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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1336435
審判番号 不服2016-14966  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-05 
確定日 2018-01-09 
事件の表示 特願2012-8148「フリップチップ型半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年8月1日出願公開,特開2013-149737〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成24年1月18日の出願であって,平成28年3月31日付け(同年4月5日発送)で拒絶理由通知がされ,同年6月2日に意見書とともに手続補正書が提出されたが,同年7月12日付け(同年同月14日発送)で拒絶査定がなされたところ,これに対して,平成28年10月5日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。



第2 本願発明

本件の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成28年6月2日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「被着体上にフリップチップ接続された半導体素子の裏面に形成するためのフリップチップ型半導体裏面用フィルムを,半導体ウエハにラミネートする工程A,
前記半導体ウエハをダイシングする工程B,及び
前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムをレーザーマーキングする工程Cを含み,
前記工程Cのフリップチップ型半導体裏面用フィルムが未硬化であり,
前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムが,樹脂組成物100重量部に対して0.01?10重量部の着色剤を含有することを特徴とする,
フリップチップ型半導体装置の製造方法。」(以下「本願発明」という。)



第3 引用例の記載事項
ア 引用例1
本願の出願日前に頒布され,上記平成28年3月31日付けの拒絶理由通知において引用した,特開2011-249739号公報(公開日:平成23年12月8日,以下「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。なお,下線は当審で付したものである。

(1)「【0042】
本発明では、半導体裏面用フィルムは着色されていることが好ましい。このように、半導体裏面用フィルム2が有色となっている場合(無色・透明ではない場合)、着色により呈している色としては特に制限されないが、例えば、黒色、青色、赤色などの濃色であることが好ましく、特に黒色であることが好適である。」

(2)「【0061】
半導体裏面用フィルム2は、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂成分やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂成分と、色材(着色剤)と、必要に応じて溶媒やその他の添加剤などとを混合して樹脂組成物を調製し、フィルム状の層に形成する慣用の方法を利用し形成することができる。」

(3)「【0062】
なお、半導体裏面用フィルム2が、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂成分を含む樹脂組成物により形成されている場合、半導体裏面用フィルム2は、半導体ウエハに適用する前の段階では、熱硬化性樹脂が未硬化又は部分硬化の状態である。この場合、半導体ウエハに適用後に(具体的には、通常、フリップチップボンディング工程で封止材をキュアする際に)、半導体裏面用フィルム2中の熱硬化性樹脂成分を完全に又はほぼ完全に硬化させる。」

(4)「【0066】
半導体裏面用フィルム2は、フィルム状物であり、着色されている場合、その着色形態は特に制限されない。半導体裏面用フィルム2は、例えば、熱可塑性樹脂成分及び/又は熱硬化性樹脂成分と、着色剤等を含む樹脂組成物により形成されたフィルム状物であってもよく、熱可塑性樹脂成分及び/又は熱硬化性樹脂成分等を含む樹脂組成物により形成された樹脂層と、着色剤層とが積層された構成を有するフィルム状物であってもよい。
【0067】
なお、半導体裏面用フィルム2が樹脂層と着色剤層との積層体である場合、積層形態の半導体裏面用フィルム2としては、樹脂層/着色剤層/樹脂層の積層形態を有していることが好ましい。この場合、着色剤層の両側の2つの樹脂層は、同一の組成の樹脂層であってもよく、異なる組成の樹脂層であってもよい。」

(5)「【0072】
なお、半導体裏面用フィルム2のウエハに対する前記接着力は、例えば、次の通りにして測定した値である。即ち、半導体裏面用フィルム2の一方の面に、粘着テープ(商品名「BT315」日東電工株式会社製)を貼着して裏面補強する。その後、裏面補強した長さ150mm、幅10mmの半導体裏面用フィルム2の表面に、厚さ0.6mmの半導体ウエハを、50℃で2kgのローラーを一往復して熱ラミネート法により貼り合わせる。・・・」

(6)「【0077】
前記半導体裏面用フィルム2の光線透過率(%)は、半導体裏面用フィルム2を構成する樹脂成分の種類やその含有量、着色剤(顔料や染料等)の種類や含有量、充填材の種類やその含有量などによりコントロールすることができる。」

(7)「【0111】
(半導体ウエハ)
ワークとしては、公知乃至慣用の半導体ウエハであれば特に制限されず、各種素材の半導体ウエハから適宜選択して用いることができる。本発明では、半導体ウエハとしては、シリコンウエハを好適に用いることができる。
【0112】
(半導体装置の製造方法)
本発明の半導体装置の製造方法は、前記ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを用いた半導体装置の製造方法であれば特に制限されないが、例えば、下記の工程を具備する製造方法などが挙げられる。
前記ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムのフリップチップ型半導体裏面用フィルム上にワークを貼着する工程(マウント工程)
前記ワークをダイシングして半導体素子を形成する工程(ダイシング工程)
前記半導体素子を前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムとともに、ダイシングテープの粘着剤層から剥離する工程(ピックアップ工程)
前記半導体素子を被着体にフリップチップボンディングにより固定する工程(フリップチップボンディング工程)」

(8)「【0115】
(マウント工程)
先ず、図2(a)で示されるように、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1におけるフリップチップ型半導体裏面用フィルム2上に半導体ウエハ(ワーク)4を貼着し(特に圧着し)、これを密着(接着)保持させて固定する(マウント工程)。なお、本工程は、通常、圧着ロール等の押圧手段により押圧しながら行われる。
【0116】
(ダイシング工程)
次に、図2(b)で示されるように、半導体ウエハ4のダイシングを行う。これにより、半導体ウエハ4を所定のサイズに切断して個片化(小片化)し、半導体素子(半導体チップ)5を製造する。ダイシングは、例えば、半導体ウエハ4の回路面側から常法に従い行われる。また、本工程では、例えば、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1まで切込みを行うフルカットと呼ばれる切断方式等を採用できる。本工程で用いるダイシング装置としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、半導体ウエハ4は、貯蔵弾性率(60℃)が0.9MPa?15MPaの半導体裏面用フィルム2を有するダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1により優れた密着性で密着(接着)固定されているので、チップ欠けやチップ飛びを抑制できると共に、半導体ウエハ4の破損も抑制できる。なお、フリップチップ型半導体裏面用フィルム2がエポキシ樹脂を含む樹脂組成物により形成されていると、ダイシングにより切断されても、その切断面において半導体裏面用フィルム2の糊はみ出しが生じるのを抑制又は防止することができる。その結果、切断面同士が再付着(ブロッキング)することを抑制又は防止することができ、後述のピックアップを一層良好に行うことができる。
【0117】
なお、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1のエキスパンドを行う場合、該エキスパンドは従来公知のエキスパンド装置を用いて行うことができる。エキスパンド装置は、ダイシングリングを介してダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を下方へ押し下げることが可能なドーナッツ状の外リングと、外リングよりも径が小さくダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を支持する内リングとを有している。このエキスパンド工程により、後述のピックアップ工程において、隣り合う半導体チップ同士が接触して破損するのを防ぐことが出来る。
【0118】
(ピックアップ工程)
ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1に密着(接着)固定された半導体チップ5を回収する為に、図2(c)で示されるように、半導体チップ5のピックアップを行って、半導体チップ5を半導体裏面用フィルム2とともにダイシングテープ3より剥離させる。ピックアップの方法としては特に限定されず、従来公知の種々の方法を採用できる。例えば、個々の半導体チップ5をダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1の基材31側からニードルによって突き上げ、突き上げられた半導体チップ5をピックアップ装置によってピックアップする方法等が挙げられる。なお、ピックアップされた半導体チップ5は、その裏面(非回路面、非電極形成面などとも称される)がフリップチップ型半導体裏面用フィルム2により保護されている。
【0119】
本発明では、ウエハ裏面保護フィルム2の貯蔵弾性率(60℃)が0.9MPa?15MPaであるので、半導体チップ5をウエハ裏面保護フィルム2とともにダイシングテープ3より容易に剥離させることができ、優れたピックアップ性で半導体チップ5のピックアップを行うことができる。
【0120】
(フリップチップボンディング工程)
ピックアップした半導体チップ5は、図2(d)で示されるように、基板等の被着体に、フリップチップボンディング方式(フリップチップ実装方式)により固定させる。具体的には、半導体チップ5を、半導体チップ5の回路面(表面、回路パターン形成面、電極形成面などとも称される)が被着体6と対向する形態で、被着体6に常法に従い固定させる。例えば、半導体チップ5の回路面側に形成されているバンプ51を、被着体6の接続パッドに被着された接合用の導電材(半田など)61に接触させて押圧しながら導電材を溶融させることにより、半導体チップ5と被着体6との電気的導通を確保し、半導体チップ5を被着体6に固定させることができる。なお、このような半導体チップ5の被着体6への固定に際しては、半導体チップ5と被着体6との対向面や間隙を洗浄し、該間隙に封止材(封止樹脂など)を充填させることが重要である。」

(9)「【0129】
本発明のダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルム1を用いて製造された半導体装置(フリップチップ実装の半導体装置)は、半導体素子の裏面に半導体裏面用フィルム2が貼着されているため、各種マーキングを優れた視認性で施すことができる。特に、マーキング方法がレーザーマーキング方法であっても、優れたコントラスト比でマーキングを施すことができ、レーザーマーキングにより施された各種情報(文字情報、図形情報など)を良好に視認することが可能である。なお、レーザーマーキングを行う際には、公知のレーザーマーキング装置を利用することができる。」

(10)「【0173】
<フリップチップボンディング性の評価方法>
各実施例又は各比較例に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを用いて、前記の<ダイシング性・ピックアップ性の評価方法>により得られた各実施例又は各比較例に係る半導体チップについて、半導体チップの表面(回路面)が、該回路面に対応した配線を備えた回路基板の表面に対向する形態で、半導体チップの回路面に形成されているバンプが、回路基板の接続パッドに被着された接合用の導電材(半田)と接触させて押圧しながら、温度を260℃まで上げて導電材を溶融させ、その後、室温まで冷却させることにより、半導体チップを回路基板に固定させて、半導体装置を作製した。この際のフリップチップボンディング性について、下記の評価基準により評価した。
【0174】
(フリップチップボンディング性の評価基準)
○:問題なく、フリップチップボンディング方法により、実装できる
×:フリップチップボンディング方法により、実装できない
【0175】
<ウエハ裏面のマーキング性の評価方法>
前記の<フリップチップボンディング性の評価方法>により得られた半導体装置における半導体チップの裏面(すなわち、着色半導体裏面用フィルムの表面)に、YAGレーザーによりレーザーマーキングを施し、該レーザーマーキングにより得られた情報(バーコード情報)について、下記の評価基準により、各実施例又は各比較例に係るダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムを用いて得られた半導体装置のレーザーマーキング性を評価した。」

(11) 図2には,(a)から(d)までで,(マウント工程)から(フリップチップボンディング工程)までの各工程が図示されている。

(12) 上記摘記事項(4)と(9)より,半導体裏面用フィルムは,半導体ウエハに適用する前の段階では,熱硬化性樹脂が未硬化又は部分硬化の状態であり,最終工程のフリップチップボンディング工程で,半導体裏面用フィルム中の熱硬化性樹脂成分を完全に又はほぼ完全に硬化させるのであるから,フリップチップボンディング工程に至る前のレーザーマーキングする工程では,半導体裏面用フィルムは未硬化であると読み取れる。

上記摘記事項(1)?(10)並びに認定事項(11)及び(12)より,引用例1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「被着体上にフリップチップ接続された半導体素子の裏面に形成するための半導体裏面用フィルムを,半導体ウエハにラミネートするマウント工程,
前記半導体ウエハをダイシングするダイシング工程,及び
半導体裏面用フィルムをレーザーマーキングする工程を含み,
前記レーザーマーキングする工程の半導体裏面用フィルムが未硬化であり,
半導体裏面用フィルムが,樹脂組成物に対して着色剤を含有する半導体装置の製造方法。」


イ 引用例2
同じく引用された,本願の出願日前に頒布され,上記平成28年7月12日付けの拒絶査定において引用した,特開昭62-136861号公報(公開日:昭和62年6月19日,以下「引用例2」という。)には,以下の事項が記載されている。なお,下線は当審で付したものである。

(1)「(1)全体中に0.05?5重量%のチタンブラックを含有している樹脂組成物を用いて半導体素子を被覆モールドしてなる樹脂封止半導体装置。」(第1頁左欄第5行-第7行)

(2)「この発明は、レーザーにより表面に鮮明なマーキングを施すことができる樹脂封止半導体装置に関するものである。」(第1頁左欄第16行-第18行)

(3)「この発明者らは、レーザー光による半導体装置表面の破壊部と非破壊部との対比の鮮明さを得ることを目的として研究を重ねた結果、顔料が大きな影響を及ぼすことをつきとめ、この顔料を中心にさらに研究を重ねた結果、チタンブラックを用いるとレーザーによるマーキングに際して破壊部と非破壊部との対比が鮮明になることを見いだした。そして、これにもとづきさらに研究を重ねた結果、樹脂組成物中にチタンブラックを0.05?5重量%(以下「%」と略す)含有させるようにすると、特にマーキングの鮮明性が向上し、半導体装置の樹脂成形部分が、灰色,黒色等の有色であっても、また比較的暗い雰囲気下であってもマーキングが明瞭に認められるようになることを見いだし、この発明に到達した。」(第2頁右欄第7行-左下欄第1行)

(4) 上記摘記事項(1)及び(3)より,顔料であるチタンブラックは着色するために用いられることから着色剤であり,樹脂組成物に対して当該着色剤が0.05?5重量%としているから樹脂組成物100重量部に対して着色剤を0.05?5重量部とする事項が読み取れる。

上記摘記事項(1)?(3)並びに認定事項(4)より,引用例2には,次の事項が記載されている。

「樹脂組成物100重量部に対して0.05?5重量部の着色剤を含有する半導体用フィルム」


ウ 引用例3
同じく引用された,本願の出願日前に頒布され,上記平成28年7月12日付けの拒絶査定において引用した,特開平5-1204号公報(公開日:平成5年1月8日,以下「引用例3」という。)には,以下の事項が記載されている。なお,下線は当審で付したものである。

(1)「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、シュウ酸銅(II)等のレーザー発色材の他に、平均粒径が10μm以下と細かい充填剤を含有することを特徴とするCO_(2)レーザー印字に適したエポキシ樹脂組成物に関するものである。」

(2)「【0011】従って、シュウ酸銅(II)を含有したエポキシ樹脂組成物に対し文字やパターン状にレーザーを照射すると、樹脂表面がレーザーの熱エネルギーにより加熱され、樹脂中に含有されたシュウ酸銅(II)が上記化学反応を生じ黒色となる。この時、樹脂組成物に平均粒径が10μm以下の細かい充填剤が含有されていると、シュウ酸銅(II)等のレーザー発色材の分散を促す効果があるため、樹脂組成物中に均一にレーザー発色材を分散させることができる。すなわち低エネルギーのCO_(2)レーザー光でも文字やパターンを鮮明に印字することができる。」

(3)「【0021】実施例1
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量950) 50重量部
シュウ酸銅(II)(平均粒径15μm) 5重量部・・・」

(4)上記摘記事項(3)より,シュウ酸銅(II)は黒色に着色するために用いられることから着色剤であり,樹脂組成物50重量部に対して当該着色剤が5重量部であるから樹脂組成物100重量部に換算すると樹脂組成物100重量部に対して着色剤を10重量部とする事項が読み取れる。

上記摘記事項(1)?(3)並びに認定事項(4)より,引用例3には,次の事項が記載されている。

「樹脂組成物100重量部に対して10重量部の着色剤を含有する樹脂組成物」



第4 対比

本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「マウント工程」が本願発明の「工程A」に,引用発明の「ダイシング工程」が本願発明の「工程B」に,引用発明の「レーザーマーキングする工程」が本願発明の「工程C」に相当し,引用発明の「半導体裏面用フィルム」が本願発明の「フリップチップ型半導体裏面用フィルム」に相当する。

以上から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,かつ相違する。

[一致点]

「被着体上にフリップチップ接続された半導体素子の裏面に形成するためのフリップチップ型半導体裏面用フィルムを,半導体ウエハにラミネートする工程A,
前記半導体ウエハをダイシングする工程B,及び
前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムをレーザーマーキングする工程Cを含み,
前記工程Cのフリップチップ型半導体裏面用フィルムが未硬化であり,
前記フリップチップ型半導体裏面用フィルムが,樹脂組成物に対して着色剤を含有する,
フリップチップ型半導体装置の製造方法。」

[相違点]

本願発明の「フリップチップ型半導体裏面用フィルムが,樹脂組成物100重量部に対して0.01?10重量部の着色剤を含有する」のに対して,引用発明では,樹脂組成物に対して着色剤を含有しているが,含有率を,樹脂組成物100重量部に対して0.01?10重量部の着色剤とするとは記載されていない点。



第5 判断

上記相違点について検討する。
引用発明において,半導体裏面用フィルムが樹脂組成物に対して着色剤を含有するのは,レーザーマーキングにおける視認性を向上させるためなのであるから,当該着色剤の含有量をレーザーマーキングにおいて視認性が良好となる程度とすることは,当業者であれば当然行う設計事項である。

また,引用例2及び3に記載された事項からみて,鮮明なマーキングや印字を施すことでレーザーマーキングにおける視認性を向上させるために,着色剤を樹脂組成物に対して10重量部以下程度含有させることは,従来周知の事項であったといえる。
そして,引用発明において,引用例2及び3に記載されている上記従来周知の事項を適用して,「樹脂組成物100重量部に対して0.01?10重量部の着色剤を含有する」ことは,当業者であれば容易に想到し得たことである。

本願発明によってもたらされる効果も,引用発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。

また,審判請求人は,審判請求書において,次の主張をしている。
「審査官殿は、引用文献1発明における着色料含有量の設計変更が容易であることを指摘しているのですから、『レーザーマーキング性を向上させるため』は『[硬化前]のレーザーマーキング性を向上させるため』であるべきです。引用文献1発明におけるレーザーマーキング性は「硬化前」のものだからです(段落0173?0176など)。
しかしながら、引用文献2・3におけるレーザーマーキングは、硬化後におこなうものです(引用文献2第4頁・引用文献3の段落0025)から、『硬化前』のレーザーマーキング性の向上を引用文献2・3からは把握できません。
したがって、引用文献2・3をもって、『硬化前のレーザーマーキング性を向上させるために、樹脂組成物100重量部に対して0.01?10重量部の着色剤を含有させること』という事項が周知技術であるということはできません。」
しかしながら,引用発明において着色剤を用いる際には,着色剤の量について,着色するように0よりは多く,そして,本来の樹脂の性能を損なったり,着色剤が無駄にならないように,必要以上に多すぎない量とすることは当業者であれは当然に考慮すべき事項にすぎないと考えられる。そして,審判請求書の主張からは,硬化前と硬化後とでは,着色剤の種類や量に特別に考慮すべき事情があるものとは認められないので,当該主張は採用できない。

したがって,本願発明は,引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。


第6 むすび

以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-11-02 
結審通知日 2017-11-14 
審決日 2017-11-27 
出願番号 特願2012-8148(P2012-8148)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西出 隆二  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 平岩 正一
近藤 裕之
発明の名称 フリップチップ型半導体装置の製造方法  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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