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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
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管理番号 | 1336614 |
審判番号 | 不服2015-18636 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-10-15 |
確定日 | 2018-01-18 |
事件の表示 | 特願2012-511898「局所用組成物を適用するための使い捨てディスポーザブルストリップ」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月25日国際公開、WO2010/135131、平成24年11月8日国内公表、特表2012-527463〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、2010年5月13日(パリ条約による優先権主張 2009年5月22日(米国))を国際出願日とする特許出願であって、平成27年6月26日付けで拒絶査定がなされたのに対して、同年10月15日に拒絶査定不服の審判請求がなされ、それと同時に手続補正書が提出され、平成29年3月17日付けで当審からの拒絶理由が通知され、同年6月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1-11に係る発明は、平成29年6月15日提出の手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1-11に記載されたとおりのものであって、そのうち、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。 「使い捨て口唇局所処置用ストリップであって、以下: 2つの表面を含む平坦な支持体;および 局所用組成物、ここで当該局所用組成物は半固体であり、支持体の2つの表面に沈着している; を含み、そしてここで、各ストリップが長方形であり、1cm?10cmの長さおよび1cm?5cmの幅を有し、掴み部分を備えており、当該支持体は、局所処置剤の存在下で構造統合性を維持し、処置すべき領域へ局所用組成物を移行させることができるのに十分な物理的支持を提供する、前記口唇局所処置用ストリップ。」 3 当審からの拒絶理由 平成29年3月17日付けの拒絶理由通知による拒絶の理由は、概要以下のとおりのものを含む。 B この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 〔刊行物〕 1 特表2009-501034号公報 4 当審の判断 (1)刊行物1の記載事項 本願出願日(優先日)前に頒布された刊行物1には、以下の記載がある。 ア 「【請求項1】 少なくとも、口側端部(2)および逆側保持端部(3)を有するシート状可撓性支持体(1)を含み、該シート状可撓性支持体(1)はその少なくとも一方の側にある量の唇用製品(5,7,15,16)を担持する唇用製品領域(4,6)を有し、該唇用製品領域(4,6)は前記支持体(1)の口側端部(2)の近傍に位置して、該支持体(1)を口側端部(2)が唇間に来るように持つことにより、使用者の少なくとも一方の唇の相当の部分が該唇用製品(5,7,15,16)と接触するように配置され、該支持体(1)は使用中に使用者の口外に位置する保持端部(3)が手でつまめるような寸法を有する、唇用製品(5,7,15,16)の唇への塗布用具であって、 前記シート状可撓性支持体(1)は、少なくともその唇用製品(5,7,15,16)を担持する唇用製品領域(4,6)の部分に亘って、口側端部(2)から保持端部(3)へと可撓性が増大するように設定されていることを特徴とする唇用製品の唇への塗布用具。」 イ 「【0001】 本発明は、少なくとも、口側端部および逆側保持端部を有するシート状可撓性支持体を含み、該シート状可撓性支持体はその少なくとも一方の側にある量の唇用製品を担持する唇用製品領域を有し、該唇用製品領域は前記支持体の口側端部の近傍に位置して、該支持体を口側端部が唇間に来るように持つことにより、使用者の少なくとも一方の唇の相当の部分が該唇用製品と接触するように配置され、該支持体は使用中に使用者の口外に位置する保持端部が手でつまめるような寸法を有する、唇用製品の唇への塗布用具に関する。」 ウ 「【0009】 研究によれば、シート状の可撓性支持体に増大する可撓性を付与することにより、種々の唇用製品から唇へと精確に汚れなしにうまく塗布可能な塗布用具が得られることが示された。」 エ 「【0025】 もちろん、シート状可撓性支持体の一方の面の口側端部近傍の唇用製品領域にのみ唇用製品を担持させることができるが、好ましくはシート状支持体の両面の口側端部近傍に二つの唇用製品領域を持たせる。これにより、二つの唇に同時に唇用製品を塗布することが可能になる。 【0026】 シート状可撓性支持体に塗布する唇用製品は、使用者の唇に塗布されるべき任意の唇用製品であり得る。その例としては、唇化粧品の分野における製品、棒口紅、唇塗布薬、唇光沢剤等;唇予防の分野における唇軟化剤、リップ・バルサム等;唇保護の分野における唇の太陽光保護剤等;薬剤分野における抗ヘルペス唇剤等、がある。唇用製品の物理的形態も特に限定されるものではないが、固体、半固体、粉体あるいは液体等であり得る。 【0027】 本発明の塗布用具は、主として一回使用用に構成することができるが、複数回使用用に構成することも有利であり得る。この場合には、好ましくは唇用製品を例えばシート状可撓性支持体上に層状に塗布して、塗布用具を複数回使用可能とする。ここで、「層状に」とは、シート状支持体上に唇用製品を、例えばより高粘度または高融点の分離層で分離した複数層に塗布することを意味する。このような塗布用具を用いて、1回の塗布において、塗布用具から使用者の唇に一層のみの唇用製品を転写する。 【0028】 本発明の塗布用具のシート状支持体は、好ましくは可撓性プラスチックにより構成する。例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン等の化粧品分野で一般に用いられる可撓性プラスチックが有利に用いられる。 【0029】 また、本発明の塗布用具の寸法は、臨界的ではない。もちろん、唇に許容可能な唇用製品を付与した口側端部が、唇間に保持されるように、寸法を適切に選択すべきである。また厚みも、用途およびシート状支持体材質に応じて選択可能である。ポリスチレンからなる典型的な塗布用具の例においては、以下の寸法が算定される;口側端部-保持端部間長さ約5?6cm、口側端部近傍の最大幅約5cm、厚さ約0.5mmである。」 オ 「【0041】 図2に、図1の塗布用具のII-II線断面図を示す。この断面図から明らかなように、唇用製品領域4とは別に、塗布用具の他の面に口紅7からなる第2の唇用製品領域6が存在する。これにより、二つの唇に口紅を同時に塗布可能となる。 【0042】 図3には、ほぼ矩形状である本発明の塗布用具の第2の例を示す。この例においても口側端部2および保持端部3を含み、口側端部2の近傍に配置された湾曲した帯状の口紅5の形状の唇用製品領域4が示されている。」 カ 「【0061】 上述の記載を見れば明らかな通り、本発明の塗布用具には、数多くの変形が可能である。その例を挙げると次の通りである。シート状支持体には、唇用製品領域にある量の唇用製品を付着させる代りに、唇用製品領域に、例えば吸収剤あるいは唇用製品が支持体の他の領域に付着するよりもより良く付着する特性を与える物質を施すこともできる。この場合には、パッケージにある量の唇用製品を収容し、唇用製品領域の上記物質へと唇用製品が転移して、上述したように、使用者の唇へ転写するようにしてもよい。これにより、塗布用具の使い捨て性を変化させ、複数回使用に適合させることもできる。」 キ 「【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 」 (2)対比・判断 ア 刊行物1に記載された発明 上記記載から、刊行物1には、矩形(長方形)状のシート状可撓性支持体の両面に、唇用製品を有し、支持体の端部につまみ部分を有する、一回使用用すなわち使い捨ての塗布用具が記載されている。 したがって、刊行物1には、「長方形のシート状可撓性支持体を含み、該シート状可撓性支持体は、その両方の側に、唇用製品を担持し、唇用製品は、半固体であり、該支持体は使用中に使用者の口外に位置する保持端部が手でつまめるような寸法を有する、唇用製品の唇への使い捨て塗布用具。」に係る発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。 イ 対比 本願発明1と刊行物発明とを対比すると、刊行物発明の「唇用製品」(刊行物1【0026】:上記(1)エ)は、本願発明1の「局所用組成物」(本願【0019】)に相当し、また、これらは共に口唇局所の処置に関するものであり、刊行物発明の「塗布用具」は、その形状がシート状であることに鑑みると、本願発明1の「口唇局所処置用ストリップ」に相当する。 したがって、両者は、 「使い捨て口唇局所処置用ストリップであって、以下: 2つの表面を含む支持体;および 局所用組成物、ここで当該局所用組成物は半固体であり、支持体の2つの表面に沈着している; を含み、そしてここで、各ストリップが長方形であり、掴み部分を備えている、前記口唇局所処置用ストリップ。」 の点で一致し、次の点で一応相違している。 (ア)相違点1 口唇局所処置用ストリップについて、本願発明1が「各ストリップが1cm?10cmの長さおよび1cm?5cmの幅を有し」としているのに対し、刊行物発明ではこれが特定されていない点。 (イ)相違点2 支持体について、本願発明1が「平坦な」ものであり、「局所処置剤の存在下で構造統合性を維持し、処置すべき領域へ局所用組成物を移行させることができるのに十分な物理的支持を提供する」のに対し、刊行物発明ではこれらが特定されていない点。 ウ 相違点の検討 (ア)相違点1 刊行物発明の塗布用具については、寸法は臨界的でないこと、口側端部-保持端部間長さ約5?6cm、口側端部近傍の最大幅約5cmであることが記載されている(【0029】:上記(1)エ)。 そうすると、刊行物発明の塗布用具については、矩形(長方形)であって、全体の長さは5?6cm、最大幅は5cmのものといえるから、本願発明1の口唇局所処置用ストリップの各寸法と重複しており、この点において、本願発明1と刊行物発明との間に実質的な差異があるとはいえない。 あるいは、この相違点において、本願発明1と刊行物発明とが相違するとしても、各ストリップの寸法をどの程度とするかは、実施の態様を勘案して当業者が適宜設定しうることと認められる。また、本願発明1に係る寸法に設定したことによる格別の作用効果を見出すことができない。 (イ)相違点2 本願発明1における「局所処置剤の存在下で構造統合性を維持」、殊に「構造統合性」とは技術的に何を意味するのか明瞭であるとはいえないが、請求人が平成29年6月15日付け意見書で主張するように、本願発明1は「刊行物1で言う『増大する可撓性』を有し得ない」ものとする。 刊行物1【0009】(上記(1)ウ)には「研究によれば、シート状の可撓性支持体に増大する可撓性を付与することにより、種々の唇用製品から唇へと精確に汚れなしにうまく塗布可能な塗布用具が得られることが示された。」と記載されている。ここで、刊行物発明における半固体の唇用製品を本願発明1によってもたらされる程度に塗布可能とすれば、刊行物発明の「可撓性支持体」を、上記刊行物1【0009】に記載されるような「増大する可撓性」を有さないような一様の構造としてみることは、当業者が容易になしうることと認められる。 そして、刊行物1【0002】において、従来技術として、「シートを使用者の唇間に掴み、外側へと引張ることにより使用される。これは、口紅が唇へと塗り付け作用により塗布されることを意味する。」と記載されているとおり、「処置すべき領域へ局所用組成物を移行させることができるのに十分な物理的支持を提供する」程度のことは、「増大する可撓性」を備えていないものであっても達成されていたと理解できる。そうすると、刊行物発明における「増大する可撓性」を有さない構造を採用した際にも、「処置すべき領域へ局所用組成物を移行させることができるのに十分な物理的支持を提供する」ものとなると認められる。 加えて、刊行物発明は、刊行物1の図面からみて、「平坦な」塗布用具であると認められ、「増大する可撓性」を採用しないのであれば、なおさら「平坦な」ものと認められる。 5 まとめ 以上のことから、本願発明1は刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到しうることと認められる。 このため、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-08-16 |
結審通知日 | 2017-08-21 |
審決日 | 2017-09-07 |
出願番号 | 特願2012-511898(P2012-511898) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(A61K)
P 1 8・ 121- WZ (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 神田 和輝、團野 克也、小出 直也 |
特許庁審判長 |
大熊 幸治 |
特許庁審判官 |
長谷川 茜 関 美祝 |
発明の名称 | 局所用組成物を適用するための使い捨てディスポーザブルストリップ |
代理人 | 四本 能尚 |