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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1336457 |
審判番号 | 不服2017-7312 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-05-22 |
確定日 | 2018-01-11 |
事件の表示 | 特願2013- 37978「情報端末制御システム、情報端末制御システムの制御方法、情報処理装置および情報処理装置の制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 8日出願公開、特開2014-161673〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、本願は、平成25年2月27日の出願であって、平成29年1月30日付けで手続補正書が提出され、同年4月24日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年5月22日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。 第2 平成29年5月22日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、平成29年1月30日付けで提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を、下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1へと補正することを含むものである。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「所定範囲内に存在する他の情報処理装置との間でデータ通信可能に設けられた複数の情報処理装置と、 各前記情報処理装置とデータ通信可能に設けられたサーバとを備え、 各前記情報処理装置は、 装置を識別する識別情報と変更可能なパラメータ情報とを有するキャラクタ情報を他の情報処理装置との間で送受信するキャラクタ情報送受信手段と、 装置間で受信したキャラクタ情報のパラメータ情報を変更するパラメータ変更手段と、 変更されたキャラクタ情報を前記サーバに送信するサーバ送信手段と、 自装置の識別情報に対応するキャラクタ情報を前記サーバから受信するサーバ受信手段と、 前記サーバから受信したキャラクタ情報のパラメータ情報に基づく表示処理を実行する表示制御手段とを含み、 前記パラメータ情報は、情報処理装置間で送受信された回数を含み、 前記パラメータ変更手段は、前記キャラクタ情報の送受信に従って前記送受信された回数を変更し、 前記表示制御手段は、キャラクタオブジェクトとともに前記受信したキャラクタ情報に含まれる前記送受信された回数に基づく態様の表示処理を実行する、情報端末制御システム。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「所定範囲内に存在する他の情報処理装置との間でデータ通信可能に設けられた複数の情報処理装置と、 各前記情報処理装置とデータ通信可能に設けられたサーバとを備え、 各前記情報処理装置は、 装置を識別する識別情報と変更可能なパラメータ情報とを有するキャラクタ情報を他の情報処理装置との間で送受信するキャラクタ情報送受信手段と、 装置間で受信したキャラクタ情報のパラメータ情報を変更するパラメータ変更手段と、 変更されたキャラクタ情報を前記サーバに送信するサーバ送信手段と、 自装置の識別情報に対応するキャラクタ情報を前記サーバから受信するサーバ受信手段と、 前記サーバから受信したキャラクタ情報のパラメータ情報に基づく表示処理を実行する表示制御手段とを含み、 前記パラメータ情報は、情報処理装置間で送受信された回数を含み、 前記パラメータ変更手段は、前記キャラクタ情報の送受信に従って前記送受信された回数を変更し、 前記表示制御手段は、キャラクタオブジェクトとともに前記受信したキャラクタ情報に含まれる前記送受信された回数を含むメッセージの表示処理を実行する、情報端末制御システム。」(下線は審決で付した。以下同じ。) 2 補正目的について 本件補正により、本件補正前の請求項1の「送受信された回数に基づく態様」を、「送受信された回数を含むメッセージ」と補正する事項(以下「補正事項」という。)が追加されたものである。 上記補正事項は、本件補正前の請求項1の「情報端末制御システム」における「送受信された回数に基づく態様」を、「送受信された回数を含むメッセージ」と具体的に特定したものであるから、上記補正事項は、特許法第17条の2第5項第2号に係る「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 また、上記補正事項は、特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 3 独立特許要件について そこで,本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、平成29年5月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「1 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1」に記載したとおりのものと認める。 (2)引用刊行物 本願の出願前の平成15年9月2日に頒布された特開2003-245473号公報(以下「刊行物」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】所定の通信手段を有する情報端末装置間を、前記通信手段を介して自律的に移動するとともに、滞在中の情報端末装置に所与の処理を実行させるモバイル・エージェント情報であって、 移動発源の情報端末装置の宛先情報と、所与の達成条件を表す達成条件情報と、キャラクタの育成パラメータを表す育成情報とを含むとともに、 滞在中の情報端末装置に対して、 前記育成情報に記述された育成パラメータに基づく前記キャラクタの育成遊戯を表示・実行して、前記育成情報を更新する育成手段と、 当該滞在中の情報端末装置内に記憶されているデータに基づいて、前記達成条件が満たされるか否かを判定する達成判定手段と、 を機能させるための情報を含むモバイル・エージェント情報。 … 【請求項6】請求項1?4の何れかにおいて、 前記通信手段は、アドホック・ネットワークを形成して前記移動を実現するための近距離無線手段と、インターネットに接続可能なネット接続手段とを有し、 滞在中の情報端末装置に対して、 前記達成判定手段により達成条件を満たすと判定された場合に、前記宛先情報に基づいて、前記ネット接続手段を介して移動発源の情報端末装置に報知情報を送信する送信手段を機能させるための情報を含むことを特徴とするモバイル・エージェント情報。 … 【請求項8】請求項6または7において、 滞在中の情報端末装置に対して、 当該滞在中の情報端末装置の特定情報を、前記ネット接続手段を介して所定のサーバに送信する手段を機能させるための情報を含むことを特徴とするモバイル・エージェント情報。 … 【請求項11】請求項1?10の何れかにおいて、 滞在中の情報端末装置に対して、 前記宛先情報に基づいて、当該滞在中の情報端末装置が移動発源の情報端末装置か否かを判定することにより、帰還したか否かを判定する帰還終了判定手段と、 前記帰還終了判定手段により帰還したと判定された場合に所与の演出をする演出手段と、 を機能させるための情報を含むことを特徴とするモバイル・エージェント情報。」 (イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、所定の通信回線に接続可能な情報端末装置において、育成ゲーム的要素を備えたモバイル・エージェント情報等に関する。」 (ウ)「【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の育成ゲームでは、所定のアプリケーション・プログラムを実行することによって表示される画像をペットに観たてているのであって、その活動範囲はプログラムを実行する装置に限られていた。その為、例えば、イヌがご主人様(ユーザ)の言うことを聞いて何かを拾ってくると言った、所定の場所(情報端末装置)から移動して何らかの動作を実現することができず、いくら世話の種類を増加させ、電子ペットの動作を豊富にしても、電子ペットとしての行動に限界が生じ、マンネリ化する問題があった。 【0007】本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、情報端末装置間を自律的に移動する電子ペットを実現することである。 … 【0009】モバイル・エージェント(mobile agent)とは、通信回線を利用した分散システムのための公知技術の一つであって、有線/無線通信によってデータの送受信が可能な情報端末装置(以下、ノードと言う)を自律的に移動し、移動先のノードの記憶部に記憶され(モバイル・エージェント側から見ると滞在して)、該ノードに所与の機能を実行させる能力を持つプログラムである。プログラム自体を移動し、移動先のノード内で、移動元のノードとの通信無しに処理を実行することができる。」 (エ)「【0067】パソコン2、携帯電話機3A?3C、PDA4は、インターネット接続技術、データ通信技術、電子メール技術などによって、それぞれ通信回線8に接続し、サーバ6とデータの送受信が可能である。また、それぞれ近距離無線により互いにアドホック・ネットワークNa?Ndを形成するためのハードウェアとソフトウェアを備えている。」 (オ)【0095】記憶部70は、情報端末装置の制御に必要な種々のプログラムやデータが格納されており、その機能は、例えば、CD-ROM、MO、FD(R)、DVD、ICメモリ、ハードディスク等のハードウェアによって実現される。本実施形態では特に、エージェント情報71と、プラットフォーム情報72と、電子メールプログラム76と、インターネット接続プログラム77と、Bluetooth(R)情報78と、を含む。 【0096】エージェント情報71は、育成対象となる電子ペットの本体であって、滞在するノードに育成ゲームを実行させる為に必要なプログラムやデータ、電子ペットを表示するために必要な画像データや音データなどを格納する。従って、情報端末装置には、モバイル・エージェント(電子ペット)の数だけ存在する。エージェント情報71は、特に、エージェント・プログラム710と、状態情報712と、キャラクタ情報714と、お出かけ行動表716と、エージェント所持情報718と、を含み、ノード間を移動の際にはこれらを1セットとして移動する。 【0097】エージェント・プログラム710は、移動先の情報端末装置で実行させる処理のプログラムのコードであって、例えばJava(R)上ではバイトコードに該当する。エージェント・プログラム710は、ランチャー部222によって生成され、実行制御部226によって実行状態にされて、前述のエージェント実行部220として機能する。そして、所与のキャラクタ画像が表示され電子ペットが活動をはじめ、ユーザは該電子ペットに育成遊戯をすることができる。 【0098】状態情報712は、例えば、インスタンス変数などのヒープ領域内の情報や、ローカル変数などのスタック領域の情報、及びプログラムカウンタなどである。状態情報712を含むことによって、モバイル・エージェントは、移動前の状態から処理を継続可能となる。状態情報712は、ゲームの設定によっては無くても構わないが、その場合は、移動後はエージェント・プログラム710の最初から実行されるので、プログラムの記述に注意が必要である。 【0099】キャラクタ情報714は、電子ペットを表示するために必要な画像データや音データなどを格納する。 【0100】お出かけ行動表716は、モバイル・エージェントが、移動先のノードでの行動と行動の達成条件を設定する情報が格納されており、ユーザによって移動前に定義される。 【0101】図4は、お出かけ行動表の構成の一例を説明する図である。同図に示すように、お出かけ行動表716は、アクション定義ファイル716-1と、条件定義ファイル716-2と、到着日時716-3と、場所情報716-4と、アクション履歴716-5を含む。 【0102】アクション定義ファイル716-1は、移動先におけるモバイル・エージェントの行動を記述するデータであって、例えば、「メールを運ぶ」「友達を見つける」「目的地に行く」など行動の内容ごとに用意されたスクリプトなどであって、後述するプラットフォーム情報72のアクション情報729に格納されたものから選択・複製される。 【0103】条件定義ファイル716-2は、アクション定義ファイル716-1の内容に応じた条件の詳細を記憶する。例えば、「メールを運ぶ」アクションの場合、宛先のアドレスや、メールのファイル名、添付ファイル名、移動先のノードにおける滞在時間などの情報がこれに該当する。 【0104】到着日時716-3は、移動先の情報端末装置に移動完了した日時であって、次の移動をはじめる際の基準時間とされる。例えば、モバイル・エージェントが移動先にいつまでも居ては育成ゲームが成り立たないので、所定の時間が過ぎたら自動的に次の端末に移動するなどの処置が取られる。或いは、ユーザの情報端末装置を出発した日時を記憶し、現在の時間と比較して所定の時間が経過した場合はユーザの元に戻ることで、期限による移動を設定することができる。 【0105】場所情報716-4は、移動先のノード(情報端末装置)を特定するための情報であって、例えば、装置のシリアルナンバーや電子メールのアドレス情報である。移動の都度サーバ6に送信するバックアップ情報に含めることによって、移動の履歴などに活用する。 【0106】アクション履歴716-5は、モバイル・エージェントが移動先での行動の履歴を記憶する。例えば、移動回数、移動先からサーバ6にバックアップ情報の送信をしたかどうかのフラグ、達成条件を満たしたかのフラグ(帰巣フラグ)、などであってアクションに応じて適宜設定して良い。」 (カ)「【0168】図24は、お出かけ行動表の設定画面の一例を示す図である。図24(a)に示すように、アクションの選択をすると、ゲーム演算部221は、例えば(b)や(c)のように選択に応じて必要な情報を更に入力する画面を表示させる。 【0169】図24(b)はアクションとして「友達を見つける」を選択した場合の一例であって、例えば、友達の条件となるキーワードと、お出かけの期間、及び移動先のノードでの滞在期間とを、ユーザに選択させる。モバイル・エージェントは、移動先のノードのユーザ情報727にキーワードが含まれると、お友達と判断して、ユーザ情報727を複製して持ちかえる。ユーザは、相手のユーザ情報727を参照して、友達になりたければ、改めて電子メールを送ったり電子ペットを遊びに行かせることで、新しい関係を作るきっかけとすることができる。 【0170】図24(c)はアクションとして「目的地に行く」を選択した場合の一例であって、例えば、目的地の地名や、緯度・経度、住所などの条件と、お出かけの期間と、移動先のノードでの滞在期間と、手土産として持たせるモノ(添付ファイル)の情報を選択させる。」 (キ)「【0225】図30は、帰巣時のあいさつ画面の一例を示す図である。お出かけが成功した場合は、図30(a)に続き(b)又は(d)に示すように、ユーザに対して帰巣の報告をする電子ペットの画像が表示される。(b)は「目的地に行く」アクションの場合の一例に相当し、(d)は「メッセージを探す」アクションの場合の一例である。電子ペットの画像は、例えば、長旅で汚れた様子、疲れた様子などのバリエーションの中から、お出かけ期間の長さや目的地に応じて適宜選択するとしても良い。一方、お出かけが失敗した場合は図30(a)に続き(c)が表示される。」 (ク)上記(イ)及び(ウ)より、モバイル・エージェント情報は、所定の通信手段を有する情報端末間を、通信手段を介して自律的に移動し、滞在中の情報端末装置の特定情報を、ネット接続手段を介して所定のサーバに送信する手段を機能させるための情報を含むものであるから、情報端末装置を機能させるモバイル・エージェント情報が送受信される情報端末装置システムが記載されているといえる。 そうすると、上記(ア)乃至(ク)の記載事項から、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「所定の通信手段を有する情報端末装置間を、前記通信手段を介して自律的に移動するとともに、滞在中の情報端末装置に所与の処理を実行させる情報端末装置を機能させるモバイル・エージェント情報が送受信される情報端末装置システムであって、 移動発源の情報端末装置の宛先情報と、所与の達成条件を表す達成条件情報と、キャラクタの育成パラメータを表す育成情報とを含むとともに、 滞在中の情報端末装置に対して、 前記育成情報に記述された育成パラメータに基づく前記キャラクタの育成遊戯を表示・実行して、前記育成情報を更新する育成手段と、 当該滞在中の情報端末装置内に記憶されているデータに基づいて、前記達成条件が満たされるか否かを判定する達成判定手段と、 を機能させるための情報を含み、 前記通信手段は、アドホック・ネットワークを形成して前記移動を実現するための近距離無線手段と、インターネットに接続可能なネット接続手段とを有し、 滞在中の情報端末装置に対して、 前記達成判定手段により達成条件を満たすと判定された場合に、前記宛先情報に基づいて、前記ネット接続手段を介して移動発源の情報端末装置に報知情報を送信する送信手段を機能させるための情報を含み、 滞在中の情報端末装置に対して、 当該滞在中の情報端末装置の特定情報を、前記ネット接続手段を介して所定のサーバに送信する手段を機能させるための情報を含み、 滞在中の情報端末装置に対して、 前記宛先情報に基づいて、当該滞在中の情報端末装置が移動発源の情報端末装置か否かを判定することにより、帰還したか否かを判定する帰還終了判定手段と、 前記帰還終了判定手段により帰還したと判定された場合に所与の演出をする演出手段と、 を機能させるための情報を含み、 エージェント情報は、特に、エージェント・プログラムと、状態情報と、キャラクタ情報と、お出かけ行動表と、エージェント所持情報と、を含み、ノード間を移動の際にはこれらを1セットとして移動し、 お出かけ行動表は、アクション定義ファイルと、条件定義ファイルと、到着日時と、場所情報と、アクション履歴を含み、 場所情報は、移動先のノード(情報端末装置)を特定するための情報であって、移動の都度サーバに送信するバックアップ情報に含まれ、 アクション履歴は、モバイル・エージェントが移動先での行動の履歴を記憶し、移動回数、移動先からサーバにバックアップ情報の送信をしたかどうかのフラグを含み、 お出かけ行動表の設定において、お出かけの期間をユーザに選択させ、 帰巣時のあいさつ画面では、長旅で汚れた様子、疲れた様子などのバリエーションの中から、お出かけ期間の長さや目的地に応じて適宜選択する、 情報端末装置を機能させるモバイル・エージェント情報が送受信される情報端末装置システム。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、 ア 後者の「情報端末装置を機能させるモバイル・エージェント情報が送受信される情報端末装置システム」は、前者の「情報端末制御システム」に相当する。 イ 後者の「情報端末装置」は、端末間を、アドホック・ネットワークを形成する近距離無線手段で接続されるものであるから、「所定範囲内に存在する他の情報処理装置との間でデータ通信可能に設けられた複数の情報処理装置」といえる。 ウ 後者の「サーバ」は、滞在中の情報端末装置の特定情報が、ネット接続手段を介して送信されるものであるから、「各情報処理装置とデータ通信可能に設けられたサーバ」といえる。 エ 後者の「場所情報」は、移動先のノード(情報端末装置)を特定するための情報であるから、前者の「装置を識別する識別情報」に相当する。 オ 後者の「アクション履歴」は、モバイル・エージェントが移動先での行動の履歴を記憶し、移動回数、移動先からサーバにバックアップ情報の送信をしたかどうかのフラグを含むものであるから、「変更可能なパラメータ情報」といえる。 カ 後者の「お出かけ行動表」は、場所情報と、アクション履歴を含むものであるから、「識別情報とパラメータ情報とを有するキャラクタ情報」といえる。 キ 後者の「アクション履歴」は、モバイル・エージェントが移動すると、変更されるものであるから、後者の「情報端末装置を機能させるモバイル・エージェント情報が送受信される情報端末装置システム」が、「アクション履歴」を変更する手段、すなわち、「装置間で受信したキャラクタ情報のパラメータ情報を変更するパラメータ変更手段」を備えていることは明らかである。 ク 後者の「お出かけ行動表」は、モバイル・エージェントがノード間を移動の際に、セットとして移動するものであるから、後者が、「キャラクタ情報を他の情報処理装置との間で送受信するキャラクタ情報送受信手段」を備えていることは明らかである。 ケ 後者の「お出かけ行動表」に含まれる、「場所情報」は、移動の都度サーバに送信されるものであって、「お出かけ行動表」もサーバに送信されるといえるから、後者は、「変更されたキャラクタ情報をサーバに送信するサーバ送信手段」を備えるといえる。 コ 後者の「帰巣時のあいさつ画面」は、長旅で汚れた様子、疲れた様子などのバリエーションの中から、お出かけ行動表に設定されるお出かけの期間の長さや目的地に応じて適宜選択するものであるから、「キャラクタ情報のパラメータ情報に基づく表示」といえる。そして、後者の「演出手段」は、帰還終了判定手段により帰還したと判定された場合に所与の演出をするものであるから、後者の「演出手段」は、「キャラクタ情報のパラメータ情報に基づく表示処理を実行する表示制御手段」といえ、「キャラクタオブジェクトとともに受信したキャラクタ情報の表示処理を実行する」といえる。 サ 後者の「アクション履歴」には、「移動回数」が含まれるから、「パラメータ情報は、情報処理装置間で送受信された回数を含み」といえる。そして、上記キのように、後者が「パラメータ変更手段」を備えていることは明らかであるから、「キャラクタ情報の送受信に従って送受信された回数を変更」するといえる。 したがって、両者は、 「所定範囲内に存在する他の情報処理装置との間でデータ通信可能に設けられた複数の情報処理装置と、 各前記情報処理装置とデータ通信可能に設けられたサーバとを備え、 各前記情報処理装置は、 装置を識別する識別情報と変更可能なパラメータ情報とを有するキャラクタ情報を他の情報処理装置との間で送受信するキャラクタ情報送受信手段と、 装置間で受信したキャラクタ情報のパラメータ情報を変更するパラメータ変更手段と、 変更されたキャラクタ情報を前記サーバに送信するサーバ送信手段と、 前記キャラクタ情報のパラメータ情報に基づく表示処理を実行する表示制御手段とを含み、 前記パラメータ情報は、情報処理装置間で送受信された回数を含み、 前記パラメータ変更手段は、前記キャラクタ情報の送受信に従って前記送受信された回数を変更し、 前記表示制御手段は、キャラクタオブジェクトとともに前記受信したキャラクタ情報の表示処理を実行する、情報端末制御システム。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本願補正発明は、「自装置の識別情報に対応するキャラクタ情報をサーバから受信するサーバ受信手段」と、「サーバから受信した」キャラクタ情報のパラメータ情報に基づく表示処理を実行する表示制御手段とを含むのに対し、引用発明は、お出かけ行動表が、キャラクタがノード間を移動の際にはセットとして移動するものである点。 [相違点2] 本願補正発明は、キャラクタ情報に含まれる送受信された「回数を含むメッセージ」の表示処理を実行するものであるのに対し、引用発明では、その点が明らかでない点。 (4)判断 上記相違点1及び相違点2について以下検討する。 ア [相違点1]について 上記相違点1に係る本願発明の発明事項である「自装置の識別情報に対応するキャラクタ情報をサーバから受信するサーバ受信手段」、及び「サーバから受信した」キャラクタ情報のパラメータ情報に基づく表示処理を実行する表示制御手段について、本願明細書をみても、キャラクタ情報をサーバから受信することについて、設計的事項の域を超えるほどの格別な技術的意義は認められないから、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 イ [相違点2]について 一般に、情報端末装置に、あいさつにどのようなメッセージを表示させるかは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 引用発明のお出かけ行動表の中には、アクション履歴が含まれ、アクション履歴に移動回数が含まれることから、移動回数は、お出かけ行動表に含まれるものであって、キャラクタ情報であるお出かけ行動表に設定されるものである。 帰巣時のあいさつは、お出かけ期間の長さや目的地、つまり、本願補正発明の「キャラクタ情報」に対応するお出かけ行動表に含まれる情報に応じて設定されるものであるから、長旅で疲れた様子等のメッセージにかえて、キャラクタ情報に含まれる移動回数を含むメッセージとすることは当業者が容易になし得るものである。 そして、本願補正発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明から、当業者が予測しうる範囲内のものである。 よって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることが出来ない。 (5)むすび 以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成29年1月30日付けの特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 「所定範囲内に存在する他の情報処理装置との間でデータ通信可能に設けられた複数の情報処理装置と、 各前記情報処理装置とデータ通信可能に設けられたサーバとを備え、 各前記情報処理装置は、 装置を識別する識別情報と変更可能なパラメータ情報とを有するキャラクタ情報を他の情報処理装置との間で送受信するキャラクタ情報送受信手段と、 装置間で受信したキャラクタ情報のパラメータ情報を変更するパラメータ変更手段と、 変更されたキャラクタ情報を前記サーバに送信するサーバ送信手段と、 自装置の識別情報に対応するキャラクタ情報を前記サーバから受信するサーバ受信手段と、 前記サーバから受信したキャラクタ情報のパラメータ情報に基づく表示処理を実行する表示制御手段とを含み、 前記パラメータ情報は、情報処理装置間で送受信された回数を含み、 前記パラメータ変更手段は、前記キャラクタ情報の送受信に従って前記送受信された回数を変更し、 前記表示制御手段は、キャラクタオブジェクトとともに前記受信したキャラクタ情報に含まれる前記送受信された回数に基づく態様の表示処理を実行する、情報端末制御システム。」(以下「本願発明」という。) 2 引用刊行物 平成28年12月20日付けの拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は上記「第2 3 (2)引用刊行物」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、実質的に、上記「第2 3 (1)本願補正発明」で検討した本願補正発明の「送受信された回数を含むメッセージ」を「送受信された回数に基づく態様」とするものである。 そうすると、本願発明と引用発明1とを対比した場合の相違点は、実質的に、上記「第2 3 (3)対比」で挙げた相違点となる。 そして、上記「第2 3 (4)判断」における検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-11-13 |
結審通知日 | 2017-11-14 |
審決日 | 2017-11-27 |
出願番号 | 特願2013-37978(P2013-37978) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 古川 直樹 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 森次 顕 |
発明の名称 | 情報端末制御システム、情報端末制御システムの制御方法、情報処理装置および情報処理装置の制御プログラム |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |
代理人 | 石原 盛規 |