 (3)引用文献1に記載された発明 上記(1)及び(2)によれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「遮断型コンクリートピットを用い、遮断型コンクリートピットにはルーフを設け、放射性廃棄物を投棄する遮断型の処分場。」 2 原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-135221号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0004】一方、構造用圧延鋼材を波形に形成した大型デッキプレートは床材、壁面材、屋根材等の建築資材としての広い用途が知られている。このような大型デッキプレートを長手方向に所定曲率で曲げ加工したものを組み合わせ、アーチ状をなす建築構造体が提案されている。」 (2)「【0029】大型デッキプレート11および12の基部は台座15に溶接されており、この台座15は中心間隔L1 に設置されたコンクリート製の基礎16に植え込まれた基礎ボルト17により固定される。」 (3)引用文献2に記載された発明 上記(1)及び(2)によれば、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 「構造用圧延鋼材を波形に形成した大型デッキプレートを組み合わせ、大型デッキプレートの基部は台座に溶接されており、この台座はコンクリート製の基礎に植え込まれた基礎ボルトにより固定されるアーチ状をなす建築構造体。」 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1を対比する。 ア 引用発明1の「遮断型コンクリートピット」は、本願発明1の「仕切り壁構造体」及び「壁状体」に、引用発明1の「ルーフ」は、本願発明1の「ドーム状構造物」に、引用発明1の「放射性廃棄物を投棄する遮断型の処分場」は、本願発明1の「放射性汚染物質保管施設」に、それぞれ相当する。 イ 上記「ア」及び引用発明1の「遮断型コンクリートピットにはルーフを設け」てあることから、引用発明1の「遮断型コンクリートピットにはルーフを設け、放射性廃棄物を投棄する」は、本願発明1の「ドーム状構造物の内部に設けられた放射性汚染物質保管用の仕切り壁構造体とを備えてなり」、「該仕切り壁構造体が該ドーム状構造物の内部の所定領域を囲っている壁状体からなり」及び「該ドーム状構造物が該仕切り壁構造体の上方及び周囲を空間を介して取り囲んでいる」と、「ドーム状構造物の内部に設けられた放射性汚染物質保管用の仕切り壁構造体とを備えてなり」、「該仕切り壁構造体が該ドーム状構造物の内部の所定領域を囲っている壁状体からなり」及び「『該ドーム状構造物が該仕切り壁構造体の上方』『を空間を介して取り囲んでいる』」の点で一致する。 ウ よって、本願発明1と引用発明1とは、 「ドーム状構造物の内部に設けられた放射性汚染物質保管用の仕切り壁構造体とを備えてなり、該仕切り壁構造体がドーム状構造物の内部の所定領域を囲っている壁状体からなり、該ドーム状構造物が該仕切り壁構造体の上方を空間を介して取り囲んでいる放射性汚染物質保管施設。」である点で一致し、次の各相違点で相違する。 相違点: (相違点1) ドーム状構造物が仕切り壁構造体を空間を介して取り囲んでいる部分が、上方以外に、本願発明1は「周囲」も空間を介して取り囲んでいる構成を備えているのに対し、引用発明1はそのような構成を備えていない点。 (相違点2) ドーム状構造物が、本願発明1は「波形鋼板を連結して形成し」ているのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。 (相違点3) 本願発明1は「ドーム状構造物を支える基礎」という構成を備えているのに対し、引用発明1はそのような特定がない点。 (2)判断 引用文献2には、上記相違点1の構成は記載されていないから、上記相違点1は、当業者が引用発明1に引用発明2を採用して容易に想到し得たものではない。 また、放射性汚染物質を保管する技術において、ドーム状構造物が仕切り壁構造体の周囲を空間を介して取り囲むように配置することは、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献8(特開2002-154457号公報)を参照しても周知技術とはいえない。 さらに、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2004-82667号公報)、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開昭 58-66099号公報)、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2007-105598号公報)、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(登録実用新案第3171046号公報)、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7(特開2001-246346号公報)にも上記相違点1の構成は記載されていない。 そして、本願発明1は上記相違点1を備えることで、「放射性汚染物質を保管する仕切り壁構造体がドーム状構造物から間隔をおいて構築されていて、ドーム状構造物やその基礎に放射性汚染物質の荷重による圧力がかかる心配がないので、ドーム状構造物やその基礎は放射性汚染物質による荷重を考慮して構造設計をする必要がなく、従って、放射性汚染物質保管施設を低コストで構築することができる」という効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、相違点2、相違点3について検討するまでもなく、当業者が引用発明1、引用発明2、引用文献3ないし8の技術事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2ないし13 本願発明2ないし11は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が引用発明1、引用発明2、引用文献3ないし8の技術事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本願発明12も、上記相違点1で引用発明1と相違し、本願発明13は、本願発明12を減縮した発明であるから、本願発明12及び13は、本願発明1と同様の理由により、当業者が引用発明1、引用発明2、引用文献3ないし8の技術事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 原査定の概要及び原査定のついての判断 原査定は、請求項1、2、4、13について上記引用文献1、2、8から当業者が容易に想到し得る事項であり、請求項3、6について上記引用文献1-4、8から当業者が容易に想到し得る事項であり、請求項5、8-11について上記引用文献1-6、8から当業者が容易に想到し得る事項であり、請求項12について上記引用文献1-8から当業者が容易に想到し得る事項であり、請求項14について上記引用文献1、2、6、8から当業者が容易に想到し得る事項であるから、特許法第29項第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 しかしながら、平成29年11月15日付け手続補正で補正された請求項1ないし13は、上記引用文献1と少なくとも相違点1で相違し、上記引用文献2ないし8にも上記相違点1の構成は記載されていないので、本願発明1ないし13は、当業者が引用発明1、引用発明2、引用文献3ないし8の技術事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 当審では、特許法第36条第6項第2号の拒絶理由を通知しているが、平成29年11月15日付け手続補正で補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 第7 むすび したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-01-10 |
出願番号 | 特願2012-220358(P2012-220358) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G21F)
P 1 8・ 537- WY (G21F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 後藤 孝平 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 野村 伸雄 |
発明の名称 | 放射性汚染物質保管施設とその構築方法 |
代理人 | 窪田 法明 |