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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1336485
審判番号 不服2017-7554  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-25 
確定日 2018-02-05 
事件の表示 特願2012-206178「医薬品組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月 3日出願公開、特開2014- 58491、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月19日の出願であって、平成28年7月7日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年11月10日付けで手続補正がされ、平成29年2月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年5月25日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年2月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1?5に係る発明は、以下の引用文献1、3?6に記載された発明、及び周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2010-270019号公報
3.特開2011-168580号公報
4.特開2001-31565号公報
5.特開2009-242360号公報
6.特開2011-140486号公報
7.特表2011-512416号公報(周知技術を示す文献)
8.特表2005-538089号公報(周知技術を示す文献)
9.特表2008-520655号公報(周知技術を示す文献)
10.特開2010-163428号公報(周知技術を示す文献)
11.国際公開第2010/151439号(周知技術を示す文献)
12.特開2006-111705号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、平成28年11月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ロキソプロフェン又はその塩と、クロスポビドンとを少なくとも含有する医薬品組成物であって、
ただし、ロキソプロフェンナトリウム水和物、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム、ケイ酸カルシウム、結晶セルロース、ブチルスコポラミン臭化物、トラネキサム酸、アリルイソプロピルアセチル尿素、クロスポビドン、乳糖水和物及びステアリン酸マグネシウムからなる場合、
ロキソプロフェンナトリウム水和物、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸カルシウム、結晶セルロース、ブチルスコポラミン臭化物、無水リン酸水素カルシウム、クロスポビドン、乳糖水和物及びステアリン酸マグネシウムからなる場合、
ロキソプロフェンナトリウム水和物、マクロゴール6000、トウモロコシデンプン、ブチルスコポラミン臭化物、クロスポビドン及び乳糖水和物及びステアリン酸マグネシウムからなる場合、
ロキソプロフェンナトリウム水和物、マクロゴール6000、トウモロコシデンプン、ブチルスコポラミン臭化物、クロスポビドン、乳糖水和物及びタルクからなる場合、
ロキソプロフェンナトリウム水和物、マクロゴール6000、トウモロコシデンプン、ブチルスコポラミン臭化物、クロスポビドン、乳糖水和物、カルナウバロウ及びステアリン酸マグネシウムからなる場合、
並びに、
ロキソプロフェンナトリウム水和物、ヒプロメロース、クロスポビドン、乳糖水和物、結晶セルロース、ブチルスコポラミン臭化物及びステアリン酸マグネシウムからなる場合を除く、
剤型がカプセル剤である医薬品組成物。
【請求項2】
更に、油脂を含む請求項1に記載の医薬品組成物。
【請求項3】
油脂が、常温の条件下で液体である請求項2に記載の医薬品組成物。
【請求項4】
油脂が、20℃の条件下で液体である請求項2に記載の医薬品組成物。
【請求項5】
剤型が軟カプセル剤である請求項1?4のいずれかに記載の医薬品組成物。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】
服用時に口腔・咽喉頭部に不快感を生ずる非ステロイド性抗炎症薬及びソーマチンを含有することを特徴とする固形内服薬組成物。
・・・
【請求項3】
服用時に口腔・咽喉頭部に不快感を生ずる非ステロイド性抗炎症薬がナプロキセン、ロキソプロフェン及びこれらの塩類から選ばれる1種または2種以上である請求項1に記載の固形内服薬組成物。」(特許請求の範囲)

(2)「薬物の多くは苦味等の不快な味を有し、従来、糖類、アスパルテーム、スクラロース等の甘味剤や香料等のマスキング剤を配合して服用性を向上させる工夫がなされてきた。これら薬物の中でも、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の一部の薬物には、服用時、口腔・咽喉頭部等の粘膜と接触する際に不快感を生ずるものがあり、これは前記甘味剤、香料によっても十分低減できない場合がある。特に固形製剤において、水と共に摂取しない服用形態の場合は、前記薬物を含有する固形製剤が直接口腔・咽喉頭部の粘膜に接触する量が多いため、著しく服用性が悪くなることがある。これら課題に対し、例えば特開2001-10977では、当該成分に局所麻酔薬を含有させた経口用組成物が提案されている。また、特開2000-290199では2種以上の高甘味剤(甘味度150以上)等を配合する方法が提案されているが、必ずしも効果が十分であるとは言えない。」(段落0002)

(3)「本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ナプロキセン、ロキソプロフェン等の口腔・咽喉頭部に不快感を与える非ステロイド性抗炎症薬を含有し、水なしで服用した際に口腔・咽喉頭部への不快感が抑制された固形内服薬組成物を提供することを目的とする。」(段落0004)

(4)「本発明者は、ナプロキセン、ロキソプロフェン等の上記薬物と共にソーマチンを配合することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。」(段落0005)

(5)「上記構成とすることによって、水なしで服用した際にも口腔・咽喉頭部の不快感が低減されたナプロキセン、ロキソプロフェン等を含有する固形内服薬を得ることができる。したがって、本発明の固形内服薬組成物は、水なしで服用するための固形医薬製剤、例えば粒状剤、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、トローチ等として有用である。」(段落0007)

(6)「(7)内服固形製剤
本発明の固形内服薬組成物は、例えば散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤(チュアブル錠、口腔内崩壊錠など)、ドライシロップ剤、トローチ剤、チューインガム等の服用形態の製剤として用いることができる。前記製剤は、各製剤の常法により製造することができる。
また、本発明の固形内服薬組成物は、口腔・咽喉粘膜への不快感がないため、水なしで服用する粒状剤(散剤、細粒剤、顆粒剤)、チュアブル錠、口腔内崩壊錠とすると、有用である。」(段落0014)

(7)「(チュアブル錠)
<実施例1>
マンニトール3000g、乳糖600gにヒドロキシプロピルセルロース6%水溶液1500gを加えて造粒し、造粒粒子を得た。造粒にはスパイラルフロー(FLO-5型:フロイント産業(株)社製)を用いた。
ロキソプロフェンナトリウム水和物1135g、造粒粒子1000g、乳糖667g、クロスポビドン500g、ソーマチン(10%乳糖分散物)1.7g、ステアリン酸マグネシウム6.7gをV型混合機(V-5型:徳寿製作所)にて均一に混合した。前記混合物を、ロータリー式錠剤機(菊水製作所製)で打錠し、錠剤を得た。」(段落0017)

したがって、上記記載事項、特に、(7)の記載事項からみて、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「マンニトール3000g、乳糖600gにヒドロキシプロピルセルロース6%水溶液1500gを加えて造粒し、得られた造粒粒子1000g、ロキソプロフェンナトリウム水和物1135g、乳糖667g、クロスポビドン500g、ソーマチン(10%乳糖分散物)1.7g、ステアリン酸マグネシウム6.7gを含む混合物を打錠して得られたチュアブル錠。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「ロキソプロフェンナトリウム」は、本願発明1における「ロキソプロフェンの塩」に相当する。

イ 引用発明における「チュアブル錠」も、本願発明1の「カプセル剤」も、ともに医薬品組成物の一剤型である。

ウ 本願発明1がロキソプロフェンとクロスポビドン以外の成分を含有しないことは、請求項1に規定されていないから、引用発明が、「造粒粒子」「乳糖」「ソーマチン」「ステアリン酸マグネシウム」を含む点は、相違点ではない。


したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「ロキソプロフェンの塩と、クロスポビドンとを少なくとも含む医薬品組成物。」

(相違点)
医薬品組成物の剤型が、本願発明1においてはカプセル剤であるのに対し、引用発明においてはチュアブル錠である点。

(2)相違点についての判断
「第4 引用文献、引用発明等」の「1.引用文献1について (2)?(4)」に摘示したとおり、引用文献1には、ロキソプロフェン等の一部の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)には、服用時、口腔・咽喉頭部等の粘膜と接触する際に不快感を生ずるものがあり、特に固形製剤において、水と共に摂取しない服用形態の場合は、前記薬物を含有する固形製剤が直接口腔・咽喉頭部の粘膜に接触する量が多いため、著しく服用性が悪くなることがあるとの課題認識の下、非ステロイド系抗炎症薬と共にソーマチンを配合することによって、口腔・咽喉頭部への不快感が抑制された固形内服薬組成物を提供する、との課題が解決できることを見出し、本発明を完成した旨が記載されている。
これら引用文献1の記載によれば、引用発明は、ロキソプロフェンを含むチュアブル錠が服用された際にロキソプロフェンが口腔・咽喉頭部の粘膜に接触して生ずる不快感をソーマチンを配合することによって抑制したものと認められる。
一方、引用文献1の段落0007、0014には、固形内服薬組成物の服用形態として、粒状剤、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、トローチ剤等の剤型が挙げられているが、カプセル剤の記載はない。
よって、引用文献1には、引用発明におけるチュアブル錠をカプセル剤にすることを直接示唆する記載はないといえる。
ところで、カプセル剤は、カプセルによって医薬品の不快な味や刺激性を防ぐことができる製剤として本件出願時に当業者に広く知られる剤型であり(たとえば、第十三改正 日本薬局方解説書 1996 縮刷版 製剤総則 A-71?A-73 6.カプセル剤 廣川書店発行 特に、注3、解説を参照)、消化管内で崩壊させるものである。そうすると、カプセル剤にあっては、引用文献1の段落0007、0014に挙げられている、有効成分が口腔・咽喉頭部に接する剤型とは異なり、その組成物の有効成分が口腔・咽喉頭部粘膜に接することはないといえる。
そして、前記した引用発明の課題解決手段は、口腔・咽喉頭部粘膜にロキソプロフェンが接することを前提とするものであって、口腔・咽喉頭部粘膜にロキソプロフェンが接することのない剤型であるカプセル剤を採用することとは両立しえないといえるから、引用発明においてチュアブル錠をカプセル剤とするとの動機付けは見いだせない。
なお、原査定では、引用文献3?6には、ロキソプロフェンを含有するカプセル剤が記載されていること、また、崩壊剤として、クロスポビドンがカプセル剤に使用されることは引用文献7?9に記載があるように本願出願時における技術常識であることから、引用発明において、崩壊剤としてクロスポビドンを含有するカプセル剤の剤型とすることは当業者が容易に想到しうるとしている。
しかしながら、そもそも、引用発明における、固形内服薬組成物中のロキソプロフェンが、口腔・咽喉頭部に接する剤型であるチュアブル錠を、消化管内で崩壊させる剤型であるカプセル剤とする動機付けが見いだせないことは上記のとおりであるから、ロキソプロフェンのカプセル剤についての同引用文献3?6に記載された技術的事項や、クロスポビドンをカプセル剤の崩壊剤として使用するとの技術常識が本出願時にあったとしても、上記判断を左右しない。

(3)効果について
本願発明1が、クロスポビドンを配合することにより、その製剤性・保存安定性を改善しうることは、たとえば、実施例1の軟カプセル剤と比較例4の軟カプセル剤とを対比することで確認できる。
なお、原査定では、崩壊剤が水分の吸収作用を有することは一般的に知られており(引用文献10?12)、崩壊剤であるクロスポビドンは製剤の水分を吸収するから、吸湿性を有するロキソプロフェンナトリウム2水和物の安定性に寄与することは、クロスポビドンの有する性質から予測されるとしている。
しかし、たとえば、引用文献4の段落0002に、総吸水能が一定の範囲になるように調製された製剤は、製造時の付着性の問題、製剤の経時的安定性の問題があったとの記載をみると、水分吸水作用を有する成分を配合すれば、必ず製剤性、保存安定性が改善されるものと認めることはできないのであって、本願発明1の効果は、クロスポビドンが有する水分吸収作用から当然に予想されるものでもない。

したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用文献3?6に記載された技術的事項、及び本願出願時の技術常識に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2?5について
本願発明2?5は、「第3 本願発明」に記載のとおりであって、本願発明2は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明3、4は、本願発明2を減縮した発明である。また、本願発明5は、本願発明1?4のいずれかを減縮した発明である。
よって、本願発明2?5は、いずれも、本願発明1のカプセル剤との発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献3?6に記載された技術的事項、及び本願出願時の技術常識に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?5は、当業者が引用発明及び引用文献3?6に記載された技術的事項、及び本願出願時の技術常識に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-22 
出願番号 特願2012-206178(P2012-206178)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 上條 のぶよ渡部 正博  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 穴吹 智子
山本 吾一
発明の名称 医薬品組成物  
代理人 塩川 修治  
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