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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1336509
審判番号 不服2017-3881  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-16 
確定日 2018-02-06 
事件の表示 特願2013-144713「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月29日出願公開、特開2015- 18089、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月10日の出願であって、平成28年9月21日付けで拒絶理由通知がされ、同年11月11日付けで意見書が提出され、同年12月12日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年3月16日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年7月19日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月21日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、平成29年9月21日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される事項により特定される、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
装置の構成物が略直方体型の筐体内に収められ、装置を持ち運ぶための凹状の第1取手および凹状の第2取手が前記筐体の一側面および他側面にそれぞれ形成された画像形成装置において、前記筐体内で高さ方向において上下に配置される転写装置および光走査装置の間に、中間転写ベルトの周回方向に沿って並設される複数の現像装置を備え、
前記複数の現像装置のうちの前記筐体の前記一側面側の端に位置する現像装置は、前記筐体の前記一側面から離間するように傾斜した一側面を有し、当該傾斜した一側面を利用した空間に前記第1取手が配置された、画像形成装置。
【請求項2】
前記筐体の前記他側面に、下端に設定された回動軸を支点に外側に開閉可能に設けられた開閉部が配設され、前記第2取手は高さ方向において前記第1取手よりも低い位置に配置される、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2取手が前記筐体の底部に配設される、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写装置は前記筐体の一側面および他側面に軸中心が平行に設置された複数のローラに、張架されて前記筐体内に横臥姿勢に配設される無端状の前記中間転写ベルトと、当該中間転写ベルトをクリーニングするクリーニング装置と、を備え、前記第1取手は前記クリーニング装置の下方に配置された、請求項1?3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
各前記現像装置のケースの一側面および他側面は高さ方向において上に向かうほど互いに近づくように傾斜している、請求項1?4のいずれかに記載の画像形成装置。」

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2012-159694号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「トナー像形成部10Y,10M,10C,10K、露光器20、中間転写ベルト30、二次転写器50、および、定着器60は、用紙に画像を形成する画像形成部1Bとして動作する。画像形成部1Bは、用紙収容台40とともに、画像形成装置1の筐体70内に収容されている。」(段落【0018】)
イ.「中間転写ベルト30は、無端の帯状部材であり、ベルト支持ロール31,32,33,34によって支持されている。中間転写ベルト30は、トナー像形成部10Y,10M,10C,10K、および、二次転写器50を経由する、矢印bに示す方向に循環移動する。」(段落【0022】)
ウ.「画像形成装置1が持上げられる場合、画像形成装置1の筐体70の前面70Fについては、把手カバー90に手が掛けられることとなる。筐体70の左側面70Lには、画像形成装置1を持上げる場合に手を掛けるための手掛り部701,702が設けられている。手掛り部701,702は、左側面70Lの下の縁が一部切り欠かれた形状を有する。」(段落【0034】)
エ.「図3は、図2に示す画像形成装置の筐体の、後面および右側面の一部を示す斜視図である。図3のパート(a)には、筐体70の後面70Bが示されている。筐体70の後面70Bにも、画像形成装置1(図2参照)を持上げる場合に手を掛けるための手掛り部703,704が設けられている。手掛り部703,704は、後面70Bの下の縁が一部切り欠かれた形状を有する。」(段落【0035】)
オ.「図3のパート(b)には、筐体70の右側面70Rが示されている。筐体70の右側面70Rにも、画像形成装置1(図2参照)を持上げる場合に手を掛けるための手掛り部705,706が設けられている。手掛り部705,706は、右側面70Rの一部が窪んだ形状を有する。」(段落【0036】)
カ.図1の記載から、「筐体70内で高さ方向において上下に配置される中間転写ベルト30および露光器20の間に、中間転写ベルト30の周回方向に沿って並設される複数のトナー像形成部10Y、10M、10C、10Kを備えている」ことが看取できる。
キ.図4の記載から、「筐体70が、略直方体型である」ことが看取できる。
ク.図1、2の記載から、「複数のトナー像形成部10Y、10M、10C、10Kのうちの筐体70の右側面70Rの端に位置するトナー像形成部10Yは、前記筐体70の前記右側面70Rから離間するように一側面を有している」ことが看取できる。
これらの記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「トナー像形成部10Y、10M、10C、10K、露光器20、ベルト支持ロール31、32、33、34によって支持されている中間転写ベルト30、二次転写器50、および、定着器60は、用紙に画像を形成する画像形成部1Bとして動作し、画像形成部1Bは、用紙収容台40とともに、略直方体型の筐体70内に収容されている画像形成装置1において、
筐体70内で高さ方向において上下に配置される中間転写ベルト30および露光器20の間に、中間転写ベルト30の周回方向に沿って並設される複数のトナー像形成部10Y、10M、10C、10Kを備えており、
筐体70の左側面70Lには、画像形成装置1を持上げる場合に手を掛けるための手掛り部701,702が設けられており、手掛り部701、702は、左側面70Lの下の縁が一部切り欠かれた形状を有し、
筐体70の後面70Bにも、画像形成装置1を持上げる場合に手を掛けるための手掛り部703、704が設けられており、手掛り部703、704は、後面70Bの下の縁が一部切り欠かれた形状を有し、
筐体70の右側面70Rにも、画像形成装置1を持上げる場合に手を掛けるための手掛り部705、706が設けられており、手掛り部705、706は、右側面70Rの一部が窪んだ形状を有し、
複数のトナー像形成部10Y、10M、10C、10Kのうちの筐体70の右側面70Rの端に位置するトナー像形成部10Yは、前記筐体70の前記右側面70Rから離間するように一側面を有している、
画像形成装置1。」
2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2012-73491号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「図1に示すように、レーザプリンタ1は、略箱状の本体筐体2を有しており、当該本体筐体2の内部に、給紙部10、画像形成部20、搬送ユニット50、スキャナ部60、定着器70及びレジセンサユニット80等を収納している。尚、画像形成部20は、本体筐体2内部の略中央に位置する。」(段落【0016】)
イ.「そして、本体筐体2の上面には、排出トレイ5が形成されている。当該排出トレイ5には、画像形成部20により画像が形成された用紙Pが、排出ローラ75により排出される。排出トレイ5は、排出された用紙Pを積層状態で収納する。又、本体筐体2前面には、フロントカバー6が配設されている。フロントカバー6は、下端側を揺動中心軸として開閉可能に配設されている。図2、図3に示すように、フロントカバー6は、ドロア40を本体筐体2外部へ引き出す際に開放される。」(段落【0019】)
ウ.「続いて、レーザプリンタ1における画像形成部20について説明する。画像形成部20は、本体筐体2内部の略中央部分に配置され、給紙部10によって給紙された用紙Pに対して、カラー画像を形成する際に用いられる。画像形成部20は、所謂ダイレクトタンデム方式であり、プロセスカートリッジ25K、プロセスカートリッジ25Y、プロセスカートリッジ25M、プロセスカートリッジ25Cと、ドロア40を有している。」(段落【0025】)
エ.「次に、レーザプリンタ1における搬送ユニット50について説明する。搬送ユニット50は、給紙部10により給紙された用紙Pを排出トレイ5へ向かって搬送しつつ、画像形成部20と協働して、用紙Pにカラー画像を形成する。当該搬送ユニット50は、給紙部10よりも上方であって、画像形成部20よりも下方に配設されている。図1に示すように、搬送ユニット50は、駆動ローラ51と、従動ローラ52と、搬送ベルト53と、複数の転写ローラ55等を有している。」(段落【0036】)
オ.「次に、レーザプリンタ1を構成するスキャナ部60について説明する。スキャナ部60は、本体筐体2内部の最上方に配設されており、レーザ光源、ポリゴンミラー、fθレンズ及び反射鏡等を有している。スキャナ部60は、画像形成部20を構成する各感光体ドラム26表面に、トナー色に対応する静電潜像を形成する。具体的には、レーザ光源から発光されるレーザビームは、ポリゴンミラーで偏向されて、fθレンズを通過する。その後、当該レーザビームは、反射鏡によって光路が折り返され、さらに、反射鏡によって光路が下方に屈曲される。これにより、各レーザビームは、プロセスカートリッジ25K?プロセスカートリッジ25Cの各感光体ドラム26表面に照射され、静電潜像を形成する。」(段落【0039】)
カ.図1の記載から、「本体筐体2内で高さ方向において上下に配置される搬送ユニット50およびスキャナ部60の間に、搬送ベルト53の周回方向に沿って並設される複数のプロセスカートリッジ25K、25Y、25M、25Cを備えている」こと、及び「フロントカバー40の上端に凹部が形成され、凹部は、画像形成部20とスキャナ部60との間に配置されている」ことが看取できる。
これらの記載を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「略箱状の本体筐体2を有しており、当該本体筐体2の内部に、給紙部10、画像形成部20、搬送ユニット50、スキャナ部60、定着器70及びレジセンサユニット80等を収納しているレーザプリンタ1において、
画像形成部20は、所謂ダイレクトタンデム方式であり、プロセスカートリッジ25K、プロセスカートリッジ25Y、プロセスカートリッジ25M、プロセスカートリッジ25Cを有しており、
搬送ユニット50は、駆動ローラ51と、従動ローラ52と、搬送ベルト53と、複数の転写ローラ55等を有しており、
スキャナ部60は、本体筐体2内部の最上方に配設されており、レーザ光源、ポリゴンミラー、fθレンズ及び反射鏡等を有しており、
本体筐体2内で高さ方向において上下に配置される搬送ユニット50およびスキャナ部60の間に、搬送ベルト53の周回方向に沿って並設される複数のプロセスカートリッジ25K、25Y、25M、25Cを備えており、
本体筐体2前面には、フロントカバー6が配設されている。フロントカバー6は、下端側を揺動中心軸として開閉可能に配設され、上端に凹部が形成され、凹部は、画像形成部20とスキャナ部60との間に配置されている、
レーザプリンタ1。」

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、
後者における「画像形成装置1」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「『装置』、及び『画像形成装置』」に相当し、以下同様に、「筐体70」は「筐体」に、「手掛り部701?706」は「『第1の取手』、または『第2の取手』」に、「ベルト支持ロール31、32、33、34、及び中間転写ベルト30」は「転写装置」に、「露光器20」は「光走査装置」に、「中間転写ベルト30」は「中間転写ベルト」に、「トナー像形成部10Y、10M、10C、10K」は「複数の現像装置」に、それぞれ相当する。
そして、後者における「手掛り部705、706」を前者における「第1の取手」、同様に「手掛り部703、704」を「第2の取手」とすると、手掛り部705、706は、筐体70の右側面70Rに設けられており、右側面70Rの一部が窪んだ形状を有しているから、「筐体の一側面に形成され、凹状の形状をしている」といえ、また、手掛り部703、704は、筐体70の後面70Bに設けられており、後面70Bの下の縁が一部切り欠かれた形状を有しているから、「筐体の他側面に形成され、凹状の形状をしている」といえる。
したがって、両者は、
「装置の構成物が略直方体型の筐体内に収められ、装置を持ち運ぶための凹状の第1取手および凹状の第2取手が前記筐体の一側面および他側面にそれぞれ形成された画像形成装置において、前記筐体内で高さ方向において上下に配置される転写装置および光走査装置の間に、中間転写ベルトの周回方向に沿って並設される複数の現像装置を備え、
前記複数の現像装置のうちの前記筐体の前記一側面側の端に位置する現像装置は、前記筐体の前記一側面から離間するように一側面を有する、画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]
本願発明1は、複数の現像装置のうちの筐体の一側面側の端に位置する現像装置は、前記筐体の前記一側面から離間するように「傾斜した」一側面を有し、「当該傾斜した一側面を利用した空間に前記第1取手が配置された」のに対して、引用発明1は、その点につき、明らかでない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
上記「第3 2.」によれば、引用発明2における後者における「レーザプリンタ1」は、その構造、機能、作用等からみて、前者における「『装置』、及び『画像形成装置』」に相当し、以下同様に、「本体筐体2」は「筐体」に、「搬送ユニット50」は「転写装置」に、「スキャナ部60」は「光走査装置」に、「搬送ベルト53」は「中間転写ベルト」に、「複数のプロセスカートリッジ25K、25Y、25M、25C」は「複数の現像装置」に、それぞれ相当する。
してみると、引用発明2は、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を具備していない。
また、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明1は、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「筐体内の限られたスペースを有効利用して装置を持ち運ぶための凹状の取手を筐体に設けることができる」(段落【0016】)という作用効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、引用発明1、及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
なお、仮に引用発明2における「(フロントカバー6の上端に形成された)凹部」が、本願発明1における「第1の取手」に相当するものであるとしても、引用発明2における「凹部」は、画像形成部20とスキャナ部60との間に配置されているものであって、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を具備していない。

2.本願発明2?5について
本願発明2?5は、本願発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明2?5は、上記「1.」と同様の理由により、引用発明1、及び2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1?5について、上記引用文献1、及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、上記「第4」のとおりであるから、本願発明1?5は、引用発明1、及び2に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
本願請求項1に係る発明の課題は、発明の詳細な説明に記載された「筐体内の限られたスペースを有効利用して装置を持ち運ぶための凹状の取手を筐体に設けることができる画像形成装置を提供すること」(段落【0009】参照)にあって、発明の詳細な説明には、当該課題を解決する手段として、「転写装置と光走査装置との間に、中間転写ベルトの周回方向に沿って並設される複数の現像装置を備え、各前記現像装置のケースの一側面および他側面は高さ方向において上に向かうほど互いに近づくように傾斜しており、凹状の第1取手は、並びの端に位置する現像装置のケースの一側面の筐体の一側面から離間する傾斜を利用したデットスペースに配置すること」(段落【0047】、【0048】参照)が示されているが、本願請求項1には、上記の課題を解決するための手段が記載されていない。

2.当審拒絶理由の判断
平成29年9月21日付けの手続補正書において、上記「第2」のとおり、請求項1の記載は補正されたことにより、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。
したがって、当審拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?5は、引用発明1、及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-22 
出願番号 特願2013-144713(P2013-144713)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
P 1 8・ 537- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齋藤 卓司田代 憲司  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 黒瀬 雅一
藤本 義仁
発明の名称 画像形成装置  
代理人 特許業務法人 楓国際特許事務所  

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