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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1336454 |
審判番号 | 不服2017-6035 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-04-26 |
確定日 | 2018-01-11 |
事件の表示 | 特願2012-252136号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 5日出願公開、特開2014-100166号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯・本願発明 本願は、平成24年11月16日の出願であって、平成28年7月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年9月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年1月23日付け(発送日:同年1月31日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成29年4月26日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 そして、この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年9月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(A?Gについては、発明特定事項を分説するため当審で付した。)。 「A 正面が開口された筐体と、 B 該筐体の前記開口を開閉する前扉と、備え、 C 前記前扉に開口部が形成された遊技機であって、 D 前記開口部を塞ぐようにして前記前扉に取付けられるパネルと、 E 該パネルの背面側から延設されていると共に先端側に係止突起部が設けられた第1係止部と、 F 前記開口部の縁部に設けられていると共に前記係止突起部が係止することで前記第1係止部が係止する第1被係止部と、を備え、 G 前記係止突起部は、前記開口部と前記パネルとの上部隙間に挿入される異物によって押される方向である下方に向かって突起している、 ことを特徴とする遊技機。」 2 刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-275372号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (ア)「【0028】本実施の形態における分離型スロットマシンSは、図1に示すように、大きく分けて、正面側に開口部11を有する本体キャビネット1、本体キャビネット1内部に着脱自在に設けられる交換ユニット2、本体キャビネット1の開口部11を開閉可能に塞ぐ前扉3とから構成されており、さらにこの前扉3は、本体キャビネット1の開口上部13を開閉可能に塞ぐ上扉30、本体キャビネット1の開口下部14を開閉可能に塞ぐ下扉40とから構成されている。」 (イ)「【0040】ところで、図3に示すように、下扉40の操作部41とメダル受け皿43との間には、正面側に向かって開口する下扉開口部120が形成されており、前記パネルユニット50を取り付けることにより、この下扉開口部120が塞がれるようになっているものである。前記下扉開口部120の下枠121及び縦枠122の上方には、パネルユニット50を取り付けるための扉側係合部46(46a,46b)が設けられている。この扉側係合部46は、後述するパネルユニット50のパネルユニット係合部54(54a,54b)と係合可能な形状に形成されているものである。具体的には、扉側係合部46aは、下扉開口部120の縦枠122の上方に設けられた孔であり、扉側係合部46bは、下扉開口部120の下枠121に設けられた切欠部である。さらに、扉側係合部46は、下扉40の裏面側から、パネルユニット係合部54の係合を解除可能に形成されている。 ・・・ 【0042】パネルユニット50は、図3及び図4に示すように、開口部51を有する正面部52と、正面部52の底辺から奥方向に段部を形成する底面部53と、正面部52の両側片から奥方向に設けられた側面部59によりフレーム部材が構成されている。前記正面部52には、開口部51が設けられている。開口部51は、表示パネル70の表示が視認可能な大きさに形成された穴である。そして、図4及び図6(A)に示すように、この開口部51の両側辺裏面側には、表示パネル70の左右の側端部を裏面側から係止可能な押さえ片56が、上下方向にわたり設けられている。すなわち、表示パネル70の左右の側端部が外部からの圧力によりパネルユニット50の内側に外れてしまうのを防止するようになっている。 【0043】さらに、正面部52の裏面上方であって、開口部51の左右側には、パネルユニット50を下扉40に取り付けるためのパネルユニット係合部54aが二つ設けられている。パネルユニット係合部54aは、図4に示すように、相対向するフック部を有する突出片であり、下扉40の縦枠122の上方に設けられた扉側係合部46aと係合可能に形成されている。」 (ウ)上記(イ)【0043】の「正面部52の裏面上方であって、開口部51の左右側には、パネルユニット50を下扉40に取り付けるためのパネルユニット係合部54aが二つ設けられている。パネルユニット係合部54aは、図4に示すように、相対向するフック部を有する突出片であ」ることという記載を参酌して、図4を見ると、「相対向するフック部を有する突出片であ」る「パネルユニット係合部54a」は、「正面部52の裏面」から突出して設けられており、「相対向するフック部」は、「パネルユニット係合部54a」の先端側に設けられ、「パネルユニット50」の内方に向かって突起していると認められる。 上記(ア)、(イ)の記載事項および(ウ)の認定事項から、以下の事項が導かれる。 (a)上記(ア)【0028】には、「正面側に開口部11を有する本体キャビネット1」と記載されている。 (b)上記(ア)【0028】には、「本体キャビネット1の開口部11を開閉可能に塞ぐ前扉3」と記載されている。 (c)上記(ア)【0028】には、「この前扉3は、・・・上扉30、・・・下扉40とから構成されている」こと、および、上記(イ)【0040】には、「下扉40・・・には、正面側に向かって開口する下扉開口部120が形成されて」いることが、それぞれ、記載されている。 また、上記(ア)【0028】には、「分離型スロットマシンS」と記載されている。 よって、刊行物には、上扉30と下扉40とから構成されている前扉3の下扉40には、下扉開口部120が形成されている分離型スロットマシンSが記載されているといえる。 (d)上記(イ)【0040】には、「下扉40・・・には、正面側に向かって開口する下扉開口部120が形成されており、前記パネルユニット50を取り付けることにより、この下扉開口部120が塞がれるようになっている」と記載されている。 よって、刊行物には、下扉40の下扉開口部120に取り付けることにより、この下扉開口部120が塞がれるようになっているパネルユニット50が記載されているといえる。 (e)上記(イ)【0042】には、「パネルユニット50は、・・・正面部52と、・・・底面部53と、・・・側面部59によりフレーム部材が構成されている」ことが、同【0043】には、「正面部52の裏面・・・には、パネルユニット50を下扉40に取り付けるためのパネルユニット係合部54aが・・・設けられている。パネルユニット係合部54aは、・・・フック部を有する突出片であ」ることが、それぞれ、記載されている。 そして、上記(ウ)より、「パネルユニット係合部54a」は、「正面部52の裏面」から突出して設けられており、「フック部」は「パネルユニット係合部54a」の先端側に設けられている。 よって、刊行物には、パネルユニット50の正面部52の裏面から突出して設けられ、先端側にフック部を有する突出片であるパネルユニット係合部54aが記載されているといえる。 (f)上記(イ)【0040】には、「前記下扉開口部120の・・・縦枠122・・・には、・・・扉側係合部46(46a・・・)が設けられている。この扉側係合部46は、・・・パネルユニット係合部54(54a・・・)と係合可能な形状に形成されているものである」と、同【0043】には、「パネルユニット係合部54aは、・・・フック部を有する突出片であり、下扉40の縦枠122の上方に設けられた扉側係合部46aと係合可能に形成されている」と、それぞれ、記載されている。 よって、刊行物には、下扉開口部120の縦枠122に設けられ、フック部を有する突出片であるパネルユニット係合部54aが係合可能な形状に形成されている扉側係合部46aが記載されているといえる。 (g)上記(イ)【0042】には、「パネルユニット50は、・・・開口部51を有する正面部52と、・・・底面部53と、・・・側面部59によりフレーム部材が構成されている」ことが、同【0043】には、「正面部52の裏面・・・であって、開口部51の左右側には、パネルユニット50を下扉40に取り付けるためのパネルユニット係合部54aが二つ設けられている。パネルユニット係合部54aは、・・・相対向するフック部を有する突出片であ」ることが、それぞれ、記載されている。 そして、上記(ウ)より、「相対向するフック部」は、「パネルユニット50」の内方に向かって突起している。 また、上記(ア)【0028】には、「分離型スロットマシンS」と記載されている。 よって、刊行物には、パネルユニット50の内方に向かって突起している相対向するフック部を有する突出片は、正面部52の裏面の左右側に相対向して設けられている、分離型スロットマシンSが記載されているといえる。 以上(ア)、(イ)の記載事項、(ウ)の認定事項、及び上記(a)?(g)の認定事項を総合すれば、刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(a?gは発明の構成を分説するため当審で付した。)。 「a 正面側に開口部11を有する本体キャビネット1と、 b 本体キャビネット1の開口部11を開閉可能に塞ぐ前扉3と、備え、 c 上扉30と下扉40とから構成されている前扉3の下扉40には、下扉開口部120が形成されている分離型スロットマシンSであって、 d 下扉40の下扉開口部120に取り付けることにより、この下扉開口部120が塞がれるようになっているパネルユニット50と、 e パネルユニット50の正面部52の裏面から突出して設けられ、先端側にフック部を有する突出片であるパネルユニット係合部54aと、 f 下扉開口部120の縦枠122に設けられ、フック部を有する突出片であるパネルユニット係合部54aが係合可能な形状に形成されている扉側係合部46aと、を備え、 g パネルユニット50の内方に向かって突起している相対向するフック部を有する突出片は、正面部52の裏面の左右側に相対向して設けられている、 分離型スロットマシンS。」 3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。なお、見出しは(a)?(g)とし、本願発明、引用発明の分説に対応させている。 (a)引用発明の「正面側に開口部11を有する本体キャビネット1」は、本願発明の「正面が開口された筐体」に相当する。 (b)引用発明の「本体キャビネット1の開口部11を開閉可能に塞ぐ前扉3」は、本願発明の「該筐体の前記開口を開閉する前扉」に相当する。 (c)引用発明の「前扉3」は、「上扉30と下扉40とから構成されて」おり、「下扉開口部120」は「下扉40」に形成されているので、「前扉3」に「下扉開口部120」が形成されているといえる。 また、引用発明の「分離型スロットマシンS」は、本願発明の「遊技機」に相当する。 よって、引用発明の「上扉30と下扉40とから構成されている前扉3の下扉40には、下扉開口部120が形成されている分離型スロットマシンS」は、本願発明の「前記前扉に開口部が形成された遊技機」に相当する。 (d)引用発明の「下扉開口部120が塞がれるようになっている」こと、「下扉40の下扉開口部120に取り付ける」ことは、それぞれ、本願発明の「前記開口部を塞ぐように」すること、「前記前扉に取り付け」ることに相当する。 したがって、引用発明の「パネルユニット50」は、本願発明の「パネル」に相当する。 よって、引用発明の「下扉40の下扉開口部120に取り付けることにより、この下扉開口部120が塞がれるようになっているパネルユニット50」は、本願発明の「前記開口部を塞ぐようにして前記前扉に取付けられるパネル」に相当する。 (e)引用発明の「パネルユニット50の正面部52の裏面から突出して設けられ」ること、「フック部」は、それぞれ、本願発明の「該パネルの背面側から延設されている」こと、「係止突起部」に相当する。 そうすると、引用発明の「突出片」および「パネルユニット係合部54a」は、いずれも本願発明の「第1係止部」に相当する。 よって、引用発明の「パネルユニット50の正面部52の裏面から突出して設けられ、先端側にフック部を有する突出片であるパネルユニット係合部54a」は、本願発明の「該パネルの背面側から延設されていると共に先端側に係止突起部が設けられた第1係止部」に相当する。 (f)引用発明の「下扉開口部120の縦枠122」は、本願発明の「前記開口部の縁部」に相当する。 また、上記(e)より、引用発明の「フック部」は、本願発明の「係止突起部」に、引用発明の「突出片」および「パネルユニット係合部54a」は、いずれも本願発明の「第1係止部」に、それぞれ、相当する。 引用発明の「フック部を有する突出片であるパネルユニット係合部54a」において、実際に係合に寄与する部位は「フック部」であることは明らかであるから、引用発明の「フック部を有する突出片であるパネルユニット係合部54aが係合可能な形状に形成されている扉側係合部46a」は、本願発明の「前記係止突起部が係止することで前記第1係止部が係止する第1被係止部」に相当する。 よって、引用発明の「下扉開口部120の縦枠122に設けられ、フック部を有する突出片であるパネルユニット係合部54aが係合可能な形状に形成されている扉側係合部46a」は、本願発明の「前記開口部の縁部に設けられていると共に前記係止突起部が係止することで前記第1係止部が係止する第1被係止部」に相当する。 (g)上記(c)より、引用発明の「分離型スロットマシンS」は、本願発明の「遊技機」に相当する。 上記(a)?(g)の対比により、本願発明と引用発明とは、 「A 正面が開口された筐体と、 B 該筐体の前記開口を開閉する前扉と、備え、 C 前記前扉に開口部が形成された遊技機であって、 D 前記開口部を塞ぐようにして前記前扉に取付けられるパネルと、 E 該パネルの背面側から延設されていると共に先端側に係止突起部が設けられた第1係止部と、 F 前記開口部の縁部に設けられていると共に前記係止突起部が係止することで前記第1係止部が係止する第1被係止部と、を備える、 G’ 遊技機。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本願発明では、係止突起部は、開口部とパネルとの上部隙間に挿入される異物によって押される方向である下方に向かって突起しているのに対し、引用発明では、そのような構成が特定されていない点。 4 判断 上記相違点について検討する。 引用発明において、「パネルユニット50の内方に向かって突起している相対向するフック部を有する突出片は、正面部52の裏面の左右側に相対向して設けられている」から、パネルユニット50を下扉開口部120に取り付けた際に、パネルユニット50の左右の端部に生じる下扉開口部120との隙間に異物が挿入されると、異物は突出片に当接するので、突出片は内方に押されることとなる。 そして、「相対向するフック部」は、「パネルユニット50の内方に向かって突起して」いることから、フック部は、隙間に挿入される異物によって押される方向に向かって突起しているといえる。 また、遊技機の技術分野において、パネルユニット50を下扉開口部120に取り付ける際に、係合箇所を、開口部の上下左右いずれにするかは、遊技機前面の意匠等を考慮し、当業者が適宜設計し得る事項にすぎない(係合箇所を開口部の上部に設けた例として、必要があれば、特開2007-117197号公報(【0039】、図5等。)、特開2009-160290号公報(【0037】?【0039】、図3、図7等。)、特開2012-66100号公報(【0135】?【0137】、図7、図8(b)。)等参照されたい。)。 そうすると、引用発明において、内方に向かって突起するフック部をパネルユニット50の上側に設けることは、当業者が容易になし得たことである。そして、引用発明におけるフック部は内方に向かって突起するものであるから、上記のようにフック部をパネルユニット50の上側に設けた際には、フック部は内方、すなわち、下方に突起するものであり、開口部とパネルとの上部隙間に挿入される異物によって押される方向である下方に向かって突起しているという、当該相違点に係る本願発明の構成となることは明らかである。 5 審判請求人の主張について 審判請求書において、請求人は、引用文献1記載の発明は、「本願発明のように、「ゴト行為の防止」については全く触れられていない。」と主張している(5頁17?19行)。 この主張について検討すると、遊技機の分野において、「ゴト行為の防止」を考慮することは、常に内在する自明の課題であり、また、異物の侵入を許した上で、ゴト行為の防止を図ることも、既に解決済みの課題である(必要があれば、特開2007-117197号公報の【0017】、【0007】?【0011】等を参照されたい。)。 したがって、引用発明において、「ゴト行為の防止」については全く触れられていないからといって、本願発明と課題が異なるとはいえない。 そして、本願発明による効果は、引用発明から予測し得る範囲のものであり格別なものとはいえない。 よって、請求人の主張は採用できない。 6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-11-13 |
結審通知日 | 2017-11-14 |
審決日 | 2017-11-28 |
出願番号 | 特願2012-252136(P2012-252136) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 池谷 香次郎 |
特許庁審判長 |
瀬津 太朗 |
特許庁審判官 |
蔵野 いづみ 萩田 裕介 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 特許業務法人太陽国際特許事務所 |