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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07G
管理番号 1336434
審判番号 不服2016-6630  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-06 
確定日 2018-01-09 
事件の表示 特願2014- 24468「システムユーザインターフェースのための複数言語ユーザ選択のための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月17日出願公開、特開2014-132476〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2006年(平成18年)7月20日(パリ条約による優先権主張2005年(平成17年)7月20日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願である特願2008-522924号の一部を平成23年1月4日に新たな特許出願とした特願2011-155号の一部を平成26年2月12日にさらに新たな特許出願としたものであって、同年3月14日に手続補正書が提出され特許請求の範囲について補正がなされ、同年3月20日に再度手続補正書が提出され特許請求の範囲について補正がなされ、同年12月19日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年6月25日に意見書とともに手続補正書が提出され特許請求の範囲について補正がなされたが、同年12月24日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成28年5月6日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲についてさらに補正がなされたものである。

第2 平成28年5月6日付けの手続補正について
1 補正事項
平成28年5月6日付けの特許請求の範囲についての手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成27年6月25日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正しようとするものであって、その補正事項は以下のとおりである。

補正事項
請求項2ないし24を削除する。

2 補正の適否
補正事項は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当し、また、同法同条第3項及び第4項の規定に違反するものではないことは明らかである。
以上により、本件補正は適法である。

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、上記平成28年5月6日付けの手続補正書によって適法に補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「 【請求項1】
プロセッサと、
ディスプレイであって、該ディスプレイには、取引のためのオペレータへの情報を含むオペレータインターフェースがオペレータ言語で表示され、取引のための顧客への情報を含む顧客インターフェースが顧客言語で表示される、前記ディスプレイと、
メモリであって、
前記プロセッサに前記オペレータインターフェースを生成させるオペレータインターフェースプログラムと、
前記プロセッサに前記顧客インターフェースを生成させる顧客インターフェースプログラムと
を記憶した前記メモリと、
前記オペレータからの入力を受け、前記顧客からの入力を受ける入力手段と、
携帯メモリ媒体のメモリ手段に記憶されたデータを読み取るように構成されたカードリーダと、
前記オペレータが、1つの取引の完了後に別の取引の一部として、前記オペレータから受ける前記入力に基づいて前記オペレータ言語を選択することを可能とし、読み取られた前記データに基づいて前記顧客言語を選択することを可能とするように構成された言語識別モジュールと
を備えたクレジットカード及びデビットカード取引端末であって、
前記入力手段は、前記顧客に前記顧客インターフェースを表示するための前記顧客言語を選択するように構成可能であり、前記オペレータ言語及び前記顧客言語は複数の言語から選択され、前記顧客言語と前記オペレータ言語は異なり、前記言語識別モジュールはデフォルトオペレータ言語を有し、該デフォルトオペレータ言語は、受けた前記入力に基づいて前記オペレータ言語が選択される前に、前記オペレータ言語として使用され、前記端末は、1つの取引の完了後に別の取引の一部として、前記オペレータ言語の選択を実行するかどうかを別のオペレータが選択可能なように構成され、該選択は、前記顧客言語の選択から別個に独立して行われ、前記オペレータ言語及び前記顧客言語は取引が行われる時点で選択され、前記オペレータインターフェースと前記顧客インターフェースが同じ取引の間に表示されるように構成されたクレジットカード及びデビットカード取引端末。」

第4 引用文献記載の発明
これに対して、原査定の平成26年12月19日付け拒絶の理由に引用された、本件の優先日前に頒布された刊行物である特開平9-330456号公報(以下、「引用文献1」という。)、及び特開平6-12578号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の発明等が記載されていると認められる。

(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「クレジット支払処理装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表示器にクレジット支払処理ガイダンスを表示可能かつ表示されたクレジット支払処理ガイダンスを参照しつつクレジット支払処理手続を遂行可能であるとともにクレジットカードから読取ったカード記憶データを利用してクレジット支払処理を実行可能なクレジット支払処理装置に関する。」
(イ)「【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)本クレジット支払処理装置は、基本的構造が図1に示す電子キャッシュレジスタ10と一体的に形成されかつ言語情報と言語別クレジット支払処理ガイダンスとを対応させて記憶可能な言語別ガイダンス記憶手段13WGと,クレジットカードから読取ったカード記憶データを利用して直接または間接的に言語情報を抽出する言語情報抽出手段(11,12)と,言語別ガイダンス記憶手段13WGを検索して抽出された言語情報に対応する言語別クレジット支払処理ガイダンスを選択する言語別ガイダンス選択手段(11,12)と,選択された言語別クレジット支払処理ガイダンスを表示器(17CHR,17CST)に切替表示する選択言語別ガイダンス切替表示制御手段(11,12)とを設け、クレジット支払処理ガイダンスをクレジットカードから読取りかつ抽出された言語情報に対応する言語で表示器に表示可能に形成されている。」
(ウ)「【0030】図1において、電子キャッシュレジスタ10は、CPU11,ROM12,バッテリーバックアップされたRAM13,スキャナ15(スキャナ回路15C),キーボード16(キーボード回路16C),表示回路17Cを介して接続されたオペレータ用表示器17CHRおよび顧客用表示器17CST,レシート発行用のプリンタ18(プリンタ回路18C),入出力ポート(I/O)19Cを介して接続されたドロワ自動開放装置19を含み、商品ファイルを参照しつつ商品データを求めて売上ファイルに登録する商品登録業務および会計業務を実行することができる。」
(エ)「【0031】オペレータ(キャッシャー)用表示器17CHRはオペレータ側に向けてレジ本体に取付けられるとともに、顧客用表示器17CSTはそれと反対方向の顧客側に向けて取付けられている。なお、表示器(17)は、オペレータと顧客とが共用可能な向きに配設された1台から形成してもよい。」
(オ)「【0040】言語別ガイダンス選択手段は、図3に示す言語別ガイダンス記憶手段13WGを検索して抽出(ST13,ST14のYES)された言語情報(例えば、“英語”)に対応する言語別クレジット支払処理ガイダンス(例えば、“Please input your secret number.”)を選択する手段で、言語別ガイダンス選択制御プログラムを格納させたROM12とCPU11とから形成され、図5のST16,ST17で実行される。」
(カ)「【0041】選択言語別ガイダンス切替制御手段は、選択(ST17)された言語別クレジット支払処理ガイダンスを表示器(オペレータ用表示器17CHRおよび顧客用表示器17CST)に切替表示する手段で、選択言語別ガイダンス切替制御プログラムを格納させたROM12とCPU11とから形成され、図5のST18、図5のST20,ST22およびST24で実行される。」
(キ)「【0043】なお、クレジット支払処理ガイダンスの一部であるカード入力処理ガイダンス(例えば、“クレジットカードを読取って下さい。”あるいは“クレジットカードを提示して下さい。”)は、未だ言語情報が抽出されていないので、制御部(CPU11,ROM12)が各言語情報に対応する各カード入力処理ガイダンスの全て(例えば、8種類)を両表示器17CHR,17CSTに並列表示(ST10)するものと形成されている。」
(ク)「【0046】次に、この第1の実施形態の作用・動作を説明する。日本語を使用するオペレータが、キーボード16上のクレジット売上(宣言)キーを押下操作すると、制御部(11,12)が図5,図6に示すクレジット支払処理プログラムを起動する。」
(ケ)「【0047】まず、オペレータ用表示器17CHRおよび顧客用表示器17CSTに、クレジット支払処理ガイダンスの一部であるカード入力処理ガイダンスが表示される。すなわち、この段階では未だ言語情報が抽出されていないので、図3に示す言語別ガイダンス記憶手段13WGに記憶されている各言語情報に対応する全て(例えば、8種類)の言語別カード入力処理ガイダンスが並列表示される(図5のST10)。日本語の場合は、“クレジットカードを読取って下さい。”であり、各言語ごとに同じ内容が当該言語で表示される。したがって、顧客は、クレジットカードの読取り手続に入ることを、迅速かつ正確に知ることができる。オペレータにとっても、顧客への説明を簡易化乃至省略できるので精神的負担が少くてすむ。」
(コ)「【0048】クレジットカードリーダ21を用いてクレジットカードを読取る(ST11のYES)と、制御部(11,12)は、カード読取り入力されたカード記憶データから会社コードを抽出(ST12)しかつRAM13内のクレジット支払処理条件テーブル13Tを検索して当該クレジット会社のクジット支払処理条件を得、これをRAM13のワークエリアに記憶(ST12)する。
【0049】すると、言語情報抽出手段(11,12)が、読取ったカード記憶データを利用して言語情報を抽出(ST13?ST15)する。カード記憶データに言語情報が含まれている場合には直接抽出(ST13,ST14のYES)するが、言語情報が含まれていない場合(ST14のNO)には図4に示す国言語情報テーブル13CWを検索(ST15)して当該国情報(例えば、“イギリス”)に対応する言語情報(“英語”)を抽出する。
【0050】引続き、言語別ガイダンス選択手段(11,12)が、図3に示す言語別ガイダンス記憶手段13WGを検索(ST16)して抽出された言語情報(“英語”)に対応する言語別クレジット支払処理ガイダンスを選択(ST17)する。選択言語別ガイダンス切替制御手段(11,12)は、選択された言語別クレジット支払処理ガイダンスを切替表示(ST18)する。この場合の言語別クレジット支払処理ガイダンスは、暗証番号入力処理ガイダンス(“Please input your secret number.”)である。」
(サ)「【0051】したがって、英語を使用する顧客は、顧客用表示器17CSTを見ることによって、その意味を迅速かつ正確に知り得かつ自らがキー操作により自己の暗証番号を入力することができる。この際、オペレータ用表示器17CHRにも同じ内容(“Please input your secret number.”)が表示されるが、従来例のように顧客用表示器17CSTにもオペレータ用表示器17CHRの場合と同じ日本語で表示される場合に比較して、クレジット支払処理手続自体を知るオペレータにとっては負担が小さい。」
(シ)「【0065】(第3の実施形態)この実施形態は、基本的構成・機能が第1の実施形態(図1?図7)の場合と同様とされているが、言語別ガイダンス選択手段(11,12)が顧客用として抽出された言語情報に対応する言語別クレジット支払処理ガイダンスを選択可能かつオペレータ用として予め記憶された基準言語クレジット支払処理ガイダンスを選択可能に形成し、かつ選択言語別ガイダンス切替表示制御手段(11,12)が顧客用表示器17CSTに選択された言語別クレジット支払処理ガイダンスを切替表示可能(図11のST40)かつオペレータ用表示器17CHRに基準言語クレジット支払処理ガイダンスを表示可能(ST43)に形成されている。」
(ス)「【0067】すなわち、図10に示す基準言語ガイダンス記憶手段13STを設け、キー操作によってオペレータの使用する言語に対応する基準言語クレジット支払処理ガイダンスを予め設定記憶可能に形成してある。この第3の実施形態における基準言語ガイダンス記憶手段13STは、メモリ(RAM13)の小容量化と検索便宜および高速化とを図るために、第1の実施形態の場合(図3)と同じ言語別ガイダンス記憶手段13WGをその一部として兼用しかつ基準言語欄にフラグ“1”をセットすることにより当該言語別クレジット支払処理ガイダンスを基準言語クレジット支払処理ガイダンスとして利用可能に構築してある。
【0068】図10において、言語別クレジット支払処理ガイダンスが例えば暗証番号入力処理ガイダンスである場合、言語情報(“日本語”)に対応する基準言語欄にフラグ“1”がセットされているので、この場合の基準言語暗証番号入力処理ガイダンスは“暗証番号を入力して下さい。”となる。もとより、言語情報欄が“英語”である当該選択言語別クレジット支払処理ガイダンス(“Please input your secret number.”)に対応する基準言語欄のフラグは“0”とされている。
【0069】したがって、言語情報抽出手段(11,12)で抽出(図5のST13?ST15)された言語情報が例えば“英語”でありかつ言語別ガイダンス選択手段(11,12)で選択された言語別クレジット支払処理ガイダンスが言語別暗証番号入力処理ガイダンス(“Please input your secretnumber.”)であれば、選択言語別ガイダンス切替表示制御手段(11,12)は、図5のST18において、顧客用表示器17CSTに言語別暗証番号入力処理ガイダンス(“Please input your secretnumber.”)を表示(図11のST40)しかつオペレータ用表示器17CHRには基準言語暗証番号入力処理ガイダンス(“暗証番号を入力して下さい。”)を表示(ST43)する。」
(セ)図1から、クレジット支払処理装置がクレジットカードリーダ21を備えることが見てとれる。

(2)引用文献1発明
(ソ)上記記載事項(イ)の「本クレジット支払処理装置は、基本的構造が図1に示す電子キャッシュレジスタ10と一体的に形成され」との記載、及び上記記載事項(ウ)(エ)の記載、及び上記図示内容(セ)から、クレジット支払い処理装置はCPU11、表示器17、ROM12、キーボード16、クレジットカードリーダ21を備える、ということができる。
(タ)上記記載事項(ク)の記載及び上記記載事項(サ)の「顧客は、・・・自らがキー操作により自己の暗証番号を入力することができる。」との記載から、キーボード16はオペレータからの入力を受け、顧客からの入力を受けるものということができる。
(チ)上記記載事項(イ)および(コ)の「クレジットカードリーダ21を用いてクレジットカードを読取る(ST11のYES)・・・。すると、言語情報抽出手段(11,12)が、読取ったカード記憶データを利用して言語情報を抽出(ST13?ST15)する。カード記憶データに言語情報が含まれている場合には直接抽出(ST13,ST14のYES)するが、言語情報が含まれていない場合(ST14のNO)には図4に示す国言語情報テーブル13CWを検索(ST15)して当該国情報(例えば、“イギリス”)に対応する言語情報(“英語”)を抽出する。」との記載から、言語情報抽出手段が、読み取られたカード記憶データに基づいて顧客の言語情報を抽出することが理解できる。また、上記記載事項(イ)および(コ)の「言語別ガイダンス選択手段(11,12)が、図3に示す言語別ガイダンス記憶手段13WGを検索(ST16)して抽出された言語情報(“英語”)に対応する言語別クレジット支払処理ガイダンスを選択(ST17)する。」との記載から、言語別ガイダンス選択手段が、言語別ガイダンス記憶手段に記憶された複数の言語別クレジット支払処理ガイダンスから抽出された言語情報に対応する言語別クレジット支払い処理ガイダンスを選択することが理解できる。すなわち、言語情報抽出手段及び言語別ガイダンス選択手段が、読み取られた前記カード記憶データに基づいて顧客言語を選択するということができる。
(ツ)上記記載事項(イ)および(コ)の「選択言語別ガイダンス切替制御手段(11,12)は、選択された言語別クレジット支払処理ガイダンスを切替表示(ST18)する。この場合の言語別クレジット支払処理ガイダンスは、暗証番号入力処理ガイダンス(“Please input your secret number.”)である。」との記載から、選択言語別ガイダンス切替制御手段が、選択された言語別クレジット支払処理ガイダンスを表示器に表示することが理解できる。すなわち、選択された顧客言語でクレジット支払処理ガイダンスが表示器に表示される、ということができる。
(テ)上記記載事項(オ)(カ)の記載から、言語別ガイダンス選択制御プログラム、選択言語別ガイダンス切替制御プログラムがROM12に記憶され、CPU11が言語別ガイダンス選択制御プログラム、選択言語別ガイダンス切替制御プログラムを実行する、ということができる。すなわち、CPUに言語別クレジット支払処理ガイダンスを選択し表示させるプログラムがROMに記憶されているということができる。そして、言語別クレジット支払処理ガイダンスを選択し表示させるということは、言語別クレジット支払処理ガイダンスの表示を生成する、ということができる。
(ト)上記記載事項(ス)の「図10に示す基準言語ガイダンス記憶手段13STを設け、キー操作によってオペレータの使用する言語に対応する基準言語クレジット支払処理ガイダンスを予め設定記憶可能に形成してある。」との記載、及び「この第3の実施形態における基準言語ガイダンス記憶手段13STは、メモリ(RAM13)の小容量化と検索便宜および高速化とを図るために、第1の実施形態の場合(図3)と同じ言語別ガイダンス記憶手段13WGをその一部として兼用しかつ基準言語欄にフラグ“1”をセットすることにより当該言語別クレジット支払処理ガイダンスを基準言語クレジット支払処理ガイダンスとして利用可能に構築してある。」との記載から、基準言語は、オペレータのキー操作すなわち入力によって基準言語ガイダンス記憶手段のオペレータの使用する言語に対応する言語の基準言語欄にフラグをセットすることで、言語別ガイダンス記憶手段に記憶されている複数の言語別クレジット支払処理ガイダンスから選択されることが理解できる。また、基準言語はオペレータの使用する言語に対応するからオペレータ言語といえる。さらに、オペレータ言語の選択は顧客用言語の選択から別個独立して行われ、顧客言語とオペレータ言語は異なる場合があることは明らかである。
(ナ)上記記載事項(シ)(ス)の記載、及び上記認定事項(ト)から、言語別ガイダンス選択手段が、オペレータから受ける入力に基づいてオペレータ言語を選択し、選択言語別ガイダンス切替制御手段が、選択されたオペレータ言語でクレジット支払処理ガイダンスを表示器に表示するということができる。
(ニ)上記記載事項(ス)の記載から、オペレータ言語クレジット支払い処理ガイダンスと顧客用言語クレジット支払処理ガイダンスが同じ取引の間に表示されているということができる。
(ヌ)上記認定事項(チ)から、顧客言語は、クレジットカードの読み取り後、クレジット支払処理ガイダンスの表示前までには選択され、クレジットカードの読み取り及びクレジット支払処理ガイダンスの表示は、クレジット支払処理の一部であるから、顧客言語はクレジット支払処理が行われる時点で選択される、ということができる。
(ネ)上記記載事項(シ)の「(第3の実施形態)この実施形態は、基本的構成・機能が第1の実施形態(図1?図7)の場合と同様とされている」との記載から、第3の実施形態は第1の実施形態の構成・機能である上記認定事項(ソ)ないし(テ)を備えるものといえる。
(ノ)上記認定事項(チ)における「言語別ガイダンス選択手段が、言語別ガイダンス記憶手段に記憶された複数の言語別クレジットガイダンスから抽出された言語情報に対応する言語別クレジットガイダンスを選択する」、及び上記認定事項(ト)における「基準言語は、オペレータのキー操作すなわち入力によって基準言語ガイダンス記憶手段のオペレータの使用する言語に対応する言語の基準言語欄にフラグをセットすることで、言語別ガイダンス記憶手段に記憶されている複数の言語別クレジット支払処理ガイダンスから選択される」から、オペレータ言語及び顧客言語は複数の言語から選択されるということができる。

そして、引用文献1の上記記載事項(ア)ないし(セ)及び上記認定事項(ソ)ないし(ノ)を技術常識を踏まえて本願発明に照らして整理すると、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用文献1発明」という。)

「CPUと、
表示器であって、該表示器には、オペレータ言語クレジット支払処理ガイダンスがオペレータ言語で表示され、顧客言語クレジット支払処理ガイダンスが顧客言語で表示される、前記表示器と、
ROMであって、前記CPUにオペレータ言語クレジット支払処理ガイダンスの表示を生成させるプログラムと、前記CPUに顧客言語クレジット支払い処理ガイダンスの表示を生成させるプログラムとを記憶した前記ROMと、
前記オペレータからの入力を受け、前記顧客からの入力を受けるキーボードと、
クレジットカードに記憶されたカード記憶データを読み取るように構成されたカードリーダと、
前記オペレータから受ける前記入力に基づいてオペレータ言語を選択することを可能とし、読み取られた前記カード記憶データに基づいて前記顧客言語を選択することがを可能とするように構成された言語情報抽出手段および言語別ガイダンス選択手段と、
を備えたクレジット支払処理装置であって、
オペレータ言語及び顧客言語は複数の言語から選択され、
前記顧客言語と前記オペレータ言語は異なる場合があり、
該オペレータ言語の選択は、前記顧客言語の選択から別個に独立して行われ、
前記顧客言語はクレジット支払処理が行われる時点で選択され、
オペレータ言語クレジット支払処理ガイダンスと顧客言語クレジット支払処理ガイダンスが同じクレジット支払処理の間に表示される
ように構成されたクレジット支払処理装置。」

(3)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、「POSシステム」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は百貨店、スーパー、専門店、コンビニエンスストアなど一般小売店で使用するPOS(Point Of Sales) システムに関する。
【0002】小売店でも外国人従業員が店頭販売員として従事するようになり、これら日本語以外を母国語とする操作者にも理解できる言語(例えば母国語)で操作ガイダンスやメッセージを表示するPOSシステムが要求されている。」
(イ)「【0014】POS端末装置は、演算制御部1、記憶部2、キーボードまたはID(Identifier) カードリーダ等の入力部4、ディスプレイ等の表示出力部5、音声出力部6より構成される。」
(ウ)「【0016】あらかじめ、予想される操作者の理解できる言語を複数設定し、それらの言語によるメッセージをメッセージテーブル22a,22b,..としてメッセージマスタ33内に用意する。
【0017】また販売員マスタ21に、POS端末装置を操作する販売員の識別コード(操作者コード)とその理解できる言語(言語コード)を関連づけて登録しておく。」
(エ)「【0021】POS操作する場合、販売員は最初に自己の識別コードを入力する。販売員の識別コードが入力されると、演算制御部1はPOS処理プログラム23のテーブル置換手段23a の制御のもとに、販売員マスタ21を検索してその販売員が使用するとして登録した言語コードを取り出し、その言語コードに対応したメッセージテーブルをサーバ32の外部記憶部3にあるメッセージマスタ33から読み出し、POS端末装置の記憶部2内のメッセージテーブル領域22に展開する。
【0022】以後の動作は従来例と基本的に同じであって、操作ガイダンスやメッセージはメッセージテーブル領域22内のメッセージテーブルを基にして、プログラム内のメッセージコードを実際のメッセージに変換して、ディスプレイ表示部(出力部)5や音声出力部(その他の出力部)6に出力される。
【0023】POS処理プログラム23は、通常のPOS操作が終わるとテーブル置換手段23a に制御を渡して識別コードの入力ができるようにしておくか、メニュー画面を表示して識別コードの入力が選択できるように構成しておく。」
(オ)「【0024】販売員が変わり、識別コードを入力し直すと、メッセージテーブル領域22は、その販売員用の(言語の)メッセージテーブルに入れ換えられ、以後の操作ガイダンスやメッセージは、その販売員の理解できる言語となる。」

(4)引用文献3記載事項
(カ)上記記載事項(ウ)(オ)から、販売員の識別コードの入力は、販売員に対する操作ガイダンスやメッセージを表示する言語を選択することといえる。また、販売員に対する操作ガイダンスやメッセージを表示する言語はオペレータ言語ということができる。
(キ)販売員が行うPOS操作は、支払処理すなわち取引であるから、上記記載事項(エ)の「POS操作する場合、販売員は最初に自己の識別コードを入力する。」との記載は、販売員は取引をする場合、最初に自己の識別コードを入力する、つまり販売員は取引の一部として自己の識別コードを入力する、ということができる。また、POS端末は取引端末ということができる。
(ク)上記認定事項(カ)(キ)から、オペレータ言語は、取引の一部として、すなわち取引が行われる時点で選択される、ということができる。

上記記載事項(ア)ないし(オ)及び上記認定事項(カ)ないし(ク)から、引用文献3には、以下の事項が記載されていると認める。
「取引端末において、オペレータ言語は取引が行われる時点で選択されること」(以下、「引用文献3事項」という。)

第5 対比
本願発明と引用文献1発明とを対比すると、引用文献1発明の「CPU」は、本願発明の「プロセッサ」に相当する。以下同様に、「表示器」は「ディスプレイ」に、「ROM」は「メモリ」に、「キーボード」は「入力手段」に、「クレジットカード」は「携帯メモリ媒体」に、「クレジット支払処理」は「取引」に相当する。
また、「オペレータ言語クレジット支払処理ガイダンス」がオペレータへの情報を含み、「顧客言語クレジット支払処理ガイダンス」が顧客への情報を含むことは明らかであるから、引用文献1発明の「オペレータ言語クレジット支払処理ガイダンスの表示」「顧客言語クレジット支払処理ガイダンスの表示」はそれぞれ本願発明の「オペレータインタフェース」「顧客インタフェース」に相当する。
そして、引用文献1発明の「言語情報抽出手段および言語別ガイダンス選択手段」と本願発明の「言語識別モジュール」は「前記オペレータから受ける前記入力に基づいて前記オペレータ言語を選択することを可能とし、読み取られた前記データに基づいて前記顧客言語を選択することを可能とするように構成された」点において共通し、以下同様に、「クレジット支払処理装置」と「クレジットカード及びデビットカード取引端末」は「クレジットカード取引端末」である点で共通する。

したがって、本願発明と引用文献1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「プロセッサと、
ディスプレイであって、該ディスプレイには、取引のためのオペレータへの情報を含むオペレータインターフェースがオペレータ言語で表示され、取引のための顧客への情報を含む顧客インターフェースが顧客言語で表示される、前記ディスプレイと、
メモリであって、前記プロセッサに前記オペレータインターフェースを生成させるオペレータインターフェースプログラムと、前記プロセッサに前記顧客インターフェースを生成させる顧客インターフェースプログラムとを記憶した前記メモリと、
前記オペレータからの入力を受け、前記顧客からの入力を受ける入力手段と、
携帯メモリ媒体のメモリ手段に記憶されたデータを読み取るように構成されたカードリーダと、
前記オペレータから受ける前記入力に基づいて前記オペレータ言語を選択することを可能とし、読み取られた前記データに基づいて前記顧客言語を選択することを可能とするように構成された言語識別モジュールと
を備えたクレジット支払処理装置であって、
前記オペレータ言語及び前記顧客言語は複数の言語から選択され、前記顧客言語と前記オペレータ言語は異なり、前記端末は、オペレータ言語の選択は、前記顧客言語の選択から別個に独立して行われ、前記顧客言語は取引が行われる時点で選択され、前記オペレータインターフェースと前記顧客インターフェースが同じ取引の間に表示されるように構成されたクレジットカード取引端末。」

そして、本願発明と引用文献1発明とは、以下の点で実質的に相違している。
<相違点1>本願発明は、クレジットカード及びデビットカード取引端末であるのに対し、引用文献1発明はクレジット支払処理装置である点。
<相違点2>本願発明の入力手段は、顧客に顧客インターフェースを表示するための顧客言語を選択するように構成可能であるのに対し、引用文献1発明の入力手段はそのように構成可能であるか不明である点。
<相違点3>本願発明の言語識別モジュールはデフォルトオペレータ言語を有し、該デフォルトオペレータ言語は、受けた入力に基づいてオペレータ言語が選択される前に、前記オペレータ言語として使用されるのに対し、引用文献1発明はデフォルトオペレータ言語を有するか不明である点。
<相違点4>本願発明は、オペレータ言語の選択が、1つの取引の完了後に別の取引の一部として、前記オペレータ言語の選択を実行するかどうかを別のオペレータが選択可能なように構成されるのに対し、引用文献1発明はそのように構成されているか不明である点。
<相違点5>本願発明は、オペレータ言語は取り引きが行われる時点で選択されるのに対し、引用文献1発明はオペレータ言語の選択タイミングが取り引きが行われる時点かどうか不明である点。

第6 相違点の検討
(1)相違点1について
クレジットカード及びデビットカードによる支払の双方に対応する取引端末は、原査定において示された特開2003-189366号公報(段落0002、0023、図4参照)に記載されるように従来周知の技術事項であり、引用文献1発明に該従来周知の技術事項を適用して、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。

(2)相違点2について
取引端末において、顧客言語の選択を入力手段により行えるようにすることは、原査定において示された特開平4-264696号公報(段落0009参照)に記載されるように従来周知の技術事項であり、引用文献1発明に該従来周知の技術事項を適用して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。

(3)相違点3について
取引端末の技術分野に限らず、一般に、ディスプレイに表示する言語を選択可能な装置において、当該表示する言語を選択する前に何らかの言語すなわちデフォルト言語により表示を行うことは、原査定において示された特開2005-115808号公報(段落0017、図3参照)に記載されるように従来周知の技術事項であり、引用文献1発明に該従来周知の技術事項を適用して、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易である。

(4)相違点4について
取引端末において、オペレータ言語の選択を、別のオペレータが選択可能なように構成することは、原査定において示された上記引用文献3(段落0021?0024参照)に記載されるように従来周知の技術事項である。
また、引用文献3の段落0023において、POS処理プログラムは、販売員の交代(すなわち識別コードの入力)が行われるか否かのタイミングに関する情報は保持していないと想定される。そうすると、当該POS処理プログラムは、常に次の取引が別の販売員によって行われる可能性があるという状況に備え、1つの取引にかかるPOS操作が終わる度に、識別コードの入力ができるように構成されているということも、十分想定できる。また、そのようにすることは当業者が適宜なし得る設計的事項でもある。
したがって、引用文献1発明に上記周知技術を適用して相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(5)相違点5について
引用文献1発明と引用文献3事項は、いずれも取引端末に関するものであり、技術分野が共通するから、引用文献1発明に引用文献3事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、引用文献1発明に引用文献3事項を適用して相違点5に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(6)本願発明の効果について
本願発明によってもたらされる効果も、引用文献1発明、引用文献3事項、及び上記周知の技術事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものではない。

(7)小括
したがって、本願発明は、引用文献1発明、引用文献3事項、及び上記周知の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用文献1発明、引用文献3事項及び上記周知の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-17 
結審通知日 2017-08-18 
審決日 2017-08-30 
出願番号 特願2014-24468(P2014-24468)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G07G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 一浩  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 根本 徳子
平瀬 知明
発明の名称 システムユーザインターフェースのための複数言語ユーザ選択のための方法及び装置  
代理人 山本 修  
代理人 小林 泰  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小野 新次郎  

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