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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01D
管理番号 1336558
審判番号 不服2016-19190  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-22 
確定日 2018-02-07 
事件の表示 特願2015-548320「検出した物理量に基づき電気信号を出力するセンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日国際公開、WO2014/095314、平成28年 2月12日国内公表、特表2016-504583、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成25年11月29日
(パリ条約による優先権主張(外国庁受理2012年12月20日、ドイツ)を伴う国際出願)
拒絶査定: 平成28年8月31日(送達日:同年9月7日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成28年12月22日
手続補正: 平成28年12月22日
拒絶理由通知: 平成29年9月7日
(以下、「当審拒絶理由」という。発送日:同年同月13日)
手続補正: 平成29年12月5日(以下、「本件補正」という。)
意見書: 平成29年12月5日


第2 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
回路筐体(20)内に格納された、電気信号端子(8)を介して外部回路(12)と接続可能な測定回路(6,10)と、
この回路筐体(20)を取り囲むとともに、回路筐体(20)の一部を露出させるための開口部(22)を有する、保護部材(21)から成る保護物体と、
を備える、検出した物理量に基づき電気信号を出力するセンサ(4)において、
この回路筐体(20)が、その表面上に、保護部材(21)により取り囲まれた成形部分(28)を有し、
この成形部分(28)が回路筐体(20)の周囲全体に延びることによって、保護部材(21)と回路筐体(20)の間に形成される可能性の有る隙間(24)の経路が、この隙間(24)を湿気及び反応物質が通過することを防止する程長く構成されている、
センサ(4)。
【請求項2】
当該の成形部分(28)がフィンである請求項1に記載のセンサ(4)。
【請求項3】
当該の保護部材(21)が回路筐体(20)の膨張率以上の膨張率を有する請求項1又は2に記載のセンサ(4)。
【請求項4】
当該の成形部分の壁(38)が、回路筐体(20)の表面(40)に対して、70°?88°の範囲内の傾斜角(42)を有する請求項1から3までのいずれか一つに記載のセンサ(4)。
【請求項5】
当該の保護部材(21)が、回路筐体(20)の周囲に吹き付けることが可能であるか、或いは鋳込むことが可能であり、吹き付け又は鋳込み後に硬化する際の保護部材の収縮が、保護部材(21)の凝固温度からセンサ(4)の動作温度への冷却時の収縮よりも小さい部材である請求項1から4までのいずれか一つに記載のセンサ(4)。
【請求項6】
当該の保護部材(21)との接触領域内における回路筐体(20)の表面の少なくとも一部が活性化される請求項1から5までのいずれか一つに記載のセンサ(4)。
【請求項7】
当該の保護部材(21)との接触領域内における回路筐体(20)の表面の少なくとも一部が粗くされる請求項1から6までのいずれか一つに記載のセンサ(4)。
【請求項8】
電気信号端子(8)を介して外部回路(12)と接続可能な測定回路(6,10)を回路筐体(20)内に格納する工程と、
この回路筐体(20)の表面の少なくとも一部を粗くする工程と、
保護部材(21)を用いて、少なくともこの粗くされた表面の領域における回路筐体(20)を格納する工程と、
回路筐体(20)の表面上で保護部材(21)により取り囲まれた成形部分(28)を周囲全体に延ばし、それにより、保護部材(21)と回路筐体(20)の間に形成される可能性の有る隙間(24)の経路が、この隙間(24)を湿気及び反応物質が通過することを防止する程長く構成される工程と、
を有する、検出した物理量に基づき電気信号を出力するセンサ(4)を製造する方法。
【請求項9】
当該の回路筐体(20)の表面の粗くされる部分がレーザーを用いて粗くされる請求項8に記載の方法。」


第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平11-109009号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【0004】このような検知装置の1つの典型的形態は、ホール効果センサである。ホール効果センサは、磁界が存在するときに生じる横方向電流に依存する。ホール効果センサは、主としてホール効果センサ両端に電極を持つ直流電圧源によって駆動され、センサ体部に縦方向電流を生じる。磁界が存在する場合、横方向電流がセンサに生じ、この電流は第1の対の電極を横切る第2の対の電極によって検出することができる。従って、第2の対の電極は、センサの表面に跨がって生じる電位を決定するため電圧計に接続することができる。かかる横方向電流は、磁界の強さにおける対応する増加と共に増加する。」

「【0015】特に図2において、集積回路ホール効果センサ装置32が、励磁輪34付近に集積回路ホール効果センサ装置32を配置する目的のため励磁輪34に隣接して取付けられるオーバーモールド36内部に固定されている。オーバーモールド36は、任意の適切な形状および構造でよく、例えばエンジン・ブロック37に取付けられるようになっている。オーバーモールド36は、集積回路ホール効果センサ装置32を励磁輪34の周部に形成された一連の歯列38から予め定めた距離に配置するため、励磁輪から半径方向に配置されている。この距離は、本発明の目的にとって主たる関心事である空隙40と呼ばれる。一般に、空隙40は、特定の用途および使用されるハードウェアの公差の結果に依存することになる。0.5ないし2.0ミリメートルの空隙は、図2に示された実施の形態におけるように異例ではない。
【0016】それぞれの歯38の間には、隣接する歯列38を明確に区切るスロット42がある。一般に、歯列38は、励磁輪34の周部にスロット42により均等に隔てられ、サイズおよび形状が実質的に同じである。オーバーモールド36は、自動車の車輪が回転する時、歯列38とスロット42が交互に集積回路ホール効果センサ装置32を通過するように、励磁輪34の歯列38に隣接する静止位置に固定される。
【0017】更に図2によれば、集積回路ホール効果センサ装置32は、リード・フレーム44と、リード・フレーム44の上面に固定されたホール・セル素子センサ・ダイ46とリード・フレーム44の底面と平坦に取付けられた永久磁石48とを有する。ホール・セル素子センサ・ダイ46は、1つの中心位置のホール・セル素子、または多数の素子、例えば約0.224cm(0.088インチ)だけ隔てられ得る2個のホール効果センサを含み得る。これらセンサは、歯列38の縁部の通過を検出する縁部検出器を形成する。リード・フレーム44、ダイ46および磁石48の全組立体は、周知のトランスファー成形プラスチック・パッケージング・プロセスによってプラスチック・パッケージ50内に包装される。この全組立体は、性格において一般的なものであり前に述べた如き各用途において取付け手段を提供するオーバーモールド36と共に種々の用途で用いられる集積回路ホール効果センサ装置32を形成している。
【0018】励磁輪34と永久磁石48とは、磁気回路を一緒に画成する。永久磁石48は、その磁極が励磁輪34と整合するように指向され、ホール・セル素子センサ・ダイ46は、結果として生じる磁界が集積回路ホール効果センサ装置32と直角をなすように集積回路ホール効果センサ装置32の内部に配置される。磁気回路の構成要素間のこのような空間的関係により、励磁輪34の歯列38のホール・セル素子センサ・ダイ46に隣接して存在することが、磁気回路の磁束の増加を生じ、これが回路の磁気抵抗を下げ、このため励磁輪34が回転する時集積回路ホール効果センサ装置32の出力に影響を及ぼす。
【0019】オーバーモールド36は、励磁輪34から適正に離間されるように集積回路ホール効果センサ装置32を正確な場所に保持する。空隙40は、プラスチック・パッケージ50の縁部と励磁輪34との間の距離である。実効空隙54は、ホール・セル素子センサ・ダイ46と励磁輪34との間の距離である。プラスチック・パッケージ50は、ホール・セル素子センサ・ダイ46、リード・フレーム44および永久磁石48の全組立体を完全に覆うので、湿気、腐食、塵、埃および油の如き全ての環境障害に対する完全な保護を提供する。実効空隙54は、保護を提供するのに必要な最小厚さである1層のプラスチックのみがダイ46と励磁輪34間にあるために、サイズが小さくなる。」

【図2】


「【0022】図4は、ホール・セル素子センサ・ダイ46がダイ取付けパッド58に取付けられ磁石48が保持フィンガ60、62のばね張力により固定される組立てプロセスの次の工程におけるリード・フレーム44を示す。ホール・セル素子センサ・ダイ46は、金ボンド・ワイヤ80、82、84によりそれぞれパッケージ・リード64、66、68に接続される最小で3個のボンド・パッドを有する。リード・フレーム44、ホール・セル素子センサ・ダイ46および磁石48は、トランスファー成形プロセスによりプラスチックに密閉されるリード・フレーム組立体を形成する。パッケージ・リード64、66、68は、集積回路に対する信号出力を生じる。」

また、図2の記載から、オーバーモールド36がプラスチック・パッケージ50を取り囲むとともに、プラスチック・パッケージ50の一部を露出させるための開口部を有することが読み取れる。したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「プラスチック・パッケージ50がホール・セル素子センサ・ダイ46、リード・フレーム44および永久磁石48の全組立体を完全に覆い、湿気、腐食、塵、埃および油の如き全ての環境障害に対する完全な保護を提供し(【0019】)、ホール・セル素子センサ・ダイ46は、金ボンド・ワイヤ80、82、84によりそれぞれパッケージ・リード64、66、68に接続され、パッケージ・リード64、66、68は、集積回路に対する信号出力を生じる、ホール・セル素子センサ・ダイ46(【0022】)と、
オーバーモールド36がプラスチック・パッケージ50を取り囲むとともに、プラスチック・パッケージ50の一部を露出させるための開口部を有し(図2)、励磁輪34付近に集積回路ホール効果センサ装置32を配置する目的のため励磁輪34に隣接して取付けられるオーバーモールド36(【0015】)と、
を備える、集積回路ホール効果センサ装置32。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平1-91498号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「〔産業上の利用分野〕
本発明は樹脂封止型半導体装置およびその製造方法に関し、例えば車両用交流発電機(オルタネータ)等の電圧調整器として用いるICレギュレータ(集積型半導体式電圧調整器)に効果的に適用できるものである。」(第2頁右上欄第12行?同第17行)

「本実施例の樹脂封止型半導体装置1は上述のようにリードフレームを用いて製造でき、従来のハイブリッド構造の装置の製造において必要である各々の接続端子をセットする工程やシールドケースに蓋をする工程等が不要となり、又、製品の多数個取りができるので部品点数・工数が削減できる。又、コネクタハウジングの成形と、モノリシックICの封止とを個別に実施する事により、リードフレームの切り離しが容易にかつ確実に行える。又、モノリシックIC封止後にリードフレームの枠部切り離しコネクタハウジングの成形を行い、しかも樹脂14bは外部接続端子116,117,118,119の根元部分をも封止しているので、リードフレームの切り離し時に発生する耐湿性の低下が防がれる利点がある。さらに、ICの封止に用いる樹脂13aと、コネクタハウジングの外囲成形に用いる樹脂14bとを別種のものとすることも出来る。例えば樹脂13aを耐湿性、耐応力性、成形性に優れた熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂を用い、樹脂14bには機械強度、寸法安定性に優れる熱可塑性樹脂のPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンスルヒド)、66-ナイロン等を用いると、耐湿性、耐応力性と同時に機械強度、寸法安定性に優れた半導体パッケージとなる。
また、上述のように熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを使用すると両樹脂間には接着力がないので、例えば耐湿性等が劣ることになるが、モノリシックIC封止部13に凸部131を設けて樹脂14bを成形すると樹脂13aと樹脂14bとの密着力が向上する。そして、このように両樹脂13a,14bの接触面の密着力を向上することにより、樹脂界面からの湿気の浸入を防ぎ、耐湿性を高めた構造となる。また上記の凸部131の代わりに梨地等により表面を粗面状にして密着させてもよい。
また、モノリシックIC封止部13形成後に外枠部111、横枠部112、連結部111a、112a、ダイバー111bを切り離すが、この切り離し部分はモノリシックIC封止部13の外側になるように配設されており、切り離し工程の際には、ワイヤボンディング部が完全に樹脂封止されているのでワイヤボンディングには悪影響を及ぼさない。従って本発明の樹脂封止型半導体装置は耐湿性、機械強度に優れている。」(第5頁右上欄第17行?第6頁左上欄第1行)

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に周知例として引用された引用文献3(特開2005-11978号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多数の配線接続を一層高密度な実装を可能とした半導体素子の実装方法に関するもので、とりわけ、情報通信機器、事務用電子機器等の高機能化・小型化を容易にするエリアアレイ状に配列された半導体装置において、該半導体の集積回路部を保護する樹脂封止をもって、半導体素子の電気的な接続信頼性を安定に確保するパッケージ構成に関するものである。」

「【0050】
図5は溝部の断面形状を示す。
図5(a)において、インターポーザ基板7に形成された溝部22は、矩形の断面を有している。インターポーザ基板7とモールド封止樹脂5との界面は、溝部22の上隅と下隅とで90度向きが変わるため、界面で亀裂が発生しても、これら上隅と下隅で進展しにくくなり、亀裂の進展を抑止できる。
【0051】
図5(b)において、インターポーザ基板7に形成された溝部23は、三角形の断面を有している。インターポーザ基板7とモールド封止樹脂5との界面は、溝部23の上隅と下隅とで向きが変わるため、界面で亀裂が発生しても、向きが変わる上隅と下隅で進展しにくくなり、亀裂の進展を抑止できる。溝部23の下隅(底端部)の角度を90度とした時に最も効果が大きい。」


第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
まず、引用発明における「プラスチック・パッケージ50」、「ホール・セル素子センサ・ダイ46」、「リード・フレーム44」を含む回路、及び「金ボンド・ワイヤ80、82、84」は、それぞれ本願発明1における「回路筐体(20)」、「測定回路(6,10)」、「外部回路(12)」、及び「電気信号端子(8)」に相当する。したがって、引用発明における「プラスチック・パッケージ50がホール・セル素子センサ・ダイ46、リード・フレーム44および永久磁石48の全組立体を完全に覆い、湿気、腐食、塵、埃および油の如き全ての環境障害に対する完全な保護を提供し、ホール・セル素子センサ・ダイ46は、金ボンド・ワイヤ80、82、84によりそれぞれパッケージ・リード64、66、68に接続され、パッケージ・リード64、66、68は、集積回路に対する信号出力を生じる、ホール・セル素子センサ・ダイ46」は、本願発明における「回路筐体(20)内に格納された、電気信号端子(8)を介して外部回路(12)と接続可能な測定回路(6,10)」に相当する。
また、引用発明における「オーバーモールド36がプラスチック・パッケージ50を取り囲むとともに、プラスチック・パッケージ50の一部を露出させるための開口部を有し、励磁輪34付近に集積回路ホール効果センサ装置32を配置する目的のため励磁輪34に隣接して取付けられるオーバーモールド36」は、本願発明における「この回路筐体(20)を取り囲むとともに、回路筐体(20)の一部を露出させるための開口部(22)を有する、保護部材(21)から成る保護物体」に相当する。
さらに、引用発明において「ホール・セル素子センサ・ダイ46」が接続される「パッケージ・リード64、66、68」は、「集積回路に対する信号出力を生じる」ものとされており、また引用文献1において「ホール効果センサは、・・・磁界が存在する場合、横方向電流がセンサに生じ、この電流は第1の対の電極を横切る第2の対の電極によって検出することができる。従って、第2の対の電極は、・・・電圧計に接続することができる。」(【0004】)と説明されていることから見ても、引用発明の「集積回路ホール効果センサ装置32」が、「検出した物理量に基づき電気信号を出力するセンサ」であることは明らかといえる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「回路筐体内に格納された、電気信号端子を介して外部回路と接続可能な測定回路と、
この回路筐体を取り囲むとともに、回路筐体の一部を露出させるための開口部を有する、保護部材から成る保護物体と、
を備える、検出した物理量に基づき電気信号を出力するセンサ」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は「回路筐体(20)が、その表面上に、保護部材(21)により取り囲まれた成形部分(28)を有し、この成形部分(28)が回路筐体(20)の周囲全体に延びることによって、保護部材(21)と回路筐体(20)の間に形成される可能性の有る隙間(24)の経路が、この隙間(24)を湿気及び反応物質が通過することを防止する程長く構成されている」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用文献3には上記相違点に対応する構成は記載されていないが、引用文献2には、「樹脂封止型半導体装置」であって、「熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを使用すると両樹脂間には接着力がないので、例えば耐湿性等が劣ることになるが、モノリシックIC封止部13に凸部131を設けて樹脂14bを成形すると樹脂13aと樹脂14bとの密着力が向上する。そして、このように両樹脂13a,14bの接触面の密着力を向上することにより、樹脂界面からの湿気の浸入を防ぎ、耐湿性を高めた構造となる。」ものが記載されており、上記「凸部131」は、「樹脂14b」により取り囲まれた成形部分であって、湿気が通過することを防止するように構成されているといえる。
しかしながら、引用発明の「オーバーモールド36」は、「励磁輪34付近に集積回路ホール効果センサ装置32を配置する目的のため」に取付けられるものであって、しかも引用発明においては「プラスチック・パッケージ50がホール・セル素子センサ・ダイ46、リード・フレーム44および永久磁石48の全組立体を完全に覆い、湿気、腐食、塵、埃および油の如き全ての環境障害に対する完全な保護を提供」するとされているのであるから、「樹脂界面からの湿気の浸入を防ぎ、耐湿性を高め」ることを目的とする引用文献2の「凸部131」を、引用発明に採用する動機を見いだすことはできない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-7について
本願発明2-7も、本願発明1の上記相違点に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明8について
本願発明8は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の上記相違点に係る構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明9について
本願発明9も、本願発明1の上記相違点に係る構成に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-9について上記引用文献1-3に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、本件補正により補正された請求項1-9は、それぞれ「回路筐体(20)が、その表面上に、保護部材(21)により取り囲まれた成形部分(28)を有し、この成形部分(28)が回路筐体(20)の周囲全体に延びることによって、保護部材(21)と回路筐体(20)の間に形成される可能性の有る隙間(24)の経路が、この隙間(24)を湿気及び反応物質が通過することを防止する程長く構成されている」という事項、もしくはそれに対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-9は、当業者であっても、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項5,8,9及び及び請求項5を直接または間接的に引用する請求項6,7に係る発明は明確でないという拒絶の理由を通知しているが、本件補正において補正された結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-9は、当業者が引用文献1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-23 
出願番号 特願2015-548320(P2015-548320)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01D)
P 1 8・ 537- WY (G01D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平野 真樹  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 中塚 直樹
須原 宏光
発明の名称 検出した物理量に基づき電気信号を出力するセンサ  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 篠原 淳司  
代理人 江崎 光史  
代理人 清田 栄章  

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