• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1336662
審判番号 不服2017-210  
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-06 
確定日 2018-02-13 
事件の表示 特願2011-138864「洗浄液及び基板の研磨方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月10日出願公開,特開2013- 8751,請求項の数(15)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年6月22日の出願であって,平成26年5月9日に審査請求がなされ,平成27年6月9日付けで拒絶理由通知がされ,同年8月17日に意見書と手続補正書が提出され,平成28年3月3日付けで拒絶理由通知がされ,同年5月6日に意見書と手続補正書が提出され,同年10月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ,平成29年1月6日に拒絶査定不服審判の請求がされ,同年9月29日付けで拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)がされ,同年12月4日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年10月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の請求項1ないし19に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
文献1.特開2005-260213号公報
文献3.国際公開第2010/067844号
文献4.特開2010-163608号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1-19
・引用文献1-9

・備考
ア 引例1を主引例とした検討
(ア)請求項1,5-9,11-12,16-19について
引例1の請求項1,請求項5,請求項6,【0001】,【0022】,【0025】,【0032】,【0049】-【0054】,【表4】等の記載を参照されたい。
引例1の実施例4には,以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「平均分子量約2500のポリアクリル酸アンモニウム0.20重量%と,1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸,過酸化水素,純水を含有し,
pH5.2であるセリア系スラリーを用いて被研磨膜であるプラズマTEOSを有する直径200mmのSiウエハ基板をCMP研磨したCMP処理後の基板洗浄用である洗浄液。」

ここで,引用発明1の「セリア系スラリー」は,本願の請求項1に記載された発明(以下「本願発明1」という。)の「セリア砥粒を含むCMP研磨液」に相当する。
また,引例2の【0028】,【0029】,引例3の【0066】,引例4の【0028】等の記載及び技術常識に照らして,引用発明1の「ポリアクリル酸アンモニウム」は,「『アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む』『アニオン性界面活性剤』」の一種であるといえる。
そうすると,引用発明1と本願発明1とは,以下の点で相違し,その余において一致する。
・相違点1:本願発明1のセリア砥粒が,CMP研磨液中において,プラスのゼータ電位を有するのに対して,引用発明1では明示されていない点。
・相違点2:本願発明1の洗浄液が,「pH調整剤」を含有するのに対して,引用発明1は含有していない点。

以下,相違点について検討する。
・相違点1について
引例5の【0023】-【0040】,引例6の【0034】の【表1】の比較例18,引例7の[0077]等の記載に照らして,CMP研磨液中においてセリア砥粒はプラスのゼータ電位を有するといえるから,引例1の実施例4における前記セリア砥粒もまたCMP研磨液中において,プラスのゼータ電位を有するものと認められる。
したがって,相違点1は,実質的なものではない。
また,仮に相違点1が実質的なものであったとしても,引例5の【0040】には,砥粒の研磨剤中でのゼータ電位が正電位であることが望ましいことが記載されているから,引例1のセリア砥粒のゼータ電位をプラスとすることは当業者が容易になし得たことである。
・相違点2について
引例1の【0025】に,洗浄液のpHが2?7であることが望ましいことが記載されているから,必要に応じて,洗浄液に「pH調整剤」を含有することは当業者が適宜なし得たことである。

・効果について
引例1の表4には,実施例4の残留粒子が28個/基板であることが示されており,これは,本願明細書の【0107】の【表2】に示された実施例と同等といえる。したがって,本願発明1は,引用発明1に比べて格別の効果を奏するものとはいえない。

(イ)請求項2-4,10,14,15について
引例7の[0022],[0026],[0051]-[0054]等の記載を参照されたい。引例1に記載された発明において,研磨速度を高めるために,4-ピロン系化合物から選ばれる本願明細書の一般式(1)で表される化合物を添加することは当業者が容易になし得たことである。

(ウ)請求項13について
引例8の請求項12,【0080】,【0105】等の記載を参照されたい。引用発明1において,定盤上で洗浄することは容易になし得たことである。

イ 引例9を主引例とした検討
・請求項1-19について
引例9の請求項1,2,5,8,【0001】,【0011】-【0013】等の記載を参照されたい。
引例9には,半導体装置の製造工程等において,半導体ウエハ等半導体基板の表面を清浄にする洗浄技術が記載されており,【0011】-【0013】には,例外的に正のゼータ電位を有するAl(通常,表面に酸化膜を形成している)が,静電的にSi基板に付着し易いところ,ゼータ電位を制御できる物質としてアニオン性界面活性剤を添加することにより,基板への付着を低減し,付着異物数を少なくするという発明が記載されている。
一方,引例1,引例7等に照らして,半導体装置の製造工程において,セリア砥粒を用いたCMP工程に引き続いて,当該砥粒等を基板表面から除去する洗浄工程を行うことは周知であるところ,セリア砥粒を用いたCMP工程において当該セリア砥粒はプラスのゼータ電位を有することが知られており(上記ア(ア)を参照),これは,引例9の「例外的に正のゼータ電位を有するAl(通常,表面に酸化膜を形成している)」と同様といえるから,引例9に記載された発明を,セリア砥粒を用いたCMP工程に引き続く洗浄工程で用いることは当業者が容易に想到し得たことである。
なお,引例9には,アニオン性界面活性剤として,「アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む」ものを選択するとは記載されていない。
しかしながら,本願明細書には,添加剤がアンモニア,ノニオン性界面活性剤Aである比較例1ないし4,及び,添加剤を含まない比較例5との対比において,種類A及びBのアニオン性界面活性剤を含む洗浄液を用いた実施例1ないし7が優れていることが示されているだけであって,アニオン性界面活性剤として,特に「アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む」ものを選択したことによる格別の効果は示されていない。
しかも,前記実施例1ないし7で示される,コンタミネーション数が16ないし41個/枚という結果は,引例1の【0053】【表4】の実施例4に示された,残留粒子28個/基板という結果と比べて格別のものとは認められない。
してみれば,引例9に記載された発明のアニオン性界面活性剤を,アニオン性界面活性剤として周知であるといえる「アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む」ものとすることは当業者が適宜なし得たことである。


引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2004-22986号公報
2.特開2009-71062号公報
3.特開2008-231176号公報
4.特開2000-267302号公報
5.特開2009-290188号公報
6.特開2008-117807号公報
7.国際公開2010/067844号
8.特開2008-47842号公報
9.特開平6-132267号公報

第4 本願発明
本願請求項1ないし15に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明15」という。)は,平成29年12月4日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される発明であり,独立形式で記載された請求項に係る発明である,本願発明1,本願発明7及び本願発明8は,以下のとおりである。

「【請求項1】
アニオン性界面活性剤,水及びpH調整剤を含有し,前記アニオン性界面活性剤は,アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含み,
前記アニオン性界面活性剤の重量平均分子量が,2,000以上10,000以下であり,
前記アニオン性界面活性剤の含有率が,全質量基準で1.00質量%以上2.00質量%以下である,
プラスのゼータ電位を有するセリア砥粒を含むCMP研磨液を用いて被研磨膜を有する基板を研磨したCMP処理後の基板洗浄用の洗浄液。」

「【請求項7】
プラスのゼータ電位を有するセリア砥粒を含むCMP研磨液を用いて,被研磨膜を有する基板を研磨して前記被研磨膜の少なくとも一部を除去する研磨工程と,
アニオン性界面活性剤,水及びpH調整剤を含有する洗浄液を,前記基板の被研磨膜の少なくとも一部が除去された側の面上に付与して,前記面を洗浄する洗浄工程と,
を有し,
前記アニオン性界面活性剤は,アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含み,
前記アニオン性界面活性剤の重量平均分子量が,2,000以上10,000以下であり,
前記洗浄液におけるアニオン性界面活性剤の含有率が,全質量基準で1.00質量%以上2.00質量%以下である,基板の研磨方法。」

「【請求項8】
4-ピロン系化合物及びプラスのゼータ電位を有するセリア砥粒を含むCMP研磨液を用いて,被研磨膜を有する基板を研磨して前記被研磨膜の少なくとも一部を除去する研磨工程と,
アニオン性界面活性剤,水及びpH調整剤を含有する洗浄液を,前記基板の被研磨膜の少なくとも一部が除去された側の面上に付与して,前記面を洗浄する洗浄工程と,
を有し,
前記アニオン性界面活性剤は,アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含み,
前記アニオン性界面活性剤の重量平均分子量が,2,000以上10,000以下であり,
前記洗浄液におけるアニオン性界面活性剤の含有率が,全質量基準で1.00質量%以上2.00質量%以下である,基板の研磨方法。」

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
当審拒絶理由で引用した引用文献1(特開2004-22986号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。以下同じ。)
「【請求項1】
シリコンウエハ上に形成された膜を平坦化研磨後に洗浄するための洗浄液であって,ジホスホン酸,過酸化水素,重量平均分子量が1000?3000であるポリアクリル酸塩,及び水を含有することを特徴とする洗浄液。」

「【請求項5】
前記ポリアクリル酸塩が,ポリアクリル酸アンモニウム塩またはポリアクリル酸テトラメチルアンモニウム塩からなり,かつ,前記ポリアクリル酸塩を,0.0001重量%?0.5重量%含む,請求項1?4のいずれかに記載の洗浄液。
【請求項6】
化学的機械的研磨処理後に,請求項1?5のいずれかに記載の洗浄液を用いて半導体基板表面を洗浄することを特徴とする,半導体基板表面の洗浄処理方法。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,半導体デバイスの製造工程である化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:以後「CMP」と呼ぶ)による平坦化工程後洗浄に使用される洗浄液,及び,それを用いる半導体基板表面の洗浄処理方法に関する。」

「【0019】
また,本発明にかかる洗浄液において,低分子量ポリアクリル酸塩の含有量は0.0001重量%?0.5重量%であることが好ましく,特に0.005重量%?0.2重量%であることが好ましい。0.0001重量%未満では粒子除去効果が劣る傾向がある。また,0.5重量%を越えると3成分の配合バランスが悪くなり,金属汚染除去及び粒子除去効果が劣る傾向がある。」

「【0022】
本発明にかかる洗浄液は,溶媒として水を使用する。本発明において,水溶性有機溶媒を併用しても良い。この場合,沸点の低い水溶性有機溶媒(たとえば,メタノール,エタノール,イソプロパノール等)を用いることが好ましい。」

「【0025】
本発明にかかる洗浄液のpHは,特に制限はないが,2?7であることが望ましい。」

「【0032】
【実施例】
A. ILD膜研磨後の洗浄評価試験(実施例1,比較例1)
(1) 研磨基板の作成
ILD膜研磨後における洗浄液の洗浄効果を確認するため,基板上のILD膜を研磨した研磨基板を作成した。基板としては,直径200mmのSiウエハ基板上に形成された約5000ÅのプラズマTEOS膜上に,高さ約0.6μm,ラインアンドスペース約6μmのアルミ配線を付け,アルミ配線の上に更に約0.8μmの前記TEOS膜が埋め込まれているものを用いた。」

「【0049】
D. ILD膜研磨後の洗浄評価試験(実施例4,比較例4)
(1) 研磨基板の作成
プラズマTEOS膜をセリア系スラリーで研磨した後の洗浄効果を確認するため,基板上のILD膜をセリア系スラリーで研磨した研磨基板を作成した。基板としては,研磨基板1の研磨前の基板と同様の基板を使用した。
研磨剤としては,約150nmの平均粒子径を持つセリア微粒子粉末2.0重量%,2種の平均分子量(約1200,約15000)を1:1の比率で有するポリアクリル酸アンモニウム0.1重量%を含有し,pH5.2であるスラリーを調製して用いた。研磨装置としては,荏原製作所製EPO222を用い,パッドとしては,ロデール社製IC1000/Suba400を使い,上記基板を,研磨荷重150g/cm^(2),キャリアー回転数60rpm,定盤回転数50rpmでスラリー流量180ml/minで,前記ILD膜付き基板を50秒間研磨し,研磨基板4とした。
【0050】
(2) 洗浄液の調製
実施例4
純水を含む洗浄液が5.0リットルになるように,重量平均分子量約2500のポリアクリル酸アンモニウム0.20重量%,1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸0.03重量%,過酸化水素0.20重量%を順次混合し洗浄液を調製した。
比較例4
ポリアクリル酸塩として,重量平均分子量が12000であるポリアクリル酸アンモニウムを用いた以外は実施例4と同様の組成を有する洗浄液を調製した。
【0051】
(3) 洗浄液による洗浄試験
実施例4及び比較例4によって得られた洗浄液を使用して,上記研磨基板4を洗浄することにより洗浄試験を行った。洗浄装置,洗浄条件,洗浄評価としては,A. ILD膜研磨後の洗浄評価試験(実施例1,比較例1)の場合と同一の洗浄装置,条件,洗浄評価を採用した。
【0052】
実施例4および比較例4で得られた洗浄液の組成およびそれを用いて研磨基板4を洗浄した後のパーティクル量及び金属汚染の評価結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
<途中省略>
表4から明らかなように,実施例4で得られた洗浄液によれば,0.20μm以上の粒子は28個と少なく良い洗浄結果であった。また金属汚染もNiは28.0×10^(10)atoms/cm^(2),Feは30.0×10^(10)atoms/cm^(2)と通常の除去効果があった。このように,本発明洗浄液は汚染粒子および金属汚染に対してよい除去効果があった。
一方,比較例4で得られた洗浄液によれば,0.20μm以上の粒子は83個と多く残り比較例3と同じく刺さった粒子が見受けられ,悪い洗浄結果であった。詳細な表面観察の結果,本発明法洗浄液による洗浄より砥粒粒子が刺さったように見受けられるのが多く目立った。金属汚染は,Niは25.0×10^(10)atoms/cm^(2),Feは36.0×10^(10)atoms/cm^(2)と汚染は実施例4の場合と変らなかった。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば,硬度の低い被洗浄材料による膜であっても,また,パターンを形成した膜であっても,膜に影響を与えることなく,膜の付着物質,残留物質を効果的に除去することができる。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。),及び,次の技術的事項が記載されていると認められる。

・引用発明1
「純水を含む洗浄液が5.0リットルになるように,重量平均分子量約2500のポリアクリル酸アンモニウム0.20重量%,1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸0.03重量%,過酸化水素0.20重量%を順次混合して調整した洗浄液であって,
直径200mmのSiウエハ基板上に形成された約5000ÅのプラズマTEOS膜上に,高さ約0.6μm,ラインアンドスペース約6μmのアルミ配線を付け,アルミ配線の上に更に約0.8μmの前記TEOS膜が埋め込まれている基板の,該基板上のILD膜を,約150nmの平均粒子径を持つセリア微粒子粉末2.0重量%,2種の平均分子量(約1200,約15000)を1:1の比率で有するポリアクリル酸アンモニウム0.1重量%を含有し,pH5.2であるスラリーを調製した研磨剤を用いて化学的機械的研磨処理をした後の,前記基板の表面を洗浄するための洗浄液。」

・引用文献1の記載から理解される技術的事項
引用文献1に記載された発明に係る洗浄液において,低分子量ポリアクリル酸塩の含有量は0.0001重量%?0.5重量%であることが好ましく,特に0.005重量%?0.2重量%であることが好ましく,0.0001重量%未満では粒子除去効果が劣る傾向があり,また,0.5重量%を越えると3成分の配合バランスが悪くなり,金属汚染除去及び粒子除去効果が劣る傾向があること。

2 引用文献2ないし12について
ア 当審拒絶理由で引用した引用文献2(特開2009-71062号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0028】
第1及び第2の研磨液に含まれるアニオン性界面活性剤としては,脂肪酸塩,多価カルボン酸系共重合体,アルキル硫酸エステル塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられるが,親水基としてカルボキシル基あるいはスルホニル基を有する界面活性剤が好ましい。
【0029】
親水基としてカルボキシル基を有するものとしては,多価カルボン酸系共重合体であるポリアクリル酸,ポリアクリル酸塩,ポリメタアクリル酸,ポリメタアクリル酸塩,アクリルーメタアクリル酸およびアクリルーメタアクリル酸塩などが挙げられ,このうち,カルボキシル基が多く含まれるポリアクリル酸,ポリアクリル酸カリウム,ポリアクリル酸アンモニウム,ポリアクリル酸カリウムアンモニウムがより好ましい。」

上記記載と技術常識から,「ポリアクリル酸アンモニウム」が,「『アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む』『アニオン性界面活性剤』」の一種であるといえる技術的事項が理解される。

イ 当審拒絶理由で引用した引用文献3(特開2008-231176号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0066】
〈実施例5〉
図9に,アニオン性界面活性剤である,ポリアクリル酸アンモニウム水溶液,ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム水溶液,直鎖ドテジルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液,ナフタリンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物水溶液をそれぞれ添加剤とした場合の,前述の測定法による平衡曲線を示す。」

上記記載と技術常識から,「ポリアクリル酸アンモニウム」が,「『アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む』『アニオン性界面活性剤』」の一種であるといえる技術的事項が理解される。

ウ 当審拒絶理由で引用した引用文献4(特開2000-267302号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0028】アニオン性界面活性剤の具体例としては,脂肪酸塩,アルキル硫酸エステルアルカリ塩,ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸アルカリ塩,アルキルスルホコハク酸アルカリ塩,ポリカルボン酸型高分子界面活性剤等が挙げられる。ここでアルカリ塩とは,ナトリウム,カリウム,アルカノールアミン,アンモニア等との中和物のことをいう。アニオン性界面活性剤の具体例としては,ブチルナフタレンスルフォン酸ナトリウム,ラウリル硫酸アンモニウム,ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム,ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン,ポリアクリル酸アンモニウム等が挙げられる。これらの中では,ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム,ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン,ポリアクリル酸アンモニウムが好ましい。」

上記記載と技術常識から,「ポリアクリル酸アンモニウム」が,「『アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む』『アニオン性界面活性剤』」の一種であるといえる技術的事項が理解される。

エ 当審拒絶理由で引用した引用文献5(特開2009-290188号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0023】
(砥粒)
本発明の研磨剤において,砥粒は,4価の酸化セリウム粒子と,4価の水酸化セリウム粒子とを少なくとも含む。また,本発明の研磨剤の効果を損なわない程度において,必要に応じて他の粒子を含むこともできる。
【0024】
(4価の酸化セリウム粒子)
一般に,4価の酸化セリウム粒子(以下,単に酸化セリウム粒子)は,炭酸塩,硝酸塩,硫酸塩,しゅう酸塩等のセリウム化合物を酸化することによって得られる。酸化の方法としては,焼成又は過酸化水素等による酸化法を使用することができる。焼成の場合,焼成温度は350℃以上900℃以下が好ましい。また,酸化セリウム粒子を作製する方法として,水熱合成法を用いることもできる。例えば,水酸化セリウム等の前駆体を,水中で100℃以上に加熱する方法を挙げることができる。
【0025】
酸化セリウム粒子として,市販のセリア粒子を用いることもできる。例えば,ナノフェーズ・テクノロジーズ社,フェロ社,アドバンスド・ナノ・プロダクツ社,ローディア・エレクトロニクス・アンド・カタリシシス社,シーアイ化成株式会社等により販売されているものなどを挙げることができる。
【0026】
(4価の水酸化セリウム粒子)
一般に,4価の水酸化セリウム粒子(以下,単に水酸化セリウム粒子)は,セリウム塩とアルカリ液とを混合して水酸化セリウム粒子を析出する方法で得られる。この方法は,例えば「希土類の科学」(足立吟也編,株式会社化学同人,1999年)304?305頁に説明されている。セリウム塩としては,例えばCe(SO_(4))_(2),Ce(NH_(4))_(2)(NO_(3))_(6),Ce(NH_(4))_(4)(SO_(4))_(4)等が好ましい。アルカリ液はアンモニア水,水酸化カリウム水溶液,水酸化ナトリウム水溶液等が使用できる。研磨剤を半導体デバイス製造に用いる観点からは,アルカリ金属を含まないアンモニア水が好ましい。前記方法で合成された水酸化セリウム粒子は,洗浄して金属不純物を除去できる。洗浄方法としては,遠心分離等で固液分離を数回繰り返す方法等が使用できる。
また,半導体デバイスの製造に係る研磨に使用することから,アルカリ金属及びハロゲン類の含有率は水酸化セリウム粒子中10ppm以下に抑えることが好ましい。
【0027】
本発明において,砥粒は,酸化セリウム粒子と,水酸化セリウム粒子と,必要に応じて他の粒子とを混合することで得られる。この際,混合方法には特に制限が無く,それぞれの乾燥粉を混合する方法,どちらか一方を媒体に分散した分散液に他の乾燥粉を混合する方法,それぞれの分散液を混合する方法等を挙げることができる。
【0028】
また,酸化セリウム粒子の分散液,セリウム塩及びアルカリ液を混合し,酸化セリウム粒子の分散液中で水酸化セリウム粒子を析出させてもよい。また,水酸化セリウム粒子を水中で加熱し,水酸化セリウム粒子の一部を酸化セリウム粒子に変換してもよい。
【0029】
また,研磨剤中で酸化セリウム粒子と水酸化セリウム粒子とは,結合していても結合していなくてもよい。結合している場合,結合形態には特に制限が無く,共有結合,ファンデルワールス力,静電引力,双極子-双極子相互作用,疎水結合,水素結合等が挙げられる。
【0030】
本発明において,砥粒の分散性を向上させるために砥粒を機械的に粉砕してもよい。粉砕方法としては,ジェットミル等による乾式粉砕や遊星ビーズミル等による湿式粉砕が好ましい。
【0031】
また,砥粒を水中に分散させる際,その分散方法に特に制限は無い。通常の攪拌機による分散処理の他に,ホモジナイザ,超音波分散機,湿式ボールミル等を用いることができる。分散方法,粒径制御方法については,例えば,分散技術大全集(情報機構,2005年7月)に記述されている方法を用いることができる。
【0032】
酸化セリウム粒子や水酸化セリウム粒子の1次粒径は,大きいほど高速研磨が可能となるが,研磨傷が入りやすい傾向がある。そこで,本発明で用いる酸化セリウム粒子と水酸化セリウム粒子の1次粒径は,それぞれ1nm以上70nm以下とする。少なくとも一方の粒子の1次粒径が1nmより小さいと実用的な研磨速度が得られない傾向があり,また,いずれか一方の粒子の1次粒径が70nmより大きいと研磨傷が顕著になる傾向がある。当該1次粒径は,1nm以上70nm以下が好ましく,2nm以上50nm以下がより好ましく,3nm以上15nm以下がさらに好ましい。
【0033】
(1次粒径)
本発明において,1次粒子とは,例えば透過型電子顕微鏡(TEM)等により粉体状態で観察した際に認められる結晶子に相当する最小単位の粒子をいう。本発明では,透過型電子顕微鏡(TEM)写真を撮り,1次粒子を2本の平行線で挟んだとき,その間隔が最小の部分の値を短径,最大の部分の値を長径とし,その短径と長径との平均を結晶子の粒径とした。そしてランダムに選択した100個の結晶子の粒径を測定し,その算術平均を1次粒径とする。
【0034】
なお,セリウム化合物を焼成して得られる酸化セリウム粒子は,その焼成条件によって,結晶粒界に囲まれた複数の結晶子からなる多結晶体を形成することがある。多結晶体は,複数の一次粒子が単に凝集した凝集体とは異なる。この場合,前記1次粒子とは,多結晶体一つではなく,結晶粒界に囲まれた結晶子一つを指す。
【0035】
(2次粒径)
砥粒の2次粒径(研磨剤中での凝集体粒径)が小さすぎると,粒子の表面エネルギーが高くなり,粒子同士が凝集しやすくなる。その結果,研磨剤中で2次粒径が変動してしまい,研磨速度等のCMP特性が安定しなくなる傾向がある。また,砥粒の2次粒径が大きすぎると,粒子の重量が増加して研磨剤中で沈降しやすくなるため,研磨に寄与する砥粒の有効数が減少して研磨速度が低下する傾向がある。
そこで,本発明で用いる砥粒の2次粒径は,10nm以上400nm以下とする。2次粒径が10nm以上であれば研磨剤中で2次粒径の安定性の低下を抑制することができ,また,2次粒径が400nm以下であれば研磨剤中で粒子の沈降を抑制できる傾向がある。そのような観点で,前記2次粒径としては40nm以上300nm以下が好ましく,60nm以上200nm以下がより好ましい。
【0036】
本発明で,4価の金属水酸化物粒子の平均粒径とは,動的光散乱法を用い,キュムラント解析で得られるZ-average Sizeをいう。測定には,例えば,ゼータサイザーナノS(マルバーン・インスツルメンツ社)を使用でき,動的光散乱測定において多重散乱が起こらない程度に研磨剤を水で希釈して測定することができる。具体的には,例えば,研磨剤を砥粒濃度が0.05重量%となるように水で希釈し,分散媒の屈折率を1.33,粘度を0.887とし,25℃において測定を行い,Z-average Sizeとして表示される値を読み取る。
【0037】
(水酸化セリウム粒子の含有量)
本発明において,パターン研磨速度を向上させることができる点で,水酸化セリウム粒子が砥粒全量に対して5重量%以上含まれることが好ましい。水酸化セリウムを5重量%以上含むことで,酸化セリウム粒子を単独で用いた場合に比べてパターン研磨速度が加速される効果を顕著に得ることができる。含有量としては,パターン研磨速度がより向上するという点で,10重量%以上であることがより好ましく,15重量%以上であることがさらに好ましく,20重量%以上であることが極めて好ましい。
【0038】
前記水酸化セリウム粒子を添加すると,酸化セリウム粒子を単独で用いた場合に比べてパターン研磨速度が加速される傾向があるが,ある程度の添加量を超えると,それ以上パターン研磨速度が加速されなくなる傾向がある。また,水酸化セリウム粒子の添加量を増やすことによりブランケット研磨速度が少しずつ向上する傾向がある。このため,水酸化セリウム粒子を多量に添加すると,ブランケット研磨速度に対するパターン研磨速度の比が小さくなってしまう傾向がある。
このような点で,前記酸化セリウムの含有量としては,砥粒全量に対して95重量%以下含まれることが好ましく,90重量%以下であることがより好ましく,85重量%以下であることがさらに好ましく,80重量%以下であることが特に好ましく,75重量%以下であることが極めて好ましく,70重量%以下であることが最も好ましい。
【0039】
最終的な研磨剤に含まれる砥粒において水酸化セリウム粒子の含有量を同定する方法として,熱重量分析法が挙げられる(前記「希土類の科学」参照)。例えば,米国特許第5389352号明細書で開示しているようにセリウム塩の焼成によって得られた酸化セリウム粒子と,セリウム塩とアルカリ液との混合によって得られた水酸化セリウムを,それぞれ40℃で15時間乾燥した後に熱重量分析する。このとき,1000℃までの重量減少は,酸化セリウム粒子の場合は3重量%,水酸化セリウム粒子の場合は17?26重量%である。水酸化セリウム粒子の化学式はCe(OH)_(4)又はCeO_(2)・2H_(2)Oと表され,酸化セリウム粒子との重量減少の差は結晶水である。例えば,水酸化セリウム粒子が砥粒全量に対して5重量%含まれる場合,前記方法で測定される砥粒の重量減少は3.7?4.2重量%であり,酸化セリウム粒子単独の重量減少(3重量%)と区別できる。また例えば,水酸化セリウム粒子が砥粒に対して95重量%含まれる場合,前記方法で測定される砥粒の重量減少は16.3?24.9重量%であり,水酸化セリウム粒子単独の重量減少(17?26重量%)と区別できる。
【0040】
本発明において,砥粒の研磨剤中でのゼータ電位は正電位であることが好ましい。これにより,砥粒の研磨中でのゼータ電位が負電位である場合に比べて,凹凸を持った被研磨膜の凸部の研磨速度が高速化する。ゼータ電位測定には,例えば,商品名ゼータサイザー3000HS(マルバーン・インスツルメンツ社)を使用でき,研磨剤をゼータサイザー3000HSの推奨される散乱光量(500?2000KCts)となるように水で希釈して測定することができる。」

上記記載から,CMP研磨液中においてセリア砥粒はプラスのゼータ電位を有するといえる技術的事項が理解される。

オ 当審拒絶理由で引用した引用文献6(特開2008-117807号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
【0034】の【表1】の,「比較例18」には,「砥粒」が,「セリア」で,「ゼータ電位[mV]」が,「22.7」であることが記載されている。

上記記載から,セリア砥粒はプラスのゼータ電位を有するといえる技術的事項が理解される。

カ 当審拒絶理由で引用した引用文献7(国際公開第2010/067844号:平成28年3月3日付け拒絶理由通知書で引用した文献3)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「[0077]また,研磨液のpHを1.5?8.0の範囲内に調整することで,次の2つの効果が得られると考えられる。
(1)プロトンやヒドロキシアニオンが,添加剤として配合した化合物に作用して,当該化合物の化学形態が変化し,基板表面の酸化ケイ素膜又はストッパ膜である窒化ケイ素膜に対する濡れ性や親和性が向上する。
(2)砥粒が酸化セリウムである場合,砥粒と酸化ケイ素膜との接触効率が向上し,高い研磨速度が達成される。これは,酸化セリウムはゼータ電位の符号が正であるのに対し,酸化ケイ素膜はゼータ電位の符号が負であり,両者の間に静電的引力が働くためである。」

上記記載から,研磨液中においてセリア砥粒はプラスのゼータ電位を有するといえる技術的事項が理解される。

キ 当審拒絶理由で引用した引用文献8(特開2008-47842号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項11】
請求項1?10のいずれかに記載の洗浄用組成物を使用して化学機械研磨後の半導体基板を洗浄することを特徴とする半導体基板の洗浄方法。
【請求項12】
上記洗浄が,定盤上洗浄,ブラシスクラブ洗浄およびロール洗浄からなる群から選択される少なくとも1種の洗浄であることを特徴とする請求項11に記載の洗浄方法。」

上記記載から,洗浄用組成物を使用して化学機械研磨後の半導体基板を,定盤上洗浄で行うという技術的事項が理解される。

ク 当審拒絶理由で引用した引用文献9(特開平6-132267号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】酸とアンモニア水との混合溶液からなる中性乃至酸性溶液に,溶液中に存在する微粒子のゼータ電位を制御できる物質を,臨界ミセル濃度以下の濃度で添加含有せしめて成る液中異物付着防止溶液。
【請求項2】上記微粒子のゼータ電位を制御できる物質を,アニオン性界面活性剤として成る請求項1記載の液中異物付着防止溶液。」

「【請求項5】被処理基板を洗浄液で洗浄するに際し,前記被処理基板を請求項1乃至4何れか記載の液中異物付着防止溶液中に浸漬する処理工程を有して成る被処理基板の洗浄方法。」

「【請求項8】上記被処理基板が半導体ウェハからなり,これを上記液中異物付着防止溶液中に所定時間浸漬した後,アルコール類から成る有機溶剤を添加した純水でのリンス工程と,前記リンス工程に引き続いて水洗し乾燥する工程とを付加して成る請求項5乃至7何れか記載の被処理基板の洗浄方法。」

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,半導体装置の製造工程等において,半導体ウエハ等半導体基板の表面を清浄にする洗浄技術に関する。」

「【0011】
【作用】酸とアンモニア水の混合溶液中で異物付着が起き易いのは,基板や異物のゼータ電位から説明できる。まず,ゼータ電位について簡単に述べる。空気中で帯電していなくても,ほとんどの異物(洗浄により除去する対象物)あるいは基板は液の水素イオン濃度(pH)にもよるが,本発明の対象とする中性から酸性側では水溶液中で負に帯電するという性質がある。ただし,Al(通常,表面に酸化膜を形成している)は例外的に正に帯電している。この際の異物あるいは基板の溶液中における表面電位をゼータ電位と言う。帯電のメカニズム等詳細については,例えば北原文雄著「分散,乳化系の化学」(工学図書S54年)を参照されたい。
【0012】異物の付着現象は,ゼータ電位に基づく静電的反発力の大小で説明することができる。酸とアンモニア水の混合溶液中で異物付着が起き易いのは次の2点による。
(1)配線材料としてAlを用いた場合,配線パターン形成後の基板にはAlの異物がよく見られるが,Alのゼータ電位は正,Si基板のゼータ電位は負であるためAlは静電的にSi基板に付着し易い。
(2)Al以外のほとんどの異物のゼータ電位は負であるが,酸とアンモニア水の混合液中ではゼータ電位の絶対値が小さくなっている。また,Si基板のゼータ電位の絶対値も小さくなっており,基板,異物間の静電気反発力が低下してしまうため,付着は起き易い。
【0013】酸とアンモニア水の混合溶液中では,上記したように異物,基板間の静電気反発力が低下してしまうため,異物が付着し易くなると考えられる。本発明は,酸とアンモニア水の混合溶液中にゼータ電位を制御できる物質としてアニオン性界面活性剤を添加することにより,Alに対してはそのゼータ電位を負の値にし,他の異物や基板に対してはそのゼータ電位をより低くする(絶対値を大きくする)というものである。そのために異物,基板間の静電気反発力が増大し異物の付着が防止あるいは低減されるものである。」

上記記載から,引用文献9には,以下の発明が記載されていると認められる。
「酸とアンモニア水との混合溶液からなる中性乃至酸性溶液に,溶液中に存在する微粒子のゼータ電位を制御できるアニオン性界面活性剤として成る物質を,臨界ミセル濃度以下の濃度で添加含有せしめて成る,配線材料としてAlを用いた配線パターン形成後の基板に付着した,ゼータ電位が正であるAlの異物の付着を防止あるいは低減する液中異物付着防止溶液であり,
半導体ウェハからなる被処理基板を,前記液中異物付着防止溶液中に所定時間浸漬する処理工程,前記処理工程後にアルコール類から成る有機溶剤を添加した純水でリンスする工程と,前記リンス工程に引き続いて水洗し乾燥する工程とを含む洗浄方法で使用する液中異物付着防止溶液。」

ケ 引用文献10(特開2005-260213号公報:平成28年3月3日付け拒絶理由通知書で引用した文献1)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0015】
本発明の半導体デバイス用基板の洗浄方法は,このような本発明の半導体デバイス用基板洗浄液を用いて,半導体デバイス用基板,特に表面にCu膜と低誘電率絶縁膜とを有し,かつ,CMP処理後の半導体デバイス用基板を洗浄することを特徴とする。」

「【0019】
本発明の洗浄液は,成分(a)として有機酸,成分(b)として有機アルカリ成分,成分(c)として界面活性剤,成分(d)として水を含み,かつpHが1.5以上6.5未満のものである。
【0020】
本発明において,成分(a)の有機酸とは,水中で酸性(pH<7)を示す有機化合物の総称で,カルボキシル基(-COOH),スルホ基(-SO_(3)H),フェノール性ヒドロキシル基(ArOH:Arはフェニル基等のアリール基),メルカプト基(-SH)等の酸性の官能基を持つものを表す。使用される有機酸は特に限定されないが,官能基にカルボキシル基を持つカルボン酸が好ましい。より好ましくは,カルボキシル基を1以上有する炭素数1?10の有機化合物であり,更に好ましくは炭素数1?8の有機化合物であり,中でも好ましくは炭素数1?6の有機化合物である。」

「【0030】
本発明において,成分(c)として使用する界面活性剤は特に限定されず,アニオン系界面活性剤,ノニオン系界面活性剤,カチオン系界面活性剤,両性界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては,アルキルスルホン酸及びその塩,アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩,アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩,アルキルメチルタウリン酸及びその塩,アルキル硫酸エステル及びその塩,アルキルエーテル硫酸エステル及びその塩,スルホコハク酸ジエステル及びその塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのアルキレンオキサイド型界面活性剤などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては,アミン塩型界面活性剤や第4級アンモニウム塩型界面活性剤が挙げられる。両性界面活性剤としては,アミノ酸型両性界面活性剤やベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。中でもアニオン系界面活性剤を使用することが好ましい。更に好ましくは炭素数8?12のアルキルベンゼンスルホン酸及びその塩,炭素数8?12のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩,炭素数8?12のアルキルメチルタウリン酸及びその塩,炭素数8?12のアルキル硫酸エステル及びその塩,炭素数8?12のアルキルエーテル硫酸エステル及びその塩,炭素数8?12のスルホコハク酸ジエステル及びその塩が挙げられる。これらの界面活性剤成分は,1種を単独で使用してもよいし,2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0031】
本発明の洗浄液中における成分(c)の含有量は,パーティクル汚染除去性能を充分得るためには,洗浄液に対して通常0.0001重量%以上,好ましくは0.0003重量%以上,さらに好ましくは0.001重量%以上とする。ただし,過度の泡立ちを抑えることや廃液処理の負荷を軽減することを重視すれば,成分(c)の含有量は通常1重量%以下,好ましくは0.1重量%以下,さらに好ましくは0.05重量%以下とする。成分(c)の濃度が高すぎてもそれ以上の効果は得られない。
【0032】
なお,成分(c)としての界面活性剤は,通常市販されている形態において1?数千重量ppm程度のNa,K,Fe等の金属不純物を含有している場合があり,この場合には,成分(c)が金属汚染源となる。そのため,成分(c)として使用する界面活性剤に金属不純物が含まれる場合には,各々の金属不純物の含有量が,通常10ppm以下,好ましくは1ppm以下,更に好ましくは0.3ppm以下となるように,界面活性剤を精製して使用することが好ましい。この精製方法としては,例えば,界面活性剤を水に溶解した後,イオン交換樹脂に通液し,樹脂に金属不純物を捕捉させる方法が好適である。このようにして精製された成分(c)を使用することで,金属不純物含有量が極めて低減された洗浄液を得ることができる。
【0033】
本発明においては成分(d)としては水を使用する。水としては,高清浄な基板表面を得たい場合は,通常,脱イオン水,好ましくは超純水が用いられる。また,水の電気分解によって得られる電解イオン水や,水に水素ガスを溶存させた水素水などを使用することもできる。
【0034】
本発明の洗浄液におけるpHは,基板表面の腐食を抑えるためには1.5以上,好ましくは2以上,更に好ましくは3以上とする。ただし金属汚染の除去を充分に行うためには,pHは6.5未満,好ましくは6以下,更に好ましくは5以下とする。」

「【0056】
表面にCuや低誘電率絶縁膜を有する基板の洗浄を行う工程としては,特に,Cu膜に対してCMP(Chemical Mechanical Polishing)を行った後の洗浄工程,配線上の層間絶縁膜にドライエッチングによりホールを開けた後の洗浄工程が挙げられ,上記の効果を奏する本発明の洗浄液が好適に使用される。
【0057】
CMP工程では,研磨剤を用いて基板をパッドに擦り付けて研磨が行われる。研磨剤成分としては,研磨粒子,酸化剤,分散剤やその他添加剤が含まれる。研磨粒子としては,コロイダルシリカ(SiO_(2)),フュームドシリカ(SiO_(2)),アルミナ(Al_(2)O_(3)),セリア(CeO_(2))などが挙げられる。酸化剤としては,過酸化水素,過硫酸アンモニウム,硝酸鉄,ヨウ素酸カリウムなどが挙げられる。分散剤としては,界面活性剤,KOH,アンモニア,アミンなどが挙げられる。その他添加剤としては,有機酸(クエン酸やキナルジン酸等)や防食剤などが挙げられる。特に,Cu膜のCMP研磨では,Cu膜が腐食しやすく,防食剤を入れることが重要であり,防食剤の中でも防食効果の高いアゾール系防食剤が好ましく用いられる。アゾールとは,ヘテロ原子を2個以上含む5員環芳香族化合物で,ヘテロ原子の少なくとも1個は窒素原子である化合物の総称である。窒素以外のヘテロ原子としては,酸素と硫黄のものが良く知られている。窒素のみの複素環では,ジアゾール系やトリアゾール系,テトラゾール系が挙げられる。窒素と酸素の複素環では,オキサゾール系やイソオキサゾール系,オキサジアゾール系が挙げられ,窒素と硫黄の複素環では,チアゾール系やイソチアゾール系,チアジアゾール系が挙げられる。その中でも特に,防食効果に優れるベンゾトリアゾール(BTA)系の防食剤が好ましく用いられる。また,研磨剤はその組成により酸性,中性,アルカリ性と様々なpHのものがあり,目的に応じて選択できる。」

「【0061】
また,本発明の洗浄方法は,物理力による洗浄方法,特に,洗浄ブラシを使用したスクラブ洗浄や周波数0.5メガヘルツ以上の超音波洗浄を併用するならば,パーティクル汚染の除去性が更に向上し,洗浄時間の短縮にも繋がるので好ましい。特に,CMP後の洗浄においては,樹脂製ブラシを使用してスクラブ洗浄を行うのが好ましい。樹脂製ブラシの材質は,任意に選択し得るが,例えばPVA(ポリビニルアルコール)を使用するのが好ましい。」

上記記載から,引用文献10には,以下の発明が記載されていると認められる。
「成分(a)として有機酸,成分(b)として有機アルカリ成分,成分(c)として界面活性剤,成分(d)として水を含み,かつpHが1.5以上6.5未満のものである洗浄液であって,
成分(c)として使用する界面活性剤は特に限定されず,アニオン系界面活性剤,ノニオン系界面活性剤,カチオン系界面活性剤,両性界面活性剤が挙げられ,
洗浄液中における成分(c)の含有量は,パーティクル汚染除去性能を充分得るためには,洗浄液に対して通常0.0001重量%以上,好ましくは0.0003重量%以上,さらに好ましくは0.001重量%以上であって,かつ,過度の泡立ちを抑えることや廃液処理の負荷を軽減することを重視すれば,成分(c)の含有量は通常1重量%以下,好ましくは0.1重量%以下,さらに好ましくは0.05重量%以下であり,
研磨剤成分として,研磨粒子として,コロイダルシリカ(SiO_(2)),フュームドシリカ(SiO_(2)),アルミナ(Al_(2)O_(3)),セリア(CeO_(2))などが用いられるCMP処理後の半導体デバイス用基板の洗浄用である洗浄液。」

コ 引用文献11(特開2010-87258号公報:平成28年3月3日付け拒絶理由通知書で引用した文献2)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は,半導体デバイスの製造工程における化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:以後「CMP」と呼ぶ)による平坦化工程後の半導体デバイスの洗浄に使用される洗浄剤及びそれを用いた半導体デバイスの洗浄方法に関する。」

「【0016】
以下,本発明の具体的態様について説明する。
本発明の洗浄剤は,分子内にNH基を有さない特定の式で表される腐食防止剤化合物(以下,特定腐食防止化合物と称する)を含有することを特徴とし,半導体デバイス製造工程における化学的機械的研磨工程の後に,半導体デバイス,特に表面に銅配線が施されたデバイス表面を洗浄するのに好適に使用される。
以下,本発明の洗浄剤に含まれる各成分について順次説明する。」

「【0035】
<界面活性剤>
本発明の洗浄剤は,界面活性剤を含有するのが,基板への濡れ性良化とそれに伴う洗浄性向上の点で好ましい。
本発明に用いうる界面活性剤としては,アニオン性界面活性剤,ノニオン性界面活性剤または,それらの組合せからなる界面活性剤が挙げられる。カチオン性界面活性剤を添加すると,カチオン部と,併用する有機酸が相互作用し,有機酸の機能・効果が低減する。このため,アニオン性界面活性剤,ノニオン性界面活性剤または,それらの組合せからなる界面活性剤を用いることが好ましい。
以下それぞれの界面活性剤について説明する。
【0036】
《アニオン性界面活性剤》
アニオン性界面活性剤としては,例えば,カルボン酸塩,スルホン酸塩,硫酸エステル塩,リン酸エステル塩が挙げられる。
カルボン酸塩として,石鹸,N-アシルアミノ酸塩,ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩,アシル化ペプチド;
スルホン酸塩として,アルキルスルホン酸塩,スルホコハク酸塩,α-オレフィンスルホン酸塩,N-アシルスルホン酸塩;
硫酸エステル塩として,硫酸化油,アルキル硫酸塩,アルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩,アルキルアミド硫酸塩;
リン酸エステル塩として,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩等を挙げることができる。」

「【0055】
本発明の洗浄剤は水溶液である。即ち,前記した必須成分または所望により併用されるその他の成分が水系の溶媒中に溶解してなるものが好ましい。溶媒として使用される水としては,効果の観点から,それ自体,不純物を含まないか,その含有量を極力低減させた脱イオン水や超純水を用いることが好ましい。また,同様の観点から,水の電気分解によって得られる電解イオン水や,水に水素ガスを溶存させた水素水などを使用することもできる。
【0056】
〔洗浄剤のpH〕
本発明の洗浄剤のpHは,特に制限はなく,pH0.5?12程度の範囲において,洗浄対象となるデバイスの特性,除去しようとする不純物の種類などにより,適宜選択して調整することができるが,被洗浄面(半導体デバイス用基板の表面)の腐食の防止,金属汚染の除去を充分行いうる観点から,pHは5以下であることが好ましい。洗浄液のpHは,より好ましくは1?5であり,更に好ましくは1?3.5である。
pHを上記範囲とすることで,銅金属表面へのパーティクルの吸着を抑制し,金属汚染の除去を充分に行うことができ,さらに銅金属表面の腐食を抑制することができる。
【0057】
pH値は,有機酸を添加することにより調整することができる。有機酸としては,例えば,水溶性のものが望ましく,以下の群から選ばれたものがより適している。ギ酸,酢酸,プロピオン酸,酪酸,吉草酸,2-メチル酪酸,n-ヘキサン酸,3,3-ジメチル酪酸,2-エチル酪酸,4-メチルペンタン酸,n-ヘプタン酸,2-メチルヘキサン酸,n-オクタン酸,2-エチルヘキサン酸,安息香酸,グリコール酸,サリチル酸,グリセリン酸,シュウ酸,マロン酸,コハク酸,グルタル酸,アジピン酸,ピメリン酸,マレイン酸,フタル酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン酸,乳酸,ヒドロキシエチルイミノ二酢酸,イミノ二酢酸,ジエチルヒドロキシルグリシン等を用いることができる。」

「【0063】
表面にCuを有する基板,さらには,層間絶縁膜として低誘電率絶縁膜を有し,その表面に銅配線を有する基板の洗浄を行う工程としては,特に,Cu膜に対してCMPを行った後の洗浄工程,配線上の層間絶縁膜にドライエッチングによりホールを開けた後の洗浄工程が挙げられるが,これらの洗浄工程においては,表面に存在する不純物金属やパーティクル等を効率的に除去することが配線の純度,精度を保持するため特に重要である。そのような観点から,これらの洗浄工程において本発明の洗浄剤が好適に使用される。また,既述のごとく,本発明の洗浄剤は,銅配線に対して腐食や酸化を生じさせることがないことから,かかる観点からも本発明の洗浄剤が好適に使用される。
また,銅配線表面に吸着した不動態膜形成剤の残渣を効率よく除去するという目的にも本発明の洗浄剤が好適に使用される。」

「【実施例】
【0067】
<研磨液の調製>
・コロイダルシリカ(砥粒:平均粒子径30nm) 5g/L
・ベンゾトリアゾール(BTA) 1g/L
・グリシン 10g/L
純水を加えて全量1000mLとし,硝酸及びアンモニアを用いてpHを6.5に調整した。
研磨液には,研磨直前に30%過酸化水素(酸化剤)15ml/Lを加えた。」

上記記載から,引用文献11には,以下の発明が記載されていると認められる。
「アニオン性界面活性剤,水及び有機酸(pH調整剤)を含有し,CMPによる平坦化工程後の半導体基板の洗浄用である洗浄剤。」

サ 引用文献12(特開2010-163608号公報:平成28年3月3日付け拒絶理由通知書で引用した文献4)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は,電子材料用洗浄剤,更に詳しくはフラットパネルディスプレイ基板及びフォトマスク基板等の電子材料用洗浄剤に関するものである。」

「【0009】
尚,本発明の洗浄剤は,界面活性剤(A)並びに必要により水(好ましくはイオン交換水又は超純水であり以下の水についても同様)及び後述のその他の成分を含有し,本発明における有効成分とは水以外の成分をいう。また,上記及び以下において,特に規定しない限り,%は重量%を表す。」

「【0013】
本発明の洗浄剤の必須成分である界面活性剤(A)としては,非イオン性界面活性剤(A-1),アニオン性界面活性剤(A-2),カチオン性界面活性剤(A-3)及び両性界面活性剤(A-4)が挙げられる。」

「【0018】
アニオン性界面活性剤(A-2)としては,高分子型アニオン性界面活性剤(A-2a)及び低分子型アニオン性界面活性剤(A-2b)が挙げられる。
【0019】
高分子型アニオン性界面活性剤(A-2a)としては,スルホン酸(塩)基,硫酸エステル(塩)基,リン酸エステル(塩)基,ホスホン酸(塩)基及びカルボン酸(塩)基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有し,1,000?800,000の重量平均分子量(以下,Mwと略記)を有する高分子型アニオン性界面活性剤が挙げられる。高分子型アニオン性界面活性剤は,通常,1分子中に少なくとも2個以上の繰り返し単位を有する。(A-2a)の具体例としては,以下の(A-2a-1)?(A-2a-5)等が挙げられる。」

「【0031】
アニオン性界面活性剤(A-2)のうち好ましいのは,パーティクルの再付着防止性の観点から高分子型アニオン性界面活性剤(A-2a),低分子型スルホン酸系界面活性剤(A-2b-1),低分子型硫酸エステル系界面活性剤(A-2b-2)及び低分子型脂肪酸系界面活性剤(A-2b-3)であり,更に好ましいのは(A-2a),(A-2b-1)及び(A-2b-2),特に好ましいのはポリアクリル酸(塩),ポリスチレンスルホン酸(塩),ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩,アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸/アクリル酸共重合体の塩,メタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステル/アクリル酸共重合体の塩,オクチルベンゼンスルホン酸(塩),パラトルエンスルホン酸(塩),メタキシレンスルホン酸(塩)及び2-エチルヘキサノール硫酸エステル(塩)である。
(A-2)は単独で用いてもよいし,2種以上を併用して用いてもよい。パーティクルの分散性の観点から,2種以上を併用する方がより好ましい。」

「【0035】
本発明の洗浄剤における界面活性剤(A)の含有量は,本発明の洗浄剤の有効成分の重量に基づいて,1.5?100%が好ましく,更に好ましくは2?90%,特に好ましくは3?80%である。」

「【0062】
本発明の洗浄剤は,必須成分としての界面活性剤(A),任意成分としての水,キレート剤(B),還元剤(C)及びアルカリ成分(D)以外に,本発明の洗浄剤の効果を損なわない範囲において,更に分散剤(E),3価以上の多価アルコール(F),水溶性有機溶剤(G)及びその他の添加剤(H)からなる群から選ばれる1種以上の成分を含有もしてもよい。」

「【0070】
その他の添加剤(H)としては,酸化防止剤,防錆剤,pH調整剤,緩衝剤,消泡剤,防腐剤及びハイドロトロープ剤等が挙げられる。」

「【0081】
本発明の電子材料用洗浄剤を希釈水で希釈した場合の有効成分濃度0.01?15%における25℃でのpHは,1?13であることが好ましく,更に好ましくは1?5又は8?13,特に好ましくは1?4又は9?13,最も好ましくは1?3又は10?13である。pHがこの範囲にあると,基板の平坦性を損ねることなく,適度なエッチング性を有し,また微細なパーティクルの再付着防止性に優れた効果を発揮し易くなる。」

「【0110】
<洗浄性評価-1>
市販のガラス基板(コーニング社製,ガラス板#1737,縦10cm×横10cm)上にガラス板を切断(破断)した際のガラス粉5mgを散布し,105℃のホットプレート(PMC Industries社製,デジタルホットプレートシリーズ730)上で1時間加熱して汚染基板を作製した。洗浄剤1000gを2Lのガラス製ビーカーに採り,作製した汚染基板を浸漬し,超音波洗浄機(200kHz)内で,30℃,5分間洗浄を行った。洗浄後,基板を取り出し,超純水で十分にリンスを行った後,窒素ガスでブローして乾燥し,下記の評価点に従い,基板表面の洗浄性を微分干渉顕微鏡(Nikon社製,OPTIPHOT-2,倍率400倍)で評価した。尚,本評価は大気からの汚染を防ぐため,クラス1,000(FED-STD-209D,米国連邦規格,1988年)のクリーンルーム内で実施した。
◎:ほぼ完全に除去できている。
○:ほとんど洗浄できている。
△:若干粒子が残留している。
×:ほとんど洗浄できていない。」

上記記載から,引用文献12には,以下の発明が記載されていると認められる。
「アニオン性界面活性剤,水及びpH調整剤を含有し,前記アニオン性界面活性剤は,高分子型アニオン性界面活性剤であるポリアクリル酸(塩),すなわち,アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む基板の洗浄用である洗浄剤。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用文献1を主引例とした進歩性の検討
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。
(ア)引用文献2ないし4に記載された技術的事項を参酌すれば,引用発明1の「重量平均分子量約2500のポリアクリル酸アンモニウム」は,本願発明1の「『重量平均分子量が,2,000以上10,000以下であ』り,『アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含』む『アニオン性界面活性剤』」を満たすといえる。

(イ)引用文献5ないし7に記載された技術的事項を参酌すれば,引用発明1の「直径200mmのSiウエハ基板上に形成された約5000ÅのプラズマTEOS膜上に,高さ約0.6μm,ラインアンドスペース約6μmのアルミ配線を付け,アルミ配線の上に更に約0.8μmの前記TEOS膜が埋め込まれている基板の,該基板上のILD膜を,約150nmの平均粒子径を持つセリア微粒子粉末2.0重量%,2種の平均分子量(約1200,約15000)を1:1の比率で有するポリアクリル酸アンモニウム0.1重量%を含有し,pH5.2であるスラリーを調製した研磨剤を用いて化学的機械的研磨処理をした後の,前記基板の表面を洗浄するため」は,本願発明1の「プラスのゼータ電位を有するセリア砥粒を含むCMP研磨液を用いて被研磨膜を有する基板を研磨したCMP処理後の基板洗浄用」を満たすといえる。

したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「アニオン性界面活性剤,水を含有し,前記アニオン性界面活性剤は,アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含み,
前記アニオン性界面活性剤の重量平均分子量が,2,000以上10,000以下であり,
プラスのゼータ電位を有するセリア砥粒を含むCMP研磨液を用いて被研磨膜を有する基板を研磨したCMP処理後の基板洗浄用の洗浄液。」

(相違点)
(相違点1)一致点に係る「アニオン性界面活性剤」の含有率が,本願発明1では,「全質量基準で1.00質量%以上2.00質量%以下」であるのに対して,引用発明1では,「0.20重量%」である点。

(相違点2)本願発明1の洗浄液が,「pH調整剤」を含有するのに対して,引用発明1は,そのような構成が特定されていない点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑みて,相違点1について検討する。
引用文献1には,引用文献1に記載された発明に係る洗浄液において,低分子量ポリアクリル酸塩の含有量は0.0001重量%?0.5重量%であることが好ましく,特に0.005重量%?0.2重量%であることが好ましく,0.0001重量%未満では粒子除去効果が劣る傾向があり,また,0.5重量%を越えると3成分の配合バランスが悪くなり,金属汚染除去及び粒子除去効果が劣る傾向があるという技術的事項が記載されている。
してみれば,引用発明1において,ポリアクリル酸アンモニウムを,「3成分の配合バランスが悪くなり,金属汚染除去及び粒子除去効果が劣る傾向がある」とされる0.5重量%を越えて,「全質量基準で1.00質量%以上2.00質量%以下」の範囲に含まれる含有率で含むようにすることには,阻害事由があるといえる。
また,引用文献2ないし12に記載された技術的事項及び発明を参酌しても,引用発明1において,前記阻害事由を超えて,ポリアクリル酸アンモニウムを,「全質量基準で1.00質量%以上2.00質量%以下」の範囲に含まれる含有率で含むようにすることが容易であったとは認められない。
そして,本願発明1は,前記相違点1に係る構成を備えることによって,本願の発明の詳細な説明に記載された顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって,他の相違点については検討するまでもなく,本願発明1は,引用発明1と引用文献1ないし12に記載された技術的事項あるいは発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)引用文献9を主引例とした進歩性の検討
引用文献9には,アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む,重量平均分子量が,2,000以上10,000以下であるアニオン性界面活性剤を含む洗浄液において,アニオン性界面活性剤の含有率を,「全質量基準で1.00質量%以上2.00質量%以下」とする発明は記載されていないので,本願発明1は,少なくともアニオン性界面活性剤の含有率を「全質量基準で1.00質量%以上2.00質量%以下」とした点で,引用文献9に記載された発明と相違する。
そして,引用文献9を主引例として,副引例として引用文献1ないし8,10ないし12を組み合わせたとしても,いずれの引用文献にも,アニオン性界面活性剤の含有率を前記範囲に含まれる値とすることについては記載も示唆もなく,むしろ引用文献1を参照すれば,アニオン性界面活性剤の含有率を,「全質量基準で1.00質量%以上2.00質量%以下」とすることに対して阻害事由があるといえる。
したがって,本願発明1は,引用文献9に記載された発明と,引用文献1ないし12に記載された技術的事項あるいは発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし6について
本願の請求項2ないし6は,請求項1を直接または間接に引用する発明であって,本願発明1の発明特定事項を全て含むから,本願発明2ないし6もまた,本願発明1と同じ理由により,引用文献1,9のいずれを主引例としても,引用文献1ないし12に記載された技術的事項あるいは発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明7,8及び本願発明9ないし15について
本願発明7,8は,本願発明1の洗浄液を使用した基板の研磨方法に係る発明であって,請求項1において特定する事項に対応する構成を全て含むから,本願発明7,8もまた,本願発明1と同様の理由により,引用文献1,9のいずれを主引例としても,引用文献1ないし12に記載された技術的事項あるいは発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
さらに,本願発明9ないし15は,請求項7または8を直接または間接に引用する発明であって,本願発明7または8の発明特定事項を全て含むから,本願発明9ないし15もまた,本願発明7または8と同じ理由により,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成29年12月4日付けの手続補正書による補正により,補正後の請求項1ないし15は,「前記アニオン性界面活性剤の重量平均分子量が,2,000以上10,000以下であり,前記アニオン性界面活性剤の含有率が,全質量基準で1.00質量%以上2.00質量%以下である」という技術的事項を有するものとなった。
そして,アニオン性基を有するビニル化合物に由来する構造単位を有するアニオン性高分子化合物及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種を含むアニオン性界面活性剤を含有する,セリア砥粒を用いたCMP処理後の基板洗浄用の洗浄液において,アニオン性界面活性剤の重量平均分子量及び含有率を,前記補正によって特定されることとなった範囲に含まれる値とするという技術的事項は,原査定における引用文献7,10,12には記載されておらず,本願優先権主張の日前における周知技術でもない。
したがって,本願発明1ないし15は,原査定における引用文献7,10,12に基づいて当業者が容易に発明をすることはできたものとも認められない。

したがって,原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-01-29 
出願番号 特願2011-138864(P2011-138864)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 工藤 一光  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 加藤 浩一
小田 浩
発明の名称 洗浄液及び基板の研磨方法  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ